デジタルペンの筆圧による濃淡表現の有無が算数問題の理解に及ぼす影響の調査

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January 13, 25

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明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 中村聡史研究室

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各ページのテキスト
1.

デジタルペンの筆圧による濃淡表現の有無が 算数問題の理解に及ぼす影響の調査 明治大学 総合数理学部3年 津田 紗宮良 宮崎 勇輝 小林 沙利 中村 聡史(明治大学) 掛 晃幸(株式会社ワコム) 1

2.

背景 デジタルデバイスによる手書きの普及 教育現場でのデジタル化が進んでいる 筆圧表現がないデバイスが登場 チャレンジパッド3 Apple Pencil (USB-C) それらを使用することによる学習上の影響はないのか 2

3.

先行研究 割り算の筆算において,筆圧による濃淡表現がない場合 正答率が下がることを明らかにした[小林ら,2022] 図形問題において,筆圧による濃淡表現がない場合 初見問題の正答率が低くなることを明らかにした [宮崎ら,2023] 小林沙利,植木里帆,関口祐豊,中村聡史,掛晃幸,石丸築,“デジタルペンの筆圧による濃淡表現の有無が筆算の正答率に及ぼす影響” ,情報処理学会研究報告,No.C-5-5,pp.1-8,2022.3 宮崎勇輝,小林沙利,中村聡史,掛晃幸,“デジタルペンの筆圧による濃淡表現の有無が図形問題の解答に及ぼす影響の調査” ,情報処理学会研究報告, No. B-1-6 , pp. 1–8 ,2023.

4.

先行研究 割り算の筆算において,筆圧による濃淡表現がない場合 正答率が下がることを明らかにした[小林ら,2022] これまでは正答率に着目 図形問題において,筆圧による濃淡表現がない場合 学習における理解への影響 初見問題の正答率が低くなることを明らかにした 解答に至るまでの過程に着目 [宮崎ら,2023] 小林沙利,植木里帆,関口祐豊,中村聡史,掛晃幸,石丸築,“デジタルペンの筆圧による濃淡表現の有無が筆算の正答率に及ぼす影響” ,情報処理学会研究報告,No.C-5-5,pp.1-8,2022.4 宮崎勇輝,小林沙利,中村聡史,掛晃幸,“デジタルペンの筆圧による濃淡表現の有無が図形問題の解答に及ぼす影響の調査” ,情報処理学会研究報告, No. B-1-6 , pp. 1–8 ,2023.

5.

目的 デジタル手書きにおける筆圧の濃淡表現の有無が 算数問題の理解に及ぼす影響を調査 5

6.

仮説 筆圧によって線の濃淡が変わらない場合は 変わる場合に比べ,学習における理解度が低下する 理解度が低下することによって 問題解答時の正答率低下や解答時間増加, 解法説明時の正確性低下を引き起こす 6

7.

実験 タブレットとペンを用いて図形問題の解法を学習・類題への解答 筆圧あり群と筆圧なし群で検証 実験参加者 大学生・大学院生40名 各条件20名ずつ 7

8.

実験 問題の選定 大学生であっても初見であれば解法を学ぶ必要のあるタスク 中学受験用の問題 小学校までで学習する算数を出題範囲 ひらめき or 解法パターン 様々な情報を整理する必要がある作図作業が伴う図形問題 8

9.

実験 問題 使用した問題 図形が通った面積を求める問題 ある点が通った長さを求める問題 円の回転移動についての問題 多角形の回転移動についての問題 9

10.

実験手順 解法を考える(各5分) 各問題の解説動画を見てメモを取る(各10分) 類題を解く(各7分) 解法を口頭で説明 難易度などについてのアンケート 10

11.

実験手順 解法を考える(各5分) 解法の学習 問題の解説動画を見てメモを取る(各10分) 類題を解く(各7分) 解法を口頭で説明 難易度などについてのアンケート 11

12.

実験手順 解法を考える(各5分) 問題の解説動画を見てメモを取る(各10分) 類題を解く(各7分) 理解度測定 解法を口頭で説明 難易度などについてのアンケート 12

13.

実験 解説動画 著者が制作した解説動画を解法の学習に使用 作図の方法と計算方法について説明(約4分) 動画を視聴しながら, デバイス上に手書きでメモを取ってもらう 手書きメモ例 13

14.

実験 理解度の指標 理解度を測る指標 問題の正答率や解答時間 理解していなくても問題に解答することは可能 解法説明の正確性+アンケート 実験参加者自身が説明・難易度について回答して理解度を測定 14

15.

実験 説明の正確性 説明の正確性の有無 図形の半径や中心角などの答えを導くために重要な部分が, 正しく説明出来ているかどうか 解答の正誤にかかわらず, 説明時に間違いに気づき訂正した場合は正確性があると判断 15

16.

実験 アンケート 項目 解説動画を視聴した前後での理解度変化 類題を解いた際の難易度 など 正答率や説明の正確性などの客観的な指標 実験参加者自身による主観的な評価 16

17.

結果 除外対象 本実験内で解法を学習してもらう必要がある 除外対象 動画視聴前に解法を「全て分かっていた」と回答した人 動画視聴後に解法が「あまり理解出来なかった」と回答した人 分析対象 筆圧あり条件 筆圧なし条件 円の回転移動についての問題 18 名 20 名 多角形の回転移動についての問題 14 名 15 名 17

18.

結果 正答率・解答時間 筆圧あり条件の方が筆圧なし条件に比べて正答率が高いが, 解答時間に大きな差は無かった 問題ごとの正答率 問題ごとの平均解答時間 18

19.

結果 説明の正確性・アンケート 筆圧あり条件の方が筆圧なし条件に比べて説明の正確性が高い アンケートでも問題を容易に感じる割合が高い 説明の正確性があった人の割合 問題を簡単に感じた人の割合 19

20.

考察 理解度への影響 客観的指標(説明の正確性) + 主観的評価(アンケート) 両方から筆圧表現の有無による差が見られた 筆圧なし条件では筆圧あり条件に比べて 理解度が低下する可能性が示唆された 20

21.

考察 時間ごとの平均筆圧の推移 それぞれの条件で大きな傾向は見られなかったが, ほとんどの時間で筆圧あり条件の方が筆圧なし条件に比べて 平均筆圧値が高い 動画視聴前 動画視聴中 類題解答中 21

22.

考察 筆圧が強くなる傾向が見られた要因 意識的に「書く」という動作を行っていた可能性 実験後アンケート 筆圧について「とても意識した」「少し意識した」と回答 筆圧あり条件 14名,筆圧なし条件 3名 (各20名中) 22

23.

考察 筆圧が強くなる傾向が見られた要因 筆圧あり条件 筆圧なし条件 ある程度力を加えなければ 力を入れなくとも 薄い色の線が表示 常に濃い色で線が表示 23

24.

考察 筆圧が強くなる傾向が見られた要因 筆圧あり条件 筆圧なし条件 ある程度力を加えなければ 力を入れなくとも 薄い色の線が表示 常に濃い色で線が表示 意図しない箇所で薄い線が表示されないように 意識的に筆記を行っていた可能性 24

25.

展望 国語などの答えが一意に定まっていない課題に対する影響の調査 線の太さが筆圧によって変化することによる学習への影響の調査 小学生を実験対象者とすることによる影響の調査 25

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まとめ 背景:デジタル手書きにおいて筆圧の濃淡表現が無い場合がある 目的:筆圧が学習における理解に及ぼす影響を調査する 手法:タブレットとペンを用いて中学受験用問題を学習する 結果:正答率や説明の正確性が筆圧ありの場合に高くなった 展望:小学生への実験の実施 26