【2019年度版】ものづくりスタートアップと製造業等の連携ケーススタディ

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May 10, 23

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【14社収録】ものづくりスタートアップと製造業等の連携ケーススタディ(https://flag.jissui.jp/n/ncee12a1d1763)にて紹介しています。

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各ページのテキスト
1.

ものづくり C o n t r a c t スタートアップと C a s e s t u d y 製造業等の連携 f o r M a k e r S t a r t u p s ケーススタディ 2 ver.2020/3/19

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ものづくり スタートアップの 事業化に向けた ポイント ものづくりスタートアップの事業化に 向けたポイント 「ものづくり」 「ビジネス」 ・ 「人材・組織」 ① 手をひたすら動かして試作品を ③ 試 作 品 は コミュニケ ーション 作るのが第一歩 ハードウェアを構 想し、試 作 品を 作 るところから ②「 相 談 」を 駆 使 して 足り な い ④ VC へドアノックして資 金 調 達 技 術 と ノウハ ウ をど ん ど ん の 可 能 性 を 探 る・補 助 金 も 吸収、協力者を獲得 始まる。 ■開発をまるごと外部に委託することも可能といえば 可能だが、それでうまくいくケースはとても少ない。 ■ものづくりスタートアップが手 掛けるプロダクトの 原理試作 ■ものづくりスタートアップは、目指す事業に必要な ツール・早い段階で潜在顧客と 使えるかも ■次の量産化設計・試作段階では、必要な資金の桁が 多くは、多様な技術の集合体。知見やノウハウが足り 変わる。その段階に備えて資金調達の必要が出てくる ながら試作品を作り上げることが重要。 なければ専門家にどんどん尋ねる。大学の研究者や のもこの頃である。 ■原理試作はもちろん1回きりで終わるものではない。 製造事業者、身の回りのエンジニアに、 「発注」よりは ■日本には、シード期のものづくりスタートアップに 設計→試作→評価・検証のサイクルを高速で回し、一号 「相談」していくことで、適切な協力を得られること 投 資できるVCはそう多くない。適切なVCを探し が多い。この段階での相談先が、後々までの協力者と 出していくつか巡れば、資金調達の可能性については なってくれるケースも。 だいたい見えてくる。国等の補助金を使うことを検討 ■この段階で量 産を見据えて製 造事業 者に相談して するのも良い。 おくと、量産に適した設計ができ、後の工程で手戻り 連携先選びは慎重に ⑥ 粘り強いコミュニケーションで 製造工程を理解 細かいことは要望まで伝えきる 見直しにも時間や費用がかかり、手戻りがたびたび 量 産 化 設 計・試 作 出血する クルを回していくことは難しくなる。設 計の軽微な ■ 試作 品を見せることで、はじ めて 相 手 のニーズ が 具体的に見えてくることは多く、そのニーズを設計に 反映させていくことで、試作品の改良が進んでいく。 ⑦「連携→PoC→PR」のサイクル 引き寄せる ⑤ ここ か ら は 、手 戻り するた び 始めると、これまでのように素早く身軽に試作サイ とる。 を高速で回して大きなディールを が発生しにくくなる。 ■量産化試作の段階に入って試作用の金型なども作り ■最低限動く程度のものでよいので、試作品ができたら なるべく早く潜在顧客やVCとコミュニケーションを まずは自分たちで 手 を動 かして、失 敗を 繰り返し 機、二号機、三号機と、どんどん改良を加えていく。 接触する ⑧ ものづくりができないとビジネス はできない 逆もまた然り 両部門のバランスを大切に ■スタートアップが 作ったプロダクトを、はじめから 使ってくれ る企 業 や人はとても少な い。事 業 化 の 見 通しが立ちづらいときは 、初 期に関 心を寄 せて くれた潜在顧客と緊密な連携関係を築き、小規模な P o C プ ロジェクトを 短 期 集 中 で 行 うところから ■ もの づくりのプロセ ス は スタートアップ にとって 始めると良い。良い結果 が出ればそれを徹 底 的に 難しく、また楽しい。だからといって、経営者がもの PRする。そうすることで次の引き合いが舞い込む ■量産化試作や量産のパートナーが決まっても、相手に ■この段階での連携先となる製造事業者探しは、でき づくりに没頭しすぎると、「ものを作るだけの会社」 ようになり、さらにいくつかのPoCプロジェクトを 「 任 せ きり」にして は い け な い 。「 量 産 の こと は るだけ慎重に進めたい。候補先をリスト化し、設備や になってしまう。経営者は、事業を成長させるための 回していくことで、大きなディールに結びつくことも わからない」とパートナー 任せにしていると、作り 技術だけでなく、コミュニケーションの取りやすさや ビジネス開発に注力し、そのためのチームづくりにも 少なくない。 やすい方向に流れてしまい思った通りのものを作れ スピード感も含めて総合的に判断することが大事。 ない。細部までこだわるなら、しつこいほどのコミュ ■逆もまた然りで、事業開発に注力しすぎるあまり開発 ニケーションで製造工程を理解し、具体的な要望を リソースが不足するケースも多く、「ものづくり」と 発生すると資金はあっという間に枯渇する。 早い段階で取り組む必要がある。 伝えきる必要がある。 「ビジネス」のバランスは永遠の課題だ。 量産・ 事業化 01 Contract Casestudy for Maker Startups Contract Casestudy for Maker Startups 02

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ものづくり ものづくりスタートアップ・エコシステム 構築事業の概要 スタートアップ・ エコシステム 構築事業の概要 経済産業省「スタートアップファクトリー 構築事業」について ケーススタディ集について このケーススタディ集は、実在するものづくりスタートアップ 経済産業省では、2018年度から、ものづくりスタートアップが 計14 社に対して 詳 細なヒアリング 調 査を実 施し、製 品開 発 や 生まれ・育つためのエコシステム形成を目指 す 事 業「スタート 事 業 化 の 過 程 で 起こった 出 来 事( 主にトラブル)と、そこ から アップファクトリー構築事業」を行っています。 スタートアップが得た学びを整理したものです。 初年度の2018 年度では、ものづくりスタートアップの開発・ 調 査 は 2 018 年 度と2 019 年 度の 2 か 年 度に わたって 実 施 試作環境を整備するというコンセプトから、製 造事業 者による され 、2 0 18 年 度 版 が上 巻( 6 社 分 収 録 )、2 0 19 年 度 版 が スタートアップ支援の取り組みに対して補助金を交付する事業を 下巻(8社分収録)という形でまとめられています。 行いました。この事業では、全国で37件の取り組みが採択され、 想定されている読者層は、ものづくりスタートアップの経営者や メンバー、そして、将 来ものづくりスタートアップを 作りたい・ 参加したいと思っている方々です。 これらに参加した事業者が、今も多くのものづくりスタートアップ の開発・試作・量産を支えています。 ケーススタディの使い方 このケーススタディ集では、企業ごとに2から4つの「ケース」を記述しています。基本的に時系列に並んでいるため、 前から順に読んでいけば各企業の開発・事業化のストーリーが共感をもって理解できるはずです。 また、各ケースとそれに紐づく「スタートアップが 得た学び」は大まかにカテゴライズされており、Indexページで カテゴリごとに整 理されています。読者の方は、このカテゴリから気になるケースへ飛んでいただき、それ 単体として 読んでいただくことも可能です。 Index2では、ケースを「ものづくり」「ビジネス」 Index3では「スタートアップが得た学び」を 「人材・組織」に分けて整理している 連携先ごとに整理している 2019年度には、上述のスタートアップ・エコシステムの強化に ものづくりスタートアップが製 品開 発・事 業化を進めていく 向けて、スタートアップと製 造事 業 者が 連 携して取り組む製品 過程では、実に様々な課題が発生します。現状において、多くの 開 発・量 産 化の取り組みを資 金 的に支 援して成 功 事例を 生み ス タートアップ は 日 々 訪 れ るトラブ ル を 自ら の 創 意 工 夫 で 出すとともに、その連 携 過 程で 生まれるノウハウをレポートと なんとか 乗り越えたり、ときに乗り越えられずに大きな痛手を して取りまとめ、他のスタートアップに横展開するという事業を 被る、ということを繰り返しています。しかし、これらの課題は、 行いました。この事 業 の成 果を取りまとめたものが、本ケース 実は多くのスタートアップが共通して経験するもので、その解決策 スタディです。 にも共通するポイントのようなものが存在するようです。 ものづくりスタートアップが直面する課題のパターンや解決の ポイントを明らかにし、わかりやすい形で整理することで、次に (2018年版の上巻は、2019年度事業のプロトタイプという位置づけで、2018年 下半期に先行して作成されたもの) 同じ課 題に直 面したスタートアップが 素早く・適切に解決 策を 見 出せるようにすること。この ケース スタディは 、そのような 目的で製作されました。 なお、Indexは上巻・下巻共通です。上巻を読んでいて下巻 のケースが気になった場合や、その逆の場合は、下記QR 2019年度事業の実施スキーム 委託 レポートを取りまとめて 公開して、ノウハウを共有 他のプレーヤーへ波及効果 シンクタンク等 取材 執行団体 補助 (10/10) 補助 (2/3以内) METI スタートアップ等 コードURLからダウンロードまたは閲覧してください。 発注 スタートアップ ファクトリー等 その他製造支援 事業者等 実案件を通じて 連携加速 活用 その他専門家等 03 Contract Casestudy for Maker Startups Contract Casestudy for Maker Startups 04

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ものづくり スタートアップ・ エコシステム 構築事業の概要 I n d e x 1. 企業名から探す ina ho P14 先 の見 え な い 共 同 研 究 を 継 続し、モ チ ●大学との共同研究においては、前提条件の共有 ベーションと効率が低下 が必要●自分たちで解決策を考え、開発方針の取 トリプル・ダブリュー・ジャパン P32 初 めての 量 産 は 最 低 ロット 3 , 0 0 0 台、 大企業との連携は、大ロット・高品質の製造でこそ 調整も難航 活きる 綿 密 なリサー チ に よる 連 携 先 企 業 の 工場に足を運び、総合的な視点から連携先を決定 選定 する ハードウェア開発に注 力しすぎるあまり ●ハードウェア開発自体を目的化してはならない 事業開発が進まない ●開発・量産面での大企業との連携をハードウェア 捨選択を行う P15 P16 P17 アグリテック特有の収穫サイクルの長さや アグリテック分野でも工夫次第でPDCAサイクル 圃場の変化への対応 の高速化が可能 立て続けのデモが開発リソースを圧迫 営業サイドと開発サイドが目線を合わせることで、 資金調達と開発のバランスをとる 会社の拡 大に伴い、スタッフの情 報共有 P33 tsumug P35 組織のあるべき姿は、その時々で変わる 開発の土台とする や連携にほころびが… P36 TELEXISTENCE P19 P20 P21 P22 大 学 発 スタートアップ で も 製 品 設 計 は 「ものづくり」は「研究成果」の延長線上にあると ゼロからスタート は限らない エンジニア採用は地道なスカウト 地道なスカウトの成否を握るのは、共に実現する ビジョンへの共感 時間軸が異なるハードとソフトの融合に ハードウェアとソフトウェアの考え 方のギャップ 苦労 を 前 提とした 対 話・コミュニケーション が 重 要 規格・標準に沿ったリスクアセスメントの 自社 単 独 で 対 応 可 能 なリスクを 絞り込むことで 実施 規格・標準に準拠 Consumer P24 Electronics Show ●情報発信を効果的に行うことで協業候補先の方 (C E S)出 展 P Rを 通じた 協 業 候 補 先 の から接触してきてくれる●既存の信用力を借用する 獲得 製 造事 業 者への 量 産 設 計 の 発 注 が上手 P25 くコントロールできない事態 P26 P28 P29 P30 Contract Casestudy for Maker Startups P39 P40 かたちでPRを仕掛け、拡散を狙う P42 P43 ●製造事業者に頼り過ぎず、スタートアップ側がもの 実証実験フルサポート事業への スタートアップに協力的な自治 体と連 携し、実証 応募と採択 実験の環境を確保する 雇用形態にこだわらないチームづくり 相 手 に伝 わ るわかりや すい言 葉 で、委 託 業 務 の 認識を合わせる "個別"のカスタムメイド製品の"量 産"化 実現したいモノをものづくりのプロの助けを借り の検討 て製品として実現 ユーザーフィードバックを専門的知見から 専門 的な 知見がないとできない課 題 分析 や 分析し市場性を見極め プロダクト改 善 がある 米 軍研究開発プログラムの成 果を基に、 新たなプロダクト開発で遭遇した学術的にも未解明 民生市場向け製品の開発を推進 な課題もアジャイル開発で乗り越える 米国スタートアップと日本老舗企業が開発 ●経営と現場の潤滑油となるマネジメント層の重要性 を円滑に推進 ●設計変更などを見越してSOWを契約に盛り込む づくりプロセスをコントロールすべき●ものづくりビ ジネスの意思決定経験者から支援を受けられる状態 をつくりだす 05 ジャパンヘルスケア Seismic Genics ファーストアセント P37 福岡市 評価検証を通じた改良・エビデンス蓄積に エビデンス収集と適切な発信によって製品の評価を よる信頼性向上 高めることが可能 国立研究機関との初めての共同研究 業界内のハブとなる組織・人物の力を借りて認知と ケーススタディ1 掲載企業 MAMORIO ロビット チャレナジー (ケーススタディ1 P13〜) (ケーススタディ1 P23〜) (ケーススタディ1 P32〜) つつう ピクシーダストテクノロジーズ アクセルスペース (ケーススタディ1 P43〜) (ケーススタディ1 P51〜) (ケーススタディ1 P55〜) 信頼を獲得 大手企業との初のPoC案件獲得に頓挫 協業企業の状 況、目指すゴール、メンバー 個人の 立場を知り、リスク許容度を見極める スタートアップファクトリーとの協業深化 スタートアップファクトリーの製 造技 術を用いて 効率的にハードウェア試作を繰り返す Contract Casestudy for Maker Startups 06

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ものづくり スタートアップ・ エコシステム 構築事業の概要 I n d e x 2 . ケースの種 類から探す 「ものづくり」に関するケース 原理試作 原理試作を何度も繰り返しつつ、要件定義書や仕様書、図面、部品リストを作り込む。 先 の見 えな い 共 同 研 究を 継 続し、 モチベーションと効率が低下 inaho ①(P14) Consumer Electronics Show (CES)出展PRを通じた協業候補先 の獲得 Genics ①(P24) 米 軍研究開 発プログラムの成 果を 基 に 、民 生 市 場 向け 製 品 の 開 発を 推進 Seismic ①(P42) ピ ッ チ イベ ント を 通 じ た 有 力 な スタートアップ 支 援 者との 出 会 い チャレナジー 1.1(P34) 墨 田 区の 町 工 場 による設 計・試 作 支援を受けて試作機を製作 チャレナジー 1.2(P35) 量産化設計・試作 07 アグリテック特有の収穫サイクルの 長さや圃場の変化への対応 inaho ②(P15) 大学発スタートアップでも製品設計 はゼロからスタート TELEXISTENCE ①(P19) 時 間 軸 が 異 なるハードとソフトの 融合に苦労 TELEXISTENCE ③(P21) サプライチェーン維持・見直し・次世代機開発 綿 密なリサーチによる連 携 先 企業 の選定 TripleW ②(P33) 一 部の販 路では円滑な取引条 件 交渉に成功 MAMORIO 2.3(P21) 大企業の要望を受けて企画・提案を 行うものの、資 金面で折り合わず、 自社資金によってスタートする つつう 1.1(P45) 初期段階では仕様を作り込まず、試 作、実験、設計変更のサイクルを高速 で回して仕様をブラッシュアップ ピクシーダスト 1.2(P54) 原理試作を経て具体化された仕様書、図面等を基に、量産化を見越した試作品、 補助成果物(冶具、量産設備等)を作りこんでいく。 立て 続けの デモが 開 発リソースを 圧迫 inaho ③(P16) 規 格・標 準 に 沿 ったリスク アセ ス メントの実施 TELEXISTENCE ④(P22) 製造事業 者への量産設 計の発注が 上手くコントロールで きな い 事 態 Genics ②(P25) 初めての量 産は最 低ロット3,0 0 0 台、調整も難航 TripleW ①(P32) " 個 別 " の カ ス タ ム メイド 製 品 の "量 産"化の検 討 ジャパンヘルスケア ①(P39) 米国スタートアップと日本老舗企業 が開発を円滑に推進 Seismic ②(P43) 試作段階で問題を発見できないまま 量産し製品が無駄に MAMORIO 1.1(P15) 開 発 支 援 も 行 う国 内 E M S 企 業 と 出会いスムーズに開発が進行 MAMORIO 1.2(P16) 委 託 先 工場の 切り替えにともない 金型返還でトラブル発生 MAMORIO 1.3(P17) 量 産 規 模 拡 大と依 存リスク解消の ため製造委託先を新規開拓 MAMORIO 2.1(P19) EMSの話を鵜呑みにして量産試作を 任せきりにした結果、不具合が発生 ロビット 1.1(P25) E M S へ の 委 託 中止 交 渉 と 金 型 の 引き上げ作業が難航 ロビット 1.2(P26) E M S へ の 委 託を 止 め 協 力 工 場 を 自 力 で 探 索 して 初 期 量 産 を 成 功 させた ロビット 1.3(P27) 競合 企業等による リバースエンジ ニアリングのリスク対策 ロビット 2.1(P30) ハ ード ウェア の 製 造 を 誰 が 担 う べきかでユーザーと意 見 が 割れる ロビット 2.2(P31) 試作機の大型化にともない、専用部 品を製 造できる工 場が見つからな くなる チャレナジー 2.1(P38) 確 か に 支 払 っ た に も か か わ らず 注 文した部品が中国から届かない チャレナジー 2.2(P39) 取 引 先 が 納 期 を 守 ってくれ な い トラブル チャレナジー 2.3(P40) 経験のない技 術分野も専門家への 質 問 攻めと外 部 協 力 者 の 獲 得で 対応 つつう 1.2(P46) 産業 機器にRaspberry Piを採用 しようとしたところ使用実績の少な さを理由に協力企業から猛 反 対を 受ける つつう 2.1(P48) 設計・開発段階から経験豊富な専門 人材の知見を活用できる体制を整備 つつう 2.2(P49) 多くの 企 業と直 接 会って 話をした 末 に ビ ジ ョン や 事 業 へ の 共 感 を 得られる連携先にたどりつく つつう 2.3(P50) I Tリテラシーの 低い工場に委 託し たところ、無駄な工程が多く時間を 浪費してしまう アクセルスペース 1.1(P57) 品質基準を満たせない工場に発注し てしまい、発注先を変更することに アクセルスペース 1.2(P58) Contract Casestudy for Maker Startups 量産以降 ス タートアップ ファクトリーとの 協業深化 ファーストアセント ③(P30) 製造コスト低減を目指してサプライ チェーンを再度見直し MAMORIO 2.4(P22) 初 号 機 量 産 時 のノウハウとネット ワークを活用して 次 世代 機を開 発 ロビット 1.4(P28) 安定した部品調達に向け発 注 先の 分散と関係維持に努める アクセルスペース 1.3(P59) 「ビジネス」に関するケース 共同研究・実証実験・テスト販売・資金調達等を通じて試作品の改良と販売先の開拓を行う。 評価検証を通じた改良・エビデンス 蓄積による信頼性向上 Genics ③(P26) 国立研究機関との初めての共同研究 ファーストアセント ①(P28) 大手企業との初のPoC案件獲得に 頓挫 ファーストアセント ②(P29) ハードウェア 開 発 に 注 力しすぎる あまり事業開発が進まない tsumug ①(P35) 福岡市 実証実験フルサポート事業 への応募と採択 tsumug ②(P36) ユーザーフィードバックを専門的知見 から分析し市場性を見極め ジャパンヘルスケア ②(P40) 量 産 規 模の拡 大によって資 金繰り の問題が発生 MAMORIO 2.2(P20) 資 金調達手段が限られる創業 期に 試作 品 製 造コストが大きな負 担に チャレナジー 1.3(P36) 「人材・組織」に関するケース エンジニア人材の獲得・チームづくり。 会社の拡大に伴い、スタッフの情報 共有や連携にほころびが… inaho ④(P17) エンジニア 採 用は 地 道 なスカウト TELEXISTENCE ②(P20) ハードウェア・エンジニアの採用に 向けた活動 チャレナジー 2.4(P41) 社外のエンジニアをボランティア・ スタッフとして巻き込む チャレナジー 2.5(P42) 雇 用 形 態 に こ だ わらな い チ ーム づくり tsumug ③(P37) Contract Casestudy for Maker Startups 08

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ものづくり スタートアップ・ エコシステム 構築事業の概要 I n d e x 3 . 学びからケースを探す ファクトリーとの連携における学び 研究機関・事業会社等との連携における学び どんなファクトリーと連携すべきかわからない 大学・研究所・大企業・ユーザーとの連携 スタートアップファクトリーの製 造 技術を用いて効率的にハードウェア 試作を繰り返す ファーストアセント ③(P30) 大企業との連携は、大ロット・高品質 の製造でこそ活きる TripleW ①(P32) 開発・量産面での大企業との連携を ハードウェア開発の土台とする tsumug ①(P35) 実現したいモノをものづくりのプロ の助けを借りて製品として実現 ジャパンヘルスケア ①(P39) 量 産 規 模 拡 大と依 存リスク解消の ため製造委託先を新規開拓 MAMORIO 2.1(P19) 製造コスト低減を目指してサプライ チェーンを再度見直し MAMORIO 2.4(P22) 墨 田 区の 町 工 場 による設 計・試 作 支援を受けて試作機を製作 チャレナジー 1.2(P35) 経験のない技 術分野も専門家への 質問攻めと外部協力者の獲得で対応 つつう 1.2(P46) I Tリテラシーの 低い工場に委 託し たところ、無駄な工程が多く時間を 浪費してしまう アクセルスペース 1.1(P57) 品質基準を満たせない工場に発注し てしまい、発注先を変更することに アクセルスペース 1.2(P58) 大学との共同研究においては、前提 条件の共有が必要 inaho ①(P14) 自 社 単 独 で 対 応 可 能 な リスク を 絞り込むことで 規 格・標 準 に 準 拠 TELEXISTENCE ④(P22) 既 存の 信用力を 借用するかたちで PRを仕掛け、拡散を狙う Genics ①(P24) 業界内の情報ハブとなる組織・人物 の 力を 借りて 認 知と信 頼 を 獲 得 ファーストアセント ①(P28) 協 業 企 業 の 状 況 、目 指 す ゴ ール 、 メンバー個人の立場を知り、リスク 許容度を見極める ファーストアセント ②(P29) スタートアップに協力的な自治体と 連携し、実証実験の環境を確保する tsumug ②(P36) 一 部の販 路では円滑な取引条 件 交渉に成功 MAMORIO 2.3(P21) 量 産 規 模の拡 大によって資 金繰り の問題が発生 MAMORIO 2.2(P20) 資 金調達手段が限られる創業 期に 試作 品 製 造コストが大きな負 担に チャレナジー 1.3(P36) どうやって最適なファクトリーを探すかわからない 情報発信を効果的に行うことで協業 候補先の方から接触してきてくれる Genics ①(P24) 工場に足を運び、総合的な視点から 連携先を決定する TripleW ②(P33) 経 営と現 場 の 潤 滑 油となるマネジ メント層の重要性 Seismic ②(P43) 試作段階で問題を発見できないまま 量産し製品が無駄に MAMORIO 1.1(P15) 開 発 支 援 も 行 う国 内 E M S 企 業 と 出会いスムーズに開発が進行 MAMORIO 1.2(P16) EMSへの委託を止め協力工場を自 力で探索して初期量産を成功させた ロビット 1.3(P27) ピ ッ チ イベ ント を 通 じ た 有 力 な スタートアップ 支 援 者との 出 会 い チャレナジー 1.1(P34) 試作機の大型化にともない、専用部品 を製造できる工場が見つからなくなる チャレナジー 2.1(P38) 確 か に 支 払 っ た に も か か わ らず 注 文した部品が中国から届かない チャレナジー 2.2(P39) 産業 機器にRaspberry Piを採用 しようとしたところ使用実績の少な さを理由に協力企業から猛 反 対を 受ける つつう 2.1(P48) 設計・開発段階から経験豊富な専門 人材の知見を活用できる体制を整備 つつう 2.2(P49) 多くの 企 業と直 接 会って 話をした 末 に ビ ジ ョン や 事 業 へ の 共 感 を 得られる連携先にたどりつく つつう 2.3(P50) 自分たちで解決策を考え、開発方針 の取捨選択を行う inaho ①(P14) 製造事業者に頼り過ぎず、スターアッ プ側がものづくりプロセスをコント ロールすべき Genics ②(P25) 設 計 変 更 など を 見 越して S O W を 契約に盛り込む Seismic ②(P43) 試作段階で問題を発見できないまま 量産し製品が無駄に MAMORIO 1.1(P15) 委 託 先 工場の 切り替えにともない 金型返還でトラブル発生 MAMORIO 1.3(P17) EMSの話を鵜呑みにして量産試作を 任せきりにした結果、不具合が発生 ロビット 1.1(P25) E M S へ の 委 託 中止 交 渉 と 金 型 の 引き上げ作業が難航 ロビット 1.2(P26) 資 金調達手段が限られる創業 期に 試作 品 製 造コストが大きな負 担に チャレナジー 1.3(P36) 取 引 先 が 納 期 を 守 ってくれ な い トラブル チャレナジー 2.3(P40) EMSに量産試作を頼むには、 EMSの 既存ビジネスモデルの壁、量産試作 に必要な情報格差の壁を超える必要 がある ピクシーダスト 1.1 (P53) 安定した部品調達に向け発 注 先の 分散と関係維持に努める アクセルスペース 1.3(P59) Contract Casestudy for Maker Startups 大企業の要望を受けて企画・提案を 行うものの、資 金面で折り合わず、 自社資金によってスタートする つつう 1.1(P45) 社内体制に関する学び 上手く連携していくためには何が必要なのかわからない 09 エビデンス収集と適切な発信によっ て製 品の評 価を高めることが 可能 Genics ③(P26) エンジニア人材等の獲得・チームづくり アグリテック分 野でも工 夫 次 第 で PDCAサイクル の 高 速 化 が 可 能 inaho ②(P15) 営 業 サイドと開 発 サイドが目 線 を 合わせることで、資金調達と開発の バランスをとる inaho ③(P16) 組 織 のあ る べき姿 は 、そ の 時 々で 変わる inaho ④(P17) 「ものづくり」は「研究成 果」の延 長 線上にあるとは限らない TELEXISTENCE ①(P19) 地道なスカウトの成否を握るのは、 共 に 実 現 す る ビ ジ ョン へ の 共 感 TELEXISTENCE ②(P20) ハードウェアとソフトウェアの考え 方 の ギャップ を 前 提とした 対 話・ コミュニケーションが重要 TELEXISTENCE ③(P21) ものづくりビジネスの意思決定経験 者から支援を受けられる状態をつく りだす Genics ②(P25) ハードウェア開発自体を目的化して はならない tsumug ①(P35) 相手に伝わるわかりやすい言葉で、 委託業務の認識を合わせる tsumug ③(P37) 専門的な知見がないとできない課題 分析やプロダクト改善がある ジャパンヘルスケア ②(P40) 新 たなプロダクト開 発 で 遭 遇した 学 術 的にも未 解 明な課 題もアジャ イル開発で乗り越える Seismic ①(P42) ハードウェアの製造を誰が担うべき かでユーザーと意見が割れる ロビット 2.2(P31) ハードウェア・エンジニアの採用に 向けた活動 チャレナジー 2.4(P41) 社外のエンジニアをボランティア・ スタッフとして巻き込む チャレナジー 2.5(P42) 設計・開発段階から経験豊富な専門 人材の知見を活用できる体制を整備 つつう 2.2(P49) 実際に組み上げて初めて気づく課題 があることを念頭に、設計・開発を進 めるべし ピクシーダスト 2.1(P54) Contract Casestudy for Maker Startups 10

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ものづくりスタートアップと 製造業の連携ケーススタディ ケース ス タディ編 11 Contract Casestudy for Maker Startups Contract Casestudy for Maker Startups 12

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inaho 原 理 試作:もの づくり case 1 企業概要 Company Overview in a h o 先の見えない共同研究を継続し モチベーションと効率が低下 創業当初、エンジニアが不在だったinaho。 「AIで対象を判断 するため電力のない畑では実用性に欠けることが判明する。ま し、アームで摘み取り、移動するロボット」の開発を目指し、最初に た、早期開発を目指すinahoにとっては、大学の開発スピードとリ 選択収穫野菜向けの自動収穫ロボットを開発。ロボットは畑を自立走行し 取り組んだのが、専門家からの助言を乞うことだった。CEOの菱 リースに向けたスケジュールに不安を抱えていた。 ながら、AIで成熟度を判断し、ロボットアームで収穫を行う。 木氏とCOOの大山氏は、インターネットで検索し、手あたり次第 2018年、新たに加入したエンジニアが共同開発の方向性に疑 ロボットを農家へ貸し出し、収穫高に応じてサービス利用料を徴収する に、大学の研究室を訪問。人脈が数珠繋ぎで広がり、開発に向け 問を抱き、inaho独自での、ロボットアームの開発に乗り出した。し RaaS型のビジネスモデルで、2019年9月にサービス提供を開始(ロボット ての知見を深めていった。 かし、独自開発が成功する確信が持てなかったために、共同開発 製品・サービス概要 そんななか、ロボットアームの製作に携わるA大学の研究者が、 はレンタルであるため、製品開発は継続)。 の中止を決断できず、共同研究と独自開発を同時に進めることに 農家を対象にした導入説明会の参加者のうち、9割超が導入意向を示して inahoのコンセプトに共感してくれたことで、2016年、アームの開 なった。どちらか一方のアームは使用しないことが分かっていなが おり、早期の量産化を目指している。 発に向けた連携が始まった。 ら、両方の製作を行う必要があり、結果として開発スタッフのモチ 1年目は奨学寄附金、2年目は共同研究費で大学での開発を進 ベーションと開発効率の低下を招いた。 めたが、開発途中に、大学製作のアームはコンプレッサーを使用 ビジネスモデル ハードウェアの役割/機能 図. ロボットアーム開発の流れ インターネットで検索し 大学の研究室を訪問 大学との共同開発を スタート スピード感の違い 実用性に対する不安感 共同開発の継続 モチベーションと 開発効率の低下 収穫量を判定し、市場の取引価格を 引き当てて利用料を算出(¥) inahoの独自開発 農家 inaho スタートアップが得た学び ロボットの稼働状況や圃場の 状況の可視化 ロボット 大学との共同研究においては、前提条件の共有が必要 安定的に畑を走行できる移動体と、野菜を傷つけることなく収穫 ができるアームで構成されたロボット ●大学の研究者は特定分野の専門家であって、個別のユースケースについては詳しくない。協働する場合には、開発の前提条件と なる、製品のニーズ、使用環境についてスタートアップ側が十分に理解したうえで伝える必要がある。 ●また、大学の開発体制、開発スピードは、スピード重視のスタートアップの期待とは異なる可能性もある。共同研究を行う前に、 ケーススタディ一覧 双方で認識を合わせることが重要だろう。 ものづくり 原理試作 人材・組 織 自分たちで解決策を考え、開発方針の取捨選択を行う ●inahoは、開発を外部資源に依存していたため、いざというときに、開発リソースの選択と集中を行うことができなかった。 ●ハードウェア開発のノウハウがないスタートアップは、外部に開発を 丸投げ しがちであるが、製品が必要とされる社会的背 量産化設計・試作 景、ターゲットユーザー、実現すべきソリューションを最も理解しているのは、発注側のスタートアップに他ならない。少なくと case 1 13 case 2 Contract Casestudy for Maker Startups case 3 case 4 も、どのような製品が必要かという「思考」部分は内部で行い、必要な作業を部分的に外注することが重要である。 Contract Casestudy for Maker Startups 14

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原 理 試作:ものづくり case 2 量 産化 設 計・試作:もの づくり in a h o アグリテック特有の収穫サイクルの 長さや圃場の変化への対応 inahoでは、ロボットを動かす 収穫時の環境 に合わせた開発 また、農作物を育てる圃場は、天候一つで環境が変化してしま case 3 in a h o 立て続けのデモが開発リソースを圧迫 アスパラの収穫時期である10月に合わせて、inahoの営業担当 当の情報共有が不足しており、営業担当が上記問題を十分に認識 う。雨天後の畑では、ぬかるみで走行ルートを示した白線が消え が、試作機デモのスケジュールを立案。協力農家のある佐賀県で、 できていなかったこと、そして、アスパラの収穫時期に無理に合わ アスパラガスは、苗を植えてから3〜15年程の期間で収穫が可 てしまうなど、野外ならではの考慮すべき状況が多様であった。開 10日間に4回のデモを行うことになった。 せなくとも、疑似的な収穫環境を作ることで、開発の進捗状況に 能であり、比較的、栽培サイクルが長い作物である。また、株植え 発拠点のある関東と協力農家のある佐賀では物理的な距離があ からの年数に応じて、生えてくる位置が離れていくという特徴を り、圃場の変化をつかみきれなかった。 に苦労をした。 持つため、2〜3年目の高密度での収穫と15年目の低密度での収 これらの 収穫時の環境把握の重要性 を認識できていなかっ デモの約2週間前にパーツが納品されるという状況で、佐賀県 に移動した後も開発を継続。デモの合間を縫って、画像処理の調 応じたデモが可能であったことなどが反省点として挙げられた。 図. 2018年10月の営業・開発スケジュール(イメージ) 整や自律走行の開発を進めた。アームの故障や充電ができないと 穫の両方に対応できなければならない。年単位で株の植え替えを たことで、別の課題も生じた。短期間でのスタッフ増員によって、 いったトラブルも乗り切り、最終日のメディア向けのデモでは成功 行うトマトのような作物であれば、収穫サイクルが短いのでPDCA アスパラガスの収穫期を経験したことのない人が増えたのだ。1 を収めた。 を回しやすく、また、生育環境をロボット側に寄せていくことが可 年前は、収穫期を体験することの重要性を認識していなかったた このままの勢いで開発を進めたいと思ったが、デモの成功を受 能である。しかし、アスパラガスは1つの株で15年間栽培を行うた め、圃場の状況やアスパラガスの生育状況を記録しておらず、肝 けて営業活動が次第に忙しくなり、そのことが開発にも影響し始 め、AIを環境に合わせる方法で開発を進めざるをえなかった。 心の収穫環境について共通認識が持てない状態に陥った。 めた。 関東での開発 株植え 2年目 … …15年目 を開設。事業推進のために、デモに参加した農家に導入意向書を 書いてもらうなどの取組を進めた。その結果、デモの実施のために 開発スタッフが駆り出され、試作機の開発が遅延。画像処理、アー ム、移動体のいずれも改良の必要があるものの、 デモを成功させ 間隔が広がって生えるようになる スタートアップが得た学び 10/11 るための開発 が優先され、長期的な開発が行えなくなった。 後に一連のスケジュールを振り返ったところ、営業担当と開発担 試作機の製作 10/13 10/14 10/15 10/17 10/18 佐賀での開発 関東から佐賀に移動 画像処理の調整 畑でのテスト 自律走行× 収穫◎ 農家デモ① 自律走行× 収穫◎ 自律走行× 収穫× 10/19 10/20 10/21 10/22 10/23 10/24 10/25 10/26 10/27 10/28 10/29 10/30 自律走行部分の開発 農家デモ② 壊れたアームの修理 自律走行部分の開発 充電器に接続できない移動体の改良 農水省デモ 自律走行× カメラと収穫のタイミングの調整 メディア向けデモ 自律走行◎ 営業サイドと開発サイドが目線を合わせることで、資金調達と開発のバランスをとる ●開発のPDCAを回せる回数は、農作物の収穫サイクルによって変わる。inahoのようにサイクルが長い品種をターゲットとする ●資金調達と開発を両輪で回すことで、スタートアップは成長していくが、そのバランスの取り方は難しい。 大する際の教育や知見の共有にも活用可能である。 ●また、農作物を相手にする場合、開発拠点の近くに圃場を設けることもポイントだ。天候や屋外ならではの環境変化を物理的に 確認できることで、スムーズに課題抽出と改良を行えるようになる。 Contract Casestudy for Maker Startups 収穫× 収穫◎ スタートアップが得た学び アグリテック分野でも工夫次第でPDCAサイクルの高速化が可能 場合は、データを蓄積し、シミュレーションによって収穫期の状況を再現することが重要である。これらのデータは、組織が拡 15 A大学製のアームの納品 10/10 10/16 施が急増したほか、営業担当3名を新規雇用し、佐賀県に営業所 3年目 移動体の納品 10/12 メディア対応やアクセラレータプログラム参加によるデモの実 図. アスパラガスの収穫サイクル 10/8 10/9 ●営業スタッフは、量産や販路拡大に向けて資金調達や営業活動を進めるが、先行しすぎると開発に良くない影響を与えることが ある。その典型的な事例が、上記のinahoの事例である。 ●最小限の人員で構成されるスタートアップと言えど、営業サイドと開発サイドでは、見ている世界が違う。両者が定期的に、製品 の完成度、課題などを共有し、短期的、中長期的な目標に向けて、一体となって舵を切ることが重要である。 Contract Casestudy for Maker Startups 16

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人材・組 織 会社の拡大に伴い スタッフの情報共有や連携にほころびが… case 4 TELE XISTENCE in a h o inahoは、サービス開始に向けて、エンジニア、営業、広報、人事 メンバー全員で打ち合わせを行い、次の開発目標と優先順位、 など、スタッフを増やした結果、組織的な課題が散見されるように タスクを可視化したことで各人の業務の位置づけが明確になり、 なった。 組織としての一体感も増すようになった。 企業概要 Company Overview 製品・サービス概要 人間と同等の手や腕・胴体の構造を持つ人型遠隔ロボット(テレイグジス タンスロボット)。 例えば、少人数のころは 阿吽の呼吸 でできていたことが、 開発担当、広報担当など役割が分かれたことで、タスクが落ちて しまうようになった。 また、開発担当のなかでも、ソフトウェアとハードウェア、ソフト TELEXISTENCE テクノロジー、VR、通信、クラウド、ハプティクス技術 図. inahoにおけるスクラムの実施方法 会社にとっての 作業の位置づけが わからない を活用した遠隔操作技術を搭載。 誰のタスクかが 不明瞭に… 作業が属人化 してしまう ウェアのなかでも画像処理担当とアプリケーション担当など業務が 誰が何を行えば タスクが完了に なるの? 人間が遠隔操作ロボットで対象物をハンドリングする動作を教師データと するAIによって、商品陳列や物流ピッキング作業などの自動化へ発展。 細分化され、業務の属人化や担当間の情報共有で課題が生じた。 inahoでは、このような課 題は組織的なリスクと認識してお り、定期的なスタッフの振り返りのもと組織体系を変更し続けて いる。 2019年の夏頃は、役割と機能のマトリクス型の組織体系とし クラム を実践している。スクラムはソフトウェア開発のための手 とタスク漏れを避けるために部分的にでも行えれば良いと考え、 inaho流にアレンジして取り組んでいる。 ③優先順位をつける ●開発スキルやスケジュール等を考慮して、タスクの優先順位をつける ④進捗管理を行う ●一覧表をもとに、タスクごとの進捗管理を行う ¥(人件費相当) 無人店舗運営ノウハウの 蓄積・連携 自社店舗 スタートアップが得た学び 商品陳列、補充作業 TELE XISTENCE 法であり、ロボット開発には適さない部分も多い。しかし、属人化 ②工程の一覧表を作る ●カスタマージャーニーをストーリー化し、各工程について、進捗状況やタスクを 記入する一覧表を作成する ハードウェアの役割/機能 小型店舗 は、優先順位付けしたタスクに対して、社員全員がコミットする ス ビジネスモデル ①カスタマージャーニーを考える ●カスタマーである農家の行動をトレースし、気持ちよくロボットを使うために必要 な機能を書き出す ●重要な機能と判断したものを開発の対象とする ︵ユーザー︶ たが、進捗とクオリティ管理が十 分でないと判断し、秋頃から スクラムの実践=メンバー全員が、開発目標とタスクの 優先度を把握できること 機体利用/運営 ¥(売上) 高い精度と高い応答性での遠隔操作を実現しつつ、実際環境下で 重量物の保持・移動作業を長時間連続して行うための強度や安全 性を備える 組織のあるべき姿は、その時々で変わる ●スタートアップは、試作、量産と進むなかで、その体制が大きく変化する。組織が急成長するため、通常の企業よりも、コミュニ ケーション不足や、進捗管理・クオリティ管理のミスなどが生じやすい。 ●inahoでは、組織の成長とともに、作業が属人化することでスタッフ退職時に開発ノウハウが損失することや、コミュニケーショ ン不足による人間関係の悪化が懸念されていた。 ●組織形態も開発と同じであり、試行錯誤が重要である。成長を継続していくには、阿吽の呼吸ではうまくいかなくなったとき、 ケアレスミスが頻出したときに、組織形態の変更、定期的なミーティングの実施、情報共有のルールの設定などの検討が必要で ある。 17 Contract Casestudy for Maker Startups ケーススタディ一覧 ものづくり 人材・組 織 原理試作 case 1 ものづくり 原理試作 case 2 case 3 量産化設計・試作 case 4 Contract Casestudy for Maker Startups 18

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原 理 試作:ものづくり case 1 人材・組 織 TELE XISTEN C E 大学発スタートアップでも 製品設計はゼロからスタート case 2 TELE XISTEN C E エンジニア採用は地道なスカウト 当社名「TELEXISTENCE(テレイグジスタンス)」という技術 2018年のモデルHの完成により世の中に初めてテレイグジス 特に量産経験がある機構設計エンジニアの採用には現在も苦 概念の生みの親でもある、東京大学 舘 暲 名誉教授の研究成果 タンスの具体的な世界観を提示することができたが、産業で求め 労している。こういった人材は転職市場にもほとんどおらず、仮に をベースとしたスタートアップである。創業前の段階で、既に研究 られる要件を満たし、量産を可能にするには、越えなければいけ いても当社が求める要件を適切に言語化してマッチングすること なお、大手企業からの出向人材も開発とビジネスの隙間を埋め 室での試作を完了させており、遠隔で将棋の駒を指す程度の手先 ない壁は高く、果てしないという現実があった。量産設計の経験 のできるエージェント業務は極めて難しい。そのため、論文や特 る即戦力として活躍してくれている。これまで、大企業で5〜10年 の器用さや精度は有していた。このため、当初は「試作を改良して がある人材の入社、社員自身の急速な学びと成長を通し、一つ一 許の内容、SNSの情報などを見て、直接メッセージを送り、遠方 程度の勤務経験のある人材に、ローンディール*1経由で1年間出向 いけば製品化できるだろう」と考えていたが、実際には、ハード つ壁を乗り越えてきた。 でも出向いて面談をしている。 してきてもらったが、多岐に渡る業務であったが積極的に取り組 ウェア、ソフトウェア、システムアーキテクチャなど、全てを製品向 けに設計し直した。 研究室での試作品は、学術的新規性を追求することが目的で あったため、 「テレイグジスタンス」という技術概念のコア部分に 図. 試作品の変遷 (大学での研究開発) (プロトタイプ1号機) てくれている人材である。 面談したなかには、機構設計の経験が豊富な人材もいたが、社 んでくれて大変助かった。まだ仕事が十分に専門化・細分化されて 内で蓄積された規格や仕様に従って設計しているため、当社でゼ いない業務も多くあるようなスタートアップにとって、幅広い業務 ロから設計することは難しいと思われるケースもあった。また、産 に対応してきた経験値のある大企業人材は大変助かっており、今 業用ロボットとサービス用ロボットでは、ロボットが使用される環 後も必要に応じて大企業人材を受け入れていく予定である。 特化して実装していた。そのため、遠隔操作を行うためのインター 境が全く異なるため、求められる安全性や品質の考え方も大きく ネット接続や、重量物の持ち上げや保持、安全性や耐久性、コスト 異なる。 「機構設計の経験」という要件ではマッチしていても、産 など、実際にプロダクトとして事業化するうえで不可欠な機能や 業用とサービス用の考え方の違いが埋まらないケースもあった。 また、特に大手メーカーとは給与面のギャップが少なからずあ 仕様が備わっておらず、最終製品を見据えて大きく方向転換、設 のは、 「テレイグジスタンス」というビジョンやコンセプトに共感し *1:株式会社ローンディールが運営する、大企業の人材をベンチャー企業に 研修・出向の形で一時的に移籍させることを支援する企業間レンタル移籍 プラットフォーム り、選ばれにくいケースも少なくない。そんななかで入社してくれる 計の見直しが求められた。 一方で、テレイグジスタンスというコンセプトやビジョンがある ことは、エンジニア人材を惹きつけるうえで大変有難く、国内外問 わず、優秀なエンジニアや研究者が次々と入社してくれた。 量産性なし 部品の大半を 金属にて構成 スタートアップが得た学び スタートアップが得た学び 「ものづくり」は「研究成果」の延長線上にあるとは限らない 地道なスカウトの成否を握るのは、共に実現するビジョンへの共感 ●大学研究室の試作は学術的な研究目的で作られているため、製品化を見据えた場合、技術やノウハウを生かしながらも設計をや ●スタートアップが求めるエンジニアには、特異的な経験とマインドセットが求められるため、その採用は個別スカウトや面談を地 り直した方が早いケースも少なくない。 ●試作設計において、特にハードウェアは製造業分野で設計経験のあるエンジニアがいないと、プロダクトとして組み上げること 道に繰り返していくしかない。 ●最終的に人を惹きつけるのは、スタートアップの魅力的なビジョンやコンセプトである。 が難しい。 ●試作設計と量産設計は別物である。量産設計は、関連分野で量産化の出口を経験した人材のナレッジがないと、止血処理なの か、実用化に向けた前進なのかの判断がつかなくなり、適切な意思決定を下すことが難しい。 19 Contract Casestudy for Maker Startups Contract Casestudy for Maker Startups 20

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原 理 試作:ものづくり 時間軸が異なる ハードとソフトの融合に苦労 case 3 量 産化 設 計・試作:もの づくり TELE XISTEN C E case 4 TELE XISTEN C E 規格・標準に沿った リスクアセスメントの実施 当社のプロダクトは、ハードウェアとソフトウェアの高度な複合 かったり、逆にハードウェアを修正せずに対処療法的にソフト 量産設計に取り掛かる段階で、 「安全規格とは何か?」というこ 分を含めたシステム全体としてのリスクアセスメントを行う必要が 技術であるため、これらが一体となって機能するためには、開発 ウェアでなんとかハンドルする方法を考える必要性がでたりと、 とを調査し始め、人と協調して動作するサービス用ロボットの国 ある。そのため、台座部分の自律移動センシング方式や通行人の 段階から相当高度な水準での相互理解と擦り合わせが必要と 専門領域の違いからくるアプローチの方法で衝突することも珍し 際規格(ISO 13482)があることを学び、この規格ではリスクアセ 存在、床面の傾斜角度、階段の有無など、当社単独では制御でき なってくる。 くない。ハードウェアとソフトウェアがお互いの考えを主張し合う スメントを実施することになっていたため、東京都立産業技術研 ないような項目も含めてリスクが示された。 機会を設けて、考え方の違いからお互いを理解するように努めて 究センターに依頼した。 エンジニアの人数が多くなってきた時期に、ハードウェアとソフ トウェアの開発スピードやアプローチの違いを考慮して、タスクを いる。 リスクの全体像を理解できたことは良かったが、特に当社のよ リスクアセスメントを実施するにあたっては、当社のプロダクト うなスタートアップが全てに対応することは難しかったため、当社 細分化して個々のエンジニアに割り振るようなマネジメントをし ハードウェアの開発は、 「絶対に壊れないもの」からコストダウ 単体ではなく、プロダクトが動作する周辺環境を含めた全体でリ ではリスク源が限定できるようにロボットの周辺環境を調整する た。その結果、タスク同士の間にヌケモレが散見され、プロダクト ンするアプローチと、コストを重視して「壊れたら改善する」アプ スクを担保することが求められた。例えば、足回りの自律移動機 ような対応をし、段階的に範疇を広めていく方針を取っている。 全体として統合できない、機能しないという問題が生じた。 「自分 ローチがあると思うが、当社は後者で開発を進めている。各部品 能付き台座部分は、社外の既製品を調達していたが、この台座部 自身のタスクは完了した」「責任は全うした」という意識が目立 の耐久性試験をいくらやっても、プロダクトに組み込んだ際に壊 ち、最終成果へのコミットメントが薄まってしまっていた。そこで、 れる条件までは分からないので、 「まず動かして壊す」という発想 敢えてタスクを細分化せず、ユーザー目線である程度の粗さで目 で、開発プロセスを高速に回している。 標を設定し、チームメンバー全員で目標を共有し、自分たちでタス クを設定し、チームとして達成させるようにしている。 なお、開発目標はハードウェアでもソフトウェアでもなく、事業 図. リスクの限定・絞り込み 妨害電波 成立を前提として何が必要で、成し遂げなければならないのかと また、ハードウェアは企業での経験がある日本人、ソフトウェア いった逆算から設定している。エンジニア主導で開発目標を設定 は研究者出身の外国人が多いため、言語の違いも相まって、お互 すると、 「できること」の積み上げになってしまい、開発のスピード いの考えが伝わらないことが少なくない。例えば、実証実験中に が落ちてしまう。このため、事業目線で多少無茶ぶりくらいの開発 不具合が生じた場合、ソフトウェアのエンジニアがハードウェアに 目標が設定される方が、特にスタートアップの場合は良いと考え 対して提案する修正案が量産性や設計から逆算して現実的でな ている。 スタートアップが得た学び 周囲との 接触・破損 階段から転落 走行中の転倒 使用環境におけるリスク 外部調達部品等におけるリスク 電気出力安定 自社プロダクトのリスク 機能・品質 スタートアップが得た学び ハードウェアとソフトウェアの考え方のギャップを前提とした対話・コミュニケーションが重要 自社単独で対応可能なリスクを絞り込むことで規格・標準に準拠 ●新たなプロダクト開発で開発目標を細分化しすぎると、メンバーは目の前のタスクにばかり目が行き、最終成果へのコミットメント ●スタートアップでも、プロダクトを国内外に広く展開していくためには、規格・標準に準拠した設計が不可欠。早めに公的試験機 が薄れがち。大きめの目標をチームメンバー全員で設定、共有し、メンバー間でコミュニケーションを取りながら開発を進めること が重要である。従い社員の自律性は極めて必要な行動要件となる。 ●ハードウェアとソフトウェアのエンジニア間には、開発の考え方に大きなギャップがあるため、その前提をお互いが理解し合うよう 関・研究機関などに相談することが望ましい。 ●プロダクトの使用環境などが不確定であると、対応すべき規格・標準、リスクの項目は増えてくる。自社単独では対処しきれない ケースも少なくないため、まずは使用環境を限定するなどによって、リスクを限定する対応を取ることが望ましい。 なコミュニケーションを取らなければ、お互いの溝はどんどん深まってしまう。 21 Contract Casestudy for Maker Startups Contract Casestudy for Maker Startups 22

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Genics 原 理 試作:もの づくり case 1 企業概要 Company Overview G e nic s Consumer Electronics Show(CES) 出展PRを通じた協業候補先の獲得 株式会社Genicsは、次世代型全自動歯ブラシの原理試作を重 製品・サービス概要 ね、大学OBが経営する大田区の町工場の協力を得てプロトタイ 在宅介護者/高齢者施設、その他一般消費者向けに、現時点で世の中に存在していない、効率性、 プ2号機を完成させ、これをアメリカで開催される国際見 本市 効果性にフォーカスした次世代型全自動歯ブラシを提供。 Consumer Electronics Show(以下、CES)に出展した。 次世代型全自動歯ブラシは、全自動であり、無思考型で、効率的かつ効果的なオーラルケアを実 の製造・評価の協業に繋げることに成功している。 図. 早稲田大学から発表されたプレスリリース その際Genics社長の栄田氏は、CES出展に関するプレスリリー 現できる。 スを打つことにしたが、まだ知名度が低いGenicsから発表するプ 在宅介護者/高齢者施設に対しては、 オーラルケアの簡素化、介護負担軽減、人員配置の最適化、 その レスリリースでは世間の注目を集めることが困難だと思われた。 他一般消費者に対しては、効率的(時短)かつ効果的なオーラルケアによる疾患予防が期待できる。 接点を持ち、そのなかから、新たな協業パートナーを発掘。その後 そこで、次世代型全自動歯ブラシ開発で共同研究を行う早稲田 将来的には、使用状況データやオーラルデータによるヘルスモニタリングサービスの展開も視野 大学からプレスリリースを出してもらうことを考えた。共同研究を に入れている。 行う石井裕之准教授から大学の広報課に相談したところ、PRに 積極的な姿勢を持つ大学側の協力が得られ、プレスリリースを出 ビジネスモデル してもらうことができた。 ハードウェアの役割/機能 全自動歯ブラシ ¥ り、新聞3社、テレビに取り上げられ、Genicsの認知度を一気に 介護施設 高齢者・在宅介護者・一般人 ¥ G enics 病院・歯科医師・企業 全自動歯ブラシ の使用から得た オーラルデータ 早稲田大学から発表されたプレスリリースは、栄田氏の狙い通 高めることにつながった。 結果、プレスリリースを見た歯ブラシメーカーから多数のパンフ レットが届き、介護施設から問い合わせが入った。そして、Genics は、問い合わせがあった歯ブラシメーカーや介護施設運営会社と 出所)早稲田大学 2019/01/09 トピック 口にくわえるだけ で通常の歯磨き と同じ効果。手による磨き動作不要の次世代型全自動歯ブラシの開発に成功 スタートアップが得た学び 30秒で効果的な歯磨き。使用者の負担低減を目指したデザイン。 オーラルケア実施時のデータ蓄積 情報発信を効果的に行うことで協業候補先の方から接触してきてくれる ●スタートアップは、常に、1社でも多くの協業候補先を開拓しなければならない。しかし、自社側からの探索・アプローチによって 協業候補先を見つけていくことにも限界がある。 ケーススタディ一覧 ●そのため、スタートアップは、Genicsのように情報発信を効果的に行うことで、協業候補先から接触してきてくれる状態を作る ことが重要。 ものづくり 原理試作 ビジネス 既存の信用力を借用するかたちでPRを仕掛け、拡散を狙う ●Genicsは、共同研究を行う大学の力を借りることで、歴史ある大学が新たなことに挑戦するというストーリーのもと、自社と 量産化設計・試作 ハードウェアの信用力を担保。大手メディアを通じた報道、拡散に繋げることに成功した。スタートアップは、Genicsのように、 case 1 23 Contract Casestudy for Maker Startups case 2 case 3 自社と協力関係にある個人・組織があらかじめ持つ信用力を借りつつPRを仕掛け、拡散へと繋げていくことが必要。 Contract Casestudy for Maker Startups 24

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量 産化 設 計・試作:ものづくり case 2 ビジネス G e nic s 製造事業者への量産設計の発注が 上手くコントロールできない事態 CESからの帰国後、Genicsは全自動歯ブラシの量産化に向 ていた。 case 3 G e nic s 評価検証を通じた 改良・エビデンス蓄積による信頼性向上 Genicsは、ハードウェアの量産試作と並行して、少人数での試 かどうかの検証を少人数で行っている。今後は、同大学の歯学部 け、社内で担当者を配置して量産設計のプロジェクトを立ち上げ、 そんなとき栄田氏は、大学OBの紹介で、大手メーカーでの開 作品の評価検証を繰り返し行っている。例えば、CESを通じて接 生の協力を得て、より大人数で評価検証を実施する予定。そして、 製造・マネジメント面で支援してくれる企業を探索した。複数の企 発・量産や新規ビジネス立ち上げ経験を豊富に持つB氏と出会 点を持った介護施設運営会社と連携を取り、同社が運営する介護 歯科医師に、検証で取得したデータを使った論文を歯科学会で発 業とコミュニケーションを取り、そのなかで対応や条件が合うと感 う。B氏は他のものづくりスタートアップの顧問も務めており、ス 施設にて歯科衛生士立会いの下、試作品の評価・検証を実施し 表してもらうことを目指している。 じたA社への発注を決定した。 タートアップ支援も行っていた。 た。 しかし、同プロジェクトは、想定したスケジュール通りには進ま 栄田氏は、Genicsの事業に関心を持ったB氏に相談。ビジネス この実験では、①全自動歯ブラシが口に入れやすいかどうか、 なかった。Genics側では、開発方針や細かな仕様に関して担当 上の意思決定経験を豊富に持つB氏の助言を参考に、まず、A社を ②口に入れてみて痛くないかどうか、③違和感なく使えるかどう 者のみでの対応が難しく、栄田氏が都度確認・決断することにな 始め製造企業が得意な分野に合わせて各社への発注内容を整理 か、などを確認した。検証の結果、口に入れた後の歯ブラシの保 り、時間を要した。また、製造事業者側にとっても新しいことに関 し、役割及び責任の所在を明確化した。社内の体制も変更し、栄田 持に問題はなく、口に入れてもらうタイミングで違和感があること しては、担当者が意思決定できるレベルでの提案や助言は限られ 氏がスムーズにものづくりをコントロールできる体制を整えた。 が確認された。そのため、現在、この違和感を取り除くための試作 品改良を行っている。 図. 量産試作開始 〜 体制・スケジュール再設計まで 担当者を配置して 製造企業と協業を検討 図. 評価検証の様子 また、Genicsでは、製品の信頼性を高めるためには、効果に関 対応や条件が合う A社と協業が決定 開発スピードが あがらない事態に陥る ものづくり〜ビジネス立上 経験豊富な支援者と出会う 支援者の協力で社内体制・ スケジュールを再設計 するエビデンスの蓄積と、その効果的な発信が重要だと考えてお り、新潟大学の歯科医師と連携して、試作品で歯垢が取れている (出所)Genics (出所)ヒアリング内容をもとに三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成 スタートアップが得た学び 製造事業者に頼り過ぎず、スタートアップ側がものづくりプロセスをコントロールすべき ●スタートアップは、製造企業・製造経験者からものづくりの知識・経験を借り、ハードウェアの完成を目指す。しかし、製造企業 の役割は、あくまでも、過去の製造経験に基づいたものづくりの手法や実現方法を提案・実行することにある。 スタートアップが得た学び ●そのため、スタートアップは、製造企業各社が提案・実行できることをベースに、自社主導でコア部分のハードウェアづくりを進め ていかなければならない。 ものづくりビジネスの意思決定経験者から支援を受けられる状態をつくりだす エビデンス収集と適切な発信によって製品の評価を高めることが可能 ●製造企業・製造経験者のなかでも、ビジネス上の意思決定を行ったことがある方は、スタートアップのビジネス立ち上げプロセ ●Genicsは、検証を通じて製品を改良していくだけでなく、性能や効果に関するエビデンスを収集し、実験に協力する歯科医師 スに近しい実体験をベースに貴重な助言・支援をしてくれる。 ●Genicsの場合、支援者の経験に基づいた助言のもと、製造企業との役割分担を整え、社内体制を変更したことで、栄田氏がス ムーズにものづくりをコントロールできるようになった。 に学術論文を執筆してもらうことで、ハードウェアの信頼性向上を狙っている。 ●ヘルスケア分野を始めとした、効果を学術的に検証することで信頼性を高められる分野のハードウェアは、Genicsのように、外 部研究機関と協働で研究・結果の論文化を狙いながら、開発を進めることも重要だと考えられる。 ●スタートアップは、VC、支援者、協業パートナー、他のスタートアップなど、あらゆる関係をたどり、製造企業・製造経験者を見つ けるだけでなく、ものづくりビジネスの意思決定経験を持った人材を見つけ、支援を得られるようにすることが必要。 25 Contract Casestudy for Maker Startups Contract Casestudy for Maker Startups 26

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ファーストアセント ビジネス case 1 企業概要 ファーストアセント 国立研究機関との初めての共同研究 Company Overview ファーストアセントは、育児記録の簡単登録・見える化を実現 らプレスリリースを出しているが、研究センター側のリリースを見 するスマートフォンアプリ「パパっと育児@赤ちゃん手帳」をリリ た大手企業から問い合わせが入るようになり、その後の PoC 案 これまでに、2 万人のモニタユーザーから集めたデータを元に、赤ちゃんの泣き声 ースし、サービスを展開。社長を務める服部氏は、ユーザー数、 件獲得へと繋がった。 から感情を分析するアルゴリズムを開発。アプリサービスとして提供(ユーザー ユーザーメリットの観点から、広告表示やユーザー課金ではなく、 フィードバックによるアルゴリズムの正答率評価は 80%以上の正答率を記録) 収集データを使った収益化を志向するようになった。そのために (借入にて調達)で対応した。研究費を獲得する方法もあったが、 上記アプリサービスは 2018 年 7 月にリリースを行っており、これまでに 150 カ は、収集データ(育児ビッグデータ)の価値を証明しなければなら 大量のレポーティングを要求される可能性もあり、スピード、工数 国以上、15 万人以上のユーザーが利用。 ない、と考えるようになった。 の観点から、同社は、研究費を選択しなかった。 製品・サービス概要 上記アプリのアルゴリズム、新たに開発するハードウェアを用いて、世界初の 「赤ちゃんの泣き声を自動検知し、感情変化を分析する見守りサービス」 を開発中。 なお、この時の共同研究に必要となった資金は同社の持ち出し 育児ビッグデータが持つ価値を証明するには、少ないサンプル による検証ではなく、統計的な検証を行うことと、育児ビッグデー 図. 育児ビッグデータ ビジネスコンセプト タが医療にもたらす影響について、学術的な研究も必要だと感じ ていた。そこで服部氏は知人に頼み、大学や研究機関の先生や ビジネスモデル ハードウェアの役割/機能 研究者を紹介してもらった。結果、子供のライフログデータに強 い関心を持った国立成育医療研究センターの研究者に出会うこと アプリに記録した 赤ちゃんの行動・ ハードに記録した 赤ちゃんの泣き声 ¥ 泣き声診断 ハードウェア ができた。 これまで、乳幼児の実態調査は、多数のデータ収集が困難であ り、保護者からの聞き取り調査に依存していた。服部氏と研究者 一般ユーザー 法人企業 ¥ ファーストアセント 赤ちゃんの 行動・泣き声・ 感情解析から 発見した示唆 は議論を重ね、同社のビッグデータを活用することで実態調査を 補完できると考え、共同研究を行うに至った。 本共同研究は、ファーストアセントと、同研究センターの双方か (出所)ファーストアセント紹介資料 育児記録アプリ スタートアップが得た学び 枕元においても気にならない消音性。赤ちゃんの泣き声を正確に 分析できるようノイズキャンセリングを搭載 業界内の情報ハブとなる組織・人物の力を借りて認知と信頼を獲得 ケーススタディ一覧 ●スタートアップにとって、製品・サービスの試作・開発、量産化、事業拡大において大手企業との協業は欠かせない。そして、その ビジネス ものづくり 量産化設計・試作 case 1 27 Contract Casestudy for Maker Startups case 2 case 3 最初の協業となる取組が、PoCである。PoCを行うには、大手企業からの認知獲得、組織としての信頼獲得が必要になる。 ●ファーストアセントは、国立成育医療研究センターという育児×ヘルスケア領域において高い信頼性を持った研究機関(情報の ハブとなる組織)と共同研究し情報発信を行うことで、認知と信頼の両方を同時に獲得することに成功している。 ●スタートアップは、自社が事業を展開する業界・領域において認知と信頼を持った組織、人物とつながり、その認知と信頼を一気 にレバレッジすることが重要。 Contract Casestudy for Maker Startups 28

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ビジネス case 2 量 産化 設 計・試作:もの づくり ファーストアセント 大手企業との初のPoC案件獲得に頓挫 case 3 ファーストアセント スタートアップファクトリーとの協業深化 A 社メンバーは、より確実に開発でき、かつ、尖りを抑えたプロ 手企業 A 社から本格的な PoC 案件の引き合いがあった。プレス ダクトを考えるようになったのである。本来、より斬新で、A 社の 感情変化を分析する見守りサービス」の開発に向けて、自社ハー の間に、2回のフルカラー3Dプリンターによる試作、複数回のデ リリースを見た A 社の役員であるB 氏は、すぐにファーストアセン 未来につながるプロダクトを企画・PoCを提案する方向で議論を ドウェアの開発を進めている。ハードウェアの開発にあたっては、 ジタルモールドを使った試作による金型設計へのフィードバックを トへ連絡をし、PoC に向けて、非常に積極的な話し合いを行うこ 進めることが理想だった。しかし、厳格な開発期日が設定されて 以前協業した株式会社ノエックスに加えて、有限会社スワニーと 繰り返し、現物の感触を確かめながら仕様を固めていった。そし とになった。 いたこともあり、実現可能性が高いプロダクト開発が優先される 協業している。 (ノエックスがハードウェア設計、スワニーが金型製 て、CES展示用 兼 サービストライアル用のハードウェアを完成、 ようになった。 造を担当。) CESに出展。多くの方から反響を得ることができた。 B 氏は、ベビーテック領域でプロダクト開発を行うことがミッ ファーストアセントは、現在、 「赤ちゃんの泣き声を自動検知し、 その後、ファーストアセントは、設定した予算枠のなか、約半年 国立成育医療研究センターがプレスリリースを発表した後、大 なお、その間、ファーストアセント、ノエックス、スワニーの3社 ションで、開発に向けたリサーチ過程で、ファーストアセントと同 最終的に、本 PoC 提案は、服部氏が予算を当初の半分以下に ファーストアセント社長の服部氏は、学生時代、材料工学・ナノ センターとの共同研究を知り、コンタクトしてきた。B 氏との話はト 抑えた案にまとめ直し、A 社の役員稟議にかけられた。しかし、投 テクを専攻し、大手電機メーカーに就職。当時、服部氏は、隣の研 は、関係者間で、実現したいユーザーエクスペリエンスについて、 ントン拍子に進んでゆき、開発に向けたリサーチなども共同で 資回収期間、失敗時のリスクがネックとなり、実施が見送られた。 究室で行われていた金属加工、製造ラインでのものづくりの様子 定期的、かつ、直接、認識合わせを行っていた。 行っていた。しかし、プロダクトを具体化していく過程で参加メン ファーストアセントは、約 8 か月、案件獲得のために注力してきた を見ていたため、射出成型に関する知識、金型製作のコスト感覚 バーが増えていくと、次第に、プロダクトの議論の風向きが変わっ が、同社初の PoC 案件は頓挫した。 を事前に持っていた。 ていった。 図. 今回の試作開発を経て完成した金型 外観 そのため、服部氏は、当初、スワニーがデジタルモールド(3Dプ リント樹脂型を用いてABS、PS、POM、PPなど量産材料で射出 図. 引き合い〜案件獲得頓挫まで 大手企業から 初PoC案件 引き合い 成形できる技術)で作る型の強度が弱くなることを不安視してい 案件企画の 協業が素早く進展 企画が次第に 実現可能な 内容に傾斜 役員稟議で リスクを負い 実行する案件と 判断されず 実施見送りで 約8か月間にわたる 協業が頓挫 (出所)ヒアリング内容をもとに三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成 た。 しかし、服部氏が、スワニーの工場を訪問、工法・型の現物を見 たとき、不安は解消された。服部氏は、デジタルモールドの品質、 スピード、コスト感に驚き、ものづくりに関する知識や感覚が覆さ (出所)ファーストアセント れたと感じた。 スタートアップが得た学び スタートアップが得た学び 協業企業の状況、目指すゴール、メンバー個人の立場を知り、リスク許容度を見極める スタートアップファクトリーの製造技術を用いて効率的にハードウェア試作を繰り返す ●製品・サービスの試作開発におけるPoC で、スタートアップは、協業する大手企業のリソース確保のため、いかに大手企業内 ●スタートアップは、限られた資金と時間のなかで、サービス及びサービスを実現するために必要な開発を行わなければならない。 で稟議を通すか、という課題に直面する。 ●ファーストアセントもA 社と提案準備を進めていたが、内容が実現可能性に傾斜する状態に陥った。その結果、提案の斬新さが 失われ、リスクだけに注目が集まり、PoC 案件の実施が見送られることになった。 ●このような事態に陥ってしまったのは、タイトなスケジュール、高い実現可能性を要求する姿勢、失敗した場合のキャリア保障が ないリスクなど、A 社関係者に多くのプレッシャーが重くのしかかっていたためと推察される。 ●スタートアップは、協業する大手企業の状況、目指すゴール、リソース、関係者の立場を詳しく把握したうえで、相手方が、企業 そのため、開発上の試行錯誤を効率的に行う必要がある。 ●ソフトウェアに関しては、効率的な開発手法(アジャイル開発)が確立され、すでに普及しているが、ハードウェアに関しては、 その手法が発展途上にある。デジタルモールドは、効率的な開発を実現する手法の 1 つであり、今後、他の技術も含め、普及し ていくと推察される。 ●ハードウェア開発を行うスタートアップは、すでにハードウェア開発の経験があるスタートアップからの情報(製造事業者の評価) を得ながら、スタートアップファクトリーを活用して、効率的なハードウェア試作を繰り返すことが重要。 として、ビジネスパーソン個人として、どれだけリスクを許容できる状態にあるか見極めることが必要。 29 Contract Casestudy for Maker Startups Contract Casestudy for Maker Startups 30

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トリプル・ダブリュー・ジャパン 量 産化 設 計・試作:もの づくり case 1 企業概要 Company Overview 製品・サービス概要 排せつ予測デバイス「DFree」は、超音波センサーによって膀胱の大きさを検 知することで、尿のたまり具合をリアルタイムで把握し、排尿のタイミングを通 トリプル・ダブリュー・ジャパン 初めての量産は最低ロット3,000台 調整も難航 Triple W は、膀胱のふくらみを超音波で計測し、排せつのタイ 署があるため、依頼のタイミングや内容、スタートアップに対する ミングを通知する、排せつ予測デバイスを開発している。社内で 評価によって、希望した部署に対応してもらえるとは限らないよう 設計、試作を行った後、1 回目の量産に踏み出した。 であった。 量産先となる製造事業者には、民生品での量産実績と低価格 また、発注予定数をA 社と協議のうえ 3,000 台と設定したが、 知する。 見積りの 2 点から、A 社を選定した。A 社は、信頼性が高く実績も その後、販売見込みの修正が発生し、小ロット生産に変更せざる 介護施設向けにレンタル、個人向けに販売を行っており、累計 3,000 台を出 豊富な大企業であり、量産はスムーズに進行するかと思ったが、 を得なくなった。しかし、こうした要望には柔軟に対応してもらえ 荷した(2019 年 3 月末時点)。 そうはいかなかった。 なかった。さらに、実証実験後に明らかになったニーズに合わせた ユーザーのニーズへの対応のために、低価格化や、歩行・移乗・寝返りなど の姿勢変更による誤判定の削減を目指して、さらなる開発を進めている。 まず、量産化にあたって誤算だったことは、過去に接点があっ た部署がアサインされなかったことである。大企業には複数の部 仕様変更が思うように進められないなど、Triple W にとっては、 当初想定していなかった対応が続いた。 図 . Triple Wと A 社の連携の状況 ビジネスモデル ハードウェアの役割/機能 介護施設等 計測データの 共有サービス レンタル・ サービス費用 ¥ A社の対応 ミスマッチ 量産をお願いしたい 部署がある 必ずしも希望の部署では受け付けられない 小ロットに変更したい 小ロットへの変更対応が難しい ニーズに応じた 仕様変更をしたい 個別に柔軟に対応することが難しい センサー部 DFreeを販売 購入費用 一般ユーザー トリプル・ダブリュー・ジャパン DFreeをレンタル Triple W 本体 ¥ スタートアップが得た学び 超音波センサー部が、膀胱のふくらみを感知。本体部が、スマート フォンや PC に無線で情報を伝達する 大企業との連携は、大ロット・高品質の製造でこそ活きる ケーススタディ一覧 ●ハードウェアの量産において、スタートアップが、豊富なノウハウやリソースを持つ大企業に期待するところは大きい。しかし、実 際に大企業に量産を発注するか否かは、慎重に判断すべきである。スタートアップが求める小ロットでの製造や柔軟な対応は、 ものづくり 量産化設計・試作 多くの大企業が不得手としており、想定外のトラブルが起こりやすい。 量産以降 ●大企業との連携を検討する際には、①ある程度大ロットでの量産の目途が立っているか、②大企業の持つ生産実績や信頼性の高 さが、製品の量産に必要かどうか、③希望する部署と連携できる確約があるか、といった点を参考に、先方とWin-Win の関係を case 1 31 Contract Casestudy for Maker Startups case 2 築けるかを見極めてほしい。 Contract Casestudy for Maker Startups 32

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量 産以 降:もの づくり case 2 tsumug トリプル・ダブリュー・ジャパン 綿密なリサーチによる連携先企業の選定 A 社で二度の量産を経験した後、BtoC 向けに製品改良を行う か、自社で作成した選定基準一覧表をもとに確認した(図参照)。 ことになった。高齢者などのユーザー本人が使用できるように、デ 最終的には、3 社まで絞り込みを行い、一覧表をもとに選定担 ザインと設計のシンプル化やデータの取得精度の向上を目指し 当者と経営陣で協議して、連携先を決定した。決定の要因は、小 て、ハードウェアの改良を行うことにした。 ロットでの生産について承諾が得られていたこと、仕様変更など そのため、小ロットでの生産や量産試作時に製造側からの提案 をしてもらえるような量産先を選定することになった。 企業概要 Company Overview 製品・サービス概要 への柔軟な対応が可能であること、自社からのアクセスが良かっ たことなどであった。 まず、社内の知見やインターネット検索で、ニーズに合う形での 入念に選定をしたことで、製造の観点から設計についての助言 製品製造ができそうな企業を十数社選定した。その後、スタッフ を受けられるなど、二人三脚で量産を目指せる関係性を構築でき が工場まで足を運び、どのような設備があるか、製造はできそう ている。 TiNK C 図 . 連携先の選定基準一覧(例) 小ロット対応 ○ △ ○ コスト ○ ○ ○ ※1 調達力 △ ○ × 柔軟性※1 × ○ × 実装設備 △ △ ○ 組み立て設備 △ ○ ○ 無線機器生産実績 △ ○ ○ アクセス※2 △ ○ ○ 改善提案※3 × ○ × ハードウェアの役割/機能 ¥ インセンティブ ︵宅配業者等︶ ¥ サービス事業者 ※1 調達力と柔軟性は、製造会社のサプライチェーンの状況、部品ごとの製造企業、協力会社との連携状況などを尋ねる ことで評価した ※2 アクセスは、移動時間と移動方法で評価した ※3 改善提案は、当該工場で製品製造をすることに なった場合の対応を尋ねて評価した ビジネスモデル 設置・サービス 提供・保守 サービス ユーザー ︵建物オーナー・入居者︶ D社 賃貸住宅 オーナー・管理者 C社 tsumug B社 TiNK E tsumug は安 心 で 豊かな世 界を生むため、コネクティッド・ロック「TiNK (ティンク)」シリーズと活用サービスを提供 モノと情報、体験を繋ぎ、シェア リングエコノミーの加速を目指している。 住 宅 各 戸の玄 関ドアに設 置 するシリンダータイプのコネクティッド・ロック 『TiNK C』、マンション等の集合機に設置するタイ プのコネクティッド・ロック 『TiNK E』などを開発している。 賃貸空物件に設置することにより、内見業務や物理鍵管理業務を効率化する ほか、オーナー向けには物件価値の向上、入居者向けには生活の利便性向上 といったメリットを与える。 家族間の鍵共有、ハウスキーパーなどへの一時的な鍵共有を可能に。子供の 帰宅や独居老人の見守りでも利用可能。 内部機構の改善。通信品位向上と静電対策を実現 スタートアップが得た学び ケーススタディ一覧 工場に足を運び、総合的な視点から連携先を決定する ビジネス ●Triple W は、二度の量産によって、ハードウェア開発と量産のノウハウを社内に蓄積できた。この経験を活かし、自社にとって 人材・組 織 重要な選定項目を定め、視察結果をもとに選定したことで、良好な連携に至っている。 ●製品化を急ぐあまり、リサーチが不十分な状態で連携先を決定すると、量産化の段階で二の足を踏むことになる。量産化の目途 が付きそうなタイミングで、量産先に求める要素を整理し、現地視察をしたうえで、選定することが重要である。 33 Contract Casestudy for Maker Startups case 1 case 2 case 3 Contract Casestudy for Maker Startups 34

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ビジネス case 1 ビジネス ts u m u g ハードウェア開発に注力しすぎるあまり 事業開発が進まない tsumug では、自社で開発したコネクティッド・ロック「TiNK」 ウェアの開発課題だけに囚われない環境を作っていった。 (ティンク)の量産に向けて、SHARP のサポートのもと、ハード 牧田氏は、ハードウェア開発の進捗がその他の取組に過度に影 ウェアの品質改良に取り組んでいる。両社は、tsumug の牧田社 響を与えないようにした。直近で行ったオフィス移転は、サービス 長が SHARP のアクセラレーションプログラムに参加したときか を作っていくという意思を、社内へのメッセージとしてつたえる役 らの付き合いで、tsumug は国内での製造や海外工場への切り 割も担った。 換えなど、製造面で SHARP の支援を受けてきた。 サービス開発も並行して進めており、 「TiNK Desk」 (マンショ そうしたなかで、tsumug では量産に向けた取組にフォーカス ンの空室を活用し、誰でも短時間から利用できるワークスペース するあまり、次第にハードウェア開発の課題=経営の最優先課題、 を提供するサービス。TiNKを使って入退室を管理する。) を発表。 という意識がメンバー間に生まれていった。 福岡市での実証実験を開始した。 牧田氏は「tsumug は物売りだけの会社ではない」、 「TiNK の デバイスが持つ課題だけが経営課題ではない」と考え、ハード case 2 ts u m u g 福岡市 実証実験フルサポート事業への 応募と採択 tsumug は、自社で開 発したコネクティッド・ロック「TiNK」 (ティンク)を用いたサービス検証を行うため、福岡市実証実験フ ルサポート事業に応募した。 サービスを通じて解決したいと考えている課題を理解し、実際に その課題に悩む地元企業を紹介するなど、企業間のマッチングに も力を入れている。 福岡市実証実験フルサポート事業とは、福岡市が主催する、先 tsumug はこの実証実験で、ユーザーからのフィードバックを 端技術を活用して社会課題の解決を目指す企業を支援する目的 得ることができた。サービスを提供したときに起こるであろう課題 で始めた事 業。企 画が採 択された企 業は、規 制 緩 和を含めた を収集し、サービス開発に繋げている。 様々なサポートを受けながら実証実験を行うことができる。 官公庁や自治体の補助事業に応募する場合、必要資料を揃え 図. 福岡市 実証実験 フルサポート事業 るだけでも時間が掛かるため、専任の担当者が必要になるのが通 サービス立ち上げ経験のあるメンバーがいるtsumug は、その 強みを活かし、次なるサービス開発も並行していく予定である。 常である。スタートアップにとっては負担が大きい。しかし、福岡 市の場合、スタートアップがすでに資金調達などで作成するピッ チブックと近い資料(事業提案書)で応募でき、負担が少ないと いうことも後押しした。 図. SHARPによる支援〜ハードウェア開発の切り離しまで SHARP支援のもと ハードウェア開発を進める 量産に向けた ハードウェアの改良を継続 ハードウェア開発=経営 という意識が蔓延 自社のミッション (サービス提供)を再確認 ハードウェア開発を 他の取組から切り離す (出所)ヒアリング内容をもとに三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成 tsumug が提案した事業(第三期: 「コネクティッド・ロック」を 活用した入居者向けの実証実験)は無事採択され、提出した事 業計画に沿って実験を進めた。福岡市は、実験エリアの選定に協 力し実験協力者への説明会の開催サポートや、PR・告知面の支 援を行った。 スタートアップが得た学び 本事業に協賛する福岡地域戦略推進協議会(以下、FDC)は、 協業できる可能性を持った地元企業を紹介するなど、福岡市とは (出所)福岡市ホームページ mirai@(ミライアット)実証実験フルサポート事業 違った形で支援している。FDC は、地域活性化プロジェクトを行 うなど、地元企業の課題や悩みを熟知。実験を行う事業者が、 ハードウェア開発自体を目的化してはならない ●ハードウェアを通じてサービスを提供するスタートアップにとって、製品開発の進捗が重要であることは間違いない。しかし 製品開発の進捗が社業全体のボトルネックと捉えられ、それが解決しない限り事業全体が進捗しないと思い込んでしまうケース がある。 スタートアップが得た学び ●ハードウェア開発を目的化させるのではなく、並行して事業を進めていくことが重要になる。 開発・量産面での大企業との連携をハードウェア開発の土台とする(SHARP) ●tsumugが、ハードウェア開発と平行して、ソフトウェア・サービス・事業開発を進められるのは、長年製造支援を行っている SHARPの存在が大きい。 ●スタートアップは、事業を推進するにあたり、自社の得意分野と製造支援事業者の得意分野を意識し、分担しながらさらなる飛躍 を目指す必要がある。 35 Contract Casestudy for Maker Startups スタートアップに協力的な自治体と連携し、実証実験の環境を確保する ●製品やサービスの開発にあたっては、ユーザーからのフィードバックを受けながら、改良を積み重ねることが重要。そのためには、 開発段階からリアルなユーザーに利用してもらえる機会を設けることが必要になるが、その機会を自ら設けるハードルは高い。 ●スタートアップは、スタートアップ支援に前向きで柔軟な姿勢を持った自治体・組織を見つけ、自社サービスを実験できる環境や 機会をより多く確保することが重要。 Contract Casestudy for Maker Startups 36

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人材・組 織 case 3 ジャパンヘルスケア ts u m u g 雇用形態にこだわらないチームづくり tsumug は、正社員雇用だけではなく、業務委託などの契約で も参画できるようにしており、メンバーは契約形態を選択すること ができる。この背景には、自分の働き方や会社との関係性を思考 し続ける人を増やしたい、という牧田氏の想いがある。 牧田氏は、会社員時代に海外勤務を経験したが、そのとき初め いる。また、業務やプロジェクトの区切りのタイミングで、業務内 容・契約内容の見直しを行うようにしている。 企業概要 Company Overview 製品・サービス概要 なお、権限範囲を規定しているのは、同社が委託金額を「会社 放置すると膝や腰の痛みを引き起こすこともある足の歪みを矯正するイン 個々人に 最適な設計 における予算」として捉えており、その予算を契約の範囲内であ ソールを提供。 顧客からの足データの提供を受けて、個々人に最適化されたインソールを れば自由に活用できるようにするためである。 て確定申告が必要になった。確定申告の経験がなかった牧田氏 は、その機会を通じて自分の資産、所得、課税額を意識するよう 独自アルゴリズムによって自動で設計。 3Dプリンターで カスタムメイド 図 . tsumug における業務委託のイメージ 同時並行で事業展開を進める、AI で歩き方を診断する「ミラーウォーク」 と組み合わせて、歩き方から潜在顧客を検出するなど、 「足を支え続ける になった。会社が税務対応してくれることは楽ではあったが、結果 思考停止していたのではないかと感じた牧田氏は、個人の働き方 企業」を目指している。 最終製品 が変わりつつある今の時代だからこそ、tsumug で働くメンバー には、雇用形態も含めて自分の働き方を見つめ直して欲しいと考 ビジネスモデル えている。 ハードウェアの役割/機能 最近はパラレルワーカーが増えている。tsumug にジョインす 足の写真データ (出所)ヒアリング内容をもとに三菱 UFJリサーチ&コンサルティング作成 して検討事項が多く、運用が難しいという一面もある。 tsumug の場合、契約にあたって、委託業務内容、契約期間 (自動更新有無を含む)、委託金額、権限範囲を中心に、双方で検 討・認識合わせを行っている。その際、牧田氏(委託者)と受託 ¥ 足の写真データ インソール提供 ¥ 従業員 スタートアップが得た学び インソール提供 法人 ユーザー 者双方にとって分かりやすい言葉で記載し、合意するようにして ジャパンヘルスケア とに挑戦する人も増えている。ただ、業務委託契約は、締結に際 個人ユーザー ることをきっかけに、業務委託契約を結んでフリーランスで働くこ 健康経営 個人の足骨格などのデータから、足の歪みを正すために最適設計・ 出力される「硬い」インソール。特にシェル部分は 3D プリンター により完全カスタムメイド 相手に伝わるわかりやすい言葉で、委託業務の認識を合わせる ケーススタディ一覧 ●スタートアップは、正社員にこだわらず、参画メンバーを集めるケースが多い。しかし、中核メンバーは、稼働時間の確保、離脱 防止のために、正社員として迎えるケースが多い。 ●ただ、フリーランスやパラレルワーカーが増える流れは今後も続くと推察される。tsumug のように、コアメンバーであっても 業務委託契約を選択する柔軟さが求められる。 ものづくり ビジネス 量産化設計・試作 ●その際留意しなければならないことは、委託業務の認識合わせ、契約内容への落とし込みである。tsumugを参考に、委託側と 受託側で言葉のニュアンス、表現の抽象度を調整しながら、契約文言に変換していくことが必要となる。 37 Contract Casestudy for Maker Startups case 1 case 2 Contract Casestudy for Maker Startups 38

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量 産化 設 計・試作:ものづくり 個別”のカスタムメイド製品の 量産”化の検討 case 1 ビジネス ジャパンヘルスケア ジャパンヘルスケア ユーザーフィードバックを 専門的知見から分析し市場性を見極め case 2 カスタムインソールは、カバー、クッション、シェルの三層構造 た。インソールのエッジ部分の仕上げについても、カット工法の種 足のトラブルケアは米国では一大市場になっているが、日本で できているのは、当社メンバーが「足の専門医」としての専門的 になっている。特に足の歪みを正すうえで鍵となる硬いシェル 類や貼り合わせの際の熱のかけ方など、コストも勘案して、最適 は専門医が少なく、当社がターゲットとするインソールによる脚矯 知見があるからである。フィードバックされた意見のなかには、プ の形 状は、顧客・ユーザーの足骨格に合わせた完全カスタムメ なプロセスをゼロから一緒に検討してもらった。さらに、浜野製作 正・ケア市 場は、日本では未 開 拓 市 場である。そこで、テスト ロダクトの課題に起因するものもあるが、ユーザー自身の抱える イドとなっており、カバーとクッションもシェルの形状に合わせ 所は、人体への毒性試験の実施を勧めるだけでなく、試験の条件 ユーザーとの対話・コミュニケーションを重視し、ユーザーからの 足の課題に起因するものも少なくない。足の専門医としての知見 てサイズ調整し、インソール全体として最適化している。一方で、 設定や評価まで伴走してもらっており、当社が想定すらしていな フィードバックを大量に収集、分析することで、市場性の検証を進 によって、大量のフィードバックからプロダクトに起因するものを 受託開発・製造ではなく、量産製品による市場展開ビジネスを い工程を教えてもらった。 めている。 判別し、ユーザーとの対話・コミュニケーションを通じた適切な方 工業試験も試験研究のプロだけでなく、製造のプロ、靴のプロ テストユーザーの発掘には、クラウドファンディングも活用して の知見や助言なしには実施できなかった。硬いインソールという いる。クラウドファンディングは、当社の熱烈なファンを獲得する 特に特徴的な硬いシェルは、完全カスタムメイドとなるため 3D 製品自体が日本にはなく、当然ながら製品の安全性や耐久性の工 マーケティングとしての位置づけもあるが、そういったファン層か プリンターを使用することになる。しかし、短いリードタイムである 業試験方法に関する規格・標準も存在しない。そこで、東京都立 らのフィードバックは非常に質が高いため、プロダクト改善の参考 程度の量の製品を仕上げるためには、複数台の 3Dプリンターが 産業技術研究センターと製造事業者に相談をし、実際の歩き方、 になる意見が多いと考えている。 必要となるため、少なくとも現段階でそのような多額の設備投資 足裏への圧力のかかり方を模擬した独自の試験方法を考案し、無 を行うことは 難しかった。そこで、DMM.make の 3D プリント 事に実施することができた。 しているため、ゼロから製造プロセス・方法を検討する必要が あった。 また、深い課題を抱えている潜在顧客へのテストも開始してお り、靴へのこだわりが強いランニングを趣味とする層に、本プロダ サービスで、シェルの図面をオンライン入稿して出力することで、 当初の想定よりもコストダウンできることが検証できた。 向性でのプロダクト改善を可能にしている。 クトをテストしてもらっている。そのなかでも、特に外反母趾や偏 図. 旧プロトタイプ 図. 最終バージョン 平足気味のファッションに敏感な女性からは、かなりの高評価と、 また、連携しているスタートアップファクトリーの浜野製作所を 具体的な改善提案が得られている。強いニーズを抱えている潜在 始めとする製造事業者には、 「良い製品を生み出すために」とい 顧客が徐々にターゲティングでき始めている。今後は健康経営意 う想いでとことん相談に乗ってもらった。例えば、当初は三層構 識の高い企業との実証も予定しており、ユーザー個々の身体デー 造の貼り合わせは市販品の接着剤を使用することを想定していた タに加えて、仕事のパフォーマンス向上も検証できれば良いと考 が、浜野製作所から紹介された靴の製造事業者から「市販品だと えている。 剥がれやすい」と助言していただき、靴専用ボンドを紹介してもら このように多種多様なユーザーから大量のフィードバックを収 い、想定していたやり方ではうまくいかないことを教えてもらっ 集しているが、その分析をして設計・開発の改善に生かすことが スタートアップが得た学び スタートアップが得た学び 実現したいモノをものづくりのプロの助けを借りて製品として実現 専門的な知見がないとできない課題分析やプロダクト改善がある ●実現したいモノはあっても、実現するための適切な方法は、関連するプロの知見や経験が不可欠。量産性やコストばかりでなく、 ●未開拓市場におけるプロダクトの市場性においては、自社プロダクトを熱烈に支持するファン層の獲得が欠かせないが、そのファ 品質・耐久性、安全性といった「製品」として必要となる要件を適宜助言してもらうことができた。 ンの意見からプロダクトの課題点や改善点を導き出すには、専門的知見に基づく判別や判断が有効となる。 ●製品化経験のない素人では想定し得ない検討事項が少なくなく、長年のものづくりの経験や勘所不可欠。助言や気づきを与え てくれるばかりでなく、良い製品を生み出すという使命感や責任感から、期待以上のソリューションまで提示してくれる。 39 Contract Casestudy for Maker Startups Contract Casestudy for Maker Startups 40

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Seismic 原 理 試作:もの づくり 米軍研究開発プログラムの成果を基に 民生市場向け製品の開発を推進 case 1 企業概要 S eis mic Company Overview 当社は米国非営利研究機関 SRI International のスピンオフ 製品・サービス概要 である。コア技術である人工筋肉は、米国陸軍とDARPA のプロ ビジネスモデル ションを取っている。 製品開発においては、 「小さく・薄く・軽く・省エネ」に加えて、 アパレルとロボティクスを融合した、新しいタイプのアクティブウェアであ グラム「Warrior Web program」の研究成果がベースになっ 「実際に効果的なアシストができるか」という点から、頻繁にモニ るパワード・クロージングを開発。 て いる。プログラム 終 了 後、研 究を主 導した 当 社 CEO Rich ター試験を実施している。モニターに試作品を装着して様々な動 既存の外骨格型アシストスーツでは対応できないような、デザイン自由度 Mahoney 氏 が、市 場 性 が 高 い と 判 断し、Seismic(旧 社 名 きをしてもらい、それをビデオ撮影し、筋肉の動きに関するデータ の最大化を実現。 Superflex)を起業。アパレル分野の市場をターゲットにして製 を取得。そこから試作品の課題を抽出し、製品開発にフィードバッ 人々のライフスタイルに調和し、あらゆる年齢のあらゆる生活シーンに利 品開発を進めたが、民生市場ならではの課題が次々と明らかに クし、機能だけでなくデザイン性も考慮して仕様を再検討すると 用される、アパレル製品としての普及を目指している。 なった。 いうサイクルを高速で回し続けている。モニター試験は 3 年半で ハードウェアの役割/機能 当初は、アシストする動作として「歩行」を想定していたが、複 300 名を超えているが、もっと増やしていく必要があると考えて 数の筋肉が絡み合う複雑な動作であり、エネルギー消費が大きく おり、実際の生活や仕事のシーン、すなわち「リアルワールド」で 個人差も大きいことが判明。ハードルが極めて高いと判断し、 「起 の検証テストも随時行っている。 立(立つ、座る)」動作に対象を転換した。また、筋骨格の動きに 関する学術的知見は、特定かつ局所的な動きに限れば蓄積され 人工筋肉モジュール 図. 起立動作のアシストイメージ ているものもあるが、 「起立」という動作単位での複雑なメカニズ ムは学術的にも十分に研究されていない領域であった。人間の動 起立アシスト / Sit-to-Stand Assist 作の奥深さや難しさを知り、新たにバイオメカニクス分野のエン S eis mic ¥(スーツ初期費用) 健康関連情報 会員コンテンツ も参画している。ハードウェアやエレクトロニクス、ソフトウェア、 バイオメカニクスのエンジニアと一緒に、常に密なコミュニケー 製品の全体像 ¥(会員費用) 立位サポート Standing Support また、ターゲット市場に精通したアパレル・デザイン分野のプロ Customer Powered Clothing ジニアも採用した。 スタートアップが得た学び パワード・クロージングを支える人工筋肉モジュールには、高出 力・小型・軽量・静粛なアクチュエーターが求められる 新たなプロダクト開発で遭遇した学術的にも未解明な課題もアジャイル開発で乗り越える ケーススタディ一覧 ●研究開発成果をもとに特定の製品をターゲットとした開発を進めていくに従って、当初は想定しておらず、かつ学術的な研究もさ れていない、学際的な課題が次々と浮き彫りになってくる。 ものづくり 原理試作 case 1 41 Contract Casestudy for Maker Startups ●様々な分野のエンジニアを採用し、チームが一体となって、製品開発とモニター試験を高サイクルで回す、アジャイル開発を地 量産化設計・試作 道に推進し続けることが肝要。 case 2 Contract Casestudy for Maker Startups 42

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量 産化 設 計・試作:ものづくり case 2 S eis mic 米国スタートアップと日本老舗企業が 開発を円滑に推進 シリーズAで日本の VCグローバル・ブレインから資金調達を 一方、現場では、日米の仕様に対する考え方にギャップがあっ 行ったことに加えて、CEO の Rich Mahoney 氏が長年のロボッ た。日本のエンジニアは、顧客の要求仕様を満たしていても「もし ト研究を通じて、製品のコアとなるモーターやアクチュエーターの 最終的に顧客の期待する機能が発揮できなければ自分たちの責 技術は日本企業が長けていると認識していたこともあり、日本で 任」だと考えるため、製品の使われ方など、仕様の背景情報も把 モーターやアクチュエーターの開発及び製造に協力してくれる 握したうえで設計することが当たり前だと認識している。一方で、 パートナー探しを始めた。 契約社会で情報管理も徹底されている米国のエンジニアは、 「必 グローバル・ブレインからシナノケンシ(長野県の精密小型モー 要最低限の仕様や情報を提示し、その通りに仕上げてくれれば良 ターの開発・製造などを行う企業)を紹介され、同社に見積りを打 い」と認識している。このため、当初、現場の開発は思うように進 診したところ、極めて迅速かつ、米国のビジネス感覚を理解した回 まなかった。 答が得られたことに驚いた。また、当社が求める「動き」を実現す これに対し、両社の中間層が仲立ちして、両社のエンジニアが るために、過去の類似ケースを活かしてモーターとギアを最適に 現場を見学し合って直接交流する機会を設けたり、当社トップ層 掛け合わせた、同社にしかできないアクチュエーターの技術力や にシナノケンシから要求のあった情報を開示するメリットを提示し 提案力の高さにも驚き、シナノケンシをパートナーに選定した。そ たりするなど、潤滑油的な役割を果たすことで徐々に現場もス の後も、日米の違い、老舗企業とスタートアップの違いがあるにも ムーズに回るようになった。 かかわらず、両社が経営層、マネジメント層、エンジニア層の三層 また、中間層は契約面でもSOW:Statement of Workを盛り 構造を整えることによって迅速な意思決定が次々と下されている。 込む工夫を凝らしている。SOWの締結は、米軍を始め同国での共 特にシナノケンシの場合、スタートアップとの協業を進める新 同研究開発プログラムでは一般的な考え方であり、今回のプログラ 規事業開発部門が窓口として対応しているが、この部門のトップ ムのケースでは、最終目標から逆算して開発フェーズを6 段階に区 は海外支社の社長であるため、グローバルでトップ同士のコミュ 切り、各段階での目標や期間、必要な費用、責任の所在などを明確 ニケーションが円滑に取れる。また、戦略担当取締役や開発部門 にした。責任の所在が明確になることで現場のコミットメントやモチ トップもメンバーとして参画している独立の組織であるため、迅速 ベーションを高めるのみならず、事業ピボットによる設計変更ややり な意思決定がされており、非常に助かっている。 直しの際の費用交渉をスムーズにするなどの効果が期待できる。 スタートアップが得た学び 経営と現場の潤滑油となるマネジメント層の重要性 ●スタートアップとの協業においてはスピーディーな意思決定を必要とするため、協業先の経営や開発トップのコミットメントが必要。 ●現場層には認識や文化的なギャップがあるため、双方の経営層と現場層を繋ぐ中間層の役割が大きく、経営層・マネジメント層・ エンジニア層の三層構造が共同開発を円滑に進める成功要因となった。 ●特にマネジメント層は、経営、マーケット、製品、技術についての深い理解が必要であり、双方にエンジニア出身かつ英語に堪能なマ ネジャーがアサインされていたことにより、タイムリーかつ端々に目の行き届いたマネジメントを相互信頼のもとで行うことができた。 設計変更などを見越してSOWを契約に盛り込む ●SOW (Statement of Work) を明確に定義することによって、開発フェーズや責任主体を明確にしておくことで、 ビジネス面のみな らず、開発現場のコミットメントやモチベーションを高めることにも繋がる。 43 Contract Casestudy for Maker Startups memo