がん化学療法 副作用を軽減して継続するために(滋賀県立総合病院まなびや2018)

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December 18, 18

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滋賀県立総合病院 化学療法センター 腫瘍内科医

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各ページのテキスト
1.

がん化学療法 副作用を軽減して継続するために 滋賀県立総合病院 消化器内科/化学療法部 後藤知之

2.

化学療法を受ける患者の苦痛症状 ▪ 近年は精神的な症状の重要性の認識が高まりつつあるが 身体的症状を苦痛と感じている方は少なくない

3.

なぜ、がん化学療法では副作用が出るのか

4.

抗腫瘍薬は一般的な薬よりも毒性が出やすい 一般的な薬 抗腫瘍薬 毒性(副作用) 治療効果 治療効果 毒性(副作用) 血中濃度 血中濃度 ▪ 治療効果と毒性(副作用)の曲線が近い ◼ 安全な治療域(副作用がでない血中濃度)は存在しない ◼ 効果が出る血中濃度では、必然的に副作用も出る宿命

5.

副作用がある患者では効果が期待できる ▪ 大腸がんに対する抗EGFR抗体は 皮膚障害が強く出たほうが効果が期待できる Target Oncol 2013. 173-181

6.

副作用がある患者では効果が期待できる ▪ 乳癌術後のホルモン療法でも 副作用がよく出ている患者では長期予後が良い J Clin Oncol 2013. 2257-2264

7.

化学療法の副作用を先回りして対策する ▪ 極力、副作用を出さずに治療効果を維持する「落としどころ」 ◼ 治療が過剰に強すぎてはかえって生活の質を損ねてしまう ◼ 回避可能な副作用のために治療強度を下げることも不利益になる ▪ 看護師や薬剤師の協力も得ながら、 回避可能な副作用ははやめに対策を講じる ◼ 治療の目的、どの程度の効果が見積もられるかを知っておく ◼ 必要なセルフケアを学び、副作用が出る前から対策を行う

8.

先回りしての副作用対策の効果が出やすい場面 冷やして副作用をふせぐ (クライオセラピー) 外用薬(塗り薬)と 皮膚障害 先回りでふせぐ 感染症の予防 「副作用止めの副作用」 による便秘の対策

9.

冷やして副作用をふせぐ (クライオセラピー)

10.

皮膚や爪の障害は生活の質を低下させる Lancet Oncol 2015. e181-e189

11.

手足の冷却で皮膚や爪の障害を軽減する ▪ 冷却で皮膚・爪障害が起こる部位の血流を減らす ◼ タキサン系薬剤=パクリタキセル、ドセタキセルなど ◼ 乳癌、肺癌、胃癌、卵巣癌、頭頚部癌、前立腺癌、そのほか ◼ 薬剤の点滴中90分間、冷却グローブを装着して障害部位を冷却 冷却による皮膚・爪障害の予防効果 素手群 51% 59% 冷却群 27% 11% 皮膚障害 爪障害 J Clin Oncol 2005. 4424-4429

12.

冷却は「末梢神経障害」も軽減する作用がある ▪ 冷却はタキサンによる末梢神経障害にも有用 ◼ オキサリプラチンによる末梢神経障害とは機序が異なる 大腸癌・胃癌のFOLFOX・SOXなどの神経障害には冷却はダメ! 冷却による末梢神経障害の軽減 非冷却群 81% 冷却群 64% 28% 25% 手の症状 足の症状 JNCI 2017 djx178

13.

冷却でなく圧迫で血流を落とす方法もある ▪ 冷却グローブは意外と高価、冷やすにも時間がかかる ▪ キツめの手術用手袋を使用して手指を圧迫し血流を減らす ◼ ◼ 理想のサイズより1~2サイズ小さい手袋を2枚重ねで使用する 当院売店にもあります (Sサイズ、SSサイズのみ) ◼ 保冷剤を握るのも効果あり ◼ 足には弾性ストッキングも

14.

脱毛や口内炎にも有効性がある ▪ 冷却療法は化学療法の脱毛をおよそ半減させる ◼ ただし頭皮の冷却は専用キャップなどが必要で普及はまだまだ ▪ 点滴中に氷を舐めることで口内炎を軽減することができる ◼ ◼ 口内炎を高頻度にきたす内服薬の場合は適用できない 当院でも積極的に 手術グローブや手指冷却、氷なめを 取り入れて実践しています!

15.

外用薬(塗り薬)と皮膚障害

16.

抗腫瘍薬による皮膚障害も先回りで対処が重要 ▪ 抗EGFR抗体によるざ瘡様皮疹 ◼ ◼ アービタックス、ベクティビックスなど 保湿+日焼け止め+抗菌薬(テトラサイクリン) ※皮膚障害が出る前から ▪ マルチキナーゼTKIによる手足皮膚反応 ◼ ネクサバール、スチバーガなど ◼ 保湿、荷重・物理的刺激をかけない、皮膚を清潔に保つ ▪ カペシタビンによる手足症候群 ◼ こまめな保湿、物理的刺激・熱刺激を避ける ▪ セルフケア無しで副作用対策をすることは難しい

17.

先回りでふせぐ感染症の予防

18.

がんに罹患している人は感染を起こしやすい ▪ 病状そのものや治療により感染症を招きやすい ◼ 原疾患(閉塞性肺炎、胆管炎、尿路閉塞、嚥下機能障害) ◼ 抗腫瘍剤(白血球減少)、ステロイド、CVポート ◼ バリア障害(化学療法や放射線治療による皮膚障害・口腔粘膜炎) ▪ がんがあると一度起こした感染症が重篤化しやすい ◼ PS不良、臓器機能低下、治療遅延 ◼ 感染を機に、がんそのものに対する治療が遅延・中止となる ◼ 感染症の合併で全身状態の悪化に拍車がかかる

19.

予防できる感染症は、先回りして予防を ▪ インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチン ◼ がんなどの基礎疾患がある患者には推奨される Rev Infect Dis 1985. 613-618 Br J Cancer 1999. 219-220 ◼ ◼ 不活化ワクチンは免疫抑制状態でも安全で、不利益は小さい 患者本人だけでなく、家族など周囲も全員ワクチン接種を行い 家庭内に感染源を持ち込ませない工夫も必要 ▪ 口腔内ケア(ブラッシング、保湿、含嗽) ◼ 呼吸器感染症の予防 ◼ 治療による口腔乾燥・口内粘膜炎からの歯肉炎→FN・敗血症 ◼ ビスホスホネート剤による顎骨壊死 ◼ ※ イソジン・クロルヘキシジンうがいは避けること!

20.

化学療法中は、生ものは食べて良い? ▪ 「白血球数が低いときは生野菜や刺身は禁止」は本当? ◼ AMLの導入化学療法で生もの禁止しても感染率は変わらない ◼ ASCOガイドライン2013 「生ものを禁止することは勧められない」 ◼ 肉類禁止で玄米ばかり 食べる仙人のような 食事療法ではなく 生活の質を保つ J Clin Oncol 2008. 5684-5688

21.

「副作用止めの副作用」による便秘の対策

22.

排便をコントロールするという意識が重要 ▪ がん患者は便秘をきたしやすい ◼ 手術後の癒着、消化管狭窄、腹膜播種、癌性腹膜炎 ◼ ADL低下、食事摂取量の低下 ◼ オピオイド系鎮痛剤をはじめとする便が硬くなる薬剤 ◼ 化学療法時の制吐剤は便秘の誘引になる ▪ 特にがん化学療法中の患者は排便コントロールが重要 ◼ 病棟や外来で患者に接する時間の多い看護師の介入がポイント ◼ 緩下剤の種類と使用のタイミングを把握しよう

23.

緩下剤使用のタイミングの考え方 ▪ 抗がん剤投与のタイミングは便秘が生じやすい(∵制吐剤) ◼ 先回りして即効性のある刺激性下剤などで便秘を予防 プラスαの下剤(例:センノシド等の刺激性下剤) ベースの下剤(例:マグミット等の塩類下剤) 便秘リスク 時間経過 Day1

24.

がん患者も「運動」を取り入れることで便秘の改善を ▪ 腹部マッサージ、体幹運動を自発的に取り入れて 排便に関する悩みを改善できる Breast Cancer Res Treat 2016. 99–107

25.

まとめ

26.

がんに関する症状で困ったらご相談ください ▪ がんの化学療法や副作用の対処に困ったり相談事が あるときはご連絡ください ▪ 認定・専門の看護師、薬剤師、医師が在籍しています ▪ 対処困難な問題もありますが、ひとりで悩まずに、 一緒に相談しましょう