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January 14, 23
スライド概要
川上昌直『収益多様化の戦略』東洋経済新報社に紹介されている利益モデル30分類を、ゼロつくBM図解の「取引の図解」で整理してみました。CC BY 4.0なので図解については「井上達彦研究室ゼロつくBM図解」と引用してください。また、内容についてご紹介するときは、川上昌直『収益多様化の戦略』東洋経済新報社も確認しつつ、適切に引用してください。
複雑で模倣困難な「ビジネスモデル」をいかにして構築し、いかにして保つか、そしてその為の組織作り。これが私たちの研究テーマです。なかなか模倣できないビジネスモデルであっても、ゼロから創り上げられているとは限らない点です。むしろ、海外から移植されたり、異業種から移植されたりして築かれることが多いように思われます。言葉を変えれば、大なり小なり模倣によって築かれているということです。その移植や模倣のプロセスで、さまざまな試行錯誤を積み重ね、誰にも真似されないようなものに発展させるのです。模倣できないビジネスモデルが模倣によって築かれるという、模倣のパラドクスです。
The Complete Guidebook for Business Model Design ゼロつく BM図解 模倣と組み合わせのための ツールボックス 早稲田大学商学部/商学研究科 井上達彦研究室 Waseda University Tatsuhiko Inoue lab. CC BY 4.0 川上昌直さんの 30分類の取引図
ゼロつく BM 図解とは ビジネスモデル図解 井上達彦研究室 0.
BM図解とは ビジネスモデルの基本パターンをもとに、自らパターン化するためのツール 事業系統図を基本パターンを照らし合わせて作成することも可能。 儲けの構造を視覚化することで、分析・発想・試作・検証が円滑になる。 3
BM図解の特徴 BM図解は基本パターンをもとに、自らパターン化することを目的として考案されたツール。基本パター ンは学術研究に依拠して提示されている。 レゴブロックのようにモジュール化することで、モジュールごとに理解したり、モジュールごとに組み合 わせて設計できる。 表記ルールを定めることでミスコミュニケーションを防ぎ、比較・提案・評価を容易にする。分析対象を 広げてDB化することも可能 一般的な表記ルールをもとにすることで利用者の裾野を広げる一方で、そのルールに最小限の工夫を加え ることで表現できる範囲を拡大。 個々人のビジネスモデルの理解はもちろん、チーム/部門など集団/組織のコミュニケーションに役立て られる。
ゼロつくBM図解は、主に3冊の書籍と 3本の論文をもとに構築された 書籍 ・ 基本の枠組:板橋悟『ピクト図解』ダイヤモンド社 ・ 戦略の打手:楠木建『ストーリーとしての競争戦略』東洋経済新報社 ・ 循環の論理:ピーター・M・センゲ『学習する組織』英治出版 学術論文 ・価値の創造:Amit & Zott (2001), Amit & Zott (2015) ・価値の獲得:Cusumano et al. (2019), Tidhar and Eisenhardt (2020), 川上 (2019) ・図解の整理:Tauscher and Abdelkafi (2017)
ゼロつく3種のBM図解 1. 「取引の図解」:静態の簡略版 ✓事業系統図のパターン化 ✓矢印の違いで関係性の違いを表す ✓レゴブロックのように組み合わせやすい基本図形 ✓基本パターンと応用パターンを提供する 2. 「打手の図解」:アクションを含む ✓戦略的な打ち手を示す 3. 「循環の図解」:動態の詳細版 ✓好循環の論理を組み込む CC BYのツールとする 井上達彦研究室 or Waseda University Tatsuhiko Inoue lab. CC BY 4.0 Shutterstock購入画像
学術と実践、BM図解の未開拓領域を埋める 要素の配置 グローバルな未開拓領域 ゼロつくBM図解は ・取引構造 ・因果関係 双方を描き出す図解 取引の構造 因果の関係 出典:Tauscher and and Abdelkafi(2017), p.167を一部補足 詳しくは井上・近藤・坂井 (2023)を参照
BM図解のツールボックス 表記ルール ビジネスモデル図解 井上達彦研究室 1.
図解のツール①アクター(登場人物) 供給 業者 企業 顧客 供給業社 など 企業 (自社) 顧客 個人/法人 レゴブロックのように組み合わせて設計することを念頭に四角形で示す。 9
図解のツール②リレーション(関係性) テキスト テキスト テキスト ¥ ¥ ¥ 交換関係 継続関係 補足説明が必要な関係 ・代金と引換 ・料金と引換 ・リカーリング ・定期的な課金 ・フックとなる製品サービス (ユーザーが定義可能) テキスト ¥ 利益貢献高い 利益への貢献度を示したい場合、 図中の矢印の大きさ/線の太さ によって違いをつける。 10
図解のツール③ループ(因果循環) テ キ ス ト ( 打 ち 手 X ) ¥ 因 果 を 説 明 す る テ キ ス ト 好循環 打ち手 打ち手Xによって¥が増加 11
図解のツール④詳細表記 企業A 注) 主要 事業 全体の利用者 データ 一部の 利用者 事業 まとめ 複数事業を切り分けて 表現する場合 ターゲット顧客 テキストで説明を 加える場合
デコレーション例 知財フリーの素材を用いる(MSユーザー)
例:メルカリ 仲介モデル/マッチングモデル(三者間市場) メルカリ ¥販売手数料 出品の場 (代金10%) 注1) ¥0 購買手数料 購入の場 注1) 出品が簡単。価格 は自分で決めるら れるので、オーク ションのように変 動しない。 出品 利用者 商品 ¥商品代金 購買 利用者
例:GEのジェットエンジン事業 合算モデル(販売+サービス+メンテナンス) ジェット エンジン ¥ 注1) メインテナンス GE ¥ コンサルティング サービス ¥ 注1) 航空機 メーカー エンジン本体そのもの より、アフターサービ スやコンサルサービス で利益を伸ばしている。
例:GEのジェットエンジン事業 合算モデル(販売+サービス+メンテナンス) GE 注1) 製造 ジェット エンジン ¥ 注1) 3つの事業はそれぞれ 性質が異なるので、社 内には3つの異なる部 門が収益責任を負う。 メインテナンス メインテ ナンス ¥ コンサルティング サービス コンサル ¥ 航空機 メーカー
BM図解の基本 パターン ビジネスモデル図解 井上達彦研究室 2.
ビジネスモデル図解 井上達彦研究室 価値の創造と獲得 基本2軸
ビジネスモデルとは(再掲) • どのように価値を創造し顧客に届け、 • 自らも収益として獲得するかを • 論理的に記述したもの 出典:オスターワルダー&ピニュール(著)、小山隆介(訳)『ビジネスモデルジェネレーション』翔泳社 最近の研究では、ビジネスモデルの構成要素は「価値の創造」「価値の提供」「価値の獲得」の3つ だとされる(Wirtz et al., 2016)が、前者の2つを集約して議論されることも多い。実務的にわかりや すくするため、「価値の創造」と「価値の獲得」の2つとして単純化するというスタンスをとる。 19
価値創造と獲得の2軸 (1) 価値創造の源泉 (2) 価値獲得の方法 ・コンテンツの力(独自性) ・価値連鎖 ・引き合わせる力(効率性) ・リカーリング ・組み合わせの力(補完性) ・三者間市場 ・つなぎとめる力(ロックイン) <ポイント> 1. ビジネスモデルの定義(価値創造と獲得の構造)から分類する。 2. 取引構造に注目するが収益モデルのみにフォーカスを当てない。 3. ビジネスモデルとしての価値創造や価値獲得に注目する。
ビジネスモデル図解 井上達彦研究室 基本9分類
★基本9分類(実務家向け) ⑴ 価値の創造 ⑵ 価 値 の 獲 得 単体の力 引き合わせの力 組み合わせの力 コンテンツの独自性を活用 情報の非対称性を活用 補完性を活用 価値連鎖 ①製造販売 ②小売 ③合算 リカリング ④継続 ⑤フリーミアム ⑥設置ベース 三者間市場 (リースやライセンス含む) ⑦広告 (媒体の単体の力) ⑧マッチング 作成:井上達彦研究室 (保守や消耗品含む) ⑨補完財 プラットフォーム
井上達彦 研究室 単体の力 引き合わせの力 組み合わせの力 製造販売モデル 流通小売モデル 合算モデル 継続モデル フリーミアムモデル 設置ベースモデル マッチングモデル 補完財プラットフォームモデル 価 値 連 鎖 リ カ ー リ ン グ 広告モデル 三 者 間 市 場 作成:井上達彦研究室(Amit&Zott, 2001とTidhar&Eisenhard, 2020などに依拠)
ビジネスモデル図解 井上達彦研究室 基本11分類
★基本11分類(実務家向けの表現) 単体の力 引合せの力 組合せの力 コンテンツ独自性を活用 情報の非対称性を活用 補完性を活用 ロックインを活用 価値連鎖 ①製造販売 ②流通小売 ③合算 ⑩ライセンス リカリング ④継続 ⑤フリーミアム ⑥設置ベース ⑪リース 三者間市場 ⑦広告 ⑧マッチング (消耗品含む) 拘束する力 ⑨補完財プラットフォーム 作成:井上達彦研究室 (分類軸はAmit&Zott [2001]、Tidhar&Eisenhardt [2020]などに依拠)
コンテンツの力 販売モデル 引合せの力 流通小売モデル 組合せの力 合算モデル 拘束する力 ライセンスモデル 価 値 連 鎖 リ カ リ ン グ 三 者 間 市 場 継続モデル 広告モデル フリーミアムモデル マッチングモデル 設置ベースモデル リースモデル 補完財プラットフォームモデル 作成:井上達彦研究室(分類軸はAmit&Zott [2001]、Tidhar&Eisenhardt [2020]などに依拠)
川上昌直の30分類の 取引図を描いてみる ビジネスモデル図解 井上達彦研究室 川上昌直『収益多様化の戦略』東洋経済新報社 4.
ゼロつくBM図解「①製造物販モデル」もしくは ゼロつくBM図解「②小売モデル」 ①プロダクト販売 「取り扱う製品を販売することで、確実に一定の利益を回収する価値獲得」 • 原価に一定の利益率を乗せて期 待利益を回収 • ものづくり企業や、もの売り企 業が古くから採用してきた。 製品 サービス 企業 顧客 ¥ 川上(2021), pp.76-77をもとに井上達彦研究室作成 • ものが売れる時代ではリスクが 少ない トヨタ、ユニクロ、 フェラーリ、エルメス
ゼロつくBM図解「①製造物販モデル」の応用 ②サービス業の物販 「レジャーやアミューズメント、あるいは金融サービスなどのサービス業によるモノの販売」 • オリジナル商品の企画も手がけ る場合あり サービス • 無形財を扱ってきた企業には、 新たな機会となりうる ¥ サービス 顧客 企業 物販 ¥ ANA 全日空 川上(2021), pp.78-79をもとに井上達彦研究室作成
ゼロつくBM図解「①製造物販モデル」の応用 ②サービス業の物販 「レジャーやアミューズメント、あるいは金融サービスなどのサービス業によるモノの販売」 サービス企業 • オリジナル商品の企画も手がけ る場合あり サービス サービ ス部門 • 無形財を扱ってきた企業には、 新たな機会となりうる ¥ 顧客 物販 部門 物販 ¥ *一つの部門が一つの価値獲得をする場合 川上(2021), pp.78-79をもとに井上達彦研究室作成 ANA 全日空
ゼロつくBM図解「③合算モデル」 ③プロダクトミックス 「利益率の異なるプロダクトを組み合わせて目標とする利益率を達成する」 • 利益度外視のフック製品で魅了 して、ついで買いをうながす。 フック製品 サービス • リゾートの複合施設のように、 1つの売り場で完結せずに成り 立っている場合もある。 ¥安価 企業 製品A サービス 顧客 ¥ 製品B サービス ¥ 川上(2021), pp.80-81をもとに井上達彦研究室作成 スーパーマーケット 100円ショップ、居酒屋 リゾート
ゼロつくBM図解「③合算モデル」 ④非メインプロダクト 「メインプロダクト以外を利益の柱とする価値獲得」 メイン製品 サービス • セットで販売することで割安感 を演出する。 ¥安価 企業 補完品A サービス • 周辺商品の集まりで利益を獲得。 顧客 ¥ 補完品B サービス ¥ 川上(2021), p.82をもとに井上達彦研究室作成 牛丼、マクドナルド
ゼロつくBM図解「①製造物販モデル」の応用 ⑤マルチコンポーネント 「基本的に同じプロダクトの利益率を変えて提供することで、全体として利益を得る価値獲得」 製品A サービス 顧客A ¥ • 利益率の低いところでブランド 認知を高め、利益率の高いとこ ろで回収する。 製品A サービス 企業 • ソフトドリンクは、自販機、 スーパー、飲食業で利益率が異 なる。 顧客B ¥ 製品A サービス 顧客C ¥ 川上(2021), p.83をもとに井上達彦研究室作成 コカコーラ タレント業
ゼロつくBM図解「⑥設置ベースモデル」 ⑥事前付帯(保険・ファイナンス) 「プロダクト販に購入時に増やすことのできる収入源を加えてさらに多くの利益を得る価値獲得」 • 耐久消費財の購入時における、 保険やファイナンスのニーズは 高い。 製品A サービス ¥ • 製品販売と比べて、保険やファ イナンスの利益率は高い 保険サービス 企業 顧客 ¥ ファイナンス サービス ¥ 川上(2021), p.84をもとに井上達彦研究室作成 • 製品販売の利益率の低さを補う ことができる。 自動車販売 Apple Care
ゼロつくBM図解「⑥設置ベースモデル」 ⑦事後付帯(メンテナンス) 「プロダクト販売とは別に、購入後に増やすことができる収益源を加えて、時間をかけて利益 を得る価値獲得」 • 製品が利用されれば、保守や修 理は不可欠であり、利益率が高 いことが多い。 製品 サービス ¥ 企業 顧客 メンテナンス ¥ 川上(2021), pp.85をもとに井上達彦研究室作成 • 顧客との関係を構築して、他に 流れないようにする必要がある。 • 前払いかサブスクで課金される。 自動車のディーラー ソフトウェア、IoT
ゼロつくBM図解「③合算モデル」もしくは ゼロつくBM図解「⑥設置ベースモデル」 ⑧サービス化(コンサル化) 「ものづくり企業がプロダクトに関するサービスを収益源にし、それを組み合わせて利益を生 み出すこと」 • B2B向けの製品は使い方が特殊 であったり専門的であったりす るので、それを補助する。 製品 ¥ 企業 顧客 コンサル テーション • 購入前のカウンセリングに課金 たり、サービスの長期契約を結 ぶなど工夫される。 ¥ 川上(2021), pp.86-87をもとに井上達彦研究室作成 IBM 耐久消費財を提供するB2B
ゼロつくBM図解「③合算モデル」もしくは ゼロつくBM図解「⑥設置ベースモデル」 ⑧サービス化(コンサル化) 「ものづくり企業がプロダクトに関するサービスを収益源にし、それを組み合わせて利益を 生み出すこと」 製造企業 • B2B向けの製品は使い方が特殊 であったり専門的であったりす るので、それを補助する。 製品 製造 部門 ¥ 顧客 コンサ ル部門 コンサル テーション • 購入前のカウンセリングに課金 たり、サービスの長期契約を結 ぶなど工夫される。 ¥ IBM 耐久消費財を提供するB2B 川上(2021), pp.86-87をもとに井上達彦研究室作成
ゼロつくBM図解「③合算モデル」の応用 ⑨非メインターゲット 「プロダクトやサービスのメインターゲット以外の支払い者を増やし、なおかつその支払い者 を増やし、なおかつその支払い者から多くの利益を得る方法」 製品 サービス 顧客A ¥安価 • アニメ映画の場合、メインター ゲットは子どもだが、支払いの 面では付き添いの大人の方が利 益貢献度がはるかに高い。 企業 製品 サービス 顧客B ¥ 川上(2021), p.88をもとに井上達彦研究室作成 ポケモン、名探偵コナン 食べ放題ビュッフェ
ゼロつくBM図解「⑧マッチングモデル」 ⑩オークション 「同じ財やサービスに対して、より高い金額を支払う人から利益を獲得する方法」 • 獲得意欲が高い顧客ほど高値を つけるので、手数料収入も大き くなる。 オークションハウス • 希少なものを提供し、競い合わ せて利益獲得するのがポイント。 ¥ 手数料 ¥ 製品 サービス 手数料 製品 サービス 製品・サービス 出品者 入札者 ¥利用料 川上(2021), p.89をもとに井上達彦研究室作成 • Google AdWordsもこの入札方式 を採用している。 オークションハウス Google AdWords
ゼロつくBM図解「①製造物販モデル」の応用 ⑪ダイナミックプライシング 「全く同じプロダクトやサービスでもリアルタイムの需要の増減に比例して価格を変化させて トータルで利益を得る価値獲得」 製品A サービス 顧客A • ビッグデータと解析システムに よってリアルタイムに価格を決 定できるようになった。 ¥ 製品A サービス 企業 • 繁忙期と閑散期での価格差がそ の典型。 顧客B ¥ 製品A サービス 顧客C ¥ 川上(2021), pp.90-91をもとに井上達彦研究室作成 レジャー施設(USJ) Uber
ゼロつくBM図解「④継続モデル」 ⑫定額制サブスクリプション 「月や年単位で利用し放題のサービスを展開し、時間を経て利益を得る価値獲得」 • 定額を課すという特徴をもつ • ヘビーユーザーは割安に感じ、 企業としても利益を予測しやす いというメリットがある 製品 サービス 企業 顧客 ¥定額 • 製品やサービスの内容をアップ デートして利用者をつなぎとめ る必要がある Apple Music 川上(2021), p.92をもとに井上達彦研究室作成
ゼロつくBM図解「④継続モデル」 ⑬前金制サブスクリプション 「通常は一回あたりの支払いを都度もらうところ、年初や月初にサービスの対価を 先に受け取る価値獲得」 • 新聞や雑誌の定期購読の原型。 ¥前払い 企業 顧客 製品 サービス • 企業としては支出の前に収入が 入るのでキャッシュフローが良 くなる。利用者としても割安の 料金で手間暇も軽減される。 • ロイヤリティの高いものか毎日 利用するものでないと成立困難 テーマパーク年間パスポート 川上(2021), p.93をもとに井上達彦研究室作成
ゼロつくBM図解「④継続モデル」 ⑭従量制サブスクリプション 「使用量に応じて料金を徴収する利益の獲得法」 • 利用者にとってどれだけ使うか わからない場合に便利。 • 企業としては十分に利用しても らえなければ利益とならない。 製品 サービス 企業 顧客 ¥従量制 • 先に製品やサービスを準備し、 使ってもらってから後から回収 するので、資金力が必要。 AWS、ロールスロイス、GE 富山の置き薬 川上(2021), p.94をもとに井上達彦研究室作成
ゼロつくBM図解「④継続モデル」(リカーリングが弱い場合は「①製造販売モデル」) ⑮リピーター 「リピート客の存在を大前提として利益設計する価値獲得」 • リピータがいることで成り立つ ように設計されている 製品 サービス 企業 • リピート率を前提に投資計画が 立てられる 顧客 ¥ • 利用者を引き寄せ、虜にするよ うな製品やサービスが不可欠 オリエンタルランド (東京ディズニーリゾート) 川上(2021), p.95をもとに井上達彦研究室作成
ゼロつくBM図解「③合算モデル」 ⑯ロングテール 「めったに売れないものを用意しながらも、それを目当てに顧客を誘い、ファンに なってもらい、たくさんの買い物をしてもらって最終的に利益をつくる価値獲得」 めったに 売れない製品 • 品揃えの豊富さをアピール • こだわりを持つ利用者をファン にして普段から利用してもらう ¥ 企業 製品A サービス 顧客 ¥ 製品B サービス ¥ 川上(2021), p.96をもとに井上達彦研究室作成 • 品揃えをアピールするための口 コミ、探し当てやすくするため の検索エンジンが必要 アマゾン・ドットコム
ゼロつくBM図解¥「⑪リースモデル」(9分類の場合は「④継続モデル」) ⑰リース 「ユーザーが耐久消費財を購入するときに、その場ですべて支払うのではなく、 分割で支払ってもらう価値獲得」 • 契約によって利用者は一定期間 支払いが確定する サプラ イヤー 製品 サービス ¥ リース 会社 製品 サービス 顧客 ¥ 資産原価 利息 川上(2021), p.97をもとに井上達彦研究室作成 • 企業にとっては当該期間の利益 が確定する • 先に収めた物品の資産原価と利 息を時間をかけて回収する 社用車、コピー機 パソコン、B2B分野
ゼロつくBM図解「⑥設置ベースモデル」 ⑱レーザーブレイド 「消耗品という収益源で、支払いのタイミングを後にずらして、トータルの利益を つくる方法」 • 利幅の低い製品本体で顧客を惹 きつけ、利幅の高い消耗品で利 益を高める 製品本体 • 時間をかけて回収する ¥安価 企業 顧客 消耗品 ¥ 川上(2021), pp.98-100をもとに井上達彦研究室作成 • サードパーティの代用品に顧客 が流れないように工夫が必要 安全剃刀、プリンタ 家庭用ゲーム機器
ゼロつくBM図解「④継続モデル」の応用 ⑲メンバーシップ 「会費という収益源を設け、時間をかけて何度も回収することで利益を得る価値獲得」 • 極端な例では、会費を利益の柱 にして本業では儲けない 会員 メンバーシップ • 年会費を徴収できれば、キャッ シュフローがよくなる ¥ 企業 顧客 製品 サービス • ただし十分な便益が提供できな ければメンバーは集まらない ¥ コストコ 川上(2021), p.101をもとに井上達彦研究室作成
ゼロつくBM図解「⑤フリーミアムモデル」 ⑳フリーミアム 「主要プロダクトである本体の利益をゼロにし、付属サービスに高い利益率をつけ、しかも その受け取りを先延ばしにしながら、事業全体として目標とする利益を得る価値獲得」 製品 サービス フリー利用者 ¥0 • デジタル財は、限界費用ゼロで 複製可能。ネット配信をつかえ ば流通コストも低い • 無償で提供して試しに使っても らい、付属サービスで儲ける 企業 • デジタル財でこそ効力を発揮す る儲け方 プレミアム製品 サービス プレミアム 利用者 ¥有料 川上(2021), pp.102-103をもとに井上達彦研究室作成 オンラインゲーム
ゼロつくBM図解「①製造物販モデル」の応用 ㉑バイプロダクト 「主要顧客の誰かに何らかの価値をもたらす副産物を駆使して利益を得ること」 主要製品A サービス • 本業で目標とする利益を達成で きない場合でも補完してくれる 顧客A ¥ • 副産物は原価がかからないこと が多いので利益率は高い • 顧客以外の支払い者を探すのが 有効 企業 副産物B 権利 顧客B ¥ 川上(2021), pp.104-105をもとに井上達彦研究室作成 テスラの温暖化ガスの排出権 ペスターガード・フランドセン 東京駅復元プロジェクト
ゼロつくBM図解「⑩ライセンスモデル」(9分類の場合は①製造販売か④継続) ㉒コンテンツIP 「コンテンツは、本業で生み出した情報資源である。その情報資源をさまざまな個所 で活用し、利益を生み出すことを意味する」 製品 サービス ¥ 製品 サービス ライセンス 企業A 企業B ¥ ¥ ライセンス 製品 サービス 企業C ¥ ¥ Aの 顧 客 • 主に、漫画、映画、ゲームと いった著作物にかかわる Bの 顧 客 • 知的財産は、最初から多重利用 を想定して作られている Cの 顧 客 川上(2021), pp.106-107をもとに井上達彦研究室作成 • コンテンツの転用による粗利は ほぼ100%ともいわれる スターウォーズ サンリオ
ゼロつくBM図解「⑧マッチングモデル」 ㉓フィービジネス 「本業での顧客以外の支払い者、特にB2B企業から、何らかの手数料を得る方法」 仲介企業/プラットフォーム ¥ 手数料 ¥0 斡旋 サービス 供給サイド 利用者 サービス ¥料金 • 手数料はわずかであっても粗利 率はほぼ100% 機会 需要サイド 利用者 • 斡旋することによるコミッショ ンやマーケットプレイスでの出 店料 自動車のディーラー ・保険会社の斡旋 ・銀行ローンの斡旋 アマゾンのマーケットプレイス 川上(2021), p.108をもとに井上達彦研究室作成
ゼロつくBM図解「①製造物販モデル」の応用 ㉔プライオリティ 「何らかの理由でそのプロダクトを早く手に入れてない顧客や優先的なサービスを 得たい顧客に対して、通常のプロダクトとは別の収益源を設定し、利益を得る利益 獲得」 通常製品A サービス 顧客A • 設備投資に追加的な費用が発生 する ¥ • 稼働率が同じでも同じ追加収入 が得られる プライオリティ 製品サービス • 優先サービスにお金を支払える 顧客を大切にする 企業 顧客B ¥ 川上(2021), p.109をもとに井上達彦研究室作成 テーマパーク 映画館
ゼロつくBM図解「⑦広告モデル」 ㉕三者間市場 「広告という収益源を中心に置く価値獲得」 • 集客力を活かして、スポンサー に広告スペースを提供。その対 価を得る 企業 • 民放では視聴者は無料。雑誌で は読者に安価で提供する ¥ 広告料 ¥0 広告枠 サービス or安価 製品 サービス 情報 コンテンツ 利用者 購入者 スポンサー ¥ 川上(2021), p.110をもとに井上達彦研究室作成 • ネット時代になるとデジタルプ ラットフォームが生まれ、飛躍 的に発展した 雑誌事業、グーグル フェイスブック
ゼロつくBM図解「⑧マッチングモデル」 ㉖マッチメイキング 「取引の参加者からの支払いを組み合わせて、利益を作り上げる価値獲得」 • 不動産業など用いられてきた歴 史は長い 仲介企業/プラットフォーム • デジタルプラットフォームの誕 生により飛躍的に拡大 ¥ 仲介手数料 機会・情報 サービス 供給サイド 利用者 ¥ 仲介手数料 製品・サービス 機会・情報 サービス 需要サイド 利用者 • 手数料は出品者と利用者のどち らから取るか、どちらかからも 取る メルカリ ¥利用料 川上(2021), p.111をもとに井上達彦研究室作成
ゼロつくBM図解「③合算モデル」の応用 ㉗アンバサダー 「ほぼ同じサービスに対して、特別に高い料金を払えるものに、利益を得る価値獲得」 製品 サービス ¥安価 企業 A アン バサ ダー 製品 サービス 顧客 • 普及に協力してくれるアンバサ ダーには無料、もしくは割安で 提供 • プロモーション費用を抑えられ れば費用対効果は十分 • 時間をかけて利益を拡大する ¥ 製品 サービス ¥ 顧客 川上(2021), pp.112-113をもとに井上達彦研究室作成 Adobeのクリエイティブクラウドや オフィス365のアカデミックディス カウント ネスカフェのバリスタ
ゼロつくBM図解「①製造物販モデル」の応用 ㉘スノッブプレミアム 「ほぼ同じサービスに対して、特別に高い料金を払えるものに、超過分を支払ってもら い利益を得る価値獲得」 • 通常は会員制が前提となる 製品 サービス 最上位 ¥高価 顧客 • サービスの違い以上に、認定さ れたという特別感がカギ 製品 サービス 企業 A ¥中価 • 上位の顧客に相応のステータス を与える 上位 顧客 • 高いブランド力を有した企業に 有効 製品 サービス ¥低価 一般 顧客 川上(2021), pp.114-115をもとに井上達彦研究室作成 アメリカン・エキスプレス
ゼロつくBM図解「⑩ライセンスモデル」(9分類の場合は①製造販売か④継続) ㉙フランチャイズ 「フランチャイズは、他者に対する営業権の利用許可を出し、その対価で時間をか けて利益を得る価値獲得」 サービス Aの 顧 客 ¥ ライセンス 企業A サービス 企業B ¥ ¥ ライセンス サービス 企業C ¥ ¥ Bの 顧 客 • 自らも価値の創造と獲得を行い、 よきお手本となる。 • フランチャイジーになりたいと 思わせる仕組みが必要 • 自社の顧客と、フランチャー ジーによって価値獲得が実現 「フランチャイズを許可する企業(フランチャイザー) は、使用する企業(フランチャイジー)に対して、店舗 の看板や、プロダクトを使う権利、仕入れ、販売、集客、 採用、商品開発などビジネスを行う」 Cの 顧 客 川上(2021), pp.116-117をもとに井上達彦研究室作成 マクドナルド
ゼロつくBM図解「①製造物販モデル」の応用 ㉚データアクセス 「データアクセスとは、企業が自社の価値創造をしながらも、そこで蓄積されたデータを欲 しがる事業者に対して、一定のアクセス権料を徴収して利益を産む価値獲得である。」 企業A 主要 事業 製品 サービス 企業B ¥ データ 企業C データ • データセットを売り切りで販売 するのではなく、アップデート されるデータへのアクセスに課 金するのが一般的 • 本業で蓄積された情報を誰が欲 しがるのかを考えるべき ¥ 事業 データ 企業D ¥ 川上(2021), pp.118-119をもとに井上達彦研究室作成 紀伊国屋書店のパブライン
主要参考文献リスト Amit, R., & Zott, C. (2001). Value creation in E-business. Strategic Management Journal, 22(6-7), 493–520. Amit, R., & Zott, C. (2015). Crafting business a rchitecture: The antecedents of busine ss model design. Strategic Entrepreneurship Journal, 9(4), 331-350. Cusumano, M. A., Yoffie, D. B., and Gawer, A. (2019). The Business of Platforms : Strategy in the Age of Digital Competition , Innovation, and Power. Harper Business. Senge, P. M. (2006). The fifth discipline: The art and practice of the learning organization. Random House. (枝廣淳子, 小田理一郎, & 中小路佳代子 (訳)(2011).『学習する組織 ― システム思考で未来を創造する』 英治出版.) Täuscher, K., & Abdelkafi, N. (2017). Visual tools for business model innovation: Recommendations from a cognitive perspective. Creativity and Innovation Management, 26(2), 160-174. Tidhar, R., & Eisenhardt, K. M. (2020). Get rich or die trying… finding revenue model fit using machine learning and multiple cases. Strategic Management Journal, 41(7), 1245-1273. Wirtz, B. W., Pistoia, A., Ullrich, S., & Göttel, V. (2016). Business models: Origin, development and future research perspectives. Long range planning, 49(1), 36-54. 板橋悟 (2010). 『ビジネスモデルを見える化するピクト図解』ダイヤモンド社. 川上 昌直. (2019). 『「つながり」の創りかた: サブスクリプションの設計図』 東洋経済新報社. 川上 昌直. (2021). 『収益多様化の戦略: 既存事業を変えるマネタイズの新しいロジック』 東洋経済新報社. 楠木建. (2010). 『ストーリーとしての競争戦略: 優れた戦略の条件』 東洋経済新報社.
関連教材 「井上達彦研究室」では、書籍への理解を深めるための デジタルコンテンツを用意しています。YouTubeでも 「井上達彦研究室」と検索してください。本書で解説し た内容に加え、さまざまな分析例が紹介されています。 このQRコードからもアクセス可能なのでご活用くださ い。 井上達彦研究室YouTube https://www.youtube.com/channel/UCU9OmZwev4LUa68pxygOG5A/videos 内田和成チャネル対談 https://www.youtube.com/watch?v=iAJaENJ_0bk