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June 18, 26
スライド概要
動物園や水族館は教育,研究,保全といった社会的役割を担っているが,ペンギンのように来訪者の観察が群れ全体を眺める俯瞰的なものになると,個体に着目することがなく,関心や共感が高まりにくい.我々はこれまで,ペンギンの腹部模様を来訪者が描画することで個体情報を検索するシステム「ペンさく」を開発し,都市型水族館での実証実験からその有用性を明らかにしてきたが,単一の水族館での検証であり,異なる展示環境において,本システムがどのような影響を及ぼすかは明らかになっていなかった.そこで本研究では,展示環境や来訪者層の異なる掛川花鳥園において,1週間の実証実験を行い,システムの利用ログ,現地での観察記録,来訪者の行動データをもとに,利用者の観察行動を分析した.その結果,システムの利用が同行者との共同的な観察体験や個体への継続した興味につながる可能性が示唆された.さらに,過去の実験結果との比較から,異なる展示環境においてもペンさくを通じた個体観察が成立し,反復的な利用が一定数生じることが示された.
明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 中村聡史研究室
ペンさく:ペンギン描画型個体識別支援システムの 異なる展示環境における実証と観察行動分析 2026.6.18-19|HCI218|オンライン 中川由貴 (明治大学) 中村聡史 (明治大学) 副島慎介 (掛川花鳥園)
背景 02 動物園・水族館は4つの役割を担う 娯楽 • • 動物園への訪問が保全知識や自己効力感, 行動意欲の向上につながる [1][2] • 動物園体験が自然とのつながりを促進する [3] 個体を識別することがその個体の 共感や保全行動につながる [4] 教育 研究 保全 [1] Clayton, S. et al. Public Support for Biodiversity After a Zoo Visit: Environmental Concern, Conservation Knowledge, and Self-Efficacy. Curator, 60(1), 87–100 (2017). [2] McNally, X. et al. A meta-analysis of the effect of visiting zoos and aquariums on visitors’ conservation knowledge, beliefs, and behavior. Conserv. Biol., 39(1), e14237 (2025). [3] Bruni, C. M. et al. The value of zoo experiences for connecting people with nature. Visitor Stud., 11(2), 139–150 (2008). [4] Smith, P., Mann, J. and Marsh, A.: Empathy for wildlife: The importance of the individual, Ambio, Vol. 53, No. 9, pp. 1269–1280 (2024).
背景 複数個体の展示による俯瞰した観察 • 個々の動物への関心は生まれにくい • 観察学習効果の低下 03
背景 04 バンドによる識別 複数個体の展示による俯瞰した観察 • 個々の動物への関心は生まれにくい • 観察学習効果の低下 • 既存の手法は, 個体情報を対応づけるのが 難しい 個体紹介
ペンさく 腹部模様を 描画 描画から 検索 Nakagawa, Y. and Nakamura, S.: A Drawing-type Observation and Retrieval Method Focusing on the Abdominal Pattern of Penguins, Proceedings of the 35th Australian Computer-Human Interaction Conference, OzCHI ’23, p. 24–32 (2024).
れもん!
先行研究 池 袋 ・ サ ン シ ャ イ ン 水 族 館 で の 実 証 07
先行研究 08 CHI2026 HCI216 水族館の一般来訪者を 対象とした実証実験 ログデータを用いた 実証実験での行動分析 同行者との 会話促進 滞在時間の増加 継続的な関心 展示前への 再来・再訪
先行研究 09 CHI2026 HCI216 水族館の一般来訪者を 対象とした実証実験 ログデータを用いた 実証実験での行動分析 同行者との 会話促進 滞在時間の増加 継続的な関心 展示前への 再来・再訪
先行研究 10 CHI2026 HCI216 水族館の一般来訪者を 対象とした実証実験 ログデータを用いた 実証実験での行動分析 同行者との 会話促進 滞在時間の増加 継続的な関心 展示前への 再来・再訪
先行研究 課題 11 単一水族館における実証に限られており,異なる展示環境において ペンさくがどのような影響を与えるか検証できていない 掛川花鳥園で実証実験を実施 過去の結果と比較しながらシステムの有用性と課題を明らかにする
実証実験 12 マシュー 施設との連携 • 掛川花鳥園から提供された全個体データをもとに 描画データセットを構築 • すべての個体の検索・参照を可能に 男の子。 誕生日は2012/4/10。 名前の由来は黒船のマシュー・ ペリーと同じ誕生日から。 茶々ちゃんのことが大好き。
実証実験 13 描画 図鑑 アルバム 腹部模様を描画→検索 個体を一覧形式で閲覧 検索した個体を記録・見返す
実験 静岡・掛川花鳥園での実証実験 14
実証実験 静岡・掛川花鳥園での実証実験 期間:2025/11/6-12 (1週間) 方法: • ペンさくの説明とQRコードを記載した掲示を設置 • 一般来訪者が利用している様子を観察し,メモに記録 15
結果・考察 利用者概要 • 期間中合計 180名 がシステムにアクセス • 16名 が 複数日 にわたり使用 • 42名 が 同日に複数回 アクセス 展示前に戻る・再訪する動機に 16
結果・考察 利用者概要 掛川花鳥園 サンシャイン水族館 118名 340名 複数日ユーザ数 16名 23名 同一日ユーザ数 42名 122名 利用時間(平均) 174.4秒 92.2秒 利用者数 17
結果・考察 18 利用者概要 掛川花鳥園 サンシャイン水族館 118名 340名 複数日ユーザ数 16名 23名 同一日ユーザ数 42名 122名 利用時間(平均) 174.4秒 92.2秒 利用者数 来訪者数に対する利用者数 は花鳥園の方が多い 花鳥園の方が 利用時間が有意に長い
結果・考察 20 利用形態 単独 32.6% 代表操作・共有 32.6% 個別操作・共有 代表操作・非共有 11.6% 16.3% 個別操作・非共有 2.3% 観察や検索結果を共有し,同行者と個体を確認する体験や会話につながっていた 通過・試触 4.7%
結果・考察 利用行動 35 30 セッション数 25 20 15 10 5 0 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 時刻 21
結果・考察 利用行動 ← 35 営業時間 22 → 30 セッション数 25 施設外での利用 20 15 10 5 0 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 時刻
結果・考察 描画・検索行動 • 総検索数230回(平均7.2秒, 5.8 ストローク) • 検索から特定まで至った割合28.3% • 検索しても特定できなかった割合1.3% 低負荷な描画操作 23
結果・考察 24 描画・検索行動 • 総検索数230回(平均7.2秒, 5.8 ストローク) 低負荷な描画操作 • 検索から特定まで至った割合28.3% • わからなかった1.4% 描画 検索 特定 この子だった
結果・考察 25 描画・検索行動 • 総検索数230回(平均7.2秒, 5.8 ストローク) 低負荷な描画操作 • 検索から特定まで至った割合28.3% 23 • わからなかった 1.4% 件 数 7 7 5 検索結果の順位分布 6 5 2 1 2 3 4 5 6 1 7 8 2 9 2 10 11 12 0 0 13 14 15 16 1 1 17 18 (位)
結果・考察 描画・検索行動 • 総検索数230回(平均7.2秒, 5.8 ストローク) 低負荷な描画操作 • 検索から特定まで至った割合28.3% • 検索しても特定できなかった割合1.3% 両施設において,描画型インタラクションが低負荷な識別手法として機能 候補同士を比較しやすくする表示方法やUI設計が必要 26
結果・考察 行動メモ分析 01 既存の展示と組み合わせた観察 ・図鑑画面と施設内の家系図掲示を見比べながら会話する様子 02 個体の記憶や関心への効果 新しい発見につながった ・長時間にわたる観察 03 ペンギンの名前を覚えやすく, ペンギンのコアなファン層の利用 ・ペンバザ参加者 ・サンシャイン水族館でも利用経験のあるユーザ 27
今後 28 課題・今後の展望 掲示を読むものの 通信状況が悪く 検索精度が低く アクセスしない人 利用を諦める人 正解がわからない UIの改善 オフラインでの 検索アルゴリズム 常設端末 利用を可能に の改善 長期・複数施設 での実証実験 動物福祉や 教育への影響を調査
まとめ 背景|動物園・水族館における個体に着目した観察の必要性 提案|ペンギンの模様を描画・検索する観察システム 実験|掛川花鳥園で実証実験,サンシャイン水族館での結果との比較 結果|継続的な関心や共同的な観察体験につながる可能性 今後|長期・複数施設での実証実験・動物福祉への貢献