離婚班_三田論2024

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January 15, 25

スライド概要

本研究では、女性活躍推進法や働き方改革関連法によって変化する労働市場が、夫婦の家庭内役割にどのような変化をもたらすのかを分析し、その変化が離婚率に与える影響について実証的に考察します。また、離婚率の変化が関連する学術的理論を明らかにすることを目的としています。研究を通じて、近年の日本における離婚要因についての理解を深め、それがキャリアプランにどのように影響するかを考察します。

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慶應義塾大学商学部商学科山本勲研究会 ホームページ: https://www.yamazemi.info Instagram: https://www.instagram.com/yamazemi2024

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各ページのテキスト
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離婚班 夫婦の家庭内役割の変化が離婚に与える影響 ~女性の社会進出に着目して~ 18期 佐久間真夕・末田絢子・谷川温・廣田愛音 17期 木須秀昭・杉田崇哉・鈴木聡美・竹備真紀・伴野亮太 1

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テーマ紹介 テーマ紹介 夫婦の家庭内役割の変化が離婚に与える影響 ~女性の社会進出に着目して~ 近年、女性活躍推進法や働き方改革関連法などの政策により労働市場が変化している。 そのような労働市場の変化が、夫婦の家庭内役割に何か変化をもたらしているのか、 そして、その家庭内役割の変化が離婚にどのような影響を与えるのかについて実証分析する。 加えて、離婚率の変化がどのような学術的理論に一致するのかを明らかにする。 近い将来、女性活躍推進や働き方改革がさらに進み、夫婦の家庭内役割が更に変化していることを想定し、 本論文を通じて自分たちのキャリアプランの解像度を上げる。 2

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背景・問題意識・理論的背景|日本の労働問題の現状 生産年齢人口の減少 過労死問題 令和4年版高齢社会白書(全体版)p.4より 生産年齢人口の減少に伴い、 女性が労働市場に参加することの意義は高まっている 過労死問題により、労働時間の短縮など 働き方を変えることの意義は高まっている。 3

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背景・問題意識・理論的背景 背景・問題意識・理論的背景|女性活躍推進法 正式名称は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」 2015年4月に成立され2016年4月に施行された 常時雇用する労働者が101人以上の事業主を対象として、 「男女の賃金の差異」が情報公表の必須項目となる (令和4年4月1日から) 行動計画の策定・届け出を行った企業のうち、 女性の活躍に関する取り組みの実施状況が優良な企業については、 厚生労働大臣の認定をうけることができる(えるぼしマーク) 女性の管理職割合は右肩上がりに増加 25~40歳で就業している女性割合は増加 4

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背景・問題意識・理論的背景 背景・問題意識・理論的背景|働き方改革関連法 正式名称は「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」 2018年6月に成立され2019年4月に施行された 時間外労働の上限について、月45時間、年360時間を原則とし、 臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間を限度に設定 ※自動車運転業務、建設業務、医師等について猶予期間を設けたうえで規制を適用 年次有給休暇が年10日以上付与される労働者に対して、 そのうちの年5日について使用者が時季を指定して取得させることを義務付け 働き方改革関連法で残業時間の上限規制なされたことで、 月間労働時間や高い残業時間の発生確率が全体的に減少している。 5

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背景・問題意識・理論的背景 背景・問題意識・理論的背景|離婚率の種類 普通離婚率 特殊離婚率 有配偶離婚率 人口1000人あたりの年間離婚件数 同年の離婚件数を婚姻件数で割った値 配偶者を有する人の離婚件数 年間離婚届け出件数×1000 現在の日本人人口 離婚件数 婚姻件数 離婚件数 配偶者を有する人数 離婚率を見ると、 平成14年をピークに低下している 1960年から2023年にかけて、 全体的に上昇傾向にある 1990年代から2000年代にかけて、 離婚率が急激に増加しているが、 2015年以降は減少傾向にある 人口や結婚件数が減少すれば 離婚件数も減少するため 適切な離婚率ではない 分子の離婚件数とタイミングが異なるため、 適切な離婚率ではない 配偶者がいる人の離婚件数を示し、 正確に離婚率を把握できる 本稿では、有配偶離婚率に着目する 6

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背景・問題意識・理論的背景 背景・問題意識・理論的背景 | 社会学的・学術的な離婚の要因 社会学的な離婚の要因には学歴や雇用形態、生活満足度などが挙げられる。 学術的な離婚の要因には以下が挙げられる。 【ベッカーモデル】 【反ベッカーモデル】 New Home Economics理論 Role Collaboration仮説 夫は労働市場妻は家庭内に特化すると 離婚リスクが低い Equal Dependence仮説 夫と妻の経済的貢献が等しいと 離婚リスクが高い 夫婦の立場が対等に近いほど 離婚リスクが低い (=どちらかの配偶者の経済的依存 度が高いと離婚リスクが高い) ・女性の就業率が上昇している ・有配偶離婚率は低下している 近年の日本ではRole Collaboration仮説に合致するのではないか 7

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背景・問題意識・理論的背景 まとめ|本研究の目的・明らかになっていること・明らかになっていないこと 本研究の目的 女性活躍推進法や働き方改革関連法による労働市場の変化が、 従来の家庭内役割にどう変化をもたらすのか分析する その役割の変化が離婚率にどのような影響を与えるのかについて分析する 出てきた離婚率の変化がどの学術的理論に一致するのかを明らかにする 明らかになっていること 〇女性の働き方と離婚のしやすさとの関係性について、学術的にはNew Home Economics理論・Equal Dependence仮説・Role Collaboration仮説の三つがあること 〇夫婦の学歴や属性などの社会学的要因が離婚のしやすさに関係していること 明らかになっていないこと 〇女性活躍推進・働き方改革後の日本における、離婚の要因 〇経済学的な観点から分析した際、日本ではベッカーモデル・反ベッカーモデルのどちらの傾向にあるか 8

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まとめ | 本研究で分析すること・独自性・研究の意義 本研究で分析すること ・女性活躍推進法や働き方改革関連法による労働市場の変化が、 従来の家庭内役割分担にどのような変化をもたらすか ・家庭内役割の変化が離婚にどのような影響を与えるか ・日本における離婚率の既定要因が、3つの理論のうちどれに当てはまるのか 独自性 女性活躍推進や働き方改革関連法制定以降のデータを用いて、 離婚の要因を経済学的観点から検証し、 ベッカーモデル・反ベッカーモデルへのどちらに当てはまりが良いかを明らかにする点 研究意義 本論文を通じて離婚というイベントについての考えを改め、自分達のキャリアの一助とする 9

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先行研究 先行研究|ベッカーモデル(New Home Economics理論・Equal Dependence仮説) 性別役割分業が離婚に与える影響 Becker(1974) 福田(2018) 【概要】結婚市場の分析を拡張し、配偶者の思いやり、遺伝的選択、 別居・離婚・再婚などを含んだ分析を行う。 【結果】夫婦が世帯を共有し,いずれかが市場労働でない世帯内での 生産活動(例えば家事)に従事することがより効用を高める可能性に 着目し,それが結婚の誘因として働きうることが分かった。 【概要】離散時間ロジットモデルを用いて、35歳未満で結婚した人を 対象とした離婚の要因分析を行った。 【結果】妻が就業している状態が最も離婚しやすい状態であることを 明らかにした。ただし、離婚を予期して就業するという逆の因果性の 可能性があることを否定しておらず、留意が必要といえる。 林、余田(2014) Cherlin(1981) 【概要】社会階層と離婚行動とを結ぶ媒介要因として結婚満足度に着 目し、パネルデータを用いた分析を行う。 【結果】妻が夫と対等に働き、経済的貢献をほぼ等しくすることは、 妻の結婚満足度を低下させる。 【概要】結婚、離婚、子供の出生に関する傾向を産業の変化、既婚女 性の労働職参加率の大幅的な増加、教育水準の向上、避妊のコント ロール向上、既婚女性の就労に対する態度の変化などの要因から説明 している。 【結果】女性の収入へのアクセスが離婚と正の相関を持つ。1970年を 境に離婚についての許容度は高まった。 Livia S(2014) Jalovaara(2003) 【概要】有給・無給の仕事をパートナーと分担することに関する個人の 性別役割分担意識と行動の相互作用、およびパートナーシップの安定性 への影響を研究する 【結果】男性の家事が促進されているスウェーデンと、その他の国を比 較しても、婚姻解消リスクに差は見られなかった。 【概要】フィンランドにおける配偶者の社会経済的地位が離婚リスク に及ぼす共同の影響を研究した。 【結果】夫の高収入は離婚のリスクを減少させ、妻の高収入はもう一 方の配偶者の収入のどのレベルでも離婚のリスクを増加させたが、特 に妻の収入が夫の収入を上回った場合であった。 10

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先行研究|反ベッカーモデル(Role Collaboration仮説) 性別役割分業が離婚に与える影響 木村 (2003) 加藤(2005) 【概要】妻の就業が夫婦の離婚リスクに及ぼす影響とそ の変化を明らかにする。消費生活に関するパネル調査 (1993–2020年)のデータを用いた分析を行う。 【結果】全期間では妻の就業が離婚率を高めるという ベッカーモデルの当てはまりが良いとした一方で、2000 年以降に結婚したサンプルにおいては、妻が就業してい ない、もしくは高所得の場合に離婚率が低いことを明ら かにした。 【概要】全国レベルのライフコース・データとイベント・ヒ ストリー法(離散時間ロジット・モデル)を用いて、戦後日 本における離婚の要因を明らかにする。 【結果】離婚を抑制する効果として、子どもの存在、夫方親 との同居が挙げられる。逆にみれば、核家族には離婚確率を 高める効果があることを意味する。結婚5年以内の離婚は新 生活への不適応、結婚5年以降は妻の経済的自立、結婚10年 以降は夫の職業階層が離婚の主因となる。 金城 (1997) 【概要】日本の離婚率と社会的要因の相関関係を明らか にすること。 【結果】日本において、男女の共働き率が高いほど離婚 率は低い。ただし、明らかになっているのは相関関係の みであり、因果関係があるとは明記できない。 Stevenson and Wolfers(2007) 【概要】結婚と離婚に関する重要な事実を記録し、過去 150年間の傾向と、人口統計学的グループや国ごとの結 果を比較している。 【結果】子供を持たない家庭が増え、従来の家庭内役割 分業の特徴である「専門性」が失われ、その結果、女性 が家庭に留まる機会費用を小さくし、離婚率の上昇に寄 与することも示唆した。 11

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先行研究 先行研究|その他の離婚規定要因 その他の離婚規定要因 Olah・Gahler(2014) 【概要】パートナーとの個人の性別役割に対する 態度と行動の相互作用、およびそれがパートナー シップの安定性に与える影響を検討する。 【結果】男女平等の考えを持っていることが夫婦 の婚姻状態に安定をもたらす。次に、夫婦の考え 方と行動が一致していることで婚姻の安定がもた らされる。実証分析の結果、後者への当てはまり が良いとされ、夫婦の考え方と行動の不一致が離 婚リスクを高めることが示唆された。 Morgan(1988) 【概要】 1980年の人口調査を用いて、子供の性別と良心の 離婚リスクの関連性が調査された。 【結果】 息子がいる夫婦は娘がいる夫婦と比較して、離婚 リスクが9%程度低いとしている。父親が息子の育 児に介入することは特別な意味を持ち、その関与 は夫婦関係の強化につながる。 吉武(2019) 【概要】親の離婚経験が世代間で連鎖するかを実証 分析する。 【結果】親の離婚経験が自分自身の離婚率に正の影 響を与えるとした。貧困家庭における離婚の世代間 連鎖を指摘し、貧困の再生産に問題意識を呈した。 加藤(2005) 【概要】全国レベルのライフコース・データとイベン ト・ヒストリー法(離散時間ロジット・モデル)を用い て、戦後日本における離婚の要因を明らかにする。 【結果】離婚を抑制する効果として、子どもの存在、夫 方親との同居が挙げられる。逆にみれば、核家族には離 婚確率を高める効果があることを意味する。結婚5年以 内の離婚は新生活への不適応、結婚5年以降は妻の経済 的自立、結婚10年以降は夫の職業階層が離婚の主因とな る。 Rogers&DeBoer(2006) 【概要】男女ともに性別平等主義を好む人が増えている が、依然として顕著な性別による労働分業が存在してい る。本研究では、パートナーと有給及び無休の仕事を分 担する際の個人の性別役割に対する態度と行動の相互関 係、およびそれがパートナー関係の安定性に与える影響 を検討する。 【結果】妻の所得が増加すると、夫の幸福度には影響が 与えない一方で、夫婦間の幸福度は有意に増加する事を 明らかにした。 Dronkers & Wanger(2006) 【概要】 欧米諸国のうち、「高収入の女性の方が離婚のコス トが小さく離婚しやすい」という経済学的分析に反 する国に着目した。 【結果】 結婚が制度化されていない、または「型破りな家族 慣行」を持っている国において、女性の学歴が離婚 リスクを高めるとした。 12

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分析アプローチ 分析アプローチ|推計1 夫婦の雇用形態の違いが離婚・別居、生活満足度に与える影響 【離婚・別居】 【生活満足度の平均】 使用モデル:変量効果ロジットモデル 使用モデル:固定効果・変量効果モデル 分類 変数 分類 変数 被説明変数 離婚・別居ダミー 被説明変数 夫婦の生活満足度の平均 説明変数 共働きダミー(ベース=夫のみ就業) ・妻が正規雇用ダミー ・妻が非正規雇用ダミー 説明変数 共働きダミー(ベース=夫のみ就業) ・妻が正規雇用ダミー ・妻が非正規雇用ダミー コントロール変数 ・年ダミー ・年齢 ・手取り世帯収入 ・学歴 ・子供の数 【推計式】 𝐷_𝑟𝑖𝑘𝑜𝑛𝑖𝑡 = 𝛼 + 𝛽1​∙ 𝐷_𝑠𝑒𝑖𝑘𝑖 + 𝛽2​∙ 𝐷_ℎ𝑖𝑠𝑒𝑖𝑘𝑖 + 𝛾 ∙ 𝑐𝑜𝑛𝑡𝑟𝑜𝑙𝑖𝑡 + 𝑢𝑖 + 𝜀𝑖𝑡 コントロール変数 ・年ダミー ・年齢 ・手取り世帯収入 ・学歴 ・子供の数 【推計式】 𝐴𝑣_𝑚𝑎𝑛𝑧𝑜𝑘𝑢𝑖𝑡 = 𝛼 + 𝛽1​∙ 𝐷_𝑠𝑒𝑖𝑘𝑖 + 𝛽2​∙ 𝐷_ℎ𝑖𝑠𝑒𝑖𝑘𝑖 + 𝛾 ∙ 𝑐𝑜𝑛𝑡𝑟𝑜𝑙𝑖𝑡 + 𝑢𝑖 + 𝜀𝑖𝑡 13

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分析アプローチ 分析アプローチ|推計2 夫婦の収入比率が離婚・別居、生活満足度に与える影響 【離婚・別居】 【生活満足度の平均】 使用モデル:変量効果ロジットモデル 使用モデル:固定効果・変量効果モデル 分類 変数 分類 変数 被説明変数 離婚・別居ダミー 被説明変数 夫婦の生活満足度の平均 説明変数 収入比率(妻の収入/夫婦の収入×100) ①0% ②0~15% ③15~30% ④30~100% 説明変数 収入比率(妻の収入/夫婦の収入×100) ①0% ②0~15% ③15~30% ④30~100% コントロール変数 ・年ダミー ・年齢 ・手取り世帯収入 ・学歴 ・子供の数 【推計式】 𝐷_𝑟𝑖𝑘𝑜𝑛𝑖𝑡 = 𝛼 + 𝛽 ∙ 𝑅𝑎𝑡𝑖𝑜_𝑠ℎ𝑢𝑛𝑦𝑢𝑖𝑡 + 𝛾 ∙ 𝑐𝑜𝑛𝑡𝑟𝑜𝑙𝑖𝑡 + 𝑢𝑖 + 𝜀𝑖𝑡 コントロール変数 ・年ダミー ・年齢 ・手取り世帯収入 ・学歴 ・子供の数 【推計式】 𝐴𝑣_𝑚𝑎𝑛𝑧𝑜𝑘𝑢𝑖𝑡 = 𝛼 + 𝛽 ∙ 𝑅𝑎𝑡𝑖𝑜_𝑠ℎ𝑢𝑛𝑦𝑢𝑖𝑡 + 𝛾 ∙ 𝑐𝑜𝑛𝑡𝑟𝑜𝑙𝑖𝑡 + 𝑢𝑖 + 𝜀𝑖𝑡 14

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分析アプローチ 分析アプローチ|推計3 夫婦の労働時間比率が離婚・別居、生活満足度に与える影響 【離婚・別居】 【生活満足度の平均】 使用モデル:変量効果ロジットモデル 使用モデル:固定効果・変量効果モデル 分類 変数 分類 変数 被説明変数 離婚・別居ダミー 被説明変数 夫婦の生活満足度の平均 説明変数 労働時間比率 (妻の労働時間/夫婦の総労働時間×100) ①0~25% ②25~40% ③40~50% ④50~100% 説明変数 労働時間比率 (妻の労働時間/夫婦の総労働時間×100) ①0~25% ②25~40% ③40~50% ④50~100% コントロール変数 ・年ダミー ・年齢 ・手取り世帯収入 ・学歴 ・子供の数 【推計式】 𝐷_𝑟𝑖𝑘𝑜𝑛𝑖𝑡 = 𝛼 + 𝛽 ∙ 𝑅𝑎𝑡𝑖𝑜_𝑤𝑜𝑟𝑘𝑖𝑡 + 𝛾 ∙ 𝑐𝑜𝑛𝑡𝑟𝑜𝑙𝑖𝑡 + 𝑢𝑖 + 𝜀𝑖𝑡 コントロール変数 ・年ダミー ・年齢 ・手取り世帯収入 ・学歴 ・子供の数 【推計式】 𝐴𝑣_𝑚𝑎𝑛𝑧𝑜𝑘𝑢𝑖𝑡 = 𝛼 + 𝛽 ∙ 𝑅𝑎𝑡𝑖𝑜_𝑤𝑜𝑟𝑘𝑖𝑡 + 𝛾 ∙ 𝑐𝑜𝑛𝑡𝑟𝑜𝑙𝑖𝑡 + 𝑢𝑖 + 𝜀𝑖𝑡 15

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分析アプローチ 分析アプローチ|推計4 夫婦の家事育児時間比率が離婚・別居、生活満足度に与える影響 【生活満足度】 【生活満足度】 【離婚・別居】 使用モデル:変量効果ロジットモデル 使用モデル:固定効果・変量効果モデル 分類 変数 分類 変数 被説明変数 離婚・別居ダミー 被説明変数 夫婦の生活満足度の平均 説明変数 夫、妻の家事育児時間比率 (妻の家事育児時間/夫婦の総家事育児時間×100) ①0~85% ②85~100%③100% 説明変数 夫、妻の家事育児時間比率 (妻の家事育児時間/夫婦の総家事育児時間×100) ①0~85% ②85~100%③100% コントロール変数 コントロール変数 ・年ダミー ・年齢 ・手取り世帯収入 ・学歴 ・子供の数 ・年ダミー ・年齢 ・手取り世帯収入 ・学歴 ・子供の数 【推計式】 𝐷_𝑟𝑖𝑘𝑜𝑛𝑖𝑡 = 𝛼 + 𝛽 ∙ 𝑅𝑎𝑡𝑖𝑜_𝑘𝑎𝑗𝑖𝑖𝑘𝑢𝑗𝑖𝑖𝑡 + 𝛾 ∙ 𝑐𝑜𝑛𝑡𝑟𝑜𝑙𝑖𝑡 + 𝑢𝑖 + 𝜀𝑖𝑡 【推計式】 𝐴𝑣_𝑚𝑎𝑛𝑧𝑜𝑘𝑢𝑖𝑡 = 𝛼 + 𝛽 ∙ 𝑅𝑎𝑡𝑖𝑜_𝑘𝑎𝑗𝑖𝑖𝑘𝑢𝑗𝑖𝑖𝑡 + 𝛾 ∙ 𝑐𝑜𝑛𝑡𝑟𝑜𝑙𝑖𝑡 + 𝑢𝑖 + 𝜀𝑖𝑡 16

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分析アプローチ 分析アプローチ|使用データ 日本家計パネル調査【JHPS/KHPS】 →生活時間、労働時間、家事育児時間など 対象時期 調査対象 JHPS 2009年~2022年 KHPS 2004年~2022年 JHPS 20歳以上の既婚男女 KHPS 20歳以上の既婚男女 本稿の推計2では、共働きに限定して分析する 17

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分析アプローチ 分析アプローチ|使用変数の説明 分類 変数 変数の説明 被説明変数 離婚・別居ダミー 別居か離婚をしていたら1をとるダミー変数 夫婦の生活満足度の平均値 夫婦の生活満足度の平均値 夫と妻がともに正規雇用ならば1をとるダミー変数 夫と妻がともに正規雇用ならば1をとるダミー変数 夫が正規雇用、妻が非正規雇用ならば1をとるダミー変数 夫が正規雇用、妻が非正規雇用ならば1をとるダミー変数 収入比率 妻の収入/夫婦の総収入×100(0%,0-15%,15-30%,40-100%の割合で分ける) 労働時間比率 妻の労働時間/夫婦の総労働時間×100(0-25%,25-40%,40-50%,50-100%の割合で分ける) 家事育児比率 妻の家事育児時間/夫婦の総家事育児時間×100(0-85%,85-100%,100%の割合で分ける) 年ダミー 該当年であれば1をとるダミー変数 夫の年齢 夫の年齢 妻の年齢 妻の年齢 世帯収入 税引き前の世帯収入 夫の高卒ダミー 夫が高卒であったら1をとるダミー変数 夫の短大・高専卒ダミー 夫が短大・高専卒であったら1をとるダミー変数 夫の大学・大学院卒ダミー 夫が大卒・大学院卒であったら1をとるダミー変数 妻の高卒ダミー 妻が高卒であったら1をとるダミー変数 妻の短大・高専卒ダミー 妻が短大・高専卒であったら1をとるダミー変数 妻の大学・大学院卒ダミー 妻が大卒・大学院卒であったら1をとるダミー変数 6-17歳の子供の数 6-17歳の子供の数 0-5歳の子供の数 0-5歳の子供の数 説明変数 コントロール変数 18

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分析アプローチ 分析アプローチ|基本統計量 19

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推計 1-1 |夫婦の雇用形態の違いが離婚・別居に与える影響 【妻の雇用形態の違い】 〇夫婦の雇用形態は、離婚に有意な影響を与えない。 〇有意ではないが、ベースである夫が正規雇用、妻が非就業の場合が もっとも離婚しにくいと示唆される 雇用形態を説明変数にしたとき、 反ベッカーモデルへのあてはまりは確認できなかった 【世帯収入】 〇いずれの年代においても、世帯収入が多くなるほど離婚しにくい。中でも、 2019-2022でもっとも離婚しにくい。 【子供の数】 〇全サンプルと2019-2022年において、子供の数が増えると離婚しにくい。 一方で、2009-2018のデータでは子供の数は離婚に有意に影響しない。 20

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推計 1-2 |夫婦の雇用形態の違いが生活満足度に与える影響 【夫婦の雇用形態の違い】 〇夫婦の雇用形態は、生活満足度に有意な影響を 与えない。 〇有意ではないが、2019-2022年において、夫婦共 に正規雇用であると最も生活満足度が高い。 〇有意ではないが、2019-2022年において、妻が非 就業より、非正規雇用である方が生活満足度が低 い。 〇ただし、2009-2018年においては、妻が非就業で ある場合に最も生活満足度が低い。 経年的に反ベッカーモデルに変化している可 能性を示唆 21

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推計 2-1 |夫婦の収入比率が離婚・別居に与える影響 【妻の収入比率】 〇妻の収入比率が15%以上の時、統計的に正に有意である。 〇特に2009~2018年に比べ、2019~2022年は係数が大きい 以前に比べて近年の方が、 妻の収入が高くなるほど、離婚・別居しやすい よって、経年的にベッカーモデルに合致していったと考えられる 【学歴】 〇統計的に有意ではないが、2009-2018年と比べて、 近年は女性が高学歴であればあるほど離婚・別居 しにくくなっている 【世帯収入】 〇世帯収入が高いほど、別居・離婚しにくくなる。 22

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推計 2-2 |夫婦の収入比率が生活満足度に与える影響 【妻の収入比率】 〇有意ではないが、ベースである0%と(0)〜15%と比較すると、 収入が夫に偏ると、夫婦の生活満足度に悪影響を及ぼす可能性 が示唆される。 反ベッカーモデルへの示唆 【学歴】 〇夫の学歴が高くなるほど、夫婦の生活満足度が上がる傾向に ある。 〇有意ではないが、妻の学歴が高くなるほど、夫婦の生活満足度 が上がる傾向にある。 【世帯収入】 〇世帯収入が上がるほど、生活満足度が上がる。 23

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推計 3-1 |夫婦の労働時間比率が離婚・別居に与える影響 【妻の労働時間比率】 〇有意ではないが、2019~2022年のデータを見ると、2009年~2018年に比 べて妻の労働時間比率が40%以上の夫婦は離婚・別居しにくい 近年の傾向は反ベッカーモデルに当てはまるのではないか。 【妻の年齢】 〇全サンプルでは、妻の年齢が上がるほど離婚・別居しにくい 【世帯収入】 〇2019~2022年では、収入が増えるほど離婚・別居しにくい 24

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推計 3-2 |夫婦の労働時間比率が生活満足度に与える影響 【妻の労働時間比率】 〇2019~2022年のデータを見ると、妻の労働時間比率が25%~40%で あるときに最も生活満足度が低い 〇有意ではないが、全年代のデータにおいて妻の労働時間比率が 50~100%のときは、ベースである0~25%のときと比較して生活満足度 が低いことが示唆される 妻の労働時間比率が0~40%のときに生活満足度が高い → 妻がある程度働いている場合離婚しにくいという示唆 【学歴】 〇いずれの年度においても夫の学歴が高くなるほど生活満足度が高い 【世帯収入】 〇全サンプル・2019~2022年のデータでは、世帯収入が高いほど、夫婦の 生活満足度は高い 25

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推計 4-1 |夫婦の家事育児時間比率が離婚・別居に与える影響 【妻の家事育児時間比率】 〇統計的に有意でない箇所も含めて、符号が負である 〇妻の家事育児時間比率が85~100%のときに最も離婚しにくい 〇妻の家事育児時間比率が100%のときは、有意ではない 基本的に妻の家事育児時間比率が高いと離婚・別居しにくくなる (ベッカーモデルの示唆) ただし、妻が100%家事を分担している場合は有意ではない 【世帯収入】 〇世帯収入が高いほど、離婚・別居しにくくなる。 26

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推計 4-2 |夫婦の家事育児時間比率が生活満足度に与える影響 【妻の家事育児時間比率】 〇全サンプルでは、妻の家事育児時間比率が85%~100%であるときに最も 夫婦の生活満足度が高い 〇近年のデータでは有意ではなくなっている 全サンプルで示唆されたベッカーモデルが、 近年のデータでは有意に成立しなくなっている 【学歴】 〇全サンプルでは、妻が高卒であるとき生活満足度が低い 【子供の数】 〇2011~2018年と全サンプルでは、0~5歳の子供の数が多いほど生活満足 度は低い 27

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先行研究 結論・考察 ・夫婦の就業形態に関しては、2010年代ごろと近年を比較すると、夫婦が共働きである方が生活満足度 が高い傾向があるが、就業形態のみでは離婚・別居への有意な結果は得られなかった。 ・夫婦の収入比率に関しては、2010年代ごろと近年を比較すると、妻の収入比率が高くなるほど離婚・別 居する程度が大きくなっており、経年的にベッカーモデルへの当てはまりが良くなったことがわかった。 ・夫婦の労働時間比率に関しては、2010年代ごろと近年を比較すると、妻の労働時間比率が高くなるほ ど離婚・別居する程度が小さくなっており、経年的に反ベッカーモデルへの当てはまりが良くなったことが わかった。 ・夫婦の家事育児時間比率に関しては、2010年代ごろと近年を比較すると、妻が家事育児を行っている ほど離婚しにくいというベッカーモデルが当てはまらなくなる傾向にある。すなわち、経年的に反ベッカー モデルの当てはまりが良くなることが読み取れる。 28

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先行研究 結論・考察 ・夫婦の就業形態に関しては、2010年代ごろと近年を比較すると、夫婦が共働きである方が生活満足度 が高い傾向があるが、就業形態のみでは離婚・別居への有意な結果は得られなかった。 就業形態では離婚・別居への有意な影響は得られなかったため、被説明変数として収入比率、労働時間比率、家 ・夫婦の収入比率に関しては、2010年代ごろと近年を比較すると、妻の収入比率が高くなるほど離婚・別 事育児時間比率の3つの比率を追加して分析を行った。 居する程度が大きくなっており、経年的にベッカーモデルへの当てはまりが良くなったことがわかった。 それぞれの結果から、以下の二点が考察される。 ・夫婦の労働時間比率に関しては、2010年代ごろと近年を比較すると、妻の労働時間比率が高くなるほ 〇働き方改革・女性活躍推進などの社会トレンドの1次的波及効果である労働時間、家事育児時間では反ベッカー ど離婚・別居する程度が小さくなっており、経年的に反ベッカーモデルへの当てはまりが良くなったことが モデルの当てはまりが良くなっていること わかった。 〇2次的な波及効果である収入比率は現時点ではまだベッカーモデルの当てはまりが良くなっていること ・夫婦の家事育児時間比率に関しては、2010年代ごろと近年を比較すると、妻が家事育児を行っている ほど離婚しにくいというベッカーモデルが当てはまらなくなる傾向にある。すなわち、経年的に反ベッカー モデルの当てはまりが良くなることが読み取れる。 すなわち、2010年代から近年にかけて、社会トレンドが家庭内役割を変化させ、離婚・別居に影響を与えるまでに、 三つの変数の間でラグがあると考えられる。 29

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先行研究 本研究の課題 統計的に有意な結果を得た説明変数が少なかったため、さらに工夫の 余地があったのではないか。 2019年から始まった働き方改革だが、2020年からのパンデミックを考 慮すると、適切な効果を測定するには時期尚早だったのではないか。 離婚トレンドを伝統的なベッカーモデル、反ベッカーモデルの2つでなくよ り柔軟に傾向を探る方法があるかもしれない。 29