【成果レポート】スタートアップチャレンジ

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May 12, 23

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【成果レポート公開中】大企業人材が、スタートアップの実務に挑戦する『スタートアップチャレンジ』とは(https://flag.jissui.jp/n/nf954b92d97a8)にて紹介しています。

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スタートアップ・中小企業への兼業副業・出向等支援補助金 (中小企業新事業創出促進対策事業) スタートアップチャレンジの 普及拡大にむけて 本事業は、経済産業省予算により一般社団法人社会実装推進センター(JISSUI)が実施し、 調査業務の一部を株式会社野村総合研究所に委託して本報告書を取り纏めています。 2023年3月

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目次 事業の背景と目的 スタートアップチャレンジ事業の成果 効果的なスタートアップチャレンジの実現にむけて 課題と論点・運用のポイント ネクストアクション 評価・総括 1

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事業の背景と目的 スタートアップ・中小企業と大企業の人材流動を促す施策によって、 イノベーションの創出等を目指す「スタートアップチャレンジ」を実施した 背景  イノベーションの担い手たるスタートアップや中小企業は、その成⾧過程で「人材や経営 資源の確保の壁」に直面している一方、大企業では優秀な人材を確保しつつも、新規 事業を機動的に動かす機会を提供できず、事業ポートフォリオ組み替え等の担い手人 材・次世代リーダーの育成で苦労している状況にある。 目的  このような状況を踏まえ、大企業の若手・中堅人材等がスタートアップ等での実務に挑 戦し、成⾧過程での課題解決(戦略立案・事業提携・海外展開・組織整備等)に取 り組む活動「スタートアップチャレンジ」にかかる費用の一部を助成することで、人材への成 ⾧機会付与と、スタートアップの人材不足解消を支援することを目的とする。 • 具体的には、大企業等に所属する人材に、スタートアップ等での実務経験を積ませる取り組み を対象として、4つの類型(次頁参照)にて実施した。 2

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事業の背景と目的 “大企業の成⾧機会不足”と”スタートアップの人材不足”を、人材流動によって解決する ”スタートアップチャレンジ”に対する費用を補助する事業 大企業等 ※1 人材は豊富だが、 新規事業開発の機会不足 補助要件を満たす“ ※3 スタートアップ等 人的リソース提供 × 成⾧機会の提供 ※2 資金調達に次いで、 人材不足がボトルネックに スタートアップチャレンジ”にかかる費用を補助 類型A 武者修行・人材育成型 類型C 人材直接受入型 (大企業等向け) (スタートアップ等向け) 類型B スタートアップ採用支援型 類型D 人材プール形成型 (スタートアップ等向け) (仲介事業者向け) ※ 1)企業規模等の要因により従業員に対して新規事業を機動的に動かす機会を提供できない企業であり、常時雇用する従業員数が300人以上の企業を想定。 ※ 2)新規事業開発と成⾧を経営の主軸に置く企業であり、常時雇用する従業員数が300人未満の企業を想定(大企業等の子会社・関係会社は除く) ※ 3)スタートアップ等の一員として、スタートアップ等の経営課題解決に向けた取り組みを行うもの。スタートアップ等の成⾧に資する貢献ができる形であれば、必ずしもフルタイムとは限らず、出向、兼業副業、転職、業務委 託等の形態は問わないが、週2日以上、日中コアタイムに稼働できる働き方を想定。 https://startupchallenge.jissui.jp/ 3

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認定サービス業者一覧 スタートアップチャレンジを推進する認定サービス事業者として、以下27事業者*が採択された 類型 類型A 類型D 事業者名 認定サービス名** 類型 事業者名 認定サービス名 ANOBAKA Human Capital CROSS WORK(クロスワーク) アマテラス アマテラス エッセンス 他社留学サービス RDサポート RDサポート(正社員転職) エンファクトリー 複業留学 RDサポート 特定非営利活動法人 クロスフィールズ RD LINK(理系エキスパート シェアリングサービス) 留職プログラム(国内派遣) エッセンス プロパートナーズサービス ゼロワンブースター ベンチャー企業出向プログラム エッセンス リクルーティングサービス タイガーモブ 現地渡航/オンライン海外越境 プログラム キープレイヤーズ KEYPLAYERS for startup ローンディール レンタル移籍 コーナー CORNER エッセンス CAREER FLIGHT for スタートアップ スローガン Goodfind Career 特定非営利活動法人ETIC. Beyondワークβ スローガン G3 KOMMONS カスタマーサクセスキャリア 支援サービス「KOMMONS」 パーソルイノベーション lotsful(ロッツフル) ジャフコグループ キャリアアカデミー マイナビ スキイキ Spirete Startup Creation Program 琉球ミライ ふるさと兼業(沖縄) Beyond Next Ventures Innovation Leaders Program 1→10 TRIAL ローンディール レンタル移籍 One Work 人材紹介サービス * 27の認定サービス事業者に加え、類型Cにて個別事業の3件が採択された。 ** 類型Dは、「補助事業の名称」を記載。 類型B 4

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目次 事業の背景と目的 スタートアップチャレンジ事業の成果 効果的なスタートアップチャレンジの実現にむけて 課題と論点・運用のポイント ネクストアクション 評価・総括 5

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スタートアップチャレンジ事業の成果 本事業では計252名の多様なチャレンジを実現 各類型の実施概要 出向者の属性(類型A/B/C) 0 類型 出向形態 出向元の 企業数 類型A フルタイム出向 7社 出向先の 企業数 流動人数 流動期間 の平均 12社 12名 7.8か月 類型A 副業・兼業 6社 8社 9名 3.3か月 類型B フルタイム出向 8社 10社 10名 7.8か月 類型B 副業・兼業 48社 34社 48名 2.9か月 類型B 転職 - 6社 6名 - 類型C フルタイム出向 2社 2社 2名 11.5か月 類型C 副業・兼業 1社 1社 2名 6か月 類型D 合計 - 72社 - 163名* 76社 類型A/B/C:89名 類型D:163名 *類型Dは、各社のイベントや育成プログラムの中で、副業・プロボノ等によりスタートアップ等の実務を 経験した人数を記載。イベント・育成プログラムの参加延べ人数(人材プール総数)は828名。 - 製造業 情報通信業 サービス業(他に分類されないもの) 金融業、保険業 医療 学術研究、専門・技術サービス業 生活関連サービス業、娯楽業 不動産業、物品賃貸業 宿泊業、飲食サービス業 化学 流通・卸売業 小売業 建設業 運輸業、郵便業 福祉 その他 (N=89) 5 10 15 20 25 22 % 18 16 8 7 4 4 4 3 3 2 2 1 1 1 1 出向先スタートアップのステージ*(類型ABC)(N=44) 社 30 20 20 21 10 0 シード アーリー 2 1 ミドル レイター *類型ABCの合計76社のうち、 スタートアップ情報プラットフォーム 「INITIAL」に事業ステージの記載があった44社で集計。 6

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目次 事業の背景と目的 スタートアップチャレンジ事業の成果 効果的なスタートアップチャレンジの実現にむけて 課題と論点・運用のポイント ネクストアクション 評価・総括 7

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効果的なスタートアップチャレンジの実現にむけて 武者修行プログラムを導入する大企業の狙い 大企業が武者修行プログラム(スタートアップ出向)を導入する際には 人材育成と事業創造のいずれかに狙いを定めて、制度の設計・運用を推進している  どちらも自社のさらなる成⾧やイノベーションの創出を狙った施策である。  制度の導入においては、狙いと期待する効果によって、人材育成施策か、新規事業創出かという2つの文脈がある。 大企業の武者修行プログラム(スタートアップ出向)の導入の背景 (人事戦略としての) 人材育成 • • マインドセットの改革 具体スキルの習得 (マネジメント・DXなど) • 機会提供と離職防止 制度の狙い 期待する効果 (事業戦略としての) 新規事業創出 • • 具体的な事業の開発 アライアンスの推進 (オープンイノベーション) • ビジネスプロセスの革新 競争力の向上・イノベーションの創出による、さらなる企業成⾧の実現 8

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効果的なスタートアップチャレンジの実現にむけて 武者修行プログラム導入の主体となる部門と狙い 人材育成を目的とする場合は人事部等のバックオフィス、新規事業創出を狙う場合は事業 部等のフロントオフィスが制度の設計・運用の主体となるケースが多い  例えば事業部を経験したうえで人事を担う等、事業創出を強く意識した人事施策として設計する場合もみられる。  いずれの場合でも、ゆくゆくは企業のさらなる成⾧を目的としたイノベーション創出への貢献。 制度の設計・運用の主体と導入の狙い (人事戦略としての) 人材育成 人事部主導による 人材育成 クローズドな文化の組織で あることに人材課題を感じ ており、他業界・他社のカ ルチャーや価値観を体感 する機会を作りたかった。 人事担当(放送) 人事部 事業部 (バックオフィス) (フロントオフィス) 主導 DX担当主導による 人材育成 自社のイノベーション創出 の施策群のひとつとして、 人材育成の観点から、修 羅場体験による行動力、 レジリエンスの獲得を目指 す学習の場にしたかった。 DX担当(製薬) 主導 営業による 人材・組織開発 営業また会社としてビジネ スモデルを変えなければい けないなか、人材が本当 の意味で異質なものを体 験し、固定観念を崩して、 思考回路を変えられる機 会を創出したかった。 営業担当(住宅) (事業戦略としての) 新規事業創出 事業部主導による 新規事業開発 経営主導による 新規事業開発 自社技術の活用先として 新しい業界を考えた。そこ に精通するスタートアップと の繋がりを強化し、新事 業創造の足掛かりをつくり たいという思惑があった。 新規事業領域として注目 していた分野の技術をもつ スタートアップとの連携を 前進させるというミッション を持たせ、人材の出向に よる事業創造と関係構 築を狙った。 技術担当(機械) 事業開発担当(プラント) 競争力の向上・イノベーションの創出による、さらなる企業成⾧の実現 9

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効果的なスタートアップチャレンジの実現にむけて 武者修行プログラム導入のきっかけとなる環境変化 武者修行プログラムの導入には、自社の経営・事業・機能(人事)の要求に対する打ち手と して、自社の戦略に紐づいたかたちで狙いを設定し、施策として提案していくことが効果的  人事を伴うスタートアップ出向の制度の導入においては、事業部や経営に対してその必要性と施策の適応性を説明 することが重要。各レイヤの課題に対応するような制度の設計が必要になる。 企業の各レイヤの課題に対応するスタートアップ出向導入の経緯 経営戦略 外部環境変化による 経営課題対応の要求 コロナ禍の影響や業界変 革の波から、経営戦略が グローバルから異業種連 携に転換した。そこでス タートアップ出向を導入す ることにした。 人事担当(自動車) 事業戦略 業界DXによる 事業モデル変革の要求 広告事業にドメインが硬 直しているビジネスを変え ていかなければいけないと いう課題意識があり、マー ケティングDXへの事業変 革の機会としたかった。 人事担当(広告) 機能戦略 (人事) 人材環境の変化による 施策の要求 人事制度改革に伴い、 自律的なキャリア形成の 考え方を浸透させるため、 管理職層研修として導入 した。組織への波及効果 を期待している。 人事担当(通信) 新規事業創出が経営課 題になり、それを実現する ための施策として、ビジネ スのスピード感、多産多死 の文化というものを学ぶ機 会とした。 経営戦略課題に 対応するための スタートアップ出向 人事担当(IT) 受注型のビジネスが中心 であるため、新しいことを 考える素地を養う機会が 欲しかった。出向人材に 何か新しい視点を獲得し てきてほしいと思っている。 事業戦略課題に 対応するための スタートアップ出向 人事担当(通信) 人事部が提供する人材 育成プログラムの拡充のた め、幅広い業務や文化を 経験する成⾧機会の提 供をするためのメニューとし て導入した。 人事担当(金融) 人事戦略課題に 対応するための スタートアップ出向 10

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効果的なスタートアップチャレンジの実現にむけて 組織規模による武者修行プログラムの特徴 小規模な企業では、人事起点の検討であっても、経営また事業部との距離が近いことで、 組織の課題や要求と人材要件を紐づけた制度の設計・運用がしやすい  数千人規模以上の大きな組織では各部門との接続(理解促進や協力要請)にコストが生じやすく、人材育成と 事業創造の双方を紐づけた制度を運用することの難しさがあるが、下記の特徴を活かせる形にできると望ましい。 小規模組織(500人前後)でのスタートアップ出向制度導入における特徴 経営・事業・人事を 接続した課題設定ができる • 組織の人と顔が一致し、各部門で何を取り組み課題と しているかの認識が統一していることで、各レイヤの課題 を踏まえた制度設計がしやすい。 2 事業を経験した 人事担当者がいる • 事業部でビジネスモデルの変革の必要性を感じていたり、 人材課題への意識を強く持っている人材が人事にいるこ とで、現場でのイノベーション(新規事業創出)を意識 したスタートアップ出向の設計を具体的に考えられる。 3 特殊事情を踏まえた 素早い意思決定ができる • 経営トップの判断で戦略的な出向を実行するという、公 平性・透明性にとらわれすぎずに、状況を踏まえた特殊 ケースとしての人事を実行できる。 1 11

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効果的なスタートアップチャレンジの実現にむけて 事業創造を狙った武者修行プログラム事例 特に大企業とスタートアップが直接スキームを構築しているケースでは、具体的な分野での事業 創造や相互の関係性の強化を狙ったものとして、人材の出向を実施している形がみられる 千代田化工建設と京都フュージョニアリングにおけるスタートアップ出向のケース 千代田化工建設(プラントエンジニアリング大手) 京都フュージョニアリング(核融合スタートアップ)  新規事業として核融合分野を推進 したいと考えていたが、社内では知見 が少なく、この分野に踏み込んでいく ことが必要だと考えていた。  核融合炉開発でのプラントエンジニア リング技術・知見の活用は注力領域 だが、自社で十分にリソースをかけるこ とができていなかった。  経営層からのトップダウンの意思決定 で出向が決まった。具体的な協業等 のアクションを進めることが出向のミッ ションになっている。  相互に同じ狙いを持つパートナーだと いう認識をしている。出向による人材 交流はライトに協業を始められるオプ ションである。  核融合分野の専門知識獲得に加え、 スタートアップでのプロジェクトマネジメ ントの経験が、経営がわかる専門人 材としての成⾧機会にもなっている。  スタートアップにとっては人材獲得とい う点でも魅力的。個人のスペックが 高く、業界に対する専門性と業務に 対する主体性があることが条件だった。 12

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効果的なスタートアップチャレンジの実現にむけて 人材流動(兼業・副業・転職・人材プール形成)における仲介事業者の役割 兼業・副業、プロボノ、転職などを通じた、大企業人材のスタートアップへの流動では、 ヒト起点ではなく、スタートアップの課題に対応するコト起点の流動を考えていくことが重要  フルタイムへの転職では、相互の諸条件(スキル要件・処遇条件)とのマッチングに乖離が大きい。  スタートアップ側の解決したい課題を把握し、対応する流動形態を提案することで、グロースへの確度を高められる。 スタートアップへの人材流動における仲介事業者の役割の考え方 【スタートアップ側の要件定義】 グロースの実現 経営課題の 明確化 【大企業人材側の要件定義】 人材要件の 明確化 参画要件の 明確化 課題起点のマッチング 人材の紹介 マッチング 人材プールの 形成 転職 兼業・副業 業務委託 人材起点のマッチング (ヒト軸) (コト軸) スタートアップ側でどのような人材が必要なのかではなく、どのような課題を解決したいのかを把握し、その課題に対応できる要件(スキル)を持つ人材を、 様々な流動形態(転職・兼業副業・業務委託等の多様な選択肢)の中から適切な活用方法を提案していくこと 13

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効果的なスタートアップチャレンジの実現にむけて 人材流動(兼業・副業・転職・人材プール形成)にむけた人材の意識変革 大企業人材への情報発信またスタートアップへの接点の多様化によって、 意識を深耕させ、スタートアップキャリアを積極的な選択肢として認知させていく この経営者と働きたい この技術で社会を変えたい 自分の本質的な欲求を具体化し、 それが実現できる環境がスタート アップであると気づくことが、 決心 人材の流動に繋がる 成⾧できる機会がほしい 環境を変えてみたい 関心 スタートアップへのキャリア に興味関心を持つ 自分のやりたいことが スタートアップでこそ実現できる とわかる 行動 具体的なアクションを通じて スタートアップのリアルを知る 業務委託 副業・兼業 情報発信 人材プール形成 プロボノ 出向 転職 多様な流動形態による スタートアップへの 接点の創出 14

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効果的なスタートアップチャレンジの実現にむけて 人材流動(兼業・副業・転職・人材プール形成)にむけた大企業の意識変革 人材の還流にむけてボトルネックとなっている大企業人材の流動の促進においては、 企業が人材を外に出すことを、より積極的に捉える環境づくりが求められる  企業から人材がスタートアップ等へ流動することは、短期的には企業からの人材流出となるが、出戻り人材の登用、 オープンイノベーションの実現等で、中⾧期的なリターンにつながるという考えもある。  出向、兼業・副業、プロボノ、業務委託といった社外の経験を積む機会(越境体験)も同様の考え方である。  退職者を「裏切者」として冷遇するのではなく、社外資産と捉えて関係を持ち続ける取り組みは、自社のイノベーショ ン創出にとどまらず、社会のイノベーション創出を促すための一助になっていく。 大企業に求められる人材活用のアプローチ アルムナイ(卒業生) ネットワークの構築 出戻り人材の 受け入れ体制構築 多様なキャリア・ 働き方支援 • 退職者の活躍状況を収集・管理し、業界情報収集の基 盤、また即戦力人材のプールとして活用 • 自発的に退職を選択した人材を「新しい視点・スキルを有 する人材」として受け入れ、評価する制度を設計 • 副業・兼業、業務委託等、正社員に拘らない雇用形態の 設計、マネジメントに限らないキャリアパスの設計等による、 多様な人材の活躍の場の創出 15

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目次 事業の背景と目的 スタートアップチャレンジ事業の成果 効果的なスタートアップチャレンジの実現にむけて 課題と論点・運用のポイント ネクストアクション 評価・総括 16

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スタートアップ出向の設計・運用にむけて|課題と論点 本実証事業への参加事業者の取り組みを踏まえ、大企業がスタートアップ出向制度を導入す るうえで、遂行上の課題となるものや判断が悩ましい論点について整理した 武者修行プログラム(スタートアップ出向)導入企業が抱える課題と論点 費用対効果の考え方  スタートアップ経験がどのように業務に活かされ たか、会社の成⾧に寄与できたのか、費用対 効果を示すことが難しい。 人材の選定方法  スタートアップ経験を積むことに意欲のある人 材の意思を尊重すべきか、組織戦略に則った 人選を会社側ですべきか解がない。 離職リスク スタートアップの 成⾧への貢献  せっかくの人材投資が離職によりムダになって しまわないようにするための施策がわからない。  人材の成⾧・スキルアップだけでなく、スタート アップの成⾧に貢献できる仕組になっていない。 大企業担当者の声  出向者には、投資した分高いパフォーマン を発揮してほしい。  なにを成果指標とすればよいのか不明。  今後スタートアップ出向の予算獲得をする ための材料がない。  公募したところで、人材が集まらない可能 性があるのが心配。  エース人材を推薦したところで、嫌がられる 可能性があるのが心配。  スタートアップ出向の制度をステップに、別 企業に転職してしまうリスクを回避したい。  ⾧期的に会社に貢献してくれる人材を見 極めて、投資を行いたい。  自社人材の成⾧機会だけではなく、出向 先SUにとっても受け入れの意義を持たせた プログラムにしたい。  持続的な関係性構築のためにも、スタート アップの事業成⾧に寄与したい。 17

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設計・運用における課題と工夫のポイント|課題と論点|1. 費用対効果の考え方 武者修行の導入は、総論賛成各論反対で、利害関係者からの反対の声への対処が困難。 出向にかかる費用と機会損失について、それに見合うだけの効果があることを示すことが難しい。 スタートアップ出向制度導入済の企業による現状の対応 定性的な出向者の変化や成⾧は周囲に示すことができている一方で… 方向性1. 意識調査の実施 • 帰任した人材には、①キャリア意識の向上②業務における挑 スタートアップ出向って 費用対効果どうなの? 定量的な成果を知って予 算承認の判断材料としたい 戦③周囲への波及効果の実感について意識調査を行い、意 識の変化を社内で共有している(通信) 方向性2. 帰任報告会の実施 • スタートアップ出向から帰任後に報告会を実施、どのようなマ インド・スキルを身に付けたのかを役員を含む社員に報告して もらっている(製薬) 利害関係者 定量的な効果を示すことには、多数の担当者が説明に苦労している (担当役員、人事・現場マネジメント等) • 人材育成効果をROI(費用対効果)で示すのは難しい • 事業創造の数や会社の業績は、すぐに個人の成果に現れる ものではないため、KPIに置きにくい 18

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設計・運用における課題と工夫のポイント|課題と論点|2. 人材の選定方法 スタートアップ出向者の決定には、組織の目的と狙いにあわせた任命(他者推薦)と、出向 者自身の意思を尊重した任命(自己推薦)が考えられるが、どちらが適切かは場合による 出向者を選定する際の手法とメリット・デメリット メリット 自己推薦 (公募制)  候補者のスタートアップ出向に対するモチ ベーションが高く、自身で成し遂げたいこと や身に付けたいスキルが明確。 “他社のカルチャーと仕事の進め方、価値観を実際に学ぶために自 ら手を挙げて応募した” 人事担当(放送) “各事業部の戦略に基づく指名制の他に、全社枠として手を挙げ る人の枠を残している” 人事担当(自動車) 他者推薦 (指名制)  スタートアップ出向を自社の経営・事業・機 能(人事)の要求に対する打ち手として 位置づけ、それに合う人材を選定する。 “自己推薦制からセンター⾧推薦に変更し、センター⾧自らが帰任 後の人材活用を検討するだけでなく、組織からの期待についても 目線合わせを行うことができている” 人事担当(メーカー) “人事戦略である「自律的キャリア」を促す施策の一つとして、キャ リアに行き詰まりを感じている幹部候補を出向者として選出した” 人事担当 (通信) デメリット  キャリア・スキルアップを目的に応募する人 が出てくる場合、周囲への巻き込みが不十 分になる可能性がある。  予算を確保したところで応募者が集まらず、 出向者不在になる場合も。 “自己推薦制にしたが応募者が集まらなかった” 人事担当(IT)  会社による出向者の指名は、不公平感が 生じ、機会平等が担保できない。  有望な候補者であっても、当人のモチベー ションの有無が研修成果を左右しうる。 “幹部候補だけでなく、モチベーションが高い人にも来てほしいため、 社⾧からの選出:公募=2:3程度の割合で自己推薦の社 員の割合を大きくしている” (製薬) 19

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設計・運用における課題と工夫のポイント|課題と論点|3. 離職リスクの捉え方 新しい環境で非連続な成⾧機会を提供することが武者修行の目的である一方、結果的に離 職の後押しや、転職を志向していた人材のお試しキャリアの位置づけになってしまう懸念がある 人材育成スタートアップ出向プログラムを導入するうえで、 • ある程度の離職・転職はいずれ生じる • 人材流出のリスクを想定の範囲内とする ということを前提に考える。 そのうえで、スタートアップ出向を社員の「キャリアの転換機会」と捉える 大企業担当者の声  離職率の高さやエンゲージメントの低さを背景に、中堅手前の社員に異質な経験をさせ、仕事に対するマインドを変 える試みとして、施策を導入した(住宅)  業界的に、転職が盛んであるため、離職したところでスタートアップ出向プログラムが原因とは言い難いが、 アルムナイ(OB/OG)が「良い会社だった、色んな経験を積むことができた」と会社のファンとしてポジティブな評価を 業界で喧伝してくれればよい(広告) 20

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設計・運用における課題と工夫のポイント|課題と論点|4. スタートアップの成⾧への貢献 スタートアップ出向は主目的を大企業人材の成⾧機会と捉えている場合、スタートアップのケイ パビリティ補強や、事業成⾧に貢献できるかという観点が考慮されていないことが多い 大企業・スタートアップそれぞれの思惑とスタートアップ出向で抜け落ちてしまいがちな観点 大企業 出向前 出向後 新規事業ナレッジを蓄積していきたい。 スタートアップで働いて、マインド変革、 スキルアップを目指してほしい。 スタートアップはスーパーマンが揃う すごい組織だ。彼らと一緒に働くことは 大きな学びになるから継続して行いたい! スタートアップ 思惑の ミスマッチ 自社に足りないケイパビリティを 持つ人に来てほしい。自社の グロースに寄与する人に来てほしい。 出向者にあまり活躍してもらえなかった。 受入れを継続すべきか? 大企業とスタートアップがWin-Winの関係で出向・受入を行うためには、大企業がスタートアッ プの成⾧に貢献できるケイパビリティを持った人材を送り出すという視点を持つことが必要 21

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設計・運用における課題と工夫のポイント|運用のポイント 導入企業での成功要因を踏まえると、新たに制度導入する際の運用のポイントは以下の4つ 武者修行プログラム(スタートアップ出向)導入を成功させるための運用のポイント 強い思いのある設計者に よる制度設計  武者修行プログラムという新制度の導入にあたって、自らの体験に基づ き周囲を説得し巻き込んでいく熱量のある担当者の存在が不可欠。 経営層や上司の巻き込み  トップダウンでの意思決定を行うほか、所属部の上司が出向者への期 待やミッションの伝達を行い、状況を定期的に把握する機会を設ける。 仲介事業者の活用・ スタートアップとの直接連携 出向者の人材活用  導入期には、制度設計、派遣先調整、契約スキーム構築、出向者の メンタリング等、大企業にノウハウがない部分を第三者に依頼する。  自走期には、派遣先となるスタートアップと出向に限らない連携スキーム を構築し、具体的な事業創造やオープンイノベーションの検討を深める。  出向後に経験を活かした職務の提供や、配属を考慮し、経験を還元 する仕掛け作りを行う。  必ずしも全員が新規事業創造を担うわけではない。多様な活躍機会 をキャリアパスとして用意しておく。 22

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設計・運用における課題と工夫のポイント|運用のポイント|1. 強い思いのある設計者による制度設計 新制度導入には、強い目的意識を持ち、周囲を説得し巻き込んでいく熱量のある担当者の 存在が不可欠。設計者自らが越境体験をしており、組織への課題意識を感じているとよい。  事業部主導で制度を始める場合、人事部への説明の建前と実際の本音を分けて説明していく器用さも必要。 スタートアップ出向導入に成功する大企業担当者のペルソナ像 社内で同じ業務だけに従事し続け、視野が狭くなるのはよくない。 外部の異質な環境での修羅場体験はキャリア上必須である。 スタートアップでのスピード感ある働き方を学び、組織に還元してほしい。 自分が周囲に働きかけて仕組みを導入しなければならない。 問題意識 • • • • 施策導入 への思い • 自社の経営・事業・機能戦略上、イノベーション創出を担う人材を育 成するために、スタートアップ出向を促すプログラム導入が有効である。 • 自らも越境体験から多くの学びを得た。 • そのため、スタートアップ出向を“人事施策”として導入してほしい。 →人材をスタートアップ出向させるための予算獲得の口実をうまく作っていく 大企業担当者 23

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設計・運用における課題と工夫のポイント|運用のポイント|2. トップや上司の巻き込み 事業部主導でスタートアップ出向を企画する場合、人事部をはじめとする社内、派遣先等との 多くの調整が生じるため、トップダウンでの意思決定を得られることが前進に大きく影響する  出向者への期待やミッションの伝達、メンタリングを通じた学びの言語化など、上司が担うべき役割は非常に重要。  人事部主導でスタートアップ出向を企画する場合であっても、出向者の上司を巻き込むことが望ましい。 スタートアップ出向のフェーズに応じた社内ステークホルダーに期待される役割 出向前 出向中 プログラムへの期待・ ミッションの伝達 予算承認 出向後 帰任報告会参加 マネジメントへの反映 社⾧・役員 部署としての期待・ ミッション伝達 マネジメント (人事部・事業部) メンタリングを通じた 学びの言語化 出向者のキャリア設 計サポート 配属・部署の検討 24

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設計・運用における課題と工夫のポイント|運用のポイント|3. 仲介事業者の活用・スタートアップとの直接連携 仲介事業者が持つ制度設計上の課題への対応、派遣先の調整、契約スキームの構築、派遣 中のメンタリングなどのノウハウを活用することは、施策導入時の障壁を下げることに貢献する  導入期には、スキーム構築や効果を高めるための工夫について仲介事業者のノウハウを活用していくことが効果的。  一方で、自走期には派遣先となるスタートアップとの直接の連携の形を模索していくことで、具体的な事業創造や オープンイノベーションの検討を加速させていく。その際には出向に限らない多様な連携のあり方が考えられる。 導入期 運用の形 期待する 効果 自走期 仲介事業者による支援 直接連携  具体的な制度の設計  具体的な事業の開発  派遣先の調整とマッチング  アライアンスの推進(オープンイノベーション)  出向契約スキームの構築  ビジネスプロセスの革新  派遣中のメンタリング  IP共有  帰任後のフォローアップ 導入社数 多 仲介事業者のノウハウを活用しつつ、 段階的に直接連携による事業創造の形を模索 少 25

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設計・運用における課題と工夫のポイント|運用のポイント|4. 出向後人材の活用 出向後は、職務や配属で多様なキャリアパスを考慮したうえで、出向経験を自社に還元する仕 掛けや、出向経験者の熱量を維持し波及効果を高めるためのコミュニティ形成の支援が有効  現実として、新規事業を創出できる人材であり、かつその活躍の場を用意できるケースがすべではない。自社業務改 善やDXへの取り組みに貢献することも期待効果として定義し、双方のルートを用意しておくことが重要。 スタートアップ出向経験者の職務・配属の考え方と出向者の更なる活躍に向けた組織活動 職務 配属 専門人材 • スタートアップ出向を通じて特定の スキル(営業、技術開発、IT等) を強化し、組織に還元する 新規事業担当 • スタートアップでの事業開発プロセス の実践経験を活かし、自社でのイノ ベーション創出を担う マネジメント人材 • スタートアップ出向を通じた修羅場 体験をマネジメント等リーダーシップ 的役割で活かす 自社業務改善/ DX担当 • スタートアップでのスピード感ある職 場経験を活かし、自社既存業務に おける業務改革・DX推進を担う 組織還元に向けた取り組み 出向者コミュニティ組成 出向者上司向け マネジメント勉強会 人事部・事務局への ナレッジ共有 26

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設計・運用における課題と工夫のポイント|運用のポイント| (参考)仲介事業者を利用したスタートアップ流動 仲介事業者が副業・兼業、転職等の形で、大企業人材のスタートアップへの流動を支援する にあたっては、スタートアップの事業課題把握と面談を通じた大企業人材の要件把握が重要 スタートアップと大企業人材のマッチングに成功した仲介事業者の活動例 受入準備 ス タ ー ト ア ッ プ 大 企 業 人 材 事業課題ヒアリング “どのような事業課題を解決したいのかヒアリング を実施した” “副業の場合は、どの業務にフォーカスしてもらうか を確認した” 社風の把握 “スタートアップ経営者だけでなく現場社員に会い 社風を確認した” 面談・面接 面接同席 “スタートアップと大企業人材が面談する際に、 同席をすることでマッチングのズレを防ぐ” “業界によっては、双方の理解を深めるため、業 界専任コンサルタントがスタートアップと大企業人 材を支援する” 啓蒙活動 キャリアカウンセリング “スタートアップで働くことについて、ウェビナーやコラ ムで情報発信し、副業等の業務委託からでも参 画できるよう啓蒙活動を行っている” “スタートアップとの面接前に、専門性、マインド、 活躍フィールドを確認する面談の機会を設けた” “最新のキャリア論や様々な人材流動モデルケー スに関する職種別セミナーや、アイディア壁打ちや 実務体験を通じたスタートアップ体験ワークショッ プを実施している” 面接準備支援 “募集要項の確認や、応募動機、得意分野のヒ アリングを実施した” 受入開始 伴走メンタリング “仕事の仕方、特にスピード感の違いにギャップが あることが多いため、初月にスタートアップと大企 業人材へのフィードバックヒアリングを丁寧に行っ ている” “キックオフから1か月の間に、スタートアップと大企 業人材がうまく情報連携や関係構築ができると マッチングが成功する傾向がある” オンボーディング支援 “業務委託活用の前にオンボーディングミーティン グを実施した” “スタートアップ投資経験者を中心にメンタリング の体制を敷き、大企業人材がスムーズにスタート アップの戦力になるように促した” 27

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目次 事業の背景と目的 スタートアップチャレンジ事業の成果 効果的なスタートアップチャレンジの実現にむけて 課題と論点・運用のポイント ネクストアクション 評価・総括 28

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ネクストアクション ステークホルダーへの期待 大企業、スタートアップ、人材のそれぞれが、イノベーションの創出に向けた活動を進める 同じ目線をもつことで、相乗効果を生み出す人材流動の形を目指していく  出向はイノベーション創出を狙った人材施策のひとつの手段であるが、それに限らず多様な選択肢を考慮したうえで、 スタートアップのグロースと、大企業の成⾧の双方に資する人材起点のイノベーションエコシステムを構築していく。  出向、副業・兼業、転職、プロボノ、業務委託、起業… 多様な選択肢を活用した成⾧を実現する。 • 革新的な事業の創造 • グロースの実現 スタート アップ 成⾧に向けて人材を獲得する手段は フルタイムの転職に限らない。大企業 からの出向の受け入れはそのひとつ。 「多様な選択肢を生かした積極的な 人事施策」を展開していけないか。 • リスキリング • マインドセットの変革 • 新規事業の創造 • DXによる競争力向上 人材 自律的なキャリアの形成が求められ る時代、個人のスキルやマインドセッ トを自ら高めていくことが必要になっ ている。必ずしも転職を前提としな い「越境によるキャリア開発機会」 への関心を強めけないか。 大企業 外部での経験を成⾧機会として捉 えるようになってきた。出向スキーム や出戻り人材活用への動きをより 加速させるために、「人材が自社か ら外に出ることをポジティブに捉える 文化へ」変わっていけないか。 29

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目次 事業の背景と目的 スタートアップチャレンジ事業の成果 効果的なスタートアップチャレンジの実現にむけて 課題と論点・運用のポイント ネクストアクション 評価・総括 30

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評価・総括 審査委員からの評価・総括 • • EDiX Professional Group 江戸川公認会計士事務所 代表 江戸川 泰路 氏 • 東京大学大学院 工学系研究科 教授 日本ベンチャー学会 会⾧ 各務 茂夫 氏 • • • • ReBoost 代表取締役 河合 聡一郎 氏 本制度の利用による試験的な出向も見受けられたようだが、それによって施策の効果が認められれば、 今後は「事業戦略としての新規事業創出」を目的とした出向も実施しやすくなるのではないか。出向が一つ の選択肢として捉えられるようになったのであれば、最初の一歩としては十分意義がある。 企業の出身者が離職後に外部で活躍することは、出身企業の評判向上や、ひいてはスタートアップとの連携 強化にも繋がるのではないか。大企業は、「従業員は一定離職するもの」という前提に立った上で、離職者 の活躍がオープンイノベーションを推進する際の武器になると考えるべきであろう。 大企業とスタートアップの双方にメリットのある人材流動にするためには、「何を目的変数とすべきか」、そして 「何をもって成功とするか」を考えることが重要。スタートアップの収益拡大やファーストカスタマーの獲得など、 設定したKPIを測定し、出向の結果を評価することが必要だ。 スタートアップが直面する課題の1つとして、人材ネットワークの構築が挙げられる。その解決策として、大企業 や人材との結びつきを強めることができる本制度は有用ではないか。 スタートアップは、大企業のプロフェッショナリティを求めている。本事業の仕組みにおいては、人材であれば 特定領域における専門性が高い人、また業界と言う観点であればモノづくり領域の企業がスタートアップの 要望にマッチしやすいのではないか。 大企業は、出向者が戻ってきた後のキャリア設計について熟慮すべきである。スタートアップと大企業が抱えて いる課題と出向者の活用方法を紐づけて、最初から出向を設計できていると良いが、改善の余地がある。 大企業とスタートアップの仲介として、例えば新規事業開発の領域を得意とするコンサルティング会社が入り、 課題感のヒアリングや設定、その解決に繋がるような人材イメージとミッションの設定までができると、双方に とって上手くワークするかもしれない。 31

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評価・総括 審査委員からの評価・総括 • • Almoha共同創業者COO 唐澤 俊輔 氏 • • • スタートアップ エコシステム協会 代表理事 藤本 あゆみ 氏 大企業とスタートアップという二項対立で考えると遠いもののように思えるかもしれないが、その間には、メガベ ンチャーや地方の中小企業など他のプレーヤーも存在している。大企業・スタートアップという枠組みだけでは なく、社会全体のエコシステムの中で考えてみると、動かす人材や動かし方の幅が広がっていくのではないか。 日本が成⾧産業を作るためには、スタートアップだけではなく大企業も動かなければならない。そう考えると、 大企業は人材を流動させてスタートアップから学ぶという姿勢ではなく、事業で連携するためにどう変わるべき かを考える姿勢が求められる。成⾧する組織は動き方もスピードも他とは異なるが、大企業を含め、あらゆる 企業がそういった組織を持つ必要が出てきているのではないか。 補助金の仕組みは、大企業側のニーズに応え、スタートアップ側の不安を少しでも解消できる手段として とても良い。 一方で、大企業とスタートアップがお互いにwin-winになる仕組みは、より一層模索すべきである。人材を 受け入れてもらう大企業がテイカーになってしまうと、この仕組みは⾧続きしない。 偏に「スタートアップ」と言っても、事業ステージによって、その時抱えている課題や必要な人材は様々である。 スタートアップの求める人材と大企業が提供できるスキルを可視化していくことで、最適なマッチング先はおのず と見えてくるはずだ。 32