タスク分析とチェックリストによるスマートスピーカーのユーザビリティ評価

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May 08, 23

スライド概要

第18回日本感性工学会春季大会
講演番号:1B01-04
原稿(pdf):https://researchmap.jp/d_the_rhythm/presentations/41656895/attachment_file.pdf
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大阪公立大学生活科学部居住環境学科デザイン人間工学研究室(土井俊央研究室)

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各ページのテキスト
1.

タスク分析とチェックリストによる スマートスピーカーのユーザビリティ評価 大阪市立大学 生活科学部居住環境学科3年 西川祐生 大阪公立大学 土井俊央 1

2.

研究背景 今日音声操作でデバイスの操作する音声応答システムが人々の生活や社会 に浸透し始めている。その中でもスマートスピーカーの普及が著しい。[1] [1]株式会社野村総合研究所:「ITナビ ゲーター2021年度版 コロナショックで デジタル化が加速~2026年までの市場ト レンドを予測~」,2020年12月17日,p54 第2章デバイス市場 2.4 スマートピー カー市場 日本におけるスマートスピー カーの保有世帯数・普及率予測 日本におけるスマートスピーカーの保有世帯数・普及率予測 2

3.

研究背景 • スマートスピーカーについては、スマートスピーカーのよそよそしさに着 目している研究[2]や,音声対話システムに着目している研究[3]などの音 声対話システムの性能向上のための研究が多くある。 • しかしスマートスピーカーおよびその対応製品のユーザビリティやユーザ インターフェースデザインに関連した研究は少ない。 [2]板敷尚,西脇裕作,大島直樹,岡田美智男:なぜスマートスピーカーはよそよそしいのか?ロボットの親近感を生み出す代名詞の役割,ヒューマンインタ フェース学会論文誌,Vol22,No2,pp65-76(2020) [3]山本賢太,井上昂治,河原達也:音声対話システムのユーザ適正に向けたパーソナリティの関係性の分析,人工知能学会研究会資料,言語・音声理解と対話 処理研究会 SIG-SLUD-093-02 3

4.

スマートスピーカーの特徴 • スマートスピーカーの特徴として、無線接続で他の複数の機器と接続し、 それらを制御するということや、画面を使わずVoice User Interface (VUI)によって操作をする、もしくはスマホ画面から遠隔で操作するとい う点がある。 4

5.

• 今まで画面ありで操作を行っていたものから、画面なしで操作 を行うこと変更されたため戸惑うユーザは多い。 • 特に初心者や未経験者にとっては、画面を見ないということに よりどんな機能が備わっているかが分からないという状態に なっている。 →新たな問題点が発生 5

6.

目的 • 従来のUIデザインの知見は画面などの視覚的な要素を対象にし たものが中心であり、 VUIに対するガイドラインは十分にある とは言えない。 • そのためにスマートスピーカーのような無線接続・VUIによる 操作のシステムデザインについての理解を深める必要があると 考えた。インスペクション評価によってシステムのユーザビリ ティ上の問題を俯瞰する。 6

7.

研究方法 代表的な手法であるチェックリスト及び3Pタスク分析を用いてインスペク ション評価を行った。スマートスピーカーはecho dot第4世代、対応製品は スイッチボットLED電球をそれぞれ使用した。(図1) 図1 調査に使用した機器(左:echo dot第四世代,右: スイッチボットLED電球) 7

8.

チェックリスト 山岡の提唱する70デザイン項目から UIデザイン項目[4]およびUX・画面 インタフェースデザインのためのデ ザイン項目[5]から18項目を選定し た。チェック項目は右表の通りであ る。 [4]山岡俊樹:デザイン人間工学の基本,武蔵野美術館大学出版 局,2015,p450 [5]山岡俊樹,前川正実,平田一郎,安井鯨太:デザイナー、エ ンジニアのためのUX・画面インタフェースデザイン入門,日刊 工業新聞社,2013,p148,表6.2.1 8

9.

3Pタスク分析 3Pタスク分析[6]とは、細分化されたタスクやサブタスクに対し、ユーザ の情報処理プロセスの「情報入手」→「理解・判断」→「操作」の3ポイン トから問題点を抽出していく方法である。タスクは画面を主に使用する 「初期設定」と音声を主に使用する「音声操作」の2つに大きく分ける。 [6]山岡俊樹:デザイン人間工学の 基本,武蔵野美術館大学出版局, 2015,p180 9

10.

3Pタスク分析例 シーン アレクサの音声操作 タスク (サブタスク) 問題点を抽出 「アレクサ、〇 分後にアラーム を設定して」と 話す 情報入手 理解・判断 操作 アラーム音はアプリか ら操作しないといけな い 「アレクサ、明 どこの天気か 日の天気を教え も教えないと いけない て」と話す 10

11.

タスクとサブタスク 代表的なタスクとして「初期設定」ではWi-fiの接続、「音声操作」では 「『アレクサ,照明をつけて』と言ってLEDの照明をオンにしてもらう」 などがある。 タスク Echo Dotとセットアップする サブタスク 照明のアプリ、「プロフィー ル」,「その他のサービス」を 選択 Alexaを選択し、セットアップ を行う アレクサアプリ、「デバイスの 追加」,「ライト」を選択 ブランドを指定し、接続させる 11

12.

インスペクション評価の流れ チェックリスト 作成 タスク・サブタ スクの選定 チェックリストを参 照しつつ、サブタス クを進める 初期設定では設定を終わる までの一連の流れ、音声操 作では代表的な操作を対象 のタスクとした。 初期設定・音声操 作に分け、カテゴ リを作成する カテゴリに分けた後、想 定される問題にユーザが 直面する頻度,影響度の 観点に今回着目した。 12

13.

初期設定の問題点 カテゴリ 問題点 ユーザになじみのない言葉が使われる LED電球のアプリがネットワーク上のデバイス検索,接続を求 めている時に「Tアプリ」という聞き馴染みがない言葉が表示さ れた ユーザが理解・判断するのが難しい 初期設定時の際、水色背景に白色文字は少し見にくい、また文 字が細くて小さければ尚一層見にくい ユーザと製品の理解・判断の違い デバイス追加で「電気製品」しか扱え扱えないと思う ユーザは操作をどこからやればいいのか デバイスを追加した後に、アレクサとセットアップするために はどこから行えばいいか分からない ユーザにとっての重要情報の強調がない デバイスを追加中に「デバイスの電源がオンになっていること を確認してください」という文章が他の文章と交互に表示され る→画面を切り替えず常に表示されている状態にする ユーザの身体・物理的に影響がある コードを引っ掛けたとき、上手く抜けるか 一貫性が考慮されていない パソコンのキーボード型,スマホのキーボード型、2種類のパス ワードの打ち込み画面が表示される ユーザにとって面倒,アレクサ側でやってほしい Bluetoothを必ず使うので、自動でオンにしてほしい 後の操作で何をするのかユーザは知らない アプリで操作時、どういう操作が後にやるか分からない(シス テム全体を把握できない) 13

14.

初期設定の問題点(頻度) 頻度の面では「パスワードの打ち込み画面の違い」「パスワードが表示さ れるかされないかの違い」などのパスワードに関する問題点が多く、「一 貫性が考慮されていない」というカテゴリに属するものがよく見られた。 14

15.

初期設定の問題点(影響度) 「アレクサとセットアップ するにはどこから行えばい いのかわからない」などの 問題点は設定を進めていく ことにおいて、ユーザが困 る可能性が高いため、影響 度が高いものだと感じた。 15

16.

音声操作の問題点 カテゴリ アレクサが理解するのが難しい ユーザが理解するのが難しい アレクサの発言により、行いたい(行ってほし い)ことに時間がかかる 問題点 「アレクサ、電源を付けて」だと、何を付けるか分からないため「アレクサ、照 明をつけて」と文言を定めていないといけない 2つ以上項目を入れると省略して言ってくる (例:牛乳、牛肉、卵→牛乳牛肉卵[ギュウニクギュウニュウラン] 醤油、卵→ 醤油卵[ショウユラン]) 「アレクサ、止めて」と話しても、「もし使いたいときは~」と時間がかかる ユーザの要望にアレクサが答えることができない 次の曲に変えることはできるが、ひとつ前の曲に変えることはできない アレクサ内での優先順位が存在する 「リストの中身を教えて」というと、買い物リストを優先して教えてくる →やることリストを知りたい時は「やることリストを教えて」と言う必要がある 一貫性が考慮されていない 「照明を赤色にして」と話しても答えてくれず、「照明をredにして」と話すと 答えてくれる(他の色は日本語,英語どちらでも対応) アレクサへ情報提示 アレクサ側に情報提示を行わないとアレクサから聞いてくる 逆の順番は反応しない アラーム音設定→アラーム時刻設定:〇 アラーム時刻設定→アラーム音設定:× 16

17.

音声操作の問題点 ・頻度の面では「アレクサが話す言葉の区切る場所がユーザは理解しにく い」「『電源を付けて』だと何を付けるか分からないため文言を定めない といけない」といった問題点が見られ、「理解するのが難しい」のカテゴ リに属するものだった。 ・「アレクサが話す言葉の区切る場所がユーザは理解しにくい」などの問 題点はユーザが戸惑う可能性が高いため、影響度が高い問題点だと感じた。 17

18.

結果・考察 • 音声操作では頻度が多い問題点を含むカテゴリは影響度も高く、一方で初 期設定ではそのような関係性は見られなかった。 • 現状確認できている問題点はスマートスピーカーでは音声操作が、ス マートライトでは初期設定の方が多かった。 • 慣れていないユーザはこの問題に合う頻度は高いことが予想され,また音 声操作に慣れたユーザも頻度は少ないが該当することがあると思われる。 18

19.

今後の方針 • スマートスピーカーを利用する際は複数の製品を接続することが考えられ るため、加湿器やFireTVStick 4KMaxというような対応製品についても同 様にインスペクション評価によって明らかにしていきたい。 • スマートスピーカーの画面ありなしによ る評価の違いの調査も行っていきたい。 • インスペクション評価後はユーザビリティテストを頻度・影響度の面に着 目しながら行っていきたいと考えている。 19

20.

まとめ • スマートスピーカーおよびその対応製品のユーザビリティやユーザイン ターフェースデザインに着目した。 • 音声操作では頻度が多い問題点を含むカテゴリは影響度も高く、一方で初 期設定ではそのような関係性は見られなかった。 • 他の対応製品におけるインスペクション評価及びユーザビリティテストを 頻度・影響度の観点に着目しながら進めていきたい。 20