プロダクトゴールとは?あるいはプロダクトのゴールを設定するには何が必要か? #RSGT2022

144.6K Views

January 05, 22

スライド概要

#RSGT2022 で発表した「プロダクトゴール」についての講演資料です。
内容についてのご質問や支援のご依頼はお気軽に連絡ください。

【訂正】スライド32の市場に出すまでの時間(T2M)とイノベーションの能力(A2I)の指標の例が逆になっていました。

profile-image

サーバントワークス株式会社 代表取締役/アジャイルストラテジスト/アジャイルコーチ/エバンジェリスト DASA Ambassador DASA DevOps 認定トレーナー 株式会社Helpfeel アドバイザー 講演や支援のご相談はぜひお気軽に(ご相談は無料です)! PSPO II, PSM II, SPS, PAL-EBM, PAL I, PSU I, PSK I, PSD I, PSPO I, PSM I, CSM

シェア

またはPlayer版

埋め込む »CMSなどでJSが使えない場合

(ダウンロード不可)

関連スライド

各ページのテキスト
1.

プ ロ ダ ク ト の ゴ ー ル を 設 定 す る に は 何 が 必 要 か ? あ る い は プ ロ ダ ク ト ゴ ー ル と は ? Regional Scrum Gathering Tokyo 2022 #プロダクトオーナーシップと商売 Tomoharu Nagasawa

2.

概要 経験的なゴールの設定と計測 確約 プロダクト ゴール EBMによる 設定と計測 プロダクトバックログ スプリントゴール インクリメント みなさんの正解に近づけるきっかけになりたい © 2022 NAGASAWA, Tomoharu

3.

⾃⼰紹介 ⻑沢 智治 NAGASAWA, Tomoharu サーバントワークス株式会社 代表取締役 NOTA株式会社 アドバイザー @tnagasawa © 2022 NAGASAWA, Tomoharu DASA アンバサダー

4.

確約 Commitment © 2022 NAGASAWA, Tomoharu

5.

世界は変わった。誰も戻ることはできない。 ベストを尽くすことしかできない。 時にはベストというのは、やり直すことだ。 The world has changed. None of us can go back. All we can do is our best and sometimes the best that we can do is to start over. Margaret Carter © 2022 NAGASAWA, Tomoharu

6.

何としてでも Whatever it takes. Natasha Romanoff, Steve Rogers © 2022 NAGASAWA, Tomoharu

7.

経験主義の柱とスクラムの価値基準 経験主義の柱 スクラムの価値基準 確約 透明性 勇気 集中 スクラム 適応 検査 尊敬 公開 引⽤: The Scrum Values (翻訳: ⻑沢智治、原⽥騎郎) © 2022 NAGASAWA, Tomoharu

8.

スクラムの作成物 序 列 バックログ プロダクト バックログ TODO DOING スプリント バックログ 透明性 © 2022 NAGASAWA, Tomoharu DONE インクリメント

9.

スクラムの確約 プロダクトゴール のための 序 列 スプリントゴール プロダクト バックログ を満たす のための バックログ TODO DOING DONE スプリント バックログ • 各作成物には、透明性と集中を⾼める情報が必要 • 確約により進捗を測定 © 2022 NAGASAWA, Tomoharu 完成の定義 インクリメント

10.

確約と予測 プロダクトゴール 価値 完成の定義 を満たす インクリメント スプリントゴール 時間 スプリント(タイムボックス) © 2022 NAGASAWA, Tomoharu

11.

スクラムのイベント(検査と適応)と確約・作成物(透明性) イベント スプリントプランニング 検査 適応 プロダクトゴール スプリントゴール バックログ TO DO DOI NG DO NE デイリースクラム スプリントゴール スプリントバックログ スプリントレビュー プロダクトゴール 次の プロダクトバックログ インクリメント スプリント レトロスペクティブ 完成の定義 スプリントゴール バックログ © 2022 NAGASAWA, Tomoharu TO DO DOI NG DO NE 次の スプリントバックログ

12.

プロダクトゴール Product Goal © 2022 NAGASAWA, Tomoharu

13.

踏み出す⼀歩は⼤きくなくていい、 ただ⽅向さえ正しければ The steps you take donʼt need to be big. They just need to take you in the right direction. Jemma Simons © 2022 NAGASAWA, Tomoharu

14.

プロダクトゴール from 『スクラムガイド』(2020年11⽉) 本⽂で15回⾔及(ゴールについては40回) プロダクト(対ステークホルダー) • プロダクトの将来の状態であり、 計画のターゲット • POが策定し、明⽰的に伝達 スクラムチーム • ⼀度に⼀つの⽬的に集中 • ⻑期的な⽬標で、 次の⽬標に移る前に達成か放棄 • インクリメント: 具体的な踏み⽯ • スクラムイベント プロダクトゴールを達成するために必要な作業は、スプリント内で⾏われる • スプリントプランニング: 実施するPBIとプロダクトゴールとの関連性を話し合う • スプリントレビュー: プロダクトゴールに対する進捗について話し合う © 2022 NAGASAWA, Tomoharu

15.

全員の関⼼ごと ⽬指すもの 期待するもの プロダクトゴール 実現するもの プロダクトバックログ スクラムチーム インクリメント 序 列 ステークホルダー スプリントゴール スプリントバックログ スプリント © 2022 NAGASAWA, Tomoharu 完成の定義

16.

ステークホルダーとの共通認識と期待値管理 ❶ 最上位の期待値 ⽬指すもの 期待するもの プロダクトゴール 実現するもの プロダクトバックログ スクラムチーム インクリメント 序 列 ステークホルダー スプリントゴール ❸ 次の価値の アイデアを検討する © 2022 NAGASAWA, Tomoharu スプリントバックログ スプリント 完成の定義 ❷ 新たな価値を ⽬の当たりにする インクリメントは プロダクトゴールへの踏み⽯

17.

PBIの受け⼊れフロー(参考) アイデアを持っているか 何を欲しているか なぜそれを欲しているか WHY が明確か WHAT が明確か アイテムを捨てましょう 時間をムダにしないこと © 2022 NAGASAWA, Tomoharu プロダクト ゴールに貢献 するか 付加価値 があるか PBIとして 追加する リファインメント の議題に載る 引⽤: Product Backlog Refinement Flowchart by Stephan van Rooden, 2015

18.

プロダクトゴール: プロダクトビジョンへの踏み⽯ • 検証可能な仮説 • 市場に反応した結果を提⽰ 機能 スプリント計画 • 作業や機能の抽象化・正当化 • 共通の認識 Visi o n Va lue Va lid at io n • マーケットや社会課題で駆動 リリース計画 • 意図を伝える • 解決策を伝える ビジョン プロダクト戦略 • 達成判断が可能なゴールを設定 プロダクトゴール • 計測できる • 順序づけられる © 2022 NAGASAWA, Tomoharu

19.

プロダクトビジョン: プロダクトへの重要な4つの質問(参考) 我々のプロダクトは何か? What is our product? © 2022 NAGASAWA, Tomoharu 我々のプロダクト でないものは何か? What is our product, not? 我々のプロダクト を構成するものは何か? 我々のプロダクト は何の⼀部なのか? What are parts of our product? What is our product part of?

20.

プロダクトゴールとロードマップ ❸ • 明⽰されているもの(FAST、もしくは SMART) • ステークホルダーとスクラムチームで共有 ❷ • 1度に⽬指すものは、たった1つ • プロダクトゴールを達成したときか、破棄した時に 次のプロダクトゴールを選択できる • スプリントごとに近づいているかを検査 • 主にスプリントレビューで検査 • 計測できなければならない(EBM、HEART) © 2022 NAGASAWA, Tomoharu ❶

21.

プロダクトゴールの例 プロダクトビジョン ⽇本で「オンラインどら焼き店」のNo.1になる ❸ スマホアプリとそのアプリストア展開で、 オンラインでの存在感を拡⼤する ❷ ⽣産と配送の能⼒を増強し、 ⽇本国内の顧客に販売できるようにする ❶ ⾦沢の顧客に販売できるウェブサイトを⽴ち上げる © 2022 NAGASAWA, Tomoharu

22.

プロダクトゴールの性質: FAST Frequent discussions 頻繁な議論に着⽬すること Ambitiously 野⼼的に設定すること Specific metrics 具体的な指標を計測すること Transparent 透明性を確保すること © 2022 NAGASAWA, Tomoharu

23.

プロダクトゴールのフォーマット 我々のプロダクトビジョンである[ビジョン]に到達するために、 [具体的な課題]を克服しなければならない。 [ゴール]を達成することで、我々は適切な⽅向に進むことができ、 それは[指標]が[現在の値]から[⽬指すべき値]になることで⽰される。 [プロダクト]は、[ゴール]を達成するために設計された。 我々は、プロダクトが[ゴール]を達成していないことを観察しており、 それが我々のビジネスに[具体的な悪影響]を引き起こしている。 どのようにすれば[プロダクト]を改善し、[計測可能な基準]に基づいて、 顧客がより成功することができるだろうか? © 2022 NAGASAWA, Tomoharu

24.

プロダクト戦略キャンバス ビジョン 会社や部⾨がどこへ向かおうとしているのかという、⾼尚で未来に向けたゴールである。⻑期的に考える。 10年 時間枠 Uber 以内 に、 会社や部⾨名 は 、 自動車や公共交通機関を利用するより 安価な代替手段になること を成し遂げる ビジョンステートメント チャレンジ ビジョンに向かって最初に取り組むべき⼤きなゴール。プロダクトのライフサイクルに関連するユーザージャーニー、理想的な状態、⽬的、KPIなどの観点で考える。 ビジョンを実現するために は、 2018年1月末 までに、 時間枠 主要都市での待ち時間を 5分以内 にする必要がある 計測できる⽬標 ターゲットの状態 現在の状態 チームが今⽇から検討を始められるくらい⼩さくて計測可能な⽬標である。 ターゲットとする状態に対して現在の状態はどうであるか。 チャレンジを達成するためには、まず以下が必要: 2017 年1月末までに、各都市で50人に1人以上の ドライバーを確保する 計測可能な⽬標 © 2022 NAGASAWA, Tomoharu 計測の結果、以下の状態であることがわかった: 平均して300人に1人のドライバーがいる 現在の状態の指標 引用「Product Strategy Canvas」by PRODUX labs を基に作成

25.

EBMとプロダクトゴール Product Goal with EBM © 2022 NAGASAWA, Tomoharu

26.

⼤いなるチカラには、 ⼤いなる責任が伴う With great power comes great responsibility. May & Ben Parker © 2022 NAGASAWA, Tomoharu

27.

予測したとおりの未来はやってこない ゴール 開始の状態 • 変化する前提でゴールを設定 • 事実(エビデンス)に基づく計測 • 観察による意思決定 © 2022 NAGASAWA, Tomoharu 予測主義によるマネジメントから 経験主義によるマネジメントへ

28.

ビジネスとプロダクトの価値と検証 アウトプット ⾏ フ ド ロ ー ー リ 遅 標 指 イ タ ム アクティビティ チーム 顧客 インプット アウトカム ミ ⾏ 標 指 先 © 2022 NAGASAWA, Tomoharu T2 L ッ シ ョ ビジネス インパクト ミッ ン ョ シ ン 顧客 インパクト

29.

エビデンスベースドマネジメント(EBM) • 経験主義に基づくマネジメントフレームワーク • 不確実な条件下で、成果や組織能⼒を継続的に改善 • 戦略的ゴールへの道筋を模索するためのもの • 意図的な実験とエビデンス(指標)を⽤い、 組織のゴールの洗練と組織能⼒の体系的な改善が可能 • ゴールと次のステップを検査し、適応する ゴール | 重要価値領域 © 2022 NAGASAWA, Tomoharu | 実験ループ

30.

ビジネス価値: EBMの重要価値領域(KVA) 市場価値 実現できる 可能性のある 付加価値とは? 未実現の価値 UV 現在の価値 CV 現在、組織が どのような価値を 提供しているのか? アジリティ ビジネス価値 組織は価値の 改善にどれくらい 効果があるのか? イノベーション の能力 A2I 市場に出す までの時間 © 2020 Scrum.org. All Rights Reserved. T2M 新しい価値提供に どれくらいの時間が かかるのか? 組織的な能力 © 2022 NAGASAWA, Tomoharu 引用「エビデンスベースドマネジメントガイド」(翻訳: 長沢智治、角征典)

31.

ビジネスとプロダクトの価値と検証 市場に出す までの時間 アウトプット T2M ⾏ フ ド ロ ー ー リ 遅 標 指 イ タ アクティビティ ム イノベーション の能⼒ A2I チーム インプット ⾏ 標 指 先 © 2022 NAGASAWA, Tomoharu T2 L 顧客 未実現の価値 現在の価値 アウトカム UV CV ミ ッ シ ョ ビジネス インパクト ミッ ン ョ シ ン 顧客 インパクト

32.

EBM: 重要価値指標(KVM) 未実現の価値(UV)の指標 現在の価値(CV)の指標 • 従業員1⼈あたりの • 従業員満⾜度 • 市場占有率 収益 • 顧客満⾜度ギャップ • 望ましい顧客体験や満⾜度 市場に出すまでの時間(T2M)の指標 • プロダクトコスト イノベーションの能⼒(A2I)の指標 • 顧客サイクルタイム • イノベーション率 • 平均修復時間 • リードタイム • オンプロダクト指標 • ピボットまでの時間 • 技術的負債 © 2022 NAGASAWA, Tomoharu • 顧客使⽤指標 ⽐率 • リリース頻度 (MTTR) • 顧客満⾜度 • 変更失敗率

33.

EBMにおけるゴール 即時戦術ゴール • 短期⽬標 • 中間ゴールに 中間ゴール • • 戦略的ゴールへの 進捗を⽰せる⽬標 • 向けた取り組み • 戦略的ゴール チームの⽬標 組織の達成したい 重要な⽬標 不確実性はあるが、 • 不確実で不確か 不確かでもない • 経験主義が必要 • 実⽤的な ターゲットが必要 © 2022 NAGASAWA, Tomoharu • 症状の切り分け • 治療⽅法の評価 • NDA配列の調査 • • ワクチン治験の成功 病気の影響の根絶 • 感染者数 • 重症者数

34.

エビデンスベースドマネジメント(EBM)とプロダクトゴール 指標 仮説 戦略的ゴール 実験と計測 実験ループ 中間ゴール 適応 検査 現在の状態 プロダクト ゴール プロダクト ゴール 即時戦術ゴール 開始の状態 時間 © 2022 NAGASAWA, Tomoharu 引用「エビデンスベースドマネジメントガイド」(翻訳: 長沢智治、角征典)

35.

プロダクト「サノス」 PRODUCT THANOS • 社会課題: ⼈⼝増加、資源枯渇問題 • テーマ: SDGs • 戦略的ゴール: 全宇宙の⼈⼝を半分にする • 制約: 無作為であること プロダクトビジョン: そうだ、サノスに解決してもらおう(雑) プロダクトゴール スプリントゴール • 中間ゴール: インフィニティ・ストーンを6つ集める • 確かに存在するが、所在と⼊⼿⽅法は不明 • 即時戦術ゴール: • インフィニティ・ガントレットを作らせる • インフィニティ・ストーンを捜索し、⼿に⼊れる PRODUCT INFINITY GUANTLET プロダクトビジョン: 願いを叶えるアイテムを実現しよう(雑) プロダクトゴール • …… PRODUCT STONE SEARCHER プロダクトビジョン: © 2022 NAGASAWA, Tomoharu

36.

まとめ プロダクトゴール 特徴 • スクラムチームとステークホルダー • 共通認識・意思疎通 • 注意点 • スコープを固定するものではない • ⾝勝⼿や⾔い訳を正当化するものではない • ⾏く先を⽰す • 意図を明確にするもの • ビジョンへの踏み⽯ • プロダクトバックログから 抽象化して設定しないこと • 適当に設定して、煙に巻くものではない • 設定し、計測する • 予算を通すためにとりあえず設定 • 達成 or 放棄 • なんとなくで⼤まかに設定 確約 • ⼀度決めたら⾒直さないものではない • 集中と透明性を引き出す • 常に指標を計測して検査・適応 • 勇気をもって建設的に貫く • ゴールと価値指標はEBMを参考に © 2022 NAGASAWA, Tomoharu

37.

情報リソース • スクラムガイド: https://bit.ly/3f0f2D3 • EBMガイド: https://bit.ly/3sOfIU0 • スクラムのホワイトペーパー: https://bit.ly/3eKju8H • The Scrum Values: https://bit.ly/3sZvGKS • プロダクトゴールに関する翻訳記事: https://bit.ly/3EKDVwJ • EBMに関する翻訳記事: https://bit.ly/3Jv3SnL © 2022 NAGASAWA, Tomoharu

38.

協賛 アジリティに関する導入・定着化支援サービス、研修サービスを提供いたします servantworks.co.jp ご参加くださり、誠にありがとうございました © 2022 NAGASAWA, Tomoharu

39.

サーバントワークス株式会社 © 2022 NAGASAWA, Tomoharu