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April 21, 25
スライド概要
Game Jammer working at Yasuda Women's University since April 2025. IGDA Japan board member, HEVGA individual member. 2025年より安田女子大学に移りました.
Introduction to Game Design 第17章「ストーリー」, 第18章「間接操作」 講師: 山根信二 Creative Commons Attribution 4.0 International license Creative Commons Attribution 4.0 International license .
本教材の内容 • 第17章「ストーリー」 • ゲームの4要素の一つ「ストーリー」 • ゲームデザイナが知っておくべきストーリーの知識 • 様々な分野の知見を収集: 神話学、演劇学、人世訓、 情報科学(組み合わせ爆発、ゲームAIなど) • ストーリーとゲームは対立するのか? 1
§17.1 物語とゲームの二重性(Story/Game Duality) • 二重性とは? 例: 粒子と波動(物理学) • ストーリーとゲームとは対立するのか • Final Fantasy の場合 • ゲームデザイナがつくるのは、ストーリー でもゲームでもない「体験」 • この章と続く章では,よりよい体験のため のストーリーとゲームについて扱う 2
§17.2 受け身のエンターテインメントという迷信 The Myth of Passive Entertainment • インタラクティブなストーリー(interactive storytelling)と従来型のストーリー(traditional storytelling) • これらは全く別ものだ,という根強い「迷信」 • 夢と現実 • まず現実の手法の紹介から 3
§17.4 開発現場の手法 (Real World Method ) • 開発現場の手法 1: 「真珠の首飾り方式」 • 数珠つなぎ • 「大してインタラクティブではない」と言われるが... • 『Ico』『ウォーキング・デッド』『The Last of Us』 • 開発現場の手法 2: 「ストーリーマシン」 • スポーツの試合(game),『ザ・シムズ』『Minecraft』 • 「作者がいないのでインタラクティブストーリーではない」 と言われるが... • どちらにせよプレイヤーは楽しむことができる • これらの二つでこれまでにつくられたゲームの99% 4
レンズ#73: ストーリーマシンのレンズを てにいれた! • 優れたゲームは、人々が遊んだときにストーリー を生み出す • よいゲームは、プレイすることでストーリーを生 み出す装置である A good game is a machine that generates stories when people play it. • 過去の作品分析から: 選択・対立・キャラク ター・感情曲線・ゲーム実況 5
§17.5 たくさんの問題点 • プレイするたびに繰り返し楽しめるインタラクティブストー リーの夢はなぜ実現されないのか? • §17.5.1 問題点1: よいストーリーは統一感がある • §17.5.2 問題点2: 組み合わせ爆発 • §17.5.3 問題点3: マルチエンディングによる落胆 • §17.5.4 問題点4: 動詞の種類が少ない • §17.5.5 問題点5: タイムトラベルが悲劇を台無しにする • §17.6 夢の改善 • 人工知能がすべての問題を解決することはない • ゲームデザイナは体験にフォーカスする 6
ゲームデザイナのストーリーのヒント集 • ストーリーのヒント1: 目標、障害、対立 • ストーリーのヒント2: リアルにする • ストーリーのヒント3: シンプルさと超越性を提供する • ストーリーのヒント4: 「ヒーローズ・ジャーニー」を検討する • ストーリーのヒント5: ストーリーで解決する! • ストーリーのヒント6: 世界の一貫性を保つ • ストーリーのヒント7: 理解しやすいストーリーにする • ストーリーのヒント8: 使い古されたお決まりの設定を賢く使う • ストーリーのヒント9: 地図がストーリーを生み出すこともある 7
レンズ#74: ストーリーのヒント集から、障害のレンズ を てにいれた! • 障害がないゴールは追及する価値がない • (略) 8
レンズ#75: ストーリーのヒント集から、シンプルさと超 越性のレンズを てにいれた! • 現実よりもシンプルで,現実を超えたストーリーの世 界をいい具合に組み合わせられるか • (略) 9
英雄譚を活用する • 1. 日常の世界 • 2. 冒険への招待 • 3. 招待の拒否 • 4. 賢者との出会い • 5. 第一関門突破 • 6. 試練、仲間、敵 • 7. 危険な場所への接近 • 8. 死の試練 • 9. 報酬 • 10. 帰り道 • 11. 復活 • 12. 宝を持って帰還 10
レンズ#76: 神話学から、ヒーローズ・ ジャーニーのレンズを てにいれた! • 英雄譚の多くは類似した構造を持っている • (略) 11
レンズ#77: ストーリーのヒントから、奇妙 なもののレンズを てにいれた! • ストーリーに超現実的な要素を登場させる • (略) 12
レンズ#78: ストーリーのレンズを てにいれた! • このゲームに、ストーリーは本当に必要か? その理由は? • プレイヤーがこのストーリーに興味を持ってくれると思う理 由は? • ゲームを構成する他の基本要素(アートワーク、テクノロ ジー,ゲームメカニクス)に対して、ストーリーはどのよう に貢献しているか? もっと貢献させることはできるか? • 逆に、他の基本要素はストーリーに対してどのように貢献し ているか?もっと貢献させることはできるか? • どうすればよいストーリーになるのか? 13
本章の参考文献 • 正誤表でも追記しているが,日本語では以下の本 も参考になる. • クリストファー・ボグラー , デイビッド・マッケナ 『物語の法則 強い物語とキャラを作れるハリウッド 式創作術』(大塚英志解説) • ボグラーの依拠している神話学の本としてはキャン ベル『千の顔をもつ英雄』〔新訳文庫版〕も日本語 で読める. 14
第18章 ストーリーとゲーム構造は 間接操作でうまく統合できる • この章の主な内容: • 「自由という感覚」 The Feeling of Freedom • 「間接操作の方法」 Indirect Control Method • 「キャラクターAIを通じた間接操作」 Collusion • ゲームでストーリーをつくる際の課題と、最新の研究 動向 15
§18.1 「自由だ」という感覚 • 前章のストーリーとゲームプレイとの対立の核心には、 自由をめぐる対立がある (第2章で述べたように、 feelings of freedom はゲーム にしかない,他のメディアには無い である) • どうやってその感情を可能にするのか? • ゲームデザイナはプレイヤーの行為を直接操作するこ とはできないが、間接的に操作している 16
レンズ#79: 自由のレンズをてにいれた! • 自由の感覚は、他のエンターテインメントには無 いゲームならではの要素のひとつ • ゲームにしかできない体験をつくる • プレイヤーにできるだけ多くの自由を感じてもら えるように、以下の質問を自分にしてみましょう (略) 17
間接操作(Indirect Control)の手法 • 間接操作の手法1:制約 • 間接操作の手法2:目標 • 間接操作の手法3:ユーザインタフェース • 間接操作の手法4:ビジュアルデザイン • (例: Aladdin VR(感情曲線の実例参照)の視線誘導) • 間接操作の手法5:キャラクター (例: どうぶつの森、Ico) • 間接操作の手法6:音楽 (例: レストランのBGM) 18
レンズ#80: 手助けのレンズをてにいれた! 心の奥底では、誰もが人の役に立ちたいと願っています。この 感情を魅力的なゲームプレイへつなげるために、以下の質問を 自分にしてみましょう。 • ゲームの中で、プレイヤーが助けるのは誰か? • 助けが必要なキャラクターとプレイヤーの絆をさらに深める ことは可能か? • 目標の達成が誰かの助けにつながることを、ストーリーを通 して、もっと上手に伝えることはできるか? • 助けてもらったキャラクターが感謝を示す手段はあるか? 19
レンズ#81: 間接操作のレンズをてにいれた! ゲームデザイナーなら誰しも、プレイヤーにこういう風 に体験してほしいという「理想的なプレイ体験」のイ メージを持っています。 プレイヤーに自発的にそのような行動をしてもらうため に、以下の質問を自分にしてみましょう。 • (間接操作の6つの手法) • (自分が意図しない方向にプレイヤーを誘導してしま う可能性に注意) 20
§18.8 共謀 • 原文ではcollusion (共謀、談合、結託、内通、内応) • 事例: ディズニーランド「パイレーツ・オブ・カリビアン」 ライド開発中の修正 • 「テーマ」の章に出てきた,苦労話の続き • 試作品(プロトタイプ)段階の問題 • 目指すゴールと関係ない海戦バトル主体になりかけた(図18-9) • 敵の海賊船を使って「プレイヤーは完全に自由な感覚を得ながらも、 しっかりと構造化された体験を楽しめました」 • ゲーム体験をつくりだすために、ゲームキャラクター はゲームデザイナと「共謀」している 21
キャラクターAIによる間接操作 • 共謀による間接操作は、インタラクティブなストーリーの未 来 • 『Façade(ファサード)』の紹介(博士論文研究) (実況動画は公式ウェブサイトやYouTubeにもあります) • テキスト自由入力とAI(人工知能)によって生み出されるエン ディング • これまでのゲーム=ストーリーマシンとどこが違うのか? 22
キャラクターAIによる間接操作(続) • Façade のAIシステム (図18.11) • 図には認知心理学の「ワーキングメモリ」「感情」、ロボット工学 の「センサー」,AIの「ビヘイビアツリー」が見える • 人間の脳の諸機能をシミュレートしている • くわしくは「心理学」「インタフェース」の科目で • キャラクターごとのシナリオを書かずに,キャラクターに人 間の知性を持たせて世界内に配置し,自分で判断させる • 外界をセンサで感知して状況に応じてキャラクターAIが判断 • この教科書が執筆された当時は大学院の研究論文だったが、 いまでは多くのNPCに実装されている 23
レンズ#82: 共謀のレンズを てにいれた! • プレイヤーにどのような体験をさせたいか? • ゲーム世界でのキャラクターたちの目標を損 ねることなく、目指しているプレイ体験を キャラクターたちに助けてもらう方法はある か? 24
老子「無事を以て天下を取る」 「我れ無為にして民自のずから化し」 • 現代語訳「天下を得るには作為的な事は何もしない方 が良い。」「私が余計な事をしないからこそ、民衆は 自ら感化される。」 • 最も優れた為政者のもとでは、民衆は「わたしたちが 自力で成し遂げた」と言うだろう。 • ユーザーが自由の感覚を得ることができる仕組みは、 現代のゲームデザイナだけでなく東洋哲学にも通じる (と教科書の著者は言っている) 25
教科書補足 • 参考文献の『Picture This』は日本語訳されています.正誤表 をチェックしてみてください. • レベルデザインとは? • 第18章でいきなりレベルデザイン(p.432)という言葉がでてきます • これはゲームをいくつかのレベル(ステージ)に分けて,各レベル ごとに行う詳細なデザイン作業のことです. • 日本国内では,レベルデザインを「難易度の調整」だと説明してい る本もありますが,それは誤訳です.難易度調整はレベル調整では なく(前回出てきた)バランス調整(バランシング)の一つです. レベルデザインの原則については,空間と建築の章でも扱う予定で す. 26