ゲームデザイン概論 「第9章」

>100 Views

April 21, 25

スライド概要

profile-image

Game Jammer working at Yasuda Women's University since April 2025. IGDA Japan board member, HEVGA individual member. 2025年より安田女子大学に移りました.

シェア

またはPlayer版

埋め込む »CMSなどでJSが使えない場合

関連スライド

各ページのテキスト
1.

Introduction to Game Design 9章 ゲームはプレイヤーのために作られる 講師: 山根信二 Creative Commons Attribution 4.0 International license Creative Commons Attribution 4.0 International license .

2.

本教材の内容 • Ch. 9: The Game is Made for a Player • 第9章:ゲームはプレイヤーのために作られる • 前回の「ゲーム開発は反復である」までは ゲームのつくり方を学んだが、本章では誰に 向けてゲームをつくるのかを明らかにする 1

3.

プレイヤーのためのゲーム • ゲームデザインで何よりも重要なのはリスニング • Ch.9.1 プレイヤー・オーディエンスの理解が必要 • Ch.9.2 自分を投影することが重要 • 自分を投影できない,まったく知らない相手は? 2

4.

Ch.9.3 デモグラフィックス • 消費者区分(マーケットセグメンツ) • 乳児、幼児、児童... • 男性、女性... • 男性・女性が好むゲームとは? (注) 教科書にでてくるのは初版当時の北米での調査です. 3

5.

性差にもとづく一般的な傾向 • 9.4.1 ゲームに男性が期待する5つのこと • Mastery(習得、やりこみ), Competition (競争), Destruction (破壊), Spatial Puzzles(立体パズル), Trial and Error(試行錯誤) • 9.4.2 ゲームに女性が期待する5つのこと • Emotion(感情), Real World(現実世界), Nurturing(育成,お世 話), Dialog and Verbal Puzzles (対話と言葉のパズル), Learning by Example(実例から学ぶ) • 実際の開発では? 4

6.

性差にもとづく一般的な傾向(続) • Hasbro社のソーシャルゲーム開発で起きたこと (p.169-170) • [仮説] ソーシャルだから女子にも遊んでもらおう! • [検証] 公園で遊ぶ子供たちを観察(諍いやルールに注目) • [考察] 自分たちのゲームは遊んでもらえないだろう…つまりこの ゲームの本質は,ソーシャルよりも競争だったんだよ! (これは欧米の事例だが,東アジアや東南アジアではどうか?) • ゲーム開発の昔と現在 • 初期のコンピュータとビデオゲームの開発者は,自分(=男性)に 受けるものしか考えていなかった(p.171) • 現代では,知らない人にもゲームを届けられるようになり,プレイ ヤーの視点で何が楽しいのかを考えることが重要 • かつてディズニークエストでは家族ごとに(親子・男女) 分析 5

7.

レンズ#19: プレイヤーのレンズを てに いれた! • このレンズを使うには、ゲームのことを考えるの をやめて、プレイヤーのことを考える。 • プレイヤーは何を好むのか? • なにを好まないのか?なぜ? • プレイヤーはゲームに何を期待しているのか? • 自分がプレイヤーの立場だったら何を見たいか? • 私のゲームはどこが好まれたり嫌われるのか? 6

8.

Ch. 9.5 サイコグラフィックス: ゲーマーの好みについての研究 •前節で注目した年齢や性別は,プレイヤーの 指標の一つにすぎない •さらにライフスタイルの好みにまで踏み込む のがサイコグラフィクス •カジュアルゲーマー,ハードコアゲーマー... 7

9.

ゲームの楽しみ方は分類できる •ゲームの楽しさは人によって異なる •同じゲームでも異なる楽しみ方がある •ルブランのゲームの快楽の分類 •リチャード・バートルのプレイヤーの4分類 •オンラインゲームのさまざまな遊び方 8

10.

Ch.9.5.1 分類 LeBlancによるゲームの楽しさの プレイヤーによってゲームの楽しみ方は異なる • Sensation (知覚) :知覚的な喜びを与えるゲーム • Fantasy(ファンタジー):仮想世界として楽しめるゲーム • Narrative(物語) :物語として楽しめるゲーム • Challenge(挑戦) :障害を乗り越える楽しみを味わえるゲーム • Fellowship(仲間意識):ソーシャルフレームワークとしてのゲーム • Discovery(発見) :見知らぬ領域を探検する楽しみを味わえるゲーム • Expression(表現) :自⼰発見としてのゲーム • Submission(没入) :現実を離れて新しいルールにしたがうゲーム 9

11.

バートルによるオンラインゲームプ レイヤーの4分類(1) • Achievers(達成者): ゲームのゴールを目指す人 達・挑戦者 • Explorers(探検者): ゲームの中を探索する人 達・知識や法則を発見しまとめる人達 • Socialisers(社交家): 他人と交流する人達 • Killers(殺人者): 他人と競争し優越しようとする 人達。 攻撃するだけでなく貸しを作りたがる人 も含む 10

12.

バートルによるオンラインゲームプレイヤーの 4分類(2) • アチーバーは世界に働きかけ,エクスプローラーは世界に関心があり, • ソーシャライザーはプレイヤーに興味あり,キラーはプレイヤーへ働きかける (図9-4) 11

13.

Ch. 9.5.3 喜びを、さらにもっと! • 快楽は単純ではない • これまでの分類では複雑な人間の欲望を説明しき れない • これまでの快楽の分類では,「破壊」や「癒し」 (性差にもとづく好みであげられていた)を見逃 すかも • 実際には快楽は複雑であり文脈に依存している: 12

14.

文脈に依存する快楽の例 • 期待: 何か楽しいことがあると知っていると、それを待っているだけで楽しくなる • 達成: 多くのゲームは達成の快楽を利用している.全てのドットを食べる、あるレベルをクリアする、 • 他人の不幸は楽しい: 突然誰かに罰がくだるとこの感情が発生する.対戦ゲームの重要な要素. • 贈り物: 予想外の贈り物であなたは他の人を幸せにできる.それによってあなたも幸せになるというユ ニークな快楽. • ユーモア: 高度で難解だが、爆笑をさそうことができる • 可能性: たくさんの選択肢がありどれをとってもよい、という状況で生じる快楽.しばしば買い物中や食 べ放題の店で起こる. • 達成の自慢: 達成したあとになっても長く保持できる快楽.子供や孫の自慢という形でもよく見られる. • 驚き: 驚いたことに、脳は驚きの感情を好む. • スリル: ジェットコースターデザイナは「恐怖から死を引いたら娯楽になる」と言っている.自分の安全 が確保されているならば、恐怖体験は快楽になる. • 逆境に打ち勝つ: 困難だとわかっていたことを成し遂げたとき起こる快楽.勝利の雄叫び. • 奇跡: 畏れ、仰天したときのどうしようもない感情 13

15.

レンズ#20: 快楽(喜び)のレンズ をてに いれた! • このレンズを使うには、あなたのゲームがどんな 種類の楽しさを提供でき、あるいは提供できない かを考える。 • (略) 14

16.

参考文献 補足 • 174ページ脚注のゲームデザイン論は日本語訳が公開されている: ロビン・ハニキ、マーク・ルブラン、ロバート・ズベック「MDA: ゲームデザインとゲームリサーチへの形式的アプローチ」松永伸司訳、 9bit、2022年 https://9bit.99ing.net/Entry/110/ , 「コスティキャンのゲーム論」 http://www.aa.cyberhome.ne.jp/~babahide/bblibrary/library/desig n_j.html • バートルの著書は翻訳されていないが、4類型は国内でも紹介されて きた.オンラインゲーム研究ではさらに詳細な分類も提案されている. • 脳の快楽中枢の参考文献は日本語訳されていないが,同じ著者による 解説記事がクリンゲルバック他「快楽の神経回路」(日経サイエンス 2013年1月号) http://www.nikkei-science.com/201301_054.html 15

17.

本章のまとめ • かつてはコンピュータ開発者がゲームを開発して,自分が遊 ぶためのゲームを作っていた.やがて現代では見ず知らずの 人にゲームを遊んでもらうのが当たり前になった • 現代のゲームデザイナは,自分と何の共通のない人でも遊べ るゲームをつくる • そのために社会統計調査を入手したり,ターゲットユーザを 観察する • ユーザの楽しみ方も複雑多様なので,多くのプレイヤーにど んな種類の楽しさを届けられるのか自問することが大事 16