Make-up FLOW 2.0: 美容系YouTuberの化粧フローチャートの共有・取り入れ手法

13.1K Views

March 07, 25

スライド概要

化粧は生活場面に合わせて施すことが多く,その工程は個人によって様々で複雑に分岐している.我々はこれまでの研究において,化粧工程をフローチャート化するシステム Make-up FLOW を提案・実装してきた.またシステムの利用実験の結果,他者の化粧工程の閲覧による化粧法の学習効果の可能性が示された.そこで本稿では,他者の化粧フローチャートを共有および取り入れ可能なシステム Make-up FLOW 2.0 を提案するとともに,そのプロトタイプシステムを実装した.またシステムの利用実験を通して,工程取り入れ機能の化粧法の習得支援における効果の検証を行った.実験の結果,取り入れによる化粧満足度は高く,取り入れた多くの工程が効果的に機能しており,システムはメイクの腕前に対する自信の獲得への第一歩となる可能性が示唆された.

profile-image

明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 中村聡史研究室

シェア

またはPlayer版

埋め込む »CMSなどでJSが使えない場合

関連スライド

各ページのテキスト
1.

Make-up FLOW 2.0: 美容系YouTuberの 化粧フローチャートの共有・取り入れ手法 髙野沙也香 中村聡史 (明治大学)

2.

背景 多様で複雑な化粧工程 • TPOに応じて化粧を行う人が多くいる 平均最大工程数:16.0,平均ルート数:5.7 [髙野ら, ’23] • 我流で化粧をし,メイクの腕前に自信を持てない人が多くいる 76.8%が独学でメイクを学んでいる(N=984) [Kajita et al, ’21] *1 髙野 沙也香, 中村 聡史. 化粧フローチャートに基づく大学生・大学院生の化粧類似度推定, 情報処理学会 研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI), Vol.2023-HCI-204, No.8, pp.1-8, 2023. *2 Miho Kajita, Satoshi Nakamura. Basic Research on How to Apply Foundation Makeup Evenly on Your Own Face, 20th IFIP TC14 International Conference on Entertainment Computing (IFIP ICEC 2021), pp.402-410, 2021. 2

3.

背景 SNSにおける 美容情報やメイク動画の人気上昇 • 57%がSNSにおけるレビューを重要視している(n=11,115) [PowerReviews, ’22] • 美容系インフルエンサーへの信頼が,視聴者の化粧品の購入 意欲に影響する [Chen et al, ’20] *3 PowerReviews. https://www.powerreviews.com/research/beauty-shopper-digital-expectati ons-2022/. Accessed 11 Feb 2025 *4 Chen, J., Dermawan, A.: The Influence of YouTube Beauty Vloggers on Indonesian Consumers’ Purchase Intention of Local Cosmetic Products. International Journal of Business and Management, 15(5), 100-116 (2020) 3

4.

背景 化粧工程を工学的に扱う必要性 原因 • 化粧工程を構造化・表現する手法が無い • 工程間の類似を判定する基準が無い 構造化→共有,共通点/相違点の計算可能 4

5.

これまでの研究 提案手法 • 化粧工程の構造化手法Make-up FLOWの提案(HCI200) →他者の工程閲覧による化粧法の学習可能性 応用① • 化粧工程の類似度算出手法の提案(HCI204) • 化粧動画推薦への応用可能性の検討(HCI206) *5 髙野 沙也香, 梶田 美帆, 濱野 花莉, 中村 聡史. Make-up FLOW: 個人差・状況差の大きい化粧工程の構造化と忘れやすさに関する調査, 情報処理学会 研究報告 ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI), Vol.2022-HCI-200, No.18, pp.1-8, 2022. *6 髙野 沙也香, 中村 聡史. 化粧フローチャートに基づく大学生・大学院生の化粧類似度推定, 情報処理学会 研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI), Vol.2023-HCI-204, No.8, pp.1-8, 2023. *7 髙野 沙也香, 中村 聡史. 化粧フローチャートに基づく美容系YouTuberの動画推薦手法の検討, 情報処理学会 研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI), Vol.2024-HCI-206, No.9, pp.1-8, 2024. 5

6.

目的 化粧フローチャート共有・取り入れシステム Make-up FLOW 2.0の提案・実装 他者の工程取り入れ機能の 化粧法の習得支援における効果検証 6

7.

Make-up FLOW 2.0 他者の化粧フローチャートを閲覧・取り入れ可能 1. 化粧フローチャート作成機能 2. 動画/フローチャートの検索・ソート機能 3. 他者の化粧工程の取り入れ機能 *8 システムURL: https://vps6.nkmr.io/ 7

14.

システム利用&化粧実践実験 システム利用実験 1. “大学の卒業式”をテーマにフローチャートを作成 2. システムを1時間自由に利用して, 卒業式当日に実際に行いたいフローチャートを完成させる 3. 半構造化インタビュー&アンケートに回答 化粧実践実験 1. 録画をしながらフローチャートに忠実に化粧を行う 2. アンケートに回答 14

15.

実験結果:システム利用結果 他者の工程の取り入れ機能 A B C D 視聴動画数 10 6 12 12 取り込み動画数 3 6 6 10 取り込み工程数 6 17 13 23 最終追加工程数 4 11 10 14 40本中25本の動画で 工程の取り入れを実行 実験協力者A • 隠したい部分をカバーする →コンシーラー • 写真写りが良くなる →チーク 実験協力者D • 自身のやってみたい工程を 詰め込んだ理想の化粧 15

16.

実験協力者A • 隠したい部分をカバーする →コンシーラー • 写真写りが良くなる →チーク 実験協力者D • 自身のやってみたい工程を 詰め込んだ理想の化粧 16

17.

実験協力者A • 隠したい部分をカバーする →コンシーラー • 写真写りが良くなる →チーク 実験協力者D • 自身のやってみたい工程を 詰め込んだ理想の化粧 17

18.

実験結果:システム利用結果 検索・ソート機能 A B C D 総検索数 32 11 16 15 動画一覧表示数 17 6 15 14 15 5 1 1 19 13 0 11 0 0 0 16 0 0 15 0 フローチャート一覧 表示数 関連度順利用数 類似度高い順利用数 類似度低い順利用数 実験協力者A • 動画で使用している商品の 価格帯から動画を選定 実験協力者B • 自身が意識したことのない 立体感メイクを含む動画を 選び視聴した 18

19.

実験結果:システム利用結果 検索・ソート機能 A B C D 総検索数 32 11 16 15 動画一覧表示数 17 6 15 14 15 5 1 1 19 11 0 0 類似度高い順利用数 13 0 16 15 類似度低い順利用数 0 0 0 0 フローチャート一覧 表示数 関連度順利用数 実験協力者A • 似ているという興味から 普段視聴しないYouTuberの 動画も視聴した 実験協力者D • 自身と工程が似てる人の 異なる部分を取り入れた 19

20.

実験結果:化粧実践結果 取り入れた工程の効果 A B C D 計 追加工程数 4 11 10 14 39 効果的な工程 4 6 9 12 31 要改善な工程 0 1 1 2 4 合わない工程 0 4 0 0 4 取り入れた39工程のうち 31工程が効果的に作用した 合わない工程 • 動画で使用している塗布時の アイテムの違い • 動画での塗り方を自身の顔で うまく再現できない 要改善な工程 • 塗り方や濃さを調整したい • ぼかす工程を追加したい *平均化粧満足度:4.75/5点 20

21.

考察:工程取り入れ機能の効果 • 取り入れた工程の79%が効果的に作用し,化粧満足度も高い →メイクの腕前に対する自信の獲得への第一歩となる可能性 • 動画内の技術を上手く再現できない場合があった 1. 骨格や顔のパーツ形状などの絶対的な相性 2. 前後の工程との相対的な相性 →顔型での絞り込み, 工程に対するフラグ機能 21

22.

考察:化粧フローチャート活用の効果 • 使用商品の価格帯や,興味のある工程の割合で動画を選定 →動画視聴前に動画の有益度を測ることができる • 「何気なく動画を見る時より取り入れることを考えるから,参考になる」 →自身の工程と比較しながら情報の取捨選択ができる • 「普段見ない人の動画でも似てるなら見ようかなという興味に繋がった 」 →類似度ソートは動画に対する新たな興味を引き出す 化粧工学 → 化粧工程を計算・蓄積可能 22

23.

化粧工学が切り開く未来 • 一般ユーザの化粧フローチャートの共有 →化粧工程のGitHubの誕生 →工学:統計分析,流行の把握,推薦への活用 • 他の化粧支援手法への適応 例)好みの顔画像に基づく化粧&アイテム推薦 [神武ら, ‘17] 23 *9 神武 里奈, 星野 准一. 好みの顔画像の色に基づくメイクアップ支援システム, 日本感性工学会論文誌, Vol.16, No.3, pp.299-306, 2017.

24.

まとめ • 背景:化粧工程に着目した化粧支援手法が無い • 目的:化粧工程情報を活用したサービスの実現による 化粧のアップデート支援 • 手法:化粧工程をフローチャート化して統一規格で表現する • 考察:システムはメイクの腕前に対する自信の獲得の第一歩になる 可能性がある • 展望:化粧フローチャートの自動生成手法に関する検討, システムのサービス化 24