103 Views
February 19, 25
スライド概要
本発表では、リスキリングの規定要因およびリスキリングの実施が職業的アウトカムに与える影響を探ります。労働者のITスキルと職場でのITの活用度のミスマッチに着目し、ミスマッチがリスキリング実施にどのように関与するか、また、リスキリングが職業的アウトカムの向上に寄与するのかを明らかにします。
慶應義塾大学商学部商学科山本勲研究会 ホームページ: https://www.yamazemi.info Instagram: https://www.instagram.com/yamazemi2024
卒論最終発表 リスキリング実施の規定要因とその実施 が職業的アウトカムに与える影響の分析 -労働者のITスキルと職場でのIT活用度合いのミスマッチに着目して- 17期 伴野亮太
テーマ概要 リスキリング実施の規定要因とその実施が職業的アウト カムに与える影響の分析 -労働者のITスキルと職場でのIT活用度合いのミスマッチに着目して- 労働者のITスキルと職場でのIT活用度合いのミスマッチに着目し、 ミスマッチがリスキリング実施の規定要因となるのか、また、ミ スマッチのある人材がリスキリング実施により職業的アウトカム が向上するのかを明らかにする 2
アウトライン ① はじめに ② 先行研究 ③ 分析アプローチ ④ 分析結果 ⑤ おわりに 3
アウトライン ① はじめに ② 先行研究 ③ 分析アプローチ ④ 分析結果 ⑤ おわりに 4
はじめに リスキリングとは? 【リスキリングとは?】 • 新しい職種や業務に必要とされるスキルを身に着けるために学び 直すことを指す。(定義はNIKKEIリスキリング) • 近年のAIの台頭に伴う技術的失業やDXブームに伴うDX人材への 急速なニーズの高まりなどから注目が集まっている 5
はじめに リスキリング推進の背景 契機:世界経済フォーラムのリスキリングへの取り組み • 2018年から3年連続でリスキリングセッションを開催 • 2020年の年次総会(ダボス会議)では「2030年までに世界で10億人をリスキリン グすること」を宣言し、各国政府や企業などが参加するイニシアチブが設立され た 6
はじめに 海外での取り組み 出典:リクルートワークス研究所 大嶋寧子「リスキリングをめぐる状況について」 7
はじめに 海外での取り組み 世界各国では官民連携で人々にリスキリングの機 会を提供する動きが広まっている 8
はじめに 国内の取り組み 岸田首相の所信表明演説 • 個人のリスキリング支援に5年間で1兆円を投じる 経済財政運営と改革の基本方針2023 • 「リ・スキリングによるの能力向上支援」、「個々の企業の実態に応じた職務給の導入」、 「成長分野への労働移動の円滑化」の3つが三位一体の労働市場改革として打ち出された 9
はじめに 国内の取り組みの実態 学習活動を行った割合(複数回答) 60 50 実 40 • 雇用者の内、4割程度はリスキリングを実 施していない 施 率 30 ( % 20 ) 10 0 • 2022年度(オレンジ)と2023年度(青)を比 較して、リスキリングの取り組みは進ん でいない 出典:全国就業実態パネル調査2023,2024を元に自作 10
はじめに 国内の取り組みの実態 リスキリングの実施に関して、日本は 海外と比較して取り組みが進んでいな いことがわかる 出典:PwC Japan 「デジタル環境に関する意識調査2021」 11
はじめに 国内の取り組みの実態 60 学習活動を行った割合(複数回答) 国内では、近年のIT需要の高まりに対してリスキリング の取り組みが進んでいない • 雇用者の内、4割程度はリスキリング 50 実 40 施 率 30 ( % 20 ) 10 0 を実施していない • 2022年度(オレンジ)と2023年度(青) 労働者に求められるスキルと実際に保有しているスキル を比較して、リスキリングの取り組み にミスマッチが生じていると考えられる は進んでいない 出典:全国就業実態パネル調査2022,2023を元に自作 12
はじめに リスキリングに関する分析 【規定要因】 • 性別、学歴、業種、職種などの属性による実施しやすさの違い • メンタル状態による実施しやすさの違い • ライフイベントがリスキリングの実施及び継続に与える影響 【効果分析】 • 賃金、雇用に与える影響 • メンタルヘルスに与える影響 規定要因、効果分析ともに幅広く分析が行われている一方で、ミスマッチに着目した分析は 筆者の知る限り行われていない 13
はじめに 本論文の分析 こうした現状を踏まえて、本論文では以下2点を分析する 1 ミスマッチ指標を用いたリスキリング実施の規定要因 2 ミスマッチのある労働者のリスキリングの実施が賃金、メンタルK6、 仕事満足度などの職業的アウトカムに与える影響 14
はじめに 本論文の意義 本論文で分析を行う意義は以下の2点 1 リスキリングの規定要因の分析を通じて、世界的なDXの取り組みやAI の台頭は実際にITのミスマッチのある労働者がリスキリングを実施す る動機になるのかどうかを明らかにすること 2 ミスマッチのある労働者のリスキリングの効果(賃金、メンタルK6、仕 事満足度)を示すことで、ミスマッチの生じてしまった人が実施するリ スキリングは職業的アウトカムに効果があるのかを明らかにすること 15
はじめに 独自性 本論文の独自性は以下の2点 1 労働者のスキルのミスマッチが実際にリスキリング実施の規定要 因となるのかを分析すること 2 ミスマッチのある労働者がリスキリングを実施することによる職業 的アウトカムへの影響を検証すること 16
アウトライン ① はじめに ② 先行研究 ③ 分析アプローチ ④ 分析結果 ⑤ おわりに 17
先行研究 リスキリングの先行研究 リスキリング実施の 規定要因 賃金への影響 就業・転職への影響 ウェルビーイングへ の影響 18
先行研究 リスキリング実施の規定要因 平野 (2007) 原 (2011) 概要:「消費生活に関するパネル 調査」のデータを用いて、自己啓 発行動の決定に関する分析と、自 己啓発が就業に与える影響に関す る分析を実施 概要:日本における個人の自己啓発実 施の規定要因とその効果を分析 結果:比較的高学歴の女性や家計 所得の多い女性が自己啓発を行う。 技術職や技能職と言った専門的知 識が求められる職種の女性が行う 傾向にある Chesters J (2014) 概要:オーストラリアの雇 用と収入に関するパネル データであるHILDAを用い 結果:正社員・正職員、短時間パート、 て、学び直しに取りくみや 長時間パート、派遣社員、無業の人の すい人の特徴や雇用への影 自己啓発実施確率は経営者・役員・自 響について分析 営業と比べて低い。無業者の実施確率 が1番低い。職業能力として何を身に 結果:女性や若い世代の つけるべきかを知らされていることが、 人々が新しく資格取得に取 自分で行う職業能力開発につながる り組みやすい。 19
先行研究 リスキリング実施の規定要因 Jenkins, A. et al(2002) Kawaguchi Daiji (2006) 概要:イギリスのパネルデータを用い て、学び直しを行う人の特徴とそれが 賃金に与える影響について分析 概要:日本人女性のパネルデータを用 いて、企業主導の研修プログラムに参 加する労働者と、その参加による賃金 水準と賃金上昇への影響を分析 結果:中等教育レベル以上の資格を 持って学校を卒業した人や以前に一度 学び直しを行った人は学び直しを行う 可能性が高い。 結果:学歴の高い労働者ほど企業主導 の研修に参加する傾向があることがわ かった。 20
先行研究 リスキリング実施の規定要因 Masako Kurosawa(2001) 概要:日本の事業所と従業員を対象とし た、研修を受ける確率と研修が賃金に与 える影響について分析 大庭 (2020) 概要:JHPS/KHPSのパネルデータを用いて学び直しの 参加・継続要因と学び直しが賃金に与える影響について 分析 結果:人生の希望度合いが高ければいずれの学び直し 結果:労働者がある種の研修を受ける確 率は、労働組合の地位、職業、学歴、年 齢、過去の職務経験に依存するだけでな く、企業の業態や慣行にも依存すること がわかった。 にも参加しやすくなり、仕事への不満度が高いと通学と 通信による学び直しに参加しやすくなる。新規結婚・新 規離婚といった家庭環境の変動が学び直しの継続を妨げ ている。既婚者は未婚者と比べて学び直しに参加しにく いものの、一度参加した場合には未婚者よりも長く継続 する 21
先行研究 リスキリング実施の規定要因 大庭 (2020) Masako Kurosawa(2001) • 学歴や性別、年齢、資格の有無、職種、雇用形態などが 概要:JHPS/KHPSのパネルデータを用いて学び直し リスキリング実施の規定要因となる 概要:日本の事業所と従業員を対象と の参加・継続要因と学び直しが賃金に与える影響につ した、研修を受ける確率と研修が賃金 いて分析 に与える影響について分析 • 企業形態や個人の人生の希望度合い、仕事の不満度合い 結果:人生の希望度合いが高ければいずれの学び直し もリスキリングへの取り組みやすさに影響を与える 結果:労働者がある種の研修を受ける にも参加しやすくなり、仕事への不満度が高いと通学 と通信による学び直しに参加しやすくなる。新規結 確率は、労働組合の地位、職業、学歴、 婚・新規離婚といった家庭環境の変動が学び直しの継 年齢、過去の職務経験に依存するだけ 続を妨げている。既婚者は未婚者と比べて学び直しに でなく、企業の業態や慣行にも依存す 参加しにくいものの、一度参加した場合には未婚者よ ることがわかった。 りも長く継続する 22
先行研究 リスキリングが賃金に与える影響 吉田(2004) 小林・佐藤(2012) 坂本(2018) 概要:「消費生活に関するパネ ル調査」の個票データを使用し、 女性労働者の自主的な自己啓発 がその後の賃金に与える効果を マッチング法で分析 概要:Propensity Score Matching 法を用い、労働者の セルフ・セレクションを考慮し た上で、自己啓発が労働者の再 就職、失業や賃金に及ぼす影響 を分析 概要:自己啓発の実施の有無が2年後の正 規雇用者の賃金の増減に対して影響を与え ているのかを「全国就業実態パネル調査」 のデータを用いて分析 結果:自己啓発を行っても月収 は変化しないが、通学講座や通 信講座を受講すると4年後に年 収が上昇する。 結果:男性、女性とも自己啓発 実施3期後、4期後の賃金が上 昇する傾向が見られた。 結果:個人の能力をコントロールすると賃 金上昇の効果は消失する。専門的な技術を 有する者がその周縁知識となる知識を身に つけることで業務能力や賃金の上昇につな げている。資格取得を通じた学びが実際の 業務能力向上や賃金の上昇につながってい る可能性がある。 23
先行研究 リスキリングが賃金に与える影響 櫨山(2022) Jacobson L et al. (2005) Jenkins, A. et al.(2002) 概要:日本家計パネル調査のパネル データを用いて当年および前年のリス キリングが賃金および幸福度などに及 ぼす影響について固定効果モデルを用 いた重回帰分析を実施 概要:ワシントン州で離職 した労働者の収入とコミュ ニティ・カレッジでの成績 をリンクさせて分析 概要:イギリスのパネルデータを用 いて、学び直しを行う人の特徴とそ れが賃金に与える影響について分析 結果:前年にリスキリングを実施した 人の当年の年収は非実施者と比較して 正に有意であり、正規雇用者に限った 場合でも同様。 結果:コミュニティカレッ ジでの就学は離職者の長期 的な収入を男性で平均約 9%、女性で平均約13%増 加させる。 結果:学び直しが賃金にプラスの影 響を与えるという根拠は見られな かった。しかし、低レベルの資格し か持たずに学校を卒業した男性は、 学び直しにより学位を取得した場合、 賃金は大幅に上昇する。 24
先行研究 リスキリングが賃金に与える影響 Vignoles, A. et al. (2004) Masako Kurosawa (2001) 概要:日本の事業所と従業員 を対象とした、研修を受ける 確率と研修が賃金に与える影 響について分析 結果:日常的な公式訓練の実 施率と非公式訓練の実施期間 の両方が賃金上昇を押し上げ ることがわかった。 概要:NCDS(National Child Development Study)の豊富なデータを用いて、研修が賃 金に与える影響について分析 結果:学び直しの特定の形態である仕事に 関連した研修が、収入にプラスの影響を与 えることがわかった。しかし、企業は研修 によって利益が得られる労働者のみを研修 するため、その影響を考慮すると、学び直 しは必ずしも賃金を引き上げる効果的な方 法とはいえない。 大庭(2020) 概要:JHPS/KHPSのパネル データを用いて学び直しの 参加・継続要因と学び直し が賃金に与える影響につい て分析 結果:通学とカルチャーに よる学び直しは継続的に実 施するほど賃金を高めるこ とが明らかになった。 25
先行研究 リスキリングが賃金に与える影響 Masako Kurosawa (2001) Vignoles, A. et al. (2004) 大庭(2020) • リスキリングの実施は賃金に対して概ね正の影響がある 概要:NCDS(National Child Development 概要:JHPS/KHPSのパネ 概要:日本の事業所と従業員を と考えられる Study)の豊富なデータを用いて、研修が賃 ルデータを用いて学び直し 対象とした、研修を受ける確率 の参加・継続要因と学び直 しが賃金に与える影響につ • リスキリングの実施方法や属性などが賃金の上昇度合い 結果:学び直しの特定の形態である仕事に関 いて分析 連した研修が、収入にプラスの影響を与える 結果:日常的な公式訓練の実施 に影響を与えると考えられる ことがわかった。しかし、企業は研修によっ 結果:通学とカルチャーに 率と非公式訓練の実施期間の両 て利益が得られる労働者のみを研修するため、 よる学び直しは継続的に実 方が賃金上昇を押し上げること その影響を考慮すると、学び直しは必ずしも 施するほど賃金を高めるこ がわかった。 賃金を引き上げる効果的な方法とはいえない。 とが明らかになった。 と研修が賃金に与える影響につ いて分析 金に与える影響について分析 26
先行研究 リスキリングが就業・転職に与える影響 平野 (2007) 概要:「消費生活に関するパネ ル調査」のデータを用いて、自 己啓発行動の決定に関する分析 と、自己啓発が就業に与える影 響に関する分析を実施 結果:通信教育による自己啓発 が就業確率を上げることがわ かった。 小林・佐藤 (2012) 樋口、石井、佐藤(2011) 概要:Propensity Score Matching 法を用い、労働者のセ ルフ・セレクションを考慮した 上で、自己啓発が労働者の再就 職、失業や賃金に及ぼす影響を 分析 概要:KHPSを用いて、能力開発 支援や失業給付にともなう再就 職支援といった政府の支援策が 非正規雇用から正規雇用への転 換に有効に機能しているかにつ いて分析 結果:自己啓発が就業者の無業 化を抑制し、無業者の再就職を 促進する。 結果:特に女性において自己啓 発を行っている人は非正規から 正規雇用への転換割合が高い 27
先行研究 リスキリングが就業・転職に与える影響 小林 (2013) 概要:JHPSのデータを用いて自己啓発の実施が 今後の成長が見込まれる産業や職業への労働移 動を促進するかについて分析 結果:自己啓発の中でも通学や卒業が製造業か らターゲット産業への移動や、非定型相互から 非定型分析への移動を促進させる。通学以外の 自己啓発は非定型分析への移動に持続的な効果 を持つ。 。 Chesters J (2014) 概要:オーストラリアの雇用と収入に関 するパネルデータであるHILDAを用いて、 学び直しに取りくみやすい人の特徴や雇 用への影響について分析 結果:大学レベルの資格を取得した人は 正規雇用に転換しやすい 28
先行研究 リスキリングが就業・転職に与える影響 小林 (2013) Chesters J (2014) • リスキリングの実施は就業、成長分野への転職などに正 概要:JHPSのデータを用いて自己啓発の実施 概要:オーストラリアの雇用と収入に関 の影響があると考えられる が今後の成長が見込まれる産業や職業への労 するパネルデータであるHILDAを用いて、 働移動を促進するかについて分析 学び直しに取りくみやすい人の特徴や雇 用への影響について分析 • リスキリングの実施方法や属性などが就業確率や雇用形 結果:自己啓発の中でも通学や卒業が製造業 からターゲット産業への移動や、非定型相互 結果:大学レベルの資格を取得した人は 態やに影響を与えると考えられる から非定型分析への移動を促進させる。通学 正規雇用に転換しやすい。 以外の自己啓発は非定型分析への移動に持続 的な効果を持つ。 29
先行研究 リスキリングがウェルビーイングに与える影響 櫨山(2022) 概要:日本家計パネル調査のパネルデータを用いて当年および前年 のリスキリングが賃金および幸福度などに及ぼす影響について固定 効果モデルを用いた重回帰分析を実施 結果:最近一年間の幸福度および人生の希望は全体では正の有意差 を得られたが、正規雇用者に限った場合には有意差が出なかった リスキリング実施のメンタルヘルスなどの精神面への影響を分析したものは 数少ないとはいえ、メンタルに対して良い影響を与えることが考えられる。 30
アウトライン ① はじめに ② 先行研究 ③ 分析アプローチ ④ 分析結果 ⑤ おわりに 31
分析アプローチ 理論的背景 ミスマッチ指標 【ミスマッチの測定方法】 平尾(2019)によれば、スキル・ミスマッチの測定方法には大きく主観的計測法と客観的計測法の2つ に分類可能。前者は質問紙調査によるもので、後者はスキルテストなどを伴って大規模な国際調査で 用いられるものである。 【主観的計測法】 平尾(2021)では、スキル過剰及びスキル過少を「個人のスキルの高さ」と「ある仕事をするために 必要とされるスキルの高さ」の差で定義 本論文でも、主観的計測法を用い、「個人のITの知識(個人のスキル)」と「職場 でのIT利用状況(必要とされるスキル)」の差を取ってミスマッチ指標を算出 32
分析アプローチ 仮説 本論文では、以下2つの仮説を立てる 1 ミスマッチの大きい労働者ほどリスキリングを実施しやすい 2 ミスマッチの大きい労働者がリスキリングを実施すると賃金が 上昇し、精神状態も改善する 33
分析アプローチ 仮説① ミスマッチの大きい労働者はリスキリングを実施しやすい 原(2011):職業能力として何を身につけるべきかを知らされていることが、自分 で行う職業能力開発につながる ミスマッチの大きい労働者は、自身の保有するスキルと職場で求められるスキルの 差が大きいため、どのようなスキルを身につけるべきかについて自覚している可能 性が高い このようなミスマッチの大きい労働者はリスキリングを実施しやすい 34
分析アプローチ 仮説② ミスマッチの大きい労働者のリスキリングは職業的アウトカムを向上させる 【賃金】佐野(2015) 人的資本理論を踏まえると、労働者に知識や技 能を身につけさせることは生産性を高め、長期 的な賃金上昇をもたらす 【メンタルヘルス】櫨山(2022) リスキリングの実施により幸福度や人生の希望 に正の影響を与える ミスマッチのある個人の知識や技能を身につけ るために学び直しを行うリスキリングは賃金上 昇に寄与する これらと類似したK6や仕事満足度などのメンタ ル面のアウトカムもリスキリングの実施により 改善することができると考える ミスマッチの大きい労働者がリスキリングを実施すると賃金が上昇し、精神状態も改善する 35
分析アプローチ 推計方法 1 2 リスキリング実施の規定要因 リスキリングの実施が職業的アウトカムに与える影響ーその1 (総合ミスマッチ指標を元に分析) リスキリングの実施が職業的アウトカムに与える影響ーその2 (ミスマッチの種類別に分析) 36
分析アプローチ 推計1 リスキリング実施の規定要因 仮説:ミスマッチ指標が大きい人ほどリスキリングを行う確率が高い 変量効果プロビットモデル Pr Y𝑖,𝑡 = 1 = 𝐹 𝛼 + 𝛽0 M𝑖,𝑡 + 𝛽1 𝑀𝑖,𝑡−1 + 𝛽2 𝑀𝑖,𝑡−2 + 𝛾𝑋𝑖,𝑡 + 𝐹𝑖 【被説明変数】 リスキリングダミー 【説明変数】 ミスマッチ指標(総合、 クラウド、AI、RPA(t,t1,t-2年) 【コントロール変数】 業種ダミー、職種ダミー、男性ダ ミー、大卒ダミー、既婚ダミー、 正規雇用ダミー、年齢ダミー、勤 続年数、大企業ダミー(従業員500 人以上) 37
分析アプローチ 推計2 リスキリング実施の効果の分析 仮説:総合(各種)ミスマッチ指標が大きく、リスキリングを行った人の賃金、メ ンタルK6、仕事満足度は高くなる 固定効果モデル 𝑌𝑖,𝑡 = 𝛼 + (𝛽0 +𝛽1 𝐷𝑖,𝑡−1 )𝑅𝑖,𝑡−1 + (𝛽2 + 𝛽3 𝐷𝑖,𝑡−2 )𝑅𝑖,𝑡−2 + 𝛾𝑋𝑖,𝑡 + 𝐹𝑖 + 𝜀𝑖,𝑡 【被説明変数】 賃金(時給)・K6・仕 事満足度 【ダミー変数】 総合(各種)ミスマッ チ大ダミー(t-1,t-2 年) 【コントロール変数】 【説明変数】 リスキリングダミー (t-1,t-2年) 業種ダミー、職種ダミー、男性ダミー、 大卒ダミー、既婚ダミー、正規雇用ダ ミー、年齢ダミー、勤続年数、大企業 ダミー(従業員500人以上) 38
分析アプローチ 利用データ 使用データ:【日本家計パネル調査(JHPS/KHPS)】 調査時期 2019~2022年 (ミスマッチ指標作成に必要な質問項目が取れる 期間) 39
分析アプローチ 変数 ミスマッチ指標(質問項目) 個人のITの知識 職場でのIT利用状況 上記2つの質問項目で共通して回答が得られる「クラウド」「AI」「RPA」を指標作成に利用する 40
分析アプローチ 変数 ミスマッチ指標(作成手順) ミスマッチ指標 = ITの知識-1 職場でのIT利用状況-1 5 4 • 各質問項目の回答の数値から1を引く理由は、「職場でのIT利用状況」の「5:わからない」と いう選択肢を除去して分析を行うため • 上記の操作をした後、回答の選択肢の数で割ることで0~1(知識は0~0.8)の間の数値を取る ように変換し、差を取る(ミスマッチ指標の値は-0.75~0.8の値を取る) • 上記の手順で「クラウド」「AI」「RPA」それぞれのミスマッチ指標を作成した後、3つの平 均を取った「総合ミスマッチ指標」を作成する 41
分析アプローチ 変数 その他変数 • (各種)ミスマッチ大ダミー:それぞれのミスマッチ指標を5つに分割し、第5分位(ミス マッチの大きい上位20%)に該当すると1を取るダミー変数 • 賃金(時給) :ボーナス込みの年収を時給換算したもの • メンタルK6 : メンタルK6に関する6つの質問項目の回答の数値を合計し たもの。数値が大きいほどメンタル状態が良いことを示す • 仕事満足度 : 現在の仕事への満足度に関する質問項目の回答の数値。数 値が大きいほど満足度が高いことを示す 42
分析アプローチ 基本統計量 雇用形態 全サンプル リスキリングダミー 時給(ボーナス込み) メンタルK6 仕事満足度 クラウドミスマッチ AIミスマッチ RPAミスマッチ 総合ミスマッチ クラウドミスマッチ大ダミー AIミスマッチ大ダミー RPAミスマッチ大ダミー 総合ミスマッチ大ダミー 正規雇用 雇用形態 非正規雇用 0.203553 0.282811 0.163821 (0.4026424) (0.450373) (0.370116) 2289.253 2804.184 1800.519 (3711.224) (2828.375) (4331.609) 25.489110 25.501940 25.482270 (4.717674) (4.756612) (4.696943) 5.313029 5.516287 5.200414 (2.487937) (2.387226) (2.535048) -0.055455 -0.030834 -0.086610 (0.2704283) (0.2855405) (0.2465363) -0.211669 -0.208044 -0.215907 (0.2126443) (0.225216) (0.1968743) -0.010611 -0.016397 -0.003793 (0.1813224) (0.2017277) (0.1535861) -0.326038 -0.305890 -0.349237 (0.3984002) (0.4279837) (0.3600172) 0.205584 0.272271 0.121196 (0.4041509) (0.4451752) (0.3263982) 0.5424371 0.519710 0.569009 (0.498224) (0.4996646) (0.4952766) 0.657738 0.601396 0.724138 (0.474496) (0.4896661) (0.4470069) 0.204507 0.252105 0.149697 (0.403369) (0.4342785) (0.3568282) 男性ダミー 既婚ダミー 勤続年数 正規雇用ダミー 全サンプル 正規雇用 非正規雇用 0.486762 0.738225 0.361860 (0.4998273) (0.4396074) (0.4805424) 0.738927 0.722754 0.746960 (0.4392219) (0.447646) (0.434757) 12.762120 14.151990 11.530560 (12.35615) (11.16518) (13.20124) 0.157405 0.293060 0.090025 (0.3641838) (0.4551726) (0.2862202) 0.240216 0.359513 0.180961 (0.4272166) (0.4798651) (0.3849889) 0.331862 (0.4708843) 大企業ダミー 大卒ダミー 各変数は上に平均値、括弧内に標準誤差を示 している 43
分析アプローチ 基本統計量 雇用形態 全サンプル 正規雇用 非正規雇用 0.014187 0.022804 0.009907 (0.1182608) 0.149279 (0.0990394) 0.002083 0.003449 0.001404 (0.0455887) 0.058623 (0.0374471) 0.010063 0.018858 0.005694 (0.0998075) 0.136025 (0.0752447) 0.001887 0.003200 0.001235 (0.043396) 0.056478 (0.0351139) 0.001712 0.001988 0.001574 (0.0413348) 0.044547 (0.0396424) 0.006568 0.007643 0.006034 (0.0807743) (0.0870886) (0.077442) 0.005568 0.003355 0.006666 (0.0744079) (0.0578285) (0.0813752) 7100 3800 3300 専攻ダミー(ベース:人文科学) 社会科学専攻ダミー 理学専攻ダミー 工学専攻ダミー 農学専攻ダミー 医歯学専攻ダミー 教育学専攻ダミー 家政専攻ダミー 標本数 • 標本数は各サンプルのリスキリングダミー の標本数を掲載している • リスキリングの実施率に関してサンプルの 偏りや認識の相違がある可能性がある (本サンプル約20%⇔※外部調査約40%) ※パーソルイノベーション 注1)括弧内は標準偏差を示す。 注2)年齢層ダミー、業種ダミー、職種ダミーは掲載を省略している。 44
アウトライン ① はじめに ② 先行研究 ③ 分析アプローチ ④ 分析結果 ⑤ おわりに 45
推計1 リスキリング実施の規定要因 46
分析結果 予備的分析(リスキリング実施の規定要因) リスキリング実施割合(%) 30 25 20 15 10 5 0 • クラウド、AI、RPA、総合ミスマッチ指 標のそれぞれで上位20%に含まれるサン プルとその他のサンプル(下位80%)でリ スキリングを実施した割合を比較 • クラウドミスマッチと総合ミスマッチは 大ミスマッチのサンプルの方が実施割合 が高く、クラウドと総合ミスマッチが大 きい方がリスキリングを実施する可能性 が高いと考えられる 47
分析結果 予備的分析(リスキリング実施の規定要因) 30 リスキリング実施割合(%) 25 20 15 10 5 0 • クラウド、AI、RPA、総合ミスマッチ指標 のそれぞれで上位20%に含まれるサンプ ルとその他のサンプル(下位80%)でリス キリングを実施した割合を比較(ミスマッ チの年度はいずれもt-1年) • クラウドミスマッチのみ大ミスマッチの サンプルの方が実施割合が多く、t-1年の クラウドミスマッチが大きい方がリスキ リングを実施する可能性が高いと考えら れる 48
分析結果 予備的分析(リスキリング実施の規定要因) 30 リスキリング実施割合(%) 25 20 15 10 5 0 • クラウド、AI、RPA、総合ミスマッチ指標 のそれぞれで上位20%に含まれるサンプ ルとその他のサンプル(下位80%)でリス キリングを実施した割合を比較(ミスマッ チの年度はいずれもt-2年) • クラウドミスマッチと総合大ミスマッチ のサンプルはその他に比べて実施割合が 多く、t-2年のクラウドと総合のミスマッ チが大きい方とリスキリングを実施する 可能性が高いと考えられる 49
分析結果 推計1 リスキリング実施の規定要因 (全サンプル版) (1) クラウドミスマッチ クラウドミスマッチ(t-1年) クラウドミスマッチ(t-2年) (2) 被説明変数:リスキリングダミー (3) (4) (5) 0.619** 0.914** (0.283) (0.421) -0.150 -0.349 (0.272) (0.392) -0.254 -0.249 (0.269) (0.425) AIミスマッチ AIミスマッチ(t-1年) -0.341 -1.183** (0.368) (0.561) -0.627* -0.594 (0.364) (0.553) -0.0818 AIミスマッチ(t-2年) RPAミスマッチ(t-1年) RPAミスマッチ(t-2年) (0.610) -0.252 -0.377 (0.455) (0.610) 0.0843 0.392 (0.443) (0.583) 0.248 0.708 (0.434) (0.560) 総合ミスマッチ 0.0284 - (0.257) 総合ミスマッチ(t-1年) -0.341 - (0.249) 総合ミスマッチ(t-2年) 0.0673 - (0.259) 男性ダミー 大卒ダミー 既婚ダミー 正規雇用ダミー 勤続年数 大企業ダミー(従業員500人以上) 定数項 0.0839 -0.0745 -0.141 -0.134 -0.159 (0.225) (0.223) (0.256) (0.286) (0.299) 0.433** 0.363* 0.537** 0.361 0.360 (0.193) (0.197) (0.221) (0.245) (0.253) 0.399* -0.0126 0.233 0.328 0.338 (0.216) (0.204) (0.234) (0.265) (0.274) 0.354 0.363* 0.597** 0.718** (0.217) (0.246) (0.283) (0.291) -0.0296*** -0.0247** -0.0213* -0.0218* (0.00922) (0.00920) (0.0101) (0.0113) (0.0117) 0.303 0.523** 0.255 0.261 0.321 (0.210) (0.224) (0.247) (0.287) (0.296) -1.276 -12.54 -14.92 -18.63*** -19.31*** (3,388) (10,713) (2.084) (2.160) 業種ダミー yes yes yes yes yes 職種ダミー yes yes yes yes yes 年齢ダミー yes yes yes yes yes 専攻ダミー yes yes yes yes yes 標本数 2,087 2,118 1,903 1,452 1,452 ID数 1,257 1,295 1,171 916 916 注2)***,**,*はそれぞれ1%、5%、10%水準で統計的に有意であることを示す • (2)列のAIミスマッチ(t-1年)と(5)列のAIミスマッチ の係数はそれぞれ-0.627、-1.183であり、マイナス で統計的に有意 0.746** (0.216) -0.0282*** (1.636) 注1)括弧内は標準誤差を示す クラウドのミスマッチが大きいとリスキリング を実施する確率が高い 0.370 (0.386) RPAミスマッチ • (1)列と(5)列のクラウドミスマッチの係数は それぞれ0.619、0.914であり、プラスで統計 的に有意 当期と前期のAIのミスマッチが大きいとリスキリ ングを実施する確率が低い(仮説と異なる結果) ※総合ミスマッチは多重共線性のため省略 50
分析結果 推計1 リスキリング実施の規定要因 (正規雇用のみ) (1) クラウドミスマッチ クラウドミスマッチ(t-1年) クラウドミスマッチ(t-2年) 被説明変数:リスキリングダミー (2) (3) (4) 0.197 (0.323) -0.119 (0.301) -0.111 (0.301) -0.552 (0.426) -0.610 (0.421) 0.440 (0.441) AIミスマッチ AIミスマッチ(t-1年) AIミスマッチ(t-2年) -0.132 (0.482) 0.0846 (0.463) 0.720 (0.464) RPAミスマッチ RPAミスマッチ(t-2年) RPAミスマッチ(t-2年) 0.103 (0.276) 0.368* (0.216) 0.843*** (0.269) -0.139 (0.278) 0.278 (0.229) 0.401 (0.252) -0.389 (0.314) 0.444* (0.247) 0.740** (0.289) -0.268 (0.294) -0.443 (0.279) 0.388 (0.294) -0.242 (0.358) 0.276 (0.278) 0.847** (0.338) -0.0413*** (0.0122) 0.402* (0.228) 1.324 (1.893) yes yes yes yes 1,286 784 -0.0536*** (0.0132) 0.775*** (0.257) 29.42*** (1.089) yes yes yes yes 1,233 766 -0.0449*** (0.0136) 0.456* (0.271) -1.478 (1.967) yes yes yes yes 1,119 690 -0.0405** (0.0158) 0.398 (0.316) 23.06 (604.1) yes yes yes yes 823 533 総合ミスマッチ 総合ミスマッチ(t-1年) 総合ミスマッチ(t-2年) 男性ダミー 大卒ダミー 既婚ダミー 勤続年数 大企業ダミー(従業員500人以上) 定数項 業種ダミー 職種ダミー 年齢ダミー 専攻ダミー 標本数 ID数 注1)括弧内は標準誤差を示す 注2)***,**,*はそれぞれ1%、5%、10%水準で統計的に有意であることを示す (5) 0.338 (0.495) -0.525 (0.466) -0.396 (0.495) -1.051 (0.642) -0.904 (0.663) 1.311* (0.744) -0.501 (0.684) 0.413 (0.658) 1.028 (0.642) - (5)列のAIミスマッチ(t-2年)のみ、係数が 1.311で統計的にプラスに有意 -0.249 (0.395) 0.320 (0.306) 0.923** (0.369) -0.0447*** (0.0173) 0.434 (0.346) 28.17 (4,896) yes yes yes yes 823 533 正規雇用者においては2期前のAIのミス マッチが大きいとリスキリングを実施す る確率が高い ※総合ミスマッチは多重共線性のため省略 51
分析結果 推計1 リスキリング実施の規定要因 (非正規雇用のみ) (1) クラウドミスマッチ クラウドミスマッチ(t-1年) クラウドミスマッチ(t-2年) 被説明変数:リスキリングダミー (2) (3) (4) 1.686*** (0.614) -0.352 (0.640) -0.191 (0.589) 0.207 (0.792) -0.456 (0.806) -1.460 (0.961) AIミスマッチ AIミスマッチ(t-1年) AIミスマッチ(t-2年) -0.496 (1.333) -0.160 (1.231) -1.623 (1.284) RPAミスマッチ RPAミスマッチ(t-1年) RPAミスマッチ(t-2年) 総合ミスマッチ 総合ミスマッチ(t-1年) 総合ミスマッチ(t-2年) 男性ダミー 大卒ダミー 既婚ダミー 勤続年数 大企業ダミー(従業員500人以上) 定数項 -0.167 (0.404) 0.353 (0.391) -0.839** (0.395) -0.0119 (0.0149) 0.362 (0.531) -11.85 (335.5) yes yes yes yes 762 495 業種ダミー 職種ダミー 年齢ダミー 専攻ダミー 標本数 ID数 注1)括弧内は標準誤差を示す 注2)***,**,*はそれぞれ1%、5%、10%水準で統計的に有意であることを示す -0.217 (0.399) 0.259 (0.390) -0.937** (0.396) -0.00790 (0.0147) 0.0784 (0.534) -21.59 (724.0) yes yes yes yes 842 533 -0.0622 (0.489) 0.316 (0.464) -1.198** (0.476) -0.00398 (0.0178) 0.199 (0.665) -25.32 (1,552) yes yes yes yes 749 486 0.935 (0.607) -0.124 (0.591) -1.040 (0.654) -0.362 (0.519) 0.138 (0.505) -0.993* (0.516) 0.00450 (0.0189) 0.722 (0.742) -22.33 (3,121) yes yes yes yes 589 378 (5) 2.803** (1.129) -0.182 (0.969) 1.256 (1.188) -1.993 (1.567) 0.460 (1.429) -3.746** (1.770) 0.576 (1.804) 0.415 (1.587) -0.488 (1.711) -0.563 (0.601) 0.0720 (0.559) -1.231** (0.598) 0.0122 (0.0214) 1.007 (0.838) -25.29 -1,945 yes yes yes yes 589 378 • (1)列と(5)列のクラウドミスマッチの係数はそ れぞれ1.686、2.803であり、プラスで統計的に 有意 • 以上の係数は全サンプル版よりも大きい 非正規雇用労働者はクラウドのミスマッチが 大きいとリスキリングを実施する確率が高く、 その傾向も正規雇用者に比べてと大きい • 一方、AIミスマッチ(t-2年)がマイナスで統計 的に有意となり、仮説と異なる結果となった。 ※総合ミスマッチは多重共線性のため省略 52
分析結果 推計1 リスキリング実施の規定要因 まとめ • 全サンプル版と非正規雇用のみで、クラウドミスマッチが正に有意で あったことから、クラウドのミスマッチがあるとリスキリングに取り 組みやすいことがわかった • AIミスマッチは、全サンプル版と非正規雇用のみでは負に有意で、正 規雇用のみでは正に有意であったため、雇用形態によってリスキリン グへの取り組みやすさに大きな違いがあると考えられる • RPAミスマッチは統計的に有意な結果は得られなかったため、これら のミスマッチがあってもリスキリングに取り組みやすくなるとはいえ ない 53
推計2 リスキリング実施の効果 54
分析結果 予備的分析(平均時給) 4000 平均時給(円) 3500 3000 2500 2000 1500 • 総合ミスマッチ指標が上位20% のサンプルの平均時給をリスキ リング実施の有無で比較 • ミスマッチの大きい人は、いず れの時点でもリスキリングを実 施した人のほうがそうでない人 よりも時給が高いと考えられる 55
分析結果 予備的分析(メンタルK6) 26.5 26 平均K6 25.5 25 24.5 24 • 総合ミスマッチ指標が上位20%の サンプルのメンタルK6をリスキリ ング実施の有無で比較 • t年、t-1年ではリスキリング実施の 是非によって平均メンタルK6に大 きな差が見られなかった 23.5 23 • t-2年ではリスキリングを実施した 人の方がそうでない人よりもメンタ ルK6が高いことが考えられる 56
分析結果 予備的分析(仕事満足度) 6.4 • 総合ミスマッチ指標が上位 20%のサンプルの仕事満足度 をリスキリング実施の有無で 比較 6.2 平均仕事満足度 6 5.8 5.6 5.4 5.2 5 実施(t年) 未実施(t 年) 実施(t-1 未実施(t-1 年) 年) 実施(t-2 未実施(t-2 年) • ミスマッチの大きい人は、い ずれの時点でもリスキリング を実施した人の方がそうでな い人よりも仕事満足度が高い と考えられる 年) 57
分析結果 推計2-1(総合ミスマッチ・全サンプル版) リスキリングダミー(t-1年) リスキリングダミー(t-2年) 総合ミスマッチ大ダミー(t-1年) 総合ミスマッチ大ダミー(t-2年) ×リスキリングダミー(t-1年) ×リスキリングダミー(t-2年) 既婚ダミー 正規雇用ダミー 勤続年数 大企業ダミー(従業員500人以上) 定数項 賃金 (1) K6 (2) 仕事満足度 (3) -23.58 (446.9) 411.1 (437.9) 572.2 (399.8) -128.4 (411.2) -1,056 (696.1) -830.0 (777.1) 796.8 (1,304) 395.6 (701.5) -0.906 (61.31) 508.8 (709.8) 3,224 (2,984) yes yes yes yes 1,747 1,164 0.388 (0.427) -0.00422 (0.433) 0.00950 (0.380) -0.539 (0.404) -0.181 (0.693) -0.675 (0.791) 0.203 (1.371) 1.252* (0.680) -0.104* (0.0620) 0.251 (0.720) 23.86*** (2.652) yes yes yes yes 1,916 1,248 0.207 (0.227) -0.0605 (0.231) -0.129 (0.202) -0.506** (0.212) 0.115 (0.368) 0.0117 (0.419) 0.175 (0.681) -0.139 (0.361) -0.000695 (0.0329) 0.175 (0.382) 5.880*** (1.398) yes yes yes yes 1,918 1,247 業種ダミー 職種ダミー 専攻ダミー 年齢層ダミー 標本数 ID数 注1)括弧内は標準誤差を示す 注2)***,**,*はそれぞれ1%、5%、10%水準で統計的に有意であることを示す 注3)男性ダミー、大卒ダミーは多重共線性のため係数の掲載を省略している (3)列においては総合ミスマッチ大ダ ミー(t-2年)の係数がマイナスで統計 的に有意 2期前の総合ミスマッチが大きい人 は当期の仕事満足度が低下する 58
分析結果 推計2-1 (総合ミスマッチ・正規雇用のみ) リスキリングダミー(t-1年) リスキリングダミー(t-2年) 総合ミスマッチ大ダミー(t-1年) 総合ミスマッチ大ダミー(t-2年) ×リスキリングダミー(t-1年) ×リスキリングダミー(t-2年) 既婚ダミー 勤続年数 大企業ダミー(従業員500人以上) 定数項 賃金 (1) K6 (2) 仕事満足度 (3) 61.79 (701.0) -239.8 (616.8) 850.9 (635.1) -261.6 (597.6) -1,691 (1,035) -673.1 (1,042) 834.2 (1,772) 45.37 (100.1) 1,223 (1,059) 2,871 (3,353) yes yes yes yes 1,019 692 0.859 (0.619) 0.315 (0.561) -0.000724 (0.558) -0.276 (0.552) -0.255 (0.932) -0.504 (0.972) -0.767 (1.882) -0.132 (0.0944) -0.182 (0.946) 26.25*** (3.175) yes yes yes yes 1,067 713 0.367 (0.283) -0.0419 (0.259) 0.0828 (0.255) -0.464* (0.249) -0.183 (0.427) 0.235 (0.444) -0.202 (0.771) 0.0335 (0.0432) 0.0358 (0.433) 5.689*** (1.433) yes yes yes yes 1,066 710 業種ダミー 職種ダミー 専攻ダミー 年齢層ダミー 標本数 ID数 注1)括弧内は標準誤差を示す 注2)***,**,*はそれぞれ1%、5%、10%水準で統計的に有意であることを示す 注3)男性ダミー、大卒ダミーは多重共線性のため係数の掲載を省略している (3)列においては総合ミスマッチ大ダ ミー(t-2年)係数がマイナスで統計的 に有意 正規雇用労働者で2期前の総合ミス マッチが大きい人は当期の仕事満足 度が低下する 59
分析結果 推計2-1(総合ミスマッチ・非正規雇用のみ) リスキリングダミー(t-1年) リスキリングダミー(t-2年) 総合ミスマッチ大ダミー(t-1年) 総合ミスマッチ大ダミー(t-2年) ×リスキリングダミー(t-1年) ×リスキリングダミー(t-2年) 既婚ダミー 勤続年数 大企業ダミー(従業員500人以上) 定数項 賃金 (1) K6 (2) 仕事満足度 (3) -47.09 (595.1) 1,815*** (662.2) -133.0 (525.5) -48.01 (589.9) 103.9 (1,008) -2,119 (1,724) 542.5 (1,883) -172.6 (188.5) -431.1 (954.6) 5,752 (5,527) yes yes yes yes 728 497 0.387 (0.670) 0.507 (0.773) -0.00233 (0.563) -0.742 (0.643) -0.633 (1.220) -2.047 (1.912) 2.161 (1.966) 0.363* (0.209) 0.203 (1.207) 20.99*** (6.265) yes yes yes yes 849 565 0.166 (0.405) 0.258 (0.467) -0.473 (0.346) -0.869** (0.389) 0.296 (0.739) -1.053 (1.156) 1.042 (1.189) 0.0326 (0.125) 0.106 (0.730) 5.590 (3.799) yes yes yes yes 852 567 業種ダミー 職種ダミー 専攻ダミー 年齢層ダミー 標本数 ID数 注1)括弧内は標準誤差を示す 注2)***,**,*はそれぞれ1%、5%、10%水準で統計的に有意であることを示す 注3)男性ダミー、大卒ダミーは多重共線性のため係数の掲載を省略している • (1)列のリスキリングダミー(t-2年)の係数 がプラスで統計的に有意 非正規雇用労働者で2期前にリスキリングを 実施した人は当期の賃金が大きく増加する • (3)列では総合ミスマッチ大ダミー(t-2年) 係数がマイナスで統計的に有意 • 係数は非正規雇用のみの方が大きい 2期前の総合ミスマッチが大きい人は当期の 仕事満足度が低くなり、非正規雇用であると よりその影響が大きい 60
分析結果 推計2-1 まとめ • 総合ミスマッチが大きい人がリスキリングを実施することで職業的アウ トカムへの正の効果があるとはいえない • 2期前の総合ミスマッチが大きいと当期の仕事満足度が低くなる 61
分析結果 推計2-2 (各種ミスマッチ・全サンプル版①) リスキリングダミー(t-1年) リスキリングダミー(t-2年) クラウドミスマッチ大ダミー(t-1年) クラウドミスマッチ大ダミー(t-2年) ×リスキリングダミー(t-1年) ×リスキリングダミー(t-2年) AIミスマッチ大ダミー(t-1年) AIミスマッチ大ダミー(t-2年) ×リスキリングダミー(t-1年) ×リスキリングダミー(t-2年) RPAミスマッチ大ダミー(t-1年) RPAミスマッチ大ダミー(t-2年) ×リスキリングダミー(t-1年) ×リスキリングダミー(t-2年) 賃金 (1) K6 (2) 仕事満足度 (3) 249.7 (620.1) 478.5 (678.5) 469.3 (491.4) 919.4 (576.9) -792.9 (965.5) -1,018 (899.1) 24.57 (346.4) 363.5 (355.5) -333.4 (679.4) 109.7 (650.2) -522.3 (353.3) 97.80 (360.0) -356.1 (656.4) -202.2 (681.1) 1.073* (0.603) 0.0516 (0.660) -0.413 (0.505) 0.0768 (0.576) 1.429 (0.957) -0.711 (0.911) 0.154 (0.344) 0.0471 (0.347) -1.608** (0.656) -0.375 (0.651) 0.448 (0.341) 0.282 (0.361) -0.483 (0.647) 0.197 (0.668) 0.563* (0.321) 0.388 (0.349) 0.0499 (0.267) -0.0129 (0.304) -0.226 (0.509) -0.476 (0.485) -0.0265 (0.181) -0.272 (0.185) 0.0918 (0.349) 0.149 (0.345) 0.0841 (0.180) 0.125 (0.189) -0.486 (0.343) -0.643* (0.355) • (2)列では、リスキリングダミー(t-1年)単体の係 数がプラスで、AIミスマッチ大ダミー(t-1年)と の交差項の係数がマイナスで統計的に有意 • リスキリングダミー単体と交差項の係数の合計 は-0.535(=1.073-1.608)でマイナスであり、 この係数合計が0と異ならないという帰無仮説 をF検定した結果、p値が0.010で統計的に有意 前期にAIミスマッチ指標が上位20%に含まれ る人がリスキリングを実施するとメンタルヘ ルスが悪化する(仮説と異なる結果) 62
分析結果 推計2-2 (各種ミスマッチ・全サンプル版②) リスキリングダミー(t-1年) リスキリングダミー(t-2年) クラウドミスマッチ大ダミー(t-1年) クラウドミスマッチ大ダミー(t-2年) ×リスキリングダミー(t-1年) ×リスキリングダミー(t-2年) AIミスマッチ大ダミー(t-1年) AIミスマッチ大ダミー(t-2年) ×リスキリングダミー(t-1年) ×リスキリングダミー(t-2年) RPAミスマッチ大ダミー(t-1年) RPAミスマッチ大ダミー(t-2年) ×リスキリングダミー(t-1年) ×リスキリングダミー(t-2年) 賃金 (1) K6 (2) 仕事満足度 (3) 249.7 (620.1) 478.5 (678.5) 469.3 (491.4) 919.4 (576.9) -792.9 (965.5) -1,018 (899.1) 24.57 (346.4) 363.5 (355.5) -333.4 (679.4) 109.7 (650.2) -522.3 (353.3) 97.80 (360.0) -356.1 (656.4) -202.2 (681.1) 1.073* (0.603) 0.0516 (0.660) -0.413 (0.505) 0.0768 (0.576) 1.429 (0.957) -0.711 (0.911) 0.154 (0.344) 0.0471 (0.347) -1.608** (0.656) -0.375 (0.651) 0.448 (0.341) 0.282 (0.361) -0.483 (0.647) 0.197 (0.668) 0.563* (0.321) 0.388 (0.349) 0.0499 (0.267) -0.0129 (0.304) -0.226 (0.509) -0.476 (0.485) -0.0265 (0.181) -0.272 (0.185) 0.0918 (0.349) 0.149 (0.345) 0.0841 (0.180) 0.125 (0.189) -0.486 (0.343) -0.643* (0.355) • (3)列では、リスキリングダミー(t-1年)の係 数がプラスで統計的に有意 前期にリスキリングを実施すると当期の仕 事満足度が向上する • RPAミスマッチ大ダミー(t-2年)とリスキ リングダミー(t-2年)の交差項の係数がマイ ナスで統計的に有意 2期前にRPAミスマッチが大きい人がリ スキリングを実施すると仕事満足度にマイ ナスの影響がある(仮説と異なる結果) 63
分析結果 推計2-2 (各種ミスマッチ・正規雇用のみ①) リスキリングダミー(t-1年) リスキリングダミー(t-2年) クラウドミスマッチ大ダミー(t-1年) クラウドミスマッチ大ダミー(t-2年) ×リスキリングダミー(t-1年) ×リスキリングダミー(t-2年) AIミスマッチ大ダミー(t-1年) AIミスマッチ大ダミー(t-2年) ×リスキリングダミー(t-1年) ×リスキリングダミー(t-2年) RPAミスマッチ大ダミー(t-1年) RPAミスマッチ大ダミー(t-2年) ×リスキリングダミー(t-1年) ×リスキリングダミー(t-2年) 賃金 (1) K6 (2) 仕事満足度 (3) 484.3 (884.1) -535.8 (927.2) 225.6 (641.2) 1,150 (796.2) -379.5 (1,352) -974.9 (1,221) -86.14 (532.4) 246.1 (562.3) -390.0 (984.9) 756.7 (928.1) -170.8 (577.2) -194.1 (525.5) -1,184 (944.6) -91.31 (976.1) 1.200 (0.778) 0.344 (0.814) -1.099* (0.597) -0.0959 (0.726) 2.054* (1.194) -0.446 (1.101) -0.136 (0.488) 0.482 (0.498) -1.845** (0.885) -0.827 (0.842) 0.502 (0.516) 0.426 (0.481) -0.140 (0.856) 0.514 (0.867) 0.910** (0.359) 0.648* (0.373) 0.0299 (0.273) -0.382 (0.333) 0.0808 (0.551) 0.202 (0.510) 0.0803 (0.223) -0.0533 (0.230) -0.377 (0.407) -0.0787 (0.387) 0.0407 (0.237) 0.262 (0.220) -0.771* (0.393) -1.044*** (0.401) • (2)列では、クラウドミスマッチ大ダミー(t-1年) 単体の係数がマイナスで、リスキリングダミー(t1年)との交差項の係数がプラスで統計的に有意 • クラウドミスマッチ大ダミー単体と交差項の係数 の合計は0.955(=-1.099+2.054)でプラスであ り、この係数合計が0と異ならないという帰無仮 説をF検定した結果、p値が0.055で統計的に有意 正規雇用労働者で前期にクラウドのミスマッチが 大きい人がリスキリングを実施するとメンタルヘ ルスが改善する 64
分析結果 推計2-2 (各種ミスマッチ・正規雇用のみ②) リスキリングダミー(t-1年) リスキリングダミー(t-2年) クラウドミスマッチ大ダミー(t-1年) クラウドミスマッチ大ダミー(t-2年) ×リスキリングダミー(t-1年) ×リスキリングダミー(t-2年) AIミスマッチ大ダミー(t-1年) AIミスマッチ大ダミー(t-2年) ×リスキリングダミー(t-1年) ×リスキリングダミー(t-2年) RPAミスマッチ大ダミー(t-1年) RPAミスマッチ大ダミー(t-2年) ×リスキリングダミー(t-1年) ×リスキリングダミー(t-2年) 賃金 (1) K6 (2) 仕事満足度 (3) 484.3 (884.1) -535.8 (927.2) 225.6 (641.2) 1,150 (796.2) -379.5 (1,352) -974.9 (1,221) -86.14 (532.4) 246.1 (562.3) -390.0 (984.9) 756.7 (928.1) -170.8 (577.2) -194.1 (525.5) -1,184 (944.6) -91.31 (976.1) 1.200 (0.778) 0.344 (0.814) -1.099* (0.597) -0.0959 (0.726) 2.054* (1.194) -0.446 (1.101) -0.136 (0.488) 0.482 (0.498) -1.845** (0.885) -0.827 (0.842) 0.502 (0.516) 0.426 (0.481) -0.140 (0.856) 0.514 (0.867) 0.910** (0.359) 0.648* (0.373) 0.0299 (0.273) -0.382 (0.333) 0.0808 (0.551) 0.202 (0.510) 0.0803 (0.223) -0.0533 (0.230) -0.377 (0.407) -0.0787 (0.387) 0.0407 (0.237) 0.262 (0.220) -0.771* (0.393) -1.044*** (0.401) (2)列のAIミスマッチ大ダミー(t-1年)とリスキリン グダミー(t-1年)との交差項の係数がマイナスで統計 的に有意 正規雇用労働者で前期にAIのミスマッチが大きい 人がリスキリングを実施するとメンタルヘルスが 悪化する(仮説と異なる結果) 65
分析結果 推計2-2 (各種ミスマッチ・正規雇用のみ③) リスキリングダミー(t-1年) リスキリングダミー(t-2年) クラウドミスマッチ大ダミー(t-1年) クラウドミスマッチ大ダミー(t-2年) ×リスキリングダミー(t-1年) ×リスキリングダミー(t-2年) AIミスマッチ大ダミー(t-1年) AIミスマッチ大ダミー(t-2年) ×リスキリングダミー(t-1年) ×リスキリングダミー(t-2年) RPAミスマッチ大ダミー(t-1年) RPAミスマッチ大ダミー(t-2年) ×リスキリングダミー(t-1年) ×リスキリングダミー(t-2年) 賃金 (1) K6 (2) 仕事満足度 (3) 484.3 (884.1) -535.8 (927.2) 225.6 (641.2) 1,150 (796.2) -379.5 (1,352) -974.9 (1,221) -86.14 (532.4) 246.1 (562.3) -390.0 (984.9) 756.7 (928.1) -170.8 (577.2) -194.1 (525.5) -1,184 (944.6) -91.31 (976.1) 1.200 (0.778) 0.344 (0.814) -1.099* (0.597) -0.0959 (0.726) 2.054* (1.194) -0.446 (1.101) -0.136 (0.488) 0.482 (0.498) -1.845** (0.885) -0.827 (0.842) 0.502 (0.516) 0.426 (0.481) -0.140 (0.856) 0.514 (0.867) 0.910** (0.359) 0.648* (0.373) 0.0299 (0.273) -0.382 (0.333) 0.0808 (0.551) 0.202 (0.510) 0.0803 (0.223) -0.0533 (0.230) -0.377 (0.407) -0.0787 (0.387) 0.0407 (0.237) 0.262 (0.220) -0.771* (0.393) -1.044*** (0.401) • (3)列では、リスキリングダミー(t-1年)単体の係 数がプラスで、RPAミスマッチ大ダミー(t-1年) の交差項の係数がマイナスで統計的に有意 • リスキリングダミー単体と交差項の係数の合計は 0.139(=0.910-0.771)でプラスであり、この係 数合計が0と異ならないという帰無仮説をF検定 した結果、p値が0.008で統計的に有意 正規雇用労働者で前期のRPAのミスマッチ が大きい人がリスキリングを実施すると当 期の仕事満足度が向上する 66
分析結果 推計2-2 (各種ミスマッチ・正規雇用のみ④) リスキリングダミー(t-1年) リスキリングダミー(t-2年) クラウドミスマッチ大ダミー(t-1年) クラウドミスマッチ大ダミー(t-2年) ×リスキリングダミー(t-1年) ×リスキリングダミー(t-2年) AIミスマッチ大ダミー(t-1年) AIミスマッチ大ダミー(t-2年) ×リスキリングダミー(t-1年) ×リスキリングダミー(t-2年) RPAミスマッチ大ダミー(t-1年) RPAミスマッチ大ダミー(t-2年) ×リスキリングダミー(t-1年) ×リスキリングダミー(t-2年) 賃金 (1) K6 (2) 仕事満足度 (3) 484.3 (884.1) -535.8 (927.2) 225.6 (641.2) 1,150 (796.2) -379.5 (1,352) -974.9 (1,221) -86.14 (532.4) 246.1 (562.3) -390.0 (984.9) 756.7 (928.1) -170.8 (577.2) -194.1 (525.5) -1,184 (944.6) -91.31 (976.1) 1.200 (0.778) 0.344 (0.814) -1.099* (0.597) -0.0959 (0.726) 2.054* (1.194) -0.446 (1.101) -0.136 (0.488) 0.482 (0.498) -1.845** (0.885) -0.827 (0.842) 0.502 (0.516) 0.426 (0.481) -0.140 (0.856) 0.514 (0.867) 0.910** (0.359) 0.648* (0.373) 0.0299 (0.273) -0.382 (0.333) 0.0808 (0.551) 0.202 (0.510) 0.0803 (0.223) -0.0533 (0.230) -0.377 (0.407) -0.0787 (0.387) 0.0407 (0.237) 0.262 (0.220) -0.771* (0.393) -1.044*** (0.401) • (3)列のリスキリングダミー(t-2年)単体の係数が プラスで、RPAミスマッチ大ダミー(t-2年)との交 差項の係数がマイナスで統計的に有意 • リスキリングダミー単体と交差項の係数の合計は -0.396(=0.648-1.044)でマイナスであり、こ の係数合計が0と異ならないという帰無仮説をF 検定した結果、p値が0.012で統計的に有意 2期前にRPAミスマッチ指標が大きい人がリスキ リングを実施すると仕事満足度にマイナスの影響 がある(仮説と異なる結果) 67
分析結果 推計2-2 (各種ミスマッチ・非正規雇用のみ①) リスキリングダミー(t-1年) リスキリングダミー(t-2年) クラウドミスマッチ大ダミー(t-1年) クラウドミスマッチ大ダミー(t-2年) ×リスキリングダミー(t-1年) ×リスキリングダミー(t-2年) AIミスマッチ大ダミー(t-1年) AIミスマッチ大ダミー(t-2年) ×リスキリングダミー(t-1年) ×リスキリングダミー(t-2年) RPAミスマッチ大ダミー(t-1年) RPAミスマッチ大ダミー(t-2年) ×リスキリングダミー(t-1年) ×リスキリングダミー(t-2年) 賃金 (1) K6 (2) 仕事満足度 (3) -99.56 (1,210) 2,932** (1,314) 308.0 (1,240) -461.0 (1,033) -1,062 (1,675) -1,464 (2,147) 246.6 (458.8) 348.4 (458.4) -653.9 (988.6) -1,423 (1,106) -528.1 (439.7) 765.7 (515.4) 676.6 (1,286) -895.8 (1,199) 2.518* (1.374) 2.004 (1.491) 2.422* (1.376) 0.441 (1.165) -1.401 (2.050) -1.138 (2.674) -0.0369 (0.517) -0.795 (0.520) -1.235 (1.081) -0.804 (1.257) 0.421 (0.487) 0.606 (0.593) -2.164 (1.452) -1.596 (1.369) -0.322 (0.834) 0.173 (0.905) 0.172 (0.837) 0.325 (0.713) 0.773 (1.246) -3.407** (1.624) 0.0906 (0.311) -0.400 (0.316) 0.788 (0.656) 0.651 (0.764) 0.172 (0.291) -0.224 (0.350) 0.327 (0.882) -0.174 (0.829) • (1)列ではリスキリングダミー(t-2年)の係数がプ ラスで統計的に有意 非正規雇用労働者においては2期前にリスキリ ングを実施すると当期の賃金が大きく上がる • (2)列ではリスキリングダミー(t-1年)の係数が プラスで統計的に有意 非正規雇用労働者においては前期にリスキリン グを実施すると当期のメンタルヘルスが大きく 改善する 68
分析結果 推計2-2 (各種ミスマッチ・非正規雇用のみ②) リスキリングダミー(t-1年) リスキリングダミー(t-2年) クラウドミスマッチ大ダミー(t-1年) クラウドミスマッチ大ダミー(t-2年) ×リスキリングダミー(t-1年) ×リスキリングダミー(t-2年) AIミスマッチ大ダミー(t-1年) AIミスマッチ大ダミー(t-2年) ×リスキリングダミー(t-1年) ×リスキリングダミー(t-2年) RPAミスマッチ大ダミー(t-1年) RPAミスマッチ大ダミー(t-2年) ×リスキリングダミー(t-1年) ×リスキリングダミー(t-2年) 賃金 (1) K6 (2) 仕事満足度 (3) -99.56 (1,210) 2,932** (1,314) 308.0 (1,240) -461.0 (1,033) -1,062 (1,675) -1,464 (2,147) 246.6 (458.8) 348.4 (458.4) -653.9 (988.6) -1,423 (1,106) -528.1 (439.7) 765.7 (515.4) 676.6 (1,286) -895.8 (1,199) 2.518* (1.374) 2.004 (1.491) 2.422* (1.376) 0.441 (1.165) -1.401 (2.050) -1.138 (2.674) -0.0369 (0.517) -0.795 (0.520) -1.235 (1.081) -0.804 (1.257) 0.421 (0.487) 0.606 (0.593) -2.164 (1.452) -1.596 (1.369) -0.322 (0.834) 0.173 (0.905) 0.172 (0.837) 0.325 (0.713) 0.773 (1.246) -3.407** (1.624) 0.0906 (0.311) -0.400 (0.316) 0.788 (0.656) 0.651 (0.764) 0.172 (0.291) -0.224 (0.350) 0.327 (0.882) -0.174 (0.829) • (2)列のクラウドミスマッチ大ダミー(t-1年)の係数 もプラスで統計的に有意 非正規雇用労働者では前期にクラウドのミス マッチが大きいと当期のメンタルヘルスにプラ スの影響を与える • (3)列では、クラウドミスマッチ大ダミー(t-2年) とリスキリングダミー(t-2年)の交差項の係数が マイナスで統計的に有意 非正規雇用労働者で2期前にクラウドミスマッチ の大きい人がリスキリングを実施すると仕事満足 度が低くなる(仮説と異なる結果) 69
分析結果 推計2-2 まとめ • 前期のクラウドやRPAのミスマッチが大きい正規雇用労働者がリスキリ ングを実施すると当期のメンタルヘルスや仕事満足度が良くなる • クラウド、AI、RPAのいずれのミスマッチが大きい人がリスキリングを 実施しても賃金における正の効果があるとはいえない 70
アウトライン ① はじめに ② 先行研究 ③ 分析アプローチ ④ 分析結果 ⑤ おわりに 71
おわりに 分析結果概要 【推計1】 • クラウドのミスマッチが大きい人はリスキリングを実施しやすい • AIのミスマッチが大きいと正規雇用労働者ではリスキリングを実施する可能性が高く、 非正規雇用労働者では実施する可能性が低いことがわかり、雇用形態による差が見ら れた 【推計2】 • 前期のクラウドやRPAのミスマッチが大きい人がリスキリングを実施すると当期のメ ンタルヘルスや仕事満足度が改善する • 2期前の総合ミスマッチが大きい人は当期の仕事満足度が低くなることが示され、ミス マッチの職業的アウトカムへの負の影響が明らかになった 72
おわりに 考察① AIやRPAのミスマッチの大きさはリスキリングの規定要因とは言えなかったが、これ はAIやRPAがクラウドに比べて社会で普及しておらず、労働者がリスキリングを行う 動機とならなかったからではないか 今後AIやRPAの技術がクラウドと同様に普及が進めばミスマッチがリスキリングの規 定要因となる可能性がある 73
おわりに 考察② ミスマッチの大きい人のリスキリング実施の効果については、正規雇用労働者でのみメンタ ルヘルスや仕事満足度への正の影響がみられた ⇒正規雇用労働者は非正規雇用労働者に比べて仕事で求められるスキルが大きく、ミスマッ チが解消されないとメンタルヘルスや仕事満足度にマイナスの力が働きやすいからではない か 企業や政府はミスマッチを軽減するリスキリングの実施を奨励するだけでなく、ミスマッチ を生まない制度を整えることも重要である 74
おわりに 懸念点 ミスマッチ指標の妥当性 • 主観による影響(主観的計測法) • 職場でのIT活用度合いと本人の業務との乖離 リスキリングの実施方法を考慮できていない点 • リスキリング実施の形態やレベルによる差を見られていない 75
参考文献(論文) • Chesters, Jenny (2014) “Learning to adapt: does returning to education improve labour market outcomes?,” International Journal of Lifelong Education, 33(6), pp.755–769. • Jacobson, Louis, Robert LaLonde, and Daniel G Sullivan (2005) “Estimating the returns to community college schooling for displaced workers” Journal of Econometrics 125, pp.271–304. • Jenkins, Andrew, Anna Vignoles, Alison Wolf, and Fernando Galindo-Rueda (2002) “The determinants and labour market effects of lifelong learning,” Centre for the Economics of Education Discussion Paper, 19 • Kawaguchi, Daiji (2006) “The Incidence and Effect of Job Training among Japanese Women," Industrial Relations A Journal of Economy and Society, 45(3), pp.469 – 477. • Kurosawa, Masako (2001) “The Extent and Impact of Enterprise Training: The Case of Kitakyushu City,” The Japanese Economic Review, 52, pp.224–241. • Quintini, Glenda(2011)“Right for the Job : Over Qualified or Under―Skilled ?,” OECD Social Employment and Migration Working Papers, 120 • Vignoles, Anna, Fernand Galindo-Rueda, and Leon Feinstein (2004) "The Labour Market Impact of Adult Education and Training: A Cohort Analysis," Scottish Journal of Political Economy, 51(2), pp.266–280. 76
参考文献(論文) • 大庭滉平(2020)「学び直しへの参加・継続とその効果に関する実証分析」Panel Data Research Center at Keio University PDRC Discussion Paper Series DP2019-008 • 小林徹(2013)「「社会人の学び直し」は成長産業への労働移動を促進させるか」Panel Data Research Center at Keio University PDRC Discussion Paper Series DP2013-004 • 小林徹・佐藤一磨 (2012)「自己啓発の実施と再就職・失業・賃金」『日本の家計行動のダイナミズムⅨ』85-116頁 • 坂本貴志(2018)「正規雇用者の自己啓発の実施の有無が賃金に及ぼす影響について」『リクルートワークス研究所 研究紀要 2018』13(8)、2-11頁 • 佐野晋平(2015)「人的資本とシグナリング」『日本労働研究雑誌』657、4-5頁 • 原ひろみ(2011)「個人が主体的に行う能力開発についての分析―自己啓発の実施規定要因とその効果」『TCER Working Paper Series』Working Paper J-5 • 櫨山ゆう子(2022)「命は長し、学べよ社会人 ~リスキリングが労働者の賃金および幸福度に与える影響~」 • 樋口美雄・石井加代子・佐藤一磨(2011)「貧困と就業:ワーキングプア解消に向けた有効策の検討」『非正規雇用改革―日本の働き方をいかに変 えるか』193-215 頁 • 平野大昌(2007)「自己啓発と女性の就業」『家計経済研究』76、79-89頁 • 平尾智隆(2019)「スキル・ミスマッチが賃金、労働意欲、仕事満足に与える影響」『社会政策』13(1)、107-119頁 • 平尾智隆(2021)「スキル・ミスマッチと仕事満足の関係 ―残された課題の検討―」『日本労務学会誌』22(1)、86-95頁 • 吉田恵子(2004)「自己啓発が賃金に及ぼす効果の実証分析」『日本労働研究雑誌』532、40-53頁 77
参考文献(Webサイト) • 厚生労働省「令和2年版 厚生労働白書 ―令和時代の社会保障と働き方を考える―」 https://www.mhlw.go.jp/content/000735866.pdf • 内閣府 「経済財政運営と改革の基本方針2023」 https://www.cao.go.jp/press/new_wave/20230626.html • パーソルイノベーション「リスキリング支援サービス『Reskilling Camp』 企業におけるリスキリング施策の実態調査 (2024年9月版)」 https://www.persol-innovation.co.jp/news/2024-1002-8 • リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査2023」 https://www.works-i.com/surveys/item/jpsed2023data.pdf • リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査2024」 https://www.works-i.com/surveys/item/jpsed_data2024.pdf • リクルートワークス研究所 大嶋寧子「リスキリングをめぐる内外の状況について」 https://www.mhlw.go.jp/content/12602000/000940979.pdf • NIKKEIリスキリング「リスキリング完全ガイド 基礎知識から補助金、学び方までまるわかり」 https://reskill.nikkei.com/article/DGXZQOLM199DM0Z10C24A3000000/ • NIKKEI リスキリング「リスキリングはなぜ必要か? 企業・個人が取り組む背景・メリットを解説」 https://reskill.nikkei.com/article/DGXZQOLM135QA0T11C23A0000000/ • PwC Japan 「デジタル化がもたらすのは希望か、脅威か デジタル環境変化に関する意識調査2021年版(日本の調査結果分析)」 https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/hopes-and-fears-jp2021.html 78
ご清聴ありがとうございました 質問・アドバイス等お待ちしています 79