コミックにおける読者依存性の高い地雷表現回避手法の実現

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August 23, 22

スライド概要

コミックは多種多様であるため,読者にとって好みの描写もあれば,苦手な描写もある.作品のメインではない一部分に苦手な描写が出現する場合,そこだけを飛ばすことができればその先も読み続けることができるが,その表現を読んで読書を止めてしまう可能性もある.そこで我々は,読者が苦手な描写を気にすることなくコミックを鑑賞するための手法を提案する.また,本研究ではその手法を実現するため,コミックを読みながら手軽に読者が任意の苦手な表現についてフラグを付与することができるシステムを開発し,データ収集実験を行った.実験の結果,実験協力者によってフラグの内容に個人差はあるもののある程度フラグが重複することが明らかになった.さらに,知見をもとにしたプロトタイプシステムを実装し,簡易的な利用実験を行うことで利用可能性を検討した.利用実験の結果,読書への没入感をなるべく損なわない予告方法にするといったシステムの改善点が明らかになった.

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明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 中村聡史研究室

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関連スライド

各ページのテキスト
1.

コミックにおける読者依存性の高い 地雷表現回避手法の実現 伊藤理紗 中村聡史

2.

背景 • 人は様々な苦手意識をもつ • コミックでは日常生活よりも苦手なものに遭遇しやすい • 突然苦手な表現がでてくると、読書意欲が 低下する恐れがある

3.

読者依存性の高い地雷 SNSなどで苦手な表現を「地雷」と呼ぶことがある 読者依存性の高い地雷とは 読者の苦手意識によって不快に感じて受け入れられず、 読むのを避けてしまう描写 作者が意図して描いている描写であり、 モザイクなどの表現を規制する手法は適していない

4.

本研究の対象 タイトルなどから推測しにくい一部の場面で登場するもの タイトルから虫が出てくるとわかる →虫が苦手な人は読むのを避けることができる ©漆原友紀 2000

5.

本研究の対象 タイトルなどから推測しにくい一部の場面で登場するもの ジャンルや説明文:ダークファンタジー →グロテスクなものなどが苦手な人は 読むのを避けることができる ©つくしあきひと2013

6.

本研究の対象 タイトルなどから推測しにくい一部の場面で登場するもの 些細なシーンで虫が登場する →読む前に登場を推測できない ©笠原真樹 2014

7.

本研究の対象 タイトルなどから推測しにくい一部の場面で登場するもの メインの内容 ©漆原友紀 2000 対象外 ジャンルから 推察できるもの ©つくしあきひと 2013 対象外 メインとは 関係のない一部 ©笠原真樹 2014 対象

8.

目的 読者依存性の高い地雷を気にすることなく コミックを読めるようにする!

9.

関連研究 嫌悪刺激を予測可能な場合、不安を誘発する可能性が低い [Schmitz 2012] リスク情報の提示で受容性が高まる [Ono 2019] コミックの地雷に関する情報を提示し予測可能にすることで 不安を軽減したり受容性が高まったりするのでは?

10.

提案手法 地雷をもつ人にフラグを付与してもらい、 その情報を集約して推定し地雷の位置と存在を予告する 次のペー ジの の位置に 地雷(虫)が含まれています

11.

本研究の流れ 地雷フラグ付与実験 -どのようなフラグが付与されるか -フラグが実験協力者間で重複するか プロトタイプシステムの簡易利用実験 -実験で収集した地雷フラグを用いて フラグ付与と予告が可能なプロトタイプシステムを実装 -システムの改善点を明らかにする

12.

地雷フラグ付与実験

13.

実験用フラグ付与システム • Google Chromeの拡張機能として実装 • 既存のコミックビューアサービスに付随する形で使用 • 作品名やページ数をシステム側で取得

14.

実験用フラグ付与システム 血、けがの描写が苦手な方はご注意ください ©2020 吉野マト

15.

地雷フラグ付与実験 目的:フラグの内容やフラグが実験協力者間で重複するか 明らかにする 対象作品:少年ジャンプ+の読切 / 連載作品第一話 実験協力者:大学生、大学院生13名

16.

地雷フラグ付与実験 コミックを読みながら地雷フラグを付与してもらう 1作品読むごとにアンケートに回答してもらう ・作品名 ・地雷フラグを付与したかどうか ・地雷フラグを付与した描写が苦手に感じた理由

17.

フラグ付与実験:結果 実験協力者2 名が付与したフラグ 「描写があっていない」「絵が苦手」など →本研究における地雷に沿ったものではない 分析対象から除外し、11名の地雷フラグを分析した

18.

付与されたフラグ

19.

付与されたフラグ • グロテスクな描写などに関するものが多い →嫌悪感情や不快感情を抱くとされているもの • 親の結婚催促、手作りの食事をわざと捨てるなど →読者によってはさほど嫌悪感を覚えないであろうもの

20.

重複したフラグ 2名以上から読まれていた作品:96作品 2名以上からフラグを付与されていた作品:19作品 同じ作品の同じ箇所に2名以上が似たフラグを付与 →7作品、13か所あった

21.

重複したフラグ(抜粋)

22.

重複したフラグ • ある程度読む作品やフラグは重複した • 同じ内容について実験協力者によって表記ゆれがあった - 既に付与されているフラグを候補として提示する - 登録および予告されるフラグを限定する

23.

プロトタイプシステム 簡易利用実験

24.

プロトタイプシステム 地雷フラグの付与と地雷箇所の予告が可能なシステム 改善点を明らかにするため、2名に使ってもらい 感想を回答してもらった 付与可能なフラグを限定 • グロテスク • いじめ • 虫 • 動物(動物がひどい目にあうもの) • 性的なもの • 痛そう(痛そうに見えるもの)

25.

プロトタイプシステム 血、けがの描写が苦手な方はご注意ください ©2020 吉野マト

26.

ポジティブな感想 事前に自分の地雷を知れるから心構えができる フラグ付与の手順が簡単で気軽に付与できる

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ネガティブな感想 予告される地雷が多すぎる場合は 毎度別ウィンドウが出てきて集中できなくなる ちょっと読むテンポが阻害されてしまうのかなあ という印象でした

28.

読書体験を阻害してしまった原因 • グロテスクなど、地雷フラグの範囲が広かった • 1人でもフラグを付与していれば予告を行っていた →予告される回数が多くなってしまった • 予告画面のデザインがコミックのレイアウトや 世界観と大きく異なっている →没入感が損なわれてしまった

29.

展望 • 予告の基準を検討 • 没入感を損ないにくい予告画面を検討 • 対応サービスの拡大 実験協力者を増やして長期的な利用実験を実施 →システムの実用性や予告による影響を調査

30.

まとめ 大目的 コミックの苦手な描写(地雷)を 気にせず読めるようにする 提案手法 地雷にフラグを付与してもらい 存在と位置を予告する 実験①:フラグ付与実験 →グロテスクなものが多い →ある程度重複する 実験②:簡易利用実験 →心構えができる →予告が多すぎると読書の邪魔 展望 予告基準や予告画面の検討および修正 長期利用実験を行い、実用性や予告の影響調査