人事データ分析ダンジョンの攻略法

4.8K Views

February 04, 25

スライド概要

武田邦敬 クニラボ代表|ピープルアナリティスク協会上席研究員
※2024/6/25に開催された「HRテクノロジー研究会」でのプレゼン資料です。

概要:
本セミナーでは、人事データ分析のテーマ設定に着目し、人事データ分析プロジェクトの特徴を踏まえた攻略のヒントをお伝えします。「単発の分析プロジェクトに終わってしまう」「分析結果に対してステークホルダーの納得感を得られない」「データ分析を人事プロセスに自然に組み込めない」などでお悩みの人事データアナリストのみなさま、ぜひご覧ください。

関連情報:
https://ku2t-lab.com

profile-image

データドリブンHRコンサルタント/データサイエンティスト。富士通で人事ソリューション開発やデータサイエンティストを経験した後、2018年にHR分野のデータ活用チームを立ち上げ。採用、配置、育成、ジョブ型移行など幅広い領域で実績を積む。2023年よりクニラボを立ち上げ独立し、ピープルアナリティスク支援やDX人材育成を展開。現在、一般社団法人ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会の上席研究員および早稲田大学組織経済実証研究所の招聘研究員としても活動中。 ニュースレター https://ku2t-lab-pa.theletter.jp/ note https://note.com/ LinkedIn https://www.linkedin.com/in/ku2t/ 事務所サイト https://ku2t-lab.com/

シェア

またはPlayer版

埋め込む »CMSなどでJSが使えない場合

関連スライド

各ページのテキスト
1.

一般社団法人ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会 HRテクノロジー研究会(第3回) クニラボ 人事データ分析ダンジョンの攻略法 分析現場で発見したボトムアップアプローチ 2024年6月25日 (2025年2月3日公開) 一般社団法人ピープルアナリティスク&HRテクノロジー協会上席研究員 クニラボ代表/データドリブンHRコンサルタント 武田 邦敬 ©2024 クニラボ

2.

自己紹介 武田 邦敬 (たけだ くにひろ) 2003 富士通 SE・PdM 人事総務ソリューション開発・展開 2011 富士通研究所 データサイエンティスト 防災×SNS分析とプロダクト開発 倒 七転八 データドリブンHRコンサルタント/ データサイエンティスト 2016 富士通 データサイエンティスト 製造、公共、金融、人事などAI事業 2018 富士通 HRアナリティクスチームリーダー 社内外の人事データ分析を支援 クニラボ https://ku2t-lab.com LinkedIn https://www.linkedin.com/in/ku2t note https://note.com/ku2t 転機 2023 (8月-) クニラボ ピープルアナリティクスを中心にデータ ドリブン経営や製品DXを支援 ©2024 クニラボ

3.

こんな人事データ分析に携わってきました。 人事異動案の レコメンド スキル成長 要因分析 異動パターン 解析 組織戦力の 可視化 ハイパフォーマー 特性分析 ジョブ型 ロール設計支援 休職予測 アラート ジョブ型 JD定量分析 エンゲージメント 要因分析 データ分析者 メンタリング ©2024 クニラボ

4.

一期一会 迷い やすい 深堀ると 見つかる 人事データ分析はダンジョン探検のようだ。 ら か だ ! い 面白 ©2024 クニラボ

5.

人事データアナリストの方に向けて… データサイエンティストとして 人事データ分析プロジェクト現場で 楽しく学んだことをお伝えします。 ©2024 クニラボ

6.

本日お話すること 過去の失敗事例 問題背景と攻略指針 テーマ発掘に フォーカス 攻略法(3点) まとめ ©2024 クニラボ

7.

過去の失敗事例 ©2024 クニラボ

8.

人事データ分析プロジェクトで起きたこと① ハイパフォーマーに共通する人事属性や経験を探る分析プロジェクトにて、 最終レポーティングを実施したところ… ハイパフォーマーの 定義を巡って議論が紛糾 ”そもそもこんな分析 しなくてよかったね” ©2024 クニラボ

9.

人事データ分析プロジェクトで起きたこと② 非正規雇用従業員のシフト決めを効率化したいとのご要望を受け、AI技術を 使ったマッチングソリューションの検討をスタートしたが… シフト決めは大変だが長くて1-2日 で終わることが判明。 ”人が足りておらず組織間の調整が 大変なので、交渉するAIを作って ほしい” ©2024 クニラボ

10.

人事以外でもこの手の話がゴロゴロ。 事例 特殊業務の重大な誤りを発見するAIを作ったが、作業誤りが起きること自体が問題だと 判断されシステム化予算が下りずストップ。(プロジェクト期間:1年半) 事例 配送プラン最適化のためのデータ分析を行ったが、サプライチェーンの制約からオペレ ーションをすぐに変えられないことが分かりストップ。(プロジェクト期間:半年) ©2024 クニラボ

11.

問題背景と攻略指針 ©2024 クニラボ

12.

失敗事例 経営や業務に役立つプロジェクトでなかった データ分析の目的をうまく 決められなかった ©2024 クニラボ

13.

目的設定に関する 人事データ分析特有の難しさ プロフィット部門のデータ分析プロジェクトでは売上に寄与するか、また全体最適かど うかを確認していけば目的を外しにくい。しかし、人事領域は… 黎明期で実践知が不足(現場に) コストセンターのためKPI作りが難しい 人にかかわるテーマで議論がナイーブ ©2024 クニラボ

14.

目的明確化のために試して上手くいかな かったこと ”あるべき姿を教えてください” ”KPIを決めましょう” ”目的は何でしょうか?” 会話の初期段階でのストレート問いかけや、 結論を急ぐとメンバーの「本音」に到達できない。 ©2024 クニラボ

15.

打開のきっかけになったヒント “支援になると思う方法にあまりに性急に飛びついてしまうと、誤った問題に取 り組むことになる恐れがある。現実に起きていることを、まだしっかりと探求 できていないからである” 謙虚なコンサルティング,エドガー・H・シャイン,英治出版 “チェンジエージェントは、現状を正確に診断し問題を明確化するために存在し ているのではない。彼らの重要な役割は、学習と即効性のための機会を作るこ とである” 対話型組織開発,G. R. ブッシュ, R. J. マーシャク,英治出版

16.

ダンジョン攻略指針 柔軟なコミュニケーションで 少しずつ目的を見出していく。 ©2024 クニラボ

17.

人事データ分析ダンジョンの攻略法 ©2024 クニラボ

18.

ダンジョン攻略法 現場で発見したボトムアップアプローチ 1 2 分析を始める前に、 分析した後のことを話し合う プロジェクトメンバー の対話を促す 3 テクノロジープッシュでなく、 課題に焦点をあてる プロジェクトを通して段階的に目的をくっきりさせていく ©2024 クニラボ

19.

1 分析を始める前に、 分析した後のことを話し合う。 楽しく データ分析によって何らかの知見や ソリューションが得られたと想像し て、そのあとのアクションを建設的 に引き出す。 ©2024 クニラボ

20.

例 キャリア自律を促すため教育受 講状況をリアルタイムに把握で きるダッシュボードを作る。 ダッシュボードは誰に公開しま すか? 見た人にどんなアクショ ンを取ってほしいですか? 新卒採用者と中途採用者のエン ゲージメントに差があるか知り たい。 差があった場合、どのような施 策を打ちますか? もし差が出な かったらどうしますか? 組織別にスキルアセスメント状 況を整理して、組織戦力を把握 したい。 把握した情報を何に活用する予 定ですか? 特定の組織に偏りが あった場合どうしますか? ©2024 クニラボ

21.

データ分析デザインシートの活用 〈出典〉 https://ku2t-lab.com/blog/data-analytics-design-framework-tiham ©2024 クニラボ

22.

ただし、こういうやり方はあまりワークしません。 データアナリストや プロジェクトリーダー 次の会議まで に埋めてね。 ©2024 クニラボ

23.

2 プロジェクトメンバーの 対話を促す。 できれば採用、配置、人材育成、労 務管理など業務横断的なメンバーで 会話をする。話が脱線したり、発散 したりしてもかまわない。 データを見ながら話を深堀りしていく。 ©2024 クニラボ

24.

常に話は横断的になる 人事には採用・配置といったプ ロセスがあるが、「従業員や組 織をよりよくすること」に焦点 を当てると自然に横断的な会話 になっていく。 ©2024 クニラボ

25.

データを見ながら深堀りしていく。 ミーティングの場が「探索的データ分析の場」になることが理想。 “ハイパフォーマーが集まってい る組織がありそう” 組織別の戦力を集計し可視化 “業務が集中している組織が あって問題” 時間外や休暇取得状況を可視化 ©2024 クニラボ

26.

対話の末にたどり着く先は様々。 例: 「AIで配置案を作成する」⇒ 同じテーマでも組織や担当によって焦点が変わる。 ©2024 クニラボ

27.

対話の末にたどり着く先は様々。 例: 「AIで配置案を作成する」⇒ 同じテーマでも組織や担当によって焦点が変わる。 毎年全社の定期異動案を作っているが、 時間がかかるので省力化したい。 配置の実態を把握して課題を見つけ、 人事部門として支援したい。 空きポストに合う人材を社内人材情報か らサーチできるようにしたい。 従業員一人一人にキャリアパスを レコメンドしたい。 タレント育成につながるキャリアパスを 探し、戦略的な配置を行いたい。 配置状況から組織戦力に対する課題を 見つけ、採用施策を検討したい。 ©2024 クニラボ

28.

発散と整理のための「ビジネスデータ活用マップ」 意思決定支援 オペレーション効率化 ファクトを見て決断する 業務の生産性を改善する 提案型UXを実現する 利便性を向上させる 組織内 組織外 〈出典〉 https://ku2t-lab.com/blog/ddm-tool-bdum ©2024 クニラボ

29.

例: 「AIで配置案を作成する」⇒ 同じテーマでも組織や担当によって焦点が変わる。 意思決定支援 組織内 (人事) 配置状況から組織戦力に対する課題を 見つけ、採用施策を検討したい。 オペレーション効率化 毎年全社の定期異動案を作っているが、 時間がかかるので省力化したい。 タレント育成につながるキャリアパスを 探し、戦略的な配置を行いたい。 配置の実態を把握して課題を見つけ、 人事部門として支援したい。 組織外 従業員一人一人にキャリアパスを レコメンドしたい。 空きポストに合う人材を社内人材情報か らサーチできるようにしたい。 ©2024 クニラボ

30.

3 テクノロジープッシュでなく、 課題に焦点をあてる。 データ分析テーマやアプローチを 決めるとき、データ上の制約や技 術志向で取り組むとたいてい失敗 する。 また、事例を単純にスライドでき るとは限らない。 ©2024 クニラボ

31.

分析目的とデータによって 利用すべき手法は異なる 意思決定支援 ・探索的分析 ・次元削減・クラスタリング ・回帰分析/因果推論 配置状況から組織戦力に対する課題を 見つけ、採用施策を検討したい。 組織内 ・組み合わせ最適化 ・行列分解 ・類似度推定 オペレーション効率化 ・ルールベース 毎年全社の定期異動案を作っているが、 時間がかかるので省力化したい。 タレント育成につながるキャリアパスを 探し、戦略的な配置を行いたい。 ・探索的分析 ・回帰分析など ・BIによる共有 配置の実態を把握して課題を見つけ、 ・情報検索 人事部門として支援したい。 組織外 従業員一人一人にキャリアパスを レコメンドしたい。 ・行列分解 ・生成AI ・情報検索 ・質問応答 ・生成AI 空きポストに合う人材を社内人材情報か らサーチできるようにしたい。 ©2024 クニラボ

32.

ピープルアナリティクスの分析アプローチを 考えるときに必要なマインドセット 難しい! ディープラーニングでできることを探す。 問題に合わせてアプローチを選ぶ。 事例をそのままスライドして分析する。 問題とデータの特徴から手法を紐づける。 A/Bテストができないからあきらめる。 必ずしもデータ分析による解決を求めない。 ©2024 クニラボ

33.

スピード感をもって困難に挑むための工夫 人事データ特有の 課題を把握しておく 問題とデータの構造 を注意深く観察する 解くべき問題の難し さを早い段階で探る 武器を組み合わせて 問題を解く 履歴テーブルの扱い になれる 問題は人事的にどの ような意味を持つか まずは問題設定の曖 昧性を評価する コード(名称翻訳)の 変遷に注意する 目的は説明、予測、 制御・介入のどれか 月・年途中イベント の処理を統一する 問題構造は比較、回 帰、分類、特徴抽 出、類似度推定他ど れに似ているか データ量やセレクシ ョンバイアスなどを 確認する 問題構造とデータの特 徴からアプローチを考 える 各変数の業務的なラ イフサイクルを理解 する 組織/職位階層と経時 変化を常に意識する データはどのような 構造を持つか ノンパラメトリック な手法で外観を掴む 探索的な問題は、初 手で線形手法と非線 形手法の両方を試す 回帰、次元削減、クラ スタリング、分布推定 など抽象レベルで組み 合わせる 予測モデルを前処理と して使う 多量な質的データには テキスト分析やスパー ス解析手法を試す 鍵 が 成 育 の 材 専門人 ©2024 クニラボ

34.

まとめ ©2024 クニラボ

35.

ダンジョン攻略法 現場で発見したボトムアップアプローチ 1 2 分析を始める前に、 分析した後のことを話し合う プロジェクトメンバー の対話を促す 3 テクノロジープッシュでなく、 課題に焦点をあてる プロジェクトを通して段階的に目的をくっきりさせていく ©2024 クニラボ

36.

インテリジェンス的参謀でなく、 対話の輪の中でいっしょに考える人事データアナリストへ。 御意 ©2024 クニラボ

37.

クニラボ https://ku2t-lab.com ©2024 クニラボ