ゲームデザイン概論 「第28章」

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April 21, 25

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Game Jammer working at Yasuda Women's University since April 2025. IGDA Japan board member, HEVGA individual member. 2025年より安田女子大学に移りました.

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各ページのテキスト
1.

Introduction to Game Design 第28章 テクノロジー 講師: 山根信二 Creative Commons Attribution 4.0 International license Creative Commons Attribution 4.0 International license .

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本教材の内容 • テクノロジー(技術)をゲームの要素として考える • 技術はゲームにとって土台か,飾りか • 新しい技術にどう取り組むか 1

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§28.1 ついに、技術の話 • ついにテクノロジーまでたどりついた! • ゲームの4要素の中でもっとも変動する要素 • ゲームデザイナにとってテクノロジーとは何か • ゲームの媒体(the very medium of our game) • ゲームをなりたたせる物理的なもの(the physical objects that make it possible) • ゲームデザイナにって、ゲームをなりたたせる ものは紙やサイコロでもテクノロジー (p.608) 2

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テクノロジーのこわい話 • テクノロジーで何ができるかに夢中になって, ゲームをつくるという目的を忘れてはならない • エンジニアは技術を愛するが... • エンジニア職を無くしたディズニー(スタジオジブ リ訳『The Illusion of Life』) • 体験をつくりだすための技術であることを忘れ てはならない 3

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§28.2 基盤技術 VS. 装飾技術 Foundational vs. Decorational • 土台か、それとも飾りか? • テクノロジーの具体的な使われ方: カートゥーン、ボード ゲーム、家庭用ゲーム機、PCゲーム… • ラグドール物理 • 同じアルゴリズムでも異なるデザイン • Icoのゲームデザイン • 飾りから新しい体験の土台へ • 「これを基盤技術としてゲームに使えないだろ うか?」と考えるクセをつける 4

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新しい技術が実用化されるまで: • §28.3 タッチ革命から考える • 新しいテクノロジーに触れる→ まだ価値を認識できない • 新しいテクノロジーによる新しいデザイン → その価値に 気がつく • §28.4 ハイプサイクルに学ぶ • テクノロジーに熱狂しない方法は,熱狂のパターンを理 解すること • 「ハイプサイクル」で、新しいテクノロジーが持つ可能 性を位置づける 5

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The Hype Cycle / ハイプサイクル 「ハイプサイクル」(図28-4) 新しいテクノロジーはいつ社会に普及するのか? 1. 黎明期: Technology Trigger 技術の引き金、ブレイ クスルー 2. 過剰な期待のピーク: Peak of Inflated Expectations 3. 幻滅のくぼ地: Trough of Disillusionment 4. 啓蒙の坂: Slope of Enlightenment 5. 生産性の安定期: Plateau of Productivity 6

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ゲームデザイナがハイプサイクルを 知るべき理由 (p.615) • 実用化前の技術への「免疫」をつける • チームの危険な決定を「予防」できる • 注目され「資金の獲得」につながるかも • 新しい技術はまずゲームで社会にひろまる • ゲーム業界には,「技術の流行に乗って大金持 ちになりたい」ために出資する人がいる 7

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§28.5 イノベーターのジレンマ • ハイプサイクルとは異なる新技術のパターン • 『イノベーターのジレンマ』現象 • 新しい技術が突如「もういっぱい」になる • イノベーションを起こしたイノベーター企業がいきなり 失速する • あらゆる顧客が,高機能で安価な破壊的技術 (disruptive technology) に移る • デジタルゲーム業界では何度も起こってきた(p.617) • 昔から知られていたけど使えないと思われていた技術 • 任天堂のWiiリモコン(Wiimote)もその一例 • 基盤技術となるゲームが必要 8

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未来技術の予想が外れる理由 • §28.6 分岐の法則 • §28.7 特異点(シンギュラリティ) • テクノロジーの進化は一本化されず,分岐する • ポケットナイフは数少ない例外 • シンギュラリティ(特異点)理論 • 技術革新の加速により、未来予想はある時点から飛躍的に 困難になる • 新しいテクノロジーにより新たなゲームの可能性もひろが る • 我々の生きている間に実現しそうな特異点がいくつか提唱 されている • バーチャルワールド(仮想世界)、超AI 9

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レンズ#104: テクノロジーのレンズを てにいれた! 適切な技術を適切な方法で使うために、以下の質 問を自分にしてみよう: • 自分が創り出したい体験をプレイヤーに届けるうえで、どのよう なテクノロジーが役に立つか? • わたしはこれらのテクノロジーを、基盤技術または装飾技術で使 用しているだろうか? • もし基盤技術として使用していない場合、そもそも使用する必要 があるのだろうか? • このテクノロジーはわたしが考えるほどクールなものだろうか? • かわりに検討すべき "破壊的技術" はあるか? 10

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§28.8 水晶玉をのぞきこむ • ゲームデザイナは未来を見ているのか? • デザイナは誰も予測しなかったトレンドや開発に備 えている • 技術マニアになる必要はない.ゲームデザイナは未 来を予測することで、世界の見方を鍛えることがで きる • ヒント: • あの技術の2年後,4年後,8年後は? • 次世代のゲーム機は? ダウンロード販売は? ジャンルは? • 未来を予測するときは,必ず過去の傾向も分析する ことになり,積み上げていくことができる 11

13.

レンズ#105: 水晶玉のレンズを てに いれた! ゲームにまつわる技術の未来について知りたい時は、 以下の質問について自問自答し、可能な限り具体的な 回答をしてみよう: • 「」はこれから2年後にはどうなっているか? その理由は? • 「」はこれから4年後にはどうなっているか? その理由は? • 「」はこれから8年後にはどうなっているか? その理由は? 12

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技術に詳しいことよりも大事なこと • 新しい技術に「追いつくこと」は重要ではない • ゲーム開発者が新しい世界をつくることを人々は期待して いる • 世の中を変えるような技術について,関心を持たないゲー ム開発者は期待外れで信用されない • 世界を変えるかもしれない技術の例: • 魔法のようなインタフェース • フェアな課金 • 人工知能 • 家族や友人 • 自己改造(Transform) 13

15.

レンズ#106: ユートピア(理想郷)のレンズ を てにいれた! あなたがより良い世界に向かっているか確認するには、 以下の質問を自分にしてみましょう: • わたしは魔法のように感じられるものを作っているか? • 人々はわたしが作っているものについて、聞いただけで 熱狂するだろうか? それはなぜ? そうじゃないのは なぜ? • わたしのゲームは最新鋭か,それにはわけがあるか? • わたしのゲームは世界をよりよい場所にしているか? 14

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参考文献補足 クリステンセンによるイノベーション研究の日本語訳: • 『イノベーションのジレンマ: 技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』 増補改訂版 立ち読み・正誤表あり http://www.shoeisha.co.jp/book/detail/9784798100234 • 『イノベーションへの解: 利益ある成長に向けて』 毎年発表されるハイプサイクル • たとえば「ゲーミフィケーション」は2012年に揺籃期、2015年に“ハ イプ”のピーク期に入ったが、その後は表舞台から消えたかに見えた • 生産期に記載されたのが「日本におけるユーザー・エクスペリエンス のハイプ・サイクル:2021年」で、ガートナージャパンもゲーミフィ ケーションのサービス提供を開始 https://www.gartner.co.jp/ja/newsroom/press-releases/pr20211125 15