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May 25, 25
スライド概要
第66回日本神経学会学術大会において,教育コース「未来を創るリーダーシップ:脳神経内科医のためのエンパワーメントセミナー」で使用したスライドです.
岐阜大学大学院医学系研究科脳神経内科学分野 教授
リーダーシップ学の目的と基本 岐阜大学大学院医学系研究科 脳神経内科学分野 下畑 享良
日本神経学会 COI 開示 筆頭発表者:下畑 享良 岐阜大学大学院医学系研究科脳神経内科学分野・教授 本発表に関連し,明示すべきCOI関係にある企業などはありません.
背景: 世界の学会はリーダーシップ教育に取り組んでいる 国際神経学会連合 米国神経学会 https://wfneurology.org/education/galp
Movement Disorder Societyの取り組み
学会がリーダーシップ教育に取り組む理由 1. 次世代リーダーの育成 2. 若手・中堅・女性医師・管理者のキャリア形成 3. 組織の強化 4. 医療政策や社会への影響力の向上 → 日本神経学会もリーダーシップ教育を重視.
考えてみよう 1. リーダーが組織風土に与える影響はどの程度(%)だ ろうか? 2. メンバーにとって良い組織風土とはどのようなものか?
リーダーが持つべき特徴は? 4つ選んでください. 1.応援する 9.知的 2.公正な心を持った 10.忠誠な 3.心が広い 11.独立心のある 4.正直な 12.前向きの 5.成熟している 13.野心的 6.想像力のある 14.勇気がある 7.大切に思ってくれる 15.有能な 8.頼もしい 16.わくわくさせてくれる
リーダーが持つべき特徴は? 4つ選んでください(演者の場合). 1.応援する 9.知的 2.公正な心を持った 10.忠誠な 3.心が広い 11.独立心のある 4.正直な 12.前向きの 5.成熟している 13.野心的 6.想像力のある 14.勇気がある 7.大切に思ってくれる 15.有能な 8.頼もしい 16.わくわくさせてくれる
リーダーシップ 総論 リーダーシップ の歴史と理論 目指すべき リーダーシップ
「リーダーシップ」は誤解されている • リーダーはもともと備わった才能が求められる • リーダーは地位である • リーダーは偉く,価値が高い あくまでもリーダーは役割にすぎない. リーダーとして身につけるべき「型」がある.
つまりリーダーシップは 学問として学ぶことができる! その証拠にたくさんのリーダーシップ本が発刊されている
リーダーシップとはなにか? 組織 リーダーシップは どこに向かう?
リーダーシップは全方向性,かつ全員に必要 リーダーシップは 全方向性 上に向くリーダーシップ =フォロワーシップ 若くてもLSを身に つければ上司を 巻き込める
リーダーシップは自分にも向かう セルフ・リーダーシップ (自己理解・自己制御) 周囲に自分の 情報や知識を 与え影響を及ぼす 自律型組織
組織の進化(自律型組織への成長) 進化 特徴 組織のタイプ 個人が意思決定できるフラットな組織 生命体 メンバーが主体的・自律的に行動する組織 家族 目標達成を第一に考える合理的な組織 大企業 トップダウンの階層的構造を持つ組織 軍隊 圧倒的な支配者がトップに立つ組織 狼の群れ,狩猟民族, マフィア 多くの組織はアンバー型~オレンジ型:グリーン型を目指す フレデリック・ラルー著「ティール組織」より作成
リーダーシップ 総論 リーダーシップ の歴史と理論 目指すべき リーダーシップ
リーダーシップ理論は進化した ① リーダーには共通する特性がある(特性理論) ② リーダーには取るべき行動がある(行動理論) ③ リーダー像は環境により変わる(条件適合理論) ④ 組織を変革するのがリーダーである ⑤ より高次の倫理観をもつ者がリーダーである ①②③は追加使用をご覧ください
④変革のリーダーシップ(transformative LS) • 時代の急激な変化に対応する必要性から生じた考え方. • つまりリーダーとして変化を受け入れ,変革に挑む. • 例.コロナ対応,医師の働き方改革
Terrence Casino AAN元会長による Leadership Universityの講義(AANAM 2018) バーンアウト増加に直面した医師に向けた「変革のリー ダーシップ」に関する講義であり,学会でこのような人材 育成の講義が行われていることに衝撃を受けた.
ADKAR モデル(変革のための5つの要素) Jeffrey M Hiatt. ADKAR: A Model for Change in Business, Government and Community(2006) Awareness(認識) – 変革が必要な理由を認識してもらう Desire(欲求) – 変革に参加したいという欲求を持ってもらう Knowledge(知識) – どう変革するかという知識を持ってもらう Ability(実践) – 実際に実践してもらう Reinforcement(強化) – 変革を定着させるために補強する
何を変革するか? 緊急性低い 緊急性高い 1 2 3 4 重要度 高い 重要度 低い
何を変革するか? 大事を小事の犠牲にしない 緊急性高い 重要度 高い 重要度 低い 緊急性低い 目先の仕事 成長のための方策 (小事であることあり) 長期的な計画等 (本当に大事なもの) やる必要があるか 分からない作業 目先のことばかりに時間配分し,変革のタイミングを 逃さないことが大切!
変化に対する抵抗に対するリーダーの対応 ① 変化に対する抵抗は正常な反応であり,抵抗に対し リーダーは感情的になってはいけない. ② しかし変化の意味を認知させ,適応させるまでの時間を 短縮させる工夫はできる. ③ 変化が必ずしも正解というわけではなく,抵抗のなかに 真実がある場合もある.より良い方向を探る.
⑤ EQリーダーシップ Emotional Intelligence Quotient (こころの知能指数) 自己の感情をコントロールし,他者の 感情を元にニーズに奉仕し,激励・ 育成・確執管理ができる ダニエル・コールマン著
「怒る」ではなく,「叱る」 • 感情的に「怒る」のは厳に慎む. • 理性的に,相手の感情を理解し,指導的に「叱る」 叱る場合は現行犯で叱る. 人前では叱らない. 人物ではなく行為を叱る.
⑥サーヴァント・リーダーシップ • Servant =使用人,召使い • リーダーは「まず相手に奉仕し,その後, 相手を導くものである」という考え方に基づく. • 部下に対して,奉仕の気持ちを持って接し, どうすれば組織のメンバーの持つ力を最大化 することができるのかを考え,環境づくりをする
エンパワーメント(empowerment) • 現場の自主性を高め,パフォーマンス向上につなげる ために権限を与え,力をつけさせること.これはボトム アップの実現につながる. • チームのタスクを完遂しつつ,部下を育成をする. • 従来型の権限委譲とは異なり,部下の意欲を最大化 することが目的である.
連合艦隊司令長官 山本五十六によるエンパワーメント やってみせ,言って聞かせて, させてみせ,ほめてやらねば, 人は動かじ 話し合い,耳を傾け,承認し, 任せてやらねば,人は育たず やっている,姿を感謝で見守って 信頼せねば,人は実らず 山本五十六(1884-1943)
サーヴァント・リーダーの心得 • 自ら語るのではなく,質問せよ • マイクロマネジメント(過保護)をしない • 適切な仕事を任せる(今の知識とスキルで できる領域とできない領域の境界) • 小さな決定権を与え,小さな失敗をさせる • 手柄は部下のもの,責任は自分のもの
⑦オーセンティック・リーダーシップ Authentic=「本物の」 • 指導者として人のまねではなく,自分自身の価値観や信念に 正直に,自分らしく,誠実さや倫理観に重きを置いて人を導く. • 誠実でオープンなコミュニケーションにより信頼関係を築く. • リーダーである自分も不完全で向上を図っている姿を見せて良い. • これらは組織内の心理的安全性(組織の中で自分の意見・感情・ 疑問・失敗を安心して表現できる状態)を向上させ,イノベーション につながる.
Authentic とはどういう状態か? 1. 本当の自己(感情,考え)を知る 2. 本当の自己を積極的に,包み隠さず表現できる 3. 自分の人生の創造者として「自分の人生のリーダー」 になる → 自分の弱さを認めると,その弱さが強さに変容する!
リーダーシップ 総論 リーダーシップ の歴史と理論 目指すべき リーダーシップ 多くのリーダーシップがあるが, 結局,どうしたら良いのか?
1.複数のリーダーシップを身に着ける 複数のリーダーシップを身につけ, 適切なときに適切なリーダーシップ を使い分ければよい! スティーヴン・マーフィ重松.著
最高のリーダー(Assertive leader)を目指し 4つのリーダーシップを身につける Assertive 自分を尊重し,人を否定せす,自分と人のために 行動できる積極的なリーダー Authentic 個人的 土台 Servant 部下を 支援 Transfor mative 変革する Crossover 壁(違い) を克服
2.キャリアの転機でリーダーシップをシフトさせる 支配的リーダーシップ • 名声を得る モチベーション • 権力を得る サーバント・リーダーシップ • 他者に奉仕する • 他者の成長を支援する マネジメント スタイル • 権力を用いて部下を • 対話を通じて行動を促す 動かす 重視点 • 自分が賞賛される • 相手が称賛される 山口周.人生の経営戦略(2025)を改変
支配型から支援型にシフトする時期が来る 1. 支配型が全面的に悪いわけではなく,状況によっては支配型が 機能することがある(例;緊急性の高いタフなタスク). 2. しかし支配型は「現場の第一線で働く」というキャリアの一時期 (30~40歳代)においてのみ有効で,短期的に結果を出せても 持続せず,それでも続けると後進も育たず機能不全に陥る. 3. つまりキャリアの過程で,支配型から支援型にシフトする必要が ある(50歳代~) . 山口周.人生の経営戦略(2025)
3.世の中に貢献するという正しい理念をもつ 社会の問題を解決し,人々に貢献する 企業の存在意義は社会への貢献
結論 1. リーダーシップとは,高い志に基づき魅力ある目標を設定し, そのための環境を構築し,周囲の意欲を高め成長させながら, 課題や障害を解決する行動といえる. 2. 状況や年齢,自身のキャリアに応じたリーダーシップを発揮でき るよう,教科書や経験者からリーダーシップについて学ぼう! ご清聴ありがとうございました.