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April 13, 20
スライド概要
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行期における外来化学療法の指針
滋賀県立総合病院 化学療法センター 腫瘍内科医
2020年4月13日 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の 流行期における外来化学療法の指針 滋賀県立総合病院 外来化学療法センター 後藤知之
COVID-19流行期における外来化学療法の指針 ▪ 昨今の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、院内の各部門の入 院及び外来診療に関して平常時と異なる体制での運用が始まっています。 ▪ がん患者は易感染状態にある患者が少なくなく、万が一の感染時の重症化及び 死亡率も高くなることが各種報告で明らかにされつつあります。 ▪ 当院での外来化学療法の対応についての情報を提供します。
当院の現状 ▪ 当院は滋賀県がん診療連携拠点病院であり、滋賀県内のがん診療を病院の重要 な使命の1つとしています。 ▪ 当院の外来化学療法センターでは現時点ですぐに外来化学療法を中止する段階 ではありませんが、今後の状況推移によっては従来通りの化学療法が継続できな くなる可能性があります。 ▪ 関連学会などからはCOVID-19流行状況下でのがん診療に関するガイダンスやス テートメントが続々と発表されていますが、当院の化学療法患者においても以下の 点についてご周知の程をよろしくお願いいたします。
感染が疑われる患者の治療中止 ▪ 発熱やそのほかの上気道症状などが疑われる患者については、早めに化学療法 を中止・延期してください。 ▪ 患者には、発熱時には病院に直接来院するのではなくまず電話連絡をするように ご周知ください。 ▪ 来院時の検温で発熱が見られた場合には、外来診察室前や外来化学療法セン ターの待合室に長時間滞在することがないように早めの誘導をお願いいたします。 ▪ 一方で、発熱性好中球減少症や薬剤性間質性肺疾患などの化学療法に伴う致死 的な有害事象を新型コロナウイルス感染症に隠れて見落とすことがないようにもご 注意ください。
頓服薬などの事前処方 ▪ 有害事象などによる予定外受診の回数が増えないように発熱時などの内服薬を 事前に処方しておくことも有用です。 ◼ ◼ 制吐薬や止痢薬などを事前に多めに処方しておく (ナウゼリン、ノバミン、オランザピン、ロペミンなどの院内セット) 新規導入やレジメン変更の直後でFNのリスクが高い患者では 解熱薬と内服抗菌薬を処方しておくなど (アセトアミノフェン、レボフロキサシン or オーグメンチン 5日分) ▪ 化学療法による有害事象が起こったときにも患者が自己または電話指導で対処で きるように準備しておきます。
症状緩和薬の余裕を持った処方 ▪ 鎮痛剤(特にオピオイド)については次回受診までの日数よりも十分に余裕を持っ て処方しておくことで、外来受診日の変更や延期などの融通が効きやすくなります。 ▪ 事前に内服薬を多めに処方しておき、電話指導で用量変更を指示することなどを 推奨するガイドラインもあります。
レジメン変更のリスク ▪ レジメン変更の直後は血球減少や消化器症状などの有害事象の増加が見られま す。それに伴う予定外受診の回数も増える傾向があります。 ▪ 病勢が安定(または進行が緩徐)で治療の変更を急ぐ必要がない状況ではむやみ にレジメン変更のリスクをとらず、現行レジメンでの維持治療もご検討ください。 ▪ 安定期の患者では治療効果判定や定期モニタリングの画像検査を保留・延期する ことを提案するガイドラインもあります。
治療の必要性が低い患者での治療延期 ▪ 緩和的化学療法や強い治療強度を必要としない患者では、化学療法の延期をご 検討ください。 ▪ 免疫チェックポイント阻害剤など一部の薬剤は、投与間隔が開いても有効性が直 ちに失われるわけではないと推測されることから、感染症の流行期の受診がリスク になると考えられる場合は投与をスキップすることも選択肢になり得ます。 ▪ 院内滞在時間を減らすため、内服化学療法での治療が可能な場合は内服での治 療もご検討ください。
化学療法が継続できない場合の連絡方法の確認 ▪ 特殊な状況(e.g.外来看護師などの院内スタッフに大規模な院内感染が生じた場 合)では病院全体の外来診療が予告なく全面閉鎖になる可能性も否定できません。 ▪ 外来各ブースにおいて、患者の緊急連絡先を確認しておくようお願いします。 ▪ 今週の治療が問題なく実施できても、2週間後・3週間後の県内の感染流行状況に よっては今後の化学療法を見合わせる可能性があることを患者に事前にお伝えい ただくこともご検討ください。
短期入院での化学療法は原則推奨しません ▪ 現時点では外来通院で実施している化学療法を短期入院に切り替えて行うことは 推奨しません。 ▪ 外来化学療法が施行困難となった状況でも、短期・頻回の入退院によって病棟へ の患者の出入りが増えること自体が院内感染拡大のリスクとなります。 ▪ 入院に治療を切り替えて行う場合は、流行期に化学療法を行うリスク、病棟に感 染を持ち込むリスクなどを踏まえてチームで適応を検討することが重要です(病棟 にも感染が広がった場合の被害は甚大です)。
各種ガイダンス・ステートメント ▪ 各国の学会や当局からがん患者マネジメントに関する情報が発表されており、また毎週のようにアップデートさ れています。国内でも日本癌治療学会・日本臨床腫瘍学会・日本癌学会の3学会合同でガイダンスを作成する 動きがあるようです。 ▪ 引き続き関連情報の収集に努めてください。 ◼ ◼ ◼ ◼ ◼ がん情報サービス 新型コロナウイルス感染症の感染拡大に際して https://ganjoho.jp/public/news/2020/20200410.html ESMO COVID-19 and Cancer https://www.esmo.org/covid-19-and-cancer ASCO ASCO Coronavirus Resources https://www.asco.org/asco-coronavirus-information JSMO 新型コロナウイルス感染症 関連情報 https://www.jsmo.or.jp/news/coronavirus-information/ The official French guidelines to protect patients with cancer against SARS-CoV-2 infection https://www.thelancet.com/journals/lanonc/article/PIIS1470-2045(20)30204-7/fulltext
このスライドは、内容を自由に引用・複製して 各医療機関でご利用いただいて差し支えあり ません。 COVID-19の流行期においてもがん診療を継 続している皆様の参考になれば幸いです。