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October 05, 26
スライド概要
スウェーデンで多数の症例が報告されている「あきらめ症候群(Resignation Syndrome)」について解説しています。この症候群は、外傷的体験や難民申請の却下などを背景に、難民や移民の子供や若年者に多く見られる症状です。不安や抑うつ状態から始まり、無為や緘黙を経て、意識はあるものの会話や行動などの意志発動が全く行えなくなる昏迷状態へと段階的に進行します。その発生メカニズムとしては、学習性無力感や凍りつき反応の極限状態、カタトニアの一種、文化依存症候群、脳のトップダウンによる身体機能のシャットダウンなど多様な説が挙げられます。特別な特効薬は確立されておらず、経管栄養や体位変換といった身体管理と、安心できる環境での感覚刺激によるケアが行われ、永住権の獲得など安全で希望の持てる環境が得られることで徐々に回復へと向かいます。心理面、身体生理面、社会制度面、文化面の多角的な観点からあきらめ症候群の病態と解説を行っています。映画『QUIET LIFE』の日本公開を受けて作成されたものです。
精神科医、大学教員かつYouTuberです。資料は講義での使用OKです。 私がYouTubeで使用している資料につき公開をご希望の方がいたら、該当する動画のコメント欄でお知らせください。
あきらめ 症候群
あきらめ症候群 Resignation Syndrome レジグネイション スウェーデン語でウップ イェーヴェンヘッツ シュンドローム upgivenhetssyndrom
積極的に難民を大量に受け入れてきた スウェーデン で多数の報告されてきた 重村淳, レクチャーシリーズ トラウマティック・ストレス, 2019, 17(1),100p,
男:女=2:3 政治的・民族的 マイノリティ に多い 重村淳, レクチャーシリーズ トラウマティック・ストレス, 2019, 17(1),100p,
7-19歳の 若年者に多い 重村淳, レクチャーシリーズ トラウマティック・ストレス, 2019, 17(1),100p,
迫害、暴力、拷問、 家族が傷つけられる場面の目撃 など 外傷的体験が多い von Knorring A-L, & Hultcrantz E. Eur Child Adolesc Psychiatry. 2020; 29(8): 1103–1109.
難民申請が 認可されなかった 難民・移民の小児 に多い von Knorring A-L, & Hultcrantz E. Eur Child Adolesc Psychiatry. 2020; 29(8): 1103–1109.
家族の中で早く スウェーデン語を身に着けた 子どもたちが 家族の通訳者になることが多く 申請の却下を最初に知り 家族に伝える ストレスが影響 することも von Knorring A-L, & Hultcrantz E. Eur Child Adolesc Psychiatry. 2020; 29(8): 1103–1109.
KADOKAWA 教養としての 精神医学
不安や不機嫌症 不安、抑うつ気分、睡眠障害 嗜眠、社会的引きこもり 重村淳, レクチャーシリーズ トラウマティック・ストレス, 2019, 17(1),100p,
む い 無為 意欲の欠如、発語しなくなる緘黙 遊び・学校などの参加の拒絶 重村淳, レクチャーシリーズ トラウマティック・ストレス, 2019, 17(1),100p,
昏迷 会話や行動などの 意志発動が行われなくなる 重村淳, レクチャーシリーズ トラウマティック・ストレス, 2019, 17(1),100p,
昏迷状態が 半年~約1年 続くことが多い Aronsson B, et al. Acta Paediatr. 2009; 98(12): 1977–1981. Forslund CM, & Johansson BA. Eur Child Adolesc Psychiatry. 2013; 22(4): 251–258.
KADOKAWA 教養としての 精神医学
絶望的な恐怖や逃れられないストレス状況下で 「自らの行動では状況を変えられない」 と認識した結果生じる 学習性無力感や 凍りつき反応の 極限状態 と考えられている という説 Sallin K, et al. Front Behav Neurosci. 2016; 10: Article 7.
あきらめ症候群の症状から カタトニア(緊張病) のひとつとする説 Sallin K, et al. Front Behav Neurosci. 2016; 10: Article 7.
特定の社会・文化環境 メディア報道、難民コミュニティ内 において 極限状態での 苦痛の表現様式 症状の選択肢 として共有されて 文化依存症候群として 生じたとする説 Sallin K, et al. Front Behav Neurosci. 2016; 10: Article 7.
絶望的な負の予測で 脳が 自発的な運動系や 内受容感覚や 恒常性維持システムを トップダウンで シャットダウンさせた とする説 Sallin K, et al. Front Behav Neurosci. 2016; 10: Article 7.
KADOKAWA 教養としての 精神医学
カタトニアの治療を参考に ベンゾジアゼピン受容体作動薬 電気けいれん療法 による治療の可能性も 考えられている しかし 実証されて いない
経管栄養 オムツなどの排泄の介助 必要になる 重村淳, レクチャーシリーズ トラウマティック・ストレス, 2019, 17(1),100p,
体を動かせずに過ごすため 皮膚の褥瘡、筋萎縮 関節の拘縮 などが生じやすい 体位変換や清拭 関節可動域の維持リハビリ などが必要 重村淳, レクチャーシリーズ トラウマティック・ストレス, 2019, 17(1),100p,
安心できる環境・雰囲気での 感覚刺激 が治療として行われることも。 温かいタオルで体を拭く 手足や背中をやさしくマッサージする 保温や保湿を行う 家族によるハグや手を握る行為 優しく語り掛ける 音楽を聞かせる など
難民申請の却下などで 不安になっている家族からの 負の感情の伝播を 防ぐため 家族から離して 治療される こともある
永住権の獲得など 安全で希望の持てる環境が 得られてから徐々に回復 長期間の昏迷の影響で 落ちた身体機能の回復の リハビリが必要になることが多い あきらめ症候群の子に対する 永住権については 医学的、社会的、倫理的な議論が残る
KADOKAWA 教養としての 精神医学
手を握り返す うっすらと目を開ける などの小さな動き
アイコンタクト うなずき といった 非言語的な意思表示
食事摂取 体を起こす 歩く などの活動
言葉による コミュニケーション が可能になる
あきらめ症候群には 心理的 神経・身体生理的 法・社会制度的 文化・集団的 の4つの側面が 関連する