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December 18, 24
スライド概要
京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻 医薬品・医療機器の開発計画、薬事と審査
2024年12月18日
https://sph.med.kyoto-u.ac.jp/syllabus/
京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻薬剤疫学分野 特定講師
医薬品・医療機器の開発計画、薬事と審査 2024年12月18日 薬剤疫学方法論実習 深澤 俊貴 京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻 薬剤疫学分野 [email protected] 1
経歴・資格 学位 2017年 学士 (薬科学) 慶應義塾大学薬学部 2019年 修士 (薬科学) 慶應義塾大学大学院薬学研究科 2024年 博士 (医学) 京都大学大学院医学研究科 職歴 2019年 – 2020年 2020年 – 2024年 2024年 – 現在 2020年 – 2024年 2024年 – 現在 東北大学病院臨床研究推進センター 助手 京都大学大学院医学研究科薬剤疫学分野/デジタルヘルス学講座 特定助教 京都大学大学院医学研究科薬剤疫学分野 特定講師 リアルワールドデータ株式会社 シニアコンサルタント (兼業) 株式会社JMDC アドバイザー (兼業) 資格 2024年 – 現在 2024年 – 現在 日本疫学会認定疫学専門家 日本薬剤疫学会認定薬剤疫学家 2
到達目標 薬剤疫学研究の再現性について理解する 再現性の高い薬剤疫学研究をデザインするプロセスについて理解する グループワークを通して、標的試験エミュレーション (target trial emulation) とデザインダイア グラムの考え方を習得する 3
アウトライン 1 薬剤疫学研究の再現性 2 再現性の高い薬剤疫学研究をデザインするプロセス 2.1 PRINCIPLEDフレームワーク 2.2 デザインダイアグラム 3 グループワーク 4 薬剤疫学者としてキャリアを切り拓いていくには 4
アウトライン 1 薬剤疫学研究の再現性 2 再現性の高い薬剤疫学研究をデザインするプロセス 2.1 PRINCIPLEDフレームワーク 2.2 デザインダイアグラム 3 グループワーク 4 薬剤疫学者としてキャリアを切り拓いていくには 5
再現性には色々な意味がある 再現可能性 (reproducibility) は質の高い研究の必要 条件だが、十分条件ではない 複製可能性 (replicability)、頑健性 (robustness)、 一般化可能性 (generalizability) は、再現可能性 (reproducibility) よりも高次の目標 複製可能性、頑健性、一般化可能性がないからと いって、それらの再現性を有する研究が、そうでな い研究よりも正しさを強調することにはならない むしろ、データの定義や質の違い、時間的な変化、 効果の異質性など、差異の要因を見つけるために、 より深い調査が必要であることが強調される データ 同じ 方 異なる 同 Reproducibility Replicablity じ 再現可能性 複製可能性 Robustness Generalizability 頑健性 一般化可能性 法 異 な る 再現性 (Reproducibility) は 信頼性の高いエビデンスの基礎 薬剤疫学. 2023;28(2):39–55. Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2017;26(9):1018–1032. Turing Way: A Handbook for Reproducible Data Science. https://doi.org/10.5281/zenodo.3233986 6
薬剤疫学研究の再現性 (reproducibility) 査読付きジャーナルに掲載された150件の研究結果を、同じデータベースを用いて再解析した結 果、大半の結果は忠実に再現されたが、一部は再現されない 複雑なデザイン、解析、データ処理に関する選択とその実施について高い透明性を求める声 Nat Commun. 2022;13(1):5126. 7
薬剤疫学研究のベストプラクティスに関する数多くの勧告 断片的な勧告から包括的なガイダンスへ 41個もの勧告が特定された J Comp Eff Res. 2021;10(9):711–731. 8
薬剤疫学研究のベストプラクティスに関する数多くの勧告 断片的な勧告から包括的なガイダンスへ ISPOR Real-World Evidence Summit 2023. “Transparency in RWE: Ensuring Credibility and Confidence”の公開スライドを もとに作成 9
再現性を高めるための調和プロトコルテンプレート (HARPER) Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2023;32(1):44–55. Value Health. 2022;25(10):1663–1672. 10
HARPER日本語版 薬剤疫学. 2023;28(1):17–35. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpe/28/1/28_28.17/_article/-char/ja 11
HARPERの解説スライド 深澤俊貴. リアルワールドデータを活用した研究のプロトコル作成. https://www.docswell.com/s/toshikifukasawa/582GL2-2024-08-22-225924 12
リアルワールドデータを用いた因果推論研究のプロセス (PRINCIPLED) FDA Sentinel Innovation Centerが開発した因果推論研究のフレームワーク (PRINCIPLED) リアルワールドデータを用いた観察研究において、信頼性が高く再現可能なエビデンスを創出することを目 的に、①観察研究デザインおよび②データ解析における重要な選択肢を体系的に検討するための5段階のプ ロセスを提案 BMJ. 2024;384:e076460. 13
デザインダイアグラム Ann Intern Med. 2019;170(6):398–406. Clin Epidemiol. 2022;14:601–608. 14
アウトライン 1 薬剤疫学研究の再現性 2 再現性の高い薬剤疫学研究をデザインするプロセス 2.1 PRINCIPLEDフレームワーク 2.2 デザインダイアグラム 3 グループワーク 4 薬剤疫学者としてキャリアを切り拓いていくには 15
リアルワールドデータを用いた因果推論研究のプロセス (PRINCIPLED) FDA Sentinel Innovation Centerが開発した因果推論研究のフレームワーク (PRINCIPLED) リアルワールドデータを用いた観察研究において、信頼性が高く再現可能なエビデンスを創出することを目 的に、①観察研究デザインおよび②データ解析における重要な選択肢を体系的に検討するための5段階のプ ロセスを提案 BMJ. 2024;384:e076460. 16
PRINCIPLEDの5段階のプロセス BMJ. 2024;384:e076460. 17
PRINCIPLEDの5段階のプロセス ステップ1:標的試験のプロトコルを設定し、因果的な問いを形成する ステップ2:標的試験のプロトコルの各要素のエミュレーションを記述し (ステップ2a)、目的に 適合したデータソースを特定する (ステップ2b) ステップ3:期待される精度を評価し (ステップ3a)、診断評価を実施する (ステップ3b) ステップ4:決定論的感度分析、確率論的感度分析、ネットバイアス評価を含む頑健性評価の計画 を策定する ステップ5:因果推論の解析を実施する BMJ. 2024;384:e076460. 18
PRINCIPLEDの5段階のプロセス ステップ1:標的試験のプロトコルを設定し、因果的な問いを形成する ステップ2:標的試験のプロトコルの各要素のエミュレーションを記述し (ステップ2a)、目的に 適合したデータソースを特定する (ステップ2b) ステップ3:期待される精度を評価し (ステップ3a)、診断評価を実施する (ステップ3b) ステップ4:決定論的感度分析、確率論的感度分析、ネットバイアス評価を含む頑健性評価の計画 を策定する ステップ5:因果推論の解析を実施する 標的試験エミュレーション (target trial emulation) BMJ. 2024;384:e076460. 19
標的試験エミュレーション (target trial emulation) Miguel Hernán先生が提案した手法 観察研究は、費用、倫理的観点、迅速性などの理由からRCTを実施できない場合に、有益なエビ デンスを提供可能 しかし、観察研究はランダム化されていないため、交絡が存在するだけでなく、誤った研究デザ インがバイアスを容易に引き起こすため、因果推論に課題 Target trial emulationは、①関心のあるリサーチクエスチョンに対する答えが得られるような仮 想のRCT (標的試験:target trial) のプロトコルを設定し、②手元の観察データを用いて、①の プロトコルを明示的に模倣 (emulation) するように研究を実施することで、観察研究の質を高め ようとするアプローチ ただし、観察データを用いる前提であるため、プラセボ対照試験、盲検化、実臨床ではありえな いほど厳しいモニタリングなどは不可 Am J Epidemiol. 2016;183(8):758–64. 20
標的試験エミュレーション (target trial emulation) の手順 ①仮想のRCT (標的試験:target trial) のプロトコルを設定 もしRCTを実施するのであればという仮定のもので、標的試験のプロトコル (7項目) を設定する 1. 適格基準 2. 治療戦略 (→ 治療レジメン、治療方針) 3. 治療割り付け 4. 追跡 (→ 追跡開始時点であるtime zeroの設定が重要) 5. アウトカム 6. 因果的な対比 (→ intention-to-treat効果、per-protocol効果) 7. 解析方法 ②観察データで標的試験のプロトコルを模倣 (emulation) 研究者の手元にある観察データを用いて、①で設定した標的試験のプロトコルを明示的に模倣するように研究 を実施する BMJ. 2024;384:e076460. 21
PRINCIPLEDの5段階のプロセス ステップ1:標的試験のプロトコルを設定し、因果的な問いを形成する ステップ2:標的試験のプロトコルの各要素のエミュレーションを記述し (ステップ2a)、目的に 適合したデータソースを特定する (ステップ2b) ステップ3:期待される精度を評価し (ステップ3a)、診断評価を実施する (ステップ3b) ステップ4:決定論的感度分析、確率論的感度分析、ネットバイアス評価を含む頑健性評価の計画 を策定する ステップ5:因果推論の解析を実施する BMJ. 2024;384:e076460. 22
ステップ1:標的試験のプロトコルを設定し、因果的な問いを形成する 2型糖尿病患者におけるSGLT-2阻害薬とDPP-4阻害薬の性器感染症リスクの比較研究 標的試験のプロトコルの設定 適格基準 2型糖尿病患者;65歳以上;ランダム化前に試験薬治療歴なし;末期腎疾患、HIV、性器感染 症の既往歴なし;6か月間継続してメディケアA、B、Dに加入しており、治療開始前の6か月 間に電子カルテにHbA1c検査結果の記録あり 治療戦略 (1) SGLT-2阻害薬または (2) DPP-4阻害薬の投与開始 いずれの戦略においても、投与開始後の糖尿病治療薬の使用は医師と患者の判断に委ねられる 治療割り付け ランダム化、非盲検 追跡 追跡は割り付け時に開始し、以下のいずれか最も早い日まで追跡 (365日目、追跡不能、死亡、 アウトカム発生) アウトカム 性器感染症 因果的な対比 Intention-to-treat効果 解析方法 Intention-to-treat解析 BMJ. 2024;384:e076460. 23
PRINCIPLEDの5段階のプロセス ステップ1:標的試験のプロトコルを設定し、因果的な問いを形成する ステップ2:標的試験のプロトコルの各要素のエミュレーションを記述し (ステップ2a)、目的に 適合したデータソースを特定する (ステップ2b) ステップ3:期待される精度を評価し (ステップ3a)、診断評価を実施する (ステップ3b) ステップ4:決定論的感度分析、確率論的感度分析、ネットバイアス評価を含む頑健性評価の計画 を策定する ステップ5:因果推論の解析を実施する BMJ. 2024;384:e076460. 24
ステップ2:標的試験のプロトコルの各要素のエミュレーションを記述し (ステッ プ2a)、目的に適合したデータソースを特定する (ステップ2b) 標的試験プロトコルの設定 標的試験プロトコルのエミュレーション 適格基準 2型糖尿病患者;65歳以上;ランダム化前に試験薬治療歴なし; 末期腎疾患、HIV、性器感染症の既往歴なし;6か月間継続して メディケアA、B、Dに加入しており、治療開始前の6か月間に電 子カルテにHbA1c検査結果の記録あり 標的試験と同じ 治療戦略 (1) SGLT-2阻害薬または (2) DPP-4阻害薬の投与開始 いずれの戦略においても、投与開始後の糖尿病治療薬の使用は 医師と患者の判断に委ねられる 標的試験と同じ 治療割り付け ランダム化、非盲検 測定された交絡因子のレベル内でランダ ム化されたと仮定、非盲検 追跡 追跡は割り付け時に開始し、以下のいずれか最も早い日まで追 跡 (365日目、追跡不能、死亡、アウトカム発生) 標的試験と同じ アウトカム 性器感染症 標的試験と同じ 因果的な対比 Intention-to-treat効果 Intention-to-treat効果のobservational analogue 解析方法 Intention-to-treat解析 標的試験と同じ BMJ. 2024;384:e076460. 25
適格基準のエミュレーション 適格基準 治療戦略 標的試験プロトコルの設定 標的試験プロトコルのエミュレーション 2型糖尿病患者;65歳以上;ランダム化前に試験薬治療歴なし; 末期腎疾患、HIV、性器感染症の既往歴なし;6か月間継続して メディケアA、B、Dに加入しており、治療開始前の6か月間に電 子カルテにHbA1c検査結果の記録あり 標的試験と同じ (1) SGLT-2阻害薬または (2) DPP-4阻害薬の投与開始 標的試験と同じ 標的試験は「実際に実施したい理想的な試験」と「手元の観察データを使用して合 いずれの戦略においても、投与開始後の糖尿病治療薬の使用は 医師と患者の判断に委ねられる 理的に模倣できる試験」との妥協点である 治療割り付け ランダム化、非盲検 測定された交絡因子のレベル内でランダ 「標的試験プロトコルの設定」→「標的試験プロトコルのエミュレーション」は反 ム化されたと仮定、非盲検 復的なプロセスである 追跡 追跡は割り付け時に開始し、以下のいずれか最も早い日まで追 標的試験と同じ 跡 (365日目、追跡不能、死亡、アウトカム発生) ○ 標的試験のプロトコルを設定するには、データベースの詳細な知識が必要 アウトカム○ 許容可能なトレードオフを系統的に明確にすることが可能 性器感染症 標的試験と同じ 因果的な対比 Intention-to-treat効果 Intention-to-treat効果のobservational analogue 解析方法 Intention-to-treat解析 標的試験と同じ 26
治療戦略のエミュレーション 標的試験プロトコルの設定 標的試験プロトコルのエミュレーション 適格基準 2型糖尿病患者;65歳以上;ランダム化前に試験薬治療歴なし; 末期腎疾患、HIV、性器感染症の既往歴なし;6か月間継続して メディケアA、B、Dに加入しており、治療開始前の6か月間に電 子カルテにHbA1c検査結果の記録あり 標的試験と同じ 治療戦略 (1) SGLT-2阻害薬または (2) DPP-4阻害薬の投与開始 いずれの戦略においても、投与開始後の糖尿病治療薬の使用は 医師と患者の判断に委ねられる 標的試験と同じ 治療割り付け ランダム化、非盲検 測定された交絡因子のレベル内でランダ ム化されたと仮定、非盲検 治療戦略の種類 Point追跡は割り付け時に開始し、以下のいずれか最も早い日まで追 intervention:処置変数は時間固定 (time-fixed) → Intention-to-treat効果 追跡 標的試験と同じ 跡 (365日目、追跡不能、死亡、アウトカム発生) Sustained strategy:処置変数は時間変動 (time-varying) → Per-protocol効果 アウトカム○ Static 性器感染症 標的試験と同じ treatment strategy:全員にいつでも同じ治療を行う戦略 因果的な対比 例: Intention-to-treat効果 Intention-to-treat効果のobservational 1年間、SGLT-2阻害薬を毎日投与 analogue ○ Dynamic treatment strategy:個人の特性に基づいて治療を行う戦略 解析方法 Intention-to-treat解析 標的試験と同じ 例: SGLT-2阻害薬を毎日投与するが、副作用が発現した場合は治療を中止 27
Sustained strategyの分類 Static treatment strategy (静的な治療戦略) 全員にいつでも同じ治療を行う戦略 例: 1年間、SGLT-2阻害薬を毎日投与 非現実的であり、これが関心のある治療戦略 であることは稀 Dynamic treatment strategy (動的な治療戦略) 個人の特性に基づいて治療を行う戦略 例: SGLT-2阻害薬を毎日投与するが、副作用 が発現した場合は治療を中止 多くの場合、こちらが関心のある治療戦略で あることが多い ただし、時間依存性交絡因子に関する十分な データを得られないがために、エミュレー ションが難しい場合が多い 28
治療継続期間 (grace period, gapの考え方) 治療の中止は、完全ではないアドヒアランス (飲み忘れによる残薬、患者の再診の遅れ) を考慮した猶予期間 (grace period) を用いて設定されることが多い 猶予期間は、薬剤の種類、服薬頻度、基礎疾患などの臨床的観点から設定される 前回の処方日数経過日から次の処方日までの期間であるギャップ (gap) が、規定の猶予期間を超える場合、 前回の処方日数に猶予期間を加算した時点を治療の中止とみなす 薬剤疫学. 2023;28(2):39–55. 29
治療継続期間 (stockpilingの考え方) 患者が前回の処方日数分の薬剤を使い終える前に新たに薬剤を処方されることにより発生する残薬 (stockpiling) への対処 → 対処しないと、治療継続期間が実際よりも短くなる (長期的に使用される薬剤では特に影響を受ける) → 2回以上連続で残薬が発生した場合、その残薬をどのように処理するかは、その薬剤の特徴をもとに決める ことがある 薬剤疫学. 2023;28(2):39–55. 30
薬剤のリスク期間 薬剤のリスク期間 キャリーオーバー期間 (carryover period):体内に残っている薬剤がアウトカムの発生に影響する期間。薬 剤の半減期から推測可能 誘導期間 (induction period):曝露がアウトカムの発生に影響を与えるのに必要な期間 潜伏期間 (latent period):アウトカム発生から診断までの期間 誘導期間や潜伏期間への対処法 誘導期間や潜伏期間に関しては、研究計画時点の判断材料だけではその長短が不確実であることが多いため、 それらのリスク期間を変化させた感度解析が重要 誘導期間、潜伏期間が長いことが予想されるアウトカムの場合、薬剤の使用開始直後に発生したアウトカム は、薬剤に起因するとは考えにくいため、治療期間中に発生したとみなすべきではない → 追跡開始時点 (time zero) の設定で考慮しないと、 因果の逆転 (reverse causality) が発生しうる 治療継続期間が終了しても追跡を打ち切らず、リスク期間として追跡し続ける 薬剤疫学. 2023;28(2):39–55. Rheumatology. 2020;59(1):14–25. 31
誘導期間中のアウトカムをネガティブコントロールアウトカムとみなした研究事例 ネガティブコントロールアウトカム (negative control outcome) 治療によって影響を受けないことが知られているアウトカムで、未測定交絡 (例えば、医療受診行動) が本来 のアウトカムと類似している可能性が高いもの ネガティブコントロールアウトカムを利用することで、交絡がないことを証明することはできないが、交絡 が存在することを示すことはできる 誘導期間中のアウトカムをネガティブコントロールアウトカムとみなした研究事例 BNT162b2ワクチン vs. mRNA-1273ワクチンのCOVID-19感染予防効果 → ワクチン接種後10日間における症状のあるCOVID-19感染がネガティブコントロールアウトカム (RCTの 結果から、この期間ではワクチン間の予防効果に差があることは予想されない) Epidemiology. 2010;21(3):383–8. N Engl J Med. 2022;386(2):105–115. 32
治療割り付けのエミュレーション 標的試験プロトコルの設定 標的試験プロトコルのエミュレーション 適格基準 2型糖尿病患者;65歳以上;ランダム化前に試験薬治療歴なし; 末期腎疾患、HIV、性器感染症の既往歴なし;6か月間継続して メディケアA、B、Dに加入しており、治療開始前の6か月間に電 子カルテにHbA1c検査結果の記録あり 標的試験と同じ 治療戦略 (1) SGLT-2阻害薬または (2) DPP-4阻害薬の投与開始 いずれの戦略においても、投与開始後の糖尿病治療薬の使用は 医師と患者の判断に委ねられる 標的試験と同じ 治療割り付け ランダム化、非盲検 測定された交絡因子のレベル内でランダ ム化されたと仮定、非盲検 追跡 追跡は割り付け時に開始し、以下のいずれか最も早い日まで追 標的試験と同じ 因果的な対比 Intention-to-treat効果 Intention-to-treat効果のobservational analogue 解析方法 Intention-to-treat解析 標的試験と同じ 交絡因子の調整:因果推論の前提条件 跡 (365日目、追跡不能、死亡、アウトカム発生) 層別/回帰、マッチング、傾向スコア解析 アウトカム 性器感染症 標的試験と同じ G-methods (standardization/g-formula、inverse probability weighting、g-estimation) 33
治療割り付けのエミュレーションの質の評価 ネガティブコントロールアウトカム (negative control outcome) の利用 ネガティブコントロールアウトカム:治療によって影響を受けないことが知られているアウトカムで、未測 定交絡 (例えば、医療受診行動) が本来のアウトカムと類似している可能性が高いもの ネガティブコントロールアウトカムを利用することで、交絡がないことを証明することはできないが、交絡 が存在することを示すことはできる ネガティブコントロールの概念は標的試験プロトコールの他の構成要素に拡張可能 ○ Negative control treatment:アウトカムに影響を与えないことが知られている治療で、未測定交絡は本 来の治療と類似している可能性が高いもの ○ Negative control population:治療効果がないことが知られている集団で、未測定交絡は本来の集団と類 似している可能性が高いもの ネガティブコントロールアウトカムの例 BNT162b2ワクチン vs. mRNA-1273ワクチンのCOVID-19感染予防効果 →ワクチン接種後10日間における症 状のあるCOVID-19感染がネガティブコントロールアウトカム 乳がん検診の乳がん死亡率に対する効果 → 結腸がん死亡率がネガティブコントロールアウトカム Epidemiology. 2010;21(3):383–8. N Engl J Med. 2022;386(2):105–115. 34
追跡のエミュレーション 適格基準 標的試験プロトコルの設定 標的試験プロトコルのエミュレーション 2型糖尿病患者;65歳以上;ランダム化前に試験薬治療歴なし; 末期腎疾患、HIV、性器感染症の既往歴なし;6か月間継続して メディケアA、B、Dに加入しており、治療開始前の6か月間に電 子カルテにHbA1c検査結果の記録あり 標的試験と同じ 治療戦略 (1) SGLT-2阻害薬または (2) DPP-4阻害薬の投与開始 標的試験と同じ 追跡開始時点 (time zero) を正しく設定する いずれの戦略においても、投与開始後の糖尿病治療薬の使用は 医師と患者の判断に委ねられる ①研究への適格性の判定、②治療戦略の開始、③追跡開始時点 (time zero) の3時点を 治療割り付け ランダム化、非盲検 一致させないとバイアスが発生 測定された交絡因子のレベル内でランダ ム化されたと仮定、非盲検 追跡 追跡は割り付け時に開始し、以下のいずれか最も早い日まで追 跡 (365日目、追跡不能、死亡、アウトカム発生) 標的試験と同じ アウトカム 性器感染症 標的試験と同じ 因果的な対比 Intention-to-treat効果 Intention-to-treat効果のobservational analogue 解析方法 Intention-to-treat解析 標的試験と同じ 35
追跡開始時点 (time zero) ①研究への適格性の判定 (E)、②治療戦略の開始 (A)、③追跡開始時点 (T0) の3時点を一致させない とバイアスが発生 Left truncation bias Prevalent user bias Depletion of susceptibles bias Immortal time bias J Clin Epidemiol. 2016;79:70–75. 36
追跡方法 Intention-to-treat approach T0に割り付けられた治療戦略に基づき、その治療を継続したか否かにかかわらず追跡する 追跡期間中に、治療へのアドヒアランスが不十分になる場合がある → 治療アドヒアランスの変化を最小化するために、追跡期間はT0から1年後までといった事前に規定した期 間に制限する Per-protocol approach 患者が実際に受けた治療戦略を基に追跡する (治療戦略に違反した時点で追跡を打ち切る) 治療戦略の変更は何らかの臨床的判断を含むと考えられるため、これによる打ち切りは非ランダムであり選 択バイアスが発生する → 選択バイアスへの対処法として、inverse probability of censoring weighting (IPCW) があるが、治療戦 略の決定を左右する検査値や微妙な副作用などのデータは得られないことが多いため、妥当に実施でき ないことがある 37
追跡時の考慮事項:競合イベント 競合イベントとは、関心のあるアウトカムの発生を妨げるイベント (例:死亡) 競合イベントが存在する場合、いくつかの異なるエスティマンドが推定される可能性があるが、 これらのエスティマンドすべてが必ずしも普遍的な関心事であるとは限らない ○ Effect on the composite outcome ○ Total effect ○ Controlled direct effect ○ Separable direct effect ○ Survivor average causal effect Stat Med. 2020;39(8):1199–1236. 38
再掲:追跡開始時点 (time zero) ①研究への適格性の判定 (E)、②治療戦略の開始 (A)、③追跡開始時点 (T0) の3時点を一致させない とバイアスが発生 Left truncation bias Prevalent user bias Depletion of susceptibles bias Immortal time bias J Clin Epidemiol. 2016;79:70–75. 39
3時点を一致させるのが難しいシチュエーション 1. 研究への適格性の判定 (E) のタイミングが一意に定まらない 患者が複数の時点で適格基準を満たす ○ BNT162b2ワクチンの接種 vs. 未接種 (N Engl J Med. 2021;384(15):1412–1423.) → 対処法1:適格基準を満たすすべての時点からランダムに追跡開始時点 (T0) を1つ選択 → 対処法2:適格基準を満たすすべての時点をT0として毎回選択 (sequential emulation) 2. 追跡開始時点 (T0) では治療戦略を区別できない 「研究への適格性の判定 (E)」と「追跡開始時点 (T0)」の2時点は一致するが、「治療戦略の開始 (A)」を T0で定義できない (治療戦略がsustained strategyの場合、T0以降に明らかになるケースがある) ○ 多剤耐性結核患者におけるべダキリン治療の6か月継続 vs. 7–11か月継続 vs. 12か月以上継続 (Am J Respir Crit Care Med. 2023;207(11):1525–1532.) ○ CKD患者におけるeGFR <30 ml/min/1.73m2後6か月以内のRAS阻害薬の中止 vs. 継続 (J Am Soc Nephrol. 2021;32(2):424–435.) ○ 心房細動患者における慢性硬膜下血腫手術後14日以内の経口抗凝固療法の再開 vs. 非再開 (Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2024;33(12):e70063.) → 対処法:3-step法 (cloning, censoring, and weighting) 40
3時点を一致させるのが難しいシチュエーション 1. 研究への適格性の判定 (E) のタイミングが一意に定まらない 患者が複数の時点で適格基準を満たす ○ BNT162b2ワクチンの接種 vs. 未接種 (N Engl J Med. 2021;384(15):1412–1423.) → 対処法1:適格基準を満たすすべての時点からランダムに追跡開始時点 (T0) を1つ選択 → 対処法2:適格基準を満たすすべての時点をT0として毎回選択 (sequential emulation) 2. 追跡開始時点 (T0) (sequential では治療戦略を区別できない 対処法1でも対処法2 emulation) でも妥当にT0を選択できるが、sequential emulationの方が推定 「研究への適格性の判定 (E)」と「追跡開始時点 (T0)」の2時点は一致するが、「治療戦略の開始 (A)」を 精度を高められる T0で定義できない (治療戦略がsustained strategyの場合、T0以降に明らかになるケースがある) ○ 多剤耐性結核患者におけるべダキリン治療の6か月継続 vs. 7–11か月継続 vs. 12か月以上継続 (Am J Respir Crit Care Med. 2023;207(11):1525–1532.) ○ CKD患者におけるeGFR <30 ml/min/1.73m2後6か月以内のRAS阻害薬の中止 vs. 継続 (J Am Soc Nephrol. 2021;32(2):424–435.) ○ 心房細動患者における慢性硬膜下血腫手術後14日以内の経口抗凝固療法の再開 vs. 非再開 (Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2024;33(12):e70063.) → 対処法:3-step法 (cloning, censoring, and weighting) 41
Sequential emulation 規定した時点毎に (BNT162b2ワクチン論文の例では、毎日)、候補者全員に適格基準を当てはめ、基準に合 致した者全員を対象にした試験をその時点から逐次的に開始する → BNT162b2ワクチン論文の例では、2020年12月20日から2021年2月1日までの43日間を対象に、各日で試 験が開始されたため、計43個の試験が走る。最終的に43個の試験をプールして解析する 複数の試験に組入れられる個人がいることを考慮して、95%信頼区間の推定にはブートストラップ法または ロバスト分散を使用する N Engl J Med. 2021;384(15):1412–1423. 42
3時点を一致させるのが難しいシチュエーション 1. 研究への適格性の判定 (E) のタイミングが一意に定まらない 患者が複数の時点で適格基準を満たす ○ BNT162b2ワクチンの接種 vs. 未接種 (N Engl J Med. 2021;384(15):1412–1423.) → 対処法1:適格基準を満たすすべての時点からランダムに追跡開始時点 (T0) を1つ選択 → 対処法2:適格基準を満たすすべての時点をT0として毎回選択 (sequential emulation) 2. 追跡開始時点 (T0) では治療戦略を区別できない 「研究への適格性の判定 (E)」と「追跡開始時点 (T0)」の2時点は一致するが、「治療戦略の開始 (A)」を T0で定義できない (治療戦略がsustained strategyの場合、T0以降に明らかになるケースがある) ○ 多剤耐性結核患者におけるべダキリン治療の6か月継続 vs. 7–11か月継続 vs. 12か月以上継続 (Am J Respir Crit Care Med. 2023;207(11):1525–1532.) ○ CKD患者におけるeGFR <30 ml/min/1.73m2後6か月以内のRAS阻害薬の中止 vs. 継続 (J Am Soc Nephrol. 2021;32(2):424–435.) ○ 心房細動患者における慢性硬膜下血腫手術後14日以内の経口抗凝固療法の再開 vs. 非再開 (Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2024;33(12):e70063.) → 対処法:3-step法 (cloning, censoring, and weighting) 43
Immortal time bias Immortal timeは、曝露群をT0後 (追跡期間中) の曝露情報で定義することで生じる、アウトカムの起きえな い時間 → 例:患者CやDではT0から経口抗凝固療法の再開までは、アウトカムが起きないことが保証されてしまう このimmortal timeを曝露群の追跡期間として誤って分類してしまうと、曝露群において本来よりもアウトカ ムの発生頻度が過小評価されるimmortal time biasが発生する 下図は治療戦略を誤分類した例 Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2024;33(12):e70063. 44
3-step法 (cloning, censoring, and weighting) Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2024;33(12):e70063. 45
3-step法 (cloning, censoring, and weighting) Step 1:クローニング (cloning) 適格基準を満たした全ての患者を治療戦略の数だけクローニング (複製) し、各々の治療戦略に割り付ける Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2024;33(12):e70063. 46
3-step法 (cloning, censoring, and weighting) Step 2:打ち切り (censoring) 治療戦略に違反した時点で、患者の追跡を打ち切る Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2024;33(12):e70063. 47
3-step法 (cloning, censoring, and weighting) Step 3:重み付け (weighting) Inverse probability of censoring weighting (IPCW) を行い、全員が割り付けられた治療戦略を遵守した状況を 疑似的に作り出す 「治療戦略:14日以内の経口抗凝固療法の再開」の場合:14日以内の治療戦略違反はないため、14日目に 「非再開」で残っている患者を違反として一律に打ち切り、その打ち切り確率を計算 → 15日目で「打ち切られていない患者」に大きな重みがかかる 「治療戦略:14日以内の経口抗凝固療法の非再開」の場合:14日目までの再開で治療戦略違反となるので、 1–14日目までの打ち切り確率を各日で計算し、それらを掛け算 → 1–14日目までに「打ち切られていない患者 (再開していない患者)」に徐々に重みがかかっていく 注:追跡不能 (loss to follow-up) による選択バイアスに対しては、上記とは別にIPCWを行う必要がある Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2024;33(12):e70063. 48
アウトカムのエミュレーション 標的試験プロトコルの設定 適格基準 標的試験プロトコルのエミュレーション 2型糖尿病患者;65歳以上;ランダム化前に試験薬治療歴なし; 標的試験と同じ 末期腎疾患、HIV、性器感染症の既往歴なし;6か月間継続して メディケアA、B、Dに加入しており、治療開始前の6か月間に電 子カルテにHbA1c検査結果の記録あり 標的試験は「実際に実施したい理想的な試験」と「手元の観察データを使用して合 (1) SGLT-2阻害薬または (2) DPP-4阻害薬の投与開始 標的試験と同じ 理的に模倣できる試験」との妥協点である いずれの戦略においても、投与開始後の糖尿病治療薬の使用は 「標的試験プロトコルの設定」→「標的試験プロトコルのエミュレーション」は反 医師と患者の判断に委ねられる 復的なプロセスである 治療割り付け ランダム化、非盲検 測定された交絡因子のレベル内でランダ ム化されたと仮定、非盲検 ○ 標的試験のプロトコルを設定するには、データベースの詳細な知識が必要 追跡 追跡は割り付け時に開始し、以下のいずれか最も早い日まで追 標的試験と同じ ○ 許容可能なトレードオフを系統的に明確にすることが可能 治療戦略 跡 (365日目、追跡不能、死亡、アウトカム発生) アウトカム 性器感染症 標的試験と同じ 因果的な対比 Intention-to-treat効果 Intention-to-treat効果のobservational analogue 解析方法 Intention-to-treat解析 標的試験と同じ 49
アウトカムの定義:バリデーション研究 バリデーション研究があるか確認 バリデーション研究:より真に近いと考えられる情報 (ゴールドスタンダード) と比べて妥当性を確認する研究。 ゴールドスタンダードには、カルテレビュー、疾患レジストリ、検査結果を用いることが多い 感度:DB上で、真に病気の患者のうち、そのアウトカム定義を満たす患者の割合 特異度:DB上で、真に病気でない患者のうち、そのアウトカム定義を満たさない患者の割合 陽性的中率 (PPV):DB上で、アウトカム定義を満たす患者のうち、真にその病気の患者の割合 陰性的中率 (NPV):DB上で、アウトカム定義を満たさない患者のうち、真にその病気でない患者の割合 ゴールドスタンダード を満たすか ア ウ 満ト たカ すム か定 義 を Yes No Yes 真陽性 A 偽陽性 B PPV = A/(A+B) No 偽陰性 C 真陰性 D NPV = D/(C+D) 感度 = A/(A+C) 特異度 = D/(B+D) 50
アウトカムの定義:バリデーション研究 例:SJS/TENを特定するためのアルゴリズム (感度76.9%、特異度99.0%) PLoS One. 2019;14(8):e0221130. 51
アウトカムの定義:バリデーション研究 International Society for Pharmacoepidemiology (ISPE) がendorseしたバリデーション研究の一般原則に関 する論文 アルゴリズムのバリデーション研究の実施に関連する用語、方法、実践的な考慮事項を体系化 アルゴリズムの精度の測定、ゴールドスタンダード、研究規模、精度指標の優先順位付け、アルゴリズムの 外挿性などについて考察 Am J Epidemiol. 2024;193(11):1612–1624. 52
アウトカムの定義 バリデーション研究がなければ、必ず臨床医に相談して定義する アウトカムを傷病名のみで定義するのは、適切ではないことがほとんど (精度、発生日の定義の問題)。可能 な限り医薬品や診療行為との組み合わせで定義する 傷病名の精度は、医科レセプト、DPC、電子カルテでかなり異なる 1. 医科レセプト:診療報酬請求目的。特異度が低いことが多い。外来、入院でも精度が異なる。同一医療 機関を同一傷病名で再診した場合、再診日の日データは記録されない (年月データは記録される) 2. DPC:診療報酬請求目的ではないため、特異度は高いが、感度は低い。入院ごとにしか記録されない (主 傷病名、入院の契機となった傷病名、医療資源を最も投入した傷病名、医療資源を2番目に投入した傷 病名、副傷病名、入院時併存傷病名、入院後発症傷病名)。入力できる傷病数に上限がある。入院後に発 生した傷病の診療開始日は特定不可能 3. 電子カルテ:診療報酬請求目的ではないため、精度は高いが、医師の専門性によって誤診がありうる。 医科レセプト病名と違い、受診の度に病名記録が発生するわけではない 53
因果的な対比のエミュレーション 標的試験プロトコルの設定 標的試験プロトコルのエミュレーション 適格基準 2型糖尿病患者;65歳以上;ランダム化前に試験薬治療歴なし; 末期腎疾患、HIV、性器感染症の既往歴なし;6か月間継続して メディケアA、B、Dに加入しており、治療開始前の6か月間に電 子カルテにHbA1c検査結果の記録あり 標的試験と同じ 治療戦略 (1) SGLT-2阻害薬または (2) DPP-4阻害薬の投与開始 いずれの戦略においても、投与開始後の糖尿病治療薬の使用は 医師と患者の判断に委ねられる 標的試験と同じ 治療割り付け ランダム化、非盲検 測定された交絡因子のレベル内でランダ ム化されたと仮定、非盲検 追跡 2つの因果的な対比 追跡は割り付け時に開始し、以下のいずれか最も早い日まで追 標的試験と同じ Intention-to-treat効果:治療戦略への割り付け効果 (point interventionの比較) 跡 (365日目、追跡不能、死亡、アウトカム発生) Per-protocol効果:治療戦略を受けたときの効果 (sustained strategyの比較) アウトカム 性器感染症 標的試験と同じ 因果的な対比 Intention-to-treat効果 Intention-to-treat効果のobservational analogue 解析方法 Intention-to-treat解析 標的試験と同じ 54
解析方法のエミュレーション 適格基準 標的試験プロトコルの設定 標的試験プロトコルのエミュレーション 2型糖尿病患者;65歳以上;ランダム化前に試験薬治療歴なし; 末期腎疾患、HIV、性器感染症の既往歴なし;6か月間継続して メディケアA、B、Dに加入しており、治療開始前の6か月間に電 子カルテにHbA1c検査結果の記録あり 標的試験と同じ 治療戦略因果的な対比に対応した解析 (1) SGLT-2阻害薬または (2) DPP-4阻害薬の投与開始 いずれの戦略においても、投与開始後の糖尿病治療薬の使用は Intention-to-treat解析 医師と患者の判断に委ねられる 標的試験と同じ ○ ベースラインの交絡の調整が必要 ランダム化、非盲検 測定された交絡因子のレベル内でランダ ○ 追跡不能 (loss to follow-up) がランダムでない場合、追跡不能による選択バイア ム化されたと仮定、非盲検 スの調整が必要 追跡 追跡は割り付け時に開始し、以下のいずれか最も早い日まで追 標的試験と同じ 跡 (365日目、追跡不能、死亡、アウトカム発生) Per-protocol解析 アウトカム○ ベースラインおよびベースライン後の交絡、追跡不能による選択バイアスの調整 性器感染症 標的試験と同じ 因果的な対比 が必要 Intention-to-treat効果 Intention-to-treat効果のobservational (g-methodsによる解析が必要) 治療割り付け analogue 解析方法 Intention-to-treat解析 標的試験と同じ 55
PRINCIPLEDの5段階のプロセス ステップ1:標的試験のプロトコルを設定し、因果的な問いを形成する ステップ2:標的試験のプロトコルの各要素のエミュレーションを記述し (ステップ2a)、目的に 適合したデータソースを特定する (ステップ2b) ステップ3:期待される精度を評価し (ステップ3a)、診断評価を実施する (ステップ3b) ステップ4:決定論的感度分析、確率論的感度分析、ネットバイアス評価を含む頑健性評価の計画 を策定する ステップ5:因果推論の解析を実施する BMJ. 2024;384:e076460. 56
ステップ2:標的試験のプロトコルの各要素のエミュレーションを記述し (ステッ プ2a)、目的に適合したデータソースを特定する (ステップ2b) BMJ. 2024;384:e076460. 57
ステップ2:標的試験のプロトコルの各要素のエミュレーションを記述し (ステッ プ2a)、目的に適合したデータソースを特定する (ステップ2b) データの適合性 (relevance) と信頼性 (reliability) の両方の基準を満たすデータソースを、関心の ある研究課題の目的に適合しているとみなす データの適合性評価 質問1:適格基準は十分な精度で模倣できるか? 質問2:関心のあるアウトカムは十分な質で測定されているか? 質問3:治療は十分な質で測定されているか? 質問4:主要な交絡因子は記録されているか? データの信頼性評価 正確性 (accuracy):記録されたデータが妥当か? 完全性 (completeness):診断、検査結果、薬物治療記録を含むさまざまなデータが完全か? 起源 (provenance):ソースデータ内で記録された情報の起源を文書化できるか? 追跡可能性 (traceability):解析データセットとソースデータの関係を明確に特定できるか? BMJ. 2024;384:e076460. 58
ステップ2:標的試験のプロトコルの各要素のエミュレーションを記述し (ステッ プ2a)、目的に適合したデータソースを特定する (ステップ2b) データの適合性評価の例 質問1:適格基準は十分な精度で模倣できるか? → Yes (バリデーション研究で、2型糖尿病のPPVは96%) 質問2:関心のあるアウトカムは十分な質で測定されているか? → Yes (バリデーション研究で、性器感染症のPPVは90%) 質問3:治療は十分な質で測定されているか? → Yes (SGLT2iとDPP4iはメディケアパートDのレセプトから入手可) 質問4:主要な交絡因子は記録されているか? → Yes (人口統計学的特性、併存疾患、他の糖尿病治療) → No (HbA1c検査結果がレセプトからは取得不可) → EHRとのリンケージや未測定交絡に対する感度解析により、Yesに BMJ. 2024;384:e076460. 59
医科レセプト DPCレセプト 調剤レセプト レセプト管理レコード (MN) レセプト管理レコード (MN) レセプト管理レコード (MN) 医療機関情報レコード (IR) 医療機関情報レコード (IR) 薬局情報レコード (YK) レセプト共通レコード (RE) レセプト共通レコード (RE) レセプト共通レコード (RE) 保険者レコード (HO) 保険者レコード (HO) 保険者レコード (HO) 公費レコード (KO) 公費レコード (KO) 公費レコード (KO) 傷病名レコード (SY) 傷病名レコード (SY) 処方基本レコード (SH) 医薬品レコード (IY) 医薬品レコード (IY) 調剤情報レコード (CZ) 診療行為レコード (SI) 診療行為レコード (SI) 医薬品レコード (IY) 特定器材レコード (TO) 特定器材レコード (TO) 特定器材レコード (TO) コメントレコード (CO) コメントレコード (CO) コメントレコード (CO) 日計表レコード (NI) 日計表レコード (NI) 摘要欄レコード (TK) 症状群記レコード (SJ) 症状群記レコード (SJ) 基本料・薬学管理料レコード (KI) 臓器提供医療機関情報レコード (TI) 臓器提供医療機関情報レコード (TI) 分割技術料レコード (ST) データの信頼性評価の例 正確性 (accuracy) 完全性 (completeness) 起源 (provenance) 追跡可能性 (traceability) テーブルデータから生レセ プトの各種レコードに遡る 臓器提供者レセプト情報レコード (TR) 臓器提供者レセプト情報レコード (TR) 臓器提供者請求情報レコード (TS) 臓器提供者請求情報レコード (TS) 包括評価対象外理由レコード(GR) 包括評価対象外理由レコード(GR) 診断群分類レコード(BU) 傷病レコード(SB) 患者基礎レコード (KK) 深澤俊貴. レセプトデータの 診療関連レコード (SK) 外泊レコード (GA) 構造と管理. 包括評価レコード (HH) https://www.docswell.com 合計調整レコード (GT) /s/toshikifukasawa/5J4QQ 診療行為レコード (SI) J-2024-12-03-204653 コーディングレコード (CD) テーブル名 情報源 レセプト RE, HO, BU 傷病 SY, SB, BU 医薬品 IY, CZ, SH, CD (IYとCDの重複分は削除*) 診療行為 SI, CD (SIとCDの重複分は削除*) IR *特定入院期間 (診断群分類ごとに定められている算定期間) を超える場合 60
日本のレセプトデータの適合性と信頼性 深澤俊貴. レセプトデータの構造と管理. https://www.docswell.com/s/toshikifukasawa/5J4QQJ-2024-12-03-204653 61
ステップ2:標的試験のプロトコルの各要素のエミュレーションを記述し (ステッ プ2a)、目的に適合したデータソースを特定する (ステップ2b) データベース選択で特に重要なポイント 1. 対象集団:データベースの規模、対象範囲、代表性は適切か? 2. 研究の各種設定項目:曝露、アウトカム、共変量が詳細に、偏りなく、利用可能な形で収集されているか? 3. 継続的かつ一貫したデータ収集:研究対象期間中、データ収集に中断や経時的な変化がないか? 4. データが記録されている期間とデータが更新されるまでの時間:患者の平均追跡期間、曝露からアウトカム 発生を補足するまでのデータ収集期間は十分か? Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2012;21(1):1–10. 62
ステップ2:標的試験のプロトコルの各要素のエミュレーションを記述し (ステッ プ2a)、目的に適合したデータソースを特定する (ステップ2b) JMDC保険者データベース J Gen Fam Med. 2021;22(3):118–127. JMDC医療機関データベース J Gen Fam Med. 2020;21(6):211–218. RWDデータベース Ann Clin Epidemiol. 2024;6(3):58–64. https://www.jspe.jp/committee/kenkou-iryou/ 63
PRINCIPLEDの5段階のプロセス ステップ1:標的試験のプロトコルを設定し、因果的な問いを形成する ステップ2:標的試験のプロトコルの各要素のエミュレーションを記述し (ステップ2a)、目的に 適合したデータソースを特定する (ステップ2b) ステップ3:期待される精度を評価し (ステップ3a)、診断評価を実施する (ステップ3b) ステップ4:決定論的感度分析、確率論的感度分析、ネットバイアス評価を含む頑健性評価の計画 を策定する ステップ5:因果推論の解析を実施する BMJ. 2024;384:e076460. 64
ステップ3:期待される精度を評価し (ステップ3a)、診断評価を実施する (ステッ プ3b) BMJ. 2024;384:e076460. 65
ステップ3:期待される精度を評価し (ステップ3a)、診断評価を実施する (ステッ プ3b) ステップ3a:期待される精度の評価 リアルワールドデータを用いた研究では、研究計画時点でおおよその対象者数を想定できること が多い サンプルサイズは従来のような検定偏重ではなく、精度ベースの設計により効果指標をどのくら いの精度で推定できるか、研究計画段階で検討することが推奨される Kenneth J Rothman先生、Sander Greenland先生が、精度ベース (= 信頼区間の幅に基づく) サ ンプルサイズの設計のための式を提案している (リスク差、リスク比、発生率差、発生率比、 オッズ比) 期待する精度を達成できないと判断された場合は、 ○ ステップ2に戻り、適格基準の修正、または、比較対照の変更を検討する (プロトコル改訂) → ステップ5の因果推論の解析結果に応じて、プロトコル改訂がなされてはならない ○ 公衆衛生上の観点から、得られる情報の重要度が低いと思われるのであれば、No-goの意思決 定を下すことも BMJ. 2024;384:e076460. Epidemiology. 2018;29(5):599–603. 66
ステップ3:期待される精度を評価し (ステップ3a)、診断評価を実施する (ステッ プ3b) ステップ3a:期待される精度の評価の例 (曝露により層別されていない状態でアウトカムの集計結 果を確認) プロトコル改訂前 (研究対象薬の開始前にHbA1c検査結果があることを適格基準にした場合): 性器感染症リスクに対するSGLT-2阻害薬の相対リスクについて、null effect (1.0) を仮定した場 合の95%信頼区間は0.35–1.65であり、不正確 (解析対象集団が1,498人、アウトカムが40件) プロトコル改定後 (研究対象薬の開始前にHbA1c検査結果があることを適格基準にしない場合): 95%信頼区間は0.73–1.27であることが期待 (解析対象集団が9,339人、アウトカムが293件) → ここでの精度ベースの検討を踏まえ、プロトコル改訂へ BMJ. 2024;384:e076460. 67
データベース研究でのサンプルサイズ設計の必要性 データベース研究ではサンプルサイズの検討は不要? 測定誤差、選択バイアス、交絡の調整が必要な場合、正確なサンプルサイズ計算は不可能 (Hernán先生の意見) 推定値が不正確であっても、他の観察研究の結果と併せてメタ解析すればよい (Hernán先生の意見) どのくらいの精度で推定値が得られるのかを、研究計画段階である程度把握するうえで、精度ベースのサンプ ルサイズ設計を実施するのがベターでは? (深澤の意見) J Clin Epidemiol. 2022;141:212. J Clin Epidemiol. 2022;142:261–263. J Clin Epidemiol. 2022;144:193. J Clin Epidemiol. 2022;144:203–205. 68
ステップ3:期待される精度を評価し (ステップ3a)、診断評価を実施する (ステッ プ3b) ステップ3b:診断評価 因果推論の主要な仮定 (特にpositivity) に対する潜在的な違反がないかを評価する ○ 分布のオーバーラップ ○ 重みの分布 ○ 重み付け後の共変量バランス ○ … BMJ. 2024;384:e076460. 69
ステップ3:期待される精度を評価し (ステップ3a)、診断評価を実施する (ステッ プ3b) ステップ3b:診断評価 分布のオーバーラップ BMJ. 2024;384:e076460. 70
ステップ3:期待される精度を評価し (ステップ3a)、診断評価を実施する (ステッ プ3b) ステップ3b:診断評価 重みの分布 BMJ. 2024;384:e076460. 71
ステップ3:期待される精度を評価し (ステップ3a)、診断評価を実施する (ステッ プ3b) ステップ3b:診断評価 重み付け後の共変量バランス BMJ. 2024;384:e076460. 72
PRINCIPLEDの5段階のプロセス ステップ1:標的試験のプロトコルを設定し、因果的な問いを形成する ステップ2:標的試験のプロトコルの各要素のエミュレーションを記述し (ステップ2a)、目的に 適合したデータソースを特定する (ステップ2b) ステップ3:期待される精度を評価し (ステップ3a)、診断評価を実施する (ステップ3b) ステップ4:決定論的感度分析、確率論的感度分析、ネットバイアス評価を含む頑健性評価の計 画を策定する ステップ5:因果推論の解析を実施する BMJ. 2024;384:e076460. 73
ステップ4:決定論的感度分析、確率論的感度分析、ネットバイアス評価を含む頑 健性評価の計画を策定する BMJ. 2024;384:e076460. 74
ステップ4:決定論的感度分析、確率論的感度分析、ネットバイアス評価を含む頑 健性評価の計画を策定する 決定論的感度分析 (deterministic sensitivity analysis) Deterministic quantitative bias analysisとも呼ばれる 研究デザインまたは解析上の特定の仮定に焦点を当て、それらを個別に変更して、研究結果に与 える影響を評価するアプローチ (標的試験プロトコルのバリエーションとみなすことができる) ○ 治療の継続性を定義する上でのgapを延長・短縮する ○ アウトカムの定義を変更して特異度を高める ○ 解析モデルを変更する ○ … BMJ. 2024;384:e076460. 75
ステップ4:決定論的感度分析、確率論的感度分析、ネットバイアス評価を含む頑 健性評価の計画を策定する 確率論的感度分析 (probabilistic sensitivity analysis) Probabilistic quantitative bias analysisとも呼ばれる 曝露・アウトカムの誤分類、未測定交絡因子、選択バイアスなどが研究結果に与えるバイアスの 影響を評価するための確率論的およびシミュレーションのアプローチ ○ Array approach:未測定交絡因子の存在割合 (Pc1) と未測定交絡がアウトカムに与える影響の 大きさ (RRCD) を仮定し、その未測定交絡を調整したら観察された結果 (RRadjusted) がどう変わ るかを確認する ○ … BMJ. 2024;384:e076460. Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2006;15(5):291–303. Brigham and Women's Hospital & Harvard Medical School. Software Tools. https://www.drugepi.org/dope/software#Sensitivity-analysis 76
ステップ4:決定論的感度分析、確率論的感度分析、ネットバイアス評価を含む頑 健性評価の計画を策定する ネットバイアス評価 (net bias assessment) 未補正の交絡、選択バイアス、測定エラーなど、複数の原因によるバイアスの存在を検知するた めのアプローチ ○ ネガティブコントロールやポジティブコントロールを利用する ○ 既存のRCTへのベンチマーキング:より制限された集団でRCTが実施されている場合、その RCTを標的試験としたエミュレーションを実施する BMJ. 2024;384:e076460. Ann Rheum Dis. 2022;81(6):798–804. 77
PRINCIPLEDの5段階のプロセス ステップ1:標的試験のプロトコルを設定し、因果的な問いを形成する ステップ2:標的試験のプロトコルの各要素のエミュレーションを記述し (ステップ2a)、目的に 適合したデータソースを特定する (ステップ2b) ステップ3:期待される精度を評価し (ステップ3a)、診断評価を実施する (ステップ3b) ステップ4:決定論的感度分析、確率論的感度分析、ネットバイアス評価を含む頑健性評価の計画 を策定する ステップ5:因果推論の解析を実施する BMJ. 2024;384:e076460. 78
ステップ5:因果推論の解析を実施する ステップ4の終了時には、プロトコルのすべての構成要素が事前に規定されており、あとはそれに 沿って因果推論の解析を実施するだけ ○ 解析は因果推論のプロセスの最後のステップに過ぎない ○ PRINCIPLEDで提案された順序でステップを踏んでいけば、研究結果を確認した後に研究デザ インや解析方法を変更するような事態を避けられ、透明性の向上につながる BMJ. 2024;384:e076460. 79
アウトライン 1 薬剤疫学研究の再現性 2 再現性の高い薬剤疫学研究をデザインするプロセス 2.1 PRINCIPLEDフレームワーク 2.2 デザインダイアグラム 3 グループワーク 4 薬剤疫学者としてキャリアを切り拓いていくには 80
デザインダイアグラム Ann Intern Med. 2019;170(6):398–406. Clin Epidemiol. 2022;14:601–608. 81
デザインダイアグラムとは • データベース研究では、多くのデザインを考慮する必要あり • 各デザイン特有の用語もあり、論文ごとに用語の使われ方にバラツキあり • 研究デザインを図によって可視化、標準化された用語を提案し、データ ベース研究の再現性を高める Ann Intern Med. 2019;170(6):398–406. 82
薬剤疫学の必読論文30編 薬剤疫学の 必読論文30編の1つ Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2022;31(2):257–259. 83
デザインダイアグラムに関する日本語の解説論文 薬剤疫学. 2023;28(2):39–55. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpe/28/2/28_28.39/_article/-char/ja 84
デザインダイアグラムの構造 一次アンカー 二次アンカー ベースアンカー Ann Intern Med. 2019;170(6):398–406. 85
デザインダイアグラム (作成のためのPowerPointテンプレート) https://www.repeatinitiative.org/projects.html 86
デザインダイアグラム (作成のためのウェブツール) https://presc.sdu.dk/repeat-diagrams/ 87
時点アンカー (temporal anchor) 用語 定義 ベースアンカー Base anchor 暦時間で定義され、データソースを記述する 一次アンカー First-order anchor 患者ごとに特有の時間で定義され、研究への組入れ日または指標日で規定する 二次アンカー Second-order anchor 患者ごとに特有の時間で定義され、一次アンカーと相対的な関係にある 薬剤疫学. 2023;28(2):39–55. 88
ベースアンカー (base anchor) 一次アンカー 二次アンカー ベースアンカー Ann Intern Med. 2019;170(6):398–406. 89
ベースアンカー (base anchor) 用語 定義 データ抽出日 Data extraction date 時間とともに更新される動的なデータベースからデータが抽出された日付 データソースの範囲 Source data range 研究対象集団を作成するために利用可能なデータソースがカバーする暦上の時間 範囲 研究対象期間 Study period 選択基準、除外基準、曝露、アウトカム、共変量、追跡を含む解析用データセッ トを作成するために使用した、データの期間 これらの設定項目は、必ずしもすべてをダイアグラム上に可視化する必要はない 2012/04/01 研究対象期間 データ抽出日 2024/03/31 2024/10/31 データソースの範囲 2005/01/01 薬剤疫学. 2023;28(2):39–55. 2024/04/30 90
ベースアンカー:データソースの範囲 データベースによって、集積されているデータソースの範囲が異なる 保険者、医療機関ごとにデータ提供期間が異なる NDB JMDC保険者 DB DeSC-DB MDV-DB JMDC医療機 関DB JMDC電子カ ルテDB データ開始年 2008年 2005年 2014年 2008年 2000年以前 2000年以前 データ最新年 2024年 2024年 2023年 2024年 2024年 2024年 日本薬剤疫学会. 日本における薬剤疫学に応用可能なデータベース調査. https://www.jspe.jp/committee/kenkou-iryou/ 91
ベースアンカー:データソースの範囲・研究対象期間 データベースによっては複数のデータソースを有するため、選択基準、除外基準、曝露、アウト カム、共変量などのそれぞれの変数が何をデータソースにしているかに注意を払う レセプトデータ DPCデータ 電子カルテデータ これ以降を研究対象期間にすると、すべての情報源を捕捉可能 これ以降を研究対象期間にすると、DPCデータ由来の情報が一部欠落 これ以降を研究対象期間にすると、レセプトデータ・DPCデータ由来の情報が一部欠落 92
ベースアンカー:研究対象期間 例えば、以下に注意して研究対象期間を設定する 曝露群や対照群とする医薬品の発売時期はいつか? 研究対象とする疾患の標準治療に変化はないか? 曝露からアウトカム発生までに必要な追跡期間を確保できるか? 図:JMDC Claims Databaseの年齢階級×追跡期間別加入者数分布 93
一次アンカー (first-order anchor) 一次アンカー 二次アンカー ベースアンカー Ann Intern Med. 2019;170(6):398–406. 94
一次アンカー (first-order anchor) 用語 定義 コホート組入れ日 Cohort entry date 患者が研究対象集団に組入れられる日 Exposure-anchored designで使用 (例:コホート研究、セルフコントロールド・ケースシリーズ研究) アウトカムイベント発生日 アウトカムイベントが発生した日 Outcome event date Outcome-anchored designで使用 (例:ケース・コントロール研究、ケース・クロスオーバー研究) 薬剤疫学. 2023;28(2):39–55. 95
研究デザインの分類 96
自己対照研究デザインにおける因果推論 ケース・クロスオーバーデザインを因果推論の枠組みで議論 推定値を因果的に解釈するためのフォーマルな仮定を提示するとともに、伝統的に用いられてきたイン フォーマルな仮定と対比することで、その妥当性とケース・クロスオーバーデザインの限界を厳密に評価 ケース・クロスオーバーデザインは因果帰無仮説の検定には有用だが (必要な仮定が少なくなるが)、点推定 値の解釈には要注意 自己対照研究デザインにおける因果推論の研究は始まったばかりで発展途上 Biometrics. 2023;79(2):1330–1343. 97
Exposure-anchored design (例:コホート研究) コホート組入れ日 Ann Intern Med. 2019;170(6):398–406. 98
Outcome-anchored design (例:ケース・クロスオーバー研究) アウトカムイベント 発生日 Ann Intern Med. 2019;170(6):398–406. 99
二次アンカー (second-order anchor) 一次アンカー 二次アンカー ベースアンカー Ann Intern Med. 2019;170(6):398–406. 100
二次アンカー (second-order anchor) 用語 定義 除外基準の評価期間 Exclusion assessment window 患者の除外基準を評価するための期間 曝露のウォッシュアウト期間 Washout window for exposure 新規曝露 (incident exposure) を定義するための期間 アウトカムのウォッシュアウト期間 Washout window for outcome 新規アウトカム (incident outcome) を定義するための期間 共変量の評価期間 Covariate assessment window 共変量を評価するための期間 曝露の評価期間 Exposure assessment window 曝露状況を評価するための期間 追跡期間 Follow-up window 研究対象集団において、注目するアウトカムの発生が解析に含ま れる期間 注:上記に加え「選択基準の評価期間 (inclusion assessment window)」を設定してもよい 薬剤疫学. 2023;28(2):39–55. 101
二次アンカー:除外基準の評価期間 半年~1年程度で定義されることが多いが、除外基準ごとに評価期間が異なることもある 一次アンカーの前日または当日までの一定期間として設定されることが多い → 一次アンカーより未来に設定すると、中間因子を調整することになり、曝露とアウトカムの関連を適切 に評価できない Ann Intern Med. 2019;170(6):398–406. 102
二次アンカー:曝露のウォッシュアウト期間 新規曝露 (incident exposure) や新規使用者 (new user) を定義するために用いる 研究対象薬の曝露の記録がウォッシュアウト期間にある場合、または十分なウォッシュアウト期間を確保で きない場合は既曝露 (prevalent exposure)、既使用者 (prevalent user) とみなされる 曝露の ウォッシュアウト期間 Ann Intern Med. 2019;170(6):398–406. 103
Prevalent user bias 既使用者 (prevalent user) は、アウトカムが発生しないで薬を使用し続けている場合が多い → 研究対象に含めると、曝露群でアウトカムが起こりにくい選択バイアス (prevalent user bias) が発生 新規使用者 (new user) は、あくまでもデータベース上において初回処方された患者であるため、必ずしも 生涯を通じて初めてその薬を処方された患者 (treatment-naïve user) ばかりではなく、再使用者 (reinitiator) が含まれる可能性あり これからの薬剤疫学 リアルワールドデータからエビデンスを創る. 104
Prevalent user bias Prevalent user biasへの対処法 データベース登録日~データベース上の初回処方日までに、一定のlook-back period (半年~1年程度) を確 保できる患者を研究対象にする (= new user design) 実薬対照 (= active comparator) を設定する場合は、look-back periodに対照薬を処方されていた患者も prevalent userとして除外することが多い これからの薬剤疫学 リアルワールドデータからエビデンスを創る. 105
New user design vs. Prevalent user design コホート組入れ日は、 Patient 2, 3, 6では、薬剤開始日 Patient 1, 4, 5では、任意の時点 追跡期間の初期に関し、 New user designでは、高リスク期間から観察 Prevalent user designでは、高・中・低リスク期間が混在 Nat Rev Rheumatol. 2015;11(7):437–41. 106
二次アンカー:アウトカムのウォッシュアウト期間 新規アウトカム (incident outcome) を定義するために用いる 初発イベントが再発イベントの発生に影響しうるという理由から、初発イベントのみをアウトカムとして特 定したい場合などに設定される ウォッシュアウト期間に何日間を設定するかは、生物学的な観点から検討される アウトカムの ウォッシュアウト期間 Ann Intern Med. 2019;170(6):398–406. 107
二次アンカー:共変量の評価期間 半年~1年程度で定義されることが多いが、共変量ごとに評価期間が異なることもある 数か月おきの受診によってしか発生しないデータを共変量にする場合、評価期間次第では捉えられず、誤分 類する可能性がある 共変量の評価期間を確保できない患者を組入れると、バイアスにつながる 共変量の評価期間 Ann Intern Med. 2019;170(6):398–406. 108
Look-back period (除外基準、ウォッシュアウト、共変量の評価期間の設定に関連) バイアスと推定精度の相対的な重要性は、個々の研究のセッティングに依存するため、トレードオフを踏まえ て評価期間を設定することが重要 曝露やアウトカムのウォッシュアウト期間を長くすればするほど… 利点:患者が真に研究対象薬の新規使用者 (アウトカムの場合は、初発イベント) である可能性が高くなる 欠点:ウォッシュアウト期間を確保できない患者は解析から除外され、サンプルサイズが減少し、推定精度 が低下 共変量の評価期間を長くすればするほど… 利点:共変量の誤分類は少なくなり、バイアスは軽減する 欠点:当該期間を確保できない患者は解析から除外され、サンプルサイズが減少し、推定精度が低下 薬剤疫学. 2023;28(2):39–55. 109
Look-back period (除外基準、ウォッシュアウト、共変量の評価期間の設定に関連) Fixed look-back approach vs. All-available look-back approach Fixed look-back approach:半年、1年などの固定されたlook-back periodを使用する All-available look-back approach:具体的な期間を定めず、コホート組入れ日以前のデータ期間すべてを look-back periodとみなす 比較群間でコホート組入れ日以前のデータ期間の長さが異なる場合 Fixed look-back approachが推奨 薬の使用あり群 vs. なし群の比較では、なし群でデータ期間が短くなる傾向あり 比較群間でコホート組入れ日以前のデータ期間の長さが同程度の場合 All-available look-back approachの方が優れている可能性あり ただし、すべての評価期間を対象にall-available look-back approachだけを採用している研究はほぼなし 基本的にはfixed look-back approachを用いつつ、一部の選択基準、除外基準、共変量に関してはall-available look-back approachを用いることはありうる 薬剤疫学. 2023;28(2):39–55. 110
二次アンカー:曝露の評価期間 曝露状況を評価するための期間として設定される デザインダイアグラムでいう「曝露の評価期間」は、「追跡期間」に関連する曝露の継続性 (治療継続期間) の評価とは設定目的が異なるため、注意 [−11, −1]は、因果の逆転を防ぐため であり、これが可視化されている! Ann Intern Med. 2019;170(6):398–406. 111
二次アンカー:追跡期間 研究対象集団において、注目するアウトカムの発生が解析に含まれる期間 追跡方法 (intention-to-treat approach, per-protocol approach)、競合イベントの扱いにより、追跡期間終 了日の定義が変わる 追跡期間 Ann Intern Med. 2019;170(6):398–406. 112
二次アンカー:追跡期間 ①研究への適格性の判定 (E)、②治療戦略の開始 (A)、③追跡開始時点 (T0) の3時点が揃っていることが、デザ インダイアグラムで可視化されている! Ann Intern Med. 2019;170(6):398–406. 113
データの観測可能性を可視化するデザインダイアグラム Clin Epidemiol. 2022;14:601–608. 薬剤疫学. 2023;28(2):39–55. 114
アウトライン 1 薬剤疫学研究の再現性 2 再現性の高い薬剤疫学研究をデザインするプロセス 2.1 PRINCIPLEDフレームワーク 2.2 デザインダイアグラム 3 グループワーク 4 薬剤疫学者としてキャリアを切り拓いていくには 115
グループワーク “Osteoporos Int. 2024;35(12):2165–2174”をグループワークの題材にします。この研究を標的試験エミュレー ションの枠組みで改めて実施することを想定します 1. 「標的試験プロトコルの設定・エミュレーションの対応表」を作成してください 2. 「デザインダイアグラム」を作成してください Osteoporos Int. 2024;35(12):2165–2174. 116
アウトライン 1 薬剤疫学研究の再現性 2 再現性の高い薬剤疫学研究をデザインするプロセス 2.1 PRINCIPLEDフレームワーク 2.2 デザインダイアグラム 3 グループワーク 4 薬剤疫学者としてキャリアを切り拓いていくには 117
「人生100年時代」に求められるスキル、コンピテンシー、キャリア意識、マインド パフォーマンス 人生100年時代の薬剤疫学者は、アプリとOSを 常にアップデートし続けていくことが求められる 職場によって異なる 社内スキル 専門スキル 専門スキル 人材としての付加価値の源泉 絶えず新たなスキルの獲得や アップデートが必要 高いレベルの業務成果を生み 出す能力および行動特性 コンピテンシー 全ての基盤 絶えず持ち続けることが必要 キャリア意識、マインド アプリ 製薬業界の 特性に応じた 能力 OS 社会人として の基盤能力 年齢 経済産業省の「社会人基礎力」を深澤が改変 https://www.meti.go.jp/policy/kisoryoku/index.html 118
社内スキル パフォーマンス 職場によって異なる 社内スキル 専門スキル 専門スキル 人材としての付加価値の源泉 絶えず新たなスキルの獲得や アップデートが必要 アプリ 製薬業界の 特性に応じた 能力 製薬関連企業、規制当局、アカデミア 年齢 経済産業省の「社会人基礎力」を深澤が改変 https://www.meti.go.jp/policy/kisoryoku/index.html 119
専門スキル パフォーマンス 職場によって異なる 社内スキル 専門スキル 専門スキル 人材としての付加価値の源泉 絶えず新たなスキルの獲得や アップデートが必要 アプリ 製薬業界の 特性に応じた 能力 薬剤疫学の新たなスキル (標的試験エミュレーション、機械学習を用いた効果 の異質性の評価、医療機器疫学、環境薬剤疫学、…) 年齢 経済産業省の「社会人基礎力」を深澤が改変 https://www.meti.go.jp/policy/kisoryoku/index.html 120
専門スキルの磨き方 海外の卓越した研究者の良質な論文を、大量に読み込む (研究デザイン、解析手法ごとに一流の研究者を把握 しておく) → 巨人の肩の上に立つ:先人の偉業にもとづいて仕事をする。そうすることにより、先人より能力が劣る人で も立派な業績をあげられる Prof. Miguel Hernán (Harvard University) Asst. Prof. Barbra Dickerman (Harvard University) Prof. Sebastian Schneeweiss (Harvard Medical School) Assoc. Prof. Rishi J Desai (Harvard Medical School) Prof. Til Stürmer (University of North Carolina at Chapel Hill) Prof. Maurice Alan Brookhart (Duke University) Prof. Soko Setoguchi (Rutgers University) Prof. Jesper Hallas (University of Southern Denmark) Prof. Juan Jesús Carrero (Karolinska Institutet) Dr. Edouard L Fu (Karolinska Institutet) Asst. Prof. Eric Y.F. Wan (University of Hong Kong) … 121
専門スキルの磨き方 学んだことを研究で実践してみる (毎年1テーマ以上) 臨床経験がない深澤の生き残り戦略ではあるが、新しい手法を応用できる研究を立案・実施する (ただし「新 しい手法を用いれば、従来の手法の限界を乗り越えられること」、「臨床的に意義のあるリサーチクエスチョ ンであること」、「自分が情熱をもって取り組めること」が大前提) 重要な研究 (疫学コンサルタントとして参画する製薬企業との研究など) で標的試験エミュレーションをいき なりやれと言われてもできないため、そういった研究はトレーニングとして必要 → 自分の研究や担当学生の複数の研究で意識的に取り入れる (結果的に、Annals of Internal Medicine誌や Pharmacoepidemiology and Drug Safety誌などにアクセプトされる) 最新の研究手法をキャッチアップしていくことで成長の機会に → Miguel Hernán先生が主催するCAUSALab (Harvard T.H. Chan School of Public Health) の “Advanced Confounding Adjustment” と “Target Trial Emulation” の2つのコースを受講 一流の研究者とコラボレーションする機会に → 篠崎智大先生からご指導いただくきっかけに 後藤匡啓. 臨床研究と機械学習:機械学習を用いた研究を考える. https://er-collection.jp/articles/clinical-research-and-machine-learning-considering-research-using-machine-learning122
コンピテンシー (3つの能力・12の能力要素) パフォーマンス 前に踏み出す力 (アクション) 主体性 働きかけ力 実行力 考え抜く力 (シンキング) 課題発見力 計画力 想像力 チームで働く力 (チームワーク) 発信力 情況把握力 傾聴力 規律性 柔軟性 ストレスコントロール力 高いレベルの業務成果を生み 出す能力および行動特性 コンピテンシー 全ての基盤 絶えず持ち続けることが必要 キャリア意識、マインド OS 社会人として の基盤能力 年齢 経済産業省の「社会人基礎力」を深澤が改変 https://www.meti.go.jp/policy/kisoryoku/index.html 123
コンピテンシー:前に踏み出す力 (アクション) 前に踏み出す力 (アクション) 主体性 働きかけ力 実行力 考え抜く力 (シンキング) 課題発見力 計画力 想像力 チームで働く力 (チームワーク) 発信力 情況把握力 傾聴力 規律性 柔軟性 ストレスコントロール力 人生の成功を決めるのは才能ではなく、GRIT Guts:困難に立ち向かう「闘志」や「勇気」 Resilience:失敗してもあきらめずに続ける「粘り強さ」 Initiative:自らが目標を定め取り組む「自発性」 Tenacity:最後までやり遂げる「執念」 Angela Duckworth. Grit: The Power of Passion and Perseverance. 124
コンピテンシー:考え抜く力 (シンキング) 前に踏み出す力 (アクション) 主体性 働きかけ力 実行力 考え抜く力 (シンキング) 課題発見力 計画力 想像力 チームで働く力 (チームワーク) 発信力 情況把握力 傾聴力 規律性 柔軟性 ストレスコントロール力 良いリサーチクエスチョンはそれに対する答えと同じくらいに価値があり、 時には答えそれ自体よりも重要 ギャップ・スポッティング的な研究のやり方 (*) でキャリアを始めてし まった場合、より挑戦的な貢献を果たす機会は永遠に訪れない可能性あり * 先行研究の中に見落とされてきたギャップ (隙間) を見出し、それらの ギャップを踏まえて具体的なリサーチクエスチョンを作成するやり方 Mats Alvesson, Jörgen Sandberg. Constructing Research Questions: Doing Interesting Research. 125
コンピテンシー:考え抜く力 (シンキング) 前に踏み出す力 (アクション) 主体性 働きかけ力 実行力 考え抜く力 (シンキング) 課題発見力 計画力 想像力 チームで働く力 (チームワーク) 発信力 情況把握力 傾聴力 規律性 柔軟性 ストレスコントロール力 世界中の10億ドルを超えるメガプロジェクトの「成否データ」を1万6,000 件以上蓄積し、プロジェクトが失敗する原因を分析 予算内・工期内に完了するプロジェクトは全体の8.5%、予算・工期・便益 の3つともクリアするプロジェクトは0.5% プロジェクトの成功のカギは「ゆっくり考え、すばやく動く」こと 。「ま ず行動」はナンセンス Bent Flyvbjerg, Dan Gardner. How Big Things Get Done: The Surprising Factors That Determine the Fate of Every Project, from Home Renovations to Space Exploration and Everything In Between. 126
コンピテンシー:チームで働く力 (チームワーク) 前に踏み出す力 (アクション) 主体性 働きかけ力 実行力 考え抜く力 (シンキング) 課題発見力 計画力 想像力 チームで働く力 (チームワーク) 発信力 情況把握力 傾聴力 規律性 柔軟性 ストレスコントロール力 「ギバー」「テイカー」「マッチャー」の3種類が存在し、成功から最も遠 いのも、最も成功しているのもギバー ギバーが成功しやすいのは、独自のコミュニケーションで長期的人脈を築 き、利益のパイを増やし、他者を信じ育て、信望で影響力を発揮するから ギバーが成功するには、他者につくすだけでなく自分の利益にも関心を持 ち、人によってギブ・アンド・テイクのやり方を使い分けることが重要 Adam Grant. Give and Take: Why Helping Others Drives Our Success. 127
コンピテンシー:チームで働く力 (チームワーク) 前に踏み出す力 (アクション) 主体性 働きかけ力 実行力 考え抜く力 (シンキング) 課題発見力 計画力 想像力 チームで働く力 (チームワーク) 発信力 情況把握力 傾聴力 規律性 柔軟性 ストレスコントロール力 誰をバスに乗せるか? (偉大な企業への飛躍をもたらした経営者は、まず はじめにバスの目的地を決め、次に旅を共にする人々を乗せる方法を取っ たのではない。まずはじめに適切な人をバスに乗せ、不適切な人を降ろし、 その後にどこに向かうかを決めている) 「規律ある人材」を集めるには、まず経営者や上司が「第5水準のリーダー シップ」に辿り着く必要がある James C. Collins. Good to Great: Why Some Companies Make the Leap...and Others Don't. 128
コンピテンシー:チームで働く力 (チームワーク) 第5水準のリーダーシップ 第1水準 有能な個人 才能、知識、スキル、勤勉さによって、生産 的な仕事をする 第2水準 組織に寄与する個人 組織目標の達成のために自分の能力を発揮し、 組織の中で他の人たちとうまく協力する 第3水準 有能な管理者 人と資源を組織化し、決められた目標を効率 的に効果的に追及する 第4水準 有能な経営者 明確で説得力のあるビジョンへの支持と、ビ ジョンの実現に向けた努力を生み出し、これ までより高い水準の業績を達成するよう組織 に刺激を与える 第5水準 第5水準の経営者 個人としての謙虚さと職業人としての意志の 強さという矛盾した性格の組み合わせによっ て、偉大さを持続できる企業を作り上げる 日経BOOKプラス. 「ビジョナリー・カンパニー」第5水準のリーダーシップ. https://bookplus.nikkei.com/atcl/column/060100076/060100003/ 129
コンピテンシー:チームで働く力 (チームワーク) 第5水準のリーダーの「二面性」 個人としての謙虚さ 職業人としての意志の強さ 驚くほど謙虚で、世間の称賛を避け、 素晴らしい実績を生み出し、偉大な企 決して自慢しない 業への飛躍をもたらす 静かな決意を秘めて行動する。魅力的 どれほど困難があっても、長期にわ なカリスマ性によってではなく、主と たって最高の実績を生み出すために必 して高い基準によって組織を活気づか 要なことは全て行う堅い意志を示す せる 野心は自分個人ではなく、企業に向け 偉大さが永続する企業を築くための基 る。次の世代に一層の成功を収められ 準を設定し、基準を満たせなければ決 るように後継者を選ぶ して満足しない 鏡ではなく窓を見て、他の人たち、外 結果が悪かった時に、窓の外ではなく 部要因、幸運が成功をもたらした要因 鏡を見て、責任は自分にあると考える。 だと考える 他人や外部要因、運の悪さのためだと は考えない 日経BOOKプラス. 「ビジョナリー・カンパニー」第5水準のリーダーシップ. https://bookplus.nikkei.com/atcl/column/060100076/060100003/ 130
キャリア意識、マインド (3つの視点) パフォーマンス 高いレベルの業務成果を生み 出す能力および行動特性 コンピテンシー 全ての基盤 絶えず持ち続けることが必要 キャリア意識、マインド OS 社会人として の基盤能力 年齢 経済産業省の「社会人基礎力」を深澤が改変 https://www.meti.go.jp/policy/kisoryoku/index.html 131
キャリア意識、マインド:目的 これからの働き方のステージ 情熱 創造性 クリエイティブエコノミー Work 3.0 ナレッジエコノミー Work 2.0 生産経済 Work 1.0 率先 知能 服従 勤勉さ ピョートル・フェリクス・グジバチ. ニューエリート グーグル流・新しい価値を生み出し世界を変える人たち. 132
キャリア意識、マインド:目的 オールドエリート ニューエリート モチベーション、 立身出世、名誉、ステータ 性質 ス、強欲 楽しいからやっている、自 己実現=他者貢献 主義 計画主義 学習主義 キャリア 有名会社 (組織) に入り一生 自分がやりたいこと、やる 安泰 べきことを追求 資産 金融資産 人間関係資産、変身資産 仕事ぶり 上からの指示、要件定義通 りの仕事が速くて正確 新しい枠組みを作る 人間関係 クローズド オープン 信条 勤勉 情熱 夢 安定 ムーンショット 組織との関係 会社に仕える、依存する 会社をうまく活用する ピョートル・フェリクス・グジバチ. ニューエリート グーグル流・新しい価値を生み出し世界を変える人たち. NewsPicks. ワーク・アズ・ライフ時代到来で、エリート像が激変する. https://newspicks.com/news/2915783/body/ 133
キャリア意識、マインド:学び 134
キャリア意識、マインド:統合 独自性を生み出すには、守破離が重要 素の自分から独自性を生み出すのは難しい。創造は真似ることから 自己流は時間の無駄。まずは型にはまることが大事。自分の中に何の基準もなけ れば、軸がブレていつまでも方向性が定まらず迷走。型が定まっていれば成長は 早い。成長すれば独自性は後から勝手についてくる 巨人の肩を借りて、先行研究を土台として学んでから「既存の価値の組み合わ せ」で独自性を発揮する (ブルーオーシャンを創出する) ことが成功のカギ W. Chan Kim, Renee Mauborgne. Blue Ocean Strategy: How to Create Uncontested Market Space and Make Competition Irrelevant. 135
データベース研究はレッドオーシャンか? レッドオーシャンは需要が証明されている証 ブルーオーシャンを求める研究者は多いが、特に活躍しているのは「レッドオーシャンの中にあ るブルーオーシャン」を見つけた研究者 常に自分をアップデートしながら「既存の価値 (学び) の組み合わせ」で独自性を作り出し、徹底 的にやり抜けばよい (レッドオーシャンでも泳ぎきればブルーオーシャンに) 最初からブルーオーシャンばかり探してると青い鳥症候群に (自分がブルーオーシャンだと信じ て参入しても、実際のところ、そこに海はないから誰も手を出していないだけのことも…) とはいえ、最近はありがたいことに、前向きレジストリ研究に関わらせていただく機会も 136
資本主義という戦場を生き延びるには 「コモディティ (資格などでスペックが明確に定義できるもの)」になってはなら ない 「スペシャリティ」になるには、既存の枠組みの中で努力するのではなく、資本 主義におけるルールをしっかり理解することが必要 資本主義においてコモディティ化せずに、主体的に稼ぐ人間になる近道は以下6 タイプのいずれかになること (1) トレーダー:商品を他の需要のある場所に運んで売る (2) エキスパート:自分の専門性を高めて、高いスキルによって仕事をする (3) マーケター:商品に付加価値をつけて、市場に合わせて売る (4) イノベーター:まったく新しい仕組みを創造する (5) リーダー:他の人をマネージして、リーダーとして行動する (6) インベスター:投資家として市場に参加する ただし、(1) トレーダーと (2) エキスパートの生き残りは今後厳しい 理想的には、どれか1つのタイプを目指すのではなく、状況に応じていくつかの顔 を使い分ける 瀧本哲史. 僕は君たちに武器を配りたい. 137
人生100年時代に薬剤疫学者としてキャリアを切り拓いていくには 目的、学び、統合のバランスを図り、時代やライフステージと照らし合わせて自らをアップデート しながら、専門スキルやコンピテンシーを身に着けキャリアを切り拓いていく 3つの能力・12の能力要素 3つの視点 振り返り・アップデート 経済産業省の「社会人基礎力」を深澤が改変 https://www.meti.go.jp/policy/kisoryoku/index.html 138
まとめ 自らが行う薬剤疫学研究が医療や薬事規制の意思決定に影響を及ぼしうることを十分に自覚した うえで、再現性の高い研究を実施する 医薬品の治療効果に関する因果推論研究を計画・実施する際には、PRINCIPLEDで提示されたプ ロセスを参照する 薬剤疫学者としてキャリアを切り拓いていくには、日々自己研鑽し、時代に応じた専門スキルや コンピテンシーを身につけていくことが求められる 139