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October 31, 19
スライド概要
日中交流推進機構 日本のスマート農業について
2019/10/31開催
サツマイモの無限の魅力と可能性を日々探求|サツマイモに関するTV・ラジオ出演、雑誌・新聞取材、専門誌寄稿の実績多数|サツマイモの歴史や栽培、品種、加工や商品化まで、サツマイモに関する見識を深め、わかりやすく伝えることに情熱をそそいでいます
日本のスマート農業について 2019/10/31 スマートアグリコンサルタンツ合同会社 執行役員/COO 橋本亜友樹
自己紹介 橋本 亜友樹(はしもと あゆき) 《所属》 スマートアグリコンサルタンツ合同会社 執行役員/COO 日本農業情報システム協会 事務局長 さつまいもカンパニー株式会社 代表取締役 《学歴》 神戸大学大学院自然科学研究科植物育種学専攻修了 グロービス経営大学院経営研究科修了(MBA取得) 《略歴》 大学院卒業後、日本ヒューレット・パッカード株式会社に入社し、消費者金融や クレジットカードの基幹システム統合・構築やWeb会員サービス構築に従事。そ の後、アビームコンサルティング株式会社に転職し、リース会社のシステム統合、 IT化による業務効率化・BPRに従事。 2012年にITと農業の架け橋をテーマに株式会社エーブリッジを設立、2015年8月 にさつまいも事業を独立させる形で、さつまいもカンパニー株式会社設立し、現 在に至る。 2016年から日本農業情報システム協会の理事(現在は事務局長)、2018年にス マートアグリコンサルタンツ合同会社を共同設立し、スマート農業の普及を行っ ている。 © SMART AGRI CONSULTANTS LLC. 2
日本農業の課題とスマート農業の背景 © SMART AGRI CONSULTANTS LLC. 3
日本の農業の現状 – SWOT分析 強み • ジャパンブランドプレゼンス 海外から「安心・安全で高品質」と認知されている。 • メイドバイジャパニーズ 日本人が作ったという事にプレミアム感がある。 弱み • イノベーター不足 補助金に守られており、農業生産者の9割以上が 競争意識(コスト含)がうすく、新しい事に取り組む姿 勢は無い。 • 農業知財不足 農業のノウハウはオープンにする事がリスクだと思わ れている。 機会 • 農林水産物輸出額増加 年々、日本の農林水産物の輸出額は増えており、 チャンスである。 • 農業経営体の法人化 農業生産法人が増加しており、1経営体あたりの 単位面積も大きくなっている。 © SMART AGRI CONSULTANTS LLC. 脅威 • 温暖化・天候不順 これまでと同じような栽培方法では品質が保てない、 栽培適地が変化している。収量や品質のコントロー ルが難しくなる。 • 技術継承 「農業の匠の技術」は農業生産者の高齢化、後継 者不足により失われる危機にある。 4
スマート農業とは 農林水産省の定義によると、スマート農業とは「ロボット技術やICTを活用して超省 力・高品質生産を実現する新たな農業」とされている。 ロボットと聞くと、人間を模した人型ロボットを想像する かもしれないが、ここではトラクターの自動運転やドロー ンによる農薬散布等から、工場などで動いている産業ロ ボットの制御に用いられる技術までが含まれている。 ICTの中には、センサーのIoT(=Internet of Things)化や、 AI(人工知能)を使ったデータ解析といった先端技術だけ ではなく、インターネットを通じたデータ連携やスマート フォンによる操作など、すでに日常生活においては一般的 になった技術も含まれている。 © SMART AGRI CONSULTANTS LLC. 5
スマート農業が目指す将来像 1 超省力・大規模生産を実現 GPS自動走行システム等の導入による農業機械の夜間走行・複数走行・自動走 行等で、作業能力の限界を打破 2 作物の能力を最大限に発揮 センシング技術や過去のデータに基づくきめ細やかな栽培により(精密農業)、 作物のポテンシャルを最大限に引き出し、多収・高品質を実現 3 きつい作業、危険な作業から解放 収穫物の積み下ろしなどの重労働をアシストスーツで軽労化するほか、除草ロ ボットなどにより作業を自動化 4 誰もが取り組みやすい農業を実現 農業機械のアシスト装置により経験の浅いオペレーターでも高精度の作業が可 能となるほか、ノウハウをデータ化することで若者等が農家に続々とトライ 5 消費者・実需者に安心と信頼を提供 クラウドシステムにより、生産の詳しい情報を実需者や消費者にダイレクト につなげ、安心の信頼を届ける © SMART AGRI CONSULTANTS LLC. ※農業分野におけるデータの利活用より(平成28年12月9日 内閣官房) 6
農業の生産現場におけるIT利活用 生産現場における課題とそれに対して現在どのようなITシステムが提供されていて、どの ような効果が期待されているかをまとめます。 課題 農作業の効率化 提供システム 効果 農作業・経営管理システム 最適な経営判断が 可能 作付や作業の計画と実績の管理 生産工程の 見える化 コスト・経営分析(シミュレーション) 人材育成 人材育成システム 栽培履歴の記録・工程管理(GAP) 農作物の 信頼性向上 人材の育成・ 能力の向上 篤農家の技の形式化 高品質・高収量の 安定化 生産現場での疑問・情報の共有化 収量・品質の 向上・安定化 生産・環境管理システム 収量や品質データの見える化 環境モニタリングや制御 施肥量や収穫時期の調整 © SMART AGRI CONSULTANTS LLC. ※農業分野における IT利活用ガイドブックより転載 7
サプライチェーンからみたデータ活用 次に農産物のサプライチェーンにおいて、各種データを活用したどのようなシステムが期 待されているかを示します。 圃場センサー 匠の技DB 経営アドバイス 環境をモニタリングし、遠隔 地での確認、アラート通知 篤農家の作業を動画や数字で データ化し、マニュアルに 売上や費用から経営状態を診 断し、アドバイスを行う 育種 種苗調達 土づくり・ 播種・定植 育成 収穫 出荷 流通 販売 消費 自動運転ロボット 病害虫予測 収穫予測 無人トラクタ・ドローンによ る作業の自動化 農産物の状態チェックし、被 害が拡大するまでにアラート 収穫のタイミングや収穫量の 把握 © SMART AGRI CONSULTANTS LLC. ※農業データ活用ガイドブックから転載 8
農業におけるAIやIOTの活用 1. ロボット化・自動化された超省力農業 • 農機の自動走行やロボット・ドローンによる播種や収穫を自動化する • 出荷時の自動選別やロボットによるパッキング作業など人手に頼っていた作業を効率化する • 摘果や剪定などの管理作業をロボット化する 2. データを駆使した戦略的な生産 • センサーなどから得られたビッグデータを解析し、圃場ごとの最適な栽培管理方法の提示する • 気象データ等のビッグデータを基に、気象や生育を予測し、事前にリスクに対応できるように する • 家畜の個体状況を把握し、肥育の最適化や繁殖の効率化を実現する • バイオインフォマティクスの解析や形式評価の効率化により育種の短期化・効率化を図る 3. 匠の技、ノウハウの形式知化 • 画像解析を使って病害虫の病兆等を早期に発見し、適切な対処方法を提示する • 篤農家のもつ技術や判断を記録・データ化し、新規就農者が利用できる仕組みにする 4. サプライチェーンの連携・効率化の促進 • 市場動向や製造業や外食産業などの実需者、消費者のニーズをタイムリーに把握し、ニーズに 対応した生産を実現する • 農機の稼働状況や稼働予測に基づく農機シェアリングや、トラック輸送を効率化する © SMART AGRI CONSULTANTS LLC. ※農業分野におけるデータの利活用から転載 9
スマート農業の現状 © SMART AGRI CONSULTANTS LLC. 10
スマート農業をどう活用するか スマート農業を導入する生産者には、スマート農業サービスを活用して効率化するだけ でなく、営農のリスクを最低限にし最大限の収入を得ること、同時に自社ならではのノ ウハウを確立し、ブランド化や事業承継に役立てることが求められる。 現状は、生産技術、経営、ITの3つの視点を持った生産者はまだ少ない。 生産 技術 © SMART AGRI CONSULTANTS LLC. 経営 I T 11
大規模化とスマート農業 大規模化の進展に伴い、個人の経験と勘による生産が困難になり、生産に関わる情報を 収集し活用することができ、また、組織的な人材の管理や育成ができる、農業経営者が 増えていく必要がある。 スマート農業サービスは農業経営のサポートツールとして必要となるが、あくまでも生 産者の頭(記憶・判断)、目(映像)、肌(計測)、体/手足(労働力)の能力を補完 するものに過ぎない。 IT機器等を経営に利用 しようと思わない理由 費用がかかるため 1.2% どのような効果が 見込めるかわから ないため 農業生産法人数の経緯 その他 4.7% 年々大規模化 5.5% 5.9% 忙しく時間的な 余裕がないため 40.4% 回答者数 42.4% 265 人 (100.0%) ITに関する知 識が少ないため 経営規模が小さく 必要がないため © SMART AGRI CONSULTANTS LLC. 12
ノウハウの形式知化の課題 栽培方法などは地域差が高く、ある地域で有効な栽培方法が他の地域でも有効とは限ら ず、様々な地域を対象とした標準モデルは形にならない可能性が高い。 そのため、農業生産法人や地域農協において取組んだほうが有用なモデルが作れる可能 性が高いと思われる。 日本標準モデル 県標準モデル 農業生産法人モデル 地域標準モデル ・広いエリアのデータを混在した標 ・クオリティコントロールによる地域 準モデルは結局どこにもあてはま ブランドまたは企業ブランドの確 らないケースになるリスクがある。 立につながる。 ・知的財産化し、農業生産者の新た な収入源となる。 © SMART AGRI CONSULTANTS LLC. 13
日本のスマート農業市場 © SMART AGRI CONSULTANTS LLC. 14
スマート農業関連サービスの分類 すでに多くのスマート農業関連サービスが提供されている。 代表的なサービスを次の表にまとめる。 分類 内容 主な企業/サービス 栽培支援 主にスマートフォンを使った栽培管理、作 業管理などを行うサービス agri-note、Akisai、みどりノート、 農場物語等 販売支援 主に小売(EC)やマッチングサービスと いったプラトフォームを提供する 食べチョク、ポケットマルシェ、 オイシックス等 経営支援 販売管理や会計管理サービスや、人材マッ チングサービスなど Agrion、会計freee、人事労務 freee、あぐりナビ等 精密農業 センサーによる環境制御、水位計測、GPS による自動トラクタ運転など ㈱セラク、㈱クボタ、㈱笑農和、 ㈱ベジタリア等 農業用ドローン 空中から光学的センサーによる生育や土壌 や水の状態把握、農薬散布などを行う ㈱オプティム、㈱ナイルワークス ドローン・ジャパン㈱等 農業用ロボット 収穫や除草などの作業を行うロボットを 使って自動的に行う Inaho㈱、MY DONKEY等 その他 アシストスーツや鳥獣害対策、畜産関連の サービスが提供されている Eco-Pork、㈱ファームノート等 © SMART AGRI CONSULTANTS LLC. 15
スマート農業市場の今後 株式会社矢野経済研究所によると「スマート農業」の国内市場規模は2017年度の約129 億円から、2018年度は約147億円、2024年には約387億円まで拡大。 栽培管理から精密農業、ドローン、ロボットへ、販売支援、経営支援といった経営改善 ソリューションの市場規模が拡大することが今後の流れであるとみられる。 © SMART AGRI CONSULTANTS LLC. 16
コンサルタントの必要性 (農業に限らず)現場とITサービスの間にはギャップがある場合が多く、今後、スマー ト農業の普及にあたり、そのギャップを埋めるコンサルタントとして、農業経営に寄 与できるITサービスの提案や導入支援、事業アドバイスを行える人材の育成も必要。 コンサルタント (通訳者・アドバイザー) 生産者 © SMART AGRI CONSULTANTS LLC. ITサービス提供者 17
スマート農業の実際の取組み紹介 © SMART AGRI CONSULTANTS LLC. 18
スマート農業の主な取組み 前述の通り多くの取組みがあるが、特に生産現場で導入が進んでいる3つの取組みを紹 介する。 スマートフォン、タブレットを 活用した作業・生育管理 各種センサを活用した 施設制御 農業機械の精密制御・ 自動運転 © SMART AGRI CONSULTANTS LLC. 19
スマートフォン、タブレットを活用した作業・生育管理 スマートフォン、タブレット等による作業実績・生育状況管理及びデータの集積・共有 化を実現する データ蓄積 (クラウド環境) 《効果・メリット》 ・現場状況の即時把握、従業員による情報共有により、リスク回避、従業員教育に活用 ・農作業ノウハウの蓄積、従業員のコスト意識の向上 《課題》 ・農業生産者向けの操作性(ユーザーインターフェイス)の確立 ・モバイル機器の月額使用料、システム利用料によるコスト増 © SMART AGRI CONSULTANTS LLC. 20
各種センサを活用した施設制御 センサー等を活用し、環境情報(気温、湿度等)を遠隔監視・自動制御。同時にデータ 収集・分析を行い、生産者の判断をサポートする。 環境 センシング データ蓄積 (クラウド環境) 天窓自動 開閉など 《効果・メリット》 ・暗黙知や勘・経験の客観化による栽培管理の改善、リスク回避 ・後継者等への技術継承 ・収穫量増や病害虫の発生抑制 《課題》 ・環境制御装置の開発、費用対効果の改善 ・データ化された暗黙知の取扱い(提供者の権利保護) ・生育データの標準モデル化、データ解析が必要 © SMART AGRI CONSULTANTS LLC. 21
実例紹介 水管理 © SMART AGRI CONSULTANTS LLC. 環境モニタ 22
農業機械の精密制御・自動運転 衛星・GPS技術等を活用し、ほ場情報(施肥、土壌、成熟度等)のマップ化による精密で無 駄のない農作業を実現する。収穫や人のサポートを自律的に行い省力化を実現する。 データ蓄積 (クラウド環境) 《効果・メリット》 ・労働力不足の解消 ・作業の効率化、肥料コストの抑制、作物の品質の均質化及び高付加価値化 《課題》 ・導入機器によるコスト増 © SMART AGRI CONSULTANTS LLC. 23
実例紹介 自動運転 © SMART AGRI CONSULTANTS LLC. ドローン 24
実例紹介 ロボット © SMART AGRI CONSULTANTS LLC. 25
スマート農業のこれから これまで説明してきたとおり、日本のスマート農業には大きく「省力化」「人材育成」 の二つの流れがある。 アプローチの仕方は異なっているが、いずれにせよ農業は短期的にも長期的にも気候・ 環境の変化に影響されるため人の関与がなくなることはなく、一人当たりの生産性を高 めつつ、品質と収量の安定化・最大化に寄与するサービスが残っていくであろう。 省力化 補完関係 人材育成 © SMART AGRI CONSULTANTS LLC. 農業用ロボット・ドローン 自動運転トラクタ 植物工場 経営の視点をもった ソリューションの導入 IoTセンサー 栽培管理・経営管理 販売支援 スマート農業を実現する 技術から人材育成へのシフト 26