いい研修だったで終わる研修はなぜ失敗しているのか

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July 16, 26

スライド概要

「いい研修だった」で終わる研修は、なぜ現場で活かされないのか。満足度アンケートの限界と、学習科学の知見をもとに、研修後の定着に関する構造的な問題を整理しました。人事・研修担当者の方にぜひお読みいただきたい一冊です。

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イノベーションアソシエイツ株式会社で営業を担当しています。 経験学習・1on1・職場活性化・管理職育成など、「研修をやっても変わらない」を変えるためのノウハウを発信中。

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各ページのテキスト
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「いい研修だった」で終わる研修は、 なぜ失敗しているのか 満足度アンケートが見落とす、研修と現場の間にあるもの Produced by

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はじめに 研修は、なぜ現場で活かされないのか。 多くの人事・研修担当者が、一度は感じたことのある問いではないでしょうか。 本レポートでは、研修後の定着に関する研究知見をもとに、その構造的な背景と、私たちが考える一 つの方向性を整理してみました。 研修が終わったあと、アンケートを集計する。 受講者満足度の平均点が4.1点——「今回の研修はよかったんだ」とそう思ってレポートをまとめてから 3ヶ月が経過したが、受講者は何も変わっていなかった。 こういう経験をしたことがある人事・研修担当者は、少なくないはずです。 実は、これは感覚の問題ではなく、いくつかの研究によって裏付けられた構造的な現象でもあります。 Copyrightⓒ All rights reserved by innovation associates,inc. -2- innovation associates,inc.

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満足度と効果の間には、相関がない カークパトリックモデルは、1959年にDonald Kirkpatrickが提唱した研修評価の枠組みです。 「反応(満足度)」「学習」「行動」「成果」の4段階 で研修効果を評価します。 現在も世界中の企業研修で広く使われている標準的 な評価軸です。 カークパトリックモデル(1959) 研修評価の世界で最も広く使われている「カークパトリックモデル」は、研修の効果を上記4段階で評価する枠組みで す。多くの人はこの4段階が連動していると考えますが、ブレーメン大学のMichael Gessler教授による実証研究は、 そうした相関は存在しないことを示しています。 「満足度が高ければ、学習も定着し、行動も変わるはずだ」という期待は一般的ですが、Gessler教授の研究では、 各段階の間にそうした相関は確認されませんでした。 つまり、満足度アンケートは「研修評価の入口」として使われているものの、それが本来測りたいはずの「効果」とはほぼ 無関係に動いている可能性があります。 Copyrightⓒ All rights reserved by innovation associates,inc. -3- innovation associates,inc.

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アンケートという形式そのものの限界 問題① 問題② 高止まりする評価 本音の差が拾えない よっぽどひどい内容でない限り、大人は空気を読む。 アンケートという形式自体が「本音の差」を拾いにく 結果として満足度は高止まりし、「良い研修」と い面があります。 「並の研修」を判別しにくくなります。 悪い研修を落とすフィルターにはなっても、いい研修 を選び出す指標としては機能しにくいのです。 統計的な相関がない+形式上の限界 → 満足度スコアで研修の効果は測れない アンケートそのものを廃止することが目的ではありません。問題は、満足度スコアを「研修の効果の証明」として扱ってしまうことにあります。 Copyrightⓒ All rights reserved by innovation associates,inc. -4- innovation associates,inc.

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「いい研修」と「身につく研修」は、別物かもしれない 受講者にとっての「いい研修」はしばしば「楽な研修」と同義になりがちです。 ① 知っていることが多い——「あ、これ知ってる」と安心できる ② 時間が短い——拘束時間が少ない ③ 負荷が低い——宿題や課題がなく、研修が終われば終わり Deslauriersらの研究(ハーバード大学) 能動的学習(演習・考える形式) :テストの得点は高かったが、本人は「あまり学べなかった」と感じた 受動的学習(講義を聞くだけ) :「よく学べた」と感じたが、実際の得点は低かった 「実際の学習と学んだ感覚は、強く逆相関していた」 Copyrightⓒ All rights reserved by innovation associates,inc. -5- innovation associates,inc.

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適度な負荷が、定着を生む 学習科学には「望ましい困難(desirable difficulties)」という概念があります。1994年にUCLAのRobert Bjork特別教授(全米科学アカデミー会員)が提唱したもので、あえてすぐには答えが出ないような負荷をかけること が、かえって長期的な定着と応用力を高めるという考え方です。 「スムーズに理解できた方がよく身につくはずだ」という一般的な感覚とは逆に、少し苦労しながら学んだ方が記憶に残り やすいということです。30年以上が経った今も研究が続けられており、たとえば「覚えた内容を繰り返し読むより、自分で 思い出す練習の方が記憶に残りやすい」という現象も複数の研究で確認されています。 難しければ難しいほど良いわけではない——重要なのは「乗り越えられる範囲の負荷」を設計すること 忙しい中で「やらなければならない」状況に置かれると、人は工夫をはじめます: 時間の使い方を見直す Copyrightⓒ All rights reserved by innovation associates,inc. 仕事を人に振る -6- 優先順位を組み替える innovation associates,inc.

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現場に戻っても、変わらない理由 研修直後 6ヶ月後 1年後 62% 44% 34% が実践している が実践している が実践している 出典:Saks & Belcourt (2006) なぜここまで定着しにくいのか。複数の研究が共通して指摘しているのは、上司や職場の関わり方です。研修後に上 司がどう関わるかが、学んだことが現場に根付くかどうかを大きく左右することが、さまざまな研究から見えてきます。 研修の内容や質はもちろん大切ですが、それ以上に「研修が終わった後」をどう設計するかが問われているのかもしれま せん。 Copyrightⓒ All rights reserved by innovation associates,inc. -7- innovation associates,inc.

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なぜ「満足度」で研修を選んでしまうのか ここまでの研究が示しているのは、満足度は測りやすいものの、効果とは必ずしも関係のない指標かもしれない、 ということです。 理由①:測りやすさ 理由②:説明責任のプレッシャー 行動変容は時間がかかるし、現場での変化を追う 人事・研修部門はコストセンターとして見られやすく には手間がかかる。一方で、研修直後のアンケート 、「研修の効果を示さなければ」というプレッシャーが はすぐに集計でき、数字が出て、レポートが作りやす あります。そのプレッシャーが、手元にある数字—— い。そうした実務上の事情が、この指標への依存を 満足度スコア——への依存を生んでいるのかもしれ 生んでいる可能性があります。 ません。 効果を示したいという動機は正当です。 ただ、満足度スコアが効果の証明になるかといえば、必ずしもそうとは言い切れません。 Copyrightⓒ All rights reserved by innovation associates,inc. -8- innovation associates,inc.

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研修の成否は「その後」で決まる 満足度アンケートの点数は、研修当日の体験を測っているにすぎません。学習科学も、研修転移の研究も、評価モデ ルの実証研究も、共通して一つのことを示しています——研修の成否は、当日の評価だけでは測れず、その後の現場 でこそ明らかになる、ということです。 研修の設計や内容も大切です。しかし、それと同じくらい重要なのは、研修後にどう関わり続けるかという問いではない かと、私たちは考えています。 「いい研修だった」で終わる研修を、「現場が変わった研修」に変えるために何が必要か。それを一緒に考えることが、私 たちの仕事だと思っています。まずは自社の現状を確認することが、その第一歩になるかもしれません。 もし気になることがあれば、お気軽にご相談ください。 自社の「行動変容」の現状を確認する https://www.i-associates.co.jp/behavior-diagnostic 行 動変容現状診断 行動変容 現状診断 https://www.i-associates.co.jp/behavior-diagnostic 10問・約5分。営業のご連絡はいたしません Copyrightⓒ All rights reserved by innovation associates,inc. -9- innovation associates,inc.

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参考文献 1. Gessler, M. カークパトリックモデルの各段階間の相関に関する実証研究。Kodo Survey「Kirkpatrick Levels of Evaluation: Expectation vs. Reality」より言及。 2. Kirkpatrick, D. L. (1959). Evaluating Training Programs シリーズ(Training and Development Journal)。 研修評価の4段階モデルの原典。 3. Bjork, R. A. (1994). "Memory and metamemory considerations in the training of human beings. 「望ましい困難」概念の提唱論文。 4. Bjork, E. L., & Bjork, R. A. (2011). "Making things hard on yourself, but in a good way." Psychology and the Real World. 5. Bjork, E. L., & Bjork, R. A. (2020). "Desirable difficulties in theory and practice." Journal of Applied Research in Memory and Cognition. 6. 認知負荷理論との統合に関する研究(PMC6099118)。 7. Deslauriers, L. et al. 能動的学習と受動的学習における主観的理解度と実際の学習成果の乖離に関する研究。 8. Saks, A. M., & Belcourt, M. (2006). 研修直後62%→6ヶ月後44%→1年後34%と実践率が低下することを示した調査。 9. Supervisors' Support and Training Transfer: A Meta-Analysis. 上司サポートと研修転移の相関に関するメタ分析。 Copyrightⓒ All rights reserved by innovation associates,inc. -10- innovation associates,inc.