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March 13, 24
スライド概要
明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 中村聡史研究室
ドライビングシミュレータにおける 路上駐車による道路幅の変化が 運転に及ぼす影響 明治大学B3 飯田空 福井雅弘 髙久拓海 中村聡史(明治大学) 山中祥太 (LINEヤフー株式会社)
実験の様子 1
背景:運転の苦手意識 ドライバによって習熟度や苦手な道路条件は異なる きついカーブ 狭い道路 路上駐車が多い道路 2
背景:運転の苦手意識 ドライバの運転レベルに合わせた経路選択 それぞれの道路条件ごとの難しさを明らかにする 条件ごとに難易度のモデル化を行う 3
関連研究:ステアリングの法則 • 人間の特性を分析し操作をモデル化したもの • ペンをスライドさせる動作を幅Wと経路長Aを用いて 次のようにモデル化した [Accotら 1997] 𝑀𝑇 = 𝑎 + 𝑏 ∗ 𝐼𝐷 (MT:通過時間) 𝑊 𝐴 𝐴 ID = 𝑊 (ID:通過する難易度) Accot, J., and Zhai, S.. Beyond Fitts’ law: models for trajectory-based HCI tasks. In Proceedings of the SIGCHI Conference on Human Factors in Computing Systems (CHI ’97). 1997, pp. 295-302. 4
先行研究 • カーブ走行時のカーブ半径と道路幅が 運転に及ぼす影響のモデル化 [Yamanakaら 2023] • 走行時のカーブ半径と道路幅は運転難易度に影響を及ぼすことを明らかにした • カーブ半径と道路幅の運転難易度への影響をステアリングの法則を用いて モデル化できることを示した 5
先行研究 • 道路幅の変化が運転に及ぼす影響[Fukuiら 2023] • 道路幅が5m以下の狭い道路で 道路幅の変化が運転の難易度へ影響を及ぼすことを明らかにした • 道路幅の変化が運転に及ぼす影響をステアリングの法則を モデル化できることを示した 6
背景:道路幅が変化する経路 駐車車両が多い道路は運転が難しい 7
関連研究:ステアリングの法則 幅が急に変わる経路においても成立 [Yamanakaら 2017] 8
研究の目的 1. 路上駐車による道路幅の変化が 運転に及ぼす影響についての調査 2. ステアリングの法則が適用できるか検証 9
実験設定 ⚫ 過去の研究と同様にドライビングシミュレータを使用して実車の運転 を再現できるシステムを利用 ⚫ 区間の長さやその区間内の通過幅の値を任意に設定できる ⚫ 10
実験設定 前半区間 (狭まる条件) 後半区間 (広がる条件) 𝑊1 :5m 𝑊2 :3m 𝐿1 :20m 𝐿2 :20m 𝑊1 :3m 𝑊2 :5m 𝐿1 :20m 𝐿2 :20m 前半区間 後半区間 (5, 3, 40) (3, 5, 40) (始端幅m,終端幅m,条件区間長m) ※駐車車両が置かれている幅はW 11
実験設定 1コースの例 100 m 5m スタート区間 50m 50m 50m 50m 100 m 4m 3m 第1区間 トンネル区間 第2区間 5 m トンネル区間 第3区間 トンネル区間 スタート エンド • スタート区間 • トンネル区間 • 第1区間 前半(5m, 3m, 100m) 後半(3m, 5m, 100m) • 第2区間 前半(5m, 4m, 100m) 後半(4m, 5m, 100m) • 第3区間 前半(5m, 5m, 100m) 後半(5m, 5m, 100m) 12
実験設定 40m 5m 3m 狭まる条件区間 • 区間長(40m, 100m, 200m) • 通過幅(3m, 4m, 5m) 3m 4m 5m 13
実験設定 • 全9種類の区間を各6回,合計54回,18コース走行 • コース内の全ての区間を成功させるまで そのコースを繰り返す 区間の成功条件:ガードレール,駐車車両に接触しない 14
実験結果 • 実験協力者は運転免許を持つ大学生及び大学院生 20名(男性15名, 女性5名) • 外れ値となる実験協力者はなし 15
実験結果:エラー 各コース条件における区間内のエラー率 • エラーバーは標準誤差を示す • 総試行回数:2286回,区間内のエラー数:38回 ※区間を前半区間(狭まる条件),後半区間(広がる条件)に分けた場合 16
実験結果:エラー 始端幅と終端幅の組み合わせごと • (5, 5),(5, 5):エラーなし • 狭まる条件>広がる条件 始端幅と終端幅の差が大きいほどエラー率も高くなる 17
実験結果:エラー 区間長ごと • 40mが最も小さい • 200mが最も大きい 長くなるほど大きくなる 18
実験結果:平均通過時間 各コース条件における区間の平均通過時間 広がる条件 狭まる条件 19
実験結果:平均通過時間 各コース条件における区間の平均通過時間 広がる条件 0.21 0.86 0.34 0.71 f 0.44 狭まる条件 0.16 20
考察 運転難易度について • 始端幅と終端幅の差が大きいほど高く,差が小さいほど低い • 区間長が短いほど低い • 路上駐車による道路幅の減少がない場合,前半区間よりも後半区間の方が低い 21
ステアリングの法則の検証 MT = 𝑎 + 𝑏 ∗ 𝐼𝐷 MT: 通過時間 ID:通過する難易度 • モデル1 𝑀𝑇 = 𝑎 + 𝑏 • モデル2 𝑀𝑇 = 𝑎 + 𝑏 𝐿1 𝑊1 𝐿1 𝑊1 + +𝑐 𝐿2 𝑊2 𝐿2 𝑊2 • モデル3 𝑀𝑇 = 𝑎 + 𝑏 𝐿1 −𝑛𝑊1 • モデル4 𝑀𝑇 = 𝑎 + 𝑏 𝐿1 −𝑛𝑊1 𝑊1 𝑊1 + 𝑐 log2 + 𝐿2 𝑊2 𝑛𝑊1 𝑊2 + 𝑐 log2 +1 +𝑑 𝑛𝑊1 𝑊2 +1 𝐿2 𝑊2 [Yamanakaら 2017] 22
ステアリングの法則の検証 adjR^2:フリーパラメータを考慮した決定係数 23
ステアリングの法則の検証 モデル2が最も高い精度で推定できた 幅が急に変化する経路のモデルを運転実験にも適用できた adjR^2:フリーパラメータを考慮した決定係数 24
ステアリングの法則の検証 仮説 • 駐車区間において「ドアが開く」ことや「人が飛び出してくる」場合の危険に備えた 実際の道路幅に対して認知的狭さ𝑊𝑥 がある 各コース条件における区間の平均通過時間 0.12 0.34 0.25 25
ステアリングの法則の検証 仮説 • 駐車区間において「ドアが開く」ことや「人が飛び出してくる」場合の危険に備えた 実際の道路幅に対して認知的狭さ𝑊𝑥 がある � 前半区間 𝐿1 𝐿2 𝑀𝑇 = 𝑎 + 𝑏 +𝑐 𝑊1 𝑊2 � � � � 𝐿1 𝐿2 𝑀𝑇 = 𝑎 + 𝑏 +𝑐 𝑊1 𝑊2 − 𝑊𝑥 � � � � � 後半区間 𝐿1 𝐿2 𝑀𝑇 = 𝑎 + 𝑏 +𝑐 𝑊1 − 𝑊𝑥 𝑊2 26
ステアリングの法則の検証 モデル2 モデル2(変更したもの) • 𝑅 2 = 0.981 • 𝑅 2 = 𝟎. 𝟗𝟖𝟔 • 自由度調整済み𝑅 2 = 0.976 • 自由度調整済み𝑅 2 = 𝟎. 𝟗𝟖𝟏 • 赤池情報量基準(AIC)= −15.63 • 赤池情報量基準(AIC)= −𝟏𝟗. 𝟐𝟕 27
今後の展望 • 認知的狭さ𝑊𝑥 がどの程度運転難易度に影響しているのか検証する • 上端や下端に合わせた直線経路に対してのモデルについても考察する 𝑊1 𝑊2 𝐿1 𝐿2 検証に用いたモデル図 実験で用いた狭まる条件区間の図 28
まとめ ⚫ 背景:運転しにくいルートを避けたい ⚫ 目的:路上駐車による道路幅の変化が運転難易度に及ぼす影響の調査 Yamanakaらのモデルの適合度の検証 ⚫ 結果:狭まる条件よりも広がる条件の平均通過時間が短いことを明らかにした Yamanakaらのモデルを用いて高い精度で推定できることを示した ⚫ 展望:認知的狭さ𝑊𝑥 による運転難易度への影響を調査 コース条件を設計し再実験 29