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April 16, 25
スライド概要
GDCに初めて行ってきたときのことをIGDA主催のGDC報告会で発表しました。
ゲームデザイントラックについて語っています。
https://www.igda.jp/2025/03/14/15388/
他の登壇者の方のスライドはこちら
https://www.igda.jp/2025/04/13/15435/
■All Time Video Game Otaku ■Game Designer / ゲーム開発の研究家 ■1991年生 ■ゲームデザイン、ゲーム史、学術研究、開発者教育 ■CEDEC2024ゲームデザイン部門企画委員 ■日本デジタルゲーム学会No.486 ■レトロコンシューマ愛好会No.998 ■ゲーム保存協会会員 ■アイコン: @nitokiyoshi
ゲームデザイン報告 現地で感じた Designトラックの傾向とオススメ フリーランス ゲームデザイナー 知久 温(Chiku Atataka) 2025年4月12日
自己紹介 • 知久温(ちく・あたたか) • 本名です! • Xでは「テトラポッド葉山」 • ゲームデザイナー (プランナー) • 専門:レベルデザイン、プロトタイピング、アカデミックとの接続 • タイトル • モンスターハンターフロンティア • ドラゴンクエストXI • 魂斗羅ローグコープス • FOAMSTARS • その他のフリーランス活動 illustrated by 弐藤潔 @nitokiyoshi • CEDEC2024~ ゲームデザイン部門 委員 • 『レベルデザインの教科書(仮)』翻訳協力 • 東京国際工科専門職大学 講演 GDC2025 ゲームデザイン報告 2
本日の内容 1.自己紹介 2.ゲームデザイントラックの概要 3.今年のDesignトラック分析 4.おすすめセッションの紹介 5.現地で感じたこと 6.まとめ GDC2025 ゲームデザイン報告 3
ゲームデザイン トラックの概要 4
GDCのゲームデザイン関連セッションの探し方 • 今回が初GDC!まずは何を見るか計画 • 公式サイトのSession Viewerを閲覧 • https://schedule.gdconf.com/sessions • AI使ってセッション名や概要を和訳 • 「Design」または「Game Narrative」 • Trackは、CEDECでいうところの「分野」 • GDCで単に「Design」というときは、ゲームデザインのこと • GDCで単に「Narrative」というときは、物語のこと GDC2025 ゲームデザイン報告 5
ゲームデザイントラックの構成 • コアコンセプトトラック「Design」 • ゲームデザイン(面白さ設計)についての幅広い内容 • 3日目~5日目に開催(60分セッション中心) • 専門的ショートトラック「Summit」 • 1日目・2日目に集中開催(30分セッション中心) • UX Summit、Level Design Summit、Game Narrative Summitなど • ぶっ通しの「Game Design Workshop」 • 1日目・2日目に集中開催 • 英会話に自信がなかったので、今回は不参加… GDC2025 ゲームデザイン報告 6
スケジューリングが大事 • ゲームデザイン系だけでも充実しすぎている! • 5日間で138セッション。1日当たり27.6 • ※CEDEC2024は3日間で27セッション。1日当たり9 • 事前に調べてスケジューリングは必須 • 裏被りは当たり前 • 原則、Valutで動画配信はある • 公式アプリでスケジュールを登録できる GDC2025 ゲームデザイン報告 7
今年の Design トラックの分析 8
カテゴリ分析① ※赤字は現地で見たセッション • レベルデザイン • DELTA FORCE の大規模 PvP レベル デザイン • レベル デザイン サミット: 「タクティカル ブリーチ ウィザーズ」の珍しいレベル デザイン • 「Infinity Nikki」の初心者レベルデザイナーを教える • レベル デザイン サミット: 『サイレントヒル 2』: リメイク版の謎 • オープンワールド設計 • レベル デザイン サミット: 探検を促進: オープンワールドへの参加を促進する 9 つの方法 • レベル デザイン サミット: 「スカイリム」と「フォールアウト」からソロ開発まで: 「The Axis Unseen」の作成 • 収集品の価値を高める • パズル/ミニゲーム • 「Islands of Insight」用に 10,000 個の手作りパズルをデザイン • 「Star Wars Outlaws」でサバックを作成する • テーブルトップのデザインが「UFO 50」の形成にどのように役立ったか GDC2025 ゲームデザイン報告 9
カテゴリ分析② ※赤字は現地で見たセッション • プロトタイピング • 「ASTRO BOT」での迅速かつクリエイティブなゲームプレイ プロトタイピング • 「ASTRO BOT」のメイキング • Doing It Live: 「MARVEL SNAP」でのプロトタイピング • モニュメント バレー 3': 過去を理解して現代の続編を作成する • UI・アクセシビリティの試行錯誤 • UX サミット: 奥深くて親しみやすい: 「Dragon Age: The Veilguard」の戦闘ホイールのデザイン • プリンス オブ ペルシャ: ロスト クラウン: 現代のメトロイドヴァニアをやりがいとアクセスしやすさの両方で実現 • 目に見えない UI: thatgamecompany が感情的な没入を実現するインターフェイスをどのように設計するか • UX サミット: 世界を遊び心豊かにする: アクセシブルなモバイル ゲームの重要性 • 心理学の応用 • UX サミット: メカニクスよりもマインド: 認知科学を使用してゲーム開発を強化する • UX サミット: プレイヤーのエンゲージメントをマスターする: ゲーム心理学のダークサイド • クリエイティブな節度: ゲーム開発における独創性について GDC2025 ゲームデザイン報告 10
カテゴリ分析③ ※赤字は現地で見たセッション • システムデザイン・コンバットデザイン • DELTA FORCE : ヒーローになろう、 Extractionゲームプレイを再構築する • 崩壊スターレイル': 大衆向けの RPG を再考し、幅広い層にアピール • ディアブロ イモータル: 常識的な協力プレイによる 8 人プレイヤーによる先駆的なボス攻略 • 『ファイナルファンタジーVII リメイク&リバース』革新的なバトルシステム開発の挑戦 • 『メタファー:リファンタジオ』開発とRPGコマンドバトルシステムの可能性 • マニアックな各論 • ゲーム ナラティブ サミット:別の名前: Namecraft に対する言語学者のアプローチ • システムサスペンションの設計 • 必要な 4 つの 1 ページ デザイン ドキュメント (およびその使用方法) • グリッド トポロジとゲーム メカニクス: あなたに適したグリッドはどれですか? • テーブルトップサミット: ルールブックを超えて: ボードゲームの教えやすさと学びやすさにおける革新 • 痛みを伴うかもしれない:『War Robots』におけるメタゲーム管理 GDC2025 ゲームデザイン報告 11
カテゴリ分析④ ※赤字は現地で見たセッション • ゲームプレイとナラティブの融合 • ゲーム ナラティブ サミット: システムを通じたストーリーテリング: ナラティブ デザイナーのアプローチ • ゲーム ナラティブ サミット: プレイアブル ストーリーの作成: メカニクスとナラティブを統合するためのアプローチ • システムとストーリーでゲーム世界を構築する方法 • レベル デザイン サミット: ナラティブ デザインがテーマとトーンに沿ってレベル デザインとアートを調整する方法 • エンディングのデザインとプレイヤーの期待のバランス: 「サイバーパンク 2077: ファントム リバティ」のエピローグを例に • ストラテジーゲームのナラティブ • ゲーム ナラティブ サミット: レイヤーの構築: 「シヴィライゼーション VII」のナラティブ システムによる歴史の (再) 作成 • Frostpunk 2': システム内でのスピーキング GDC2025 ゲームデザイン報告 12
カテゴリ分析⑤ ※赤字は現地で見たセッション • NPC設計 • ゲーム ナラティブ サミット: 電波上の幽霊: 「パシフィック ドライブ」の目に見えないキャラクターについて考える • 人間関係のデザイン: 魅力的な RPG コンパニオンを作る方法 • ニクスに『スター・ウォーズ 無法者』での振る舞い方を教える • ロマンス描写 • ゲーム・ナラティブ・サミット: 愛の労働: 『スター・ウォーズ: オールド・リパブリック』の「デート・ナイト」の物語 • ゲーム ナラティブ サミット: 胸の高鳴りと心の痛み: 本当に魅力的な恋愛対象の作成 • ゲーム ナラティブ サミット: セックス オア デス: インタラクティブ ナラティブで満足のいく中間点を達成する • 溶ける心と潤う渇きのラウンドテーブル: ゲームの中のロマンス GDC2025 ゲームデザイン報告 13
おすすめ セッション紹介 ※あまり記事にならなそうな やつを2つ 14
収集品の価値を高める Making Collectibles Count https://schedule.gdconf.com/session/making-collectibles-count/907550 コレクティブル(収集要素)の価値分類 ゴールドティア: →ゲームプレイに焦点 1. 発見しやすさ 2. プレイヤーに見合う価値 3. 楽しくて上達が必要なメカニック GDC2025 ゲームデザイン報告 15
収集品の価値を高める コレクティブル(収集要素)の価値分類 シルバーティア: →物語に焦点 1. 世界観構築 2. フィクション上の理由付け 3. キャラへの愛着 GDC2025 ゲームデザイン報告 16
収集品の価値を高める コレクティブル(収集要素)の価値分類 ブロンズティア: →獲得しやすさに焦点 1. 一貫した配置場所 2. 適切な数量 GDC2025 ゲームデザイン報告 17
収集品の価値を高める 様々なオープンワールド作品の収集要素を評価 以下の点数付けで 各作品の収集要素を評価 • ゴールド:3点 • シルバー:2点 • ブロンド:1点 合計点が14点以上は「A」評価 GDC2025 ゲームデザイン報告 18
痛みを伴うかもしれない:『War Robots』におけるメタゲーム管理 It's Gonna Hurt: Metagame Management in 'War Robots’ https://schedule.gdconf.com/session/its-gonna-hurt-metagame-management-in-war-robots/907485 メタマップ: プレイヤーの行動に基づいてゲーム内のすべての コンテンツ(キャラ)の位置を示すチャートです。 メタマップには2つの軸があります: • 黄色のゾーン(上昇する星): 分布は低いが使用率が高い。少数のプレイヤーしか持って いないが、持っている人は頻繁に使用している • 紫のゾーン(幸せに引退): 分布は高いが使用率が低い。多くのプレイヤーが持っている が、あまり使われていない • 外部のゾーン: 1.水平軸(分布): このコンテンツを所有しているプレイヤーの割合 2.垂直軸(使用率): そのコンテンツを実際に使用しているプレイヤーの割合 分布も使用率も低い。誰も持っておらず、誰も欲しがってい ない • 赤のゾーン(危険ゾーン): 分布も使用率も高い。メタブレイカー(ゲームバランスを崩 すコンテンツ)が存在するゾーン GDC2025 ゲームデザイン報告 19
痛みを伴うかもしれない:『War Robots』におけるメタゲーム管理 メタゲーム管理のストラテジー 直接的なナーフとバフ: ゲームデザイナーによる精密で効果的な調整。 しかし、プレイヤーもデザイナーも好まない方法です。 機械的なナーフ(間接的): 問題のあるコンテンツに関連するメカニクスを変更する、 または新しいメカニクスを導入する方法。より多くの労力 が必要で、ミスを犯しやすくなります。 GDC2025 ゲームデザイン報告 20
痛みを伴うかもしれない:『War Robots』におけるメタゲーム管理 メタゲーム管理のストラテジー バフを通じたナーフ: メタブレイカー以外のすべてをバフする方法。作業負荷 は高いですが、プレイヤーの不満は少なくなります。 シーズン制: TCG(トレーディングカードゲーム)のように、シーズンご とにメタを変える方法。効率的ですが、既存のゲームに 導入するのは難しいかもしれません。 GDC2025 ゲームデザイン報告 21
現地で 感じたこと 22
GDC Storeの書籍がすごかった • ゲームデザイン書籍の豊富なラインナップ • 未翻訳の貴重な専門書の数々 • 著者が登壇しているケースも多数 【定番っぽい名前なのに未翻訳の例】 A Practice Guide to Level Design Game Design Toolbox Video Game Storytelling Narrative Design Quest Design Game Balance Game Usability Game Feel など多数 GDC2025 ゲームデザイン報告 23
日本人によるDesignセッション:5件 (他にあったらごめんなさい) 1.『ファイナルファンタジーVII リメイク&リバース』の革新的なバトルシステム開発における課題 2.『Metaphor: ReFantazio』の開発とRPGコマンドバトルシステムの可能性 3.『龍が如く』における物語主導型短期開発の秘密 4.『鉄拳』: 30 年の歴史を持つシリーズとしての関連性を維持 5.「Infinity Nikki」の初心者レベルデザイナーを教える • 交互通訳による時間的制約 • 実質半分の情報量 • セッション後の質問列で、サインを求める開発者たち • さながら、めったにGDCに現れない「スターの訪米」 • 用語の使い方の違い • 「Design」「Narrative」など • CEDECにはあまり登壇されない顔ぶれで、貴重 『ファイナルファンタジーVII リメイク&リバース』 革新的なバトルシステム開発の挑戦 GDC2025 ゲームデザイン報告 24
日本と海外の違い(※個人の感想です) • 所与の理論の積み重ねを感じる • MDAフレームワーク、自己決定理論、POI、フィードバックループ、可能性空間などの専門用語が、複数のセッションで繰り返し登場 • プロジェクトの具体事例よりも抽象度が高くて難しいが、応用可能性は高い知見 • 他作品との横断的分析をいとわない • 【例】インディーゲーム『Tactical Breach Wizards』のセッション内で「脱X-COM」 • 【例】収集物のセッションで「BotWはコログがあまり多すぎる!」など • セッション数が圧倒的に違う • 同じゲームデザインの中でも、細分化された専門領域ごとにセッションが充実 • 中には微妙な内容のものもあり、ピンキリかもしれない • 参加者のリアクションが「強い」 • Yeah!Hoo!などテンション高い。みんなで盛り上げるというGDCの気概を感じる • 質疑応答がかなり多い。ゲームデザイナーの知識の共通基盤を感じた • ネットワークを軸にしているイメージ。交流イベントが充実。話しかけてくれる人が多い GDC2025 ゲームデザイン報告 25
日本人のゲームデザイナーの参加者について • 残念ながら、同世代のゲームデザイナーは見かけなかった • 現地でゲームデザインについて語り合える仲間がもっと欲しかった… • 「偉い人」やビジネス職の方が多い。 • 若い現役開発者にこそ来てほしい • 日本語の情報だけだと得られない観点がたくさんあることを、否応なしに痛感することができる • メディアによって記事化されているセッションは、ごく一部 • 英語は同時通訳アプリをフル活用で、だんだん聞き取れるようになってきた • 勇気さえあればコミュニケーションできる!! • アメリカのゲームデザイナーや学生とも仲良くなり、現地の事情をいろいろ聴くことができた。 GDC2025 ゲームデザイン報告 26
まとめ
まとめ • 向上心や探求心にあふれる海外のゲームデザイ ナーと交流しつつ、理論的・専門的・横断的な知 見を得られる、非常にエキサイティングな場だった • 充実しすぎているセッション! スケジュール作りには注意! • 同時通訳アプリと勇気があれば全然大丈夫! もっと現役ゲームデザイナーも来るべき! GDC2025 ゲームデザイン報告 28
ご清聴 ありがとう ございました CRUSTACEAN SAN FRANCISCO https://crustaceansf.com/index.html 29