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November 18, 23
スライド概要
自動運航船の開発に適したシミュレータモデルの機能要件等を整理した研究の紹介です。同名の論文が2022年の日本船舶海洋工学会秋季講演会論文集に掲載されています。
大阪大学 工学研究科 地球総合工学専攻 船舶海洋工学部門 船舶知能化領域です. 研究室の発表スライドなどを共有します. We are Ship Intelligentization Subarea, Dept. of Naval Architecture & Ocean Engineering, Div. of Global Architecture, Graduate School of Engineering, Osaka University.
⾃動運航船開発に適した シミュレータモデルとは ○宮内 新喜 *, 澤⽥ 涼平 *,**, 濱⽥ 曉 *, ⼩池 弘顕 *, 和⽥ 翠星 *, ⾕⼝ 拓也 *,***, 脇⽥ 康希 *, 牧 敦⽣ * *⼤阪⼤学, **海上・港湾・航空技術研究所, ***ジャパン マリンユナイテッド株式会社
研究背景 適切な船体動的モデルはケースバイケースであり, 選択の指針が必要 ⾃動運航船の開発では,制御系を含めた動的システムのシミュレーションを⾏う 運航状況が変わると,モデルに求められる機能も変化する 巡航状態での操船と離着桟操船など シミュレーションでシステムのどの機能を評価したいのかによっても,適切な モデルは変わる 船体設計,制御設計,船員訓練,システム結合試験 しかし,操船に応じて適切なモデルを選択する指針はあまり議論されていない ⾃動運航船開発に適したシミュレータモデルとは 2
著者らの主張 シミュレータに使⽤されるモデルは, 合⽬的であることが必要であり,また合⽬的であれば⼗分 合⽬的性とは 船体設計評価にはモジュラー型構造が便利 制御に使うモデルは⾼いレベルでの定量的な⼀致は必ずしも必要ない フィードバック制御では,モデル化誤差が吸収されることが期待できる モデルの⾼機能化,精度の追求とモデル構築コストはトレードオフ 当初にシミュレーションの⽬的に応じたモデルの要件定義を⾏う モデルの構築のコストを最適化したり,モデル選択の失敗を防げる ⾃動運航船開発に適したシミュレータモデルとは 3
本論⽂の⽬的と内容 ⾃動運航船のシミュレータで求められる動的モデルとは なにかを述べる 動的モデルを作成する⽬的(⽤途)について整理する. 代表的な動的モデルについて体系的に整理する. 動的モデルの複雑さと構築コストとのトレードオフを実例を元に ⽰す. ⾃動運航船のためのシミュレーションの機能要件と⾮機能要件の について考察し,具体例を⽰す. ⾃動運航船のタスクとして,特に避航操船と着桟操船を例に説明する ⾃動運航船開発に適したシミュレータモデルとは 4
動的モデルの作成⽬的と使途 動的モデルの作成⽬的を⼤きく4つに分類した 設計時の操縦性能検討⽤ ⾃動運航船アルゴリズム開発・性能確認⽤ IMO操縦性基準への適合確認 アルゴリズムの安全性を仮想環境で評価 実船・模型船の尺度影響が考慮可能 精度が重要 モジュラー型であること リアルタイム性も重要 操船シミュレータ⽤ MB制御則とオブザーバへの組み込み 船員の訓練,事故の再現などに使⽤ ⾮線形カルマンフィルタや制御則の⼀部として使⽤ ⼈間がシミュレーション誤差を吸収できる ⼊⼒affine系であることが望ましい 多彩な環境外乱⼊⼒が必要 モデル構築の作業コストが低いことが望ましい 5
動的モデルの分類 これまでの「応答モデル,流体⼒学モデル」*に, 最近の動向を追加して分類 応答モデル:制御⼊⼒と船の応答の関係をモデル化 野本のKTモデル(1957)やNorrbin(1963)の⾮線形性を含むモデルなど ARモデル Neural Network等のブラックボックス型のモデル 流体⼒学モデル:運動⽅程式における流体⼒をモデル化 Whole-shipモデル:船全体を1つのシステムとし,流体⼒を多項式等で表現 Abkowitz モデル(1980) Modular-typeモデル:流体⼒を船体・舵・プロペラなどの要素に分割 MMGモデル 修正Abkowitzモデル “Fossenのモデル” ⾃動運航船開発に適したシミュレータモデルとは *: 仲渡道夫, 操縦性研究の流れ, 第 3 回操縦性シン ポジウムテキスト, chapter I, pp. 1–8. ⽇本造船学会, 1981. 6
動的モデルの複雑さと構築コストとのトレードオフ 精度の⾼い動的モデルは, 複雑になり構築にはコストがかかる 精度の⾼い動的モデル 動的モデル構築コスト • 物理現象の理論的な把握 • 低速・浅⽔域含む複雑な状況の表現 • アクチュエータやセンサーの特性を反映 • 流体⼒学等の専⾨知識 • ⽔槽試験等の専⽤設備 • 多種多様な試験内容 動的モデルの構築⽅向 タイプシップの値を流⽤ 要⽬ベースの回帰式から算出 拘束試験による係数の取得 船の運動からのシステム同定 ⾃動運航船開発に適したシミュレータモデルとは 動的モデルの使⽤⽤途,必要精度, 使⽤できるコストを考慮して 構築⽅法を選択する必要性 7
シミュレーションで⽤いる動的モデルは実際どのように設計するか シミュレーション設計プロセスの例 ⼊出⼒系のモデルを設計する 用途に応じ,シミュレーションで 評価したい要素を明らかにする モデルの⼊出⼒を 設計する テレグラフ 指⽰値 ステア 指⽰値 n(t) δ(t) x(t),v(t) x(t) v(t) δ(t),n(t) ⾃船表⽰ Model x(t+⊿t) 精度よりリアルタイム性? v(t+⊿t) パラメータを設計する 実験値 リアルタイム 推定値 低速時の制御応答の再現性? Coef. ⾃動運航船開発に適したシミュレータモデルとは 8
⾃動運航船のためのシミュレーションの機 能要件と⾮機能要件の例 IEC 62065における 追従制御シミュレータの機能要件の設定 船体運動の本質的な特徴を代表するものであること 直進運動が不安定な船舶の挙動についても表すことができること モデルは,特別な修正を加えることなく, 市販の船舶制御システムに接続できるものであるべきである モデルは,世界中のテストハウスが曖昧さなく⽅程式を解釈し, 最⼩限の困難さでコンピュータシミュレータに数式を組み込める ように,単純であるべきである ⾃動運航船開発に適したシミュレータモデルとは IEC 62065:2014, maritime navigation and radio communication equipment and systems - track control systems - operational and performance requirements, methods of testing and required test results, 2014, 9
⾃動運航船のためのシミュレーションの機能要件と⾮機能要件の例 運動モデルを作る前にモデルで何を表現したいかを整理する →機能要件・⾮機能要件の整理 避航操船の場合・機能要件 1. 速度に応じた前後・左右・回頭⽅向の流体抵抗が船体に加わること 2. 船や速度によって、針路安定・不安定の傾向が表れるようなモデル構成になっていること 3. 物理的に起こりえない旋回挙動などにならないこと 4. 舵をきれば、その舵⾓と船の性質に応じた旋回挙動となること 5. プロペラ回転数に応じた速度が実現できること 6. 舵ききが速度とプロペラ回転数に応じて変わること 7. ⾵環境下で,⾵下側に流されたり,旋回をすること 8. 制御のコマンドとアクチュエータの遅れが考慮できていること 9. 微分⽅程式の時間ステップが,スケール等に応じて適切に選ばれていること 10. 各ステップの計算が実時間(ステップ時間)内に完了すること(リアルタイム性) ⾮機能要件の例としては,モデルのオープン化,定義の明確さなど ⾃動運航船開発に適したシミュレータモデルとは 10
⾃動運航船のためのシミュレーションの機 能要件と⾮機能要件の例 運動モデルを作る前にモデルで何を表現したいかを整理する →機能要件・⾮機能要件の整理 離着桟操船の場合・機能要件 1. 外⼒と制御⼊⼒等が存在しない場合、速度ベクトルについてのシステムの原点 (𝑢, 𝑣, 𝑟)⊤ = 0 が漸近安定性を持つこと 2. 速度に応じた前後・左右・回頭⽅向の流体抵抗が船体にかかること 3. 船や速度によって、針路安定・不安定の傾向が表れるようなモデル構成になっていること 4. 物理的に起こりえない旋回挙動などにならないこと 5. 舵をきれば、その舵⾓と船の性質に応じた旋回挙動となること 6. プロペラ回転数に応じた速度が実現できること 7. 舵ききが速度とプロペラ回転数に応じて変わること 8. 速度に応じてサイドスラスタの効果が変化すること 9. プロペラ逆転時に,プロペラ回転⽅向に応じた回頭運動が⽣じること 10. ⾵環境下で,⾵下側に流されたり,旋回をすること 11. 制御のコマンドとアクチュエータの遅れが考慮できること 12. 微分⽅程式の時間ステップが,スケール等に応じて適切かつ⾃動的に選ばれていること 13. 各ステップの計算が実時間 (ステップ時間) 内に完了すること(リアルタイム性) ⾮機能要件は避航操船と同じ ⾃動運航船開発に適したシミュレータモデルとは 11
提⾔ ⾃動運航船のシミュレーションに適⽤可能な表現⼒を持つ モデルの構造を規格化し,公開すべき データの蓄積や⽔槽を有さないユーザーでもモデルの構築が可能となるよう に モデル内の係数に関するチャート整備, ソースコードを公開する MMGはモデル構築コストが⾼いという批判(Huang et al., 2020)があるが,過去のデー タの蓄積が使えるため,決してコストは⾼くない MMGの利点が広く共有されることが望ましい 応答モデル,MMG以外の流体⼒学モデルでも同様 ⾃動運航船開発に適したシミュレータモデルとは 12
結論 13 動的モデルを適切に選択をすることの重要性を⽰した 評価やタスク等に応じた機能要件を整理し,動的モデルを適切に選択をする モデル構築のコストや機能等についての検討が重要 避航操船と着桟操船を例に取り,開発における動的モデルの機能要件および ⾮機能要件の例を⽰した 上記検討を基に,以下に関する提⾔を⾏なった モデルの構造の規格化 コードのオープンソース化 必要な係数の整理と公開 ⾃動運航船開発に適したシミュレータモデルとは 13