ゲームデザイン概論 「第15章」

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April 21, 25

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Game Jammer working at Yasuda Women's University since April 2025. IGDA Japan board member, HEVGA individual member. 2025年より安田女子大学に移りました.

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各ページのテキスト
1.

Introduction to Game Design 第15章 Interface インタフェース 講師: 山根信二 Creative Commons Attribution 4.0 International license Creative Commons Attribution 4.0 International license .

2.

今回の内容 • Ch.15: Players play games through an interface. プレイヤーは「インタフェース」を通じてゲームをプ レイする • 本章と次の章は情報デザイン,実験心理学 • 15章はUI,16章はUX 1

3.

Ch.15 Interface インタフェース • この章では,ゲームデザインで知っておくべきイ ンタフェースの知識を学びます • ゲーム以外にも,コンピュータを用いてユーザに 働きかけるシステムのデザイン全般に使えます • 著者も訳者もこの分野の専門家ではないので,正 誤表を参照する必要がある 2

4.

インタフェースは何のために存在するのか • ゲームとプレイヤーとのやりとりがあれば、その境界には必 ずインタフェースが存在する.でも何のために? • [復習: ] ゲームの目的はプレイヤーの心の中にエクスペリエ ンス(体験)をつくりだすこと,そして • ゲームのインタフェースの目的は「体験を操作している」と いうプレイヤーの感覚をつくりだすこと (make players feel in control of their experience) • 「かっこいいね」「クールだね」という見栄えはゲームのイ ンタフェースの目的ではない 3

5.

レンズ#59: コントロールのレンズ を て にいれた! • このレンズは単なるインタフェースのテストにとどまらない • 没頭するには意味のあるコントロールが不可欠 • あなたのゲームのインタフェースは操作している,操る感覚 をつくりだしているか?マスターするのは簡単か?難しい か? • ユーザは力強さを感じられるか?(feeling powerful) • コントロールしている感覚はあるか?(feeling in control) 4

6.

インタフェースって何のこと? • ゲームコントローラー? • ディスプレイ画面? • ゲーム内キャラクタの操作システム? • ゲームがプレイヤーに情報を伝える経路? • どれもインタフェースと呼ばれている • まず情報科学の観点から整理します; 5

7.

情報の流れを分解する(1) • ユーザとゲーム世界の間にあるものはすべて インタフェース (図15-3) • ゲーム世界の要素と物理的な入出力が直接つ ながっているシンプルな例 (図15-4 物理的入 出力) 6

8.

情報の流れを分解する(2) • 『パックマン』は物理インタフェース(十字レバー)と ゲーム世界の平面移動が一致している • だが,『パックマン』のスコア表示はゲーム世界にないも のが見えている • さらに,3Dゲームなどではそもそもインタフェースと ゲーム世界は直接対応していない • つまり、プレイヤーは物理インタフェースではないもう一 つのインタフェースを通して操作している • これをバーチャルなインタフェースと呼ぶ (図15-5) 7

9.

情報の流れを分解する(3) • あらゆるゲームインタフェースは「マッピング」 をデザインしている (p.342) • ただデータを流すでなく,変化させている • バーチャルなインタフェースとゲーム世界とのデー タのマッピングを行っている • (脚注の「ダイエジェティックなインタフェース」 は著者の誤解で,正しいゲームサウンド用語は 「ノンダイエジェティック」です.) • バーチャルインタフェース (図15-5) を6つの矢印 に分解する→ 8

10.

バーチャルなインタフェースに含まれる6つ の流れ • 1. Physical Input World: 物理的入力からゲーム世界へ • 2. World Physical Output: ゲーム世界から物理的出力へ • 3. Physical Input Virtual Interface: 物理的入力からバーチャルインタフェースへ 「クリックしたら何が起こ る?」 • 4. Virtual Interface World: バーチャルインタフェースからゲーム世界へ 「ゲーム世界を操作する」 • 5. World Virtual Interface: ゲーム世界からバーチャルインタフェースへ • 6. Virtual Interface Physical Output: 9

11.

レンズ#60: 物理インターフェースのレンズ を て にいれた! • 従来のインタフェースをそのままコピーするのは悪しき罠 • そのインタフェースでいいのかを自分自身に問い続ける • 「おもちゃのレンズ」で考えてみる • ダンスダンスレボリューション(マット),ビートマニ ア・ギターヒーロー,Wiimotoなど,新しいインタフェー スで古いゲームメカニクスやゲームプレイも生まれかわる 10

12.

レンズ#61: バーチャルインタフェースのレ ンズを て にいれた! • バーチャルインタフェースがプレイヤー体験を強化する かを自問する • ゲーム世界を見るだけでは伝わらない,プレイヤーが受 け取るべき情報は何か? • 直接やりとりをするよりもバーチャルインタフェース (たとえばポップアップメニューなど)を使う方が簡単 なゲーム世界の要素はあるか? • どのバーチャルインタフェースが物理的インタフェース と組み合わせられるか?たとえばポップアップメニュー はゲームパッドコントローラーにはマッチしない 11

13.

レンズ#62: 透過性のレンズ を て にいれた! • 「問題はあなたのインタフェースが素晴らしいか否か ではない.それを削れるか否かだ」 エドワード・タフティ教授(参考文献) • インタフェースはプレイヤーにとってシンプルで,考 えずに操作できるか? • インタフェースは直観的か?どの程度? • プレイヤーは没入感を得られるか? • (略) 12

14.

インタラクションのループ • プレイヤーとゲームとの間には「情報のループ」が生まれる • ループの中で、プレイヤーに戻ってくる情報のことを「フィー ドバック」と呼ぶ • フィードバックがあることでプレイヤーはゲームでの出来事を 理解し楽しむことができる • よいフィードバックは製品デザインにも見られる: • 例: バスケットボールのフープについているネット. ゲームプレイには何の影響もないが、視覚聴覚でプレイを楽しませる • 例: Sniffer (日本だとクイックルワイパー) 便利なだけでなく、清掃作業を楽しくするフィードバックがある 13

15.

レンズ#63: フィードバックのレンズ を て にいれた! • プレイヤーにはさまざまなフィードバックがある: 判定,報酬,指示,励まし,挑戦. • フィードバックループが狙い通りの体験をつくっているのか を自問する: • この瞬間にプレイヤーが知る必要があること,知りたいこと は何か? • この瞬間でのプレイヤーのゴールは何か?ゴールに向かわせ るためにどんなフィードバックが役立つか? • (略) 14

16.

レンズ#64: ジューシーさのレンズ を てにいれた! • 掃除は退屈 クイックルワイパーを使うと楽しい! これを「ジューシーなシステム」と命名 • 目的は二の次になってインタラクション自体が楽しくなる, ゲームデザインで見落とされがちな要素 • このインタフェースはプレイヤーにつながったフィードバッ クを返しているか? • プレイヤーのアクションによって起こる二次アクションはあ るか? 15

17.

タッチインタフェースから学べること • ここでスマホやタブレットのタッチインタフェースの話題 • 本章では過去のゲームインタフェースを学ぶのではなく,将来実用化さ れるインタフェース・デバイスにも使える「普遍的な原理」を学ぶ. • ここでは,新しいインタフェースが急速に普及した現象として,タッチ インタフェースをとりあげる. • なぜタッチインタフェースはわかりやすかったのか? • それまでのインタフェースは、物理的な道具を通してコンピュー タとやりとりしていた (キーボード、マウス、ボタン、パンチカード) • 「道具を使わない原始人に退化してるのでは?」 • 「原始的なインタフェースはわかりやすいのか?」 • ゲームデザインでもこの視点は役立つ 16

18.

レンズ#65: 原始のレンズを てにいれ た! • 動作やインタフェースには,動物に本能的にそなわったもの がある • 果物をつかむ,脅威となる敵と戦う,見知らぬ世界で出口を 探す,姫を救う... • 原始的な動作を利用するには,以下の問いを立てる: • ゲームで動物でもプレイできるような原始的な部分はどこ か?それはなぜか? • このゲームでもっと原始的にできるのはどこか? 17

19.

情報チャンネル分析 先のインタフェースモデルをもとに,情報の流れる経路(チャ ンネル)を分析する(誤訳に注意!) • Step 1: List and Prioritize Information 情報をすべて書き出し、優先順位をつける • Step 2: List Channels 情報の経路(チャンネル)を書き出す • Step 3: Map Information to Channels どの情報をどの経路に流すのかを決める • Step 4: Review Use of Dimensions 情報の経路に複数の次元を持たせる 18

20.

レンズ#66: 情報チャンネルと次元のレンズ を て にいれた! • ゲーム情報をチャンネルや次元にマッピングするのは, ゲームインタフェースのデザインの核心 • プレイヤーがどこかへ・どこかから旅するにはどのよ うなデータが必要か • 重要なデータは? • データにどのチャンネルが適しているか? • チャンネルによってどれくらいの次元が必要か?画面 の数は?文字は? 19

21.

インタフェースの「モード」とは • ゲーム中にインタフェースの意味を変える「モードの 切り替え」 • 同じゲームコントローラー操作をしているように見えても、 プレイヤーはゲーム内で別の行動をしている時 • 6つの情報の流れは変わらないが、その対応を変えて いる • インタフェースのマッピングはゲーム中に変えること ができる • だが、プレイヤーを混乱させる危険性をともなう 20

22.

モードのテクニック • モードを変更したことに気づかない危険性は,避けること ができる • モードのヒント1:モードの数をできるだけ減らせ Use as Few Modes as Possible • モードのヒント2:モードの重複を避けろ Avoid Overlapping Modes • モードのヒント3:できるだけ各モードの見た目を変えろ Make Different Modes Look as Different as Possible • デジタルゲームで各モードを違って見えるようにする方法: FPS, アーケードゲーム,『ファイナルファンタジー』の例 21

23.

レンズ#67: 情報モードのレンズ を てにいれた! • 複雑なインタフェースには複数のモードが必要 • プレイヤーを混乱させないためには • 一瞬武器が大きくなる,戦闘モードで突然チーム状 態ウィンドウが出てくる... • (略) 22

24.

優れたインタフェースのためのヒント • Interface Tip #1: Steal 盗め • Interface Tip #2: Customize カスタマイズせよ • Interface Tip #3: Design around Your Physical Interface 物理的インタフェースに合わせろ • Interface Tip #4: Theme Your Interface インタフェースにテーマを与えろ • Interface Tip #5: Sound Maps to Touch 感触に音をつけろ • Interface Tip #6: Balance Options and Simplicity with Layers 階層構造で詳細設定とシンプルさのバランスをとれ • Interface Tip #7: Use Metaphors メタファーを使え • Interface Tip #8: If It Looks Different, It Should Act Different 見た目が違うなら挙動も変えるべきだ • Interface Tip #9: Test, Test, Test! テスト、テスト、テスト! • Interface Tip #10: Break the Rules to Help Your Player プレイヤーを助けるためならルールも破れ 23

25.

参考文献 「インタフェースデザインはそれだけで本が何冊も書ける 分野」,参考文献も大作ぞろい • ノーマン『誰のためのデザイン? 増補・改訂版 ―認 知科学者のデザイン原論』 • Swink. Game Feel. 邦訳なし https://en.wikipedia.org/wiki/Game_feel • エドワード・タフティ(Edward Tufte). The Visual Display of Quantitative Information. 邦訳なし 24

26.

本章のまとめ • 本章にはUIについて多くのレンズが登場した • 物理インタフェースとバーチャルインタフェース • データのマッピング • 情報チャンネル • インタフェースのモード切り替え • UIデザインは,日用品から画面設計まで,あらゆる「ユー ザー」とあらゆる「もの」との関係に共通する原理にもとづ いている • 本章ではそれらの原理を使ってゲームコントローラーやゲーム画面 を説明しているが,本章のレンズはゲームに限定されないUIデザイ ンの原理(原書第3版ではさらにレンズ#67.5が追加された.) • 「インタフェースデザインはそれだけで本が何冊も書ける分野」な ので著者も訳者も苦戦.正誤表を確認する必要あり 25