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April 21, 25
スライド概要
Game Jammer working at Yasuda Women's University since April 2025. IGDA Japan board member, HEVGA individual member. 2025年より安田女子大学に移りました.
Introduction to Game Design 2章 ゲームデザイナーは 体験をつくりだす 講師: 山根信二 Creative Commons Attribution 4.0 International license Creative Commons Attribution 4.0 International license .
本教材の内容 • 第2章 「ゲームデザイナは体験をつくりだす」 • 前章ではゲームデザインとは何かを考え,ゲームデザイナと しての一歩を踏み出した • 本章ではゲームデザインが何をめざすのかを考える. • そして,最初の「レンズ」を獲得する • 冒頭の謎の引用は最後に見直すとして,さっそく本文に. 1
Ch. 2 ゲームデザイナーは体験を創り出す •「ゲームデザイナのゴールは?」 → 目標はゲームをデザインすることでは? • 違います. •ゲームはゴールに向かうための手段 •ゲームを手段として何を目指すのか? 体験 (experience) 2
Ch. 2 ゲームデザイナーは体験を創り出す(続) • Ch. 2.1 ゲームそのものは、体験ではない • 効果の無い,心を動かさないゲームに用はありません • 他人の頭の中に体験を作り出すのがゴール • 体験はどこで起こってるの?→プレイヤーと人工物とのインタラ クション(相互作用)を通じて脳内に生まれるのが体験 • どんな体験が生まれたかは聞きとるしかない • Ch. 2.2 これはゲーム特有の問題なのか? • ゲームは他の手段と何が違うのか • ゲームを使った体験でしか生み出せない「特定の感情」がある. (これについてはあとの章で.) 3
Ch. 2.3 虹を追いかけるための3つの方法 • 体験をつくりだすにはどうすればいいのか • ゲームの研究ではメンデレーエフの周期表は発見され ていません (まえがき参照) • 元素がいくらあるのか,どんな性質なのか… • しかし、これまでの学問のアプローチを借りてマップ をつくることができる • 特に「心理学」「人類学」「デザイン研究」 • この章ではこの3つの分野の方法を解説する 4
Ch. 2.4 内観 • 心理学(現象学的心理学)、人類学、デザイン 研究に共通するツール Introspection (内観、自己観察、内省) • 内観の危険性と,それを回避する方法について 5
Ch. 2.5 感情を解剖する • 内観で自分自身の声を聞くには • 自分のゲームをデザインする時だけでなく、他人の ゲームをプレイするときでも、自分の体験を分析して 言語化する • 私たちの中から湧き上がる感覚を言語するための特別 な言葉がある • 私たちの中から湧き上がる感覚=感情を言語化する、 これが【レンズ #1】 6
レンズ #1: 喜怒哀楽(emotion)のレンズ を て にいれた! • 内観からはじまるゲームデザイン • (自分自身も含めて)プレイヤーは,ゲームを するときにどんな感情を抱いているのか? • プレイヤーが抱く感情と,自分が目指す感情と のギャップは埋められるか? 7
だが待ってほしい、内観はいい方法なの? • Ch. 2.6 打倒ハイゼンベルク(量子力学の観察問題) • ゲームを楽しんでいる自分の感情を解剖できるのか? そんなこと考えてたら楽しくないよ! • 意識を分析することで意識が麻痺してしまう問題 だが,訓練で対策できる!! 8
意識が意識を分析するための方策 • Ch. 2.6.1 記憶を分析する • 直接に感覚を分析するのではなく、体験の記憶を分析する ことはできる • Ch. 2.6.2 2 回やる • まず体験する.そして体験をやりなおす.2回目はノート や記憶を残し、分析する. • Ch. 2.6.3 チラ見 〜 2.6.4 静かな観察 • これらはさらに訓練が必要.禅とか現象学とか. • 体験を観察する話はここまで. 9
2.7 体験の本質(essence) • 体験を観察する訓練をゲームデザインに応用する • 作りたい体験の核(essence ,本質)をとりだす • それをプレイヤーに体験してもらう • ゲームデザイナが目指す,ゲームデザインに必要な 体験の本質とは→ 10
ゲームデザインにとって体験とは何か • ゲームデザインでは体験を完全に再現する必要はない • 哲学やシミュレーター開発とは異なるゲーム開発 • プレイヤーはゲームをプレイするときに完全な体験を 求めていない • いいゲームをつくるのに必要なのは、完全な体験では なく「体験の核」となるもの • 多くのデザイナーが本能的に知っている【レンズ#2】 11
レンズ #2: 体験の本質のレンズ を てにいれた! • このレンズを使うには、ゲームについて考えるのをやめ て、プレイヤー体験について考えます。あなた自身に対 してこれらの問いをなげかけましょう。 (略) • Wii Sports の場合 • スポーツを忠実に再現・シミュレートしなくても面白いスポー ツゲームはできる • TRPG James Bond 007 RPGの場合 • 『007』シリーズの本質をダイスとポイントで作り出せる 12
Ch. 2: 創り出す体験のまとめ • レンズ#2は多くのデザイナーが本能的に知っている こと: 「本物をつくってもゲームにならないよ!」 「ゲームってそういうものだよ!」 • 「体験について細かく考えなくても、まずゲームを つくれば、体験はあとからついてくる!」(p.30) → それは正しい.だが、それでも分析の訓練をし た方がいい理由がある • 自分が何を求めているのか言語化せずにつくること もできるが、他の人にも説明できた方がいいよね? 13
補足: 気がつきましたか? • 章の冒頭に出てくる,誰も理解できない引用 (ロックバンドと文学者) • レンズに出てくる,誰も知らない人の引用 • 本文を書いたあとにこじつけている • この教科書の読み方: 疑問は最初は飛ばして,振り返る • 謎引用は章を読み直すとわかる(かも) • 2章の引用は,作品を作る前にゴールに狙いを定めること • それにむけて作品を構成するが,それは試行錯誤の道 (さらに補足: エドガー・アラン・ポー「詩作の哲学」の原題は Philosophy of Composition,構成の哲学) 14
本教材のまとめ • ゲームデザイナは体験をつくりだすためにゲームを使う • さらに詳しい話は,10章「体験はプレイヤーの脳内で起こる」 ゲームだけがつくりだせる体験については,ゲームと他のメディ アの違いを論じた4章(ゲームの定義),5章(ゲームの要素), 12章(自由の感覚),18章(間接制御)も関連します • 哲学者とちがって,ゲームデザイナは体験の完全な説明や 再現を目指さない • 多くのゲームデザイナにとっては本能的にわかっていることだが, 本章では本能ではなく訓練でそれを可能にする • 体験の本質・核を分析することができれば,それを言語化 し,それを目標にしたゲームつくりに応用できる 15