スクラムにおける「意図的な不完全」とは?

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April 08, 25

スライド概要

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レッドジャーニー(https://redjourney.jp/) 所属のアジャイルコーチ 元ギルドワークス 所属 様々な規模のSIerでのシステム開発を経て今に至り、約10年で40の組織、80のチームを支援している。 「ええと思うなら、やったらよろしいやん」を口癖に、社内のみならず社外のチームがより良くなるお手伝いなど日々活動中。 ・認定プロフェッショナルスクラムマスター(CSP-SM) ・認定プロダクトオーナー(CSPO) ブログ:サウスポーなエンジニアの独り言

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関連スライド

各ページのテキスト
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スクラムにおける 「意図的に不完全」とは? v1.0̲20250327 中村 洋(@yohhatu) https://unsplash.com/photos/D-0kJ-̲GiQE

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はじめに

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はじめに ✔ 質問、疑問、自分の考えを出すことはこの場 への貢献です。どんどん出していきましょう ✔ それぞれ考えや解釈が違っていて当たり前で す。違いを楽しんでいきましょう

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はじめに ✔ わりと難しい感じるかもしれない話をします (できるだけ平易に話そうとはしますが) ✔ 1回で「全部わかった!」にならなくていい です(なったらそれはそれで困る)

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このスライドのゴール https://unsplash.com/photos/BfphcCvhl6E

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ゴール ✔ スクラムの大事にしていることが少しわかる ✔ 自分たちのやっていることに少し自信が持て る(かもしれない)

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このスライドでは話さないこと

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このスライドでは話さないこと ✔ スクラムの個別具体的なやり方 ✔ 「チームとはなにか?」「よいチームの特 性、要素はどのようなものか?」といったチー ムの話

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スクラムの簡単な復習 https://unsplash.com/photos/ft7vJxwl2RY

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SCRUM FRAMEWORK Sprint Retrospective Product Goal Product Backlog Refinement Daily Scrum Definition of Done Sprint Goal Dev Sprint Planning SM Sprint Review PO Product Backlog Increment Sprint Backlog Scrum Team https://www.scrum.org/resources/scrum-framework-poster

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スクラムイベント ✔ 1週間の短い期間を1つの単位として、その先頭で計 画を立てる ✔ その計画の進捗状況を日々確認して、問題を発見 し、必要があれば計画を変える ✔ 短い期間の最後に、利用者や関係者でできたものを さわり、出来映えを確認し、次に作るものの着想や洞 察を得る ✔ 最後に自分たちのやり方を改善するための話し合い をして、うまくやる方法を見つける ✔ そしてまた次の1週間に入っていく(繰り返し)

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スクラムの三本柱 https://unsplash.com/photos/kASM8UeUK9M

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スクラムの三本柱 ✔ 透明性 ✔ 検査 ✔ 適応

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透明性・検査・適応

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透明性 ✔ プロセスや作業は、作業を実行する人とその作 業を受け取る人に見れる必要がある ✔ 重要な意思決定は、作成物を認知する状態に基 づいている ✔ 透明性で検査が可能になる。透明性のない検査 は、誤解を招き、ムダなものである

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透明性 ✔ やり方や現在の状況がチームや関係する人た ちから見えていること ✔ 透明性が高いことで、より価値を高める機会 を得たり、よりよい意思決定ができる

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透明性の例 ✔ チームで誰がなにをやっているか? ✔ この施策はどうなったら終わりなのか?(完了 条件) ✔ なにを目指しているのか?(ゴール、OKR) ✔ ゴールに対しての進捗は? ✔ 施策の結果は? ✔ どのような課題があるか?

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検査 ✔ 作成物と合意されたゴールに向けた進捗状況 は、頻繁かつ熱心に検査されなければならない ✔ 検査により、望ましくない変化や問題を検知す ることができる ✔ 検査によって適応が可能になる。適応のない検 査は意味がないとされる

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検査 ✔ 生成物、成果物、進捗状況などが頻繁に検査 されること ✔ 頻繁な検査によって変化や問題を素早く見つ けることができる

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検査の例 ✔ 昨日までの進み具合だとゴールにいつ到達で きるのか? ✔ やり方を変えてみた結果、どんなことが起き たのか? ✔ 先週の施策の結果は自分たちの予想通りだっ たのか?違ったのか? ✔ 自分たちはなにができるようになったのか?

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適応 ✔ 検査の結果、プロセスがうまくいっていなかっ たり、作成物が受け入れられない時は適応する必 要がある ✔ 検査によって新しいことを学んだ瞬間に適応す ることが期待されている

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適応 ✔ なにかおかしいこと、期待と違う結果である ことがわかったら対応する ✔ 適応することで改善し、より良い結果を得や すくなり、目標に到達しやすくなる

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適応の例 ✔ より大事なタスクが見つかったので、着手順 の低いタスクの代わりに、そのタスクをチーム 全員で取り組むことにした ✔ 施策の結果が予想より良かったので、類似の 施策に予算をより投入することにした ✔ 外的環境が変わったことで、獲得したい利用 者のセグメントを変えることにした

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スクラムの価値基準 ✔ 確約(Commitment) ✔ 集中(Focus) ✔ 公開(Openness) ✔ 尊敬(Respect) ✔ 勇気(Courage)

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スクラムの価値基準 ✔ ゴールを達成し、お互いにサポートすることを 確約する ✔ ゴールに向けて可能な限り進捗できるように、 スプリントの作業に集中する ✔ 作業や課題を公開する ✔ お互いに能力のある個人として尊敬する ✔ 正しいことをする、困難な問題に取り組む勇気 を持つ

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スクラムの落とし穴

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スクラムの落とし穴 スクラムに取り組み始めたチームが一度は(時に は何度も)なる状態があります ✔ 「スクラムとしてこれは正しいんだろう か?」 ✔ 「スクラムって○○だから〜、XXはすべき」 ✔ 「スクラムは○○だから、XXができない」

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スクラムの落とし穴 スクラムの三本柱や5つの価値基準を抜きにやり 方に着目しているとこうなりがちです

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スクラムに向き合う問い 以下のような問いに向き合うことで ✔ 「どうすれば我々は、より効果的な三本柱(透 明性・検査・適応)をうまくできるか?」 ✔ 「どうすれば我々は、5つの価値基準(確約・ 集中・公開・尊敬・勇気)をより強固に意味のあ るものにできるか?」

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参考:アジャイルの3つの俊敏さ ✔ 素早く、利用者に届ける ✔ 素早く、利用者から結果を得る ✔ 素早く、意思決定して次に進む

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スクラムにちゃんと向き合うと なにが起きる? ✔ うまくいっている/いない、足りないていない ことに素早く気づける ✔ 継続的に改善する機会によって学びを得られ て、だいたいにおいてうまくなる ✔ プロダクトがちゃんと出せるようになる(ただ し儲かるかは別)

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守破離

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守破離 日本の武道、茶道などの道には”守破離”(しゅは り)という言葉があります ✔ 守:型を忠実に守る。型を染み込ませること となにが起きるか、感じるかを知る ✔ 破:自分たちの型が見つかる(見つける)。守 と破を行き来することが多い ✔ 離:自分たちなりの型ができる

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守破離 基本の型である「守」が十分、身についていな いと「破」「離」をやろうとしても多くの場合 うまくいきません ではスクラムにおける”型”とはなんでしょうか?

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スクラムフレームワークは “意図的に不完全”

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スクラムフレームワークは “意図的に不完全” スクラムはシンプルである。まずはそのままの状態で試し てほしい。そして、スクラムの哲学、 理論、構造が、ゴー ルを達成し、価値を生み出すかどうかを判断してほしい。 スクラムフレームワークは意図的に不完全なものであり、 スクラムの理論を実現するために必要な部分のみが定義さ れている。 スクラムは実践する人たちの集合知で構築されている。ス クラムのルールは詳細な指示を提供するものではなく、実 践者の関係性や相互作用をガイドするものである。

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スクラムだけでいいの? スクラムだけでは価値あるプロダクトを顧客に 届けることは難しいです そのために学ぶことや活動は山ほどあります

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スクラムだけでいいの? ✔ ビジネス(お金儲け)の理解 ✔ 業界や利用者のことの理解 ✔ 技術的なプラクティスの実践 ✔ 品質を担保し、安定するための考え方 ✔ 継続して使えるようにする運用の実践 ✔ 効果的なチームになるために必要なこと ✔ チーム外のステークホルダーとの期待値調整 ✔ 自分のこと、他人のこと、自分と他人との関係性の 築き方 …etc

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スクラムだけでいいの? スクラムを通じて、必要なことを見つけ、学び ながらうまくなっていくことがスクラムの本質 の1つ

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スクラムを捨てる日

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スクラムを捨てる日 チームが熟達してくると、最初はチームを混乱 から守り安定を促してくれていたスクラムが足 かせになることもあります その場合、”スクラムを捨てる”ことで自分たち オリジナルのやり方、あり方を見つけるのも1つ です(守破離の離)

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スクラムを捨てる日 スクラムそのものをやらなくなってもスクラム の三本柱や5つの価値基準の有用性がなくなる わけではないです(ましてやアジャイルの4つの 価値と12の原則も同じ)

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大事なこと

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大事なこと スクラムのやり方にこだわりすぎず、 利用者に役立つものを提供し続ける方法を、 探し続けましょう ※ただし、守破離は大事にしてね

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大事なこと ✔ スクラムの表面的なやり方にあまりこだわり すぎない ✔ スクラムによって見つかるいろいろできない ことを目を背けずに取り組むことで改善できる ✔ スクラムが当たり前にできると補助輪(=スク ラム)なしで、より効果的なやり方やあり方にた どり着ける

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スクラムを使いながら熟達したチームに 近づくきっかけになれば幸いです https://unsplash.com/photos/3y7fe̲I--WU