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May 10, 23
スライド概要
【監修】ものづくりスタートアップのための契約ガイドライン&フォーマット(https://flag.jissui.jp/n/n8803931a98ba)にて紹介しています。
見開き、閲覧用:https://www.docswell.com/s/flag-jissui/KYW1MN-2023-05-10-114855
"旗"を掲げ、挑戦したい人を応援するメディアです。 第一線で挑戦する人のインタビュー・コラム、政策・ビジネスに関するレポート、公募の情報など、「じっくり読みたくなる」情報をお届けしています。note:https://flag.jissui.jp/ | 運営会社JISSUIの情報はこちらから→ https://jissui.or.jp/
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ものづくり スタートアップ のための契約 Contents ガイドライン 本 ガ イド ラ イ ン の ね ら い P.1 ガ イド ラ イ ンと 契 約 書 フォ ーマ ット の 活 用 方 法 P.3 ものづくりプロセスの全体像:あるある問題事例と対策 P.5 チェックリスト P.16 契約書フォーマットはこちらに記載のQRコードよりダウンロードができます。 詳しくはWebでご確認ください。 https://startup-f.jp/guideline/download.html 9-() 9-() 9-() 9-() 9-() 9-() 9 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEV
ものづくり スタートアップ のための契約 本 ガ イドラ イ ン の ねら い ガイドライン ものづくり系スタートアップが新しいアイデアを実際のプロダクトにし、市場へローンチしていくためには、ものづくりを担う設 計・製造業者等との協業が欠かせません。 しかし現状では、スタートアップと設計・製造業者等の間の取引において、お互いの認識のギャップ等が原因で少なからずトラ ブルが発生しており、そのすり合わせのプロセスである 契約 のノウハウ普及が不可欠となっています。 このような背景から、本ガイドラインは、合わせて20以上のスタートアップ、設計・製造業者、支援プラットフォーム企業等か ら伺った具体例・意見を踏まえ、 「事前に知っていれば避けられたトラブル」をできる限り減らし、スタートアップと設計・製造 業者等との積極的な協業が促進されることを目指して作成されました。 また、契約書フォーマットは、こうした現場の様々な声を踏まえて、ものづくりと法律の専門家による議論を重ね、作成された ものです。 本ガイドライン、契約書フォーマットの活用が普及することにより、日本のものづくりスタートアップがより活動しやすい環境 が整うと共に、日本から多くの新規事業が生み出されるエコシステムが形成される一助になることを願っています。 本ガイドラインがターゲットとする スタートアップとものづくり関連業者のペルソナ 設計・製造業者など ものづくり関連業者 スタートアップ ●プロダクト(モノ)系の事業である ●新しい価値を提供するものづくりをスタート アップと共に生み出すチャレンジをしたい ●3〜10人の小規模 ●アイデアはあるが、生産ノウハウ・経験が足りない ●自社の提案・開発能力を協業を通じて 高めたい ●契約面に十分な人的リソースが割けない ●量産といっても最初は1,000個くらいから ●自社だけでは気付けない 新たな関連分野を探索したい ●開発要素が多く含まれるものづくり 双方の活動スタイルの違いを理解した上で、 良好なコミュニケーションを心がけましょう! 01 Contract Guideline for Maker Startups 9-() 9-() 9-() 9-() 9-() 9-() 9-() 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV]
ものづくり全体ステップと協業モデルイメージ図 本ガイドラインでは、ものづくりプロセスを①要求・要件定義、②原理試作、③量産設計・量産試作、④(初期)量産、の4つのステッ プに整理しています。各ステップでは、ステージに応じた形での密な協業が実現されることが必要となります。 コンサル・設計事業者 試作加工事業者 金型加工事業者 試作開発事業者 組立・試験事業者 OEM 事業者 ODM 事業者 プロダクト アイデア 技術提案 PoC に必要な試作品 双方の協業によるリーンな開発で熟度を高める 要求・ 要件定義 詳細図面作成 金型・治具制作等 量産設計・ 量産試作 原理試作 繰り返し 量産 量産開始 (初期)量産 きちんとしたものづくりを実現する重要プロセス 製造業者 技術アイデア 事業 費用 アイデア・モックアップ スタートアップ 原理 試作 ロット 発注 量産に向けた広範な準備・検討 価値を生み出す 重要プロセス 要求・ 要件定義 要求・ 仕様 要求・要件定義 設計図面など 投資 テーション 原理試作とその評価 を 活 用し、継 続 のた めの資金を調達する 協 働 により探 索し、 評価 成果物 プレゼン 制作 正しいプロダクトに到 達するまで繰り返す 原理試作 体験 投資家 正しい(=想定ユーザーが価値を感じる)プロダクトを 要素を体験できる試作。量産とは実 つくろうとしているかどうかを確認する(validation) 現方法が異なっても構わない。 想定ユーザー 関係者 最終製品でユーザーにとって重要な 原理試作を想定ユーザーに体験してもらい、自分たちが スタートアップのものづくりでは、新しい開発要素が含まれることが常であるため、 「要求・要件定義〜原理試作段階」におけるリー ンなプロセスでいかに価値を高めることができるかが重要となります。この段階におけるスタートアップと設計・製造業者の積極的 な協業を実現するためには、早期段階で取り決めに基づく協業関係を構築することが有効といえます。 9-() 9-() 9-() 9-() 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] Contract Guideline for Maker Startups 9-() 9-() 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 02 9 7XEV
ものづくり スタートアップ のための契約 ガイドライン ガイドラインと 契約書フォーマットの活用方法 こんな時にご参照・ご活用ください! スタートアップがものづくりを進めるステップの 全体像を大まかに把握したい。 各ステップでどんな落とし穴があるのか知りたい。 トラブルを予防するために、 ガイドライン 今の時点で何をやっておけば良いのか分からない。 何かやり忘れていることはないだろうか? 契 約面までリソースを割く余 裕が無いことが 自社のリスクになっていると感じる。 契約書フォーマット 早い段階 で自社の 知 財を しっかり管理しながら事業を進めたい。 何かトラブルが起こった時に備えて 協業先と明 確な取り決めをしておきたい。 03 Contract Guideline for Maker Startups 契約書フォーマット 利用にあたっての ポイント 9-() 9-() 9-() 9-() 9-() 9-() 9-() 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV]
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ものづくり も の づ くり プ ロ セ ス の 全 体 像: スタートアップ のための契約 ガイドライン 要求・要件定義 プロセス 概要 スタートアップが描くプロダクトイメージや実現したい機 能等のニーズを明確化・具体化して要件に落とし込む。 何度か原理試作を繰り返しながら、要件定義書や仕様 書を作り込むステップ。 ステップに おける Input Process Output Input ●プロダクトやサービスのアイデア、デザインイ メージ、ビジネスモデル、学術的な研究成果、など ●【繰り返し時】原理試作品 Process ●協業する設計会社や製造業者の探索・選定 ●自社でプロダクトの要求事項をリスト化 した上で、協業先と「要件定義書」を作成 ●ファクトリー(工 房)を活用し、モック アップ品を自作して製品イメージを具体化 ●要件定義書の内容を仕様書に落とし込む ●要件定義書と仕様書を基に、原理試作の図 面やスケジュール、見積書の作成等を依頼 発生する 可能性が ある費用 原理試作 機能や性能を限定し、全体または一部を作ってみることで、ユーザ への訴求力を確認し、その上でデザインや仕様上の改変をしながら 要件定義書や仕様書、図面等のブラッシュアップを繰り返す、リー ンなステップ。試作品を使って資金調達を試みる段階でもある。 Input Process Output 05 繰り返し Output ●初期の要件定義書、仕様書、図面、スケ ジュール、など ●プロダクト(またはその一部)をつくってみる ●試作品を活用して想定ユーザが価値を感 じるかを確認(Validation) ●デザインや仕様上の改善点を確認しながら、 仕様書や設計書等をブラッシュアップ ●試作品、イメージ動画、ユーザの声など を活用して資金調達の推進 ●原理試作品 ●要件定義書、仕様書、試作図面、試作ス ケジュール、見積書など 詳細検討費(対応可否の判断) デザイン・設計費 など 材料費、部品調達費 製作図面開発費、試作製造費 あるある問題 事例・リスク ●「対応できる」と言われ無償での詳細検討を依頼した が、数ヵ月後に「要求を満たすものが作れない」と断ら れてスケジュールが大幅に後ろ倒しに ●設計会社に発注して作成した図面が、製造業 者から 「この図面では製造不可能」と断られる ●どんどん意見を出し合ってスピード重視で、を主張する あまり、製造業者から協業を断られる結果に ●機密情報をいつの間にか開示していた ●製作された図面や回路図の帰属先を協議し忘れ、後か ら買い取り請求をしたら想定外の値段を提示された ●出来上がった原理試作品が想定イメージと違ったこと が原因で揉め事に ●試作用の部品調達が難航しスケジュールが大幅に後ろ 倒しに 対策・ 予防策 業務面 ●まず、「要件定義書や仕様書は発注者が作成し、製造 業者に提示するもの」という前提を忘れずに ●スピード重視なら、初期の要求・要件定義の業務も有 償で外部委託することも選択肢に入れよう ●委託する業務範囲は事前に明確に伝えておこう ●協業の相談を開始する以前に、自分たちが保有する既 存の機密情報を整理・管理しておこう ●戦略的な特許申請の必要性について検討しよう ●できるだけ早い段階で、提供を受けるべき製作図面や 回路図、発生する知財の権利の帰属について相談を ●スタートアップとして確保したい権利の強さに応じ、価 格交渉が必要であることも覚えておこう ●毎回の試作の目的と使い道を明確に。双方の合意を書 面に残すことも忘れずに ●部品調達は要件定義に併せて調達メドの確認を 契約面 ●機密情報に関する双方のトラブルを減らすため、相談が ある程度進んだらNDAを結ぶ意識をする ●原理試作まで進んでからうまく試作できないこともある。 あらかじめ契約解消の要件を定めておくことも選択肢である ●原理試作と量産試作は製造業者を変えることも多い。契約の対象 としている業務範囲を明確に区切るか、解消事由を定めておこう ●自社の資本金額によっては下請法の規制対象となる可能性が あるので注意しよう Contract Guideline for Maker Startups など 9-() 9-() 9-() 9-() 9-() 9-() 9-() 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV]
あるある問 題 事例と対 策 量産設計・量産試作 (初期)量産 原理試作を経て具体化された仕様書、図面等を基に、量産化を見越した試 作品、補助成果物(ジグ、量産設備等)を作りこむ。ここからは、後戻り のコストが非常に大きいため、原理試作のリーンな進め方とは異なる慎重 な進め方が求められる。量産と同じ業者に依頼することが多い。 Input Process ●原理試作ステップでブラッシュアップされた(原理試作の) 仕様書、図面や回路図等 ●量産に必要な部素材や部品の選定、加工方法や生産プロセ スの設計、量産設備(金型等)の設計、表面加工の仕様決定 ●量産時に想定される問題点の抽出・改善 ●補助成果物(ジグ、量産設備等)の製作 ●耐久試験、加速化試験等の検査・試験 ●規格の申請 市場へ投入する最終プロダクトを生産ラインに乗せて製造するステップで ある。この段階では、量産試作までとは別の契約(製造委託契約等)を 結び直すことが想定される。 プロダクト単体だけでなく、生産工程の管理が必要となるステップ。 Input Process Output Output ●量産用の仕様書、製作図面や回路図、部素材の調達計画、 生産スケジュールなどが作成されており、それらを発注先の 製造業者と摺り合わせた上で、量産を発注する ●プロダクトによって異なるものの、数百〜数千個程度の量 産を行うのが一般的である ●この段階では、仕上がった製品の検収の重要度が特に高く なる ●ユーザに販売する最終プロダクト ●量産試作品、製作図面、補助成果物(量産設備やジグ、等 の量産に必要となる周辺物)など ジグ・金型製作費、材料・部品費、試作製造費 など 材料・部品費、製造委託費 など ●量産を見越して協業先が変わる・増える中で起こる図面などに関する 著作権トラブル ●作り直しや修正のコストが一気に増大。思った以上にお金がかかる ●量産用の仕様書は出来たが、量産できる部品が調達できないことが判明 ●この段階に来て規制等をクリアできないことが判明 ●量産製品が仕様を満たしていないことが後から判明し、全て廃棄に ●予期せぬ部品代によるキャッシュアウトが発生 ●量産準備は「思った以上に資金が必要」と心得よ。目安は「少なくとも1 回は失敗できる予算」 ●スムーズな量産の実現には、量産試作段階で部品調達を終えていることが必要 ●まず、スタートアップがしっかりと量産の生産工程や進捗状況を把握 し、自分たちが手綱を引いている状態をつくる ●量産試作段階で、試験・検収方法をしっかり決める ●部品・部材や加工等にかかる費用の支払い手順や最低限の発注量の保 証と追加発注のタイミング、リードタイム等について事前に協議・取り決 めする ●量産化時の製造物責任を見据え、品質テストは双方が納得いくレベル まで行おう ●市場投入時にクリアすべき規制等は、要件定義や原理試作の段階から 熟知しておく ●当初から製作図面を買い取る前提で契約・交渉を ●仕様変更の際に発生する工数について事前に合意形成をした上で、発注書の修正や再発注を行う ●想定外の事象(コスト増大、部品調達問題等)に対応するため、当事者の協議 など取り決めておく ●費用分担や製造能力についての取り決めを行うこと ●製造物責任保険の加入も含め、製造物責任発生時の対応も取り決めておく 9-() 9-() 9-() 9-() 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] Contract Guideline for Maker Startups 9-() 9-() 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 06 9 7XEV
ものづくり S T E P 1 スタートアップ 要 求・要 件 定 義 のための契約 ガイドライン 1 プロセス概要 Process リスク 2 あるある問題事例・ Problem case・Risk Input 無料(タダ)より高いものはない? このステップにおけるインプットとしては、プロダクトや とあるスタートアップが、ものづくりを協業する相手を探して何 サービスのアイデア、デザインイメージ、ビジネスモデル、 社か当たった末、 「対応できる」と言われ、無償での詳細検討 学術的な研究成果、などが想定される。 を依頼することにした。しかし、数ヶ月が経った後、 「要求を満 たすものが作れない」と伝えられ全てをゼロから始める結果 に。最終的には約1年の計画遅れになってしまった。 「製造業 者は試作前の相談は当然無料で対応してくれるよ Process ね」と考えていると、トラブルの原因にもなる。必ずしも将来的 に試作や量産の発注に至るか分からないのであればなおさら ●まず、外部の設計会社や製造業者といった協業相手の である。 探索・選定を行った上で、スタートアップが実現したいと 思うソリューション、プロダクトデザイン等の要求事項リ 設計会社に作成してもらった試作図面を 製造業者に持ち込んだら断られた スト、ターゲットユーザの想定等を伝えながら、プロダク トが満たすべき性能や機能等を定義した「要件定義書」 を作成する。 要件定義までの相談を外部の設計会社に委託することにした。 ●次に、要件定義書の内容を仕様書に落とし込む。さら 専門的な知識をベースにしっかりと要件定義書や試作図面のド に、原理試作の前準備として、要件定義書と仕様書を ラフトを作成してくれた。その後、試作の依頼を予定していた製 ベースに、原理試作の図面やスケジュール、見積書の作 造業者に相談にいったところ「この要件・図面では製造は困難」 成等を依頼する。 と断られてしまった。結局、要件定義をゼロからやり直し。 ●協業者との相談を開始する前後で、ファクトリー(工 房)を活用して、簡易なモックアップ品を自作することで スピード重視は分かっちゃいるけど・・・ プロダクトイメージを具体化することも想定される。 「協業するパートナーとは、お互いどんどん意見を出し合って良 い物をスピーディにつくっていきたい」と考えるのはスタートアッ プにとっては当然。しかし製造業者としては、きちんとした技術的 な裏付けを確認するなど、踏むべき手順を踏んでから提案をした Output いことも事実。双方の理解が無いままスピード重視を主張し過ぎ ●本ステップの主なアウトプットとしては、主に要件定 て、せっかく見つかった製造業者との協業がスタートできなかっ 義書と仕様書が挙げられる。試作の前準備として、試作 た事例もある。 図面、試作スケジュール、見積書なども作成される。 ●ここでの成果物は、原理試作を通じて何度か更新さ 機密情報をいつの間にか開示していた れていく前提であり、最低限の情報が整理されたもの 初期の要求定義の段階から相談していた相手(設計会社や製造 である。 業者)に、いつの間にか機密情報を開示しており、アイデアを無 断盗用されたり、公にしてしまうことで特許申請の要件を喪失し てしまった。 07 Contract Guideline for Maker Startups 9-() 9-() 9-() 9-() 9-() 9-() 9-() 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV]
要求・要件定義のステップは、スタートアップが描くプロダクトイメージや実現したい機能等のニーズを明確化・具体化して 要件に落とし込み、 原理試作に向けた仕様を作り込むステップである。 「要件定義書や仕様書は発注者の責任の下で完成させるもの」ということを肝に銘じて取り組む姿勢を忘れないように しよう。そうすれば、製造業者からの積極的な提案を引き出すことも可能となるだろう。 (業務面/契約面) 3 対策・予防策 Measures · Precautions 業務面 要求・要件定義も有償委託を選択肢に 委託範囲を事前に明確に 原理試作に向けた相談対応や書類(仕様書、試作図面や回路 協業は軽い相談から始まることが多いが、製造業者としてはど 図、工程表、見積書)の作成業務は、専門的知見と多大な工数 こかで製造受託ができることを期待して対応している。スタート がかかる行為である。製造業者によっては営業活動として無償 アップは、どの段階でどういう取引をすることを見据えているの で対応してくれることもあるかもしれないが、営業対応ではリ か(例:量産試作まで協業をお願いしたいが、量産は別のところ ソースを集中投入することも難しいだろう。 も含めて検討したい、等)認識をしっかり伝え、双方の理解を摺 スピードを重視するのであれば、初期の要求・要件定義の業務 り合わせておくことが不可欠である。 についても、有償で委託するという選択肢も検討すべきだ。 国内では未だ具体事例は少ないかもしれないが、製造業者にス また、要件定義までを専門に対応する設計会社やデザイナー タートアップのエクイティ(株式など)を持ってもらう方法もあ 等に要件定義・図面作成・完成イメージ図を依頼することもあ る。そうすれば、製造業者も試作段階で契約が切れても、後にス るだろう。その際は、実際に試作を担当する製造業者と連携が タートアップが成長した恩恵が享受できるため、積極的な支援を 取れていることを確認しながら協業を進めたい。 引き出せる可能性がある。 機密情報の管理 自前で要求・要件定義するときは 自社にエンジニア等がいて自社で要求・要件定義ができると さらに、協業の相談を開始する以前に、自分たちの既存の機密 仕様書、図面のコントロールは容易。ただ、エンジニアと製造 情報(アイデアを書いたメモ、議事録、仕様書、図面など)を第 業者のみで話が進んでいってしまい、コスト管理や契約関係が 三者が閲覧できないように管理し(例:鍵のかかるロッカーでの おろそかになるというリスクもあるので、進捗チェックはマメ 書類保管、パスワード付きファイルとして保存)、かつ、協業相 に行いたい。 手に公開できる範囲を決めておくこと。取得が必要だと思われ る特許を検討し、特許申請をしておくことも検討すべきだ。特許 の有無は、資金調達にも影響を及ぼす重要事項だ。 製造業者との意識合わせ・相互理解 製造業者から積極的に提案を引き出したい場合、製造業者からの提案について一方的に責任を押しつけないような配慮も必要だ。例えば、提案 内容を盛り込んだ要求定義書や仕様書については、自らその内容について了承したこと文書(議事録)で残すといった工夫も実施したい。 契約面 相談がある程度進んだ時点でNDAを結ぶことは、お互いのトラブルを減らす意味でも意識しておきたい。 (省庁のサイトなどには NDAのテンプレートが公表されている)試作製造段階まで進んでからうまく試作できなかったということもあるため、まずは設計の み委託してみるか、契約解消の要件を定めておくことも選択肢である。 9-() 9-() 9-() 9-() 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] Contract Guideline for Maker Startups 9-() 9-() 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 08 9 7XEV
ものづくり S T E P 2 スタートアップ 原理試作 のための契約 ガイドライン 1 プロセス概要 Process リスク 2 あるある問題事例・ Problem case・Risk Input 知財で大問題 原理試作のステップにおけるインプットとしては、原理 原理試作ではプロダクトの図面が固まり始めることになる。 試作品用に準備した初期の要件定義書、仕様書、図面、 自分のイメージが具現化して喜びもひとしおとなるタイミング スケジュール、等が想定される。 だが、試作図面、回路図などには著作権等の知財が発生する 可能性があることをお忘れなく。 「著 作 権 等の知財は、アイデアの生みの親であるスタート アップに帰属するんじゃないの?」と思うかもしれないが、そ うではない。実際に、プロダクトを作った後に回路図やパター Process ン図などを製造業者から提供してもらえなかったり、提供さ ●原理試作のステップでは、要求・要件定義で作成した れたとしても著作権は譲渡も使用許諾もされないことが判明 要件定義書や仕様書、試作図面を基に、実際にプロダク し、有償での買い取りを相談したところ、想定外の金額を提 トをつくってみることから始まる。その際、最終プロダク 示されるといったこともある。 トの一部の機能に限定したり、プロダクトの一部分のみ を制作するといった選択肢もある。 試作品の完成イメージに ずれがあることでトラブルに ●できあがった試作品を活用し、当初考えた機能が達成 されそうか、ターゲットユーザには価値を感じてもらえそ うか、を確認するPoC(Proof of Concept)を行う。 ●PoCの結果を踏まえて仕様書や試作図面のアップデー トを行い、必要に応じて新たな試作品の制作をするとい うサイクルを繰り返すことで、量産試作に向けてプロダク 原理試作はそもそも確認ポイントを限定して機能や性能をそぎ 落とした試作品である。しかし、完成イメージに双方のずれが あったことが原因でもめごとになることがある。例えば表面加 工を簡素化した試作品について「こんな表面仕上げのイメージ じゃない」といった点で一悶着が起きることも。 トと書類の完成度を高めていく。 ●この際に作成される試作品、イメージ動画、ユーザーの 部品調達が難航し、試作スケジュールが 大幅に後ろ倒しに 声等を活用して、クラウドファンディングやVC調達等、 量産に向けた資金調達を進める。 試作を開始した段階で部品調達が難航し、納期が予定の2倍以 上かかる事態に。コンセプト確認のスケジュールも大幅に後ろ 倒しせざるを得なくなってしまった。 Output 原理試作のステップにおけるアウトプットは、ブラッシュ アップされた要件定義書、仕様書、図面(製品図面、製作 図面)や回路図等が想定される。これらの書類をもって、 量産試作の相談を開始できる状態となる。また、原理試作 品やそのイメージビデオ等を活用して、クラウドファンディ ングや更なる資金調達も達成している可能性がある 09 Contract Guideline for Maker Startups 9-() 9-() 9-() 9-() 9-() 9-() 9-() 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV]
原理試作のステップは、機能や性能を限定しつつ実際にプロダクト(またはその一部)をつくってみることで、ユーザが実際 に価値を感じるかどうかを確認し(=Validation)、その上でデザインや仕様上の改善をしながら要件定義書や仕様書、 試作図面等をブラッシュアップすることを繰り返すことでプロダクトの完成度を高めていく、リーンなステップである。 また、できあがった試作品で資金調達を進める段階でもある。 (業務面/契約面) 3 対策・予防策 Measures · Precautions 業務面 知財について 試作品のアウトプットイメージについて 原理試作までの段階では、著作権等知財の対象となる試作図 原理試作では、毎回の試作ごとに、 「この試作で確認したい項 面、回路図が作成される。製造業者と協業する際には、できる 目は何か」、 「何に使う試作品なのか(例:展示会に展示、ユー だけ早い段階で、提供を受けるべき製作図面や回路図、発生 ザテスト等)」を事前に明確化して、何を作り、何を省くのか、を する知財の権利の帰属について相談をして認識を合わせてお 双方で認識を合わせておきたい。もちろん、書面に残すことも くことが不可欠である。 忘れずに。 まず、協業を開始する前にスタートアップ側で今回の協業に関 連する既存の知財があるか整理し、その知財の存在を相手に 試作用の材料や部品の調達スケジュール 明示することが重要である。これによって、協業が開始した後 に発生した知財との混同を避ける下準備ができる。 原理試作で必要な材料や部品について、要求・要件定義の段 次に、協業開始後に発生する可能性のある知財(例:試作図 階から調達のメドを確認しながら進めたい。 面、回路図)については、どちらの帰属とするのかを具体的に 決めておく必要がある。 自分たちの想定するビジネスモデル を基に、対象とする知財についてどの程度の権限を所有してい なければならないか、が決まるはずだ。例えば、あくまでプロダ クトの生産・販売を主導する事業を目指すのであれば、量産段 階で対象とする知財を利用して別の製造事業者との協業も想 定し、知財の共有または最低でも使用権を確保する交渉をす る必要がある。 当然ながら、スタートアップとして確保したい権利の強さに応 じた価格交渉が必要なことは覚えておきたい。 契約面 原理試作と量産試作では製造業者を変えることも多いため、契約の対象としている業務範囲を明確に区切るか、解消事由を定めて おくほうが良い。スタートアップは小規模といっても資本金額によっては下請法の規制対象となり、発注書の明確化や支払い遅延防 止などの義務を負うことに注意すべき。 9-() 9-() 9-() 9-() 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] Contract Guideline for Maker Startups 9-() 9-() 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 10 9 7XEV
ものづくり S T E P 3 スタートアップ 量 産 設 計・量 産 試 作 のための契約 ガイドライン 1 プロセス概要 Process リスク 2 あるある問題事例・ Problem case・Risk 量産を見越して協業先が 変わる・増える中で起こる知財トラブル Input 量産設計・量産試作のステップにおけるインプットとし ては、原理試作ステップでブラッシュアップされた(原 量産設計・量産試作では、原理試作と比して工場に求める質、量、 理試作の)仕様書、図面や回路図等である。 範囲が異なるため、この時点で再度工場を全て探し直し…というこ とも珍しく無い。例えば、質の面では対応できたとしても、量の面 で原理試作の協業先だけでは対応できないことがあり、生産量に 対応できる製造業者、場合によっては複数の業者に分割して発注 することもあり得る。その際、原理試作業者から製作図面を買い Process 取る必要があるが、その相談を試作時にしていなかったため事後 量産設計・量産試作のステップでは、原理試作の最終 交渉となり、断られたり、険悪な関係になったり、場合によっては 図面等をベースに製造業者との相談を行い、量産する 製作図面の著作権を争うトラブルにも発展してしまう結果に。 ために必要な部素材や部品の選定、加工方法の決定、 作り直しや修正のコストが一気に増大。 思った以上にお金がかかる 量産設備(金型等)の設計、表面加工の仕様決定、補助 成果物(ジグ・量産設備等)、生産手順書の作成などを 進めていく。耐久試験、加速化試験等の検査・試験も行 う。規格の申請等が必要な場合もある。 できあがった量産試作品が思ったイメージと違うから修正を求め たところ、想像以上の期間と予算が必要だった、、、という事例 は枚挙に暇がない。量産試作段階では、実際の量産に耐える水 準の部品や電子部品等を揃えた上で、量産向けの加工ラインを 想定した設備を作りながら試作を行うため、簡単に「一部を修 Output 正」というわけにはいかないのが実際のものづくりだろう。 量産設計・量産試作のステップにおけるアウトプットと 量産用の仕様書は出来たが、 量産できる部品が調達できない しては、試作品に加え、量産化を見越した試作品、補助 成果物(ジグ・量産設備等、量産に必要となる周辺物) が挙げられる。 量産化を見据え仕様書を固めたとしても、すぐに部品が調達で きず、全体の納期が遅れる場合がある。 すぐに部品を調達できない理由は大きく二つある。一つは、ス タートアップ側に部品調達のコストを賄える資金力がないという こと。もう一つは、想定していた部品が品切れ状態であり、そも そも発注できないということ。量産試作の時点で部品調達が出 来ないことに気付く場合がある。 市場投入に要求される規制等をクリアできない 市場投入目前となり、規制等を確認したところ、そもそも現試作 ではクリアできない設計上の問題が発見される事例がある。 11 Contract Guideline for Maker Startups 9-() 9-() 9-() 9-() 9-() 9-() 9-() 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV]
量産設計・量産試作のステップは、原理試作を経て具体化された仕様書、図面等を基に、量産化を見越した試作品、補助成果 物(ジグ・量産設備等)を作りこんでいくステップである。ここからは後戻りのコストが非常に大きく、原理試作のリーンなス テップとは異なる慎重な進め方が必要となる。量産と同じ業者に依頼することが多いステップだろう。 (業務面/契約面) 3 対策・予防策 Measures · Precautions 業務面 予算の話 量産に向けた準備 まず、思った以上に資金が必要と心得ておくこと。量産試作 量産試作を終え、量産ステップに円滑に移行するためには、 は簡単にはやり直しがきかないが、必ずしも思ったようなプロ 量産試作の段階で部品調達の検討を終えている必要がある。 ダクトが仕上がってくるとは限らず、生産設備の作り直しも含 部品選定の際は、価格のみではなく、入手しやすいか・廃版に め、 「抜本的なやり直し」が発生するリスクは想定しておく必 ならないか・廃版になっても代替品が購入可能か、といった観 要がある。 点も検討することが重要。 ハードウエアの開発では、開発後半での機能追加や部品追加 また、量産化時の製造物責任を見据え、責任分担範囲を確定 は困難であるため、原理試作では想定よりもリッチな機能を する観点から仕様書や品質基準、試験方法を固め、品質テス 想定し、不要機能を削除することで量産試作に繋げることが トはスタートアップ、製造業者双方が納得いくレベルまで行 重要。 う。試験は特有のノウハウが必要になるため、加速試験等の ものづくりスタートアップを立ち上げ、大手メーカに事業売却 ノウハウを持つ事業者に相談することも選択肢である。 した経験をもつ経営者からは、 「少なくとも1回は失敗できる スムーズな量産への移行を実現するため、生産手順書を作成 予算。最低これくらいかかるだろうと想定する予算の2倍(同 することも有効である。 じプロセスを再度やり直せる予算)」を目安に、という意見も 市場投入時にクリアすべき規制等は、要件定義や原理試作の ある。 段階から調査しておき、量産試作時には規格取得のための試 作品を製作・テストし規格が取得できるように。 契約面 当初から製作図面を買い取る前提で契約・金額交渉を進めておく必要がある。特定の試作事業者に依存し過ぎず、スタートアップの 判断で工場を変更できるような状態にしておく。 スタートアップと製造業者が、量産試作におけるアウトプットに合意できるよう事前にアウトプットイメージ(仕様書や品質基準)で合 意形成をすることも必要である。 仕様を変更する際に発生する工数について事前に合意形成をした上、発注書の修正や再発注を行う。 想定外の事象(コスト増大、部品調達問題、規制対応)に対応するために、当事者の協議や合意事項の変更などの取り決めを行うこ とも重要。 9-() 9-() 9-() 9-() 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] Contract Guideline for Maker Startups 9-() 9-() 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 12 9 7XEV
ものづくり S T E P 4 スタートアップ ( 初 期 )量 産 のための契約 ガイドライン 1 プロセス概要 Process リスク 2 あるある問題事例・ Problem case・Risk 量産した途端、製品の品質低下や 歩留まり悪化が発現し、設計からやり直し Input 量産用の仕様書、製作図面や回路図、部素材の調達 計画、生産スケジュールなどが作成されており、それ 量産試作では問題なく製作できることを確認したのに、量産ラ らを発注先の製 造業 者と摺り合わせ上で、量産を発 インにのせた途端に加工・組み立て精度のブレが許容範囲を超 注する。 えたり、歩留まりが著しく悪いことが発覚したり。結局、設計の やり直しをすることに。 量産製品が仕様を満たしていないことが 後から判明し、全て廃棄に Process ●プロダクトによって異なるものの、数百〜数千個程度 の量産を行うのが一般的である。この段階では、特に仕 上がった製品の検収の重要度が高くなる。 ●市場不具合品や傾向不良への対応といったアフター 試作段階で問題なく稼働していると判断したが、量産製品がで きてみると予定の稼働期間を大幅に下回り数日しか稼働しない ことが判明。委託先は要件定義ステップから大変協力的な製造 仲介業者で、口約束で多くのことを依頼してきた経緯もあり、責 任を問うわけにもいかず。結局、全ての製品を廃棄することに。 対応の取り決めも行う。 予期せぬ部品代のキャッシュアウト 調達のリードタイムが長い部品代だけ先に費用を払ってくれと Output 突然言われ、予期せぬキャッシュアウトが発生。資金繰りに窮 ユーザに販売する最終プロダクトが成果物である。 する事態に。 販売後の製品に不良品が発生したが 原因究明ができず対策もスムーズに進まず 販売した製品が不良品として大量に返品。しかし、製造業者 と原因究明に向けた協力がスムーズにできず、対応がどんど ん遅れクレーム発生や新たな不良品の発生などトラブルが収 集つかない状況に。 13 Contract Guideline for Maker Startups 9-() 9-() 9-() 9-() 9-() 9-() 9-() 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV]
量産ステップは、市場へ投入する最終プロダクトを生産ラインに乗せて製造するステップである。この段階では、量産試作 までとは別の契約(製造委託契約等)を結び直すことが想定される。 プロダクト単体だけでなく、生産工程の管理が必要となるステップでもある。 (業務面/契約面) 3 対策・予防策 Measures · Precautions 業務面 自ら生産管理の手綱を持つ心がけを 量産ラインの準備・計画 まず、スタートアップがしっかりと量産の生産工程や進捗状況を把握し、自 量産試作では1〜3個といった少数に対して熟練者がベストアプローチで加工・組み立 分たちが手綱を引いている状態をつくることが重要である。たとえ製造を てを行う一方、量産では、例えば1,000個以上の台数を多様なスキル水準の工員が 仲介してくれる業者に製造委託をする場合にも、その先の製造業者との責 量産ラインで製作する。そのため、加工誤差やパーツの性能誤差などを考慮して「性 任分担や何かが起きた時の対処法についてしっかり確認をしておきたい。 能と作りやすさのバランス」を取りながら製品設計や手順・工程計画を行うことが不 海外で製造した方が安価なケースでも、製造現場の把握・管理が困難にな 可欠となる。そのようなノウハウが社内に無い場合は、早期に量産の経験豊富な事業 る点を考慮した上で、国内・海外の選択肢を検討すべき。 者(量産化アドバイザー等)に協力・アドバイスを依頼することが必要だろう。 納品・支払いの取り決め 不良品・不合格品の判定 また、原理試作のパーツと量産試作(量産)のパーツは異なることが多く、試作で問 量産工程では部品・部材や加工等にかかる費用も大きくなることから、支払 題なく稼働していたものが、量産で突然動かなくなるなどの問題が発生することも いのタイミングや、最低限の発注量の保証と追加発注のタイミング、リードタ ある。時間との勝負の中ではあるが、量産試作の段階でしっかりと量産製品を前提 イム等については事前に相談しておく。金型のような主要費用だけでなく、そ としたチェックや検収方法の検討を実施したい。「検査基準書」等をしっかりと合意 の他の部品等についても、書面上で納品・支払いに関する取り決めをしておく で定めておき、不合格品の修補・返品に対応しやすくしておくことも重要である。 ことで、資金計画が明確化できる。 アフター対応 製品販売後の対応への準備も怠ってはいけない。不良品が返品された際には他の製品への影響を判断を素早く行う必要があるため、製造業者との連携が必須になる。返品後の解析期 間などを明確にしておく、傾向不良と認定するための条件を決めておく、といった相談を製造業者と事前にしておきたい。また、リコールの手続きについても計画しておくとよいだろう。 契約面 費用分担や製造能力についての取り決めを行うことが重要。加えて、製品生産・販売を終えた時点の残材等の買取についても事前に協議しておきたい。製 造物責任保険の加入も含め、製造物責任発生時の対応も取り決めておくこと。 Tips 海外での量産は慎重に! 初期の量産ステップでは、海外の製造拠点が 選択肢になることもあるだろうが、トラブル事例も少なくない。 海外で生産した量産製品が仕様を満たしていないことが後から判明し、全て廃棄に 試作段階で問題なく稼働していると判断したが、量産製品ができてみると予定の稼働期間を大幅に下回り数日しか稼働しないことが判明。製造拠点 は中国であったが、直接の委託先は大変協力的な仲介業者で、口約束で多くのことを依頼してきた経緯もあり、責任を問うわけにもいかず。また、中国 の工場からは原因分析や改善に向けたアドバイスを得られなかった。結局、全ての製品を廃棄することになった。 ⇒海外での生産は、現場の把握が困難となるため特に注意が必要である。たとえ海外で製造した方が一見コストが安いケースでも、製造現場の把 握・管理が困難になる点を考慮した結果、国内の製造業者を選択して成功したスタートアップもいることを覚えておきたい。 9-() 9-() 9-() 9-() 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] Contract Guideline for Maker Startups 9-() 9-() 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 14 9 7XEV
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ものづくり スタートアップ のための契約 ガイドライン Check List 各ステップの活動をはじめる前に、これらの項目は最低限チェックしておこう! 要求・要件定義 自社の既存の機密情報を把握・管理できているか 相談の初期段階で、守秘義務契約の必要性について検討したか 特許申請を想定する知財の有無について検討したか 協業を想定する業務の委託範囲について明確に提示し、理解を得たか 下請法の規制対象になる取引ではないことを確認したか 発注業務がスタートする前に、費用や知財についての相談・取り決めを行い、契約を締結できているか 市場投入時にクリアすべき基準・規制、取得すべき規格等は調査したか 原理試作 発注相手に、発注業務に関係する可能性のある自社の既存の知財について通知したか 発注業務によって発生する知財の帰属について相談・取り決めを行ったか 試作品の用途や成果物イメージを明確に提示し、理解を得たか 試作で必要な材料・部品の調達メドがついていることを確認したか 下請法の規制対象になる取引ではないことを確認したか 目安として「1度失敗できる予算」が必要であることを認識しているか 量産試作 量産時に必要な部品・パーツの調達の検討を終えているか 量産工場の選択自由度を高めたい場合、製作図面は自社で保有できるよう交渉・契約を行ったか 仕様を変更する際に発生する工数・コスト負担・スケジュール変更等に関する取り決めをしているか 発注業務がスタートする前に契約を締結できているか (業務開始後)設計、製作手順の検討において、量産を想定した誤差やバラツキを加味したか ︵初期︶量産 部品・パーツや加工等にかかる費用の支払いのタイミングや頻度、最低限の発注量保証や 追加発注のリードタイム、残材等の買い取りについて、事前に相談・取り決めをしたか 不良品への対応(原因特定、改善策の検討、費用の負担等)について、 量産業者と事前に相談・取り決めを行ったか リコールが発生した場合の手続き・手順について検討したか 自社で生産状況が把握・管理できる状態を確保できているか 9-() 9-() 9-() 9-() 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] Contract Guideline for Maker Startups 9-() 9-() 7XEVXYT*EGXSV] 7XEVXYT*EGXSV] 16 9 7XEV