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February 19, 25
スライド概要
この発表では、若者ケアラーの定義や彼らの増加がもたらす社会問題に焦点を当てています。具体的には、若者ケアラーの属性や、彼らのケア経験が雇用、所得、健康に与える影響についての実証分析を行い、先行研究を参照しながら日本特有の文化や制度の影響を考察しています。また、調査や支援の不足を指摘し、今後の支援策の構築に貢献することを目的としています。
慶應義塾大学商学部商学科山本勲研究会 ホームページ: https://www.yamazemi.info Instagram: https://www.instagram.com/yamazemi2024
卒論最終発表 -若者ケアラーの特徴とケア経験が 雇用・所得・健康に与える影響- 17期 仁科満泉子
アウトライン はじめに 先行研究 分析 アプローチ 分析結果 おわりに 1 2 3 4 5 2
アウトライン はじめに 先行研究 分析 アプローチ 分析結果 おわりに 1 2 3 4 5 3
はじめに 日本の現状① 子どもへの負担の増加 図1:核家族・一人親世帯数の推移 出典:総務省『社会構造の変化について』 図2:共働き世帯数の推移 出典:厚生労働省『令和3年厚生労働白書』 核家族化が進み、なかでもひとり親世帯・共働き世帯数が増加 ↓ 家庭内の誰かが病気や要介護状態になった場合、子どもに負担がかかりやすくなっている ↓ 若者ケアラーへの注目 4
はじめに 若者ケアラーとは 「18歳~おおむね30歳代までのケアラー」 進学や就職、キャリア形成、仕事と介護の両立、人生設計など、 若い世代固有の課題を抱えるケアラーのこと。 (日本ケアラー連盟) 海外では、18歳から24.5歳のケアラーは“young adult carers” と呼ばれている。 (Becker and Becker (2008)) 5
はじめに 若者ケアラーとヤングケアラーの違い ヤングケアラーとは 「家族にケアを要する人がいる場合に、大人が担うような責任を引き受け、家事や家族 の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている、18歳未満の子ども」 Becker and Becker(2008)によると、ヤングケアラーと若者ケアラーは区別されるべき。 人生における発達段階として大きな違いがあり、ヤングケアラーは法的には「子ども」 であるのに対して、若者ケアラーは法的に「大人」であるため、彼らのニーズを満たす 責任が誰にあるのかで性質が異なる。 6
はじめに 日本の現状② ヤングケアラー・若者ケアラーの増加 15~29歳の介護者数 2012 年 177,600 2017 年 2022 205,000 年 160,000 10年間で15~29歳の 介護者数が3万人近く増加 210,100 170,000 180,000 190,000 200,000 210,000 220,000 15~29歳の介護者数 図3:15~29歳の介護者数の推移 (総務省 就業構造基本調査より作成) 7
はじめに 日本の現状③ 若者ケアラー増加による社会問題 若者ケアラーによる事件 • 2018年6月に、中学生のころか ら一人親の母を介護してきた男 性(25)が、母を殺害した事件 (朝日新聞) • 2019年10月に、若者ケアラー であった幼稚園教諭の女性(22) が,介護と仕事の両立の過酷さ ゆえに、認知症の祖母を殺害し た事件(神戸新聞) など 社会負担の増加 Brimblecombe et al.(2020)による と、若者ケアラーは雇用されにく いために、世帯収入が低くなり、 税収が減少し、また、福祉利用金 や医療サービスの利用が増加する ことで、政府に多大なコストがか かることが分かった。 →同様に、日本でも社会的負担の 増加が予想される。 8
はじめに 若者ケアラーに対する調査や支援の不足 若者ケアラーに対して、全国規模の実態調査はあまり行われておらず、 2022年に日本総研が大学生を対象に全国調査を行ったのみ 調査 若者ケアラーの属性などの把握は進んでいない 支援 2024年6月に改正子ども・若者育成支援法が施行され、 30歳未満を支援対象に、ヤングケアラー・若者ケアラーへの 支援の重要性を明記された。 各地方自治体に取り組みは任せられている。 具体的な支援体制の構築には至っておらず、不十分 9
はじめに 若者ケアラーに関する実証分析の不足 【国内】 質的分析が多く実証分析は行われていない 【海外】 雇用や収入、就業選択、やメンタルヘルスや睡眠時間、有病率などの彼らの健康状態に関 する研究が行われている。しかし、同時に分析が不足していることも言及されている。 また、青木ほか(2020)や山本(2001)によると、日本の家族介護には家父長制や長子相続制、 性別役割分業などの文化慣習があり、女性や長子が介護負担を負いやすくなる傾向がある。 日本特有の文化慣習などが若者ケアラーの介護負担に影響を与えている可能性 10
はじめに 若者ケアラーに関する実証分析の不足 • 日本において、若者ケアラーのための全国的な実態調査や支援が不十分 【国内】 質的分析が多く実証分析は行われていない • 実証分析が国内外で不足している状態 【海外】 • 日本特有の文化慣習が若者ケアラーの介護負担に影響を与えている可能性 雇用や収入、就業選択、やメンタルヘルスや睡眠時間、有病率などの彼らの健康状態に関 する研究が行われている。しかし、同時に分析が不足していることも言及されている。 若者ケアラーの実態の把握不足は彼らへの適切な支援策を講じるうえで重要な課題 また、青木ほか(2020)や山本(2001)によると、日本の家族介護には家父長制や長子相続制、 性別役割分業などの文化慣習があり、女性や長子が介護負担を負いやすくなる傾向がある。 日本特有の文化慣習などが若者ケアラーの介護負担に影響を与えている可能性 12
はじめに 本研究で明らかにすること 1 2 若者ケアラーの属性 どのような人が若者ケアラーになりやすいのか 属性別の介護時間・家事時間の長さの違い サンプルが55歳以上 の推計も行い、年齢 別の違いを考察 ケア経験が雇用・所得・健康に与える影響 若者ケアラーの認識を広め、彼らへの具体的な 支援策を構築する一助とする。 13
はじめに 本研究の独自性 1 日本のデータを用いて日本ではあまり研究の行われていない 若者ケアラーに焦点を当てて実証分析を行うこと 日本での若者ケアラーに関する実証分析は行われていない 2 長期的に観察したパネルデータを用いる点 国内外で長期的なパネルデータを用いた研究が不足している 若者と高齢のケアラーの比較を行うこと 3 先行研究では、若者ケアラーのみを対象に分析した研究がほとんどで、 高齢のケアラーとの比較を行い考察した研究は存在しない 14
アウトライン はじめに 先行研究 分析 アプローチ 分析結果 おわりに 1 2 3 4 5 15
先行研究 先行研究の分類 1 若者ケアラーの属性 2 若者ケアラーのケア経験が雇用・所得・健康状態に与える影響 16
先行研究 若者ケアラーの属性 Haugland et al.(2020) Becker and Becker(2008) 概要 ロジスティック回帰分析を用いて、若者ケアラー の特徴や有病率、健康などを調べた研究 概要 英国4か国において、二次分析やインタビュー調 査を通して、若者ケアラーの教育・お金やキャリ アに関する懸念を調査 結果 若者ケアラーは女性や独身、両親が離婚している ことや、経済的困難を抱えている者が多い傾向に ある。 結果 若者ケアラーは一人親世帯の子供や、長男や長女 であることが多い。 17
先行研究 若者ケアラーの属性 Di Gessa et al.(2022) 森田ら(2016) 概要 英国家計横断調査を用いて、順序ロジスティク回 帰分析でイギリスの16~29歳の介護者の特徴や 有病率、また要介護者との関係、介護時間、介護 期間による違いについて分析 概要 子ども・若年介護者の規模や構成,介護すること の子ども・若年者への影響を明らかにした研究 結果 女性や独身、都市部に住んでいる人、低所得者層 やマニュアル的職業についている人はより長期間 介護をしている。女性が主介護者になる傾向が顕 著。 結果 女性のほうが若者ケアラーに多く、15歳以上の 義務教育終了後からこの傾向が顕著である。 18
先行研究 若者ケアラーの属性 Giorgio Di Gessa et al.(2022) 森田ら(2016) 概要 概要 英国家計横断調査を用いて、順序ロジスティク回 子ども・若年介護者の規模や構成,介護すること 若者ケアラーになりやすい要因として、 帰分析でイギリスの16~29歳の介護者の特徴や の子ども・若年者への影響を明らかにした研究 有病率、また要介護者との関係、介護時間、介護 性別や世帯構造、出生順位や経済的状況が挙げられる。 期間による違いについて分析 結果 女性や独身、都市部に住んでいる人、低所得者層 やマニュアル的職業についている人はより長期間 介護をしている。女性が主介護者になる傾向が顕 著。 結果 女性のほうが若者ケアラーに多く、15歳以上の 義務教育終了後からこの傾向が顕著である。 19
先行研究 雇用・所得への影響 Brimblecombe et al.(2020) Becker and Becker(2008) 概要 ロジスティック回帰分析を用いて、イングラ ンドの16歳から25歳の若者ケアラーのケア経 験が雇用、収入、健康と公的支出の関係を明 らかにする研究 概要 英国4か国において、二次分析やインタビュー調 査を通して、若者ケアラーの教育・お金やキャリ アに関する懸念を調査 結果 若者ケアラーは非介護者に比べて、雇用され にくく、収入も低い。それに伴い、税収が減 少、福祉給付金、医療サービスの利用が増加 し、国家へのコストが増加した。 結果 若者ケアラーの学生は、教育や仕事、介護のバラ ンスを取るのが難しいため、パートタイムの仕事 についたり、働いていなかったりする傾向がある。 また、介護経験を活かして医療や福祉関係の職に 20 就きたいと希望する傾向もある。
先行研究 雇用・所得への影響 Nicola Brimblecombe et al.(2020) Becker and Becker(2008) 概要 概要 ロジスティック回帰分析を用いて、イングラ 英国4か国において、二次分析やインタビュー調 ンドの16歳から25歳の若者ケアラーのケア経 査を通して、若者ケアラーの教育・お金やキャリ 若者ケアラーは雇用されにくく、収入も低い。 験が雇用、収入、健康と公的支出の関係を明 アに関する懸念を調査 また、介護経験が彼らの就業選択に影響を与える可能性もある。 らかにする研究 結果 若者ケアラーは非介護者に比べて、雇用され にくく、収入も低い。それに伴い、税収が減 少、福祉給付金、医療サービスの利用が増加 し、国家へのコストが増加した。 結果 若者ケアラーの学生は、教育や仕事、介護のバラ ンスを取るのが難しいため、パートタイムの仕事 についたり、働いていなかったりする傾向がある。 また、介護経験を活かして医療や福祉関係の職に 21 就きたいと希望する傾向もある。
先行研究 健康への影響 Becker et al.(2018) Grenard et al.(2020) 概要 概要 オンライン調査を通し、イギリス ポアソン回帰分析を用いて、アメリ の14歳から25歳までのケア経験が カの18歳から25歳の若者ケアラーの精 精神的負担や教育にどのような影 神的・身体的健康を分析 響を与えるのかを研究 結果 結果 回答者のほぼ半数が精神的困難を 若者ケアラーは非介護者よりメン タルヘルスが悪く、個人的なケア 抱えている。 を含む介護はメンタルヘルスを悪 化させる。週の介護時間が9~19時 間、40時間以上の介護者がよりメ ンタルヘルスが悪い。 Haugland et al.(2020) 概要 ロジスティック回帰分析を用 いて、若者ケアラーの特徴や 有病率、健康などを調べた研 究 結果 介護の責任がある回答者には、 精神衛生上の問題、不眠症、 身体症状、および生活満足度 の低下が多く見られた。 22
先行研究 健康への影響 藤田ら(2022) 渡邉(2023) 概要 質問紙調査やクラスター分析を通して、幼少 期の生活環境に関する認識の違いが精神的健 康にどのように影響するかを調査 概要 文献検討やweb調査を通した、ヤングケアラー・ 若年ケアラーの実態調査 結果 介護の時間や量に関わらず、ケア経験が精神 的健康に影響する可能性が示唆された。きょ うだいとの関わりの親密性が精神的健康の保 持に及ぼす影響性も示唆された。 結果 ケア経験が人生に否定的な影響を与える場合もあ るとしながらも、ヤングケアラーとしてケアに参 加すると家族の一員であると感じるなど、10代~ 20代はケアラー経験が人生に肯定的な意味をもた らしたと考える可能性が高いことが示唆された。 23
先行研究 健康への影響 Saul Becker, Joe Sempik (2018) Grenard D. L. et al.(2020) Haugland et al.(2020) 概要 概要 概要 オンライン調査を通し、イギリス ポアソン回帰分析を用いて、アメリ 質問紙調査を通し、若者ケア 若者ケアラーは非介護者に比べて健康状態、メンタルヘルスが悪い。 カの18歳から25歳の若者ケアラーの精 ラーの特徴や有病率、健康な の14歳から25歳までのケア経験が メンタルヘルスの状態が介護の内容や介護時間の影響を受けるかどうかは 精神的負担や教育にどのような影 神的・身体的健康を分析 どを調べた研究 一貫していない。 響を与えるのかを研究 また、質的分析では、ケアラー経験を肯定的とする結果も見られた。 結果 結果 結果 回答者のほぼ半数が精神的困難を 若者ケアラーは非介護者よりメン 介護の責任がある回答者には、 タルヘルスが悪く、個人的なケア 抱えている。 精神衛生上の問題、不眠症、 を含む介護はメンタルヘルスを悪 身体症状、および生活満足度 化させる。週の介護時間が9~19時 の低下が多く見られた。 間、40時間以上の介護者がよりメ ンタルヘルスが悪い。 24
先行研究 先行研究のまとめ 【明らかになっていること】 • 若者ケアラーになりやすい要因として、 性別や世帯構造、出生順位や経済的状 況が挙げられる。 • 若者ケアラーは雇用されにくく、収入 が低い。 • 非介護者に比べて健康状態、メンタル ヘルスは悪い。 • 一方で、ケア経験を肯定的に捉える者 もいる 【明らかになっていないこと】 • 若者ケアラーについて、日本のデータ を用いて定量的に分析された結果 • 18歳~30歳代までの長期的なパネル データを用いた分析結果 25
アウトライン はじめに 先行研究 分析 アプローチ 分析結果 おわりに 1 2 3 4 5 26
分析アプローチ 推計1 若者ケアラーの属性分析 仮説:女性や低収入世帯、長男・長女やひとり親世帯、独身であるほど 若者ケアラーになりやすく、週平均介護時間・家事時間が長い 【推計モデル】プロビットモデル Pr 𝒀𝒊 = 𝟏 = 𝑭(𝒂𝟎 + 𝒂𝟏 𝑷𝒊𝒕 +𝒂𝟐 𝑿𝒊𝒕 ) 【被説明変数】 ケアラーダミー (変量効果モデル) 週平均介護時間 週平均家事時間 • • • • • • 【説明変数】 女性ダミー 世帯収入下位ダミー 長男・長女ダミー ひとり親ダミー 独身ダミー 高卒以下ダミー ※年齢を55歳以上に 変えた推計も同様に 行い、若者ケアラー との比較を行う 【コントロール変数】 • 年齢 27
分析アプローチ 推計1 若者ケアラーの属性分析 本研究では「世帯収入が低いためにケアラーになる確率が高くなる」ことを想定しているが、 仮説:女性や低収入世帯、長男・長女やひとり親世帯、独身であるほど 「ケアラーであるために世帯収入が低い」という逆の因果性が生じることが懸念される。 若者ケアラーになりやすく、週平均介護時間・家事時間が長い ↓ 説明変数と誤差項に相関が生じ、一致性を欠く恐れ 【推計モデル】プロビットモデル ※年齢を55歳以上に ↓ 変えた推計も同様に 操作変数を用いた推計も行う 𝒊 𝟎 𝟏 𝒊𝒕 𝟐 𝒊𝒕 Pr 𝒀 = 𝟏 = 𝑭(𝒂 + 𝒂 𝑷 +𝒂 𝑿 ) 【被説明変数】 ケアラーダミー (変量効果モデル) 週平均介護時間 週平均家事時間 • • • • • • 【説明変数】 女性ダミー 世帯収入下位ダミー 長男・長女ダミー ひとり親ダミー 独身ダミー 高卒以下ダミー 行い、若者ケアラー との比較を行う 【コントロール変数】 • 年齢 28
分析アプローチ 推計1 若者ケアラーの属性分析 本研究では「世帯収入が低いためにケアラーになる確率が高くなる」ことを想定しているが、 仮説:女性や低収入世帯、長男・長女やひとり親世帯、独身であるほど 「ケアラーであるために世帯収入が低い」という逆の因果性が生じることが懸念される。 操作変数として「両親からの経済援助なしダミー」を使用 若者ケアラーになりやすく、週平均介護時間・家事時間が長い ↓ (両親からの経済援助がないと世帯収入が低い可能性が高くなるが、両親からの経済援助がないことと 説明変数と誤差項に相関が生じ、一致性を欠く恐れ 【推計モデル】プロビットモデル ケアラーであることは直接的には相関しないと考えられるため) ※年齢を55歳以上に ↓ 変えた推計も同様に 操作変数プロビットモデルを用いた推計も行う 𝒊 𝟎 𝟏 𝒊𝒕 𝟐 𝒊𝒕 Pr 𝒀 = 𝟏 = 𝑭(𝒂 + 𝒂 𝑷 +𝒂 𝑿 ) 行い、若者ケアラー との比較を行う ※操作変数の条件 ①世帯収入下位ダミー(説明変数)に影響を与える 【説明変数】 ②ケアラーダミー(被説明変数)からの影響は受けない 【被説明変数】 • 女性ダミー ケアラーダミー • 世帯収入下位ダミー • 長男・長女ダミー 【コントロール変数】 (変量効果モデル) • ひとり親ダミー • 年齢 週平均介護時間 • 独身ダミー 週平均家事時間 • 高卒以下ダミー 29
分析アプローチ 推計2 ケア経験の雇用・所得・健康への影響 仮説:過去にケア経験がある人は現在正規雇用になりにくく、 所得が低く、健康状態も悪い ※年齢を55歳以上に 変えた推計も同様に 行い、若者ケアラー との比較を行う 【推計モデル】 変量効果モデルモデル 𝒀𝒊𝒕 = 𝒂𝟎 + 𝒂𝟏 𝑪𝒊𝒕−𝒎 +𝒂𝟐 𝑷𝒊𝒕 × 𝑪𝒊𝒕−𝒎 +𝒂𝟑 𝑿𝒊𝒕 + 𝑭𝒊 + 𝜺𝒊𝒕 , 【被説明変数】 正規雇用ダミー 所得 主観的健康状態 (最小二乗法) メンタルヘルス指標 【説明変数】 ケアラーダミー (1-3期前) 【説明変数】 属性との交差項 m=1,2,3 【固有効果】 時間によって変わらない 個々人の固有効果 【コントロール変数】 属性、年齢、年ダミー 30
分析アプローチ 推計2 ケア経験の雇用・所得・健康への影響 本研究では「ケアラーであるために正規雇用ではない確率が高くなる」ことを想定しているが、 「正規雇用ではないためにケアラーである」という逆の因果性が生じることが懸念される。 ↓ 仮説:過去にケア経験がある人は現在正規雇用になりにくく、 説明変数と誤差項に相関が生じ、一致性を欠く恐れ 所得が低く、健康状態も悪い ※年齢を55歳以上に ↓ 変えた推計も同様に ケアラーダミーのラグ項をとることで対処 行い、若者ケアラー ※被説明変数を変えた推計でも同様 【推計モデル】 との比較を行う 変量効果モデルモデル 𝒀𝒊𝒕 = 𝒂𝟎 + 𝒂𝟏 𝑪𝒊𝒕−𝒎 +𝒂𝟐 𝑷𝒊𝒕 × 𝑪𝒊𝒕−𝒎 +𝒂𝟑 𝑿𝒊𝒕 + 𝑭𝒊 + 𝜺𝒊𝒕 , 【被説明変数】 正規雇用ダミー 所得 主観的健康状態 (最小二乗法) メンタルヘルス指標 【説明変数】 ケアラーダミー (1-3期前) 【説明変数】 属性との交差項 m=1,2,3 【固有効果】 時間によって変わらない 個々人の固有効果 【コントロール変数】 属性、年齢、年ダミー 31
分析アプローチ 利用データ 日本家計パネル調査(JHPS/KHPS) 調査元:慶應義塾大学パネルデータ設計・解析センター 推計1 【対象期間】2017~2022年 【調査対象】20~39歳、55歳以上 推計2 【対象期間】2017~2022年 【調査対象】20~42歳、55歳以上 32
分析アプローチ 利用データ 日本家計パネル調査(JHPS/KHPS) 調査元:慶應義塾大学パネルデータ設計・解析センター 推計1 【対象期間】2017~2022年 【調査対象】20~39歳、55歳以上 推計2 【対象期間】2017~2022年 【調査対象】20~42歳、55歳以上 33
分析アプローチ 利用データ 日本家計パネル調査(JHPS/KHPS) ケアラーの属性やケア経験が雇用・所得・健康に与える影響が若者特有のものであるかを 調査元:慶應義塾大学パネルデータ設計・解析センター 確認し、考察をわかりやすくするため、55歳以上にサンプルを絞った分析も同様に行い、 若者ケアラーに関する推計結果と比較を行う。 推計1 【対象期間】2017~2022年 【調査対象】20~39歳、55歳以上 推計2 【対象期間】2017~2022年 【調査対象】20~42歳、55歳以上 34
分析アプローチ 変数説明 35
分析アプローチ 変数説明 推計2において、被説明変数に正規雇用ダミー、所得、主観的健康状態をとる推計では1期から 3期前のラグ項を使用し、メンタルヘルス指標をとる推計では1期から2期前のラグ項を使用する (メンタルヘルス指標に関する質問項目が2019年以降に加えられたため) 36
分析アプローチ 変数説明 メンタルヘルス指標・主観的健康状態 【メンタルヘルス指標】 【GHQ(general health quesstions)-12項目】 ⚫ 精神医学的症状をスクリーニングする手法として多く 用いられている ⚫ 数値が大きくなるほどメンタルヘルスが悪いことを示 す *本論文では、解釈の都合上、数値を反転させて使用 数値が大きくなるほどメンタルヘルス が良いことを示す12-48をとる指標 【主観的健康状態】 反転 数値が大きくなるほど健康度が 上昇する、1-5をとる5段階の指標 37
分析アプローチ 基本統計量 【39歳以下の男女】 ケアラーダミー:全体の3.7%が若者ケアラー 週平均介護時間:平均0.6時間 週平均家事時間:平均12.7時間 正規雇用ダミー:約55.8%が正規雇用 所得:平均352万程度 【55歳以上の男女】 ケアラーダミー:全体の11%がケアラー 若者ケアラーより約7%程度多い 週平均介護時間:平均1.3時間 若者ケアラーの約2倍の長さ 週平均家事時間:平均17.6時間 若者ケアラーより5時間程度長い 38
アウトライン はじめに 先行研究 分析 アプローチ 1 2 3 分析結果 おわりに 4 5 39
分析結果 分析の流れ 1 若者ケアラーの属性分析 2 ケア経験が雇用・所得・健康に与える影響 40
分析結果 分析の流れ 1 若者ケアラーの属性分析 2 ケア経験が雇用・所得・健康に与える影響 41
分析結果 予備的分析(若者ケアラーの属性分析) (1)属性別の割合 (2)世帯収入別のケアラーの割合 100 70 90 60 80 70 50 40 30 20 割合(%) 割合(%) 50 60 40 30 20 10 0 10 0 10~660 660~1220 1220~1780 1780~2340 世帯収入(万) 性別の差はあまりない。 長男・長女ではない人、両親世帯の人、独身の ほうが若者ケアラーの割合が高い。 世帯収入が平均(約660万円)より低い人が 最も若者ケアラーの割合が高い 42
分析結果 予備的分析(若者ケアラーの属性分析) (2)属性別の週平均家事時間 25 25 20 20 15 10 週平均家事時間 週平均介護時間 (1)属性別の週平均介護時間 15 10 5 5 0 0 女性や長男・長女、ひとり親世帯や独身のほう が週平均介護時間が長い。 世帯収入の高さであまり変化はない。 女性や長男・長女、ひとり親世帯のほうが家事 時間が長い一方で、既婚者のほうが家事時間が 長い。世帯収入の高さで変化はない。 43
分析結果 若者ケアラーの属性分析結果 【39歳以下の男女】 独身ダミー、高卒以下ダミーの係数が0.414、0.152 と正に有意 →独身の人、高卒以下の人ほど若者ケアラーである 確率が高い 女性ダミー、長男・長女ダミー、ひとり親ダミーの 係数は統計的に有意ではない →これらの属性は若者ケアラーである確率に影響を 与えない 44
分析結果 若者ケアラーの属性分析結果 【55歳以上の男女】 女性ダミー、長男・長女ダミーの係数が 0.182、0.0923と統計的に正に有意 →女性、長男・長女の人ほど高齢のケアラー である確率が高い →介護における性別役割分業や長子相続制の 傾向は年齢が高くなるほど強まると解釈でき る 独身ダミー、高卒以下ダミーの係数が-0.220、 -0.117と負に有意 →独身の人、高卒以下の人ほど高齢のケア ラーである確率が低い 45
分析結果 若者ケアラーの属性分析結果 ※(2)(4)列において、操作変数の強さを評価する検定 を行ったところ、F値が26.44と10以上であり、弱操 作変数ではないことが示された。 【39歳以下の男女】 (2)列において、世帯収入下位ダミーの係数が統計的 に有意ではない →世帯収入の低さは若者ケアラーである確率に影響 を与えない 【55歳以上の男女】 (4)列で世帯収入下位ダミーの係数が-2.118と負に有 意 →世帯収入が低いと高齢のケアラーになりにくいこ とがわかる。 46
分析結果 若者ケアラーの属性別の介護時間・家事時間 (変量効果モデル) 週平均介護時間 【39歳以下の男女】 女性ダミー、独身ダミーの係数が0.721、0.653と正 に有意 →若者ケアラーの女性、独身の人ほど週平均介護時 間が長くなる 【55歳以上の男女】 女性ダミーの係数が1.483と正に有意 →高齢のケアラーにおいても女性のほうが週平均介 護時間が長くなることがわかる。 (1)列と(2)列の女性ダミーの係数を比較すると(2)列 の係数のほうが大きい →55歳以上の女性のほうが若者ケアラーの女性より 週平均介護時間が長くなりやすいことがわかる。 47
分析結果 若者ケアラーの属性別の介護時間・家事時間 (変量効果モデル) 週平均家事時間 【39歳以下の男女】 女性ダミー、長男・長女ダミーの係数が統計的に正 に有意で、独身ダミーの係数が-11.56と負に有意 →若者ケアラーの女性、長男・長女の人のほうが家 事時間長く、若者ケアラーの独身は既婚者に比べて 家事時間は短くなる 【55歳以上の男女】 女性ダミーの係数が統計的に正に有意 →高齢のケアラーにおいても女性のほうが週平均家 事時間が長くなることがわかる。 (3)列と(4)列の女性ダミーの係数を比較すると(4)列 の係数のほうが大きい →介護時間と同様、55歳以上の女性のほうが若者ケ アラーの女性より週平均家事時間が長くなりやすい ことがわかる。 48
分析結果 推計1 まとめ 独身の人ほど、高卒以下の人ほど若者ケアラーである確率が高い。 また、女性や長子が高齢のケアラーである確率が高いことから、介護における性別役割分業や長子相続制 の傾向は年齢が高くなるほど強まる。 介護時間およびケアラーの家事時間の長さは、年齢にかかわらず女性のほうが長い。 また、年齢が高いほうが介護時間・家事時間がより長くなる傾向にある。 49
分析結果 分析の流れ 1 若者ケアラーの属性分析 2 ケア経験が雇用・所得・健康に与える影響 50
分析結果 予備的分析(雇用・所得・健康への影響) (1)ケア経験と就業形態の関係 400 100 350 90 80 300 所得の平均(万円) 70 正規雇用割合(%) (2)ケア経験と所得の関係 60 50 40 30 250 200 150 100 20 50 10 0 1年前 2年前 介護経験あり 3年前 介護経験なし 介護経験がある若者のほうが 正規雇用の割合が低い。 1から3年前に介護経験がある人の現在の正規 雇用割合にあまり変化はない。 0 1年前 2年前 介護経験あり 3年前 介護経験なし 介護経験がある若者のほうが現在の所得が低い。 3年前に介護経験がある若者の所得が高くなっ ているため、2年前までの介護経験の有無が現 在の所得に影響するのではないか 51
分析結果 予備的分析(雇用・所得・健康への影響) (3)ケア経験と主観的健康状態の関係 (4)ケア経験とメンタルヘルスの関係 34 3.6 33 3.5 32 メンタルヘルス指標 主観的健康状態 3.7 3.4 3.3 3.2 3.1 31 30 29 28 3 27 2.9 26 1年前 2年前 介護経験あり 3年前 介護経験なし 介護経験がある若者のほうが現在の 主観的健康状態が悪い。 介護をしていた時期が現在から遠いほど、 現在の主観的健康状態が悪い。 1年前 介護経験あり 2年前 介護経験なし 介護経験がある若者は現在の メンタルヘルス指標が低いことがわかる。 1年前に介護をしていた若者より、2年前に介護 をしていた若者のほうがメンタルヘルスが悪い。 52
分析結果 雇用への影響 53
分析結果 雇用への影響 【39歳以下の男女】 (1)列をみると、独身ダミー、高卒以下ダミーとの交差項の 係数が-0.108、-0.110と負に有意 →独身または学歴が高卒以下の場合には、1年前にケアラー であったことによって現在の正規雇用である確率が低くなる (2)列をみると、高卒以下ダミーとの交差項の係数が-0.138 と負に有意で、(1)列の高卒以下ダミーとの係数と比較する と値が小さい。 →学歴が高卒以下の場合には、2年前にケアラーであったこ とによって現在の正規雇用である確率は低くなり、1年前に ケアラーであったことによる確率よりもより低くなる (3)列をみると、統計的に有意な係数はない →3年前にケアラーであったかどうかは現在の正規雇用であ る確率に影響を与えないことがわかる。 54
分析結果 雇用への影響 【55歳以上の男女】 (5)列をみると、長男・長女ダミー、独身ダミーとの交差項 の係数が0.0807、0.0878と正に有意 →長子、独身である場合には2年前にケアラーであった人ほ ど現在の正規雇用である確率が高くなることがわかる。 (6)列をみると、ケアラーダミー単体の係数が-0.085と負に 有意 →3年前にケアラーであった人ほど現在の正規雇用である確 率は低くなる 女性ダミー、高卒以下ダミーとの交差項の係数は正に有意 →女性かつ3年前にケアラーであった人または学歴が高卒以 下かつ3年前にケアラーであった人は現在の正規雇用である 確率が高くなる 55
分析結果 雇用への影響の結果まとめ 1年前に若者ケアラーでありかつ独身または学歴が高卒以下の人、2年前に若者ケアラー でありかつ学歴が高卒以下の人は現在の正規雇用である確率が低くなる。 また、この特徴は若者ケアラー特有のものであることがわかった。 56
分析結果 所得への影響 57
分析結果 所得への影響 【39歳以下の男女】 (1)~(3)列をみると、統計的に有意な係数はみられない →若者ケアラーにおいて、過去にケアラーであったか どうかは現在の所得に影響を与えないことがわかる。 58
分析結果 所得への影響 【55歳以下の男女】 (4)列をみると、ケアラーダミー単体の係数が-40.01と統計的に 負に有意 →1年前にケアラーであったことにより現在の所得が低くなっ ていることがわかる。 (4)列をみると世帯収入下位ダミー、高卒以下ダミーとの交差項 の係数、(6)列をみると、長男・長女ダミー、高卒以下ダミーと の交差項の係数が統計的に正に有意 →1年前にケアラーであった人かつ世帯収入が低い人または学 歴が高卒以下の人は、1年前にケアラーではなかった人に比べ て現在の所得が高い。 また、 3年前にケアラーであった人かつ長子または学歴が高 卒以下の人は3年前にケアラーではなかった人に比べて現在の 所得が高いことがわかる。 59
分析結果 所得への影響の結果まとめ 若者ケアラーにおいて、過去のケア経験が現在の所得に影響は与えない 60
分析結果 健康への影響 61
分析結果 健康への影響(主観的健康状態) 【39歳以下の男女】 (1)列をみると、ケアラーダミー単体の係数は 統計的に有意ではないが、長男・長女ダミー、 世帯収入下位ダミー、高卒以下ダミーとの交差 項の係数がそれぞれ-0.368、-0.289、-0.346と 負に有意 →長子、世帯収入が低い人、学歴が高卒以下の 人は、1年前にケアラーであったことによって 現在の主観的健康状態が悪いことがわかる。 (2)列では、統計的に有意な係数はみられない →2年前にケアラーであったかどうかは現在の 主観的健康状態に影響を与えないことがわかる。 (3)列をみると、独身ダミーとの交差項の係数 が-0.633と統計的に負に有意 →現在独身の人は、3年前にケアラーであった ことによって現在の主観的健康状態が悪いこと がわかる。 62
分析結果 健康への影響(主観的健康状態) 【55歳以上の男女】 (4)列では、統計的に有意な係数はみられない →1年前にケアラーであったかどうかは現在の主観的健康状態 に影響を与えないことがわかる。 (5)(6)列をみると、ケアラーダミー単体の係数は負に有意 → 2年前および3年前にケアラーであったことにより、現在の 主観的健康状態は悪くなる 女性ダミーとの交差項の係数は統計的に正に有意 →2年前および3年前にケアラーかつ女性である人は、現在の 主観的健康状態は良くなることがわかる。 63
分析結果 健康への影響(メンタルヘルス 最小二乗法) 【39歳以下の男女】 (7)列をみると、ケアラーダミー単体の係数が-5.453と負に有意 →1年前にケアラーだったことにより、現在のメンタルヘルスが悪くなる ことがわかる。 (8)列をみると、統計的に有意な係数はみられない → 2年前にケアラーであったかどうかは現在のメンタルヘルスに影響を 与えない。 【55歳以上の男女】 (9)列をみると、同様にケアラーダミー単体の係数が-1.153と統計的に負 に有意 →若者ケアラー同様、1年前にケアラーだったことにより現在のメンタル ヘルスが悪いことがわかる。 (10)列をみると、統計的に有意な係数はみられない → 2年前にケアラーであったかどうかは現在のメンタルヘルスに影響を 与えない。 (7)(9)列のケアラーダミー単体の係数の大きさをみると、(7)列の係数の ほうが小さいことから、若者ケアラーのほうが高齢のケアラーよりも、1 年前のケア経験により現在のメンタルヘルスが悪くなることがわかる。 64
分析結果 健康への影響の結果まとめ <主観的健康状態> 若者ケアラーにおいて、長子、世帯収入が低い人、学歴が高卒以下の人は1年前にケアラーだったことに より現在の主観的健康状態が悪い。 独身の人は3年前にケアラーだったことにより、現在の主観的健康状態が悪い。 こうした特定の属性かつケアラーであることにより現在の主観的健康状態が悪いという特徴は、若者ケア ラー特有のものであることがわかった。 <メンタルヘルス> 年齢に関係なく、1年前にケアラーだったことは現在のメンタルヘルスを悪くすることがわかった。 若者ケアラーのほうが1年前のケア経験により現在のメンタルヘルスが悪くなることがわかる。 65
アウトライン はじめに 先行研究 分析 アプローチ 1 2 3 分析結果 4 おわりに 5 66
おわりに まとめ① 若者ケアラーの属性 独身の人、高卒以下の人ほど若者ケアラーである確率が高く、 女性や長子が高齢のケアラーである確率が高い 介護における性別役割分業や長子相続制の傾向は年齢が高くなるほど強まる 介護時間および家事時間の長さについて、年齢にかかわらず 女性のほうが長いことが明らかになった。 67
おわりに まとめ② 雇用・所得・健康への影響 【雇用への影響】 <1年前> ケアラーかつ独身または高卒 以下の人 <2年前> ケアラーかつ高卒以下の人 【所得への影響】 過去のケア経験による影響は みられない 【健康への影響】 【主観的健康状態】 <1年前> ケアラーかつ長子、世帯収入 が低い人、学歴が高卒以下の 人 <3年前> ケアラーかつ独身の人 【メンタルヘルス】 <1年前> 若者ケアラーだった人 68
おわりに まとめ・考察 • 独身及び学歴が高卒以下の場合には若者ケアラーになりやすく、彼らが過去にケアラー であった場合には現在の雇用形態にも持続的に影響を及ぼす (独身の場合、家庭内での経済的及び心理的サポートがないために過去のケア経験からの復帰が遅く なってしまう。学歴が低い人の場合、過去のケア経験も重なり正規雇用への就職が困難であることが 推測される) • 特定の属性の人において、過去のケア経験が持続的に現在の健康状態に影響を与える。 若者ケアラーだった人はメンタルヘルスが悪化する 彼らは属性によって介護による雇用や所得、健康状態への負担が異なるため、個別の状況に 応じた支援が重要である。特に、メンタルヘルスへの影響を軽減するための心理的サポート が不可欠である。また、ケアを終えたあとの継続的なサポートも必要である 69
おわりに 課題点 1 若者ケアラーダミーが1となるケースが少なく精緻な分析ができていない点 若者に対象者を絞ったパネル調査ではないため、ケアラーかつ若者に該当するサンプルが 少なく、推計の精度が低くなってしまっている可能性がある。 2 逆の因果性への対処が不十分である点 推計2において、逆の因果性の問題に対して本来であれば操作変数を 用いることで対処するべきであった。 しかし、適切な操作変数を見つけることが困難であったために、説明変数のラグ項を用いる ことで対処したため、より精緻な分析を行うことができていない可能性がある 70
参考文献 • • • • • • • • • Becker, Fiona and Saul Becker,(2008)‟Young Adult Carers in the UK: Experiences, Needs and Services for Carers Aged 16-24.”,Princess ryal trust for carers Becker, Saul and Joe Sempic,(2018) ‟Young Adult Carers: The Impact of Caring on Health and Education”, Children & society Volume 33, Issue 4 p.377-386 Brimblemombe, Nicola, Martin Knapp, Derek King, Medeleine Stevens, and Javiera Cartagena Farias,(2020) ‟The high cost of unpaid care by young people:health and economic impacts of providing unpaid care”, BMC Pubic Health 5;20(1):1115 Grenard L ,Deborah , Esteban J valencia, Jennifer A Brown, Rachel L Winter and Alyson J Littman,(2020) ‟Impact of Caregiving During Emerging Adulthood on Frequent Mental Distress, Smoking, and Drinking Behaviors: United States, 2015-2017”,Am J Public Health 110(12):183-1860 Haugland, BSM, Hysing M and Sivertsen B ,(2020) ‟The Burden of Care: A National Survey on the Prevalence, Demographic Characteristics and Health Problems Among Young Adult Carers Attending Higher Education in Norway”, Front Psychol. 10:2859. 森田久美子(2016)「子ども・若年介護者の実態」『立正大学社会福祉研究所年報』 第18号41~51 青木由未加・滝沢龍(2022)「若者ケアラーに関する研究の現状と展望」『東京大学大学院教育学研究科紀要』 62 281289 藤田由起・遠矢浩一(2022)「ヤングケアラー的役割を有する子どもの家族関係と精神的健康の関連 ―ケア役割、母親の養 育態度、きょうだい関係に着目して―」『特殊教育学研究』,59巻4号,223-234 渡邉照美(2023)「若年ケアラーの介護経験が人生に及ぼす影響に関する実証的研究」科学研究費書生事業 『研究成果報 告書』 71
参考文献 • 総務省『人口動態 家族のあり方等 社会構造の変化について』(最終閲覧日:2024年12月18日) 市町村合併の推進状況について • 厚生労働省「令和3年版厚生労働白書」(最終閲覧日:2024年12月18日) 令和3年版厚生労働白書-新型コロナウイルス感染症と社会保障-(本文)|厚生労働省 (mhlw.go.jp) • 日本ケアラー連盟「ヤングケアラーとは」(最終閲覧日:2024年12月18日) ヤングケアラーとは - 日本ケアラー連盟 (carersjapan.com) • 日本総研「ヤングケアラーの実態に関する調査研究」(最終閲覧日:2024年12月18日) ヤングケアラーの実態に関する調査研究|日本総研 (jri.co.jp) • こども家庭庁「ヤングケアラー支援の強化に係る法改正の経緯・施行について」(最終閲覧日:2024年12月 18日) 01_ヤングケアラー支援の強化に係る法改正の経緯・施行について • 神戸新聞NEXT「仕事と介護で睡眠2時間 相次ぐ暴言、徘徊を我慢 祖母殺害へ至る過酷な日々」(最終閲 覧日:2024年12月18日) https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202009/0013708811.shtml • 朝日新聞「介護続けた母に手をかけた夜 孤独の『ヤングケアラー』が迎えた限界」(最終閲覧日:2024年 12月18日) https://www.asahi.com/articles/ASQ7C5WVYQ6ZOBJB001.html?iref=pc_ss_date_article 72
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