生成AI時代における知財実務教育のこれから

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April 29, 25

スライド概要

生成AIを活用しながら、専門性の高い知財実務をどのように学習/教育していくかについて、知財業界の実務教育や転職支援を行う知財塾目線でまとめたセミナーのスライドです。

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サイボウズ株式会社 / 株式会社知財塾 / Smart-IP株式会社

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生成AI時代における 知財実務教育のこれから 株式会社知財塾 代表取締役社長 上池 睦

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自己紹介 上池 睦(かみいけ むつみ) 株式会社知財塾 代表取締役社長/サイボウズ株式会社 特許チーム/Smart-IP株式会社 取締役兼CRO 経歴 東京理科大学専門職大学院イノベーション研究科知的財産戦略専攻を修了後、2015年サイボウズ株式会社に入社。 品質保証部で自社クラウド基盤の品質保証に従事。 異動後は知財・法務業務に幅広く取り組み、2021年は知財業務をメインとして体制整備などを行う。 2022年からは開発部門に移り、エンジニアと近い距離で特許業務に従事。 2021年 株式会社知財塾代表取締役就任、2022年 Smart-IP株式会社取締権CRO就任。 知財塾では、自身の知財実務経験を活かし、教育コンテンツの設計からゼミの開催、初学者の支援などを行う。 Chizaijuku, Inc. All Rights Reserved 2

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知財塾とは 知財業界の課題解決を目指す 総合カンパニー 採用 教育 ● 人材紹介 ● 求人公告 ● スカウト代行 ● 採用コンサルティング ● 個人向けゼミ ● 法人向けe-learning ● 知財事務教育 イベント DX 私たちは、知財業界専門の総合カンパニーです。 「採用」「教育」「プロモーション」「明細書作 成の効率化」といった知財組織で発生するさまざ まな課題に対し、知財業界に特化した知識と実績 に基づく総合支援サービスを提供することで、お ● すごい知財EXPO ● 特許の鉄人 ● appia-engine 客様の課題解決をサポートいたします。 Chizaijuku, Inc. All Rights Reserved 3

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本セミナーの 内容 本日のテーマ 1. 知財実務教育の現状と課題 2. 生成AIが知財実務に与える影響 3. 「実務スキル × AI活用」の分類 4. AI活用による実務スキルの修得 5. 新たな教育サイクル Chizaijuku, Inc. All Rights Reserved 4

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知財実務教育の現状 と課題 Chizaijuku, Inc. All Rights Reserved 5

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現状と課題 知財実務の性質 内容 ● 発明発掘 ● 明細書作成 ● 中間対応 ● 特許調査 ● 特許分析 Chizaijuku, Inc. All Rights Reserved 性質 ● 専門性が高い ● 暗黙知が多い ● 案件ごとに状況が異なるので、 一定の実務経験を積む必要がある 6

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現状と課題 よくある課題 知財塾のアプローチ 🗹 知財実務は属人的で、育成に時間 がかかる 🗹 実践的な演習形式 🗹 ステップバイステップで学べる 🗹 特に未経験者・若手がスキルを身 につけるのが難しい 🗹 教える側の負担も大きい (OJTに依存) Chizaijuku, Inc. All Rights Reserved 🗹 学習者自身の課題に合った学習 内容が選択できる ● ● ● ● 実践演習ゼミ 演習形式ワークショップ 動画サブスク「知財塾Now」 オンボードアイピー(知財人材向けe-Learning) 7

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生成AIが知財実務に 与える影響 Chizaijuku, Inc. All Rights Reserved 8

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知財実務に 与える影響 生成AIができること 知財実務への活用 ● 明細書の文面の作成、特許の構成の比較、情報分析 などに活用できる リリース初期は… 議事録のまとめ、文章の要約、メール文面生成、 コード生成、翻訳案出し など 》 最近では ● 質問への応答 ● 情報の分類・抽出 ● 推論 までできるように! ● 明細書作成、中間対応、調査・分析をカバーしてい ける 実務家への影響 ● 入力(プロンプト)が悪いと出力のクオリティが下 がるため、出力されたものを適切に判断する必要が ある 実務スキルの必要性は変わらない ただし、単純作業から思考・戦略業務へと、知財実 務の価値がシフトしている Chizaijuku, Inc. All Rights Reserved 9

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知財実務に 与える影響 業務ごとのAIの活用例 01 02 03 04 特許明細書作成 中間対応 特許調査 特許分析 発明の概要からクレー 拒絶理由に対する対応方 先行技術の要約、検索式 出願動向、競合企業の技 ム・実施例の草案生成 針の提示、意見書・補正 の提案 術ポートフォリオの要約 → 検索式の構成力が未熟 → 分析作業のボリューム → 検討のたたき台を即座 な人でも一定の精度に近 削減、ビジュアル化の補 に生成 づける 助 書案のドラフト作成 → 作成時間短縮/新人の 初期アウトプット補助 Chizaijuku, Inc. All Rights Reserved

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「実務スキル × AI活用」 の分類 Chizaijuku, Inc. All Rights Reserved 11

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分類 AI活用 高 タイプ ③ 成長余地 大・学ぶ環境がカギ タイプ ① 最強・業界を牽引 実 務 力 高 実 務 力 低 タイプ ④ 最も厳しい・脱落リスクあり Chizaijuku, Inc. All Rights Reserved タイプ ② 現状維持・効率に差 AI活用 低 12

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分類 タイプ ①:最強の層 タイプ ②:短期的には安定 AIの出力を適切に評価し、最小限の労力で高品質な成果 物を生み出せる。 従来の知財実務のスキルがあり、一定の評価を受ける。 差別化要因 高い生産性で高品質な成果物を生み出せることで、提供 価値が非常に高まる。 将来的なポジション 知財戦略の中核を担い、企業や事務所のリーダー層に。 Chizaijuku, Inc. All Rights Reserved 問題点 ただし、非効率。AIを活用する①の層と比較すると、生 産性で差が開く可能性が高い。 リスク クライアントがAIを活用した実務家(①)を選ぶようにな ると、市場価値が相対的に下がる。 13

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分類 タイプ ③:将来有望だが課題も多い タイプ ④:最も厳しい層 AIによって一定レベルのアウトプットは可能だが、実務 力が不足しているため「正しい判断」ができない。 最適な成長ルート ①の先輩の下で経験を積むことで、実務力を高めつつ、 AI活用のスキルを磨く。 市場価値が著しく低下し、仕事を得るのが難しくなる。 知財業界で生き残るには、実務経験を積むか、AI活用を 学ぶ必要がある。 難易度が高い理由 経験不足の状態で独立したり、学ぶ環境がなければ、適切 なアウトプットを出せず信頼を得られない。 ③が①の指導を受けつつ成長するには「AI活用+適切な教 育サイクル」が不可欠。 Chizaijuku, Inc. All Rights Reserved 14

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AI活用による 実務スキルの修得 Chizaijuku, Inc. All Rights Reserved 15

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AI活用による スキル習得 生成AI活用学習の特徴(従来との比較) 従来 生成AI活用型 スピード 遅い 早い 費用 高い 安い 実践量 少ない 疑似体験で多くこなせる 判断力 実務で修得 AI+レビューで早期修得 Chizaijuku, Inc. All Rights Reserved

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AI活用による スキル習得 業務ごとのスキル習得ステップ 01 02 03 04 特許明細書作成 中間対応 特許調査 特許分析 AIでドラフト作成 → リライト練習 → クレーム設計力強化 → レビューを通じて改善 Chizaijuku, Inc. All Rights Reserved ● 拒絶理由のタイプ別 応答パターンをAIと 演習 ● 意見書の構成をAIに 提案させて添削 ● 検索式の作成 ● 母集団から技術マッ プを作成し、内容を 評価・修正 ● 企業ごとのポートフ ォリオ分析をAIと一 緒に行い、可視化& 戦略思考を養う

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AI活用による スキル習得 生成AIを活用した学習の注意点 1 2 生成AIの出力を鵜呑みにしない ● 生成AIは誤った情報やバイアスの ある回答をする可能性があるため、 必ず自分で精査する ● 例えば、特許クレームの作成時に 先行技術との差異を正しく認識で きているか? を人間の目で確認す る必要がある Chizaijuku, Inc. All Rights Reserved 生成AIだけに頼らず リアルな実務経験を重視 ● 生成AIで学習した知識を実際の業 務の中で適用し、専門家からのフ ィードバックを受けることが不可 欠 ● 生成AIの提案を活用しつつ、「な ぜこの選択をするのか?」という 判断力を鍛えることが重要 3 学習のバランスを考える ● AIを活用しながらも、基本的な理 論やフレームワークをしっかり理 解することが必要 ● 例えば、特許法の基礎を知らずに AIを活用しても、適切なクレーム が作れない可能性がある

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新たな教育サイクルの 提言 Chizaijuku, Inc. All Rights Reserved 19

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新たな 教育サイクル 知財塾が考えるこれからの教育サイクル プロンプトレビューとは? プロンプト レビュー メンター タイプ① AI活用力 高 実務力 高 メリット メンティが生成AIに入力した メンティ タイプ③ AI活用力 高 実務力 低 プロンプトを、メンターがレビュー ⇒良い例/悪い例を通して質問設計力・ 思考力を鍛える ● メンティ:「問いの立て方(思考の構造)」が学べる 出力の品質とプロンプトの関係を体感することができる AIを活用するだけでなく、実務の意図を理解して使う力が養われる ● メンター:AI活用ノウハウを言語化・体系化できる Chizaijuku, Inc. All Rights Reserved 20

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新たな 教育サイクル 必要になってくるスキル 生成AIリテラシーと活用力 ● 自分自身が生成AIを使いこなせること(プロンプト設計、出力評価) ● メンティに「AIをどう使えば実務に近づけるか」を具体的に示せる プロンプトレビュー力 ● メンティが生成AIに与えた指示(プロンプト)をレビューして、どこが甘いか/なぜ目的 に合わないかをフィードバックできる力 思考の構造化・言語化スキル メンター ● 自分の判断や作業の理由を、生成AIやメンティに伝わるように言語化・可視化する力 ● 暗黙知を形式知に変換する能力とも言える 成長設計とレビューサイクル構築力 ● メンティのレベルに応じて「何を任せ、どこに生成AIを使わせ、いつレビューすべきか」 を設計できる ● メンター自身が全てやる時代ではないことを理解する Chizaijuku, Inc. All Rights Reserved 21

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新たな 教育サイクル プロンプト設計力(問いの設計力) ● 生成AIに対して「何を」「どう伝えるか」でアウトプットの質が大きく変わる =実務の意図や本質を理解していないと良いプロンプトは作れない ● 例:「審査官の指摘した先行技術との差異を明確にして意見書を作成してください」 など、実務を意識した指示が出せる アウトプットの批判的検証スキル ● 生成AIの出力を「そのまま使う」のではなく、「なぜこう書かれているか」「どこが不十 分か」を判断する力 メンティ 学習の自己管理スキル(能動的PDCA) ● 「生成AI+メンター」の教育サイクルを自ら回せるようにする ● 生成AIで仮アウトプット → 自己検証 → メンターにレビュー依頼 → 修正 受け身でない姿勢と質問力 ● 「何がわからないかを言語化する力」が学習速度を左右する ● 特にプロンプトの改善は、質問の質=思考の質とも言える Chizaijuku, Inc. All Rights Reserved 22

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新たな 教育サイクル メンター × メンティの理想的なOJTサイクル メンティ メンティ メンター 生成AIで初期アウトプットを作成 (プロンプト含む) 自己レビューし疑問や改善点を メンターに提出 プロンプトや思考の構造を レビューし、改善ポイントを フィードバック Chizaijuku, Inc. All Rights Reserved メンター メンティ 成果物が実務レベルに近づいたら 最終修正して納品 修正・再実行し 再レビューへ 23

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明日から できること 明日からできる2つのこと 01 まずは生成AIを実際に触って、 どのように使えるかを自分自身で試していこう 目標 タイプ②はタイプ①に、タイプ④はタイプ③になる 02 業務に導入できていない場合は、 上司を説得して組織的な利用を目指そう Chizaijuku, Inc. All Rights Reserved 24

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まとめ 本日のまとめ 1. AIは「使うこと」ではなく「どう使うか」が問われる時代 2. タイプ③は、プロンプトを通じて実務思考を学び、タイプ①のフィード バックで加速的に成長することが可能 3. 教える側も教えられる側も、生成AIを軸とした新しい教育サイクルを 作ることが重要 Chizaijuku, Inc. All Rights Reserved 25

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ご清聴ありがとうございました ホームページ https://chizaijuku.com/ 知財塾 Chizaijuku, Inc. All Rights Reserved