がんゲノム医療と滋賀県立総合病院の検査体制について

1.9K Views

October 08, 20

スライド概要

2019年より保険適用された「がん遺伝子パネル検査」を滋賀県内で実施できる体制を整備しています。滋賀県立総合病院におけるがんゲノム医療の現在の体制について説明します。

profile-image

滋賀県立総合病院 化学療法センター 腫瘍内科医

シェア

またはPlayer版

埋め込む »CMSなどでJSが使えない場合

関連スライド

各ページのテキスト
1.

がんゲノム医療と当院の検査体制について 滋賀県⽴総合病院 消化器内科/化学療法部 後藤知之

2.

COI(利益相反)の開⽰ • 開⽰すべきCOIはございません。

3.

がん薬物療法の進歩を⽀える両輪 検査技術の進歩 標的治療の開発 • 病態の解明 • 分⼦標的治療薬の開発 • ゲノム解析技術の進歩 • 併⽤療法の開発

4.

2000年前後から分⼦標的薬の時代が花開く ⽇本内科学会誌 104巻3号 449-455より抜粋

5.

同じ臓器のがんでも、遺伝⼦異常の種類は多彩 J Clin Oncol 2010, 1254-1261 • 同じ臓器のがんでも、遺伝⼦異常は個々⼈で異なる • がん細胞の性質も、治療の効き具合も異なってくる

6.

がん遺伝⼦異常と分⼦標的治療が結びついた ターニングポイント的なIPASS試験 • 遺伝⼦異常の有無によって効果はまったく逆になることがある • 遺伝⼦異常を正しく評価しないと分⼦標的治療は有効にも無効にもなる NEJM 2009. 947−957

7.

それぞれの遺伝⼦異常に応じた治療薬を 使い分けることができるようになりつつある BRAF阻害剤 EGFR阻害剤 HER2抗体 RET阻害剤 ALK阻害剤 ROS1/TRK阻害剤 Transl Lung Cancer Res 2015. 156-164 より改変 • 様々ながんの遺伝⼦異常が次々と明らかにされる • それぞれの遺伝⼦異常に対応する治療薬を選ぶことで⾼い治療効果を上げられる

8.

臓器別から遺伝⼦タイプ別へ治療開発の⽅向転換 プレシジョンメディシンにおける新薬開発 アンブレラ(傘)型試験 バスケット(カゴ)型試験 1つの臓器の 異なる遺伝⼦異常 多くの臓器の 共通した遺伝⼦異常 JAMA Oncol 2017. 423 より改変

9.

genome-basedな臓器横断的治療薬として MSI-Hへの免疫チェックポイント阻害剤が承認された ▪ MSI-H陽性固形がんに対する抗PD-1療法は 臓器の種類を問わずに有効性を⽰し、 2018年12⽉に初の「臓器横断的承認」を受けた。 ▪ 臓器に応じてではなく ゲノム情報に応じた薬物療法が認められる Science 2017, 409-413

10.

臓器横断的な遺伝⼦異常に基づく治療がさらに広がる NTRK融合遺伝⼦陽性の固形がんに対する エヌトレクチニブの腫瘍縮⼩率 ▪ NTRKなどの新しい治療標的への承認薬も相次ぐ ▪ 臓器の種別を超えた治療薬が普及し、 がんゲノム検査の必要性が⾼まる Lancet Oncol 2020, 271-282

11.

個別化された標的治療は予後を改善させる可能性を持つ • 膵癌でゲノム選択的治療を 受けた群はOSが良好であった • 臓器による差異はあるものの 今後重要性は増してゆく Lancet Oncol 2020, 508-518

12.

がんゲノム医療は治療薬の費⽤対効果も改善する EGFR変異陽性肺癌への治療 分⼦標的治療 (チロシンキナーゼ阻害剤) 従来の化学療法 (ドセタキセル) 治療コスト £ 6854/⼈ 治療コスト £ 5440/⼈ 奏効率 80-90% 奏効率 20〜40% 奏効例1例あたり £ 7,617〜8,568 奏効例1例あたり £ 13,600〜27,200 無効例に要するコスト £ 68,544〜137,088 無効例に要するコスト £ 326,400〜435,200 • 薬価は⾼いが奏効率も⾼く、費⽤対効果は改善 • 社会全体では医療費抑制(≠個⼈の医療費負担減) A STRATEGY FOR ENGLAND 2015-2020より改変

13.

がんゲノム医療がその有効性を発揮するためには • がんゲノムに基づく個別化医療は • 適切な治療標的を選べば治療効果が⾼い • 有効例・無効例が予測/選別できるため費⽤対効果がよい • 希少な遺伝⼦異常に対する新薬開発の臨床試験も促進される • がんゲノム医療の普及するためには • 多数の遺伝⼦異常を安価に効率よく検出する検査⽅法が必要となる • 検出された遺伝⼦異常に応じた標的治療薬の開発(発展途上) • 推奨された未承認新薬に関する健康保険制度上のジレンマの解決 網羅的な検査を 臨床に導⼊するための がん遺伝⼦パネル検査

14.

がん遺伝⼦パネル検査とは 何ですか?

15.

がん遺伝⼦パネル検査を使うと何ができるか • DNA等を⼤規模に解析できる次世代シークエンサーを⽤いて ⾼速・効率的・網羅的にがん遺伝⼦異常を解析することが可能となった • がんに関連する数百の遺伝⼦をセットにして⼀括解析し 治療薬の候補を探すことを可能にする(検査の標準化) • MSI(マイクロサテライト不安定性)やTMB(腫瘍変異量)、 多くのコンパニオン診断(EGFR,ALK,KRAS,HER2等)も評価 • 変異データは臨床的意味づけ(アノテーション)の過程を経て 遺伝⼦変異の解説や臨床試験情報とともに解析レポートを作成

16.

2018年12⽉ がん遺伝⼦パネル検査 製造販売承認 ⽇本経済新聞 2018.12.13

17.

2019年6⽉ がん遺伝⼦パネル検査 保険承認 毎⽇新聞 2019.5.30

18.

保険承認された2つのパネル検査システム それぞれの検査に特⾊がありますので 病気の状態や検査⽬的に合わせていずれかの がん遺伝⼦パネル検査を選択します

19.

近隣で利⽤できる主ながん遺伝⼦パネル検査 保険診療で実施可能 検査の種類 オンコガイド NCCオンコパネル Foundation One CDx OncoPrime Guardant 360 診療形態 保険診療 先進医療 保険診療 ⾃由診療 ⾃由診療 費⽤ 560,000円 560,000円 880,000円 420,000円(初 回) 提出検体 腫瘍FFPE検体+ 末梢⾎2mL 腫瘍FFPE検体 腫瘍FFPE検体 末梢⾎20mL (Liquid biopsy) 対象遺伝⼦数 114遺伝⼦ 324遺伝⼦ 223遺伝⼦ 73遺伝⼦ 解析場所 ⽇本国内 ⽶国 ⽶国 ⽶国 所要時間 20営業⽇ 14⽇間 1か⽉ 10⽇間 ⼆次的所⾒ ほぼ確定できる 再検査が必要 再検査が必要 再検査が必要 C-CAT登録 必要 必要 不要 不要 ※ ⾮⼩細胞肺癌⽤の「オンコマイン Dx Target Test マルチ CDxシステム」も検査の基本原理は同じだが 今回のがんゲノム医療と若⼲⽤途が異なるため割愛

20.

FoundationOne CDx の検出遺伝⼦ FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル 添付⽂書より

21.

パネル検査レポートの⼀例(FoundationOne CDx) 患者の臨床情報 当該臓器での 治療薬 TMB(腫瘍変異量) MSI 検出された 遺伝⼦異常 実施中の臨床試験 他臓器で 承認されている 治療薬 FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル 解析結果レポートサンプルより

22.

パネル検査レポートの⼀例(FoundationOne CDx) 検出された遺伝⼦に 関する主な治療薬候補や 現時点のエビデンス FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル 解析結果レポートサンプル C-CATから提供される 参加可能な候補となる 国内治験・臨床試験情報 C-CAT 調査結果 説明書 第2版

23.

がんゲノム医療の提供体制は どのようになっていますか?

24.

がんゲノム医療を⾏うことができる指定病院 • がん遺伝⼦パネル検査を保険診療で⾏うための認定施設 • がんゲノム医療中核拠点病院(全国で12カ所) • がんゲノム医療拠点病院(33カ所) • がんゲノム医療連携病院(161カ所) 京都⼤学 滋賀医⼤ 滋賀県⽴総合病院 京都府⽴医⼤病院 京都医療センター 京都第⼀・第⼆⽇⾚ 京都桂病院、など 奈良医⼤ 天理よろず相談所病院 ⼤阪⼤学 近畿⼤学 ⼤阪国際がんセンター 連携病院は多数あり 和歌⼭医⼤ 2020年4⽉1⽇現在

25.

パネル検査の対象となる範囲 固形がんで 造⾎器腫瘍は不可 根治切除不能な進⾏・再発病変で 標準治療終了後 または終了⾒込みの がん OR 原発不明癌 OR 標準治療のない 希少がん 検査後にも薬物療法に耐える全⾝状態 (2〜3ヶ⽉後にもPS 0〜1が保てることが期待できる) DNA抽出可能な検体があるか、今後採取できる 根治切除可能な病変は不可 パネル検査結果説明までに2ヶ⽉、 治験参加にさらに1ヶ⽉程度必要 2〜3年以内に採取された検体で 量もある程度必要

26.

がん遺伝⼦パネル検査の 実施の流れは どうなっていますか?

27.

パネル検査だけでは治療につなげることができない • パネル検査は変異を起こした遺伝⼦名とその部位しか教えてくれない。 • パネル検査の結果の臨床的な意味やどのような治療が適⽤可能かは、 専⾨家による解釈が必要となる。 • がんゲノム医療中核拠点病院での エキスパートパネル(専⾨家会議)で検討を⾏う。 連携病院はWebカンファレンスとして参加する。

28.

エキスパートパネル(専⾨家会議)とは • パネル検査結果の「臨床的意義」、「エビデンスレベル」、 「治療薬の選択」、「⼆次的所⾒開⽰の必要性」などの検討 • ①担当医、②がん薬物療法の専⾨医、③病理医、④臨床遺伝専⾨医、 ⑤遺伝カウンセラー、⑥分⼦遺伝学かがんゲノム医療の専⾨家、 ⑦データ解析技術者の参加が要件 (中核拠点病院の要件でもある) • 中核拠点病院で開催、連携病院はWeb会議システムで参加 • 治験情報などはC-CAT(CKDB)や検査会社から取得 CKDB : cancer knowledge database • 現在は12箇所の中核拠点病院が独⾃の⽅法で開催しているが、今後は標準化ワー キンググループが内容の整備を⾏う

29.

がんゲノム医療の検体と検査の流れ 当院が担う部分 検査前には 検査の意義や有⽤性 およびその限界に ついて理解して 頂く必要があります 正確な検査のため DNAを抽出する ⼿術・⽣検検体は 質・量ともに良好で ある必要があります 中核拠点病院で開かれる エキスパートパネルは ・主治医(担当医) ・がん薬物療法専⾨医 ・臨床遺伝専⾨医 ・病理医 ・分⼦遺伝学の専⾨家 ・バイオインフォマティシャン (データ解析技術者) の参加が必須要件です

30.

がん遺伝⼦パネル検査の 検査費⽤は どの程度必要ですか?

31.

検査の流れ • がん遺伝⼦パネル検査は保険適⽤となり1〜3割の⾃⼰負担 • ⾼額療養費制度の対象にもなります • ただし検査終了後の治療費は原則として保険適⽤となっていません • 治験や臨床試験、患者申出療養以外で未承認薬を使⽤する場合は全額⾃⼰負担 • ⾼額療養費制度の対象にもなりません • ⽉額30〜100万円と治療費が⾮常に⾼額になる可能性があることに注意

32.

保険償還には、さらに細かい条件も • 実施は がんゲノム医療中核拠点病院 や がんゲノム医療連携病院 のみ 滋賀県では連携病院は 当院 と 滋賀医科⼤学附属病院 (2019年10⽉現在) • 患者1⼈につき1回限り • 検査結果をエキスパートパネルで検討する必要あり • 検査結果を書⾯で患者に説明すること • 保険点数は56,000点 (検査実施料 8,000点+判断説明料 48,000点) 判断説明料は結果説明時に算定できる =1ヶ⽉後の結果説明時に患者死亡の場合は算定不可 (DPC病院に⼊院中の場合算定できない) 検査会社に42万円+消費税、中核拠点病院に5万円 採⾎および病理検体処理コスト、相談⽀援センターや外来の⼈件費

33.

パネル検査後の 治療薬へのアクセスは どのようになっていますか?

34.

がん遺伝⼦パネル検査の後の治療の流れ 未承認薬の治験に参加する(@治験実施施設) • その遺伝⼦異常に対応する治療薬の治験が実施されている場合に • 実際に治験に参加できる割合はごく⼀部(国がんで10%、京⼤で1%?) 患者申出療養制度(受け⽫試験)を利⽤する(@中核拠点病院) • 未承認の薬剤を混合診療に近い形で利⽤できる制度(⼀定の費⽤負担がある) • 患者申出療養制度は中核拠点病院でも受けられるようになる 保険適⽤外の⾃費診療で治療を受ける • ⾼額の⾃⼰負担が⽣じる (薬剤により⽉100万円?) • 国内で⼊⼿できる治療薬ならおおむね実施可 • ⼊院基本料、検査、副作⽤の対処まで含めて保険適⽤外になる

35.

実際に治療につながる変異が⾒つかる頻度は? • NCCオンコパネル、およびその他のパネルからも 遺伝⼦変異が⾒つかる可能性は決して低くないが 実際に治療につながる変異は限られる • ⽶国MSK-INPACT :何らかの治療標的あり 36% 臨床試験登録 11% • 国がんTOP-GEAR 2nd :何らかの治療標的 59% 治療登録 13% • 京⼤病院 1%? • 治療につながる変異が全く⾒つからないケースも • 腺癌や扁平上⽪癌に⽐べて未分化癌は厳しいかもしれない • ⾁腫などは治療候補が⾒つかりにくい Nat Med 2017. 703-713 Cancer Sci 2019. 1480-1490

36.

未承認薬治験の参加へのハードル • ⽶国に⽐べて⽇本は治験が少なく、 ⽇本の未承認薬治験の90%は⾸都圏で⾏われている =関⻄圏で受けられる治験は少ない(東京へ通院できるか?) • 国⽴がんセンターでは10%弱が治療につながっているが京⼤・九⼤は1%? • 全⾝状態が良好であるだけでなく、対象臓器や前治療により 遺伝⼦変異があっても治験に参加できるとは限らない • 治験参加までのタイムラグを待てるか • がん遺伝⼦パネル検査の結果説明まで2ヶ⽉、治験参加に1ヶ⽉程度必要 • 治療を受けられても有効であるとは限らない

37.

患者申出療養制度とは何ですか? • 未承認薬などの先進的な医療を保険外併⽤療養として使⽤ • 混合診療の制約なく、健康保険内の診療は保険下で受けつつ 未承認薬部分だけ⾃⼰負担で受けることができる ⾃由診療 患者申出療養 ⼊院基本料・その他の技術料 10割負担 健康保険適⽤ 薬剤費 10割負担 10割負担 ⾼額療養費制度の 対象にもなる • 治療薬は⾃⼰負担 or 製薬会社の無償提供(⼀部の治療薬のみ) • がんゲノム医療では、エキスパートパネルと担当医の推奨を受けた場合に限って、 患者申出療養をがんゲノム医療中核拠点病院で受けられる (全⾝状態が基準を満たし、中核拠点病院まで通院可能な⽅) • 詳しい制度の内容は国⽴がん研究センターのウェブサイトで解説されています https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2019/1002_2/index.html

38.

国⽴がん研究センターのTOP-GEAR計画の場合 総参加数 研究不適格患者 腫瘍検体が⼊⼿できず 解析症例数 DNA量が不⾜ DNA品質が不良 検体DNAコンタミネーション カバレッジ不⾜(主に読み取り不良) 解析成功症例は 全体の81.3% Cancer Sci 2019. 1480-1490

39.

国⽴がん研究センターのTOP-GEAR計画の場合 ▪ ⾮⼩細胞肺癌・⼤腸癌などでは 薬剤候補が⾒つかりやすい ▪ 腺癌に⽐べて扁平上⽪癌は厳しい ▪ ⾁腫はさらに候補が⾒つかりにくい ▪ TOPGEAR第2期の187症例の内訳 n n n 1つ以上の遺伝⼦異常 83.4% 3学会ガイダンス3A以上 58.3% 治療薬投与症例 25例(13%) n そのうち治験 15例(8%) n 既承認薬 6例(3%) n 適⽤外⾃費診療 4例(2%) Cancer Sci 2019. 1480-1490

40.

保険適⽤1年後の主要な病院のパネル検査実施状況 国⽴がん研究セン ター中央病院 東北⼤学病院 静岡がんセンター 横浜市⽴市⺠病院 病院の⽴場 中核拠点病院 中核拠点病院 拠点病院(2020年4⽉ より中核拠点病院) 連携病院 パネル検査実施数 (院内/院外) 318 (未集計) 166 (89/77) 134 (127/7) 35 (33/2) 使⽤製品(NCCオンコパネ ル/FoundationOne CDx) 210/108 13/153 7/127 4/31 年齢中央値 56 (3〜86) 58 (1〜80) 60 (17〜83) 55 (26〜84) 治験登録数 10 (3%) 7 (4%) 1 (1%) 0 エキスパートパネル検討症 例数(⾃施設/他施設) 711 (275/436) 191 (133/58) 96 (81/15) 対象外 • パネル検査の実施件数はFoundationOne CDx>NCCオンコパネル • 検体が少ない、遺伝性腫瘍の疑いが強い場合にはNCCオンコパネルが使われることも 週刊医学界新聞 第3377号(2020年6⽉29⽇)

41.

遺伝性腫瘍や ⼆次的所⾒(偶発的所⾒)とは 何ですか?

42.

がん遺伝⼦検査によって偶然に 遺伝性腫瘍の原因遺伝⼦異常が判明することがあります • 多数のがん関連遺伝⼦を網羅的に調べることで がんに⽣じた遺伝⼦の異常(体細胞系列)だけではなく 親から受け継いだ遺伝⼦(⽣殖細胞系列)に発がんの原因が判明することがあります BRCA1/2 HBOC 遺伝性乳癌卵巣癌症候群 • 乳癌、卵巣癌、膵癌、前⽴腺癌に関与 • オラパリブなどのPARP阻害剤が有望 ミスマッチ 修復遺伝⼦ リンチ症候群 • ⼤腸癌、⼦宮体癌、胃癌などに関与 • MSI-Hとなり免疫チェックポイント阻害剤が有望 TP53 リ・フラウメニ症候群 MEN1/2 多発性内分泌腫瘍症 • 乳癌、⾻軟部腫瘍、急性⽩⾎病、副腎癌に関与 • MEN1は下垂体腫瘍、膵腫瘍、副甲状腺腫瘍に関与 • MEN2は甲状腺髄様癌、褐⾊細胞腫などに関与

43.

がんゲノム医療を⾏う病院は 遺伝カウンセリングの体制が整備されています • がん遺伝⼦パネル検査やHBOC診療などの遺伝性腫瘍を⾏う医療機関は 認定遺伝カウンセラーなどによる遺伝カウンセリングの体制を整備しています • 若年発症や濃厚な家族歴を有するケースは特に注意が必要ですが、 家族歴がないケースもあり注意が必要です • 事前に開⽰を希望するかどうかを確認しておきます(知る権利と知りたくない権利) • 本⼈や家族にとって今後の健康管理に有益な情報をお知らせする 家族も含めた精神的なケア、⻑期的なサーベイランス(検診)が必要となることも

44.

がん遺伝⼦検査で⾒つかる遺伝⼦のうち 対応が必要な遺伝⼦異常があれば介⼊を⾏います • 検出された遺伝⼦異常がACMG59リスト(1や⼩杉班リスト(2に掲載されている場合は Clinvarなど各種データベースで病的意義のあるものかどうかを確認し、 必要があれば患者や家族に追加検査(確定診断検査)を提案します。 1) Genet Med 2017. 249−255 2) 『ゲノム医療における情報伝達プロセスに関する提⾔』2019年12⽉

45.

実際にがん遺伝⼦パネル検査を 受けたい⽅へ

46.

実際にがん遺伝⼦パネル検査を受けたい⽅へ • 病院ごとに受け⼊れ体制が異なるので各病院に確認を • 多くの病院ではがん相談⽀援センターなどが窓⼝になっています • 保険適⽤となる条件を満たしているかご確認ください • 標準治療終了後/終了⾒込みの固形がん、原発不明がん、希少がん • 検査後にも化学療法が可能な安定した全⾝状態が必要です • 全⾝状態の不安定な⽅の検査はお断りすることがあります • DNA抽出が可能な検体があるかご確認ください • おおむね3年以内に採取されており、 • 10%中性緩衝ホルマリン溶液で固定されたFFPE検体 • 腫瘍細胞が30%以上含まれた切⽚で未染スライド10枚 • EUS-FNAなど微⼩サンプルは検体量が不⼗分な可能性あり

47.

院外からの検査紹介の流れ(当院の場合) 紹介元主治医の先⽣ 【当院】地域医療連携室 • 検査相談・がんゲノム外来申込書等 • 診療情報や検査データ・検体の確認 • がんゲノム外来予約 • 患者への検査説明 【当院】がんゲノム外来 • 病理検体の確認 • 病理検体不適の場合は再⽣検をお願いします 検査提出 【当院】地域医療連携室 • エキスパートパネル(院内→京⼤連携Web) • レポート作成 • 結果説明 • 治験や患者申出療養制度への紹介、⾃費治療

48.

当院は「遺伝⼦診療センター」で がん遺伝⼦パネル検査や遺伝カウンセリングなどを⾏います • 遺伝カウンセリングや がんゲノム医療の窓⼝を⼀本化 • 遺伝カウンセリング • 遺伝性腫瘍患者のフォローアップ • がん遺伝⼦パネル検査 • (将来的には⾮がん疾患にも拡張) • 認定遺伝カウンセラーや医師・看護師・ MSWなど現在46⼈のWGを構成 • 詳しい診療内容はウェブサイトを ごらんください。 滋賀県⽴総合病院 遺伝⼦診療センター

49.

がん遺伝⼦パネル検査に関するご注意 治療に有⽤な 遺伝⼦が⾒つかる 可能性について 検査後の 医療費について 治療に有⽤な遺伝⼦変異が⾒つかる可能性は約10〜20%と低く、 また遺伝⼦変異が⾒つかっても治療薬が使えないこともあります。 したがって実際に治療薬を投与できる可能性は⾼くはありません。 本検査の結果をもとに未承認の治療薬の投与を受ける場合は、 治療費は保険適⽤外で全額⾃⼰負担(10割負担)となります。 ⼀定額以上の医療費の⾃⼰負担が免除される ⾼額療養費制度の対象ともなりません。 その他にも注意点がありますので詳しくはお問い合わせください。

50.

さらに詳しくお聞きになりたい⽅へ 滋賀県⽴総合病院のがん遺伝⼦パネル検査について さらに詳しい話をお聞きになりたい⽅は 滋賀県⽴総合病院のがん相談⽀援センターにご相談ください 滋賀県⽴総合病院 がん相談⽀援センター 077-582-8141(電話) 077-582-5073(FAX) [email protected](メール)

51.

将来の開発展望は どのようになっていますか

52.

標準治療が始まる前から最善の治療を導⼊する • 現在は標準治療終了後または終了⾒込みに⾏われる検査を 標準治療開始前から⾏うことで効果を最⼤化することを⽬指す • 現在、先進医療としての取り組みが始まっている

53.

組織検体が不要な⾎液で検査するリキッドバイオプシー リキッドバイオプシーに対応した FoundationOne CDx • ⼿術検体などの組織を使わず、 ⾎液中にただよう腫瘍DNA(ctDNA)を使うリキッドバイオプシー検査 • 低コスト・低侵襲で検体を採取できる • リアルタイムの腫瘍検体を使った評価ができる • 古い⼿術検体は検体採取から現在までの治療経過を反映していない可能性がある • 保険適⽤の問題がクリアできれば治療経過に応じて複数回の検査もできる • 薬物療法への耐性出現や治療効果判定も⾏えるようになる可能性

54.

まだまだ発展途上だが今後の可能性を感じさせる技術 • 現在残されている様々な課題 対応医療 治療に 機関が少 結びつき ない にくい 治療費が 治験は ⾼額 東京集中 • まだまだ保険適⽤から1年あまりで、技術的にも制度的にも未熟な点が多いが 今後⼤きく発展する可能性を秘めた領域 • 進歩が早いので私たちも常に学びながら取り組んでいます ぜひ⼀緒に新しいがん診療のかたちを盛り上げてゆきましょう!!

55.

参考資料 がんゲノム医療 遺伝⼦パネル検査 実践ガイド がんゲノム情報管理センター (C-CAT) 患者・⼀般向け資料 https://www.ncc.go.jp/jp/c_cat/index_ka n_jya.html 患者・⼀般向けパンフレットや 解説動画(YouTube)・各種参考資料 がん情報サービス がんゲノム医療 https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatm ent/genomic_medicine/genmed02.html がんゲノム医療に関する解説、受けられる 医療機関、参考⽂献集 Cancer Board Square 2019年7⽉号 特別企画 はじめての がん遺伝⼦パネル検査 特別講義 おしえてがんゲノム医療 中外製薬 https://gan-genome.jp がん遺伝⼦やゲノム医療に関する解説 臨床検査 2019年8⽉号 特集 知っておきたいがん ゲノム医療⽤語集