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April 21, 25
スライド概要
Game Jammer working at Yasuda Women's University since April 2025. IGDA Japan board member, HEVGA individual member. 2025年より安田女子大学に移りました.
Introduction to Game Design 10章 体験はプレイヤーの心のなかで 起きている 講師: 山根信二 Creative Commons Attribution 4.0 International license Creative Commons Attribution 4.0 International license .
本教材の内容 • Ch. 10: The Experience Is in the Player’s Mind • 10章 体験はプレイヤーの心のなかで起きている • ゲームプレイを可能にする脳の4つの知的能力(p.184) • モデル化,集中(フォーカス,フロー) ,イマジネーション, 共感(感情移入) • 脳科学・進化心理学はゲームデザインの役に立つのか 1
§10.1 現実のモデル化 • みなさんにとっての現実とは? • 錯覚(イリュージョン)とは? • 現実をもとに脳の中につくられたメンタルモデル • 手品師は観客の脳内にイリュージョンを作りだす • 人類は複雑な現実世界をそのまま処理できない • アニメやコミックでリラックスできる理由の一つ • 実写の視覚処理よりも省略された視覚処理 • 人類は現実をそのまま処理せず,単純なメンタルモ デルに落とし込んでいる 2
§10.1 現実のモデル化(続) • 脳は,脳の中にできるだけ正確な外界/世界のモデルを 作る機能を持っている • 教科書には書いていないが,おそらくほぼすべての動物が 持っている脳の本質の一つ • 脳科学の主流の仮説 • より優れた世界のモデルを脳の中に持ち、より正確に未来を 予測しつつ活動できるほうが、生存できる確率は高くなる • 子供のゲームはその練習 • ゲームや遊びは,脳内モデルを構築するために必須の機能 3
この現実はゲームだ! • 人間は複雑な現実を単純なメンタルモデルに落とし込む • 視覚処理,人間関係,リスク分析,意思決定… • シンプルなルールで構成されモデル化された現実…それ はゲームなのでは? • ゲームを遊ぶとリラックスできる理由 • ゲームが現実世界で活躍するための訓練になっている • 人間が体験することはすべて現実ではなくモデル • ゲームデザイナは錯覚を通じて,現実以上にリアルな体 験をつくることができる 4
10.2 集中 • 人間の脳の驚くべき処理能力 • 「カクテルパーティ効果」 • 脳は選択した情報だけに集中し、残りは無視できる • ゲームデザイナは,プレイヤーの集中を長く,強くつ なぎとめられる体験をつくる • 心理学ではこの人間の精神状態を「フロー状態」と呼 んで研究してきた 5
ゲーマーのメンタルモデルに使える心 理学 • 心理学者チクセントミハイ(レンズ6:好奇心のレンズ) が提唱した「フロー」理論 • 「フロー体験」とは • 人間がその時していることに、完全に浸り、集中している • 完全にのめり込んでいて、うまくいっている精神状態 • (つまり,ゲームでもスポーツでも勉強でもあらゆること でフロー体験は起こりうる.そして上級者はフロー体験を 自分でつくりだすことができる.これをスポーツ心理学で は「ゾーンに入る」と呼んでいる.) 6
フロー体験をつくれるか • 難しすぎたら嫌になる、簡単すぎたら飽きてしまう 図10-5 (p.191) 7
フローチャンネルをつくる • 図10-6 (p.192) • 「緊張と緩和」を繰り返すサイクル • 失敗をくりかえしてクリアする快感 8
レンズ#21:チクセントミハイから, フローのレンズ を てにいれた! • このレンズを使うには、何がプレイヤーのフォーカス をもたらしているかを考える • (略) 9
フローの難しさ • デリケートなバランス • テストが難しい • 再現が難しいものをどうやって観察できるのか • ゲームをやっているプレイヤーがフローに入っ たら、近くで観察 • フローのレンズを自分に試そう 10
その他のメンタルモデル • 10.3 共感 (empathy, 感情移入) • 「他人の立場になって物事を考える」のは、人類 が獲得した驚くべき能力 • (著者の主張を支持するものとして,ヒトやサルの 脳には,他者の行為や意図を観察するときに反応す る神経回路が存在する) • 共感力は人間以外に対しても発揮される • どうすればゲームのキャラクターへの感情移入を作 れるのか?→詳しくはCh. 20キャラクターの章で 11
その他のメンタルモデル(続) • Ch. 10.4 想像力(イマジネーション) • 人間は単純なメンタルモデルを自動的に想像力 で補う • プレイヤーの想像力に委ねるものをさがす • ストーリーを補う・ 問題解決を試みる • (ここではレンズはでてきませんが,Ch. 13「ゲー ムバランス」のイマジネーションのレンズでとりあ げます) 12
参考文献 • ミハイ・チクセントミハイ『フロー体験』 • 間接的な参考文献としては、以下のものがある • ミハイ・チクセントミハイ: フローについて https://www.ted.com/talks/mihaly_csikszentmihalyi_on_ flow (TEDTalk字幕動画) • 「他人を映す脳の鏡」日経サイエンス 2007年2月号 http://www.nikkeiscience.com/page/magazine/0702/sp-mirror.html • 脳機能の話,共感能力の話は進化心理学やグローバ ル・ヒストリーの著作が次々と翻訳されている 13
本教材のまとめ • 体験はプレイヤーの脳内(心の中)で起こる • 脳の4つの知的能力がゲームプレイをつくる • モデル化,集中(フロー),想像力(イマジネーション),共感 (感情移入) • フローの心理学はそのままゲームデザインに応用できる • 脳科学・心理学の知見は重要 • 脳(brain)と心(mind)について知れば知るほど,優れた体験を生 み出せる確率は上がる • (予告)本章の知見のゲームデザイン応用は「キャラク ター」「ゲームバランス」などの章で 14
次章予告 • 第11章はモチベーション・やる気の心理学について • ゲームの面白さはモチベーションの仕組みに結びつ いている 15