飲食店のマーケティング指南書 2025

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飲食店の マーケティング指南書 2025

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この指南書について 「集客に悩む飲食店経営者、必読。明日から変わるマーケティング実践バイブル」 この指南書は、「なんとなく」の経営から脱却し、「戦略的」な成長を実現したい 飲食店経営者のための羅針盤です。マーケ ティングの重要性を腹落ちさせ、すぐに使える実践的な知識と具体的なノウハウ を、余すところなく凝縮しました。 対象読者は、日々の集客や販促に課題を感じているマーケティング担当者、経営の舵取りを担う経営者、現場の最前線で 指揮を執る店長、そして夢を形にしようと奮闘する新規出店予定の方々。 業種や経験を問わず、全ての飲食に関わる皆様 に、新たな視点と確かな武器を提供します。 本書を開けば、マーケティング戦略の全体像 が鮮やかに描き出され、具体的な施策へとスムーズに繋がります。上流の戦 略設計から、日々のオペレーションに落とし込める戦術まで、一気通貫で理解できる 構成です。もちろん、気になる章から 自由に読み進めていただいても、学びの効果は損なわれません。 特に注目すべきは、顧客との「出会い」から「ファン化」までの道のり を徹底的に分析した、カスタマージャーニーに関する独 自データです。 当社が実施したアンケート調査に基づき、消費行動の違いを明確に提示。これにより、ターゲット顧客に最適化された、より 効果的なマーケティング戦略 を立案するための、確固たる根拠が得られます。 COLLINS株式会社は、飲食事業に関わるすべての人々が正しい知識を身につけ、不必要な損失を避け、事業を繁栄させ るための本質的なマーケティング活動ができる社会の実現を目指します。 この一冊が、あなたの飲食ビジネスを次のステージへと導く灯台 となることを願って。 2 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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目次 0.はじめに この指南書について エグゼクティブ・サマリー 飲食店・飲食ブランドのマーケティング全体設計 1. マーケティングとは 1.1 マーケティングの定義 1.2 プロダクトアウトとマーケットイン 1.3 サービスのマーケティング 1.4 デジタルマーケティング 1.5 環境分析1 1.6 環境分析2 1.7 マーケティングリサーチ 2. 提供価値 (WHAT) 2.1 ブランド・店舗の提供価値 1 2.2 SAP1 2.3 SAP2 2.4 ブランド設計 1:SAPとブランド設計 2.5 ブランド設計 2:ブランドコア 2.6 ブランド設計 2:ブランドコンセプト /ストーリー 2.7 ブランド設計 3:ブランドキャラクター /キーワード 3. 標的顧客の設定 (WHO) 3.1 標的顧客(ターゲット)の明確化 3.2 STP概要 3.3 STP2 セグメンテーション 1 (基本属性・デモグラフィック) 3.4 STP3 セグメンテーション 2 (サイコグラフィック) 3.5 STP4 セグメンテーション 3 (利用シーン ) 3.6 STP5 ターゲティング 1 (商圏と利用シーン ) 3.7 STP6 ターゲティング 2 (ニーズとベネフィット、ペルソナ ) 3.8 STP7 ポジショニング 1 (差別化の設計) 3.9 STP8 ポジショニング 2 (ポジショニングマップ ) 4. マーケティング施策 (HOW) 4.1 ターゲットに価値をどう届けるか 4.2 カスタマージャーニー 4.3 マーケティング施策全体 4.4 認知 4.5 検索 4.6 興味・関心 4.7 比較・検討 4.8 予約・来店 4.9 CRM 4.10 店外体験(テイクアウト /デリバリー /EC) 4-11 インバウンド集客 5. マーケティング施策における重要ポイント 5.1 KPIの設定とデータドリブン 5.2 マーケティング ROI1 5.3 POSとGoogle Analytics 5.4 飲食店のDX 5.5 SNSマーケティング 5.6 デジタル広告 1 5.7 企画 5.8 コンテンツマーケティング 6. マーケティングの考察と注意点 6.1 大企業の事例と「認知バイアス」 6.2 入り口と出口 (アトリビューション ) 6.3 アクセス数の罠 6.4 クリティカル・シンキング 6.5 AI 巻末資料 参考1) 打ち手まとめ 参考2) アンケート調査 概要 参考資料・データ出典一覧

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エグゼクティブ・サマリー 本指南書は、飲食店や飲食ブランドの経営者およびマーケティング担当者が、マーケティング戦略の全体像を体系的に理解 し、実践に活かせるよう設計された包括的なガイドです。 全体構成は、マーケティングの基礎的な定義と役割の解説から始まり、具体的な提供価値( WHAT)の設計、標的顧客の設 定(WHO)、そしてその価値を伝達するための具体的な施策(HOW)の順に進行します。 特に本書では、飲食店の集客と売上拡大に向けた「カスタマージャーニー」を軸に、認知、検索、興味・関心、比較・検討、予 約・来店、CRM(顧客関係管理)、店外体験(テイクアウト・デリバリー・EC)、そしてインバウンド集客の各ステージを段階的 に解説しています。 また、COLLINS株式会社が実施した独自のアンケート調査のデータを活用し、20代および全世代の消費者行動を比較分析 することで、より具体的なマーケティング施策の設計に役立つ実践的な指針を提示しています。 さらに、飲食店経営者が陥りがちな「プロダクトアウト」型の思考を脱却し、「マーケットイン」視点での戦略立案の重要性を強 調。ブランドの提供価値を再定義し、ターゲット顧客に対して最適な訴求を行うための「 SAP(ストーリー・空気感・提供物)」の フレームワークも紹介しています。 最後に、施策実行の際に重要となるKPI設定やデータドリブンな分析手法にも触れ、効果測定の重要性を強調。これにより、 飲食店が限られたリソースを最大限に活用し、持続的な売上成長を実現するための具体策を網羅的に解説しています。 本指南書が、飲食業界における経営者およびマーケティング担当者の成長をサポートし、新たなビジネスチャンスの創出に つながることを期待しています。 4 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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飲食店・飲食ブランドのマーケティング全体設計 飲食店や飲食ブランドのマーケティングを計画する際、「何からどのように考えていいのかわからない」という声をよく耳にし ます。そこで次ページでは、その出発点となる「飲食事業のマーケティング全体像」 を1枚の図で整理しました。 この設計図の構造は以下のようになっています。最上位には、企業の 「理念」や「ミッション」 があり、その下に「経営戦略」が あります。さらにその配下に、「ブランド戦略」 や「店舗戦略」が位置づけられています。そして、ブランドや店舗の目標、つま り経営目標を実現するための手段のひとつとして「マーケティング戦略」 が存在します。 ここで強調したいのは、マーケティングは「経営目標を達成するための複数ある手段のひとつ」 であるという点です。ファイ ナンス(資金調達や管理)、採用、オペレーション(店舗運営や物流)などと並ぶ経営機能の一部であり、マーケティングだけ で目標を達成することはできませんが、目標達成にはマーケティングの力が不可欠であることも事実です。 その中でも「マーケティング戦略」 は、単に集客の手段を考えることではありません。マーケティング戦略とは、事業全体の 方向性の中で「誰に(ターゲット)」「何を(提供価値・コンセプト)」 届けるのかを明確にし、それをどのような経路(メディア・ チャネル)で伝え、どのように競合と差別化していくのかを設計するものです。 つまり、マーケティング戦略とは、ターゲットの設定と提供価値の設計を中心に、競争優位のポジションを築くための 「戦略的 設計図」です。 しかし、よくある誤解として、「マーケティング戦略」と「マーケティング施策(戦術)」を混同し、いきなり「 How(どのようにやる か)」から考え始めてしまうケースがあります。 本来、マーケティング戦略はまず「What(何を提供するか)」「 Who(誰に届けるか)」を明確に定義する ことが出発点です。 これらが曖昧なまま「How(施策)」に取り組むと、目的と手段がかみ合わず、リソースを浪費する結果になりかねません。 本指南書では、この設計図に沿って、「戦略」から「施策」への流れ を一つずつ丁寧に解説していきます。 5 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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図表:飲食事業におけるマーケティング全体像 企業理念・ミッション 経営戦略 ブランド戦略・店舗戦略 マーケティング戦略 WHO(ターゲット ) STP ・Segmentation (セグメンテーション) ・Targeting (ターゲティング) ・Positioning (ポジショニング) WHAT(提供価値 ) HOW(コミュニケーション ) SAP 顧客のブランド体験 ・Story (ストーリー) ・Atmosphere (空気感) ・Products (提供物) ・カスタマージャーニー ・施策の立案・実行 ・分析と改善 ブランド ・ブランド コア ・ブランド コンセプト ・ブランド ストーリー 6 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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1 マーケティングとは What is marketing? 1.1 マーケティングの定義 1.2 プロダクトアウトとマーケットイン 1.3 サービスのマーケティング 1.4 デジタルマーケティング 1.5 環境分析1 1.6 環境分析2 1.7 マーケティングリサーチ 7 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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1.1 マーケティングの定義 マーケティングとは、「提供内容」(WHAT)を定義し、それを「標的顧客」(WHO)に対して、適切な「手段」(HOW)で伝達する ことだと本指南書では定義しています。 そして本書では、「WHAT → WHO → HOW」の順に、マーケティング戦略の構築手順を解説していきます。 その前提として、本章ではまず「マーケティングとは何か?」という定義を明確にした上で、戦略立案に必要な「リサーチ」や 「分析」についても触れていきます。 ■マーケティングの定義 「マーケティング」という語は、“Market”(市場・取引所)に現在進行形の“ing”がついた言葉です。これは、「市場との継続的な 関わり」を示す言葉であり、「単発的な施策ではなく、継続的かつ体系的なアクションであること」を意味します。 最新の日本マーケティング協会(2024年)の定義は、以下の通りです。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「顧客や社会と共に価値を創造し、その価値を広く浸透させることによって、ステークホルダーとの関係性を醸成し、より 豊かで持続可能な社会を実現するための構想でありプロセスである」 (日本マーケティング協会 , 2024) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ この定義は、マーケティングが単なる「販売促進活動」ではなく、 社会・顧客・企業の三者すべての持続的成長を目的とする 構想およびプロセス であることを示しています。 飲食店や飲食ブランドにおいても、この概念を当てはめると、マーケティングとは次のように言い換えられます 「飲食店・飲食ブランドの提供価値を、ターゲット顧客に的確かつ継続的に伝え、魅力ある関係性を築くことで、店舗や企 業の長期的な繁栄を実現する仕組み」 これは、単なる集客ではなく、来店前から再来店後までのすべての体験(カスタマージャーニー)を設計し、関係性を深め ていく営みである ということを意味します。 8 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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1.2 プロダクトアウトとマーケットイン 前ページでは「マーケティングの定義」について解説しました。ここでは、マーケティングを実践する上で、まず押さえるべき基 本的な思考法として、「プロダクトアウト」と「マーケットイン」の考え方について説明します。 ■ プロダクトアウト vs マーケットインとは? 「マーケティング」で最も重要なのは、顧客起点で物事を考えること です。この視点の対比としてよく使われるのが、以下の2 つのアプローチです。 ・プロダクトアウト: 自社の技術やこだわりを出発点とし、「作りたいものを作る」発想 ・マーケットイン: 顧客ニーズや市場動向を出発点とし、「求められるものを提供する」発想 ■ 飲食店で起きがちな “プロダクトアウト ”の現実 飲食業界では、「料理人の技術力」や「店舗側のこだわり」が強く出る傾向にあり、「プロダクトアウト」の発想で商品や業態が 設計されるケースが少なくありません。 実際、それによって唯一無二の魅力が生まれることもあります。しかし、「顧客が求めていない商品」になってしまった場合、 自己満足で終わるリスクもあります。 ■ 顧客視点の導入こそ、マーケティングの核心 「プロダクトアウト」が悪いというわけではありません。特に中小企業では、限られたリソースで「自社の強み」を活かす必要が あるため、一定の“こだわり”が出発点になることも自然です。 しかし重要なのは、そのこだわりを誰に、どのように届けるのか という視点を忘れないことです。 「お客様はこの商品をどう感じるのか?」「どんな体験やベネフィットを期待しているのか?」こうした「顧客視点=マーケットイ ン」の思考を取り入れることで、提供価値(WHAT)、ターゲット(WHO)、伝達手段(HOW)がより具体的かつ効果的になりま す。 9 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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1.3 サービスのマーケティング 飲食店・外食ブランドに特有で重要なマーケティング上のポイントとして、「サービスのマーケティングの特徴」を押さえる必要 があります。飲食ビジネスはBtoC(一般消費者向け)の中でも、ホスピタリティ産業=サービス業に分類され、「物」ではなく 「体験」を提供する業態です。ここでの「サービス」とは、単なる「接客」にとどまらず、店舗での総合的な顧客体験を指します。 サービスのマーケティングには、以下のような4つの特性があります。 ■ 無形性(Intangibility):サービスは形がなく、顧客が目で見ることができません。飲食業で言えば、「料理」は有形でも、 空間、ストーリー、接客、雰囲気 など、来店体験の大部分は無形要素です。これらを顧客に伝えるには、 ブランドとして「言 語化」「映像化」しておくこと が不可欠です。たとえば、「店舗の世界観やストーリーをHPやSNSで明文化」「動画や写真で 「空気感」や「シーン」をビジュアル化」などです。 ■ 不可分性(Inseparability):サービスは「提供」と「消費」が同時に起こります。飲食店では、顧客が店にいなければサー ビスを受けられず、時間・場所が固定される という特性があります。そのため、時間あたりの提供量に限界 があり、売上の 上限が決まってしまいます。解決策として:「回転率の改善」「ピークタイムの価格調整(ダイナミックプライシング)」「時間制 コース・予約制の導入」などがあります。 ■ 変動性(Variability):サービスは人が提供するため、スタッフや状況によって品質が変動 します。特に飲食業では、同じ 料理を出しても、接客によって評価が大きく左右されます。対応策としては、「スタッフ教育」や「マニュアルの整備」「顧客満足 度アンケートやミステリーショッパーの導入」「サービスチェックの PDCA運用」などがあります。 ■ 消滅性(Perishability):サービスは「在庫」がきかず、提供しなければ売上にはならず、時間とともに消えていきます。 1席でも空席があればその時間分の売上機会は失われるため、「需要の調整」が重要です。具体的には、「予約導線の整備 (Google予約、食べログなど)」「CRMによる再来店促進(LINE・アプリなどのプッシュ通知)」「閑散時間帯の販促(ハッピー アワーなど)」などがあります。 10 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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1.4 デジタルマーケティング 次に、「デジタルマーケティング」について解説します。デジタルマーケティングとは、 インターネットや ITなどのデジタル技術 を活用して、顧客に商品・サービスを届け、関係性を築くマーケティング手法 です(アメリカ・マーケティング協会/AMA)。 これにはWebサイト、SNS、検索エンジン広告、動画配信、メールマーケティング、アプリなどが含まれます。 前ページで説明した「サービスの不可分性」からも分かるように、飲食店における顧客体験や売上は基本的に「リアルな空間 =店舗」で発生します。しかし、その店舗への集客や関係構築の多くは、店舗外のデジタル空間で始まっている のが現実 です。 たとえば消費者庁の調査(2022年)によれば、飲食店を利用する際に SNSや口コミサイトなどのインターネット情報を参考 にする人は全年代で 70%以上を占めており、特に20代では90%近くがネット上での情報収集を行っているという結果が出 ています。 ■ デジタルマーケティングの主な利点 デジタルマーケティングの最大の利点は、「可視化(=データ化)」と「最適化」が可能な点です。具体的には「ホームページへ のアクセス数」や「予約数」のような指標をリアルタイムで確認できます。これにより、 費用対効果を把握しながら改善 PDCA を高速で回すことが可能 になります。さらに、Meta(Instagram、Facebook)やGoogleなどのプラットフォームが持つ属性 データを活用することで、「25〜34歳・都内在住・グルメ志向」のユーザーに広告を配信、といった、 高精度で無駄のない ターゲティング が可能です。 ■ オフライン施策との使い分け 従来の「ポイントカード」「チラシ配布」「FAX DM」「交通広告」なども、業種や商圏によっては依然として有効です。特に高齢 層や地域密着型の店舗では、オフライン施策との併用が効果的 です。しかし、本指南書では、コスト効率と可視性に優れ た「デジタルマーケティング」 を主軸として解説していきます。 11 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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1.5 環境分析 1 次に、マーケティング戦略を立てるための前提となる「マーケティング分析」について解説します。 この後に説明する「マーケティングリサーチ」と若干似ていますが、「マーケティング分析」は、主に戦略立案前に行う 社内外 環境の整理と理解を目的とします。一方で「マーケティングリサーチ」は、仮説に基づいた 定量・定性調査を指し、「施策にお ける分析」は、実行後の効果検証や改善アクション を意味します。それぞれ目的・タイミング・手法が異なるため、混同しない ように注意が必要です。 「環境分析」で分析すべきは店舗やブランドを取り巻く「環境」ですが、その環境は企業の外部と内部に分かれます。ここから いくつかの分析のフレームワークを解説しますが、重要なことはマーケティング戦略で必要となる要素を取り巻く環境を多角 的に理解することです。 ■ 外部分析 ・PEST分析: P(政治)、E(経済)、S(社会)、T(技術)など、市場を取り巻く大きな要素に関しての分析です。法規制や為替 など、マーケティング戦略の立案と実行に影響を与える可能性がある項目を確認し、市場環境を理解することを目的とします (Aguilar, F. J.,1967年)。この指南書においては、「外食産業」を取り巻く「環境」と理解頂いて問題ございません。 ・5FORCE分析: PEST分析が産業外部の要因分析であったのに対し、5FORCE分析は産業内部で自社を取り巻くパワー の大小や関係性についての分析となります。その5つのパワーとは、供給者(仕入業者)、顧客、競合、参入障壁、代替品の 5つです (Porter, M., 1980年)。この5つのパワーを分析することで、産業内で自社を取り巻く要素を整理し、利益を創出する ポイントや新規事業の難易度などを理解することが可能となります。 12 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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1.6 環境分析 2 ■ 外部/内部分析 ・SWOT分析: 産業内または産業外の機会(O)・脅威(T)と、自社の強み(S)・弱み(W)を分析していく手法です。「強み」を 生かして「機会」を掴むにはどうするか、「機会」を逃さないように「弱み」を克服するにはどうするか、「脅威」に対応するため にどう「強み」を生かすか、を検討していきます(Humphrey, A., 1960s–1970s)。 ・3C分析: 上記SWOTの中で、Company(自社)、Competitor(競合)、Consumer(顧客)に対する理解を深めるための分 析です。現在ではCooperator(協力者)とContext(外部要因)を加えて5Cとも言われています (大前研一, 1982)。この5つ の要素を分析することにより、ビジネスにおける勝ち筋を見出すことが可能となります。 ■ 内部分析 ・VRIO分析: 上記SWOTの「S」、すなわち自社の「強み」について4つの要素から深掘りし、限られたリソースの中で実行す るアクションの優先順位を明確にするための分析です。その4つの要素とは、V(Value:経済価値)、R(Rarity:希少性)、I (Imitability:模倣困難性)、O(Organization:組織)です。通常はVRIOの後半(IO)にいくほど競争優位性が高まるとされま す (Barney, J., 1991)。例えば、「独自のレシピや調理技術(R:希少性、I:模倣困難性)」、「地元生産者との強固なネット ワーク(O:組織的活用)」、「海外店舗経験を持つ店長のマネジメント(V:価値)」などは、競合店が簡単に真似できない飲食 店の強みです。VRIO分析を通して、優先的に伸ばすべき競争優位性 を明確にすることが可能となります。 13 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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1.7 マーケティングリサーチ 次に「マーケティングリサーチ」について解説します。「マーケティングリサーチ」では、「顧客」や「競合」に対する分析を深める ために行います。 ・仮説とインサイト :「マーケティングリサーチ」の目的はマーケティング戦略を立てる際に重要となる「顧客のインサイト(潜在 的ニーズ)」やマーケティング活動のベースとなる「情報」について、定量化されたデータや、論文、記事などにアクセスして明 らかにすることです。そのためにはまず「仮説」を立てなければなりません。例えば、顧客の属性別の接触メディアを調べた いという時に、「20代はTikTokの使用率が高い」というような仮説を立てたら、それを検証するためにリサーチが必要となりま す。 ・データの種類(一次データと二次データ) :データには「一次データ」と「二次データ」があります。「一次データ( Primary Data)」とは、特定の目的のために自社が独自に収集した新しいデータを指します。一方、「二次データ( Secondary Data)」 とは、既に他者によって収集・公開されたデータであり、統計資料、白書、業界レポート、学術論文、メディア記事などが該当 します(Kotler & Keller, 2016)。例えば、「20代はTikTokの使用率が高い」という仮説を裏付けるため、外部の調査やマー ケティング雑誌の記事などを参照して、その仮説が正しいか確認するのは「二次データ」の活用です。一方、自社でアンケー トやグループインタビューを実施したり、外部のリサーチ会社へ依頼することで集めたデータは「一次データ」となります。 ・確証バイアスの罠 :「確証バイアス(confirmation bias)」とは、自分の仮説や先入観に一致する情報ばかりを選び、反証と なるデータを無視・軽視してしまう心理的傾向を指します(Nickerson, 1998)。マーケティングリサーチ」では、主観的ではな く、客観的な観点からの情報の収集が必要不可欠となります。 ・リサーチ手法: 具体的な一次データ取得のリサーチ手法には下記があります。 ・定量調査:オンラインアンケート/紙アンケート ・定性調査:インタビュー/グループインタビュー/ミステリーショッパー ・行動観察:店舗での来店・滞在・注文データの観察 14 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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2 提供価値 (WHAT) The value proposition 2.1 ブランド・店舗の提供価値1 2.2 SAP1 2.3 SAP2 2.4 ブランド設計1:SAPとブランド設計 2.5 ブランド設計2:ブランドコア 2.6 ブランド設計2:ブランドコンセプト/ストーリー 2.7 ブランド設計3:ブランドキャラクター/キーワード 15 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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2.1 ブランド・店舗の提供価値 ここからは、マーケティング戦略の具体的な中身 について解説していきます。 前述のとおり、「WHAT(何を提供するか)」「 WHO(誰に提供するか)」「 HOW(どのように伝えるか)」 の順番で考えること が重要です。 この順序を守ることで、限られたリソースの中でも、より効果的なマーケティング施策の実行が可能になります。 しかし、多くの企業では「HOW」(たとえばメニューの内容やSNS戦略など)から考え始めてしまい、最終的にブランドや店舗 のコンセプトを後付けで定めるようなケースが見受けられます。 本来あるべき姿は、まず「業態」や「店舗」の提供価値やブランド をしっかりと定めることです。なぜなら、顧客にとっての提 供価値とは、飲食店においては「店舗での体験」 にほかならないからです。 次ページからは、その「店舗での顧客体験」を構成する重要な要素である 「SAP」について解説していきます。 飲食事業におけるマーケティングを構成する3要素 WHO(ターゲット ) STP ・Segmentation (セグメンテーション) ・Targeting (ターゲティング) ・Positioning (ポジショニング) WHAT(提供価値 ) HOW(コミュニケーション ) SAP 顧客のブランド体験 ・Story (ストーリー) ・Atmosphere (空気感) ・Products (提供物) ・カスタマージャーニー ・施策の立案・実行 ・分析と改善 ブランド ・ブランド コア ・ブランド コンセプト ・ブランド ストーリー 16 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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2.2 SAP1 SAPとは、飲食店における「店内体験」を構成する3つの主要価値要素、Story(ストーリー)、 Air/Atmosphere(空気感/ 雰囲気)、Product(提供物)の頭文字を取ったフレームワークです。これらの要素は、顧客が店舗内で五感(視覚・聴覚・嗅 覚・味覚・触覚)を通じて体験する、飲食ブランドにおける提供価値の本質を表しています。 従来は、QSCA(Quality・Service・Cleanliness・Atmosphere)という「管理」視点の基準が重視されてきましたが、こ れは業務維持やクレーム防止を主眼 とするもので、必ずしも「ブランド体験の魅力」を創出するものではありません。 SAP は、顧客の感情や記憶に残る体験設計を可能にする「顧客体験価値」視点のフレームであり、現代の飲食店経営において 欠かせない概念です。 ストーリー(S) 空気感/雰囲気(A) 提供物(P) 17 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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2.3 SAP2 SAPとは、飲食店において顧客が五感で体験する提供価値を3つに分解した概念です。Story(ストーリー)、Air(空気感)、 Product(提供物)は、いずれも顧客体験の中核をなす要素であり、この3つが有機的に結びつくことで、忘れられないブラ ンド体験が生まれます。 なお、QSCAに代表される「清潔さ」「品質」などは店舗運営上の前提であり、本章ではマーケティングとしての感情価値に着 目して、SAPに焦点を当てています。 ・ストーリー(S:Story) ここでの「ストーリー」とは、顧客が来店から退店までに感じる一連の「物語性」 を指します。たとえば、「メニューブックで語ら れる食材の産地やブランドの成り立ち」、「店長の想いや、開店までのストーリー」、「コース料理の流れにあるドラマ」、「接客 で共有される背景情報」などが該当します。これらが繋がることで、 顧客の中に「共感」や「記憶」が生まれ ます。 ・空気感/雰囲気 (A:Air/Atmosphere) 「Air」は、お店の中に漂う目に見えない雰囲気全体 を指します。音楽、照明、香り、空調、他のお客様の声、スタッフの活 気、インテリアなど、複数の要素が無意識レベルで「居心地」や「世界観」を形成 します。ブランドとしてのイメージにも大きく 関わるため、意図を持った空間設計 が求められます。 ・提供物 (P:Products) ここでの「提供物」は、料理やドリンク、接客、メニューそのものなど、 顧客が可視化・体験できる対象すべて を指します。提 供物のクオリティ向上や新商品開発は当然の取り組みですが、マーケティングではそれを「どのような文脈で・どんな空気感 の中で提供するか」まで含めて設計する必要があります。 18 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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2.4 ブランド設計 1:SAPとブランド設計 前ページでは、店内体験を構成する3要素「SAP(ストーリー・空気感・提供物)」について解説しました。 これらは互いに連動し、ブランドコンセプトに基づいて一貫性をもって設計されることで、統合された顧客体験を生み出しま す。 たとえば、ブランドのストーリーに沿った空間演出や、体験設計を伴う商品提供は、顧客の印象を強く残すことにつながりま す。 このような体験を通じて得られる「満足」や「幸福感」が、ブランドが顧客に与える本質的な価値= ベネフィットです。 そしてこのベネフィットこそが、ブランドに対する「ロイヤリティ」や「再来店意欲」を生む ブランドコアになります。下記が、その 「ブランドコア」とそれをベースにした「ブランドピラミッド図」です。 ブランドコアを形成する3要素: SAP 空気感/雰囲気 (Atmosphere) ストーリー (Service) ブランドピラミッド図 ブランド コア ブランド コンセプト ブランド ストーリー 提供物 (Products) ブランド キャラクター (ロゴ・カラー・フォントなど ) ブランド キーワード 19 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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2.5 ブランド設計 2:ブランドコア ここからは、そのブランドコアを出発点とした「ブランド設計」について見ていきます。本指南書では、ブランド戦略を視覚的か つ階層的に整理できる「ブランドピラミッド」のフレームワークを用いています。このピラミッドは、以下の 3階層で構成されま す。 ・ブランドコア ・ブランド コンセプト ・ブランド ストーリー ・ブランド キャラクター ・ブランド キーワード ■ ブランドコア この中で最上位に位置する「ブランドコア」は、顧客がそのブランドや店舗を体験することで得られる深い感情的価値です。た とえば、結婚記念日に訪れたフレンチレストランでは、「美味しい料理」や「丁寧な接客」「上質な空間」という提供物だけでな く、パートナーとの時間を通して感じた「感謝」や「絆」「信頼」といった感情が、真のベネフィットになります。 このようなベネフィットは抽象的で直接的な表現が難しいため、マーケティングではそれを「コンセプト」や「ストーリー」として 具体化し、視覚や言語に落とし込むことが求められます。つまり、 体験から得られる感情を、意図的に伝えられる価値に変 換していく作業がブランド構築の本質と いえるのです。 20 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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2.6 ブランド設計 2:ブランドコンセプト /ストーリー ■ ブランドコンセプト ブランドコンセプトとは、「ブランドコア」で定義された理念や想い を、具体的なサービスや商品に落とし込んだ表現 のことで す。言い換えれば、「どのような価値を、どんな形で、誰に届けるブランドなのか」を一文で言い表したものです。例えば、「手 軽さと本格的な味わいを両立したカフェ」、「地域の文化を現代的に表現する創作割烹」などが、ブランドコンセプトに該当しま す。 ブランドコンセプトは、顧客にとっての提供価値( WHAT)の中心をなすものであり、また従業員にとってもブランドの “軸”と して意識されるべきもの です。このあと紹介する「ブランドキーワード」や「ブランドキャラクター」とともに、「コンセプトシート」 の中心要素を構成し、あらゆるマーケティング施策や店舗オペレーションの判断基準 となります。 ■ ブランドストーリー ブランドストーリーとは、そのブランドの誕生背景や創業のきっかけ、歩んできた歴史、そして込められた想いなどを 物語とし て言語化したもの です。このストーリーがあることで、顧客がブランドに感情移入しやすくなり、結果としてファンの獲得・育 成につながります。 ブランドストーリーには、実際の創業エピソードをもとにした実話型と、ブランドコンセプトに基づいて創作された物語型の両 方が存在します。いずれにしても、目に見えないブランドに“コンテクスト(文脈)”を与えることで、顧客や従業員が「意味づけ」 を行いやすくなる点が最大の意義です。このストーリーを軸として、店舗内の空間デザイン、メニュー構成、提供方法、接客 方針など、SAP(ストーリー・空気感・提供物) の具体的要素が設計されることも多くあります。 「ブランドコンセプト」と「ブランドストーリー」は、飲食店や飲食ブランドが顧客に提供する提供価値( WHAT)の核となる要 素)です。そしてそれは、ブランドがなぜ存在するのか=ブランドコアに直結しており、マーケティング全体を考える上で 常に 立ち返るべき出発点 となります。 21 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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2.7 ブランド設計 3:ブランドキャラクター /キーワード ■ ブランドキャラクター ブランドキャラクターとは、ブランドを視覚的・感情的に象徴する存在です。 たとえば、「ロゴ」「カラー」「フォント」「アイコン」「キャラクター」「マスコット」などがこれに該当します。ブランドキャラクターは、 ブランドの核(ブランドコア)やストーリーを視覚に落とし込み、ブランド体験に一貫性をもたらす要素 であり、ブランド認知 や差別化にも寄与します。 飲食店においては、看板・店舗外観・メニューブック・SNS投稿などにおける「一貫したデザイン表現」が、ブランドキャラク ターの実行形とも言えます。 ■ ブランドキーワード ブランドキーワードとは、そのブランドの個性や価値を言語で伝えるために繰り返し使用する言葉 です。 名詞・動詞・形容詞・副詞など、ブランドを説明する際に自然と使われる(または意図して使わせたい)ワードを明確に定義し ておきます。例えば、「ジューシー」「手づかみ」「解放感のある」や、「生産者直送」「四季折々」「非日常な体験」などです。 キーワードは広告文、SNS投稿、店内POP、接客時の会話などあらゆる接点で一貫して使われることで、顧客の中にブラ ンド像が定着していきます。 ここまで「WHAT(何を提供するか)」の構成要素として、店内体験の中核となる「SAP」、そしてそれを支えるブランド設計(ブ ランドピラミッド)について解説してきました。 次は、「その価値を誰に( WHO)届けるか」を考えるステップに入ります。 22 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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3 標的顧客の設定 (WHO) Defining the target customer 3.1 標的顧客(ターゲット)の明確化 3.2 STP概要 3.3 STP2 セグメンテーション1 (基本属性・デモグラフィック) 3.4 STP3 セグメンテーション2 (サイコグラフィック) 3.5 STP4 セグメンテーション3 (利用シーン) 3.6 STP5 ターゲティング1 (商圏と利用シーン) 3.7 STP6 ターゲティング2 (ニーズとベネフィット、ペルソナ) 3.8 STP7 ポジショニング1 (差別化の設計) 3.9 STP8 ポジショニング2 (ポジショニングマップ) © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved. 23

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3-1. 標的顧客(ターゲット)の明確化 提供価値(WHAT)を明確にした後は、その価値を「誰に届けるか」、すなわち「WHO=標的顧客」の設定が不可欠です。マー ケティング戦略におけるターゲットの設定は、全体の方向性や施策の有効性に直結するため、非常に重要な工程です。 ブランドコンセプトや業態を策定したからといって、すぐに「どう売るか( HOW)」に進むのは危険です。限られたリソースの中で 成果を最大化するためには、「誰に届けるか( WHO)」を明確にすることが戦略の核 になります。全方位に訴求することは非 効率で、ターゲットが不明確だと打ち手がぼやけてしまい、結果として効果が出にくくなります。 この章では、効果的なターゲティングのための「STPフレームワーク(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)」 に ついて解説します。STPは、マーケティング戦略における「WHO」の意思決定を行う上で最も基本的で重要な考え方です。 飲食事業におけるマーケティングを構成する3要素 WHO(ターゲット ) STP ・Segmentation (セグメンテーション) ・Targeting (ターゲティング) ・Positioning (ポジショニング) WHAT(提供価値 ) HOW(コミュニケーション ) SAP 顧客のブランド体験 ・Story (ストーリー) ・Atmosphere (空気感) ・Products (提供物) ・カスタマージャーニー ・施策の立案・実行 ・分析と改善 ブランド ・ブランド コア ・ブランド コンセプト ・ブランド ストーリー 24 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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3.2 STP概要 マーケティング戦略では、「WHAT(提供価値)」を定義した後に「WHO(標的顧客)」を明確にすることが不可欠です。すべて の人に訴求するのではなく、誰に届けるかを明確にすることで、限られたリソースの中でも効果的なマーケティング施策 (HOW)を設計できます。この「WHO」を明確にするための基本フレームワークがSTP です。 ■「S」:Segmentation(セグメンテーション) 「セグメンテーション」とは、広い市場を属性やニーズで分けることです。飲食業界での切り口には、業態・ジャンル(ラーメン・ 焼肉・カフェなど)、単価帯(高単価・ミドル・低価格帯など)、商圏(都心・郊外、オフィス街・住宅街)、属性(年齢・性別・ライフス テージなど)で市場を分けることが可能です。次のステージであるターゲティングの材料とするため、細分化の切り口を重要 度を考慮して選定していくことが求められます。 ■「T」:Targeting(ターゲティング) セグメントされた市場の中から、自ブランドが最も価値を届けられる層 を定めます。デモグラフィック (年齢・性別・居住地・収 入など)、サイコグラフィック (価値観・ライフスタイル・SNS利用状況)、利用シーン(記念日、接待、ひとり飲みなど)、が重要な セグメントとなります。特に飲食店では「どんなシーンで利用されるか」を明確にすること が、後の施策設計において非常に 重要です。 ■「P」:Positioning(ポジショニング) 狙ったターゲットに対して、自ブランド・自店が競合と比べて、どんな立ち位置を取るかを明確にします。通常は、 4象限のポ ジショニングマップ で示すことが多いですが、「高単価× 記念日利用」に強いイタリアン、「希少部位× 焼肉」「ライブ感 × オープンキッチン」などのテーマでポジショニングマップを作成します。競合に埋もれず選ばれるためには、 差別化ポイント (強み) と 類似化ポイント(信頼の担保) のバランスも重要です。 このように、STPはマーケティング施策( HOW)を設計する前提として必須の思考プロセス です。次ページからは、この STPを構成する各要素について具体的に解説していきます。 25 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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3.3 STP2 セグメンテーション 1(基本属性・デモグラフィック) ここではSTPの「S」にあたる セグメンテーション(市場の細分化)について解説します。目的は、市場を適切な切り口で分類 し、次の ターゲティング(T)に向けて有効な材料を整理することです。 ■ 基本情報による分類(店舗起点) まずは、ブランドや店舗の「基本情報」をもとに細分化します。これは、競合と比較した際の前提条件となり、戦略を立てる上 でも重要です。 ・ジャンル:焼肉、ラーメン、カフェ、創作料理など ・立地・商圏:駅近、住宅街、ビル内、駐車場の有無など ・客単価:ランチ1500円、ディナー5,000円など ・営業時間:モーニング中心、深夜営業あり、通し営業など ・設備要素:空中階、個室有無、カウンター席中心など ■ デモグラフィック要素による分類(顧客起点) 「デモグラフィック」は、数値化しやすい性別・年齢・職業・所得 等による分類です。 ・性別・年齢:男女、20代・30代・ファミリー層など。生活背景やメディア接触、価値観も世代で変わります。 ・ライフステージ :学生、社会人、子育て世代など。支出傾向や飲食頻度も変化。 ・所得層:高所得者層/節約志向層で利用店舗が異なります。 ・居住地・勤務地 :生活圏や通勤圏によって、来店動機や時間帯が異なります。 26 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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3.4 STP3 セグメンテーション 2(サイコグラフィック) ■ サイコグラフィック要素による分類 サイコグラフィック要素 とは、顧客の心理的特徴やライフスタイル、価値観 による市場の細分化です。たとえば「健康志向」 「新しいもの好き」「SNS頻度が高い」など、目に見えない定性的な情報で顧客を分類します。 同じ性別・年齢であっても、考え方や行動様式は人によって異なるため、 デモグラフィック属性だけでは捉えきれないニーズ や動機を明らかにする手法として、サイコグラフィックは非常に有効です。 特に飲食店は「サービス業」であり、顧客体験の価値は感情や印象によって大きく左右される ため、心理的要素の理解は、 デモグラフィック以上に重要といえるでしょう。 ・情報感度:トレンドや新商品への関心の高さ(例:流行に敏感/保守的) ・情報の信用度:公式情報を信じる/口コミを重視する/デマに流されやすい ・情報伝達傾向:SNSでシェアしたい/秘密にしておきたいタイプ ・注目欲求:目立つのが好き/控えめな雰囲気を好む ・行動パターン:新店開拓派/常連志向 ・趣味嗜好:お酒が好き/健康第一/海外料理好きなど ・価値観重視点:コスパ重視/雰囲気重視/「映え」重視 ・ライフスタイル :平日は自炊派、週末に外食/毎日外食する忙しいビジネスパーソンなど これらの要素は、次章で解説する「ターゲティング」や「ペルソナ設定」に直結し、 マーケティング施策( HOW)の設計精度に 大きな影響を与えます。 27 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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3.5 STP4 セグメンテーション 3(利用シーン) ■ 利用シーンによる分類 飲食店のマーケティングにおいて、最も重視すべきセグメントの一つが「利用シーン」です。 顧客が「いつ」「誰と」「どのような目的で」飲食店を訪れるのかによって、求める体験や期待する価値は大きく変わります。 たとえば「日常使い」と「記念日ディナー」では、期待される価格帯・接客レベル・空間演出・料理の内容 がまったく異なりま す。このように、「利用シーン」は提供すべきベネフィット と直結するため、STP設計における重要要 素といえます。 ■ よくある利用シーンとニーズ ・一人での食事:短時間・気軽・価格重視 ・仕事終わりの軽い飲み :手軽・コミュニケーション重視 ・カフェ利用:雰囲気・滞在時間・ドリンククオリティ ・デート:空間・演出・接客の印象が重要 ・夫婦での外食:リラックス感・安心感・サービスの安定性 ・記念日利用:非日常感・ストーリー・予約時の演出など ・女子会:シェアしやすい料理・SNS映え・空間設計 ・接待や会食:プライバシー・品位・サービス精度 28 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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3.7 STP6 ターゲティング 1 (商圏と利用シーン ) ターゲティングとは、セグメンテーションで細分化した市場の中から、自社ブランドにとっての 主要顧客層=ターゲット を決定 するプロセスです。たとえば、「20代女性のグループ利用」や「30代カップルの記念日利用」など、デモグラフィック属性と利 用シーンを組み合わせてターゲット像を具体化していきます。 ここでは、ターゲティングにおいて特に重要な「商圏」と「利用シーン」 という2つの観点を解説します。 ■ 商圏:物理的な集客範囲の定義 飲食店ではサービスが来店前提で提供されるため、物理的に集客可能なエリア=商圏の把握が不可欠です(※テイクアウト ・デリバリーは除く)。商圏は、立地(駅近・住宅街など)や顧客の居住地・勤務地によって構成されます。 たとえば、オフィス街の店舗であれば「周辺勤務の会社員」、住宅街の店舗であれば「近隣住民」がターゲットになります。 この商圏を的確に設定することで、広告効率や集客の歩留まりが大きく改善 されます。 ■ 利用シーン:顧客の目的別ニーズの明確化 次に重要なのが「利用シーン」の特定です。顧客が「どのような目的で」来店するのかによって、求める価値は大きく変わりま す。 たとえば、銀座の高単価焼肉店であれば、「記念日」「接待」「歓送迎会」などが想定されます。同じ店でも、来店目的が異な れば、重視されるポイント(空間演出、接客、料理の豪華さなど)は変化します。 よって、自店舗にどんな利用シーンで来る顧客をメインに想定するか を決めることは、マーケティング戦略における出発点 となります。 29 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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3.8 STP7 ターゲティング 2 (ニーズとベネフィット、ペルソナ ) ■ ニーズとベネフィット 「利用シーン」は、顧客が店舗を選ぶ明確な目的=顕在ニーズ を示しています。たとえば、「結婚記念日を祝う」「接待で満足 してもらう」などがこれにあたります。お客様の言動やコース選択から、これらの意図は把握できます。 一方、「ベネフィット」はその先にある潜在的な期待や効果 を指します。たとえば結婚記念日のケースでは、「お相手と過ごす 特別な時間」や「感謝の気持ちの表現」といった心理的充足感が、接待の場面では「商談の円滑化」「社内評価の向上」など が想定されます。 飲食店やブランドにとっては、表面的な目的だけでなく、その奥にある「ベネフィット」を仮説として設計 することが重要で す。これにより、顧客に対する価値提供の本質が明確になります。 ■ ペルソナ ターゲット戦略では、「ペルソナ」の設定が効果的です。ペルソナとは、セグメンテーション(属性、心理、商圏、利用シーンな ど)をもとに構築される、架空の代表顧客像です。 たとえば、「都内在住・25歳女性・SNSでカフェ巡りが趣味」といった詳細な人物像を描くことで、その顧客が どう情報を得て 来店し、どのような体験を求めているのか をシミュレーションできます。 このようなペルソナの共有は、ブランドに携わっているメンバー全員が顧客像を具体的にイメージできる ようになり、コンセ プトや施策のブレを防ぐのに役立ちます。 30 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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3.10 STP9 ポジショニング 1 (差別化の設計) STPの最終ステップ「P=ポジショニング」 では、自ブランド・自店舗がターゲット顧客の頭の中でどの立ち位置を取るか を 明確にします。言い換えれば、数ある選択肢の中で「なぜこの店を選ぶのか」という問いに答える作業です。 たとえば焼肉業態では「和牛の希少部位に特化」「全席個室の高級路線」「セルフスタイルで低価格」など、同じジャンル内で も多様なポジショニングが考えられます。 ■ ポジショニング設計の 2つの軸 ポジショニングを構築する際には、次の2つの視点を意識する必要があります。 ・類似化ポイント( Point of Parity) これは顧客にとって最低限必要とされる価値 であり、他の競合店と共通する部分です。たとえば、焼肉であれば「カルビ」「タ ン」などの定番メニューや、「個室」などの基本的設備が該当します。これが欠けると、そもそも選択肢に入らなくなる可能性 があります。 ・差別化ポイント( Point of Difference) こちらは、競合にはない独自の強み を意味します。焼肉であれば、「希少部位の炭火焼」「スタッフによる焼きサポート」「ワイ ンペアリングの提案」など、ブランドや店舗ならではの特徴を指します。 類似化ポイントは「外せない要素」、差別化ポイントは「選ばれる理由」として位置づける必要があります。この 2つの視点を組 み合わせることで、顧客にとって意味のあるポジショニング を築くことが可能です。 31 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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3.11 STP10 ポジショニング 2 (ポジショニングマップ ) ポジショニング戦略を視覚的に整理する手法として有効なのが、 「ポジショニングマップ」 です。これは縦軸と横軸の2軸で構 成されるマトリックス(4象限図)を用いて、自ブランド・店舗の市場内での位置を明確に示すものです。 ■ マップ作成のポイント ポジショニングマップでは、「価格× 品質」や「来店頻度 × 体験価値」など、2つの軸を掛け合わせたテーマ を設定します。た とえば:「客単価 × 接客レベル」、「希少性 × 商品数の多さ」、「ターゲット年齢層 × 客単価」、「立地利便性 × ブランドの 専門性」などです。 このような組み合わせを複数作成し、自店舗がどのポジションを狙うべきか を明確にします。 ■ 注意点:「競合=同業」とは限らない 重要なのは、競合は必ずしも同じ業態とは限らない という視点です。たとえばカフェの競合は、他のカフェに限らず、ファー ストフード、コンビニ、さらには映画館やカラオケといった他業態の「外食以外のレジャー施設」なども代替選択肢になり得ま す。 特にポジショニング軸を「顧客ベネフィット」 で設計する場合、「手軽さ」、「感動体験」、「自己表現」などを提供するサービス が広義の競合になります。 ■ ポジショニングの重要性 ポジショニングマップの活用により、「マーケティング施策( HOW)の方向性が明確になる」 、「顧客にとっての「差別化され た理由」が視覚的に伝わる」、「ブランディングや商品開発の指針になる」などの利点があります。 つまり、「お客様の頭の中で、どのポジションに存在したいか? 」を言語化・可視化することで、次章から解説する、実際の 戦術(SNS・広告・メニュー設計など)への落とし込み がスムーズになります。 32 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4 マーケティング施策 (HOW) 4.1 ターゲットに価値をどう届けるか 4.2 カスタマージャーニー 4.3 マーケティング施策全体 4.4 認知 4.5 検索 4.6 興味・関心 4.7 比較・検討 4.8 予約・来店 4.9 CRM 4.10 店外体験(テイクアウト/デリバリー/EC) 4-11 番外編 :インバウンド集客 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved. Marketing tactics 33

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4-1. ターゲットに価値をどう届けるか ここからは、「WHAT」(提供価値)を「WHO」(標的顧客)にどう届けるか「HOW(方法)」について解説します。 この「HOW」を設計するうえで、軸となるのがカスタマージャーニー です。 カスタマージャーニーとは、顧客があなたのブランドや店舗を認知し、来店し、再来店または推奨に至るまでの一連の体験の 流れを指します。顧客は、「認知」または「検索」によってお店の存在を知り、「興味・関心」を持ち、他の店舗との「比較・検討」 を経て、「予約・来店」し、店内体験を通じて評価します。 さらに、満足すれば「リピート」や「SNSでの紹介」といったアクションにつながります。 この流れの中には、それぞれ異なる「タッチポイント」(接点)が存在します。各タッチポイントでの顧客体験を最適化し、 一貫し たブランド体験として設計することが、マーケティング施策の核心となります。 本章では、次ページ以降でこの「カスタマージャーニー」の各ステージを分解し、それぞれの段階で どのようなメディアを使い、 どんな施策を打つべきか を詳しく解説していきます。 飲食事業におけるマーケティングを構成する3要素 WHO(ターゲット ) STP ・Segmentation (セグメンテーション) ・Targeting (ターゲティング) ・Positioning (ポジショニング) WHAT(提供価値 ) HOW(コミュニケーション ) SAP 顧客のブランド体験 ・Story (ストーリー) ・Atmosphere (空気感) ・Products (提供物) ・カスタマージャーニー ・施策の立案・実行 ・分析と改善 ブランド ・ブランド コア ・ブランド コンセプト ・ブランド ストーリー 34 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4.2 カスタマージャーニー 1 下記の図は、お客様が飲食店を「知る」段階から「ファン」になるまでのプロセスを、左から右へと直線的に示した カスタマー ジャーニーのモデルです。これは、マーケティングの教科書などでも広く紹介されている基本的なフレームワークであり、各段階 において顧客に適切な情報や体験を提供 することが重要とされています。ただし、実際の飲食店集客では、すべての顧客がこ の「認知」起点の直線的な流れをたどるとは限りません。 お店を知る お店に興味 をもつ 比較する ここにお店があるんだ! 来店する 思い出す 再来店する ファンになる (常連) 今度の友達との飲み会、 期間限定メニューが このお店とあの店、 食べたくて・・・ どちらがいいかな? あのお店よかったな このお料理おいしそう! このお店たのしそう! 友達に自慢しよう ・いつも見てるよ! ・あの人にも食べて もらいたいな 35 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4-2. カスタマージャーニー 2:5つの来店起点 飲食店の集客では、「来店のきっかけ(来店起点)」を把握することが重要です。前ページの「認知」起点を含め、下記 5つの 起点があり、それぞれ異なる対応が求められます。 ■ 来店の5つの起点 ① 認知起点:広告やSNSなどでお店を知ったことをきっかけに来店するルート。来店までのプロセスが長く、コストもかかり ますが、中長期的なファン育成に寄与します。 ② 検索起点(探索):「飲食店を探している人」が検索結果からお店を知って来店するケース。能動的な顧客であるため、媒 体掲載や、広告・Google・SEOなどの整備が有効です。 ③ ブランド想起起点:検索や比較を経ず、「あの店に行こう」と思い出して来店するケース。ブランドの定着度が高く、理想的 な状態です。 ④ ファサード(店頭)起点 :偶然前を通って目に留まり、看板や雰囲気で入店するケース。ファサード設計や導線の工夫が 鍵になります。 ⑤ CRM起点(再来店):LINE配信やクーポンなどの再来店施策によって来店するルート。 CRMによる継続的な関係構築が ポイントです。 これら5つの来店起点を通じてお客様が接触する「ブランド体験」は、それぞれのブランドタッチポイントによって大きく左右さ れます。次のページでは、それらのタッチポイント全体を俯瞰した「ブランド体験サークル」として整理しています。 36 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4-2. ブランド体験 (Brand Experience) サークル 下記の図は、カスタマージャーニーにおいてお客様が体験する「ブランドとの接点(タッチポイント)」を円形で示したもので す。お客様は、広告・SNS・口コミ・ホームページなど、さまざまな接点を経て来店に至ります。そのため店舗側としては、特 定の接点だけでなく、あらゆるタッチポイントを意識し、バランスよく施策を展開することが大切です。 認知 ・パブリシティ ・認知系デジタル広告 ・インフルエンサー ・企画 ・コンテンツマーケティング ・SNS運用 ・チラシ・ポスティング ・口コミ 興味・ 関心 ・自社ホームページ ・Google ビジネスプロフィール ・SNSページ ・媒体ページ ・ブランドサイト ・予約ページ ・ファサード ・店内体験(ストーリー) ・店内体験(空気感) ・店内体験(提供商品・接客) ・モバイルオーダーなどツール 検索 顧客のブランド体験( BX) 来店 CRM ・グルメ媒体 ・オーガニック検索 ・SNS運用 ・検索系デジタル広告 ・Google Map ・SNS運用 ・ポイントカードなど ・LINEやアプリなど ・メール ・SNS運用 ・口コミ 37 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4-3. マーケティング施策 1:施策によって伝える顧客体験 マーケティングの役割は、顧客とのあらゆる接点でこの体験価値を高め、前ページの「ブランド体験サークル」の輪を広げる ことです。つまり、来店のきっかけや経路に応じて最適な情報接点を設計し、ブランドの継続的なファン化と再来店につなげ ることが、マーケティングコミュニケーションの本質といえます。 ここでは、その中心にある「顧客体験」について、各マーケティング施策を考える際の前提として説明します。 飲食店やブランドが顧客に提供する体験の中核は、「ストーリー」「空気感」「提供物」の 3要素で構成される SAPです。これ らは基本的に店舗内での体験に該当し、「ブランドコア(理念・信念)」 が土台となっています。 一方で、マーケティングにおける「HOW」(施策)は、そのブランドコアや SAPを、店舗外も含めたあらゆる顧客接点で “体 現・伝達”する手段です。SNS、広告、予約サイト、口コミ、店頭看板、再来店のLINE施策など、それぞれが「体験の一部」と なります。 したがって、マーケティング施策を設計・実行する際には、 ・各接点で顧客に伝える価値が一貫 しているか? ・施策のトーンや表現がブランドらしさを保っている か? という視点が非常に重要になります。 このような一貫性ある体験が顧客のブランドに対する信頼やロイヤリティを生み、 長期的にはブランドの成長(ブランド体験 サークルの拡大) に繋がります。 38 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4-3. マーケティング施策 2: 「攻めの施策」と「守りの施策 」 前ページでは、カスタマージャーニー上でブランドと顧客が接する「各接点」において、一貫したブランド体験を設計すること の重要性を解説しました。ここでは、マーケティング施策を「攻め」と「守り」に分類して考える意義について説明します。 ■ なぜ「攻め」と「守り」の視点が必要か? ジャーニー上の各ステージ(認知・検索・検討・来店など)には多くの施策が存在しますが、それらが一方的に偏ると、期待す る効果が得られなかったり、顧客の離脱に繋がるリスクがあります。例えば、 ・「守りの施策」 :ホームページの制作やSNSアカウントの整備など。顧客が調べたときにしっかり情報を提供できるようにす る“受け皿”です。 ・「攻めの施策」 :広告配信、パブリシティ、インフルエンサー活用など。顧客との最初の接点を増やす “働きかけ”です。 いくら丁寧にホームページを作っても、それを見に来る人がいなければ売上にはつながりません。一方、広告やメディア露出 で顧客の興味を引いても、その後の受け皿がなければ、せっかくの接点が無駄になります。 ■ 攻めと守りは「両輪」で考える 多くの施策は、「攻め」と「守り」のどちらか一方だけでは成立しません。たとえば、 ・SNS運用:投稿内容の設計は“守り”、フォロワー獲得や拡散戦略は“攻め” ・店舗体験:接客マニュアルは“守り”、口コミ投稿を促す仕掛けは“攻め” このように施策を「攻め」と「守り」に分けて整理し、両者がバランスよく機能しているかをチェックすることが、施策全体の パフォーマンス向上につながります。 39 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4-4 認知 ここからは、カスタマージャーニーにおける各ステージで、顧客が接触する主な 情報源(メディア)を分析し、自社ブランド・自 店舗がどのメディアにどのタイミングで露出すべきか を解説していきます。本章では、COLLINS株式会社が独自に実施し た「飲食店の選び方」アンケートの調査結果をもとに、「認知」フェーズの効果的な施策とメディア選定について具体的に紹介 します。 ■ 「認知」とは何か? 「認知」はカスタマージャーニーの出発点です。これは、ブランドをまったく知らない 人に「名前を知ってもらう」「記憶に残す」 段階です。 ここで重要なのは、対象となるのがいわゆる「今すぐ客”ではない」という点です。 例:今はお腹が空いていないが、近所に住んでいる 例:Instagramで見かけて、いつか行ってみたいと思っている このような潜在顧客に向けて、ブランドを「なんとなく知っている」「聞いたことがある」と思ってもらうことが、このフェーズの最 大の目的です。 ■ 潜在顧客へのアプローチを怠ると 「お店を探している人=顕在顧客」にだけアプローチを集中させると、短期的な集客には効果がありますが、 競合との消耗戦になりやすく、広告費が高騰し、長期的なブランド資産が築けない、という落とし穴があります。「認知施策 は」、将来の来店を生む“種まき”と考え、短期成果だけで判断しない視点が重要です。 40 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4-4 認知:メディアの接触割合 1 飲食ブランドや飲食店をターゲット顧客に認知してもらう際には、ユーザーが日常的にどのメディアを利用しているのかを把 握することが重要です。 例えば、普段まったくInstagramを利用しない50代男性に対して、Instagramを通じてブランド認知を図ろうとしても効果は期 待できません。同様に、日常的にテレビを見ない20代男性に向けてテレビCMを流しても、その層にはブランドメッセージが 届きにくくなります。 こうした背景を踏まえ、COLLINSでは以下のようなアンケートを実施しました。 「1日平均1時間以上視聴(または使用)するメディアをすべて教えてください。(複数選択可)」 その結果、2%以上の回答が得られたメディアは以下の通りです。 41 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4-4 認知:メディアの接触割合 2 「1時間以上」と設定した理由は、短時間の接触では広告やブランドメッセージが目に留まりにくいためです。例えば、数分間 の利用では「ショートメッセージの送信」や「ニュースの確認」など、目的以外のコンテンツには目が向きにくくなります。一方、 1時間以上の接触があるメディアであれば、目的以外の情報にも触れる機会が増え、ブランドの認知を促す余地が生まれる と考えられます。 前ページのデータを確認すると、「YouTube」を1日1時間以上視聴している人は約6割に達しており、圧倒的な接触率を示し ています。一方で、10年前には強力なメディアであった「テレビ」の視聴割合は40%にも届いておらず、「YouTube」 「Instagram」「LINE」の利用が顕著に増えていることがわかります。 年代別の比較として20代と全体のデータをグラフ化し ましたものが左図です。 20代では「Instagram」や「TikTok」の接触割合が高ま り、テレビの視聴割合はさらに低下しています。 このように、メディア接触の実態を把握することは、 「認知」段階におけるメディアへの投資配分を検討す る際に非常に重要です。さらに、若年層のメディア利 用傾向は将来的な消費行動の指標にもなり得るた め、長期的なマーケティング戦略にも役立つ有益な データであると考えられます。 42 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4-4 認知:飲食ブランドを知るきっかけ 1 前述のアンケート結果では、「YouTube」が最も接触時間の長いメディアであることがわかりました。しかし、「飲食店・飲食ブ ランド」を認知してもらうために最適なメディアも「YouTube」なのでしょうか? そこで、COLLINSでは以下の質問を用いたアンケートを実施しました。 「飲食店を知るきっかけになっていると感じるメディア(情報源)があれば教えてください。(複数選択可)」 下記はその結果(2%未満の回答は除外)ですが、注目すべき点は、「Instagram」が飲食店を知る(認知する)きっかけとし て挙げられた割合が7割以上に達していることです。これは、「YouTube」の接触時間が長いにもかかわらず、「認知」におい ては「Instagram」が最も影響力を持っていることを示しています。 43 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4-4 認知:飲食ブランドを知るきっかけ 2 アンケート結果では、「家族・友人からの口コミ」が約半数の回答を集めており、デジタル化が進む現代でも、信頼できる周囲 の人からの推奨が依然として強い影響力を持っていることがわかります。 一方で、「YouTube」は飲食ブランドを知るきっかけとしての影響はそれほど大きくなく、「 TikTok」の方が認知に寄与している 割合が高い結果となりました。 これは、「Instagram」や「TikTok」の視聴目的が「ショート動画で面白い情報や役立つ投稿を探すこと」であるのに対し、 「YouTube」は「特定のYouTubeチャンネルのコンテンツを視聴すること」が目的になりやすいという違いに起因していると考 えられます。 また、「グルメサイト」は顕在顧客向けのメディアである点を考慮すると、「新規顧客」のブランド認知を強化するには、 「Instagram」に注力することが有効であることがわかります。 さらに、左のグラフでは20代と全体を比較しています が、20代においては「Instagram」と「TikTok」の接触率 がさらに高く、「Instagram」は約8割、「TikTok」でも約 半数が飲食店を知るきっかけになっていると回答してい ます。 つまり、20代への認知拡大や今後のブランド認知を考 える際には、「Instagram」や「TikTok」といったSNSの 活用が重要であることが示されています。 44 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4-4 認知:SNSでの認知からの来店 1 前ページのアンケート結果から、飲食店や飲食ブランドを「認知」させるためには、「 Instagram」や「TikTok」などのSNSが効 果的であることがわかりました。しかし、SNSを活用して「認知」を得たとしても、それが実際の来店につながるかどうかは別 の話です。では、SNS上で見た飲食店に興味を持ち、実際に足を運ぶケースはどの程度あるのでしょうか? そこで実施したアンケートの質問は以下の通りです: 「SNSで見かけた飲食店に興味を持ち、実際に行くことはありますか?」(単一回答) 下記の円グラフは、全体および20代の回答結果を示しています。 全体の回答では、「月に1回もない」と答えた人が8割以上に達しました。20代に絞って見ても、7割が「月に1回もない」と回答 しています。この結果からわかることは、「SNSでの認知拡大」が必ずしも「来店促進」には直結しないという点です。 SNSで の認知をどのように来店動機に結びつけるかが、次の課題となります。 45 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4-4 認知:SNSでの認知からの来店 2 SNSの活用が飲食店の「認知拡大」に効果的であることは、前ページまでのデータからも明らかです。しかし一方で、 SNSで 認知されているにもかかわらず、来店には結びついていない という課題も見えてきました。なぜこのようなギャップが生ま れるのでしょうか?以下の4つの要因が考えられます。 1.「認知」の量が十分ではない。 ブランド接触頻度(フリクエンシー)が不足しているため、顧客の記憶に残らず、ブランド想起が起こりにくい可能性がありま す。この場合、SNSの接触頻度を増やすと同時に、他の認知施策を組み合わせる方法が考えられます。 2.「認知」の内容が魅力的ではない。 SNS上で投稿されている商品画像や動画、情報がユーザーの興味を引く内容になっていない可能性があります。この場合、 投稿内容の見直しや、より魅力的なビジュアル制作が必要です。 3.「認知」の後のステップが十分ではない。 ブランドや店舗を認知した後のカスタマージャーニー上の接点(例:食べログページや Googleビジネスプロフィール)が不十 分である可能性があります。例えば、口コミが少ない、店舗写真が古い、最新メニューが掲載されていないなどの問題が考 えられます。 4.「認知」しても来店の機会がない。 認知させているターゲット顧客の属性(商圏や利用シーン)がずれている可能性があります。例えば、平日昼間のみ営業して いる店舗であれば、平日仕事をしているターゲットには来店機会が限られてしまいます。この場合、認知させるターゲット層 の見直しが必要です。 これらの4つの視点から、「認知→来店」へのつながりがどこで止まっているのか を特定することが、マーケティングの最初 の改善ステップになります。次ページでは、こうした課題をふまえ、 具体的な認知拡大施策 の設計方法を解説していきます。 46 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4-4 認知:パブリシティ 1 「認知」ステージでは、ターゲットとなる顧客にブランドや店舗の存在を知ってもらうことが目的です。この段階の施策は大きく 分けて「PR(パブリシティ)」と「広告」に分かれます。まず、「パブリシティ」について解説します。 「PR(Public Relations)」は、ブランドと顧客の良好な関係を築く活動 を指し、商品の販売促進(プロモーション)とは異なる 目的を持ちます。たとえば、店舗のホームページを整えることも広義の PR活動の一つです。 その中でも「パブリシティ」は、テレビや雑誌、Webニュースなど第三者のメディアを通じて情報を伝達させる 手法です。新メ ニューやイベントなどを紹介してもらうことで、ブランドの認知度を高め、来店行動を促します。 ただし、情報が掲載されるかどうかはメディア側の判断に委ねられるため、 無料で拡散される一方で、掲載タイミングや内 容はコントロールしづらい という特徴もあります。とはいえ、テレビなどで取り上げられた場合は、大きな来店効果につながる ケースも珍しくありません。 パブリシティの主な方法としては次の3つがあります: 1. メディアキャラバン :記者や編集部にダイレクトにコンタクトをとり、情報を紹介。 2. プレスリリース配信サービスの活用 (例:PR TIMES):オンラインで多数のメディアに一括配信。 3. ペイド・パブリシティ :広告費を支払い、有料で掲載(記事風広告など)。コントロール性が高いのが特長。 これらを組み合わせることで、広告費を抑えながら効果的にブランド認知を拡大 することが可能です。次ページでは、それ ぞれの活用例をご紹介します。 47 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4-4 認知:パブリシティ 2 ■ メディアキャラバン メディアに直接アプローチし、店舗やブランドを取材・掲載してもらう方法です。 ただし、関係性のない状態からのアプローチはハードルが高く、掲載されないこともがほとんど なため、慎重な戦略が必 要です。 実施ステップ: ・ターゲット顧客がよく見るメディア をリスト化(エリア特化やライフスタイル雑誌など) ・メール・電話・フォームでアプローチ (プレスリリースを添付するのが効果的) アプローチ成功のカギは、「媒体選定」と「伝えたい情報の明確化」です。 ■ プレスリリース配信プラットフォーム 「PR TIMES」などの配信サービスを使えば、数万円程度で多くのメディアに向けた情報発信が可能です。 特徴: ・一括送信で多くのメディア、記者に届く ・一部のニュースサイトが自動転載してくれる ・興味を持った記者から直接取材依頼が来る こともある 費用対効果が高く、飲食店の PR施策として導入しやすい手法 です。 48 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4-4 認知 パブリシティ 3 ■ ペイドパブリシティ お金を払って記事広告などとしてメディアに掲載してもらう方法です。 特徴: ・確実に掲載される ・ターゲット層に狙い撃ちできる ・一方でコストは数十万円と高額 広告予算に余裕がある場合であれば、検討が可能となります。 ■ パブリシティの効果について パブリシティの成果は売上だけでなく、ブランド認知や検索数にも表れます。 ・短期的効果:メディア掲載前後の売上変化を確認 ・長期的効果:Google検索数(指名検索)の推移やSNSフォロワー数の増加 注意点として、「広告換算値(※PR掲載を広告で買ったらいくら相当)」はあくまで目安であり、実際の来店や売上と一致す るとは限りません。 また、近年はテレビや新聞の閲覧時間が減少傾向にあるため、メディアの認知度に関わらず、ターゲットに合ったメディアを 選ぶことが重要となります。 49 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4-4 認知:インフルエンサー 1 飲食業界においても、インフルエンサーを活用したPRは今や主流の手法となっています。特にInstagramやTikTokといっ たSNSでの投稿は、視覚的な魅力や臨場感の伝達に優れており、潜在顧客の認知・来店を促すきっかけになります。 ■ インフルエンサー活用の基本フロー 1. インフルエンサーを店舗に招待、2. 料理や雰囲気を体験してもらう、3. SNSアカウントで投稿してもらう 投稿を見たフォロワーや、その投稿がレコメンドされたユーザーが新たな来店候補になります。これは、前述の「パブリシ ティ」と同様、「第三者の発信」による信頼性のある認知拡大 という特徴を持っています。 ■ 主な依頼方法3つ 方法 コスト 特徴 ① 無料招待型 低 食事代を無料にする代わりに投稿を依頼。報酬なし。費用負担 は最小限。 ② プラットフォーム型 低〜中 月額定額のインフルエンサープラットフォームを活用。安価にブ ランド表示(インプレッション)を稼ぐことが可能。 ③ 有償依頼型 中〜高 影響力の高いインフルエンサーに、報酬+無料招待で依頼。費 用はかかるが、より広範囲にリーチを拡大できる。 ■ 飲食店での活用のポイント 飲食店に特化した発信をしているインフルエンサーは「グルメインフルエンサー」と呼ばれでおりますが、起用前には、インフ ルエンサーのアカウント、フォロワーをチェックすることが重要です。 50 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4-4 認知:インフルエンサー 2 グルメインフルエンサーの起用については、「効果がわかりにくい」という声をよく耳にします。その理由として、インフルエン サー施策は基本的に「認知」を目的としたものであり、来店のきっかけとなる「出口」はネット予約や直接来店となるためで す。その結果、実際に来店した顧客がインフルエンサーの投稿を見て来店したのかどうかを明確に測定するのは難しいとい う課題があります。(もちろん、顕在顧客がハッシュタグ検索を通じてインフルエンサーの投稿にたどり着くケースも考えられ ますが、その割合は限定的です。) そこで、以下の質問を用いたアンケート調査を実施しました。 「インフルエンサーの投稿を見て、実際に紹介されていた飲食店に行ったことがありますか?」 以下は、20代と全体の回答結果です 51 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4-4 認知:インフルエンサー 3 前ページのアンケート結果を見ると、20代も含めて、インフルエンサーの投稿をみて飲食店に月に1回以上行く人は、10%強 ほどしかいないことがわかります。この結果からは、インフルエンサーの投稿だけでは、 20代も含めて来店促進が難しいと言 えると考えます。 では、そもそも「グルメインフルエンサー」をフォロワーして日常的にグルメアカウントを閲覧しているという方はどのくらいいる のでしょうか。そのアンケートが下記です。 日常的によく見るグルメ系インフルエンサーの SNSアカウントはありますか。 下記が、20代と全体の結果です。 52 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4-4 認知:インフルエンサー 4 インフルエンサーを活用したPRは、飲食店にとって魅力的な集客手段の一つですが、その効果はフォロワー数だけで決まり ません。以下は、COLLINSが実施したアンケート結果から見えてきた「インフルエンサー活用の現実的な影響範囲」です。 ■ アンケート結果から読み解く実態 「日常的に5アカウント以上のグルメ系インフルエンサーを見ている」というユーザーは、 20代でも全体でも約10%強でした。 同様に、「インフルエンサーの投稿を見て月1回以上飲食店に行く」と答えた割合もほぼ同数でした。つまり、飲食店への実 来店につながる層は限られており、影響力が「局所的」である ことがわかります。 ■ インフルエンサー選定のチェックポイント 1. フォロワー数だけで選ばない 飲食店では、フォロワーが「商圏に住んでいるかどうか」が重要です。フォロワーが全国に広がっていても、 来店可能性が低 い層が多ければ意味がありません。 2. フォロワーの属性(質)を確認する ターゲットではない属性や外国人中心のフォロワーが多いと、来店にはつながりにくいです。 ターゲット層(例:近隣在住の 20代女性)との一致度 が重要です。 3. アカウントの専門性を見極める 「グルメ」ジャンルが投稿のメインであるかは重要です。ファッションやコスメ系のアカウントでたまにグルメ投稿があっても、 フォロワーが求めている情報とずれている 場合が多く、効果が期待できません。 53 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4-4 認知:SNSの運用1 InstagramやTikTokは、飲食店の「認知」において今や重要メディアとなりました。ただし、効果を出すには戦略的な運用が 不可欠です。SNSでは、ユーザーがフォロー・閲覧しているアカウントの傾向に応じて、関連性の高い投稿が優先表示されま す。つまり、自店舗の投稿が「おすすめ」に載る」には、投稿自体が価値あるコンテンツであり、かつ狙ったターゲットに刺さっ ていることが重要です。(Meta,2021) ■ SNSアルゴリズムに乗るためのポイント ・有益なコンテンツと認識されること: 投稿の保存・コメント・シェアが多いほど、他のユーザーに表示されやすくなります。 ・ターゲット層の絞り込み: 商圏内の若年層やグルメ層など、自店に来店しやすい層に合わせた投稿内容が必要です。 ■ Instagramの投稿形式と役割 1. フィード投稿(ブランドの顔) ・目的:店舗の雰囲気や料理の世界観を伝える ・投稿例:店内写真/看板メニュー/ストーリー性のある投稿 ・ポイント:統一感あるビジュアルで“ホームページ代わり”に 2. リール投稿(認知拡大) リールは今、instagramの中でかなり再生数が伸びており、2024年第4四半期には、Instagramにおけるグローバルでの動 画視聴時間が前年比で2桁パーセント増を記録しました(Meta, 2024) ・目的:フォロワー外への拡散と新規層の獲得 ・ポイント:10〜15秒で完結、最後まで見てもらえるテンポ感、「保存・シェア」したくなる情報性や面白さ 54 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4-4 認知 SNSの運用2 3. ストーリー投稿 ・目的:フォロワー(=見込み顧客)への“今伝えたいこと”を発信 ・投稿例:「本日空席あります」「限定メニューの告知」 ・特徴:24時間で消えるため、速報性ある投稿に向いている ■ SNS効果の測り方(KPI) なかなか効果的に来店に直結させることは難しいですが、以下の指標 (KPI)で成果を可視化できます。 ・フォロワー数:認知度の目安 ・エンゲージメント数 :投稿に対する反応 ・リール再生回数:リーチ力 ・プロフィールアクセス数 :興味関心の強さ ・リンククリック数 :予約ページやメニューへの誘導 「SNSの運用」は、ここでは「認知」段階の施策です。店頭での体験、予約ページの整備、 Googleや食べログの情報更新な ど、次のステップも整っていなければ来店にはつながらないことに注意が必要です。 55 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4-4 認知:認知系広告の配信 1 「広告」と一口に言っても、目的やターゲットによって効果的な媒体や手法は大きく異なります。ここでは飲食店や飲食ブラン ドの認知拡大を目的とした広告戦略について、シンプルに解説します。 ■ 認知広告とは 認知広告の目的は、「今は探していないけど、将来来店するかもしれない人」に、 ブランドや店舗の存在を知ってもらう こと です。テレビCMのように繰り返し目にすることで、必要になったタイミングで思い出してもらえる状態(ブランド想起)をつくる のが理想です。 ■「デジタル広告」が主流に 以前はテレビや新聞などのマス広告が主流でしたが、現在はSNSや検索エンジン上で配信されるターゲティング広告が中 心です。これにより、商圏内の特定ターゲット層に、低予算で効果的に広告を届ける ことが可能になりました。 ■ 飲食店が活用しやすい広告プラットフォーム ・Instagram / Facebook(Meta広告):若年層から60代以上まで幅広くリーチ可能。写真・動画との相性も◎。 ・TikTok広告:若年層向け。動画のテンポやストーリー性がカギだが、配信エリアの絞り込みに課題。 ・Google P-MAX広告: Google Map、Google検索、YouTube、Gmail、アプリに一括で広告を配信できる新型フォーマッ ト。 ・X(旧Twitter)広告:ニュース性のある話題と相性が良いが、来店促進にはやや不向きな場合も。 56 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4-4 認知:認知系広告の配信 2 Instagramで広告が配信される際には、「PR」の表示が付いた投稿として表示されます。 このため、ユーザーがブランドに対して嫌悪感を抱いたり、信頼度が下がるのではないかという懸念が生じることがありま す。 そこで、以下のアンケートを通じて、Instagram広告(PR表示された投稿)に対するユーザーの印象を調査しました。 「Instagramを見ている際に表示される広告( PR表示付きの投稿)をどう感じますか?」 以下のグラフは、20代と全体の回答結果を示しています。 57 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4-4 認知:認知系広告の配信 3 前ページのアンケート結果によれば、20代を含む全体の60%以上が「広告は気にしていない」と回答しています。これは、 SNS広告が広く受け入れられている証拠でもありますが、約4割が「広告にネガティブな印象を持つこともある」と回答してい る点には注意が必要です。特に、ブランドイメージを大切にしたい飲食店 では、広告の出し方次第で逆効果になるリスクも あります。 ■ なぜ広告にネガティブな印象を持たれるのか 多くのケースでは、「興味のない広告」「関係ないエリアの広告」が表示されることが原因です。つまり、 ターゲティングの精度 が低いことが問題といえます。 ■ SNS広告のメリット SNS広告では、プラットフォームが保有する膨大なユーザーデータを活用して、「誰に」「どこで」広告を出すかを細かく設定で きます。 たとえば、下記の配信設定が可能です。 ・配信エリア:店舗から半径1km以内、市区町村単位などに絞れる ・属性指定:年齢、性別、興味関心、職業、行動履歴まで絞れる このように、「来店の可能性が高い層だけに広告を配信できる」のが、 SNS広告の最大の魅力です。これにより、ムダな広告 費を抑え、費用対効果( ROI)を最大化できます。 58 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4-4 認知:口コミ 「飲食店を知るきっかけ」として、全体でInstagramに次いで2位となっているのが「家族や友人からの口コミ」です。 このように、身近な人からの口コミや推奨は昔から重要視されており、現在(令和 7年)でも飲食店を知るきっかけとして無 視できない影響力 を持っています。ただし、口コミには「良い評価」も「悪い評価」も含まれる点に注意が必要です。後ほど解 説する「店内での体験」がその口コミの内容に大きく影響を与えるため、来 店客が店舗でどのような体験をするか によって、 その後の口コミがポジティブになるか、ネガティブになるかが決まります。 つまり、どれだけ広告で認知を拡大し、来店に繋げたとしても、店舗での体験が不満足なものであれば、その後の口コミで悪 い評価が広まり、長期的な業績向上には繋がらない可能性が高まります。逆に言えば、来店した顧客に良質な体験を提供 できれば、その顧客の周囲にいる潜在顧客への認知拡大にも繋がり、口コミの相乗効果を期待できる ということです。 59 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4.5 検索 「認知」のあとのフェーズでは、飲食店を探しているお客様が「検索」というアクションを取ります。ここでは、その検索行動を 2 つのタイプに分けて説明します。 ① 店名が決まっていない「探索型ユーザー」の検索行動 まだどの店に行くか決まっていないお客様は、以下のような行動をとります。 ・Googleなどでの検索:「恵比寿 焼肉」などのビッグワード ・SNS検索:「#恵比寿焼肉」などのハッシュタグで雰囲気をチェック ・地図アプリ検索:Google Mapsなどで近くのお店を確認 ・グルメサイト検索 :食べログなどでのグルメサイトにアクセスして検索 上記、検索された段階で、顧客にお店が表示されなければ、選ばれることはありません。つまり、検索表示の対策 (SEO・MEO・タグ設定・グルメ媒体掲載など)が重要になります。 ② 店名を知っている「認知済みユーザー」のリサーチ行動 一度お店を知ったお客様がさらに詳しく調べる段階で、「店名での Google検索」、「SNSやHPの確認」、「グルメサイトや Googleビジネスプロフィールでの口コミチェック」などのアクションが考えられます。こちらは次の「興味・関心」で詳しく解説し ます。 この「検索」のステーキで考えるべきことは、「どの検索メディアで選ばれるべきか?」 ということです。 ここからは「まだお店が決まっていないお客様」がどのメディアを使い、どんなキーワードで探しているか を把握し、それに 対してどう対策すべきかを考えていきます。 60 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4.5 検索:使用されるメディア 1 まず、カジュアルなシーンで飲食店を探す際に、ユーザーがどのようなメディアを利用しているのかを調査しました。ここで言 う「カジュアルな利用」とは、以下のようなシチュエーションを指しています。 「家族や友人と気軽に外食したいとき」「軽くおしゃべりを楽しみたいとき」「友人 2人でサクッと飲みに行きたいとき」「仲間数人 で食事に行きたいとき」などです。 COLLINSでは、このシチュエーションを前提に、以下の質問をアンケートで実施しました。 「友人や家族と飲食店に行く際(カジュアルなシーン)に、お店を探すために利用するメディア(手段)を選んでください。 (複数選択可)」 左図のグラフは、アンケート結果 を示したものです。(2%未満の 回答は除外) 縦軸: 回答者の割合(パーセン テージ) 青色: 20代の回答割合 赤色: 全世代の回答割合 61 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4.5 検索:使用されるメディア 2 前ページのグラフから、カジュアルな利用シーンで飲食店を探す際のメディア利用 には年代ごとの明確な違い が見られま した。ここではそのポイントを整理します。 1. 世代別のメディア利用の違い ・全年代平均では「食べログ」が最も使用されています。 ・しかし、20代に限ると「Instagram」が最多利用となり、TikTokの利用率も上昇。 ・この結果から、若年層では「グルメ媒体離れ」が進んでいる ことが読み取れます。 2. グルメサイトの現状 ・「食べログ」以外のグルメサイトは全体で利用率 10%未満。(グルメ媒体の電話帳化 ) ・特に20代では「食べログ」も使用頻度が低下しており、代わりにSNSがリサーチ手段の主流に。 3. 検索エンジンの使われ方 ・Google検索とGoogle Map(ビジネスプロフィール)の利用率はどの年代でも約 50% (年齢差なし)。 ・Yahooの利用は減少傾向で、20代ではほとんど利用されていません。 ■ まとめ:現時点で重視すべきメディア カジュアルな利用シーンで自店舗・自ブランドをお客様に掲出させるためには、「食べログ」、「 Instagram」、「Google Map」 「Google検索」が 重要な4大メディアであり、20代の若年層に限れば、「TikTok」も重要なメディアであるといえます。 62 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4.5 検索:使用されるメディア 3 次に、特別な利用シーンで飲食店を探す際に、ユーザーがどのようなメディアを利用しているのかを調査しました。ここでいう 「特別な利用」とは、以下のようなシチュエーションを指します: 「結婚記念日や誕生日などの特別な日の食事」、「大切な人とのデート」、「取引先との会食や接待など」 COLLINSでは、これらのシーンを想定した上で、以下の質問をアンケートで実施しました。 「記念日やデートなどの特別な機会で、お店を探す際に利用するメディア(手段)を選んでください。(複数選択可)」 左図のグラフは、アンケート結果 を示したものです。(4%未満の回 答は除外) 縦軸: 回答者の割合(パーセン テージ) 青色: 20代の回答割合 赤色: 全世代の回答割合 63 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4.5 検索:使用されるメディア 4 特別な外食シーン(記念日、接待など)で飲食店を探す際、20代を含む全年代で最も利用されているメディアは「Instagram」 であることが、前ページのアンケート結果から明らかになりました。ただし、これは Instagramの利用が急増したというよりも、 「食べログ」の利用頻度が下がった ことによって相対的にInstagramが上位になった構造です。 ■ Google検索とGoogle Mapの比較 ・Google検索の利用率はカジュアル・特別シーンともに安定 しています。 一方、Google Map(=ビジネスプロフィール)の利用は特別なシーンでは半減 しており、立地情報よりも店舗の世界観・ 信頼感を重視する傾向が見て取れます。 ■ Instagramの重要性が特別な利用シーンでも変わらず ・Instagramの利用率は特に20代で約80%。カジュアルなシーン同様、店舗の「雰囲気」「料理のビジュアル」「投稿のトン マナ」が判断材料になっている。 ・TikTokは特別シーンでは利用率が減少。 ■ 特別なシーンにおけるグルメ媒体の使われ方 以下のグルメサイトが、特別なシーンでは利用率が増加しております。 ・一休.comレストラン:高価格帯・コース重視の利用シーンでの需要増 ・オズモール:女性利用が多く、20〜30代の記念日需要に強い 64 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4.5 検索:Google検索 前述のアンケート結果から、カジュアル利用・特別な利用シーンを問わず、飲食店探しで多くのユーザーが使う主要メディ アは以下の4つであることがわかりました。 グルメ媒体(食べログ、一休など)、SNS(Instagram)、Google検索、Google Map(ビジネスプロフィール) その中でも今回は、「Google検索」の実際の影響と、飲食店がとるべき対策について詳しく解説します。 ■ Google検索で単店が上位を取ることが難しい理由 多くの業種では、自社サイトのSEOや検索連動型広告(SEM)を使って上位表示を狙いますが、飲食店は単店規模での上 位表示が困難です。その理由は以下の通りです: ・グルメ媒体のSEOが圧倒的に強い →「エリア × ジャンル(例:中目黒 × 焼肉)」などのキーワードは、食べログやホットペッパーなどのグルメ媒体がリスティング 広告などですでに対策済み。 ・圧倒的なアクセス数差 → 大手媒体は、日々の大量アクセスによりGoogleのアルゴリズム上で有利となり、自然検索の上位に表示されやすい。 ■ 飲食店が取るべき「現実的な」検索対策 こうした背景を踏まえると、飲食店単体ではGoogle検索そのものより、以下 2点にリソースを集中すべき だと考えます。 ・グルメ媒体内での見せ方強化 ・Googleビジネスプロフィール( Map検索)の最適化 65 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4.5 検索:グルメ媒体 1 ここでは、数あるグルメ媒体の中から、自店舗がどの媒体に有料掲載すべき か、またどう見せるべきか について解説しま す。 ■ グルメ媒体の利用実態(アンケートから) アンケート結果によると、「食べログ」が圧倒的に使われている 一方で、他の媒体の利用率は全体的に低い 傾向がありま す。特別なシーンでは「一休」や「オズモール」などの利用がやや増えるものの、基本的には「飲食店探し=食べログ」が主流 です。 それでも多くの飲食店が複数のグルメ媒体に掲載している理由は以下の 2点だと考えます。 ・Google検索上で強いSEO効果を持っているため、検索で露出されやすい。 ・ネット予約の導線を確保しているため、コンバージョンに繋がりやすい。 ■ グルメ媒体活用で重要な 3つのチェックポイント ① Google検索で上位に出てくる媒体を見極める ユーザーが検索するであろう「エリア× ジャンル」のキーワードでGoogle検索をし、どの媒体が上位に出てくるかを確認しま す。 例:「恵比寿 焼肉 デート」「新宿 和食 接待」など。 各キーワードごとにグルメ媒体の順位をリスト化し、自店舗が掲載している媒体が上位に来ていない場合は、有料掲載を含 めた掲載媒体の見直しが必要です。 66 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4.5 検索:グルメ媒体 2 ② 媒体内での検索表示画面での「見え方」を確認する 媒体内での順位も重要ですが、スマホでは簡単にスクロールできるため、それ以上に重要なのはサムネイル画像や店舗の キャッチコピーです。 ・スマホ表示で一覧画面をチェック し、自店舗が魅力的に見えているか確認。 ・順位が低くても、目を引くサムネイル (画像)と的確な訴求文で店舗ページへのアクセス率は変わります。 ③ 店舗ページの中身を磨く 数ある飲食店の中から自店舗ページにアクセスされた後の、店舗ページが魅力的であるかどうかが重要です。 ・トップ画像が鮮明かつ料理や空間の魅力を伝えているか。 ・キャッチコピー が利用シーンやベネフィットを明確に伝えているか。 ・古い情報の放置がないか。(定期的な更新が必要) →ユーザーがページにアクセスして 10秒で離脱されないかどうか 、がポイントです。 ■ スマホでの検証は必須 飲食店を探す際、ほとんどのユーザーはPCではなくスマホを使用しています。したがって、検証作業も必ずスマホで行い、ス マホ表示に最適化されているかを確認しましょう。 67 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4.5 検索:Google ビジネスプロフィール 1 飲食店を「Google検索」で探すとき、グルメ媒体と並んで重要なのが「Googleビジネスプロフィール(GBP)」です。たとえば 「○○駅 焼肉」や「近くのカフェ」などの検索で、Googleマップと連動した店舗情報が表示されます。これがGoogleビジネスプ ロフィールです。アンケート結果でも、 ・カジュアルな利用シーンでは、全年代の約半数がGoogle Mapを利用(アンケート結果) ・特別な利用シーンでも、約20%がGoogle Mapを活用 と重要で、ユーザーの目に入りやすく、来店前の判断材料として重要 であるといえます。 ■ 検索順位を上げるための Google Map対策 Googleが推奨する5つの基本施策 (ユーザー目線での誠実な情報発信) ・魅力あるトップ画像 :料理や空間の世界観が伝わる写真を ・最新情報の更新 :営業時間・メニュー・イベントを常に最新に ・口コミへの返信 :1件1件、丁寧な言葉で誠実に対応 ・メニューの詳細化 :写真・価格・説明で検索者の判断を後押し ・イベント投稿 :季節や限定情報で再訪意欲を喚起 これらはGoogle自身が推奨する施策であり、持続的な信頼構築につながります。 68 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4.5 検索:Google ビジネスプロフィール 2 MEO 前ページでみたように、飲食店をはじめ、美容院や宿泊施設、医療機関など、店舗ビジネスにおいて「 MEO(Map Engine Optimization)」の重要性が増しています。MEOとは、Googleビジネスプロフィール内の情報やキーワードを最適化し、 Google Mapや検索結果での表示順位を上げる施策です。これは、サイト内にキーワードを埋め込み、更新頻度を高めて検 索順位を上げるSEOに似た手法です。 ■ MEOの注意点 ・MEOで本当に売上が上がっているのか、の効果検証の重要性 MEOを専門にしている業者などが「順位が上がります」「アクセス数が増えます」など、 Google ビジネスプロフィールの「イン サイト」の数値向上が「効果」であると謳っているのをみかけますが、アクセス数と売上はイコールではありません。アクセス 数には、bot(ロボットでの自動アクセス)や比較ユーザーによるアクセスが含まれることもあります。ルート検索数や検索表示 数が増えても、「来店」には直結しせずに、実際に「契約して数値は増えたけど、売上は変わらなかった」という声をかなり聞 きます。 ・「順位を上げる」だけの施策に頼ると危険 Googleは本来、「ユーザーにとって有益な情報を上位に出す」ことを目的としています。テクニカルな対策(不自然なキー ワード埋め込みや大量の機械的投稿)は、アルゴリズム変更で効果が全くなくなったり、アカウント自体の評価が下がってし まうリスクがあると考えます。 まずは、前ページでお伝えした、Googleが推奨する5つの基本施策 (ユーザー目線での誠実な情報発信)をしっかりと行うこ とが重要であると考えます。 69 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4.5 検索:SNS1 アンケート結果から、飲食店探しにおいてInstagramの影響力は非常に高く 、特に20代ではカジュアル利用で約7割、特別 な利用では8割がInstagramを活用していることがわかりました。また、TikTokの活用も拡大傾向にあり、 20代では約3割 が利用しているというデータもあります。 SNSが飲食店探しで重視される理由 としては、ビジュアル重視の意思決定 ができることで、写真や動画によって「料理の美 味しさ」や「店内の雰囲気」が直感的に伝わるため、テキスト中心の X(旧Twitter)やLINEよりも、InstagramやTikTokが好ま れる傾向があります。 ■ Instagramのアルゴリズムの基本構造 1. 投稿が表示される仕組み Google検索のようにリスト化されるのではなく、画面全体に並ぶ投稿の中から、視覚的に選ばれる のがInstagram。サム ネイルの第一印象が重要 となります。 2. ハッシュタグ( #)の最適化 「#渋谷ランチ」「#焼肉デート」など、ユーザーの検索ニーズに合わせたタグを設置 することで、発見される可能性が高まり ます。 ターゲット層が実際に検索しそうなワードを選んで投稿することが重要です。 3. 投稿が「上位に表示される」には? ・ユーザーにとって有益な投稿が優先表示される ・エンゲージメント(反応)の高い投稿が評価されやすい → エンゲージメントを高める 3つの要素 1. コメント・いいね・保存数 2. リールなら視聴完了率と反応率 3. 投稿頻度(アクティブな運用が優先表示に繋がる) 70 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4.5 検索:まとめ ここまでの「検索」では、飲食店を実際に探している顕在顧客 に対するマーケティング手法と、活用すべきメディアについて 解説してきました。 「認知」との違いは「目的」と「ターゲット」 です。「認知」では、潜在顧客が対象で、まだ「食べに行く」意思がない段階で、ブラ ンド名や世界観を記憶に残すことが目的であるのに対して、「検索」では、今まさにお店を探している顕在顧客が対象です。 Google検索、グルメ媒体、SNS、マップなどを活用し、刈り取り=即集客につなげるフェーズです。 ■ 短期成果を狙うなら「検索フェーズ」が重要 「検索」段階にいる顧客は、すぐにでも飲食店を決めたいと考えているため、適切なタイミングで表示され、選ばれることがで きれば即来店や予約につながる可能性が高い です。ただし、競合も同じ顧客を狙っているため、1回逃すと機会損失は大 きいという側面もあります。 ■ 認知フェーズとの両輪運用がカギ 「顕在顧客」へのアプローチでは、時間的な制約があるため、ブランドコンセプトをしっかり伝えるのが難しい ことが課題で す。一方、「潜在顧客」へのアプローチでは、余裕を持ってブランドメッセージを発信できるため、認知を深めやすい という 強みがあります。 上記、「顕在顧客」と「潜在顧客」のどちらへのアプローチも重要です。 短期的には「顕在顧客」へのアプローチで直接的な 集客を図り、売上確保を優先。長期的には「潜在顧客」への認知施策を継続し、ブランドの存在感を高める。 このように、施策ごとにターゲット層を明確にし、短期・長期の両面で利益貢献を最大化することが重要です。 71 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4.6 興味・関心:ブランド名検索 「検索」では、まだ店舗が決まっていない状態 で飲食店を探すユーザーが利用するメディアと、それに応じたマーケティング の打ち手について解説しました。「興味・関心」では、「認知」や「検索」の施策によって、自店舗・自ブランドに 興味を持った ユーザーが次にどのような行動を取るかを見ていきます。ここが、いわば「選ばれるかどうかの分岐点」となるステージです。 ■ 「興味・関心」の重要性 このステージでユーザーが確認するのは、自社が発信している直接管理可能なメディア です。 たとえば、公式ホームページ、Instagramアカウント、Googleビジネスプロフィール、メニューサイトや予約ページなどです。こ うした「自社メディア」においては、コンテンツの魅力や情報の正確性も重要となります。 この段階のユーザーはすでに「気になっている」状態、つまり、あと一歩で予約・来店に至る 寸前です。しかし、ここで「魅力 が伝わらない」「情報が古い」といった理由で離脱されてしまうと、それまでの 認知・検索の努力が無駄 になってしまいます。 次ページからは、「興味・関心」のユーザーが実際にどのメディアを使って情報を集めているのか を、アンケートデータをもと に分析し、具体的な対策を解説していきます。 72 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4.6 興味・関心:調べられるメディア 1 「興味・関心」を持った飲食店や飲食ブランドの情報を調べる際に、ユーザーが利用するメディアを把握するため、 COLLINS は以下の質問をアンケートで行いました。 「興味を持った飲食店・飲食ブランドを調べる際に利用する手段を教えてください。(単一選択)」 左図はそのアンケート結果を示 しています。(2%未満の回答は 除外) 縦軸: 回答者の割合(パーセン テージ) 青色: 20代の回答割合 赤色: 全世代の回答割合 73 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4.6 興味・関心:ユーザーが調べる 4大メディア 前ページのアンケートで「選択肢を1つに絞った理由」は、ユーザーが最も信用している情報源を明確に把握するためでし た。その結果、「全年代」で最も利用されている情報源は「ホームページ」であることが分かりました。 ■「ホームページ」の重要性 「検索」では、グルメ媒体のSEOが強力なため、自社ホームページが上位に表示されにくいと解説しましたが、「興味・関心」 では「ブランド名」や「店舗名」で検索される指名検索が中心 となります。そのため、「ホームページ」は検索結果でも上位に 表示されることが多く、ユーザーが最初に訪れる場所として重要な役割を果たします。したがって、 店舗・ブランドのホーム ページを持つことの必要性は非常に高い と言えます。 ■ Instagramの重要性(特に20代) 20代で最も利用されているのは、ここでも「Instagram」です。しかも、全年代で見てもホームページに次いで 2位という結果 でした。自店舗・自ブランドのInstagramアカウントを整備 することは必須となります。 ■ Googleビジネスプロフィールと食べログの役割 「Google Map」や「Googleでの店舗検索」で表示されるGoogleビジネスプロフィール( GBP)と、食べログも、依然として高 い利用率を誇っています。全年代では、食べログの利用がやや多く、20代では、食べログの利用率が減少し、Google Map(GBP)が優位となっております。 この傾向は「検索」の検索時と同様ですが、どちらも自店舗の情報を適切に整備しておく必要があるメディアといえます。 また、「知人に聞く」や「TikTok」の利用も一定数見られますが、現段階では優先度はホームページ、 Instagram、Googleビジ ネスプロフィール、食べログの4つが高いと判断できます。 74 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4.6 興味・関心:ホームページ アンケート結果でも明らかになったように、ユーザーが飲食店やブランドに「興味・関心」を持った後、 最も信頼して調べるメ ディアはホームページ です。 ■ ホームページの強み ・信頼性の高さ:ホームページは自社ドメインを持つメディアであり、ユーザーからの信頼度が他メディアよりも高い傾向があ ります。 ・自由な情報設計が可能 :食べログやInstagramは表示形式が固定されていますが、ホームページは自由にデザインでき るため、ブランドコンセプトを効果的に伝えることができるのが大きな強みです。伝えたい情報を自由に配置し、視覚的にも魅 力的なページ構成が可能です。 ■ コストの壁とその対策 多くの飲食店がホームページを持たない理由の一つとして、制作コストの高さが挙げられます。プロに依頼した場合、数十万 円の費用がかかることが一般的です。しかし、アンケート結果からもわかるように、ホームページがないことで離脱してしまう ユーザーが多いことを考えると、長期的には費用対効果が見込めます。 ■ 低コストでホームページを持つ方法 現在では、無料または格安でホームページを作成できるサービスが多数存在しています。 Wix、Squarespace、STUDIO、 WordPressなどは、初期費用を抑えて簡単に構築できるプラットフォームです。これらのサービスを利用してでも、まずは ホームページを持つことが重要です。 ホームページは、自由度の高い情報設計と信頼性の面で圧倒的な強みを持つメディアです。制作コストがネックになる場合 でも、無料または低コストのツールを活用して運用を開始し、定期的な情報更新とデータ分析を行うことが重要です。 75 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4.6 興味・関心: instagram 20代を中心とした若年層において、Instagramは影響力のある情報源 の一つです。この章では、ユーザーが「興味・関心」 を持った後にInstagramアカウントを訪れた際、どのように印象づけ、来店につなげるか を中心に解説します。 ■ Instagramアカウントの構築ポイント 「認知」ではSNSの投稿頻度やアルゴリズム対策を重視しましたが、「興味・関心」ではフィードとリールが重要です。もちろ ん、プロフィール欄に正確な店舗基本情報やブランドコンセプトが記載されていることは前提ですが、 フィード・リールでの 「全体の世界観」の見せ方 が大きな影響を与えます。 ■ よくある悪いアカウント例 ・メニュー表の画像をそのまま投稿 : 情報としては有用だが、視覚的魅力が乏しい ・画質の悪い/明度が低い店内・料理画像 :「美味しくなさそう」「雰囲気が悪い」と感じられやすい ・統一感のない投稿 :投稿内容やテイストに統一感がないと、ブランドの印象が曖昧になる ・綺麗な料理写真ばかり :ブランディングとしてはありだが、実際の「体験」が伝わらず、店舗に足を運ぶ動機につながりづら い ■ Instagramをオウンドメディアとして機能させるには Instagramは、ホームページと同じく、ブランドの世界観を伝える重要なオウンドメディアです。ユーザーが訪れた際に、「店舗 の空気感」「利用シーン」「メニューの世界観」「ブランドの価値観」が視覚的に伝わるアカウント設計が求められます。ただの 写真投稿ではなく、「どんなお客様に、どんな体験を届けたいか」という ブランドの意図を視覚で伝える 設計が重要となりま す。 76 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4.6 興味・関心:食べログ 次に、「食べログ」について解説します。「検索」では、検索結果における食べログの役割について解説しましたが、「興味・関 心」では、興味を持ったユーザーが実際に店舗ページを訪問 し、来店や予約を検討する段階となります。このとき、店舗 ページの内容が充実しているかどうか が、離脱を防ぎ、来店に繋げるためのカギを握ります。 ■ 食べログで強化すべき 6つの項目(有料プランの場合) 1. トップ画像(最大 10枚):店内・料理・看板・ドリンクなど、「視覚的に世界観が伝わる画像」を厳選し、画質や構図にもこだ わりましょう。 2. PR文(45文字/200文字):45文字PR文(タイトル)は一覧画面に表示されるため、「雰囲気」や「体験価値」が一瞬で伝 わるキャッチコピーを意識。200文字PR文(内容)は、ブランドのストーリーや特徴を簡潔に伝える場です。 3. こだわりポイント( 4項目): 食材、接客、内装、メニューなど、他店と差別化できる軸を明確に。 4. コース情報: コースがある店舗は、写真付きで内容・価格を整理。期間限定や記念日向けの訴求も効果的。 5. 基本情報(アクセス・営業時間など) : 情報の誤記や更新漏れがあると、機会損失に直結します。 6. スマホ最適化の確認 : 実際の閲覧はスマートフォン。スマホ表示で写真・文字の見え方を必ず確認・調整。 食べログは単なる「予約導線」ではなく、ユーザーの意思決定を後押しする情報のハブ となっており、店舗の世界観や信頼 性を判断する場となります。このように、食べログページは「ホームページ」のような役割を果たすため、たとえ予約を受け付 けていない店舗であっても、有料プランで食べログページを整備し、店舗の魅力を最大限に伝えることは、ブランディング戦 略としても効果的であると思われます。 77 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4.6 興味・関心: Google ビジネスプロフィール 「検索」でも解説した通り、Googleビジネスプロフィール(GBP)は、飲食店のマーケティングにおいて非常に重要なメディア のひとつです。「興味・関心」の段階でも、ユーザーはGoogleで店舗名を検索した際に表示されるGBPを通じて、最終的な来 店判断を行っています。アンケート結果でも、Googleビジネスプロフィールの閲覧率は高く、口コミや投稿写真を確認し、店 舗の雰囲気を事前に掴もうしていると思われます。 次の章である「比較・検討」のフェーズでは「口コミ」や「点数」が重視されますが、「興味・関心」では、 Googleビジネスプロ フィール上で店舗から発信される情報の整備が重要です。 ■ Googleビジネスプロフィールの重要編集項目 GBPの店舗オーナー権限を取得することで、以下の情報が編集・更新可能になります。 ・写真・動画の投稿 ・メニューや料金の編集 ・営業時間・定休日・住所など基本情報の更新 ・イベントや限定メニューの告知 ・予約ページやSNS等のリンク設置 ・口コミへの返信(これが特に重要です) ※GBPは、ユーザーが投稿した写真や情報も表示されるため、自店舗からの発信量を増やすことで、望ましい情報が目立 ちやすくなります。 もし多店舗展開をしている場合は、「カンリー」などのGBP一括管理ツールの導入が効果的です。情報更新の手間を減ら し、各店舗ごとに内容のばらつきが出ないよう整えることができます。 78 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4.7 比較・検討:口コミと点数 1 「興味・関心」では、ユーザーが興味・関心を持った後に自店舗の情報を調べる メディアと運用ポイントを解説しました。理想 的には、ユーザーが自店舗のホームページやSNSを閲覧した段階で即座に来店を決定してもらうことですが、実際には多く のユーザーが他店舗との「比較・検討」 のフェーズに入ります。 ■ 比較・検討フェーズに入りやすいシチュエーション ユーザーが慎重にお店を選ぶケースには次のようなものがあります。「 失敗できないシーン (例:記念日、誕生日、接待、 デート)」、「高価格帯の店舗」、「旅行中など“一度きりの利用”が想定される場面」、なのです。このような状況では、ユー ザーは複数の候補を並べて検討し、慎重に意思決定を行います。 ■ ユーザーが比較時に重視する 4つの視点 1. 口コミと点数( Googleビジネスプロフィール・食べログ) :2店舗の「信頼性」や「満足度」を判断する主要な材料。直前の 予約や来店判断で最も影響を与えやすいポイントです。 2. 価格とメニュー内容 :記念日や特別利用では、価格と提供価値のバランスが特に重視されます。 3. 店舗の雰囲気や雰囲気の一貫性 :Instagramなどのビジュアル情報や、口コミ写真から判断されることが多く、来店後の ギャップを避けるために重要です。 4. 知人の推薦や他メディアの評価 :他者の信頼度が、最終判断の“後押し”になります。特に高単価帯の意思決定で顕著で す。 COLLINSは、Googleビジネスプロフィールと食べログの口コミ・点数の影響力を把握するため、以下の 2つの質問をアン ケートで行いました。 「食べログの点数と口コミを参考にしますか?」「 Googleの点数と口コミを参考にしますか?」( 4択から1つを選択) 79 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4.7 比較・検討:口コミと点数 2 ■食べログ ■Google 80 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4.7 比較・検討:口コミと点数 3 前ページのグラフは、Googleと食べログの「点数」と「口コミ」がどの程度参考にされているかを、全年代および 20代に分け て調査したアンケート結果です。 ■ アンケート結果の要点 1. 全世代の傾向 ・Googleと食べログの「点数」「口コミ」の参考率は共に約 50%。 ・20代では、Googleの「点数」と「口コミ」を参考にする割合が半数を超え、食べログでも半数近くが参考にしていると回 答しています。 ・若年層ほど「点数」と「口コミ」などレビューを参考にする傾向が強い。 2. 「点数」と「口コミ」のどちらを重視するか ・両メディアとも「点数」よりも「口コミの内容」を重視する傾向。 ・特にGoogleでは、「点数」よりも「口コミ」の内容を重視している傾向 。 ・表面的なスコアよりも、リアルな顧客の声に信頼が集まっていることがわかります。 3. 参考にしない層も一定数存在 ・「点数・口コミどちらも参考にしない」層は全体の約20%。 ・しかし、残りの8割は何らかの評価指標を参考にしている ため、対応の優先度は依然として高い。 81 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4.7 比較・検討:口コミと点数 4 ■ 対応策:Google編 【点数への対策】 :Googleの点数は、ユーザー評価の平均評価で算出されるため、対策は来店時の体験品質向上 が最も 効果的となります。例えば、サービスの質を向上させる、接客態度を見直す、店舗内の清潔感を保つなどが具体策として挙 げられます。 【口コミへの対策】 :悪い口コミが投稿された場合も、真摯な対応と改善の意思を示す 返信が重要です。ネガティブな口コミ でも迅速に対応することで、他の閲覧者への印象を良くする効果があります。丁寧な返信は、口コミの書き換えや再評価に もつながる可能性があります。 ■ 対応策:食べログ編 【点数への対策】 :食べログの点数は、独自のアルゴリズム (投稿者の影響力、投稿の質など)によって算出されます。単純 な平均点ではないため、対策が難しいのが実情です。 【口コミへの対策】 :食べログの口コミ投稿は、Googleよりも執筆のハードルが高い傾向にありますが、近年は文字数制限 が緩和され、内容の充実が図られています。ここでも、良質な体験を提供することで口コミの投稿数を増やすことが重要で す。 【規約違反に注意】 :高評価を依頼してブロガーやインフルエンサーを招くと、ステマ規制や食べログ規約違反 にあたる可 能性があります。 “点数を操作する”という発想ではなく、 “本質的な体験価値の向上 ”が正攻法です。 82 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4.8 予約・来店:予約 1 「比較・検討」フェーズで来店する店舗が決まったユーザーは、来店前に「お店を予約」するというアクションを行います。ただ し、すべての飲食店で予約が必要なわけではなく、カジュアルな利用や 1人での来店、予約を受け付けていないカフェ業態な どでは、予約の必要性は低いです。一方、記念日や特別な日の利用、高単価のレストランでは、予約をしなければ入店でき ないケースも多いため、予約率は高くなります。 ■「予約」の重要性と課題 「予約」は、カスタマージャーニーの中でも極めて重要なポイント です。ユーザーが「来店する」と決めたにもかかわらず、予 約手段が整備されていないことで他店に流れてしまい、機会損失になるリスクがあります。特に、予約ができないことが理由 で他店舗に乗り換えられるケースでは、せっかくの集客機会を逃してしまうことになります。つまり「予約のしやすさ」は、来店 を決定づける重要な要因であるといえます。 ■ 予約に関するアンケート調査 COLLINSは、「予約行動」に関して以下の質問をアンケートで実施しました。 「飲食店の予約について教えてください。( 1つ選択)」 選択肢1:「ネットで予約したい」 選択肢2:「電話で予約したい」 選択肢3:「予約はしない」 次ページの円グラフでは、全年代と20代の回答割合を示しています。 83 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4.8 予約・来店:予約 2 アンケート結果によると、全年代および20代の約8割のユーザーが「ネットで予約したい」と回答 しています。これは、飲食 店以外の業種、たとえばホテルや美容室などでもネット予約が当たり前 になってきたことが背景にあると考えられます。加え て、LINE電話などの無料通信ツールの普及により、「電話をかける」という行為自体に対する心理的なハードル を感じる人 が増えている点も見逃せません。特に若年層では、「できるだけ電話を避けたい」という傾向があり、ネット予約ができない店 舗に対しては離脱が起こりやすくなります。 この結果から、ユーザーの多くがネット予約を希望している にもかかわらず、その導線が整備されていない場合、予約の機 会を取りこぼすリスクが高まるといえます。特に、記念日や接待などで利用される高単価のレストランでは、「ネットで予約で きないから別の店にする」という意思決定が実際に多く見られます。このような背景を踏まえると、店舗側は 「ネットで簡単に 予約できる仕組み」を整える ことが、今や基本インフラの一部と言えるでしょう。 84 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4.8 予約・来店:予約 3 COLLINSは、ユーザーが飲食店をネット予約する際に利用するメディアについて、以下の質問をアンケートで行いました。 「飲食店をネット予約する際に使用するメディアを選んでください。(複数選択可)」 左図にその結果を示していま す。(10%未満の回答は除外) 縦軸: 回答者の割合(パーセン テージ) 青色: 20代の選択割合 赤色: 全世代の選択割合 85 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4.8 予約・来店:予約 4 前ページのアンケート結果では、「認知」「検索」「興味・関心」のフェーズで使用されるメディアとは異なる、「予約」に特化した 利用傾向が明らかになりました。 ■ ネット予約の「出口」として利用されるメディア 全年代・20代ともに、最も多く利用されている予約手段は「食べログ」でした。さらに、「ホットペッパー」や「ぐるなび」などのグ ルメ媒体も、予約導線の「出口」 として高いシェアを占めています。「食べログ」の利用率が高い理由としては、 予約時にポイ ントが貯まる特典や、同行者に店舗リンクを送る際の利便性 が挙げられます。また、20代ではホットペッパーの利用率が 40%近くに達しており、若年層においても、グルメ媒体は予約するメディアとしての確率されていることがわかります。 ■ SNSからの予約導線の課題 Instagramは「認知」や「興味・関心」フェーズで最も活用されているにもかかわらず、 予約のフェーズでは大幅に使用率が 下がるという結果が出ています。Instagramのプロフィールに「予約リンク」を設置することは可能ですが、今回のアンケート 結果からは、SNSで認知した後、ユーザーは予約時に「グルメ媒体」へ移行 する傾向が強いことがわかります。この結果か ら、SNSを「認知導線」として最大限活用しながら、予約は食べログやホットペッパーなどの利便性の高いプラットフォーム に任せる設計が、現時点では現実的なアプローチと言えるでしょう。 ■ ホームページとGoogleビジネスプロフィールの役割 「店舗のウェブサイト(ホームページ)」も、食べログに次ぐ予約手段として利用されていることが確認できました。また、 「Google Map(Googleビジネスプロフィール)」も予約の出口として25%の利用率があり、予約リンクボタン を設置すること で、Google上の検索結果から直接予約に繋げる導線が強化 されます。 86 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4.8 予約・来店:予約台帳 1 ここでは、自店舗の予約台帳ツール(自社予約ページ)の活用方法とメリットについて解説します。 ■ 自社予約ページを活用するメリット 1. 送客手数料の削減:グルメ媒体(例:食べログ、ホットペッパー)を経由した予約では、 1件あたり数百〜数千円の送客手 数料が発生します。これに対して、自社予約ページを利用すれば送客手数料が一切かからない ため、特にリピーターや常 連客の予約を誘導することで、コストの削減 が期待できます。 2. 指名検索からの予約が増える :ホームページやGoogleビジネスプロフィールに自社予約ページのリンク を設置すること で、「店名」や「ブランド名」で検索してくれたユーザーが、直接予約に進みやすくなります。このようなブランディングされた導 線設計は、無駄な中間コストを省きつつ、顧客との信頼関係を深める ことにもつながります。 3. 顧客データを資産にできる :グルメ媒体経由の予約データは媒体側に蓄積されるため、自店舗では自由に活用できない ケースが多く見られます。一方で、自社予約ページ経由で取得した顧客データは、 CSVなどで出力可能なため、「メールマガ ジン配信」、「来店履歴を活用したCRM(顧客管理)施策」、「誕生日特典や再来店クーポンの配信」などに活用も可能です。 ※CRM施策については、後述の章で詳しく解説します。 ここまで、ネット予約の動線を確保することの重要性 と、その中での「予約台帳」の活用 について解説いたしました。一点、 「グルメ媒体」には、無料掲載+ネット予約のみ(送客手数料あり)のプランがあるので、「コストを抑えながら予約導線を確保 したい」店舗にとっては、無料掲載で予約受付だけ利用するのも合理的な選択肢だといえます。 87 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4.8 予約・来店:店舗体験 1 SAP 顧客が予約を完了し、実際に店舗を訪れる「来店フェーズ」は、カスタマージャーニーの中でも唯一の「キャッシュポイント」、 つまり売上が発生するタイミングです。この体験が、リピートや口コミ、ブランド評価に大きな影響を与えます。 ■ 店内体験もマーケティングの一部 「飲食店のマーケティング=集客」と思われがちですが、店内での顧客体験もマーケティングの一環 です。事前に解説した 「ブランドコンセプト」や「ブランドストーリー」と、店内体験にギャップがあると、顧客は期待外れと感じてしまいます。だからこ そ、情報発信と実際の体験を一致させる ことが重要です。 ■ 店内体験の3要素(SAP) 前述のブランドコンセプトの部分でも触れましたが、QSCAでは、ブランドのコンセプトや提供価値を完全に表現するのは難し く、QSCAに替わる飲食店の店内体験の3要素として、SAPが重要であるとお伝えいたしました。SAPとは、下記です。 ・ストーリー(Story):顧客が来店から退店までに感じる一連の「物語性」 ・空気感/雰囲気(Air/ Atmosphere):お店の中に漂う目に見えない雰囲気全体 ・提供商品(Product):料理やドリンク、接客、メニューなど、顧客が可視化・体験できるもの これら3つの整合性が取れていなければ、ブランド体験の一貫性が損なわれます 。特に高単価や記念日利用などのシー ンでは、P(商品)だけでなくSやAの価値が重視される傾向にあります。 88 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4.8 予約・来店:店舗体験 2 顧客体験の設計と確認 ■ 顧客体験の可視化と改善 1店舗運営なら現場確認が可能ですが、多店舗展開では「顧客の声」を定期的に収集・分析する仕組みが不可欠です。以下 の方法があります。 ・モニター調査(ミステリーショッパー ) 外部業者が顧客として来店し、体験をレポートします。定量・定性の評価が可能ですが、バイアスやターゲット層とのズレに 注意が必要です。 ・顧客アンケート Googleフォームなどで作成し、QRコードをテーブルやレシートに設置。インセンティブを用意することで回収率が向上しま す。ポイントは、設問は10問以内、NPS(顧客推奨度スコア)を設定、LINEやアプリ経由で配信し回収効率を高めると効果的 です。 ■ 体験を構成するその他の要素 ・ファサード(店舗の外観) 看板や外装も来店前の重要な体験要素。視覚的なインパクトとブランドとの一貫性が鍵です。 ・モバイルオーダー 近年増加中のオーダー形式。オペレーション効率や客単価向上のメリットがある一方、 UI/UXが悪いとブランドイメージに悪 影響を与えるため、導入前に慎重な検討が必要です。 ■ まとめ:SAPを軸に一貫性ある体験を設計する 来店から退店までの流れ全体を一つのストーリーとして設計し、 SAP(ストーリー・空気感・提供物)を軸に体験を統一す ることが、マーケティングでブランド価値を伝え、リピートを生むために重要です。 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved. 89

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4.9 CRM:飲食店の CRM 飲食店のマーケティングのゴールは「来店」ではありません。長期的な成功を目指すには、 再来店=リピートを生み出す仕 組みが不可欠です。その中核にあるのが「CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)」です。CRMの目 的は、顧客ロイヤリティを高め、 LTV(顧客生涯価値)を最大化すること 。単に「新規 vs リピーター」という区分で考えるので はなく、一人ひとりの顧客に最適なアプローチを行うこと が鍵です。 ■ CRMにおける3つの重要要素 1. カスタマイゼーション :来店履歴や嗜好に合わせた個別対応・提案。 2. リピート促進:クーポンや限定情報の提供による再来店の動機付け。 3. データ活用(DX化):顧客データの収集と分析により、最適な施策を自動化・最適化。 ■ 飲食店で使えるCRMツール一覧 ・ポイントカード・紙チケット :シンプルで導入しやすいが、データ取得・分析には不向き。 ・LINE公式アカウント:多くの飲食店が活用。安価に導入や運用が可能で、クーポンや情報配信に最適。 ・店舗アプリ:開発費用がかかるが、ブランディングや機能の自由度が高い。 ・メルマガ配信 :予約や来店履歴をもとに、定期的な接点が可能。中〜高単価店舗向け。 ・MAツール(マーケティングオートメーション) :自動配信・シナリオ設計が可能だが、コスト高。 ・シェフ・店長の個別 DM:高級店や個人店での関係構築に効果大。顧客にとっての特別感を演出。 ・サブスクモデル :月額で飲み放題や定額朝食など。顧客との継続的な接点を確保。 ・SNSフォロワーへの発信 : ストーリーズやリールでの再接触。軽いタッチでリマインド効果。 90 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4.9 CRM:LINEとアプリ 1 LINEは現在、ほとんどの人が利用しているメッセージアプリです。その影響で、飲食店だけでなく、小売店やサロンなども自 店舗のLINEアカウントを開設し、友達登録を促して再来店施策を展開するようになりました。 しかし、多くのユーザーは飲食店以外にも複数の店舗やブランドと LINEで繋がっているため、メッセージが頻繁に届くと煩わ しく感じ、ブロックされてしまうリスクもあります。そのため、「どのように運用すれば効果的か分からない」という声も増えてき ました。 そこでCOLLINSは、以下の質問をアンケートで調査しました。 「飲食店からのLINEメッセージについて、どのように感じますか?」 91 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4.9 CRM:LINEとアプリ 2 前ページのアンケート結果から、LINEでの店舗メッセージに対して約 30%のユーザーが「煩わしい」と感じている ことが分 かりました。特に20代では、その傾向がやや強い ことが見て取れます。 しかし一方で、「問題ない」「週1回程度なら許容できる」と回答したユーザーは全体の過半数を超えており、 LINE配信自体 が完全に否定されているわけではありません。 ■ LINE配信の適切なバランス 「煩わしい」と感じる30%のユーザーは、おそらく友だち登録を避けるか、すぐにブロックする 可能性が高いです。よって、無 理にすべての来店客に配信を行うのではなく、LINE登録施策で“関心がある層”を抽出し、その中で配信頻度を調整するこ とが現実的な運用方針となります。配信頻度は週1〜月1程度が目安。店舗の更新頻度や業態によっては、イベント時や限 定メニュー案内のみに絞るのも効果的だと考えます。 ■ LINE配信における注意点 配信ごとにコスト(従量課金)が発生するため、開封率・クリック率・クーポン使用率などの費用対効果の可視化 が必須で す。特に配信が月4回を超える場合、効果検証を怠るとコストばかりが先行する リスクがあります。セグメント配信(初回来 店者向け・常連向けなど)を行える設計が望ましく、CRMとしての運用を意識することが大切です。 92 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4.9 CRM:LINEとアプリ 3 「アプリ」も飲食店に限らず、CRMツールとして一般的になってきております。 そこで、「店舗/ブランドのアプリ」の活用についてアンケート調査を行いました。 質問は以下の通りです。 「飲食店のアプリについてどう思いますか?」 下記が回答を円グラフで示しました。 93 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4.9 CRM:LINEとアプリ 4 アンケート結果によると、店舗アプリに対して「ダウンロードしない」と答えたユーザーは約 30%でした。一方で、「好きなお店 ならダウンロードする」と回答した割合は全年代・20代ともに約40%に達しており、さらに「月1回以上利用するお店ならダウ ンロードする」層も約30%という結果が得られました。 特に注目すべき点として、20代のアプリ利用意欲は全年代よりも高い 傾向があり、若年層との中長期的な関係構築におい てアプリが有効である可能性を示しています。 ■ アプリは「好きなお店」との関係を深めるツール LINEと比較すると、アプリは以下のような特徴があります。 ・店舗へのロイヤリティが高い顧客向け である(=「来店頻度の高い顧客」や「ブランドファン層」)。 ・プッシュ通知やスタンプカード機能、メニュー閲覧、予約、モバイルオーダー、レビュー投稿などをアプリ内で完結できるた め、UXに優れる。 ・アイコンがスマホのホーム画面に常時表示される ため、心理的な接触頻度が高まる。 ■ コストと導入のハードル 「アプリは開発コストが高い」とのイメージがありますが、近年はテンプレート型のアプリ開発サービスが充実しており、安価に 導入可能なツールも存在します。これにより、小〜中規模の飲食チェーンでも現実的な CRM手段としてアプリが活用され始 めています。 ■ アプリ導入を検討可能な飲食店の条件 「若年層がターゲット」「月 1回以上来店する固定客が一定数いる」「複数店舗を展開しているブランドである」 ような飲食ブ ランドであれば、LTV最大化のためにアプリ導入は検討してもいいと考えられます。 94 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4.10 テイクアウト /デリバリー /EC1 これまで「認知」→「来店」→「再来店」までの店内体験に基づいたカスタマージャーニー について解説してきました。ここか らは「番外編」として、店外でのブランド体験=“店外体験”について扱います。 ■ 店外体験とは 「店外体験」とは、テイクアウト・デリバリー・EC(通信販売)など、店内に来なくてもブランドに触れられる体験のことです。コロ ナ禍以降、この領域の重要性が急速に高まりました。特にデリバリー市場は急成長を見せ、 2023年のデリバリー売上は 2019年比で2倍以上に拡大(Circana Japan, 2023)しました。それに伴い、「バーチャルレストラン」や「クラウドキッチン」と いった新しい業態も増加しています。ここでは、「テイクアウト」「デリバリー」「 EC(通信販売)について解説します。 ■ 包材(パッケージ)の重要性 店外では、店内のような空間(A=Atmosphere)が存在しないため、提供物(P)=商品そのものと包材 がブランド体験の主 役になります。ロゴ入りの袋や容器、ブランドカラーの統一感 など、パッケージにこだわることで、店舗と同様の「世界観」を 演出できます。特にSNS投稿や贈答用途を意識したパッケージ設計は、ブランド拡散にもつながります。 ■ テイクアウト テイクアウトは、プラットフォーム利用料が不要で、利益率が比較的高く なります。ファサード(店頭)集客 が鍵になり、地上 階や路面店舗は強いですが、空中階や地下店舗は不利です。テイクアウト強化には、まず 店内体験で気に入ってもらい、 その後テイクアウト導線を整える のが、導入の順序としては現実的です。 95 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4.10 テイクアウト /デリバリー /EC2 ■ デリバリー コロナ禍を経て、日本のデリバリー市場は拡大しました。電話注文での「出前」はコロナ以前から一般的でしたが、コロナ禍で Uber Eats、出前館、Woltなどのデリバリーアプリが普及し、アプリでのデリバリー注文が一般化しました。メリットは集客をプ ラットフォームに任せられることですが、デメリットとして販売手数料が約 40%と高額で、利益率は低下しやすい です。 また、アプリ上には知名度の高いナショナルブランドも掲載されているので、「注文してもらう」には 表示の工夫が必要です。 「検索」の箇所で説明した内容と同じく、まずは自店舗の表示を有利に掲載しないといけず、そのためにはプラットフォーム側 の「プロモーション」に参加して表示回数を増やしたり、写真・説明文の質を高めて選ばれる理由を作ることも必要です。 手数料と広告費を踏まえた価格で設計しないと、売れても赤字になるケースが多い ので、プロモーションコストも含めた価 格設定が重要となります。 ■ EC(通信販売) 飲食店のEC展開はハードルが高いのが現実です。食品加工の許認可や包装・保管・配送のインフラが必要となるため、 多 くの飲食店は外部委託で製造対応 をしております。 製造が可能になれば、商圏が全国に広がるメリット がありますが、競争も激しくなります。ECでの成功には、「誰に、何を、ど んな世界観で届けるか」の設計が重要で、例えば、記念日ギフト商品、地域特産品コラボなど、 ECでもブランド体験の設計 が必要となります。 96 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4-11 インバウンド集客 1 日本政府の観光施策や円安の追い風を受け、2024年の訪日観光客数は過去最多の約3,686万人を記録しました (JETRO, 2025)。飲食業界にとって、インバウンドは大きなチャンスですが、ここで重要なのは「インバウンド対策」と「インバ ウンド集客」は異なる、ということです。 1. インバウンド対策(守りの施策) これは、店舗に訪れた外国人観光客が困らずに満足して過ごせる環境整備 を指します。対応しているだけで集客効果が あるとは限りません。 ・外国語メニューの整備(英語・中国語・韓国語など) ・外国語対応の接客マニュアルや指差しツール ・ホームページ・SNSの多言語対応 ・ハラールやベジタリアン対応など文化・宗教的配慮 2. インバウンド集客(攻めの施策) こちらは外国人観光客を「呼び込む」ためのマーケティング活動であり、 3つのタイミングに分けてアプローチします。 ■ 旅前:まだ日本に来る前の段階 ・認知:GoogleやMetaで「訪日予定者」向けに広告配信 ・検索:現地で見られる日本旅行ガイドサイト・グルメメディアへ掲載 ・興味・関心:SNSやHPを多言語化し、来日前から接点づくり ・予約導線: 予約台帳も多言語&時間帯に対応しておくことが必要 97 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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4-11 インバウンド集客 2 ■ 旅中:訪日時の行動に対応 ・認知: Google Map広告やSNSで言語を出し分けてエリアターゲティング ・検索: TripAdvisorやGoogle Map内での露出強化 ・興味・関心: SNSやHPで魅力的な写真や動画で視覚的に訴求。 ・予約導線: QRコードやタップだけで予約できるUX設計で、ストレスのない予約導線に。 ■ 来店後:体験後の接点を設計 ・口コミ促進: 店頭やテーブルにQRコードを設置し、SNSや口コミページへ誘導、口コミ促進。 ・拡散設計:Google・TripAdvisor・SNSでの拡散を狙い、インバウンド向けUGC商品の開発、販売。 ■ まとめ:インバウンド集客は「ブランド戦略」の一環で考える 「インバウンド市場が伸びているから対応しよう」と安易に進めると、従来の日本人顧客を失う可能性もあります。実際に、 「外国人客でにぎわう店に、地元常連客が足を運ばなくなった」という事例も少なくありません。だからこそ、重要なのは「やる かどうか」ではなく、「どうやるか」です。 「WHO(標的顧客)」、「ブランドコンセプト やストーリー」、「SAP」、これらの軸を保ったうえで、どのようにインバウンドと向き 合うかを設計することが、長期的なブランド価値の向上 に繋がります。 98 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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5 マーケティング施策における 重要ポイント Key execution points in marketing 5.1 KPIの設定とデータドリブン 5.2 マーケティングROI1 5.3 POSとGoogle Analytics 5.4 飲食店のDX 5.5 SNSマーケティング 5.6 デジタル広告1 5.7 企画 5.8 コンテンツマーケティング 99 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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5.1 KPIの設定とデータドリブン 1 これまで、カスタマージャーニーに沿った各フェーズのマーケティング施策について解説してきました。本章では、それらの施 策を、効果的に運用・改善していくための「数値管理」と「評価の仕組み」、について取り上げます。 ■ KPIの設定:行動を測る「モノサシ」 マーケティング施策の成否は、「実施したかどうか」ではなく、「どれだけ成果に繋がったか」で判断すべきです。そのために は、あらかじめKPI(重要業績評価指標) を設定する必要があります。 ・飲食店におけるKPI設定の具体例 カスタマージャーニー 設定すべきKPI例 認知 Instagramリーチ数、SNSフォロワー増加数、広告表示回数(Impression) 検索・興味関心 ウェブサイト訪問数、Googleビジネスプロフィールの閲覧数、 プロフィールアクセス数 比較・検討 電話件数、ネット予約クリック数、カート追加率(ECの場合) 来店 実来店者数、予約件数、客単価、粗利 体験 顧客アンケートNPS、口コミ件数と内容 再来店 リピート率、LINEブロック率、来店サイクル(再来までの日数) 100 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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5.1 KPIの設定とデータドリブン 2 「KPI設定」のポイントは、数値化できる指標を使い、施策と紐づけて設定することと、目標( Goal)ではなく、「モニタリングの 基準」として活用することです。 ■ データドリブン:思い込みを排除する運営スタイル そして、KPIをマーケティングのPDCAの中で十分に活用するためには、「データドリブン」な組織になることが必要です。 「データドリブンマーケティング」は、「なんとなく」「感覚的に」ではなく、 実際の数値データに基づいて意思決定を行う手法 で す。たとえば、下記のようなアクションを取ることが可能となります。 ・SNSでの投稿が伸びていない → 表示回数ではなく保存率や視聴完了率 を見て改善 ・リピート率が低い → 顧客属性別の離脱タイミング を分析 ・来店予約が減少 → 曜日・時間帯別の予約率 を追い、予約導線や席配置を改善 このようにデータを追うことで、思い込みによる判断ミスの回避や、成果の見える化によるスタッフの巻き込み、予算や人員を 成果の出る施策に集中させること、などが可能となります。 ■ 実行のコツ:KPIと「習慣」のセット化 KPIは設定して終わりではなく、定期的な振り返り(PDCA)があって初めて機能します。 月1回KPIダッシュボードを確認して改善策を整理したり、チームで共有して各自の施策と数字を紐づたり、変化が出ない指 標はKPIとしての妥当性を見直すなど、データドリブンな思考と行動の習慣化が成功のポイントになります。 101 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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5.2 マーケティング ROI1 マーケティング施策を実施する際に最も重要なのは、「その施策が本当に利益につながっているか」を明確にすることです。 その判断基準として、ROI(Return on Investment:投資対効果)を正しく理解し、運用することが求められます。 ■ ROIとは ROIとは、投資に対してどれだけの利益を得られたか を示す指標です。以下の式で計算されます。 ROI =(利益 − 費用)÷ 費用 ここでいう「利益」は、売上ではなく粗利または営業利益 で見るのが重要です。「費用」は、広告費・送客手数料・制作費な ど、施策にかかるすべての支出を含めます。 ■ ROIの計算例 ・目的:あるグルメ媒体の効果を下記の条件から算出する。 ・予約数:100名 ・客単価:5,000円 ・FL:食材原価率:35% 人件費率:35% ・媒体掲載費:25,000円 ・送客手数料:200円/名 102 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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5.2 マーケティング ROI2 ① 投資額の算出 掲載費(25,000円)+送客手数料(200円 × 100名)= 45,000円 ② 売上の算出 100名 × 5,000円 = 500,000円 ③ ROIの計算 (粗利で見る場合 ※人件費を除く) 粗利率 = 100% − 食材原価35% = 65% 粗利額 = 500,000円 × 65% = 325,000円 ROI = (325,000 − 45,000)÷ 45,000 = 6.2 ④ ROIの計算 (営業利益ベース ※FLコスト=70%考慮) 利益 = 500,000円 × 30% = 150,000円 ROI = (150,000 − 45,000)÷ 45,000 = 2.33 ■ ROIをどう判断するか ROI > 1.0:利益が出ている(投資の価値あり) ROI < 1.0:赤字施策(見直しが必要) 同じ施策でも、どの利益ラインで判断するか(粗利か営業利益か)によって ROIは変動します。 103 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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5.2 マーケティング ROI3 ■ ROIが活かせる場面 ・広告出稿や媒体選定の比較判断 ・クーポン施策の費用対効果の分析 ・店舗ごとの販促活動の投資配分の見直し ■ 測定が難しい施策には「トレンド分析」 SNS運用やPR記事など、直接的な利益に結びつけにくい施策の場合は、売上トレンド(前年比)での変化 を見る方法が有 効です。下記が例です。 ・3ヶ月連続の売上前年比:90% ・施策実施後、前年比が95%に改善 ・売上基準が月1,000万円なら、改善幅は 5% → 50万円の売上効果 ・この50万円を基に、同様にROIを算出可能 ■ まとめ ・ROIは「費用に対してどれだけ利益が出たか」を示す重要指標 ・グルメ媒体・広告などの施策は、粗利ベースと利益ベース の両方で見て判断 ・数字が出しにくい施策は「売上トレンド」で間接的に評価 104 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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5.3 POSとGoogle Analytics ここでは、分析ツールとして、POSデータ(レジ売上)とGoogle Analytics(ウェブサイトの行動データ)について解説します。 ■ POSデータの分析で見るべきポイント POSデータは、日々の営業で自動的に蓄積される「来店後」の実績データです。これを施策前後で比較することで、効果をあ る程度把握できます。主な分析項目は下記です。 ・日次・時間帯別の売上変動 :例) SNSでディナー限定のキャンペーンを打った翌日から夜の売上が増えたか。 ・客単価の推移:例) 高単価の限定メニューを告知した後、平均客単価が上昇したか。 ・メニュー別売上構成比 :例) リール投稿でPRした新メニューの売上が全体の何%になったか。 ・新規・リピーター比率 :例) 広告施策後、新規顧客の比率がどの程度増加したか。 ■ Google Analyticsで見るべきポイント ホームページを持っている飲食店であれば、Google Analytics(GA4)の導入は必須です。これは「来店前」の顧客行動を可 視化するためのツールです。主な分析項目は下記です。 ・アクセス数の増減 :例) プレスリリースやSNS投稿の翌日にアクセスが急増していないか。 ・流入経路(参照元) :例) Instagramや食べログ、Google検索など、どこからサイトに来ているか。 ・滞在時間・離脱率 :例) 特定のページで多くの人が離脱していないか(UXの改善点が見える)。 ・予約ボタンのクリック数・コンバージョン率 :例) キャンペーンLP経由の予約数がどの程度あるか。 105 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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5-4. 飲食店の DX これまでのページでは、マーケティング施策の効果を高めるには「分析」と「データドリブン」の視点が欠かせないとお伝えして きました。本ページでは、それをさらに発展させた飲食店における「 DX(デジタルトランスフォーメーション)」について解説しま す。 ■「デジタル化」と「 DX」の違い デジタル化は、紙の予約帳を予約アプリに切り替えるなど、アナログ作業をデジタルに置き換えること 、であるのに対し、 DX(デジタルトランスフォーメーション) は、バラバラに導入されたデジタルツールを連携・統合し、顧客体験や業務効率を 飛躍的に高めた状態 のことを指します。単なる「IT導入」ではなく、「仕組みの変革」まで踏み込んでいるかがDXのポイント です。 ■ なぜ飲食店にDXが必要なのか 飲食業界は属人的・感覚的な判断が多く、DXが遅れている業界の一つとされます。しかし、マーケティング効果を高め、顧 客ごとに最適な体験を届けるには、下記のようなデータが「一元管理された環境」が必要です。 予約経路(どこから来たか)、注文傾向(何を頼んだか)、来店頻度(どれくらい通っているか)、客単価( 1回の売上)などで す。これらがバラバラではなく連携されて分析可能な状態、それが飲食店における DXのゴールの一つです。 ■ プライバシーとセキュリティの配慮 顧客データの活用には、個人情報保護法の遵守と適切なセキュリティ対策 が必須です。「必要以上のデータを取らない」、 「データは暗号化して保存する」、「社内でのアクセス制限を設ける」、など「 お客様の信頼」を守る前提で DXを進めることが 重要です。 まとめとして、本格的なDXは高コストかつ運用ハードルも高いため、すぐにすべては実現できません。しかし、「予約データと 注文データを紐付けて分析する」など、できるところから段階的に始めること が重要です。 106 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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5-5. SNSマーケティング 1 ここでは「HOW」の実行施策のひとつであるSNSマーケティング について解説します。これまでカスタマージャーニーの各ス テージでもたびたび登場したように、SNSは認知獲得から予約導線、 CRMまですべてのフェーズに関わる重要 なメディア です。 そのため、SNSは単独で考えるのではなく、「各ステージにおける狙い」と連動させて戦略設計 する必要があります。本 ページでは、SNS運用全体に通じる注意点を2つの視点から整理します。 ■「バズり」狙いに振り回されない 近年、SNSでは「バズる(話題になる)」ことが重視されがちです。特にインフルエンサー投稿や UGC(ユーザー生成コンテン ツ)を活用する際に、「再生数」や「拡散数」を求めるあまり、短期的な話題性だけに偏った商品や演出 を企画してしまうケー スが増えています。しかし、重要なのは以下の点です。 ・バズは一過性である:一度のバズで来店が急増しても、再訪につながらなければ意味がありません。 ・現場のオペレーションが崩れるリスク :急激な集客によりサービス品質が下がると、長期的な評価ダウンにも繋がります。 ・ブランドコンセプトが崩れる危険性 :話題性に寄りすぎると、本来届けるべき価値や世界観がぶれてしまう可能性も。 SNSマーケティングでも、軸となるのは「What」で定義したブランドの提供価値 です。バズ狙いではなく、“ファンを増やす”た めの発信を意識することが、結果的に安定した支持と再来店につながります。 107 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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5-5. SNSマーケティング 2 ■ 数字を追いすぎない SNSでは「フォロワー数」「いいね数」といった目に見える数値に意識が向きがちですが、 数値だけで評価するのは危険 で す。以下のような落とし穴があります。 ・フォロワーが多くても、来店につながっていなければ意味がない ・投稿の保存やシェア、コメントなどの“反応の質”を見るべき ・「アクセス数は多いが来店がゼロ」など、無駄なトラフィックに注意 SNS運用では、以下のような本質的な指標を追うことが重要です。 ・投稿ごとのエンゲージメント率(反応の割合) ・キャンペーン投稿後の予約数やDM数(コンバージョン) ・保存数やコメント内容から「どれだけ興味・関心が深まっているか」 つまり、SNSでも「本当に標的顧客に届いているか」「アクションにつながっているか」を見極める視点が欠かせません。 ■ まとめ SNSは、ブランドの“鏡”です。一時的な流行や数値に振り回されるのではなく、「届けたい価値」と「届いている顧客」の整合 性を常に見直し、長期的な信頼とファンづくりを目的に設計すること 、これがSNSマーケティングのあるべき姿だと考えま す。 108 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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5-6. デジタル広告 1 飲食店において、デジタル広告の活用はまだ限定的ですが、低予算かつ高精度にターゲティングできる 手法として、活用 の余地は大きいといえます。 広告代理店に依頼すると、最低出稿料も10万円以上などで、さらに手数料が発生するため費用対効果が合わないと感じる ことも多いですが、自店舗での運用であれば、1,000円単位の広告配信も可能です。 ここでは、自店舗で取り組めるデジタル広告の代表的な種類と運用ポイントを紹介します。 1. デジタル広告の主要媒体と特徴 ■ Meta広告(Instagram / Facebook) ・特徴:画像・動画を使って感覚的に訴求できるため、飲食と非常に相性が良い。 ・強み:市区町村単位での地域指定、年齢・性別・興味関心などの細かいターゲティング。 ・おすすめ用途:「認知」施策(ジャーニー初期)としての活用が有効。 ■ Google広告(検索連動型・ディスプレイ・ YouTube・P-MAX) ・検索広告:ユーザーがGoogleで「エリア名+焼肉」などの検索をした際に表示される。 ・ディスプレイ /YouTube広告:視覚的に認知させる手段として有効。 ・P-MAX:Googleが最適配信面を自動で選定。少額から試せる万能型。Google Mapにも掲載可能。 ・おすすめ用途:「検索」や「予約誘導」に強い。 109 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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5.6 デジタル広告 2 ■ その他SNS広告(X, LINE, TikTok) ・X広告:速報性やイベント案内に強み。 ・LINE広告:友だち登録者への直接アプローチ(CRM型)に活用。 ・TikTok広告:若年層の認知施策に有効。 ※自店のターゲット層と利用メディアの属性を照らし合わせて選定することが重要です。 2. 効果を出すための4つの運用ポイント ① クリエイティブの質がすべて :魅力的な料理写真や店内の雰囲気 が伝わる画像/動画を活用。文字よりもビジュアルと 導線で勝負。 ② ターゲティング設定 :エリア指定(例:店舗から半径3km)を行い、無駄打ちを防ぐ。年齢・性別・興味関心などを絞り込 み、CPA(顧客獲得単価)を抑制。 ③ A/Bテストの実施:「写真AとB」「キャッチコピーAとB」などを同時出稿。結果を見て、反応が良い方に予算を寄せる。 ④ トラッキング・効果測定 :理想は「予約や来店」の計測。 難しい場合でも、クリック数・サイト遷移・滞在時間・問い合わせ 数など間接KPIを可視化すること。 ■ まとめ デジタル広告は「小さく始めて、PDCAを回す」ことが成功の鍵です。スモールスタート&改善型の運用 であれば、飲食店で も無理なく活用が可能です。 110 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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5.7 企画 飲食店のマーケティングにおいて、「企画」は短期的な売上向上や話題性の創出に非常に有効です。キャンペーン、フェア、 イベント、限定メニューなど、さまざまな形で打ち出すことができますが、成功にはいくつかの前提があります。 ■ 「企画」は“短期集客”と“ブランディング ”の中間 キャンペーンや割引は即効性がありますが、頻発しすぎると「安売りの店」という印象を与えるリスクがあります。「常に割引さ れるなら、正規価格で行く必要はない」、「イベントがなければ魅力がないと思われる」、というような状態になると、ブランド価 値を損なわれる可能性があります。 企画の位置づけは「特別な体験を創出する」こと です。売上目的だけではなく、あくまでブランドの世界観と一貫した内容 であることが前提となります。 ■ 企画でもカスタマージャーニーと PDCAが重要 良い企画を考えても、「知ってもらえなければ」意味がありません。企画の成否を分けるのは、ここでも ジャーニー設計です。 例えば、「バレンタイン限定ペアセット」を企画するなら、Instagramでのビジュアル訴求 → LPでの詳細確認 → 予約動線 → 店舗での体験 → SNS拡散促進という流れが必要です。 また、1回やって終わりではなく、必ず「振り返り」を行い 、「来店者数は増加したか?」「客単価や粗利はどう変動したか?」 「新規顧客のリピート率は上がったか?」などを評価します。例えば、クーポン施策で新規客が多く来たが再来店に繋がらな かった場合、次は「クーポン提示で2回目の来店特典」などの導線設計が必要です。ここでも、PDCAの実践が重要となりま す。 このように、企画の成功のためには、ブランド体験を補強する “仕掛け”として企画を捉え、「単なる集客」ではなく、「ブラ ンドの文脈の中で特別な体験を提供するもの」と認識することが重要 です。そして、企画の頻度・内容・表現が、ブランドの 方向性と整合しているかを常に確認し、必ず振り返り( KPI設定とデータ収集)を行い、改善の材料とすること も大事なポイ ントです。 111 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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5.8 コンテンツマーケティング 1 SNSや動画メディアの台頭により、ユーザーは日常的に膨大な情報やコンテンツに接触しています。その中で、 “知ってもら う”から“好きになってもらう ”までを担うのがコンテンツマーケティング です。これは「広告」や「キャンペーン」とは異なり、長 期的にブランドの世界観や価値を伝え続ける施策 です。 ■ コンテンツマーケティングとは 「企画」と似た面もありますが、以下のような違いがあります。下記からわかるように、「コンテンツマーケティング」は 期間の 定めのない企画とも言えます。 企画 コンテンツマーケティング 目的 短期集客・話題化 長期的なブランド認知・ファン獲得 期間 期間限定・単発 継続的・定期配信 例 季節キャンペーン、限定メニュー YouTubeチャンネル、Instagram連載投稿、ブランドブログ ■ 代表的なコンテンツ施策の例 (飲食店) ・YouTubeチャンネル:料理の裏側、スタッフ紹介、こだわりの素材などを週1回発信 ・Instagramストーリー連載:週替わりおすすめメニューのストーリー投稿 ・ブログ・note:ブランドのルーツや理念を深掘りして発信 ・TikTok動画:料理工程やトリビア的なショートコンテンツを投稿 112 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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5.8 コンテンツマーケティング 2 ■ コンテンツマーケティングのメリット ・潜在顧客への継続的なアプローチが可能 ・一度制作したコンテンツが資産として蓄積される ・ブランドの“共感・理解”を育み、ロイヤリティにつながる ■ 実行上の注意点 1. 継続が難しい ・更新頻度を維持するには体制構築が必須 ・内製の場合、担当者の熱量・企画力・撮影編集スキルなどが鍵 2. 効果測定は“長期視点”で ・「すぐ売上に繋がらない」=失敗、ではなく、エンゲージメントや視聴完了率など中間 KPIで手応えを測る ・社内に「即効性は期待せず、じっくり育てるもの」という理解を共有することが必須 まとめとして、コンテンツマーケティングは主に「認知」や「興味・関心」のフェーズで機能します。 ・潜在顧客がYouTubeでお店の雰囲気を知る(認知) ・SNSで何度も投稿を見て、行きたくなる(興味・関心) このように、点ではなく線で設計すること が、コンテンツマーケティングの効果を最大化する鍵となります。 113 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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6 マーケティングの考察と 注意点 Marketing Insights & Cautions 6.1 大企業の事例と「認知バイアス」 6.2 入り口と出口 (アトリビューション) 6.3 アクセス数の罠 6.4 クリティカル・シンキング 6.5 AI 114 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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6.1 大企業の事例と「認知バイアス」 マーケティングにおいて、多くの経営者や担当者が陥りやすい落とし穴のひとつが、 大企業の成功事例を自社にも当ては めようとすること です。有名ブランドや全国展開するチェーンの事例は、書籍やセミナー、営業資料で頻繁に紹介されます。 こうした事例は一見「正解」に見えますが、そのまま自店舗で再現しようとすることには大きなリスク が潜んでいます。 ■ 認知バイアスに注意 大企業の成功事例の多くには、「認知のバイアス」 がかかっています。つまり、その企業・ブランドが既に社会的に広く知られ ているという前提条件が結果に強く影響 しているのです。例えば、 ・全国500店舗のチェーンがSNSでキャンペーンを実施 → 大量の拡散・反応が得られる ・無名の個人店が同じ施策を実施→ 見られることすら少ない この違いは、マーケティングの「中身」ではなく、「スタート地点の認知度」 によるものです。同じ100円クーポンを出したとして も、「知っているブランド」と「初めて見る名前の店」では、受け手の反応はまったく異なります。 ■ 投資額とROIも異なる 認知度が高いブランドは広告投資額も桁違いです。年間数千万円単位の広告費を投入している企業と、月数万円しかか けられない店舗とでは、施策の設計も KPIの設定も全く違うものになる べきです。ROI(投資利益率)の計算ロジックや期待 値そのものも異なるため、単純な真似は意味がありません。 まとめとして、大企業の成功事例を学ぶこと自体は非常に有意義です。しかし、それを「そのまま使える」と考えるのではな く、「自社の規模・認知度に合わせて、どう応用・分解できるか」 という視点が必要です。 115 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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6.2 入り口と出口 (アトリビューション ) 飲食店のマーケティングでは、「どの施策が実際の来店につながったのか」を判断するのが難しい場面があります。ここで大 切になるのが、「アトリビューション」 という考え方です。アトリビューションとは、来店という成果(コンバージョン)に対して、 どの施策がどれだけ影響したか を分析する考え方です。 多くの飲食店では、「予約経路=集客の成果」として、たとえば「食べログからの予約が多いから、食べログが集客に貢献し ている」と判断しがちです。しかしこれは「出口バイアス」とも言える落とし穴です。実際の来店行動には、 来店に至るまでの “入り口”やジャーニーが存在しているからです。 ■ 来店までの3つの「入り口」 来店のきっかけは、カスターマージャーニーの箇所で解説したように、 「認知」「検索」「ブランド想起」という 3つの「入り口」 があります。例えば食べログからの予約があった時、下記が考えられます。 ・SNSで知り、食べログで予約(=認知が貢献) →出口として食べログ利用 ・Google検索で比較し、最終的に食べログで予約(=検索が貢献) →これが食べログの本来の媒体としての効果 ・名前を覚えていて、直接検索→食べログで予約(=ブランド想起が貢献) →出口として食べログ利用 つまり、最終的にどこから予約したか(出口)だけを見て判断してしまうと、実際に来店につながった本質的な「きっかけ(入り 口)」を見落としてしまうのです。 ■ アトリビューション視点で見ると、投資判断が変わる 「どの施策が貢献していたのか」を正しく把握することで、費用対効果(ROI)の見方が変わり、予算の配分もより効果的に 行えるようになります。たとえば、「予約はすべて食べログ」だから「食べログに予算集中」していたが、実際は Instagramや Google mapが起点で、SNSやMEOへの投資も必要だった、というケースです。 116 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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6.3 アクセス数の罠 ホームページやGoogleビジネスプロフィール、グルメ媒体などでは「アクセス数」がよく効果指標( KPI)として使われます。し かし、アクセス数が増えたからといって、必ずしも売上につながっているとは限りません。実際、「アクセスは伸びているのに 売上は下がっている」という現象は、飲食店の現場でしばしば見られます。これは、「アクセス数=成果」と捉えてしまう「アク セス数バイアス」に陥っている状態です。 ■ アクセス数が増えるのは簡単? 実は、アクセス数を増やすこと自体はそれほど難しくありません。「広告を配信する」、「自動投稿ツールで更新頻度を上げ る」、「キャッチーな文言や画像でクリックを誘う」といった手法で、中身が伴っていなくても数字だけは動くのです。 ■ 本当に見るべき指標は「コンバージョン」 重要なのは、「アクセスの質」です。つまり、「アクセスしてくれた人が 実際に予約や電話につながったか ?」「売上の増加と アクセス数の増加が比例しているか?」という視点で見ないと、誤った成功評価をしてしまいます。たとえばGoogleビジネス プロフィールの「インサイト」で表示回数や閲覧数が増えたとしても、 売上が上がっていなければ、その数値に意味はありま せん。 ■ KPIに「アクセス数」を設定すべきか? もちろん、アクセス数を“相対的”な変化として追うのは有効 です(例:前月比、キャンペーン前後比較など)。しかし、最終的 なKPIとして重視すべきなのは、「予約数」、「電話問い合わせ数」、「テーブルチェック経由の実来店数」、「店舗売上」などの ような売上に直結する指標です。つまり、「アクセス数」は途中経過に過ぎず、主目的ではない、ということを念頭に置くことが 重要です。 117 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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6.4 クリティカル・シンキング マーケティングにおける「思考の質」を高めるために欠かせないのが、「クリティカル・シンキング( Critical Thinking)」です。 直訳すると「批判的思考」や「批判的応答」などと訳されますが、日本ではまだ一般的な概念とは言えません。「批判」という 言葉がネガティブに捉えられがちですが、ここでの意味は「言われたことを鵜呑みにせず、 自分の頭で論理的かつ客観的に 考える」ことです。 例えば、「SNSで流行ってるからやろう」「有名店がこれをやっていたから真似しよう」といった判断がされることがあります。し かし、それが自店のブランドに合っているか?費用対効果はどうか?など、冷静に見極める思考がなければ、誤った判断に つながりかねません。そこで必要になるのが「クリティカル・シンキング」です。 ■ クリティカル・シンキングに必要な 3つの要素 ・知識があること(知識ベース) :業界構造、マーケティング理論、競合事例、数字の見方などの基本理解が前提になりま す。 ・データに基づいて判断すること(データドリブン) :感覚ではなく、来店数・予約数・CVRなどの「数字」で施策の効果を判断 します。 ・論理的に考えて行動に落とし込むこと(ロジカル思考 ):「なぜその課題が起きているのか」「次に何をすべきか」を順序立 てて考える力が必要です。 もちろん、感情や直感がまったく不要というわけではありません。特に「ブランドの世界観をどう見せるか」「店舗空間の雰囲 気をどう演出するか」など、感性が重要な領域もあります。 クリティカル・シンキングで、目の前にある情報や意見を鵜呑みにせず、検証・調整できるフラットな視点を持つことが、 マーケティング施策の実行には不可欠 となります。 118 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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6.5 AI 1 マーケティングにおけるAIの進化は、飲食業界にも確実に影響を与え始めています。ここでは、 AIが今後どのように飲食店 のマーケティングを変えていくのかを、業務面とユーザー視点 の2つから整理して解説します。 ■ 業務の効率化とAIツールの活用 まず、AIは業務の生産性向上に大きく貢献します。たとえば以下のような作業は、すでに AIによって支援・代替が可能です。 ・プレスリリースのたたき台作成(例:ChatGPT) ・メニュー説明文やSNS投稿文の作成 ・広告バナーやチラシ画像の自動生成(例:CanvaのAI、Adobe Firefly) ・顧客アンケートや売上データの自動分析・レポート出力 これにより、マーケティング担当者の時間はより戦略的な企画やクリエイティブに集中できるようになります。 ■ ユーザー側の変化と「 AIに選ばれる店」になるには マーケティングにおいて今後より重要になるのは、AIがユーザーに代わって店を選ぶ時代 への対応です。 たとえば、ChatGPTやGoogleのGeminiなどのAI検索が広がれば、ユーザーは「渋谷で雰囲気のいい和食を教えて」と 自 然言語で店舗を探す ようになります。 このとき、AIに紹介される店になるためには、以下のような条件が重要になります。 119 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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6.5 AI 2 1. 指名検索が多い(ブランド力がある) AIは「どれだけ多く検索されているか(人気)」を参照するため、店名検索が多い=信頼されている店舗 とみなす可能性が 高いです。そのためには、「SNSや広告などを通じて認知度を高める」、「ブランディングに基づいた印象づけ を強化する」、 といった施策が中長期的に重要です。 2. 言語化された情報が豊富にある AIはテキスト情報をベースに判断します。よって、「公式サイトや食べログなどに、自店の強みやストーリーが丁寧に記載さ れている」、「Instagramなどに投稿された画像にもハッシュタグや説明文が付いている」、「口コミの内容が具体的でポジティ ブである」、といった状態が望ましく、「どんな店か?」をAIが理解しやすくなることで、紹介される可能性が高まります。 3. 画像・動画の発信量と反応 AIのレコメンドエンジンでは、「エンゲージメント(いいね・保存・再生回数)」なども判断材料になります。そのため、「魅力的な 料理写真や店舗動画をSNSに定期的に投稿する」、「シズル感のあるリールやUGC(来店客の投稿)を蓄積する」、ことで 「ビジュアルで惹きつける力」がAI評価にもつながります。 ■ まとめ:AI時代のマーケティングとは AIが検索や推薦の手段として広く使われる未来においては、「点数」や「 SEO」だけではなく、指名検索されるブランド力 、 しっかりと言語化された世界観や魅力 、豊富なクリエイティブコンテンツ 、が「AIに紹介される店舗」になるための鍵となると 思われます。飲食店が今からできることは、AI時代に備え、情報の整理(文章化・写真の質向上)、ブランディング強化、コン テンツ発信の習慣化を少しずつ進めていくことです。 未来の「おすすめの店」は、人ではなくAIが決める時代。そのときに選ばれるお店になるための準備を、今から始めておくべ きだと考えます。 120 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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参考1) 打ち手まとめ 下記、「How」で実施する、マーケティング施策の「打ち手」をジャーニー毎にリスト化しました。また、指南書な内でお伝えし て、「攻め」と「守り」でそれぞれ分けております。重要なことは、全体を通じてお伝えしたように、ブランドコンセプトとの一貫性 を意識した施策設計をすることです。そして、各ステージにおけるデータ分析と改善( PDCA)により、LTV最大化を目指しま しょう。 ステージ 打ち手 (守り) 打ち手 (攻め) 認知 ・SNSアカウントの開設・整備・運用 (Instagram、X、TikTok) ・ファ サードの最適化 ・ホームページの開設・運用・更新 ・SNS広告(Meta、TikTokなど)・YouTube広告 ・ディスプレイ広告 (GDN、YDN)・パブリシティ・インフルエンサー斡旋 ・チラシ/ポス ティング・交通広告 ・FAX DM ・マスメディア 検索 ・Google ビジネスプロフィール最適化(MEO)・グルメ媒体での視認 性確保(画像・PR文) ・グルメ媒体の有料掲載 ・リスティング広告 (Google/Yahoo) ・instagramのハッシュタグ投稿 興味・関心 ・Instagramアカウント整備(世界観統一)・公式HPの充実(コンセプト +最新情報)・食べログページ最適化 ・トリップアドバイザー ・リスティング広告 (Google/Yahoo)で指名ワード掲出 ・リターゲティング広告 比較・検討 ・口コミに対しての現場課題解決・価格/メニュー情報の明確化 ・Googleビジネスプロフィールの口コミ返信 予約・来店 ・ネット予約導線の整備(自社/媒体)・LINEやアプリで予約完結+リ マインド ・AI予約対応などで24時間予約受付 ・ファサードで来店訴求強化・ ・SAP(Story・Air・Product)の整合性・接客オペレーションの統一 ・イ ンバウンド対策(メニュー、予約、文化対応など) ・ミステリーショッパーやアンケート運用 ・モバイルオーダーよる顧 客体験の向上 ・口コミや拡散の仕掛け ・UGCを意識したメニュー 開発 ・魅力的なLINEアカウントやアプリの設計 ・LINE配信・会員制度・メルマガ ・MA ・サブスク ・アンケート収集 ・ クーポン ・アプリ/ミニアプリ制作 店外 ・包材によるブランディング ・テイクアウト ・デリバリー ・EC その他 ・Google Analyticsなどの分析・分析機能が優れたPOS導入 ・企画 ・コンテンツマーケティング 店内体験 再来店 121 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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参考2) アンケート調査 概要 本資料に掲載されたデータは、以下の条件で実施した独自調査に基づいています。幅広い年齢層と性別を対象とした分析 結果から、飲食店における集客・検索・予約行動の傾向を導いています。 ・実施期間:2024年11月〜2025年1月 ・調査対象:広告やリサーチ募集に応じてランダムに選出された一般生活者 ・回答人数:300名 ・性別構成:男性 47.8% / 女性 52.2% ・年齢構成: 10代:4.0% / 20〜24歳:16.6% / 25〜29歳:21.9% / 30〜34歳:9.6% / 35〜39歳:9.6% 40〜44歳:16.9% / 45〜49歳:10.3% / 50〜54歳:6.3% / 55〜59歳:2.0% / 60歳以上:2.6% 本調査は、年代・性別ともに一定の分布が確認されており、飲食店の消費行動傾向を読み解く上で一定の信頼性を有する データと考えています。 122 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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参考資料・データ出典一覧 ■ 出典 ・Aguilar, F. J. (1967). Scanning the Business Environment. Macmillan.(p12) ・American Marketing Association(AMA). What is Digital Marketing?(p11) ・Barney, J. (1991). Firm Resources and Sustained Competitive Advantage. Journal of Management.(p13) ・Circana. 外食市場に関する調査レポート(2023年)(p95) ・Collins株式会社「飲食店選び方に関するアンケート調査」2024年11月〜2025年1月実施(回答数:300名) ・消費者庁. 消費者白書2022(p11) ・Humphrey, A. (1960s–1970s). SWOT Analysis Framework. Stanford Research Institute.(p13) ・JETRO. 訪日外国人統計(2025年1月発表)(p97) ・Kotler, P., & Keller, K. L. (2016). Marketing Management (15th ed.). Pearson Education. (p14) ・Meta. Instagram Creator Blog(p54) ・Meta. Instagramのアルゴリズムに関する公式説明(p59) ・Nickerson, R. S. (1998). Confirmation Bias: A Ubiquitous Phenomenon in Many Guises. Review of General Psychology, 2(2), 175–220.(p14) ・Porter, M. E. (1980). Competitive Strategy. Free Press.(p12) ・大前研一 (1982). 『企業参謀』プレジデント社.(p13) ・日本マーケティング協会. マーケティングの未来と進化(p8) ■ 参考資料 ・コトラー,P./カルタジャヤ,H./セティアワン,I.(2022)『コトラーのマーケティング5.0』朝日新聞出版 ・コトラー,P./ケラー,K.(2014)『マーケティング・マネジメント 第12版』丸善出版 ・コトラー,P./ケラー,K./チェルネフ,A.(2019)『マーケティング・マネジメント 原書16版』丸善出版 ・ジム・コリンズ(2021)『ビジョナリー・カンパニー ZERO』日経BP社 ・楠木 建(2010)『ストーリーとしての競争戦略』東洋経済新報社 ・芹澤 連(2023)『戦略ごっこ マーケティング以前の問題』日経BP社 ・マーク・ジェフリー(2017)『データ・ドリブン・マーケティング』ダイヤモンド社 ・マイケル・E・ポーター(2018)『競争戦略論I』ダイヤモンド社 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved. 123

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COLLINS株式会社について 会社概要 Vision/Mission/Value ・会社名:COLLINS株式会社 COLLINS株式会社は、2023年1月に 「世界の食をビジョナリーに」という理念のもと創業されま した。 社名は、長期にわたって成長を続ける企業を研究されて いる「ビジョナリー・カンパニー」の著者、James C. Collins氏に由来します。 ・所在地: 〒103-0014 東京都中央区日本橋蛎殻町 ニゾ蛎殻町北島ビルB1F ・代表取締役 :中嶋 真基 ・事業内容:食に関わるマーケティング お問い合わせ ホームページ「Contact」よりご連絡ください。 https://collins.co.jp/ © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved. ・Vision :世界の食をビジョナリーに ・Mission:食の可能性と多様性を拡大させ、 食で社会に貢献する ・Value :正しく勝つ 代表取締役 プロフィール 1-13-1 ユ 日本の大学卒業後、オーストラリアのMBAにて外食産業を 中心としたホスピタリティ企業の戦略、マーケティング、海外 進出について研究し、卒業後大手外食企業にて店舗現場業 務を6年経験。 複数店舗の店舗責任者をつとめた後、本部にてブランド・店 舗のマーケティング担当として従事。経営戦略に基づき、飲 食店の販促、PR、広告、ブランディング、CRM、コールセン ター運営など幅広くマーケティング戦略を立案し施策を実 行。 2023年1月にCOLLINS株式会社を創業。

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COLLINS株式会社 サービス紹介 「COLLINS CMO」は、外部CMO(Chief Marketing Officer)として、各事業ごと の経営戦略に基づいたマーケティング戦略の立案から実行までを一貫して支援 するサービスです。 本サービスは、単なる広告運用やプロモーションにとどまらず、企業全体を俯瞰 した視点からブランド・店舗のマーケティング戦略を策定・実行し、マーケティング 費用対効果(ROI)の最大化を図ります。 「COLLINS Movie」は、飲食店のSNSや広告で使用可能な動画素材とブランド ショート動画を、安価な金額で提供する動画撮影・制作・素材提供サービスです。 「COLLINS Ads (コリンズ アド)」は、飲食店のデジタル広告運用を積極的に推 進し、飲食店が短期的な売上の増大と同時に、長期的で継続的な成長が実現で きることを目的として開始された、マーケティング支援サービスです。 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.

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本資料は、飲食店のマーケティングに関心をお持ちの方々に向けて、一般公開用に作成されたものです。内容の引用・共有は自由に行っていただけますが、資料全体 の再配布や営利目的での複製・転載については、事前に弊社までご一報ください。 © 2025 COLLINS Co., Ltd. All Rights Reserved.