滋賀県立総合病院 がんゲノム医療の現在 3年間の経験をふまえて20220721

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滋賀県立総合病院 化学療法センター 腫瘍内科医

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1.

滋賀県立総合病院 第126回がん診療セミナー 基礎から学ぶがんゲノム医療 2022/07/21 がんゲノム医療の現在 3年間の経験をふまえて 滋賀県立総合病院 消化器内科/化学療法部 後藤知之

2.

さっそくですが、当院のがんゲノム医療はどこで何してる? • がんゲノムと言ったって、院内のどこでいったい何してるのか・・・? • がんゲノム外来 外来1階 Jブロック • 月曜日12:00〜(後藤) 金曜日13:00〜(山内先生) • 予約・受診希望は当院がん相談支援センターへ • エキスパートパネル B棟1階研修室(京大病院と連携病院の共催型WEB会議) • 火曜日17:30〜 見学自由!途中入退室も可。院外からの見学も応相談 • 遺伝子診療カンファレンス B棟1階研修室(4階会議室の週もあり)+zoomでも配信 • 第1金曜日17:00〜 いちばん入門向け。興味ある人は、まずはここから • パネル検査・遺伝性腫瘍・困った症例・ミニレクチャーなど…テーマは月替わり • 普段のがんゲノム診療は、極力メールで連絡・相談・情報共有(みんな忙しいので!)

3.

がん遺伝子と がんゲノム医療とは

4.

がんは遺伝子の変化で起こる病気 「よく分かるがんゲノム医療とC-CAT」より https://for-patients.c-cat.ncc.go.jp/

5.

臓器別から遺伝子タイプ別の治療へ 「よく分かるがんゲノム医療とC-CAT」より https://for-patients.c-cat.ncc.go.jp/

6.

新薬の開発も遺伝子異常ごとに発展している 1つの臓器の 異なる遺伝子異常 多くの臓器の 共通した遺伝子異常 JAMA Oncol 2017. 423 より改変

7.

臓器横断的な遺伝子異常に基づく治療がさらに広がる NTRK融合遺伝子陽性の固形がんに対する エヌトレクチニブの腫瘍縮小率 ▪ MSI・TMB-H・NTRKなどの新しい治療標的への承認薬も相次ぐ ▪ 臓器の種別を超えた治療薬が普及し、 がんゲノム検査の必要性が高まる Lancet Oncol 2020, 271-282

8.

個別化された標的治療は予後を改善させる可能性を持つ • 膵癌でゲノム選択的治療を 受けた群はOSが良好であった • 臓器による差異はあるものの 今後重要性は増してゆく Lancet Oncol 2020, 508-518

9.

がんゲノム医療がその有効性を発揮するためには • がんゲノムに基づく個別化医療は • 適切な治療標的を選べば治療効果が高い • 有効例・無効例が予測/選別できるため治療の効率化が進む • 希少な遺伝子異常に対する新薬開発の臨床試験も促進される • がんゲノム医療の普及するためには • 多数の遺伝子異常を安価に効率よく検出する検査方法が必要となる • 検出された遺伝子異常に応じた標的治療薬の開発(発展途上) • 推奨された未承認新薬に関する健康保険制度上のジレンマの解決 網羅的な検査を 臨床に導入するための がん遺伝子パネル検査

10.

がん遺伝子パネル検査とは 何ですか?

11.

がん遺伝子パネル検査は数百の遺伝子を一度に調べる 「よく分かるがんゲノム医療とC-CAT」より https://for-patients.c-cat.ncc.go.jp/

12.

がん遺伝子パネル検査を使うと何ができるか • DNA等を大規模に解析できる次世代シークエンサーを用いて 高速・効率的・網羅的にがん遺伝子異常を解析することが可能となった →従来よりがんゲノム医療が格段に使いやすくなる • MSIやTMB( マイクロサテライト不安定性や腫瘍変異量)、 多くのコンパニオン診断(EGFR,ALK,KRAS,HER2等)も評価できる • がんに関連する数百の遺伝子をセットにして一括解析し 治療薬の候補を探すことを可能にする(検査の標準化) →治験参加者を全国から集約することができる

13.

2019年6月 がん遺伝子パネル検査 保険承認 毎日新聞 2019.5.30

14.

保険承認された3つのパネル検査システム それぞれの検査に特色があるので 病気の状態や検査目的に合わせていずれかの がん遺伝子パネル検査を選択します

15.

保険診療で実施できるがん遺伝子パネル検査(2022年7月) 検査の種類 提出検体 腫瘍FFPE検体 +末梢血2mL 腫瘍FFPE検体 末梢血 (リキッドバイオプシー) 対象遺伝子数 114遺伝子 324遺伝子 324遺伝子 MSI・TMB ○ ○ × コンパニオン診断 △(エキパネで判断) ○ △(FGFR2など一部対象外) 対象年齢 制限なし 制限なし 15歳以上 所要時間 約20日間 約14日間 約10日間 生殖細胞系列 (遺伝性腫瘍診断) ほぼ確定できる 再検査が必要 再検査が必要 (VAFから推定可能) ※ 非小細胞肺癌用「オンコマイン Dx Target Test マルチ CDxシステム」「AmoyDx®肺癌マルチ遺伝子PCRパネル」も 検査の基本原理は同じだが、今回のがんゲノム医療と若干用途が異なるため割愛

16.

FoundationOne CDx の検出遺伝子 FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル 添付文書より

17.
[beta]
パネル検査レポートの一例
PA TIENT

TUMOR TYPE

REPORT DATE

Prostate acinar adenocar cinoma
COUNTRY CODE

ORDERED TEST #

患者の臨床情報

FoundationOne®CDx is the first and only FDA-Approved
comprehensive companion diagnostic for all solid tumors.
ABOUT THE TES
TEST
T

Interpretive content on this page and subsequent
pages is provided as a professional service, and is
not reviewed or approved by the FDA.

Biomarker Findings

PATIENT

Genomic Findings

DISEASE Prost at e acinar adenocarcinom a

For a complete list of the genes assayed, please refer to the Appendix.

NAM E

BR
BRC
CA2 I185
I1859f
9fs*3
s*3

DATE OF BIRTH
SEX

13 Disease r ele
elevvant g
genes
enes w it h no r epor
eportt able alt er
erat
at ions: ATM , B
BARD1,
ARD1,

M EDICAL RECORD #

PHY
PHYSICIAN
SICIAN
ORDERING PHYSICIAN
M EDICAL FACILITY
ADDITIONAL RECIPIENT
M EDICAL FACILITY ID
PATHOLOGIST

SPE
SPECIM
CIM EN
SPECIM EN SITE

MSI

SPECIM EN ID
SPECIM EN TYPE
DATE OF COLLECTION
SPECIM EN RECEIVED

BIOM A RKER FINDINGS

検出された
遺伝子異常

BR
BRC
CA1, BRIP1, CDK12, CHEK1, CHEK2, F
FANCL,
ANCL, P
PALB2,
ALB2, RAD51B, RAD51C,
RAD51D
RAD51D,, RAD54L

4 T her
herapies
apies w it h C
Clinical
linical Benefit

Tum or M ut at ional Bur den - 3 M ut s/ M b

10 Clinical T
Trials
rials

0 T her
herapies
apies w it h Lack of R
Response
esponse

A CTIONABILITY

No t her
herapies
apies or clinical t rials. see Biom ark er Findings sect ion

GENOM IC FINDINGS

THERAPIES W ITH CLINICAL BENEFIT
( IN P
PA
ATIENT'S TU
TUM
M OR TYPE)

THERAPIES W ITH CLINICAL BENEFIT
( IN O
OTHER
THER TU
TUM
M OR TYPE)

BRCA2 - I1859fs*3

Olaparib

Niraparib

10 T
Trials
rials see pp.. 6

Rucaparib

1
2A

Talazoparib
NCCN category

VARIANT
ARIANTS
ST
TO
OC
CONSIDER
ONSIDER F
FOR
OR F
FOLL
OLLO
OW -UP GERM LINE TES
TESTING
TING IN SELE
SELECT
CT CANCER SUS
SUSCEPTIBILITY
CEPTIBILITY GENES

Findings below have been previously reported as pathogenic germline in the ClinVar genomic data and were detected at an allele frequency of >10%.
See appendix for details.
BRCA2 - I1859fs*3

p. 3

This report does not indicate whether variants listed above are germline or somatic in this patient. In the appropriate clinical context, follow-up germline t esting would be needed
to determine whether a finding is g ermline or somatic.

NO
NOTE
TE

Genomic alterations detected may be associated with activity of certain FDA-approved drugs; however, the agents listed in this report may have varied clinical evidence in the patient’s tumor type.

Neither the therapeutic agents nor the trials identified are ranked in order of potential or predicted e icacy for this patient, nor are they ranked in order of level of evidence for this patient’s tumor type.

遺伝性腫瘍に関わる
可能性がある遺伝子

e content provided as a professional service by Foundation Medicine, Inc., has not been reviewed or approved by the FDA.

厚労省承認ページ
(2ページ目のみ)

当該臓器での
治療薬

No t her
herapies
apies or clinical t rials. see Biom ark er Findings sect ion

SA
M

M icrosat ellit e st at us - M S-St able

TMB(腫瘍変異量)

M icr
icrosat
osat ellit e st at us - M S-St able
Tum or M ut at ional Bur den - 3 M ut s/ M b

PL
E

コンパニオン診断

Electronically signed by Douglas A. Mata, MD, MPH |
Julia Elvin, M.D., Ph.D., Laboratory Director CLIA: 22D2027531
Shakti Ramkissoon, M.D., Ph.D., M.M. Sc, Labor atory Director CLIA: 34D204 4309
Foundation Medicine, Inc.

他臓器で
承認されている
治療薬

© 2021 Foundation Medicine, Inc. All rights reserved.
Sample P
Prrepar
epara
ation: 150 Second St., 1st Floor, Cambridge, MA 02141·· CLIA: 22D2027531
Sample Analy
Analysis:
sis: 150 Second St., 1st Floor, Cambridge, MA 02141·· CLIA: 22D2027531
Post -Sequencing Analy
Analysis:
sis: 150 Second St., 1st Floor. Cambridge, MA 02141·· CLIA: 22D2027531

PROFESSIONA L SERVICES - PAGE

1 of 7

FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル 解析結果レポートサンプルより

18.

パネル検査レポートの一例 検出された遺伝子に 関する主な治療薬候補や 現時点のエビデンス C-CATから提供される 参加可能な候補となる 国内治験・臨床試験情報 FoundationOne Liquid CDx がんゲノムプロファイル 解析結果レポートサンプル C-CAT 調査結果 説明書 第2版

19.

組織パネル vs. リキッド(末梢血)パネル 検査の種類 腫瘍組織検体 末梢血検体 リキッドバイオプシー 提出検体 過去の手術検体・生検検体 → ❌ 採取に侵襲あり 採血(CVポート血不可) → ⭕️採取は容易 検出される遺伝情報 検体採取時の情報 → ❌前治療の影響がわからな い 採血時の情報 → ⭕️ほぼリアルタイム 出検前の腫瘍量評価 病理学的に可能 → ⭕️検体不足になりにくい 事前評価不能 → ❌しばしば腫瘍量不足 コンパニオン診断承認 ○ ❌ TMB、MSI、増幅欠失の薬事承認なし ❌ FGFR2などのコンパニオン機能も少な い 所要時間 約20日間 ⭕️ 約14日間 治療に繋がる割合が低くなりがち

20.

どのがん遺伝子パネル検査が多く使われているか 第4回がんゲノム医療中核拠点病院等の指定要件に関するワーキンググループ資料(2022年7月4日)

21.

がんゲノム医療の提供体制は どのようになっていますか?

22.

がんゲノム医療を行うことができる指定病院 「よく分かるがんゲノム医療とC-CAT」より https://for-patients.c-cat.ncc.go.jp/ 2022年5月1日現在

23.

近隣のがんゲノム医療中核拠点・拠点・連携病院 中核拠点病院 連携病院 滋賀医大 滋賀県立総合病院 京都大学 京都府立医大病院 京都医療センター 京都第一・第二日赤 京都桂病院、など 中核拠点病院 拠点病院 奈良医大 天理よろず相談所病院 大阪大学 近畿大学 大阪国際がんセンター、など 連携病院は多数あり 和歌山医大 2022年5月1日現在

24.

パネル検査の対象となる範囲 固形がんで 造血器腫瘍は不可 根治切除不能な進行・再発病変で 標準治療終了後 または終了見込みの がん OR 原発不明癌 OR 標準治療のない 希少がん 検査後にも薬物療法に耐える全身状態 (2〜3ヶ月後にもPS 0〜1が保てることが期待できる) DNA抽出可能な検体があるか、今後採取できる 根治切除可能な病変は不可 パネル検査結果説明までに1.5ヶ 月、 治験参加にさらに1ヶ月程度必要 2〜3年以内に採取された検体 検体がない場合は血液検体で

25.

「標準治療の終了見込み」って具体的にいつ? • はっきりと明記されたものはない(最終ラインまで待つ必要はない) 次世代シークエンサー等を用いた遺伝子パネル検査に基づくがん診療ガイダンス 第2.1版 CQ6 がんゲノムプロファイリング検査はいつ行うべきか? 治療ラインのみでがんゲノムプロファイリング検査を行う時期を限定せず、 その後の治療計画を考慮して最適なタイミングを検討することを推奨する。 エビデンスレベル:低 推奨度 Expert consensus opinion [SR: 1、R: 8、ECO: 12、NR: 2、A: 4]

26.

臓器別に示されている目安 • 統一された見解は今のところ無いが、いくつかのガイドライン委員会が「目安」を表明 大腸癌治療ガイドライン委員会のコメント(2020年9月) 切除不能進行再発大腸癌の患者に対しCGP検査を行う場合には、 二次治療開始から後方ライン治療移行までの間に実施することが望ましい。 ただし(中略)患者の病態に応じたタイミングで本検査を実施することが適切である。 • FOLFOXのあとのFOLFIRIを継続しPDになる手前!? 乳癌診療ガイドライン2018年版ver4改訂(2020年8月23日)FQ21 遺伝子パネル検査前の留意事項としての「標準治療」は一般的にはガイドラインの各項で 「強く推奨」されている治療と位置付ける。ただし、個々の患者の状況に応じて、 すべてを行わずとも遺伝子パネル検査の対象となりうる。 • アンスラ/タキサンともう1剤(エリブリン/S1/Cape?)。HER2ならT-DXdまで。

27.

がん遺伝子パネル検査の 実施の流れは どうなっていますか?

28.

がんゲノム医療の検体と検査の流れ 当院が担う部分 検査前には 検査の意義や有用性 およびその限界に ついて理解して 頂く必要があります 当院が担う部分 正確な検査のため DNAを抽出する 手術・生検検体は 質・量ともに良好で ある必要があります 中核拠点病院で開かれる エキスパートパネルは ・主治医(担当医) ・がん薬物療法専門医 ・臨床遺伝専門医 ・病理医 ・分子遺伝学の専門家 ・バイオインフォマティシャン (データ解析技術者) の参加が必須要件です

29.

パネル検査だけでは治療につなげることができない • パネル検査は変異を起こした遺伝子名とその部位しか教えてくれない。 • パネル検査の結果の臨床的な意味やどのような治療が適用可能かは、 専門家による解釈が必要となる。 • がんゲノム医療中核拠点病院・がんゲノム医療拠点病院での エキスパートパネル(専門家会議)で検討を行う。 • 連携病院は単体では結果解釈ができず、がんゲノム医療中核拠点病院で 実施されるエキスパートパネルにWebカンファレンスで参加する。 • 当院(京大病院エキパネ)は毎週火曜日17:30から1.5時間程度 1階研修室で 参加お待ちしています

30.

がん遺伝子パネル検査の 検査費用は どの程度必要ですか?

31.

がん遺伝子パネル検査の流れ 80,000円 440,000円 480,000円 120,000円 患者死亡の場合は 算定不可! • がん遺伝子パネル検査は保険適用となり1〜3割の自己負担 • 高額療養費制度の対象にもなります • 2022年4月診療報酬改訂から医療機関の費用負担リスクがかなり軽減 • 検査を躊躇することが少なくなり、積極的に取り組めるようになった • 検査会社に約46万円、中核拠点病院に4〜5万円、検体処理コスト、人件費・・・

32.

パネル検査後の 治療薬へのアクセスは どのようになっていますか?

33.

がん遺伝子パネル検査の後の治療の流れ 保険診療 治験 MSI-H, TMB-High, NTRK, 他 企業治験, 医師主導治験 がん遺伝子パネル検査 患者申出療養制度 (受け皿試験) 適応外使用 推奨治療なし NCCH1901 自費診療(倫理委員会などの審査要)

34.

受け皿試験(NCCH1901)とは何ですか? • Actionableな遺伝子異常を認めた患者に適応外薬を投与しデータ収集する (自分専用のn=1の臨床試験を立ち上げてもらうようなイメージ) • 16週後の効果を判定し、将来的な承認につなげることが研究の狙い • 混合診療の制約なく、健康保険内の診療は保険下で受けつつ 未承認薬部分だけ保険外診療で受けることができる(患者申出療養制度) 自由診療 患者申出療養 入院基本料・その他の技術料 10割負担 健康保険適用 薬剤費 10割負担 ※ 高額療養費制度の 対象にもなる • NCCH1901では治療薬は製薬会社の無償提供となる ただし受け皿試験に参加するための費用負担がある(最初に約40〜60万円) • がんゲノム医療中核拠点病院(京大病院)まで通院可能な全身状態良好(PS 0〜1)の人 • 脳転移ありやPS低下例は参加不可

35.

受け皿試験(NCCH1901)の対象となる医薬品 第32回患者申出療養評価会議議事次第 資料

36.

未承認薬治験の参加へのハードル • 米国に比べて日本は治験が少なく、 日本の未承認薬治験の90%は首都圏で行われている =関西圏で受けられる治験は少ない(滋賀県内はほぼゼロ) • 国立がんセンターでは10%弱が治療につながっているが非首都圏は? • 少なくとも京都まで通院可能でないと受け皿試験にも参加できない • 治験参加までのタイムラグを待てるか 出検前に通院可否を かならず確認 • がん遺伝子パネル検査の結果説明まで1.5ヶ月、治験参加に1ヶ月程度必要 • 治療を受けられても有効であるとは限らない • 治験参加は手段であって目的ではない(スタートであってゴールではない)

37.

がん遺伝子パネル検査の 実際の状況はどうなっていますか?

38.

当院の検査数実績(〜2022年7月11日) 乳癌, 2 10 9 原発不明, 1 泌尿器, 2 9 8 膵臓, 18 頭頚部, 7 7 7 6 5 6 6 胃, 5 5 5 5 4 4 4 4 3 3 3 婦人科, 10 3 2 2 2 2 2 2 大腸, 16 2 1 1 1 1 1 1 1 1 1 <2020/2/20 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 >2022/7/14 0 <2020/2/20 2020年 2021年 2022年 >2022/7/14 肺, 11 胆道, 13

39.

がん遺伝子パネル検査の全国の件数 同期間の当院の検査数 27〜28件 2020年9月〜2021年8月 • 病院の規模のわりには健闘している!? 今年は3倍以上には増えている • さらに増やすためには他院との連携、院内メンバーの増加が必要 第4回がんゲノム医療中核拠点病院等の指定要件に関するワーキンググループ資料(2022年7月4日)

40.

どの程度治療につながっているか(全国) 第4回がんゲノム医療中核拠点病院等の指定要件に関するワーキンググループ資料(2022年7月4日)

41.

実際に治療につながる変異が見つかる頻度は?(当院) • 実際に投与を受けたのは当院 2022年6月末までエキパネ実施した7例(9.1%) • 保険2、治験2、自費3 • その他、それまで実施していた治療を継続することが推奨されたものが2例 • 治療につながる割合を少しでも高めるために • 京大エキパネでは3学会ガイダンスのエビデンスレベルD以上を原則推奨 (レベルD=同一遺伝子同一変異で1例以上の有効例の報告がある。症例報告も可) • 極力、全身状態良好なうちに検査を勧め、できるだけ早く説明する • 経皮肝生検・リンパ節生検なども併用して極力、リキッドより組織検体を優先 • 治験以外でも適用外使用を認めない医療機関が多いが 当院は倫理委員会・医療安全委員会・がん化学療法委員会・医事課などに事前に相談し エキパネが推奨した適用外使用を自費診療で行うことを(今のところ)認めています。

42.

どういう病変の方に「特に」検査を勧めるか • 結果が出た際に少なくとも受け皿試験に通える方(PS 0~1、京都まで通院可能) • 検査に適した組織検体が入手可能な方(手術標本なら概ね3年以内) 臓器 肺 大腸 特に治療が見つかりやすいと思われる患者層 • ドライバー変異陰性の非小細胞肺癌 →オンコマインDxTTなどで検出できないレアバリアントが見つかる可能性 • • RAS/BRAF/HER2が全て野生型 →他のドライバー変異が見つかりやすい KRAS G12C陽性 → 様々な治験に参加できる • 逆にG12C以外のKRAS変異は、同じKRAS変異が見つかるだけかも MSI-HだがBRAF変異陰性 → NTRK fusionなどはこの層にある • 胆道癌 • 肝内胆管癌(FGFR2 fusion)、胆嚢癌(HER2 amplification) ただしリキッドではいずれも治療推奨対象外、かならず組織パネルで 前立腺 • 若年の去勢抵抗性前立腺癌

43.

どれくらい日数がかかっているか(結果説明のTAT) 中核拠点エキパネが渋滞し エキパネ待ちが1ヶ月を超えた期間 (2021年9月〜2021年12月出検分) CGPレポートが到着するまで エキパネが開催されるまで 90(日) 80 結果説明まで 結果説明予定日 結果説明未 結果説明できなかった症例 70 60 50 40 30 20 10 0 2019年度は平均55日で説明 2022年から平均40日以内で説明 当院データ

44.

リキッド(末梢血)パネルは本当に「早い」のか? • 腫瘍組織検体を用いるよりも短期間で結果を返却できるのはリキッドパネルの強み • 連携病院の場合は拠点エキパネ待ちが長いので、結局あまり意味がない (自院でエキパネができる拠点病院なら早いかも) 60(日) 50 48.5 49.2 13.01 11.44 FoundationOne CDx FoundationOne Liquid CDx (組織) (血液) 40 30 20 10 0 Nat Med. 2020. 1859-1864 当院データ

45.

当院のTAT(検査に要する時間)を早めるための工夫 • 検査に要する日数は徐々に改善してきている • がんゲノム外来の予約前にがん相談支援センターで事前説明を受けてもらう 他院紹介の場合はパンフレットなど必要資料を事前に送付して予習してもらう • 病理部の協力で、がんゲノム外来の予約が入った時点で病理検体の事前評価を依頼 • 組織検体の場合は同意取得の当日〜翌日に出検 • 血液検体は即日出検、または化学療法中の場合は次回抗がん剤投与の直前に出検 • 看護師に外来同席してもらって受診後の不明点・不安などのフォロー • C-CAT結果が返ってきたらできるだけ早く拠点エキパネ予約(前週に院内エキパネ) • 初期は2ヶ月ほど要したが、エキパネが効率化されて最近は5〜6週後に結果説明

46.

がん遺伝子検査で見つかる遺伝子のうち 対応が必要な遺伝子異常があれば介入を行います • 検出された遺伝子異常がACMG59リスト(1や小杉班リスト(2に掲載されている場合は Clinvarなど各種データベースで病的意義のあるものかどうかを確認し、 必要があれば患者や家族に追加検査(確定診断検査)を提案します。 1) Genet Med 2017. 249−255 2) 『ゲノム医療における情報伝達プロセスに関する提言』2019年12月

47.

さいごに

48.

がんゲノム医療をより円滑に実現するために • がんゲノム医療・がん遺伝子パネル検査は、職種・診療科・部署を問わず 病院内の様々な部署の連携なくしては成り立ちません! (いかに他部署の連携をはかって効率化できるか病院の総合力が問われる) • 対象患者さんを各診療科から紹介してもらわなければ始まらないため 各診療科や近隣医療機関の先生にも対象となる要件などを把握していただいて タイミング良く紹介していただく流れとスムーズに次につなげる仕組みを 作りたいと考えています! • また、がんゲノム外来やエキパネなどを手伝ってくれるかたを募集中です!