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September 20, 23
スライド概要
救急救命士向けのレクチャーで使用したスライドです。
ご自由にお使いください。
中京病院救急科医師 第2救命救急センター長 災害医療センター長 臓器提供委員会委員長 呼吸サポートチーム(RST)委員長 災害対策委員長 統括DMAT 日本救急医学会指導医および専門医 熱傷専門医
気道熱傷
内容 1. 気道熱傷の定義 2. 気道熱傷の身体所見 3. 気道熱傷診断のための検査 4. 気道熱傷の治療
内容 1. 気道熱傷の定義 2. 気道熱傷の身体所見 3. 気道熱傷診断のための検査 4. 気道熱傷の治療
気道熱傷とは? ➢ 火災現場において,煙や熱気を吸入することによる 気道の損傷 ➢ 上気道(喉頭)の損傷により,気道閉塞が起こる ➢ 下気道(気管支・肺胞)の損傷により,肺炎が起こる ➢ CO中毒により,低酸素血症となる ➢ シアン(CN)中毒により,細胞呼吸障害が起こる 近年では,吸入損傷 inhalation injuryとも呼ばれる
内容 1. 気道熱傷の定義 2. 気道熱傷の身体所見 3. 気道熱傷診断のための検査 4. 気道熱傷の治療
気道熱傷を疑う身体所見 Airway(気道) Breathing(呼吸) ・ 嗄声 ・ 呼吸数↑ ・ 鼻毛焼失 ・ 努力呼吸 ・ 鼻毛/口腔内スス ・ 陥没呼吸 ・ 顔面熱傷 Circulation(循環) Dysfunction of CNS ・ 頻脈など (中枢神経症状) (熱傷性ショックによる) ・ 意識障害 (CO中毒・シアン中毒による)
内容 1. 気道熱傷の定義 2. 気道熱傷の身体所見 3. 気道熱傷診断のための検査 4. 気道熱傷の治療
気道熱傷の診断_気管支鏡 喉頭の腫脹 気管内のスス 気管粘膜壊死
気道熱傷の診断_CT 気管支壁の肥厚 山村らの文献(Crit Care 2013)からの引用
気道熱傷の診断_血液検査 ➢ COヘモグロビン:CO中毒 ➢ 乳酸:シアン中毒
内容 1. 気道熱傷の定義 2. 気道熱傷の身体所見 3. 気道熱傷診断のための検査 4. 気道熱傷の治療
気道熱傷の治療 病院前 入院後 ・ 酸素投与 ・ 酸素投与 ・ マスク換気 ・ 気管挿管 ・ 人工呼吸管理 ・ 吸痰 ・ 吸入療法 ・ 抗菌薬 ・ 肺理学療法
気道熱傷の治療 病院前 入院後 ・ 酸素投与 ・ 酸素投与 ・ マスク換気 ・ 気管挿管? ・ 人工呼吸管理 ・ 吸痰 ・ 吸入療法 ・ 抗菌薬 ・ 肺理学療法
気道熱傷を疑ったら全例に挿管するわけではない!
この炭鉱夫たちに挿管するでしょうか?
気管挿管の目的 ➢気道閉塞の回避 ➢確実な酸素投与 ➢効率の良い吸痰
挿管・人工呼吸器による害 ➢鎮静薬使用⇨循環抑制 ➢陽圧呼吸⇨循環抑制 ➢人工呼吸器関連肺炎
喉頭の腫脹 気管内のスス 気管粘膜壊死 本当に挿管が必要かどうか,気管支鏡で厳しく評価する
Burns 2019 ➢ 年齢,熱傷面積と深達度,COヘモグロビンによるマッチングで2群に分けて比較 ➢ 入院時に気管支鏡検査を受けると肺炎発症率,死亡率,入院日数,ICU日数, 人工呼吸器装着期間が有意に増加 気管支鏡にも害がある!
気管支鏡よりも,より侵襲が少ない方法で, 挿管が必要な患者を判別できないか?
➢ 熱傷面積,顔面・頸部熱傷の有無,身体所見,COヘモグロビン などを挿管の有無で比較 ➢ 気管支鏡所見以外で挿管を予測できないか?
➢ 挿管の有無で比較 ➢ 熱傷面積,顔面熱傷,頸部熱傷,呼吸補助筋使用,COHbで有意差 ➢ 気道熱傷所見の代表格ともいえる「鼻毛の焼失」は有意差なし
統計解析による挿管を予測するための最適ツリー (%は挿管率を示す)
挿管率86% 挿管率25% ツリー第1分岐(熱傷面積≧27%か否か)
挿管率100% 挿管率70% 挿管率47% 挿管率15% ツリー第2分岐:CTでの気管支壁厚(BWT)とCOヘモグロビン
挿管率85% 挿管率30% 挿管率33% 挿管率4% ツリー第3分岐:BWTと頸部熱傷有無
挿管率14% 挿管率0% ツリー第4分岐:嗄声の有無
つまりは ✓熱傷面積<27% ✓COHb<4% ✓頸部熱傷なし ✓嗄声なし すべて満たせば挿管なしでOKだった
考察1 熱傷面積と挿管 Q1.熱傷面積が大きいと,なぜ挿管が必要? A1.熱傷面積が大きいほど,気道も含め全身が浮腫 みやすくなる(血管透過性亢進による体液シフト)
考察2 COヘモグロビンと挿管 Q2.COヘモグロビンが高いと,なぜ挿管が必要? A2.CO中毒により,意識レベルが低下すると,気道が 閉塞しやすくなる
考察3 頸部熱傷と挿管 Q3.頸部に熱傷があると,なぜ挿管が必要? A3.頸部の浮腫により喉頭が圧排される
考察4 嗄声と挿管 Q4.嗄声があると,なぜ挿管が必要? A4.嗄声があるということは,喉頭浮腫により,声帯の 運動が制限されていることが示唆される
Take home message 気道熱傷が疑われる患者さんを観察するときは, 鼻毛のススばかりに気を取られないようにしましょう