「パーキンソン病との付き合い方」パーキンソン病健康教室 in 岡山

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March 23, 25

スライド概要

市民公開講座 第42回パーキンソン病健康教室 in 岡山で使用したスライドです.本講演では、パーキンソン病に関する正しい知識を持ち、その症状や治療法について理解することの重要性を強調しました。具体的には、運動症状(振戦、筋強剛、運動緩慢、姿勢保持障害)や非運動症状(幻覚、認知症、うつなど)、そして薬剤による運動合併症について解説しました。治療法としては抗パーキンソン病薬の種類やその特徴、デバイス補助療法についても紹介しました。さらに、進行を抑える疾患修飾薬の開発状況についても紹介しました。

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岐阜大学大学院医学系研究科脳神経内科学分野 教授

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各ページのテキスト
1.

パーキンソン病との付き合い方 岐阜大学脳神経内科学 下畑 享良 本講演に関するCOI(利益相反)はございません

2.

私の考える付き合い方 「パーキンソン病をよく知ること」 まず正しい知識を持つことが大切!

3.

本日の目標 • パーキンソン病の3つの症状を理解しよう, • それぞれに対する治療法を理解しよう. • 手術時の対応について理解しよう.

4.

基礎知識

5.

病名の由来 James Parkinson 「振戦麻痺(1817)」

6.

パーキンソン病患者数は増加している Dorsey ER et al. JAMA Neurol. 2018;75:9-10.

7.

世界の患者数は2倍以上に増加する 2021年と比較して Su D et al. BMJ. 2025;388:e080952. 合計 男性 女性 日本の患者数は2021年から2050年に 19.9万人から21.9万人に増加する

8.

パーキンソン病の原因はドパミン産生細胞の減少 ドパミン 中脳黒質から 大脳の線条体に 運ばれ,動作を 円滑に行うため の運動の制御等 を行う. ドパミン産生細胞の 変性・脱落

9.

症 状 ① 運動症状 ② 非運動症状 ③ 薬剤による症状

10.

①運動症状(4大症状) 振戦 筋強剛 (ふるえ) (関節のカクカクした抵抗) 運動緩慢 (小さくゆっくりとした動き) 姿勢保持障害 (後方へ倒れやすい)

11.

安静時振戦 安静にしている時の,1秒間に4-5回のふるえが典型的

12.

運動緩慢(小歩症,すくみ足) 狭いところやUターンのときにすくんでしまう. Nonnekes J, et al. Lancet Neurol. 2015;14:768-78.

13.

姿勢保持障害 後方に引かれるとバランスが悪く,足が止まらない Iankova V, et al. Parkinsonism Relat Disord. 2020;78:200-3.

14.

姿勢保持障害が日常で問題になるのは? 洗濯物を干す 高いものをとる ドアノブを引く タンスを開ける・・・ →後方に転倒しうる 洗濯物は高いところに干さない,高いものは誰かに取ってもらうなど

15.

②非運動症状 幻覚・妄想 嗅覚低下 認知症 うつ 睡眠障害 便秘症 排尿障害 痛み(特に腰痛) 立ちくらみ 皮膚症状 生活の質に影響を及ぼすので しっかり対策・治療を行う必要あり.

16.

非運動症状は運動症状より先に現れる

17.

REM睡眠行動異常症(RBD) パーキンソン病患者の 15-50%に出現 悪夢・恐ろしい夢 寝言・荒々しい体動 (夢と同じ行動をする)

18.

RBDは夢と同じ行動をしてしまい危険である 眠前クロナゼパム内服が有効(ふらつき注意)

19.

RBDによるケガを防ぐための対策 ⚫ ベッド周りの環境を安全に整える. ⚫ 床にマットを敷く ⚫ 寝室に危険物を置かない. ⚫ ランプなどの置物も遠ざける. ⚫ ベッドは窓から離す ⚫ ベッドパートナーは症状が安定するまで別室に寝て もらう.

20.

③薬剤による症状(運動合併症) a) ジスキネジア b) ウェアリングオフ現象

21.

ジスキネジア 落ち着かない全身の動き Sydney DBS https://www.youtube.com/watch?v=-FqdiSoVhnw

22.

ウェアリングオフ現象 すり減る,徐々に消えていく 内服 内服

23.

パーキンソン病の原因

24.

中脳の神経細胞にタンパクが蓄積する 中脳黒質における レビー小体 αシヌクレインの蓄積

25.

αシヌクレイン凝集→レビー小体 αシヌクレインが蓄積し,伝播して神経障害を起こす

26.

パーキンソン病には2つのタイプある 脳から 身体から Bohnen NI, et al. Brain. 2020 Oct 1;143(10):2871-2873.

27.

腸から脳へという経路がある Killinger et al. Sci Transl Med 2018 迷走神経 αシヌクレインの虫垂での凝集 虫垂

28.

治 療 抗パーキンソン病薬+デバイス補助療法 (代表的なもの)

29.

1.レボドパ含有製剤 • 脳内でドパミンが減少するが,ドパミンは血液から脳内 に通過できない.このため通過可能なドパミンの前駆 物質レボドパを用いてドパミンを補う. • 脳に届く前に分解されることを抑えるために,ドパ脱炭 酸酵素阻害薬 (DCI)という成分も含んでいる. • 長期使用によりジスキネジア,ウェアリングオフ現象を 起こす問題がある.

30.

レボドパの働きと合剤の意味 ベンセラジド カルビドパ

31.

2.ドパミン受容体作動薬 • レボドパにまねて作成した人工的な薬剤. • 複数の種類があるが臨床効果には大きな違いは見ら れない. • 突発睡眠を起こすことがあり,知っておく必要がある

32.

ドパミン受容体(D3)の刺激は 性格が明るくなるが,行き過ぎると 衝動制御障害(病的賭博,性欲亢進 過食,買い物依存など)や ドパミン 調節異常症(ドパミン作動薬の 強迫的内服)になる.

33.

Z 突発睡眠 突然,首ががくんと崩れ落ちて,そのまま寝てしまう. ドパミン受容体作動薬使用中の患者さんは自動車の運転は不可. Hirayama M et al. Mov Disord 23; 288-290, 2008

34.

3.MAO-B阻害薬 • ドパミン分解を抑制する作用を有しており,レボドパ 含有製剤で十分な効果が得られない症例に,レボドパ と併用で使用する.

35.

MAO-B阻害薬の特徴 ジスキネジア生じにくい 痛みを軽減 不眠症などの精神 神経症状のリスク↓ 口腔内崩壊錠であり, 嚥下障害患者に使用 しやすい

36.

4.COMT阻害薬 • COMTによるレボドパの代謝/分解を阻害し,レボド パ濃度を保つ. • 累積効果で夕方,ジスキネジアが生じる. • エンタカポン:着色尿. • オピカポン:安全性高い. 1日1回で,レボドパの調整に集中できる. (食事やレボドパ服用の前後1時間以上あける)

37.

レボドパの分解と作用点 カルビドパ+エンタカポン

38.

5.レボドパ賦活型製剤 • ゾニサミドは抗てんかん作用を示す量よりはるかに 少量で,パーキンソン病に効果がある. • 作用機序は多岐にわたる. • 振戦に有効

39.

内服のヒント

40.

レボドパを飲むときの注意点 レボドパは酸性の水に溶ける 胃の中が充分に酸性に維持されていない と薬が溶けずに吸収が悪化 ◯ レモン水 ☓ 胃潰瘍治療薬,牛乳

41.

レボドパの小腸での吸収に影響するもの レボドパとアミノ酸が競合する J Parkinsons Dis. 2024 Aug 31. doi.org/10.3233/JPD -240036

42.

レボドパの吸収に影響するもの J Parkinsons Dis. 2024 Aug 31. doi.org/10.3233/JPD -240036

43.

朝の動きが悪い時の内服のコツ • 就寝前に枕元にレボドパ製剤(半錠~1錠) とコップ1杯の水を用意する. • 翌朝起きたらまずレボドパ製剤を内服し, しばらく床の中でゆっくりする. • 貼付剤を処方してもらう.

44.

デバイス補助療法 薬物療法で十分効果が得られないときの機器を用いた治療

45.

レボドパの問題点=濃度変動 オフをなくすには持続投与が理想的 オフ オフ オフ

46.

デバイス補助療法の適応と3つの方法 5-2-1基準

47.

1.脳深部刺激療法(DBS) Deep Brain Stimulation 高齢になるほど手術効果期間が短くなる. 適応外:高齢者(65歳以上),認知症.

48.

2.レボドパカルビドパ経腸療法(LCIG) Levodopa-carbidopa continuous infusion gel therapy レボドパを持続投与 ただし夜間は中止するので 貼付剤の併用などが必要.

49.

3.24時間持続皮下注入(CSCI) continuous subcutaneous infusion therapy 睡眠障害のある患者 朝のオフに良い適応 皮膚注入部反応(感染)と幻覚が多い オフ時もワンボタンで追加可能. 1日1回シリンジ交換. カニューレパッドは3日まで.

50.

進行を抑える疾患修飾薬の開発状況 Nat Rev Neurol (2024). https://doi.org/10.1038/s41582-024-01034-x

51.

αシヌクレインを除去する抗体による臨床試験 第1相試験 Schenk et al. Mov Disord 2017; 32, 211-218

52.

最初の第2相試験は失敗,しかし挑戦はこれから シンパネマブ プラシネズマブ  性質の異なる2つの抗体で無効であった.  アルツハイマー病でも進行抑制効果を認める抗体薬を発見する のに時間がかかったので,今後発見される可能性がある. N Engl J Med 2022; 387:408-420: N Engl J Med 2022; 387:421-432

53.

早期パーキンソン病に対する 進行抑制薬が見つかった!? 糖尿病治療薬で,やせ薬の 「グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬」 → ただし否定的な報告も出た.今後の検証が必要. 偽薬 Lixisenatide New Engl J Med. April 3, 2024. (doi.org/10.1056/NEJMoa2312323)

54.

非運動症状への対処法

55.

患者背景 非運動症状 睡眠障害 痛み(オフ 時の腰痛) 便秘 運動症状への悪影響 生活の質の低下 物忘れ うつ症状 幻覚・妄想

56.

睡眠障害(中途覚醒)の原因 ①パーキンソン症状(寝返り困難) ②夜間の頻尿

57.

対 策 ①夜間のパーキンソン症状 長時間作用型の抗パーキンソン病薬 ②夜間の頻尿 寝る前の水分,アルコールを控える 頻尿(過活動膀胱)治療薬

58.

パーキンソン病の腰痛の悪循環 患者背景 姿勢異常 筋強剛 骨粗しょ う症 紫外線を浴びず ビタミンD不足 腰痛 活動低下

59.

患者背景 パーキンソン病における腰痛対策 ① 薬物療法 パーキンソン病の十分な治療(オフを減らす) 鎮痛剤 骨粗しょう症の予防 ② 理学・運動療法 コルセット,ストレッチ,体幹筋トレーニング ③ 整形外科的治療 骨の変形に対する外科治療

60.

うつ症状 意欲がわかない 楽しみがない 無関心 眠れない

61.

うつ症状が出現するタイミング 頻度 診断の ショック 病気に伴う うつ症状 病初期 進行期

62.

うつ症状の対策 1.パーキンソン病の治療 2.精神的なサポート (ご家族の理解) 3.抗うつ薬 まず見逃さないことが大切

63.

幻覚・妄想  抗パーキンソン病薬の副作用の可能性  高齢者や認知症を認める人に多い  夜間に多い  幻視 > 幻聴  人の気配,動物,虫

64.

幻覚・妄想の対策 1.体調不良がないか?(発熱,脱水) 2.最近,追加した薬剤はないか? 3.改善しない場合 パーキンソン病の薬の減量 抗精神病薬 アリセプト® 抑肝散®

65.

物忘れ  アルツハイマー病のような 高度の記憶障害はまれ  思考が遅くなったり,注意力 が落ちたりする  以前考えられていたほど多く ないことが最近報告された  アーテン®は物忘れを起こす

66.

便秘は運動症状を悪化する 便秘 薬の吸収 障害 運動症状 悪化 パーキンソン病では 腸の蠕動が低下する

67.

便秘症の対策(食べ物)

68.

便秘症の対策(くすり)  浸透圧性下剤(水分も一緒に!) モビコール® 酸化マグネシウム(胃酸↓で効かなくなる)  下痢が少なく,安全に使用できる新薬 アミティーザ® ,リンゼス® ,グーフィス®  センナなどの刺激性下剤は切れ味は良いが, 連用すると効かなくなる.

69.

排尿障害 頻尿(排尿回数の増加.とくに夜間)

70.

排尿障害の対策 1.前立腺肥大症(男性)のチェック 2.夕食以降の水分・アルコール摂り過ぎ? 3.薬物療法 副作用(口渇・物忘れ)の少ない薬

71.

手術時に気をつけること

72.

大切なこと  主治医に外科医宛ての紹介状を必ず書いて もらう  いつも通りに内服をさせてもらえるようにする  急な中止や減量は避ける

73.

薬の突然の中止・減量は危険 突然の中止は・・・ 悪性症候群を来す 発熱(38℃以上) パーキンソン症状の悪化 意識障害 幻覚 自律神経症状 (血圧変動,頻脈,発汗,尿失禁)

74.

内服はギリギリまで行う 術前2時間 麻酔導入の直前まで 可能な限り内服 症状の増悪を予防する!

75.

しかし薬を内服できなくなる状況がある 頻回の嘔吐 消化管手術 腸閉塞 でも対策はある!

76.

内服ではないパーキンソン病の薬がある! 注射薬 ドパストン注® 貼り薬 ニュープロ® 皮下注射 アポカイン®

77.

リハビリテーション

78.

リハビリの重要性  薬による治療だけではダメ  体を動かすことが同じくらい大切 (パーキンソン病ほどリハビリが有効な神経疾患はない)  病気だけでなく老化現象も影響してくる  筋肉を使わないこと(廃用)が大きな問題  早いうちから,筋力の低下を防ぐ

79.

心がけも大切  外来に行くときなど症状が軽くなる  日々新しいこと,面白いことをやろうとする と症状は軽くなる  毎日,よそ行きの気分で行動する

80.

パーキンソン病のことをよく知り うまく付き合うことが大切!