>100 Views
June 21, 23
スライド概要
仙台農業テック&カフェ・パティシエ専門学校 農業経営講義「農業経営とは:農業経営者の話を聞く①」
2023/06/21開催
サツマイモの無限の魅力と可能性を日々探求|サツマイモに関するTV・ラジオ出演、雑誌・新聞取材、専門誌寄稿の実績多数|サツマイモの歴史や栽培、品種、加工や商品化まで、サツマイモに関する見識を深め、わかりやすく伝えることに情熱をそそいでいます
© Sweet Potato Company Inc. 仙台農業テック&カフェ・パティシエ専門学校 農業経営講義 サツマイモと日本の農業について さつまいもカンパニー株式会社 代表取締役 橋本亜友樹
© Sweet Potato Company Inc. 自己紹介 橋本亜友樹(はしもとあゆき) 1978年、兵庫県尼崎市生まれの45歳。 千葉県柏市在住。妻と娘の三人家族。 【学歴】 2000年 神戸大学農学部 植物資源学科卒業 2002年 神戸大学大学院自然科学研究科 植物資源学修了 2015年 グロービス経営大学院大学 経営学修了(MBA取得) 【経歴】 大学院卒業後、日本ヒューレット・パッカードに入社しシス テムエンジニアとしてキャリアをスタート。その後、アビー ムコンサルティングにてITコンサルタントとして勤務した後、 2012年6月に「ITで農業を支援する」をミッションに株式会社 エーブリッジを起業。 その後、2015年8月にさつまいもカン パニー株式会社を設立、2019年8月に一般社団法人さつまいも アンバサダー協会を設立し、それぞれ代表に就任。 2
© Sweet Potato Company Inc. 会社概要 会社名 さつまいもカンパニー株式会社 所在地 東京都足立区千住2丁目16-3 興伸ビル 設立 2015年8月 1. サツマイモの栽培および販売 環境負荷の軽減と品質や収量安定化・効率化の両立(環境および経済 的持続性の両立)させるサツマイモ栽培の研究・実践を行っています。 事業内容 2. サツマイモ専門コンサルティング 地域や企業等からの要請に応じて、提携企業や団体と連携し、サツマ イモ専門コンサルタントとして、サツマイモに関する生産体制の強化 (栽培技術 ・ 加工技術の向上)、事業化や商品企画の推進(新商品 開発、ブランド化)、経営支援(人材育成、流通・販売の強化等)、 スマート農業の推進を行っています。 ミッション 事業活動を通じ、サツマイモに関わる人をみな幸せにする 3
© Sweet Potato Company Inc. 半生振り返り(幼少~大学) 幼少のころ、万博や花博で農業やバイオテクノロジーの世界に触れ、当時問題になってい た環境問題や食糧問題を解決したいと、農学研究者の道に進むことを志し、大学にて植物 育種学を専攻。 4
© Sweet Potato Company Inc. 半生振り返り(会社員時代) 大学院生時代に進路先についていろいろ悩んだ結果、IT革命全盛期ということもあり、IT (特にインターネット)がこれからのビジネスには必須だと感じ、IT系企業に就職。 その後、やはり食に関わりたいという思いで農×飲食店のビジネスプランを考えるがいっ たん諦め、ITコンサルティング会社に転職。 5
© Sweet Potato Company Inc. 半生振り返り(独立期) 2012年にやっぱり食や農業に関わりたいと、「ITで農業を支援する」をミッションに会社 を設立する。自分の強みや志をもとに、軸を「IT」× 「農業」×「海外」の組み合わせす ると決め、まずは「IT」×「海外」で、主にベトナム企業とのシステム開発事業を推進す る。 一方で、「農業」×「IT」という軸で、設立当初から手掛けていたサツマイモの情報発信 や通販事業をさつまいもカンパニーとして独立させ、また、日本農業情報システム協会に 理事として参画。 「農業」×「海外」という軸で、システム開発でベトナムに訪問する傍ら、台湾、マレー シア、インドへも視察調査。 6
© Sweet Potato Company Inc. 半生振り返り(さつまいも注力) 2018年頭にシステム開発からは手を引き、さつまいもに注力することにする。 2019年8月には、サツマイモに関する情報の発信やサツマイモの魅力を伝えるアンバサ ダー育成を通じて、サツマイモ産業の振興を目的とする一般社団法人さつまいもアンバサ ダー協会を設立。 現在は、さつまいもファーマ―として茨城県にてサツマイモの栽培、サツマイモの魅力と 可能性を伝えるアンバサダーとして各種メディア等への出演、さつまいもコンサルタント としてスマート農業プロジェクトや講演・支援活動を行っている。 7
© Sweet Potato Company Inc. 目指していること 8
© Sweet Potato Company Inc. さつまいも価値共創ネットワーク構築 現在、国内は第4次ブームと言われ、焼きいもを中心として消費が伸びていたり、日本 からの焼きいも用イモの輸出が活発化したりしている。 その一方で、これまでサツマイモの研究、加工・商品作りの面で世界一であった日本も、 人材不足や研究の弱体化などの危機を抱えている状況で、今後のサツマイモ産業の振興 や海外戦略にはオールジャパンでの取り組みが必要と考えている。 そのために、バリューチェーンを構成する研究者・生産者・企業および消費者の連携を サポートし、新しい価値(商品・サービス)を共創する仕組みを作ることを目指してい る。 研究 生産 加工 流通 製造 販売 消費 サポート 既存事業者や関係者とともに、新しい価値を共創し、 さつまいも産業の振興に寄与する 9
© Sweet Potato Company Inc. さつまいも×テクノロジー 資源を有効活用し継続可能な農業を実現するためには、テクノロジーの活用が必要不可 欠となってきている。また、生産現場だけではなく、流通や加工、販売活動に至るまで、 情報を可視化し、スムーズな情報伝達の仕組みが必要だと感じている。 以下の観点からテクノロジーの活用に取り組む。 卸 1. センサーデータを活用した最適な栽 培・収穫後管理 2. サツマイモ農業経営サポートツール 物流 サツマイモ情報流通 プラットフォーム 3. 機械化・AIやロボティクスを活用した 農作業省力化 4. サツマイモ情報流通プラットフォーム の構築 加工 農林 小売 水産 業 消費 者 テクノロジーを活用し、サツマイモ市場の拡大と 高品質&安定供給の実現を目指す 10
© Sweet Potato Company Inc. サツマイモ産業モデルの世界展開 サツマイモは救荒作物で、加工品の幅が広く産業化しやすい作物である。 一方、サツマイモの貯蔵や加工には技術が必要であり、サツマイモの育種~生産~加工 における、技術や産業モデルは日本が世界一だと言っても過言ではない。 日本がこれまで培ってきた技術や産業モデル、つまりはサツマイモの食文化、商品文化 を世界で展開することで、 SDGs(持続可能な開発目標)の次の目標達成を目指したい。 日本のサツマイモ産業モデルを世界で展開し、 サツマイモによる持続可能な世界の実現を目指す 11
© Sweet Potato Company Inc. さつまいもネットワーク作り 12
© Sweet Potato Company Inc. 私が感じた課題 1. さつまいもに関する情報が散在 • 情報は検索すれば出てくるが、経歴も含む専門・得意分野や、研究や事業には人の相性もあり、 適切なマッチングは難しい。 • 4大生産地(鹿児島、宮崎、千葉、茨城)間の交流が少なく感じられ、(産地間競争はあるにせ よ)有用な情報の共有化はあっても良い。 2. バリューチェーン間の情報の欠落 • 研究~産業~消費間で情報を含めた交流がスムーズに行われると、より良い環境が構築できるの ではないか。 • 消費者にとってサツマイモは身近な食材ではあるが、意外と知られていないことも多く、不正確 な情報も見受けられる。 3. 視野を広く持つ必要性 • 人口減による日本の経済規模が落ちてくるのは明らかな事実であり、国内市場だけではなく海外 での取り組みや交流の推進も必要ではないか。(アジアだけではなく、欧米、アフリカ) 4. 科学的エビデンスに基づいた考察が少ない • 数多くの研究テーマがあるが、その結果が十分に活用されているとは言い難い状況であり、また 継続的な研究が少ないと感じている。 13
© Sweet Potato Company Inc. さつまいもネットワーク作り ➢ サツマイモに関する情報の発信、サツマイモの新しい価値創出を目指す企業・組織との共創活動、サ ツマイモの魅力を伝えるアンバサダー育成を通じて、サツマイモ産業振興を目的とするさつまいもア ンバサダー協会を設立(2019年)。 ➢ 日本いも類研究会内にサツマイモ情報の発信、関係機関の連携を主目的としたサツマイモ情報セン ターを設立(2022年)。 ➢ 「いも類振興会」は公的機関/研究者を対象、「サツマイモ情報センター」は事業者/生産者を対象、 「さつまいもアンバサダー協会」はさつまいもファン/消費者を対象としたネットワーク(関係性) を構築し、三者で連携してサツマイモ産業を振興する。 連携・協業 いも類振興会 国/研究機関・研究者 地方公共団体 連携 日本いも類研究会 サツマイモ情報センター 会員入会 さつまいも関係 企業/団体/生産者 会員入会 さつまいもファン /消費者 連携 さつまいもアンバサダー協会 14
© Sweet Potato Company Inc. サツマイモ情報センター サツマイモ情報センターは、日本いも類研究会内でサツマイモに特化・深化する活動と して2022年から活動を開始した。 サツマイモに関する総合的・多角的・科学的な視点での情報の蓄積と発信、サツマイモ 関係者・関係機関の交流と課題解決のプラットフォームとして、情報共有や円滑な連携 を推進する活動を実施している。 事業・活動 概要 Web ホームページおよびSNS(Facebook/Twitter)を使った情報発信を実 施する。 サロン サツマイモおよび農業に関する書籍、論文の展示を行う。また、サツ マイモ関連の冊子や、会員作成のパンフレット等を展示する。 セミナー 毎回テーマを設定し、テーマに応じた講師による講演および質疑応答 を主とする。パネルディスカッションを伴う場合もある。 シンポジウム 「サツマイモ業界の今を知る」を目的とし、サツマイモに関する幾つ かのテーマを設定し、サツマイモ業界の現状や課題、今後の方向性な ど、国内のサツマイモに関する産地・業種横断的な場として開催する。 情報発信 イベント 15
© Sweet Potato Company Inc. さつまいもアンバサダー協会 サツマイモに関する正しい情報の発信、サツマイモの新しい価値創出を目指す企業・組 織との共創活動、サツマイモの魅力を伝えるアンバサダー育成を通じて、サツマイモ産 業の持続的な発展に貢献することを目的としている。 # 事業名 概要 1 メディア事業 WebサイトやSNS、書籍等によるサツマイモ情報の発信 2 コミュニティ事業 協会主催のイベント、さつまいもサロンの運営 3 コラボレーション事業 外部企業・組織との商品・イベント・PR企画の協業 4 アンバサダー認定事業 さつまいもアンバサダー認定講座の運営、認定会員管理 5 物販事業 通販サイトやイベント等でのサツマイモ商品の販売 16
© Sweet Potato Company Inc. さつまいも×テクノロジー 17
© Sweet Potato Company Inc. スマート農業実証プロジェクト 農林水産省「スマート農業技術の開発・実証プロジェクト」(事業主体:国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構)において、令和元年度から令和3年度にかけて、進行管 理役やアドバイザーとしてプロジェクトの推進を行った。 〇令和元年度採択課題 データを活用した農業経営をモデル化し、データに基づき安定的に収益をあげることができ る次世代農業人(スマートファーマ―)育成の実証【長野県御代田町/キャベツ・レタス】 〇令和2年度採択課題 さつまいも生産に対するスマート農業一貫体系の導入による「超省力化・規模拡大」と「単 収増加・高品質化」の実証【鹿児島県鹿屋市/かんしょ】 18
© Sweet Potato Company Inc. スマート農業技術活用産地支援事業 農林水産省「スマート農業技術活用産地支援事業」(事業主体:国立研究開発法人農業・食 品産業技術総合研究機構)において、令和4年度から令和6年度にかけて、「農業版iCDさつ まいもバージョン」を整備しサツマイモ栽培における人材育成の仕組み作り、また、産地、 品目、栽培形態の差異を考慮した手引書(農業改良普及センターなど向け)の作成を進めて いる。 農業版iCDを参考に、営農活動で必要(重要)なタスクを洗 い出し(大分類、中分類、小分類)の3つのレベルで一覧化 する。 小分類毎にそのタスクの遂行レベルを診断するための評価項 目を作成する。 19
© Sweet Potato Company Inc. サツマイモ情報流通プラットフォーム 生産現場だけではなく、物流や製造、小売、最終消費者において取得できる、農業や食に関するビッ グデータは「作物・品種」を軸に整理・分析することで結び付けることが可能となる。 この考えに基づき、サツマイモに関するデータを「品種」を軸に整理し、誰もが容易にアクセスし正 しく理解・活用できるサツマイモ情報流通プラットフォームの構築を目指している。 ◆受賞歴 • LOD Challenge 2014 「アイデア部門」優秀賞受賞 • LOD Challenge 2015 LOD推進賞受賞 • 第一回RESASアプリコンテスト ソフトバンクテクノロジー賞受賞 • 第二回大地の力コンペ 「未来農業シーズ賞」 受賞 20
© Sweet Potato Company Inc. さつまいも海外展開 21
© Sweet Potato Company Inc. アフリカ展開プロジェクト 2019年3月末より半年間、JICA「ABEイニシアティブ」インターンシッププログラムに 参加し、アフリカ、特にナイジェリアでのさつまいも六次産業化の展開を検討。 Point1:食糧や栄養問題対策として有用な作物であるサツマイモに特化 Specialized in sweet potatoes, which is a useful crop as food and nutrition problem countermeasures Point2:最新テクノロジーを活用しバリューチェーン全体の最適化をはかる Using the latest technology to optimize the entire value chain Point3:生産だけではなく、産業全体の仕組みを移管する Transfer not only production enhancement strategies but also the structure of the entire industry 6か月のプログラムの中で次の項目を実施 • 日本のサツマイモの生産、加工、流通、販売、 ナイジェリアへの導入に関する調査。 • 日本の農業技術調査とナイジェリアへの導入。 • 以上の調査結果を踏まえ、事業計画のブラッ シュアップの手伝い。 22
© Sweet Potato Company Inc. サツマイモについて 23
© Sweet Potato Company Inc. サツマイモとは サツマイモはヒルガオ科サツマイモ属に属する作物で、学名は“Ipomoea batatas”(イ ポメア・バタータス)である。サツマイモ属には、観賞用植物のアサガオや、熱帯野菜 のヨウサイ(空心菜)など500以上の種が含まれる。 一般的には塊根部分(養分を蓄えている肥大した根)を食用とするが、一部の地域では 蔓や葉の部分も食用にする。 本州など温帯地域では開花しにくく、品種や栽培条件によってまれに開花する。花はア サガオに似ており、花言葉は「乙女の純情」である。 サツマイモの花、花言葉は乙女の純情 24
© Sweet Potato Company Inc. サツマイモに注目すべき2大ポイント 1.サツマイモは世界を救う サツマイモは17世紀の初めに日本に伝来して以来、江戸時代や戦後の食糧危機の際には、 救荒作物として人々の命を救ってきた。 ほふく性の地上部を持つことから、干ばつや台風などの自然災害に強く、大被害を与え る病害虫も少なく、生産が安定していることや、エネルギーとしてのでん粉だけではな く、ミネラル・ビタミン類を含んでいることから栄養価の高い作物であることが救荒作 物として優れる点である。 窒素肥料の要求量が少なく、農薬投入量も多くないため、環境への負荷が少ない。弱い 光でも生長速度が速く、光合成効率が高く、温暖化対策やバイオ発電材料としても有用 であることから、持続可能な社会の実現に大いに貢献するであろう作物である。 25
© Sweet Potato Company Inc. サツマイモに注目すべき2大ポイント 2.サツマイモの魅力と可能性は無限大 人は栄養補給や毒性の有無といった観点から甘い物を好んで食べるため、甘いサツマイ モは年齢や性別は言わずもがな、人種を問わず万人に好かれている。 さらに、食欲を増進させるおいしさ(香り・色・食感)があり、アレルゲンとなること が皆無であることから、どんな人にでも食べてもらいやすい作物である。 さらに、品種によって食味や見た目も大きく異なり、食べ方や利用法も様々なのが、さ らにいうと、収穫後の食べるタイミングや産地(土質や気候)でまた違う味わいがある ことがサツマイモの魅力である。 そして、この品種と食べ方の無限の掛け合わせや、サツマイモのことを知れば知るほど、 よくわかっていない(研究されていない)分野が出てくるなど、サツマイモは無限の可 能性を秘めている。 26
© Sweet Potato Company Inc. 農業の事業環境について 27
© Sweet Potato Company Inc. 突然ですが、クイズです 私は自分がどんなに努力しても、農業経営者にはなれそうにありません。 世界市場のなかで、高度な技術力とマーケティング力、そして経営判断 が求められる、複雑な仕事です。学生時代にアルバイトしたとき「あん た仕事できないわね」とすぐにクビになりましたから本当です。 さて、誰の言葉でしょうか? バラク・オバマ 第44代アメリカ合衆国大統領 農業は農地、人、技術・販売・企画などの総合知識産業 28
© Sweet Potato Company Inc. 農林水産業のバリューチェーン 一般的な農林水産業のバリューチェーンは、生産→加工/製造→流通/販売と繋 がり、多くの事業体が複雑に絡み合って流通網を構築している。 農産物は天候などの影響により、収量が安定せず、価格の変動が大きく発生する ことが多々あるため、各段階の事業者は変動に備えるための仕組みを構築し、少 しずつリスクを分散している。各事業者の収益やリスクへの備えが積み重なり、 生産者から最終消費者に届くまでに7倍の規模に膨れ上がる。(10.5兆円 →76.3兆円) 農産物は現物取引が多いために評価基準が曖昧、卸売市場をはさむことにより生 産者と実需者のコミュニケーションが切られ、実需者からの評価や要望が生産者 にフィードバックされにくい環境にある。 流通効率化などから規格が定められており、消費者の手に届くものは流通や販売 がしやすいものに限られる。(消費者は自ら選んでいるようで選ばされていると 言える) 生産 加工 製造 流通 販売 29
© Sweet Potato Company Inc. イノベーションが起こりにくい事業環境 ➢ 規制や団体、個人事業主が多く、他産業では当たり前のことができにくい。 地方社会ならではの人間関係が壁になることも多い。 当たり前のことが当たり前にできるようになるだけでもイノベーション ➢ 生産サイクルが多くの作物で1年。PDCAサイクルを短期間で回しにくい。 例えば一生をかけて稲作をやっていても、最大でも50回程度の栽培しかでき ない。その間、同じ条件で栽培できるわけでもなく、小さな改善の積み重ね が必要となる。 ➢ 生育環境がコントロールできず、天候など栽培条件が変わりやすい露地栽培 が大半を占める。 生育環境をコントロールしやすい施設園芸はほんの一部。機械化を進めるう えでは、様々な地形/天候/作物に対応したパターンを考える必要があり、 省力化が進みにくい。 30
© Sweet Potato Company Inc. 私の考える理想の農業の事業サイクル 三次産業を流通/販売という業種だけではなく、サービス業全般を対象にし、「連携」し て付加価値を「共創/協創」する。 食用以外の用途開発、様々なサービス業に適した品種を選択・栽培する。 将来の環境変化等に対応するため、品種の多様性維持や栽培法の研究を行う。 商品販売や飲食のみで は付加価値は限られる し、競合も多い。 ものを売ることから、 体験を売ることへシフ トする。異業種との協 業をはかる →12次産業化 サービス 加工 研究 開発 作物体がもつポテンシャ ルを高める育種は引き続 き必要だが、用途開発も 同じぐらい重要。 気候変化や病害、環境負 荷や経済性を考慮した栽 培法の研究開発も行う。 生産 31
© Sweet Potato Company Inc. 今後の農業を考えるキーワード 32
© Sweet Potato Company Inc. 日本の農業の未来を築く4つのS 日本の農業の未来を築くためには、下記の要素(4つのS)を総合的に考えることが必要である。 科学の応用やスマートな農業手法の採用、より持続可能で効果的な農業システムを構築し、社会との 結びつきを強化することで日本の農業の発展は実現される。 ■Science(科学): 科学的な研究や技術革新を活用することで、効率的な農業生産や品質向上、病害虫管理などに取り組 むことができる。科学的な知識やデータに基づいたアプローチを通じて、より効果的な農業技術や栽 培方法、病害虫管理を開発し、農業生産性や持続性を向上させることが重要である。 ■Sustainable(持続可能性): 環境への配慮や資源の効果的な利用、地域社会の健全性の維持などを考慮した農業システムを構築す ることが求められている。循環型経済の原則に基づいた農業手法の導入により、土壌や水資源の健全 性を保ちながら、農産物の生産性・安全性や品質を長期的に確保することが目標となる。 ■Smart Agriculture(スマート農業): デジタル技術やIoTなどの先進技術を活用したスマート農業への取組みが重要となってくる。セン サー、モニタリングシステム、自動化などの技術を導入し、農作業の自動化やデータ分析を通じて、 適切なリソースの利用、作物の成長や健康状態の監視、病害虫の予防などを実現し、生産性や品質を 高めていくことが大事である。 ■Society(社会): 農業は社会との繋がりが深く、地域社会や消費者との関係性が重要となる。地域社会との協力やパー トナーシップを築き、地域の雇用創出、地域経済の活性化、文化の維持に寄与することも重要である。 また、消費者との信頼関係の構築や健康志向のニーズに応えるため、安全で品質の高い農産物の提供 に努めるだけではなく、農業教育や農業体験の提供を通じて、地域の人々や次世代の農業者への啓発 や関心の醸成を促す必要がある。 33
© Sweet Potato Company Inc. 環境変動 日本の年平均気温は過去100年で1.2ºC上昇しており、農業の現場に顕著な影響が出 始めています。また、今後100年で1.1~4.4ºC上昇する予測がされている。 植物は温度に敏感であり、作物への高温の影響として次のような事象があげられる。 ⚫ 発育の変化・栽培適地の移動 ⚫ 一時的な極端な高温による障害 ⚫ 病害虫・雑草の変化 また、月単位での異常少雨が増加しており、降水の極端化は干ばつの原因となる。 最適温度 低温障害 高温障害 気温 生存限界 生存限界 34
© Sweet Potato Company Inc. 温暖化適応策 温暖化に対する適応策としては、温暖化の被害を軽減するだけではなく、温暖化 を利用するという対応も考えられている。 主な対策は次の3つに整理される。 1. 栽培(生産)技術での対応→温度を下げる、高温耐性の強化 2. 温暖化対応品種の利用 3. 作物転換 リンゴの栽培適地の移りかわり→北海道に適地が遷移する 現在 2060年頃 赤色が適地 緑色は高温の地域 青色は低温の地域 35
© Sweet Potato Company Inc. 食の安全・安心 消費者の食品に対する安全・安心への関心の高まりが見られるが、この背景には、「安全」な ものに対する知識や情報の不足、食品の生産現場からのかい離による「不安」感が存在して いると言われている。 「安全」と「安心」は、ほぼ同じ意味で使われていることが多いが、実際には全く違うものである。 生産者や企業は「安全」な食品を消費者に提供することを常に目指している。ただ、一生懸 命食品を作っても、消費者が「安心」な商品として認めてくれるかどうかは別問題であり、消費 者も自身で判断できるように自立・自覚することも大事だと言える。 36
© Sweet Potato Company Inc. 食品安全委員会 リスク(食品を食べることによって有害な要因が健康に及ぼす悪影響の発生確率と程度) を科学的知見に基づいて客観的かつ中立公正に評価。 リスク評価の結果に基づき、食品の安全性の確保のため講ずべき施策について、内閣総理 大臣を通じて関係各大臣に勧告を行う。 リスクコミュニケーション(消費者、食品関連事業者など関係者との幅広い情報や意見の交 換)を、意見交換会の開催、ホームページ等を通じて実施。 37
© Sweet Potato Company Inc. 農業とSDGs 38
© Sweet Potato Company Inc. 持続可能な農業と関連が高い目標 飢餓を終わらせ、食料安全保障および栄養改善を実現し、 持続可能な農業を促進する 持続可能な生産-消費の形態を確保する 陸域生態系の保護・回復・持続可能な利用の推進、森林の 持続可能な管理、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の 阻止・防止および生物多様性の損失の阻止を促進する 39
© Sweet Potato Company Inc. プラネタリー・バウンダリー 私たちの生活の前提条件は地球システ ムの維持である。 重要な地球システムの各機能が、どこま で持ちこたえられるのか、人類が地球シ ステムで生存できる地球環境の「安全 限界」が「プラネタリー・バウンダリー」であ る。 機能が失われず、安全に活動できる範 囲内にとどまれば、人間社会は発展し、 繁栄できるが、その「限界」を超えれば、 それは人間が依存している自然資源を、 自らの手で回復不可能な状況に追い やっていることを示している。 気候変動(CO2排出量)、窒素循環、 生物多様性の損失がすでに限界値を 超えていると言われている。 40
© Sweet Potato Company Inc. チッソとリンの循環 窒素とリンは、生物地球化学的循環(Biogeochemical cycle)の阻害が発生しており、 地球環境中の蓄積バランスがとれていない状態にある。 特に、窒素については、大規模な化学肥料の生産や農作物の栽培、化石燃料の燃焼等と いった人間活動により、環境中に過剰に蓄積されている。 窒素はその形態を変化させながら、土壌、地下水、河川等を経て海へと流出し、その過程で 湖沼や河川、海域の富栄養化、底層の貧酸素化、地下水の硝酸汚染を引き起こしているほ か、大気中に放出された窒素酸化物は酸性雨の原因となり、さらに地球温暖化物質としても 問題を引き起こしている。 また、窒素はプランクトンの栄養素でもあるため、水域 に過剰な窒素分が存在する(富栄養化が進む)と、 プランクトンの大量発生により毒性や腐臭などの水環 境上の問題を引き起こす(淡水のアオコ問題や海水 での赤潮問題)。 さらに、プランクトンの大量発生は、水中の酸素をも大 量に消費することから、底層の貧酸素化をもたらし、底 生生物等の斃死を誘発している。 41
© Sweet Potato Company Inc. 持続可能な農業とは これからの世界が目指すべき農業として「持続可能な農業」が提言されているが、国により有 機農業やアグロエコロジー(生態系を守るエコロジーの原則を農業に適用したもの)、環境 保全型農業を軸にする等、展開の仕方は様々である。 日本の風土なり特質等を勘案すると、有機農業の普及は難しいと言わざるを得ないため、 特定の農法を対象に推進していくだけでなく、一定の要素を持つと同時に、一定の要件を満 たすものを「持続可能な農業」として包括し、日本農業全体として環境負荷の低減をはかり、 持続性を回復させていくものとしていくことが重要だと思われる。 持続可能な農業の基本三要素 1. 自然循環:土壌中の微生物が豊富で活性化し、生物を介在して物質が循環 2. 生物多様性:生態系・生物多様性が保全 3. 温室効果ガス排出抑制:炭素貯留効果の発揮をはじめとする温室効果ガス発生を 抑制 ただし、消費者の理解促進と参画も不可欠であり、持続可能な農業の表示がそのカギを握 る。消費者が持続可能な農業の農畜産物であることを容易に見て取れるだけでなく、こうし た農畜産物を購入・消費することによって地球温暖化対策に自らも参画し実践していること が実感できるような仕組みとしていくことが必要となる。(エシカル消費など) 42
© Sweet Potato Company Inc. スマート農業 43
© Sweet Potato Company Inc. アグリテック・フードテック 日本だけではなく世界中に様々な食と農の課題が存在している。 その解決法として、2020年代以降に普及が期待される食と農の最重要テーマが、 フードテック・アグリテック分野である。 フードテック・アグリテックは「フード(食)」や「アグリ(農業)」にITや ロボットなどの「テクノロジー」を掛け合わせた造語。 その背景としては大きく5つあり、①農業の担い手不足を補完する省力化、② 篤農家の経験と勘の継承、③農業経営体の大規模化と担い手の多様化への対応、 ④将来的な食料需給ひっ迫懸念の払拭、⑤SDGs達成、が期待されるからである。 フードテック・アグリテックは、1900年代のトラクターの開発と普及(第一 次)、1960年代の品種改良・化学肥料(第二次)に続いて、農業技術の革新を 起こす第三次農業革命の到来ともいわれている。 44
© Sweet Potato Company Inc. アグリテックの領域 アグリテックの技術・ビジネス領域は次の4つに分類される。 メイン領域 サブ領域 植物工場 次世代ファーム 陸上・先端養殖 ドローン 農業ロボット 収穫ロボット ロボットトラクター 生産プラットフォーム 流通プラットフォーム 説明 農業や水産業の新しい生産システム。 近年はセンサーやAIなどのデジタル技術を活 用し、効率化や省力化を進めている。 農業生産の効率化や省力化に寄与する新しい 農業機械。 ドローンは農薬・肥料散布や生育調査に使用 される。収穫ロボットは画像認識やロボット アームの技術を使って、主に青果物の自動収 穫を実施。ロボットトラクターは無人状態で の自動走行を目指している。 ー クラウド、センサー、ビックデータ、AIなど の技術を活用して、生産プロセスの効率化や 省力化をはかる。 ー オンライン上での消費者や実需者との直接販 売を可能とする取引プラットフォーム。近年 は卸売市場のデジタル化も。 45
© Sweet Potato Company Inc. 大規模化とスマート農業 農業経営の大規模化は、個人の経験と勘による生産ではなく、組織として安定 的な生産が求められるようになる。そのためには、生産に関わる情報を収集し うまく活用することが必要となる。また、人材の管理や育成が必要となる。 そのため、農業経営のサポートツールとして、スマート農業サービスの利用が 必要不可欠となることが予想される。 しかし、あくまでも生産者の頭(記憶・判断)、目(映像)、肌(計測)、体 /手足(労働力)の能力を補完するものに過ぎず、最終的な経営判断は生産者 自らが行う必要がある。 IT機器等を経営に利用しようと思わない理由 費用がかかるため どのような効果が 見込めるかわから ないため 1.2% その他 4.7% 5.5% 5.9% 忙しく時間的な 余裕がないため 40.4% 回答者数 265 人 (100.0%) 42.4% ITに関する知 識が少ないため 経営規模が小さく 必要がないため 46
© Sweet Potato Company Inc. スマート農業のこれから スマート農業には大きく「省力化」「人材育成」の二つの流れがある。 アプローチの仕方は異なっているが、いずれにせよ農業は短期的にも長期的にも 気候・環境の変化に影響されるため人間の関与は常に必要であり、一人当たりの 生産性を高めつつ、品質と収量の安定化・最大化に寄与するようなサービスを経 営者が取捨選択していくものと思われる。 省力化 補完関係 人材育成 農業用ロボット・ドローン 自動運転トラクタ 植物工場 経営の視点をもった ソリューションの導入 IoTセンサー 栽培管理・経営管理 販売支援 スマート農業を実現する 技術から人材育成へのシフト 47
© Sweet Potato Company Inc. 農業界で活躍できる人材像 48
© Sweet Potato Company Inc. 共通で求められること これまで農業関連業界に携わっているいろいろな方と接してきた中で、必要だと思う志向 や性格は以下の3点である。 食・農業に興味がある 素直でポジティブ 自分で考えることができる 生活や地域社会とのかかわりが強く、コントロールできない要素(天候等)の影響が大き い農業関連業界では、特に2つ目と3つ目が大きく影響すると感じている。 49
© Sweet Potato Company Inc. 関わる業種別の求められること 前ページの共通的な項目に加えて、関わる業種別には以下のような志向や性格の方はうま くいっていると感じる。 業種 志向/性格 生産 • 計画や記録をきちんととり、改善を常に行っている。 • 積極的に勉強している。 • 生産物の量・品質と投入資源のバランス感覚がある。 加工 • 決まった作業を繰り返すことが多いので、辛抱強くや りきる力。 • コストコントロールの意識が高い人。 販売 • 多様な人とコミュニケーションできる • 細かい気づかいやサービス精神旺盛。 • 生産現場との適度な距離感がある。 50
© Sweet Potato Company Inc. 最後に • 生産者/農業生産法人として独立するなら、他業界で社会 人経験を積むのが良い。 (食品や農業製品メーカー/他の業界だと営業職) • 農業×○○(自分のスキル)で新しい事業を立ち上げたり、 半農半Xで兼業農家としてやっていくのも一つの道。 51
© Sweet Potato Company Inc. ご清聴ありがとうございました 52