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October 18, 26
スライド概要
第31回日本薬剤疫学会学術総会
拡充委員会企画シンポジウム「薬剤疫学の次世代育成を考える:ティーチング、コーチング、メンタリングのあり方」
2026年10月18日
京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻薬剤疫学分野 講師
第31 回日本薬剤疫学会学術総会 2026 年10 月18 日 拡充委員会企画シンポジウム 薬剤疫学の次世代育成を考える:ティーチング、コーチング、メンタリングのあり方 薬剤疫学者の自律的成長を支える メンタリング アカデミアにおける実践と課題 深澤 俊貴 京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻 薬剤疫学分野 1
利益相反 過去1年間の開示(日本薬剤疫学会の規程に基づく) • 研究費:アストラゼネカ株式会社 • コンサルティング料:旭化成セラピューティクス株式会社、 株式会社JMDC MSD 株式会社、 2
経歴 学位 2017 年 学士(薬科学) 慶應義塾大学薬学部薬科学科 2019 年 修士(薬科学) 慶應義塾大学大学院薬学研究科 2024 年 博士(医学) 京都大学大学院医学研究科 職歴 2019 年 – 2020 年 東北大学病院臨床研究推進センター 助手 2020 年 – 2024 年 京都大学大学院医学研究科薬剤疫学分野・デジタルヘルス学講座 (エーザイ株式会社・協和キリン株式会社との産学共同講座) 特定助教 2024 年 – 2025 年 京都大学大学院医学研究科薬剤疫学分野 特定講師 (アストラゼネカ株式会社との共同研究) 2025 年 – 現在 京都大学大学院医学研究科薬剤疫学分野 講師 兼業(アドバイザー) 旭化成セラピューティクス株式会社、 MSD 株式会社、株式会社 JMDC 3
指導経験とメンティーの背景 大学教員歴 担当メンティー(実人数) 担当メンティーの出版論文 6年 20 名 43 報 課程・区分 担当人数* 修了・学位取得等の状況 MPH 3名 修了: 3名 DrPH 2名 学位取得: 2名 PhD 15 名 学位取得: 6名 学位申請中または学位申請の論文要件充足: 7名 1年次: 2名 研究員 2名 — *MPH ・ PhD の両課程で担当した 2名を重複計上 メンティーの背景 • 医師、 薬剤師、 製薬企業・ CRO・コンサルティングファーム • 担当学生の9割が、演者より年上 社員、 外国人留学生など 4
薬剤疫学者に求められる専門職能力 知識・技能 疫学、臨床薬理、規制科学、統計・データ サイエンスに加え、コミュニケーション 研究への統合 臨床・公衆衛生上の問いに沿って研究を設 計・実施し、結果を批判的に解釈して、ス テークホルダーに伝える 実践を通じた専門性の涵養 体系化された知識・技能に加え、実践で培う暗黙知が必要となる専門性の獲得には、長期的な教育 と実践を要する Osborne V, et al. Pharmacoepidemiol Drug Saf . 2024;33(4):e5789. 5
課題と成長段階に応じて、関わり方を組み合わせる ティーチング コーチング メンタリング 主な焦点 知識・技能の 理解と習得 目標に向けた 課題整理と行動 専門家・個人 としての成長 関わる期間 単回の説明から 継続的な教育まで 目標に応じた期間 中長期を見据えた 継続的な関わり 関わりの例 「 研究計画の立て方 を、具体例を使って 説明します 」 「 何が決まれば、 次に進めますか? 」 「 この研究で得た経験 を、今後どう活かした いですか? 」 本人の課題や成長段階に応じて、三つの関わり方を使い分ける 6
薬剤疫学者の「自律」と、それを支えるメンタリングの実践 自己決定理論( self -determination theory ) 自律性 有能感 関係性 自分の意思で、 納得して取り組める 工夫や学習によって、 できる手応えがある 尊重され、支えられている と感じる 薬剤疫学者の「自律」 必要な支援を求めつつ、自ら問いを明確にし、根拠に基づいて判断し、その選択に責任 をもって研究を進められる状態 メンティーの自律的成長を支えるメンタリングの実践 ① 判断の根拠を共有する ② 支援を個別化する ③ 裁量と責任を広げる 7
薬剤疫学者の自律的成長を支えるメンタリングの実践 ① 判断の根拠を共有する 8
① 判断の根拠を共有する 目標を共有し、任せ、結果を振り返る 「まず目標と方針を共有しましょう。進める中で判断に迷ったら、相談してください」 1. 目標・方針の共有 2. 進め方の裁量を認める 3. 結果の評価 目的、成果物、期限、到達状 態を明確にする 合意した範囲で創意工夫と試 行錯誤を促す 合意した目標に照らして到達 状態を確認する 基本方針とその理由、本人が 選べる範囲を共有する 本人が判断に迷ったときは、 相談に乗る 評価の理由を共有し、次の目 標につなげる 達成 次の目標 未達 事実の確認 結果 目標の再設定 達成に必要な検討・作業を目標に組み込む 9
① 判断の根拠を共有する 経験に基づく判断の根拠を、言葉にする メンター自身への問い「判断の決め手を、メンティーに説明できているだろうか?」 経験に基づく判断には、言葉にしていない前提や優先順位がある(暗黙知) 言語化すること メンティーと共有する内容 判断の決め手 今回、何を重視したのか 選択肢の比較 他の方法より何が良く、どの限界を受け入れたのか 判断が変わる条件 どの前提が変われば、別の選択をするのか 共有した根拠を踏まえ、本人が方針と理由を説明できるか確かめる 10
薬剤疫学者の自律的成長を支えるメンタリングの実践 ② 支援を個別化する 11
② 支援を個別化する ルールは共通にし、支援は個別に調整する 「全員が守るルールを確認しましょう。支援は、理解度や経験、背景に応じて調整します」 ルールを明確にする 守れる条件を整える • 決める人と守る人の関係を明確にする • 全員が理解・実行できる範囲で統一する • 求める行動を具体的に示し、暗黙の期待を 減らす • 人によってルールを変えない • ルールの遵守は、共通の基準で評価する 研究におけるルールの例 • 合意した方法・時点で進捗を報告する • 期限に間に合わない見込みなら、事前に伝える • 研究上の問題や誤りに気づいたら、共有する 12
② 支援を個別化する 本人の分析・提案から、必要な支援を見極める 「どう考え、何を試し、どこで判断に迷っていますか?」 本人の状況 状況に応じた支援 概念の理解や判断の理由が曖昧 説明や具体例を変え、本人の言葉で理解を確かめる 理解はあるが、作業経験が少ない 必要な手順を示し、初回の成果物を早めに確認する 情報・時間・資源が不足している 支援先や資源を確保し、作業範囲・期限を調整する 対話で大切にすること • できている点・不足している点・次の行動を、必要な時点で具体的に伝える • 「言い訳」に見える説明からも事実を拾い、研究が進まない理由を本人と整理する • メンターの価値観を押し付けず、本人が取り組む意味を見いだせるよう支える 13
② 支援を個別化する 本人が重視するものを捉え、研究への関わり方を調整する 「この研究を通じて、何を得て、今後にどうつなげたいですか?」 関わりの視点 実践 本人の意向を確かめる 建前と本音の違いも踏まえ、能力・論文・学位・キャリア 実際に得たい もの を対話で確かめる 共同研究を提案する 本人の意向・余力、貢献できる内容、今後の方向性を踏まえて提案する 貢献に応じた共著や、経験・技能の獲得につなげる 他のメンバーの 工夫に 触れる機会をつくる 一人ではペースを保ちにくい場合に、他のメンバーの進め方や工夫に触 れる機会を設け、研究を進める刺激につなげる など 、 本人が 14
② 支援を個別化する 報告と面談を通じて、支援を調整し続ける 「進んだことや困っていることを聞かせてください。今後の進め方を一緒に考えましょう」 関わりの視点 実践 報告の機会を あらかじめ決める 自発的な報告だけに頼らず、事項・時点・方法を決める 遅れや問題にも落ち着いて対応し、事実と次の対応を確認する 面談を次の行動に つなげる 本人の事情や困難を把握し、次に取り組むことと、メンターが支援する ことを具体化する 必要な指摘と支援を 一貫して行う 親しさや好かれることを判断基準にせず、改善点を具体的に伝える 相談しやすい関係を保ち、必要な判断を引き受ける 本人の状況に応じて支援の内容・伝え方・頻度を調整する 15
薬剤疫学者の自律的成長を支えるメンタリングの実践 ③ 裁量と責任を広げる 16
③ 裁量と責任を広げる 新しい役割の目的と、任せる範囲を共有する 「この役割の目的と、自分で判断する範囲、事前に相談する事項を確認しましょう」 共有すること 明確にする内容 役割の目的 なぜ必要で、研究全体のどこを担うのか 成果物・期限 何を、いつまでに仕上げるのか 本人に任せる範囲 進め方や判断のうち、何を本人が決めるのか メンターが確認する範囲 何を事前に相談し、どの事項 でメンターの確認・判断を受けるのか メンター自身も研究の進め方を実践で示し、成長に応じて本人に任せる 17
③ 裁量と責任を広げる 成長を、実際の判断と行動で確かめる 「今回の成果物や取り組みから、何ができるようになったかを一緒に確かめましょう」 実践で確かめる 達成を具体的に認める • 学習や助言で得た 一時的な達成感(変わっ た気) だけで、成長したと判断しない • 合意した到達基準に照らして、努力や達成の どこを評価したのかを具体的に伝える • 実践経験なしには、自ら判断し、行動でき るようにはなりえない ことをよく理解する • メンティーの承認欲求を満たすために褒めた り、安易な称賛によって「当たり前の基準」 を下げたりしない 実際にできるようになった判断・行動を根拠に、裁量と責任を広げる 18
良好なメンタリング関係を支える要素 相互尊重と信頼 双方の役割・期待・責任を明確にし、双方向の対話を保つ メンティーの主体性 自己評価・目標設定、面談準備、進捗報告、フィードバックを 求める行動を通じて、本人も関係づくりに主体的に関われるよう 支える メンター自身の学習 経験則だけに頼らず、学習と振り返りを通じて、メンタリングを 改善する 成長に応じた調整 成長や目標の変化を把握し、双方の役割、面談の頻度、支援の あり方を見直す 19
メンターに求められる姿勢 学び続ける 自らの知識・能力不足によって、メンティーが取り組める研究や 成長の可能性を狭めない 自ら約束を守る メンティーに求める姿勢を、メンター自身も実践する 責任を引き受ける 現実に向き合い、自らの役割に伴う判断と支援に、最後まで責任 を持つ 相性や関係の難しさも認め、第三者に相談できる経路を確保する 一人で抱え込みすぎない 20
メンティーに期待すること 裁量と相談の範囲を 共有する 指摘を次に生かす 互いの時間に 配慮する 自分で決めた期限に 責任を持つ 経験による視座の違いを踏まえ、事前に相談・確認する事項を メンターと共有する 指摘を振り返り、 確認方法を工夫して同じミスを防ぐ 同じ指摘が続く場合は、原因と支援方法を見直す メンターには大学業務や仕事以外の役割もあり、 時間には限りがある 一人に割ける 他の学生の指導時間に与える影響にも配慮する 自ら設定し、メンターと実行可能性を確認した期限を、 約束として守る よう努める 自分との 直前に締切を変更されても、メンターは対応できない場合がある ため、早めに相談する 21
一人のメンターで抱えず、支援のつながりを広げる 一人で担える範囲を 知る 研究の助言、キャリア形成、個人としての成長を、一人ですべて 支えることは難しい 専門性と背景を 踏まえる 演者は薬剤疫学を専門とするが、医療従事者ではない 医師、薬剤師、製薬企業社員、留学生など、必要な支援は異なる 複数の支援者に つなぐ 他の専門家や同僚との接点をつくり、支援の担い手を広げる 機会への後押しを 得る スポンサーシップは、影響力を持つ人の推薦や後押しによって、 成長やキャリアを支え、メンタリングを補完しうる 22
薬剤疫学者の自律的成長を支えるメンタリング 自律とは、必要な支援を求めつつ、自ら問いを明確にし、根拠に基づいて判断し、責任 をもって研究を進められる状態 自律的成長を支えるメンタリングの「三つの実践」 ① 判断の根拠を共有する ② 支援を個別化する ③ 裁量と責任を広げる 相互尊重と信頼を基盤に、メンターもメンティーとともに学び続ける 受けた支援や御恩を次の世代へつなぎ( pay it forward )、次世代育成の循環をつくる 23