ドレミハンドル: 操舵角に応じた音提示による運転支援システムの提案

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December 06, 21

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ドレミハンドル: 操舵角に応じた音提示による運転支援システムの提案

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明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 中村聡史研究室

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1.

ドレミハンドル 操舵角に応じた音提示による 運転支援システムの提案 明治大学3年 松田 さゆり 中川由貴 船﨑友稀奈 細谷美月 松山直人 中村聡史 小松孝徳 (明治大学) 鳥居武史 澄川瑠一 高尾英行 (株式会社SUBARU)

2.

運転には様々な場面がある • 右折・左折 • 停止 • 高速道路 • 合流 • カーブ • 駐車 • 追い越し • 停止 • 細い道 など 1

3.

運転には様々な場面がある • 右折・左折 • 停止 • 高速道路 • 合流 ←着目 • カーブ • 駐車 • 追い越し • 停止 • 細い道 など 2

4.

カーブ:ハンドル操作が難しい ! 先が見えづらい ハンドルを回す 量、タイミングが 感覚的 感覚を掴むには経験が必要 → 慣れるまでに運転が怖くなる可能性 3

5.

研究背景:運転の苦手な項目 400 350 334 300 250 200 199 213 179 150 100 自分は運転が苦手であると 回答した632人中 334人(52%)が ハンドル操作にチェック 50 0 ハンドル ブレーキ アクセル その他 Yahoo!クラウドソーシング 運転免許を保有する男女 2000 人対象 4

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研究背景:運転の苦手な項目 400 350 334 300 250 200 150 100 199 運転が苦手な人は 苦手と回答した632人中 213 179 特にハンドル操作が苦手 334人(52%)が と感じている ハンドル操作にチェック →カーブ難しい 50 0 ハンドル ブレーキ アクセル その他 5

7.

目的 運転初心者が 難易度の高いカーブ走行を できるだけ早く把握、習得することを 支援する 6

8.

支援方法:人に指導してもらう 指導してくれる 人がいない 適切に指導 できるか不安 時間が合わない 不満 7

9.

支援方法:人に指導してもらう 指導してくれる 人がいる とは限らない 時間が合わない システムによる支援 適切に指導 できるか不安 不満 8

10.

支援方法:視覚 情報を見るために視点を動かす必要がある 運転中は常時視覚を多用している 9

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支援方法:聴覚 • 視覚を主に使用するタスクにおいて、 聴覚掲示によって認知的負荷を軽減[岩田ら 2009] • 運転中、報酬音が鳴る聴覚刺激により、 車両行動を安定化[澄川ら 2021] • メロディーロードの設置によって、 平均速度を遅くさせた[芳野ら 2008] 視点を動かす必要がなく 認知的負荷が小さいと考えられる 聴覚情報に着目 10

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支援方法:聴覚 単純に数値を音声で掲示 運転動作自体に注力している時には望ましく無い ただいまの操舵⾓23度です ただいまの操舵⾓25度です ただいまの操舵⾓27度です : 11

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支援方法:聴覚 単純に数値を音声で掲示 運転動作自体に注力している時には望ましく無い 感覚的にわかるよう伝えたい ただいまの操舵⾓23度です ただいまの操舵⾓25度です ただいまの操舵⾓27度です : 12

14.

支援方法:聴覚 音を使って、感覚的に伝えられること 音階の変化 13

15.

支援方法:聴覚 音階の変化方法 ・連続的に変わる 不快に感じやすい 音階のレベルが分かりにくい ・段階的に変わる 馴染みがある 音階のレベルが分かりやすい 14

16.

支援方法:聴覚 音階の変化方法 ・連続的に変わる 不快に感じやすい 音階のレベルが分かりにくい ・段階的に変わる 馴染みがある 音階のレベルが分かりやすい 15

17.

提案手法「ドレミハンドル」 ドレ ♬ ミ ♪ ファ ソ ラ シ ド 16

18.

提案手法「ドレミハンドル」 ドレ ♬ ミ ♪ 操舵角に応じた音階の ファ ドレミ音が鳴る ソ ラ 角度を音階で表現 シ ド 操舵角を 感覚的に伝えられる 17

19.

仮説 ドレミハンドルを使用すると、 使用しない場合より、カーブ走行の 修正舵回数がより減少する ハンドルの切り足し、 戻しにより、 操作量を微調整すること 修正舵が多い ・・・乗り心地が悪い 18

20.

実験 ドレミハンドルを実装した ドライビングシミュレータ上で 運転を行ってもらう ドレミハンドルを 使用した場合と使用しない場合で比較 実験協力者は 大学生26名(男性:22名 女性:4名) 19

21.

実験:概要 直線50m→カーブ100m→直線50m の全長200m 道幅5m カーブ半径64m 角度 90度 左右それぞれ20試行ずつ音の有無を変え、走行 20

22.

実験:概要 実験後にアンケートを実施 • ドレミハンドルの有無による カーブの曲がりやすさ(5段階評価) • ドレミ音が鳴る場合に どのようなことを意識したか(自由記述) • どんな状況でドレミハンドルを使用したいか、 したかったか(自由記述) 21

23.

実験:実験用システムの実装 実験情報 実験管理者 PC 操作量 22

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実装:「ドレミハンドル」 操舵角0度:「ド」 操舵角90度:1オクターブ高い「ド」 ミ ファ ソ ラ レ ド ド レ ミ ファ ソ ラ シ シ ド ド23

26.

結果 週に1回以上運転している人 →「高頻度運転者」 それ以下の頻度で運転している人 →「低頻度運転者」 本実験では 高頻度運転者9名 低頻度運転者15名 25

27.

結果:評価指標 • 修正舵回数 操舵角の微分値の正負が変わったタイミング 最も上手なカーブ走行でも、1回はカウント • 1試行あたりのハンドル操作量 • 平均速度 26

28.

結果:修正舵回数 全長 協力者全体 低頻度 高頻度 ドレミハンドル 通常ハンドル 27

29.

結果:修正舵回数 9-12試行にかけてドレミハンドルの方が 修正舵が少なくなる傾向 全長 協力者全体 低頻度 高頻度 ドレミハンドル 通常ハンドル 28

30.

結果:修正舵回数 カーブ中 協力者全体 低頻度 高頻度 カーブ後 29

31.

結果:修正舵回数 低頻度運転者:1-12試行で カーブ中の修正舵が減少する傾向 カーブ中 協力者全体 カーブ後 ドレミハンドル 通常ハンドル 低頻度 高頻度 協力者全体: カーブ後の修正舵が 減少する傾向 30

32.

考察:「ドレミハンドル」メリット① 音階変化 段階的、ある程度間隔がある 現在の操舵角(絶対的) どれくらいまで回しているのか(相対的) を把握しやすい 31

33.

考察:「ドレミハンドル」メリット② 上手なカーブ走行のためには どの音階になるまでハンドルを回せば良い のかわかる ファまで回せばいいのか 32

34.

考察:「ドレミハンドル」メリット③ 修正舵を認識、意識しやすくなる 音変わってしまった! 33

35.

考察:修正舵回数 分散分析の結果(有意水準5%) 試行全体の有意差は見られなかった 1-4試行(20試行のうちはじめの方) →まだドレミハンドルに慣れておらず、 走行の仕方に差が出ない 17-20試行(20試行のうちおわりの方) →集中力が切れる 34

36.

考察:修正舵回数 影響の個人差 どのような傾向の人に効果があるのか →今回の評価軸ではわからなかった 35

37.

結果:ハンドル操作量 試行回数を重ねた際には差がなかった 全長 低頻度運転者:はじめの試行での操作量の増加 36

38.

考察:ハンドル操作量 低頻度運転者:はじめの試行での操作量の増加 →まだ音に慣れず混乱 高頻度運転者:大きな変化は無かった →上手に走行できるドレミ音を把握し、 それに合わせようとハンドル操作をしてしまう 可能性も考えられたが、そうはならなかった 37

39.

結果:平均速度 38

40.

結果:平均速度 低頻度運転者: ドレミハンドル使用により平均速度が遅くなる 39

41.

考察:平均速度 低頻度運転者:平均速度が遅くなる →ドレミ音が鳴ることで、 ハンドル操作により注力しようとした可能性 40

42.

実験後アンケート結果:曲がりやすさ ドレミハンドルを使用している方が曲がりやすい という有意差があった 曲がりやすさ評価(5段階) 5 ∗ 4.5 4 3.5 3 2.5 2 1.5 1 ドレミハンドル 通常ハンドル 41

43.

実験後アンケート結果:曲がりやすさ ドレミハンドルの使用によって、 数値では修正舵の抑制につながらなかった場合も、 主観的な運転のしやすさに繋がったと考えられる 修正舵回数での分析が適切でなかった可能性 42

44.

実験後アンケート結果:意識したこと • 音階の目安を見つけた • 音階変化のリズムを一定 • 運転より音を合わせることに 意識が向いた 43

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考察:実験後アンケート結果 ドレミハンドルを使用すると 音に注意が向き、運転操作自体の集中力が 下がってしまう人もいる 集中力を下げないような音のデザイン 44

46.

今後の課題と展望 特に低頻度運転者において ドレミハンドルの使用により 修正舵回数の減少傾向が見られた 試行全体を通しての有意差は無かった 実験の再設計 (慣れ、集中力の考慮) 45

47.

今後の課題と展望 エンジンブレーキの感度が悪い より実車に近い環境へと改善していく予定 46

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まとめ 目的:運転初心者にカーブ走行を できるだけ早く把握、習得させる 手法:ドレミハンドル 結果:修正舵回数が減少する傾向は見られたが、 有意差は無し 展望:実験の再設計 (まだ慣れていない試行、飽きの考慮) 47