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July 22, 23
スライド概要
第17回パーキンソン病・運動障害疾患コングレスで使用したスライドです.脊髄小脳変性症/非定型パーキンソニズムのなかに自己免疫性脳炎が含まれているか?を議論しています.
岐阜大学大学院医学系研究科脳神経内科学分野 教授
新規抗体と治療可能性 岐阜大学大学院医学系研究科 脳神経内科学分野 下畑 享良
COI 開示 発表者:下畑 享良 岐阜大学大学院医学系研究科脳神経内科学分野・教授 本演題に関連し,明示すべきCOI関係にある 企業などはありません.
私が重要と考えた clinical question ① SCD/非定型パーキンソニズムと診断した症例の なかに,治療可能な自己免疫性脳炎が含まれて いるか?(抗神経抗体はなにか?) ② どのようなときに疑うべきか?
A. SCDのなかに含まれうる自己免疫性脳炎は? 多系統 変性型 MSA mimics 純粋 小脳型 CCA IDCA mimics ISA
自己抗体が関与する MSA mimics の既報① HCB+ • 65歳男性 • 亜急性発症後,30ヶ月の経過で,小脳性 運動失調とRBDを呈した. • 小脳・橋の萎縮,hot cross bun sign(+) • CSF 細胞数・タンパクは正常 • Homer-3抗体陽性(細胞内抗原) • 免疫療法を施行したが無効. Liu M, et al. Neurol Neuroimmunol Neuroinflamm. 2021;8(6):e1077.
自己抗体が関与する MSA mimics の既報② HCB+ Liu Y, et al. JAMA Neurol Dec 19, 2022 • 40歳女性.潜行性に失調性歩行,複視,仮性球麻痺を呈した. • Ri 抗体陽性 → 潜在性の乳がん • ホルモン療法,手術を施行,改善不良.
Hot cross bun sign の鑑別診断は 過去10年で大幅に増加した 自己抗体や腫瘍随伴抗体 が多数同定されたため! Mov Disord Clin Pract 2022. doi: 10.1002/mdc3.13596
自己抗体が関与する MSA mimics の既報③ HCB• 50歳台女性 • 3年の経過で失調性歩行,尿失禁 構音障害,注視方向性眼振 → MSA疑い.HCB(-) • CSF 細胞数 5, タンパク 111 • 造影すると・・・Salt & pepper appearance • Zic4 抗体陽性(細胞内抗原) • Zic4はMSA疾患感受性遺伝子 Mov Disord. 2022 Oct;37:2110-2121. • IVMPと血漿交換で軽度改善. Alam A, et al. Mov Disord Clin Pract 2022;9:1128-1131.
自己抗体が関与する MSA mimics の既報④ HCB• 当科経験例 • clinically probable MSA-C の72歳男性 • 経過中,自然経過で改善した時期がある! • 軽度の小脳萎縮,大脳萎縮,大脳白質信号 変化.HCB(-) • CSF 細胞数 11/ml,タンパク 56 mg/dl, IgG index↑,OCB(+) • 測定可能な既知の抗体:陰性 本日,ポスターP-41東田和博ら.
ラット小脳凍結切片を用いた免疫組織染色 対照 患者 プルキンエ細胞の細胞質が患者血清中IgGで染色される 本日,ポスターP-41東田和博ら.
自己抗体が関与する MSA mimics の既報④ HCB• clinically probable MSA-C の72歳男性 • 経過中,自然経過で改善した時期がある! • 軽度の小脳萎縮,大脳萎縮,大脳白質信号 変化.HCB(-) • CSF 細胞数 11/ml,タンパク 56 mg/dl, IgG index↑,OCB(+) • 測定可能な既知の抗体:陰性,TBA陽性 • IVMP×2,IVIG×1で SARA 9→2に改善. 本日,ポスターP-41東田和博ら.
①どのような抗体が出現するのか? ②どのようなときに疑うべきか? Scoping review を 行った. MSA,PSP,CBSを 対象とした38論文を 検討した. 山原直紀ら.臨床神経(in press) 本日,ポスターP-40
①MSA mimicsではさまざまな抗体が出現する 臨床神経 in press 抗体 amphiphysin ITPR1 KLHL11 傍腫瘍性 Hu CV2/CRMP5 Ri 報告数 1 1 1 1 2 1 表現型 MSA-C MSA-C MSA-C MSA-P MSA MSA/ALS 合併腫瘍 乳がん 乳がん 精巣腫瘍 胸腺腫瘍 小細胞肺がん 乳がん
①MSA mimicsではさまざまな抗体が出現する 臨床神経 in press 抗体 amphiphysin ITPR1 KLHL11 傍腫瘍性 Hu CV2/CRMP5 Ri GAD Caspr2 LGI1 Homer-3 自己免疫性 NAE Zic4 CV2/CRMP5 Glycin R Ma2 報告数 1 1 1 1 2 1 3 2 1 2 2 1 1 1 1 表現型 MSA-C MSA-C MSA-C MSA-P MSA MSA/ALS MSA-C+MSA-P MSA MSA MSA-C MSA-C MSA-C MSA-P MSA-P MSA-P 合併腫瘍 乳がん 乳がん 精巣腫瘍 胸腺腫瘍 小細胞肺がん 乳がん
②MSAに合致しない経過,CSF,画像から疑う 臨床神経 in press • 経過:亜急性の経過,自然回復の時期あり ただし慢性の経過もありうる(3/14例) • CSF:タンパク↑,IgG index↑,OCB陽性 ただし正常もありうる(6/11例) • 画像:典型的な所見を認めない(7/17例) HCB sign が変形する場合
非典型例では HCB sign を間隔をあけて再検する J Clin Neurosci. 2020; 76:238-240. 6週間後 amphiphysin抗体陽性自己免疫性小脳失調症
小括1.自己免疫性 MSA mimics 1. 近年,MSAに類似した臨床・画像所見(HCB sign)を 呈する自己免疫性脳炎の報告が増加している. 2. 原因となる自己抗体は多岐に及び,抗原未同定の ものもある. 3. 非典型的な経過(亜急性,自然回復),CSF異常, 画像異常なし,HCBの変形より疑う.
SCDのなかに含まれうる自己免疫性脳炎は? 多系統 変性型 MSA mimics 純粋 小脳型 CCA IDCA mimics ISA
当科観察中の自己免疫性小脳失調症. 陽性となる抗体は? 51歳女性,失調性歩行,構音障害にて発症. 2ヶ月で亜急性に発症.初診時小脳萎縮なし. 免疫療法(IVMP, IVIG)が有効, Yoshikura N, et al. J Neuroimmunol. 2018;319:63-67.
発症5年を経過しても IVIGで失調歩行は改善する 治療前 Yoshikura N, et al. J Neuroimmunol. 2018;319:63-67. mGluR1を発現させた 培養細胞を用いたCBA 治療後
しかし5年間で小脳萎縮は進行している 入院時 5年後
患者CSF mGluR1 抗体陽性脳炎 対照CSF (metabotropic glutamate receptor type 1) 患者 血清 Cell-based assay mGluR1発現COS細胞 ラット凍結小脳切片 対照
5ヶ月の経過でめまいと titubationを呈した 小脳性運動失調症の58歳女性 本人・家族の同意を得て画像供覧 頭部 MRI 正常,CSF 異常なし Sakashita K, et al. Case Rep Neurol 2022;14:494–500 NHO 兵庫中央病院 脳神経内科 坂下建人先生ら
免疫療法による顕著な改善 血清mGluR1抗体陽性 → mGluR1抗体陽性脳炎 Sakashita K, et al. Case Rep Neurol 2022;14:494–500
mGluR1抗体陽性脳炎36名のsystematic review 1. 年齢中央値52.5歳(女性 47%.小児 11%). 2. 前駆症状 25%(頭痛,発熱,体重減少,疲労など) 3. 認知障害19%,titubation 19%,アパシー16%,味覚障害11% 4. 初期の画像診断正常 44.4% 5. 第1選択 IVMP,IVIG,血漿交換.第2選択 RTX 6. 完全寛解 22.2%,経過終了時に61.8%が後遺症. Khojah O et al. Front Neurol. 2023 Apr 17;14:1142160.
titubation を呈するもう一つの 自己免疫性小脳失調症 • 27歳女性,1.5年前から頭痛,失調 性歩行,手足のふるえ→痙攣発作 と軽度の認知機能低下 • グルタミン酸カイニン酸受容体サブ ユニット2(Gluk2)抗体陽性脳炎 • 小脳性運動失調と辺縁系脳炎を 呈する. 2021年に報告された. Ann Neurol. 2023;93:635-636
慢性の純粋小脳型の症例(CCA/IDCA/ISA)に 抗神経抗体は存在するか?
特発性小脳失調症における抗小脳抗体の検出 (ラット小脳凍結切片による免疫染色 tissue-based assay;TBA) C 抗体陰性 neuropil pattern (細胞表面抗原) intracellular pattern (細胞質抗原) neuropil pattern: 細胞表面抗原に対する抗体(免疫療法が有効例多い) intracellular pattern: 細胞内抗原に対する抗体(免疫療法が無効例多い) Takekoshi A, et al. Cerebellum. 2022 Sep 3.
特発性小脳失調症の45%(30/67例)に 抗小脳抗体を認める 特発性 遺伝性 コントロール ラット小脳凍結切片 Takekoshi A, et al. Cerebellum. 2022 Sep 3.
免疫療法が有効な症例が存在する 30例中8例で免疫療法が行われ,4例でmRSの改善が認められた. Neuropil patternのISA Intracellular patternのISA 年齢 82歳 68歳 61歳 80歳 82歳 47歳 77歳 47歳 性別 男 男 女 女 女 女 女 男 1 1 3 1 13 1 1 1 初発症状 歩行障害 歩行障害 歩行障害 歩行障害 歩行障害, 歩行障害, 構音障害 構音障害 小脳外症候 末梢神経障害 なし なし なし 認知障害 末梢神経障害 末梢神経障害 認知障害 MRI所見 小脳萎縮 小脳萎縮 小脳萎縮 小脳萎縮 小脳萎縮 小脳萎縮 小脳萎縮 小脳萎縮 正常 正常 未施行 未施行 未施行 正常 IVMP IVMP IVMP 3/3 4/3 4/4 発症から治療 までの期間(年) 脳血流SPECT 免疫療法 mRS 治療前/後 両側小脳半球 の血流低下 IVIg IVMP 3/2 4/4 構音障害, 書字障害 IVIg, IVMP 2/1 IVMP 2/2 両側小脳半球 の血流低下 IVIg, IVMP 4/3 歩行障害 Takekoshi A, et al. Cerebellum. 2022 Sep 3.
Neuropil パターン の1症例のSARAスコア 免疫療法のたびに改善する Takekoshi A, et al. Cerebellum. 2022 Sep 3.
岐阜大学,信州大学にて開始. 名古屋大学,国立精神・神経医療研究センター, 秋田赤十字病院,NHO沖縄病院も参加. CCA・IDCA患者の抗体検索をぜひご依頼ください!!
日常診療でどのように 抗小脳抗体を検索すればよいか?
自己免疫性小脳失調症をきたす自己抗体 細胞内抗原に対する自己抗体 細胞表面抗原に対する自己抗体 主な自己抗体 報告のある合併腫瘍 主な自己抗体, 報告のある合併腫瘍 GAD抗体 時に胸腺腫 Tr抗体 悪性リンパ腫 グリアジン抗体 - VGCC抗体 小細胞肺癌 Yo抗体 卵巣癌、子宮癌、乳癌 mGluR1抗体 悪性リンパ腫、前立腺癌 Ri抗体 乳癌、小細胞肺癌 DPPX抗体 悪性リンパ腫 Hu抗体 小細胞肺癌 GluD2抗体 - Ma1/2抗体 精巣腫瘍、小細胞肺癌 Caspr2抗体 小細胞肺癌、胸腺腫 Amphiphysin抗体 乳癌、小細胞肺癌 Septin5抗体 - CV2/CRMP5抗体 乳癌、小細胞肺癌、 胸腺腫 Sez6l2抗体 - IgLON5抗体 - Neurochondrin抗体 子宮癌 GluK2抗体 悪性リンパ腫,卵巣奇形種 AP3B2抗体 腎細胞癌 ITPR1抗体 乳癌、非小細胞肺癌 ARHGAP26抗体 卵巣癌 MAP1B抗体 小細胞肺癌 Homer3抗体 - Narayan RN, et al. Semin Neurol 2020 Dalmau and Graus 2022
自己免疫性小脳失調症をきたす自己抗体 細胞内抗原に対する自己抗体 細胞表面抗原に対する自己抗体 主な自己抗体 報告のある合併腫瘍 主な自己抗体, 報告のある合併腫瘍 GAD抗体 ◯ 時に胸腺腫 Tr抗体 悪性リンパ腫 グリアジン抗体 - VGCC抗体 小細胞肺癌 Yo抗体 卵巣癌、子宮癌、乳癌 mGluR1抗体★ 悪性リンパ腫、前立腺癌 Ri抗体 乳癌、小細胞肺癌 DPPX抗体 悪性リンパ腫 Hu抗体 小細胞肺癌 GluD2抗体 - Ma1/2抗体 精巣腫瘍、小細胞肺癌 Caspr2抗体 ◯ 小細胞肺癌、胸腺腫 Amphiphysin抗体 乳癌、小細胞肺癌 Septin5抗体 - CV2/CRMP5抗体 乳癌、小細胞肺癌、 胸腺腫 Sez6l2抗体★ - IgLON5抗体★ - Neurochondrin抗体★ 子宮癌 GluK2抗体★ 悪性リンパ腫,卵巣奇形種 AP3B2抗体 腎細胞癌 ITPR1抗体 乳癌、非小細胞肺癌 ARHGAP26抗体 卵巣癌 MAP1B抗体 小細胞肺癌 Homer3抗体 - 測定が望ましい(13抗体) とくに測定が望ましい(2抗体) ★当科,★北大,◯外注で測定可能 Narayan RN, et al. Semin Neurol 2020 Dalmau and Graus 2022
小括2.自己免疫性 CCA/IDCA mimics 1. 自己免疫性小脳失調症ではGAD抗体,mGluR1抗体の測定を まず行う. 2. mGluR1抗体陽性脳炎は,前駆症状,味覚障害,titubation, 初期の頭部MRI正常などから疑う. 3. CCA/IDCA と診断される症例のなかに自己免疫性脳炎が 含まれている可能性があり,現在,IVMPの効果を検証する 医師主導治験が進行中である(ぜひご相談ください!).
B. 非定型パーキンソニズムのなかに 含まれうる自己免疫性脳炎は? PSP syndrome CBS 自己免疫性 PSP syndrome/CBS
5年の経過で転倒,上方注視麻痺, 眼瞼下垂を呈した74歳女性 球麻痺,RBD,不眠, 呼吸不全 頭部MRI,CSFは正常 HLA-DQB1*05:01 IVMP + IVIG にて改善 IgLON5抗体陽性 Villacieros-Álvarez J et al. Neurology. 2021;96:e2901-e2902.
この症例報告で今回の主催メーカーの製品(献血グロベニンI※)含め、IVIGの使用を推奨するものではありません 当科経験例. 肺炎を合併したPSPが疑われた81歳男性 • 発熱の3週間後に意識障害,4週間後に体軸性筋強剛,運動緩慢 を呈した.レボドパ無効であったことからPSPが疑われた.6週間後 に当科紹介.意識障害のためMDS PSP基準による診断不能. A B Ono Y, et al. Neurol Clin Neurosci 28 April 2023
この症例報告で今回の主催メーカーの製品(献血グロベニンI※)含め、IVIGの使用を推奨するものではありません 既知の抗神経抗体は陰性, ラット凍結脳切片と海馬初代培養細胞で陽性 対照 本例 自己免疫性脳炎(probable)と診断し,IVIGとIVMPにより症状改善した. 免疫療法前 免疫療法後 Ono Y, et al. Neurol Clin Neurosci 28 April 2023
非対称性の下肢のこわばりと歩行障害を呈し CBSが疑われた2症例 Balint B, et al. Mov Disord Clin Pract. 2014;1:354-356 69歳男性.1型糖尿病. 右下肢の顕著なこわばりと歩行障害. 大脳皮質徴候なし. 71歳男性. 左第Ⅰ趾のジストニア.左下肢の顕著 なこわばりと歩行障害.大脳皮質徴候 なし.頭部MRI正常. 血清GAD抗体陽性 → Stiff limb syndrome
当科経験例. 大脳皮質徴候を認める自己免疫性CBS • 78歳女性,4年の経過で,下肢優位左半身の失行, 皮質性感覚障害,筋強剛,ジストニア,歩行障害が 進行した. • Armstrong 基準 probable sporadic CBD Fuseya K et al. Mov Disord Clin Pract. 2020;7:557-9
CBSを呈した IgLON5抗体関連疾患 IVMPとIVIG 3コースで,失行, 歩行障害,皮質性感覚障害, SPECT,DAT所見が改善.
本邦 IgLON5抗体関連疾患4名の特徴 本日,ポスターP-39 大野陽哉ら. 発症~ 臨床診断 診断 HLADRB1*10:01 DQB1*05:01 免疫療法 78 F 4Y CBS +/+ 有効 失行,歩行障害,皮質 性感覚障害,DaTscan 岐阜大学 54 F 2Y PAF→MSA +/+ 球麻痺,SAS 有効 嚥下障害 岡山大学 田所功先生ら 71 M 2Y MSA (DDx: ALS, IgLON5) +/- 有効 嗄声,便秘・下痢, 無呼吸 山形大学 佐藤大祐先生 ら 72 F 7Y PD→ 呼吸不全, -/+ 有効 低酸素血症 聖マリアンナ 医科大学 水上平祐先生 ら 声帯開大不全 全例 慢性緩徐進行性.CSF細胞増多2例,タンパク↑2例(54, 51)
IgLON5抗体関連疾患 治療と予後の予測因子 Grüter T et al. Brain 2023;146:600-11 • ドイツからの53名の治療反応性に関する検討. • 再発性急性増悪に対する第1選択薬の有効性 は41%(6週以内の治療は反応性良好). • 予後良好の予測因子 ① 発症1年以内の長期の免疫療法 ② 治療前のNF-L 低値
① PSP → IgLON5などまざまな抗体, CBSでは GAD と IgLON5 を検討する 臨床神経 in press 抗体 CV2/CRMP5 傍腫瘍性 Hu Ri IgLON5 DPPX KLHL11 自己免疫性 LGI1 NAE Sez6l2 未知 抗体 GAD 自己免疫性 IgLON5 報告数 1 1 1 1+10 1 1 1 1 1 2 表現型 PSP PSP PSP PSP PSP PSP PSP PSP PSP PSP 合併腫瘍 小細胞肺がん 小細胞肺がん 乳がん 合併腫瘍 4 2 表現型 CBS CBS
② 経過,体重減少・腫瘍,CSF異常, 画像所見正常から疑う 臨床神経 in press • 経過:亜急性 ただしIgLON5抗体関連脳炎は全例慢性の経過. • 顕著な体重減少,腫瘍の合併 • 検査:CSF 異常,典型的画像所見を認めない • 各抗神経抗体に特徴的所見を呈する場合 例:DPPX抗体:下痢,味覚障害,ミオクローヌス • 典型的なPSP/CBSでは存在しないか,極めて稀 (JALPAC 223例の検討). Ono Y et al. Neurology April 25, 2023; 100 (17 Suppl 2)
小括3.自己免疫性 PSP/CBS mimics 1. 近年,PSP/CBSに類似する自己免疫性脳炎/傍腫瘍 症候群の報告が増加している. 2. さまざまな抗体が出現するが,IgLON5やGAD抗体の 測定をまず行う. 3. 非典型的な経過や所見,腫瘍・体重減少,画像所見 正常,CSF異常より疑い,免疫療法の可能性を探る.
C. 治療の可能性を見逃してはいけない その他の注目の自己抗体は?
ジストニアを呈する 自己免疫性脳炎
6ヶ月で眼瞼痙攣と頸部ジストニアを Disord Clin Pract. 2023 呈した35歳フィリピン人女性 Mov https://doi.org/10.1002/mdc3.13517 眼瞼痙攣は読書で増悪し,感覚トリックで改善する.発症6ヶ月後に軽度の精神症状
5ヶ月で頸部 dystonic tremor と発声障害を Mov Disord Clin Pract. 2023 呈した23歳インド人女性 https://doi.org/10.1002/mdc3.13579
抗 NMDAR 脳炎 • 抗NMDAR脳炎症例の90%以上に認められる古典的な神経・ 精神症状を呈さずに,運動異常症を単独で呈することがある. • 1例で頭部MRIで両側基底核,中脳,大脳皮質に異常信号を 認めたが, これら 2 症例ともCSFは正常であった. • 機能性ジストニアと診断されうる症例であるが,自己免疫性 脳炎が原因となることを認識する必要がある.
発作性運動失調と 脊髄分節性ミオクローヌス を呈する自己免疫性脳炎
発作性運動失調症 65歳男性 発作性,再発性歩行失調, 四肢の運動失調,不明瞭 な発話を1日に最大8回 (1〜2分持続)呈した. 起立により誘発された. Gövert F, et al. Brain. 2023;146:657-667.
持続的な脊髄分節性ミオクローヌス Gövert F, et al. Brain. 2023;146:657-667.
抗Caspr2抗体脳炎 contactin-associated protein-like 2 • Caspr2脳炎164人は,LGI1 脳炎105 例と比較し,運動異常症・ 運動失調が多い(35.6% 対 3.8%; P < 0.001). • 種類別では,運動失調(22.6% 対 0.0%),ミオクローヌス (14.6 % 対 0.0%),振戦(11.0 % 対 1.9%)(すべて P < 0.001). • Caspr2脳炎では発作性運動失調(6.7%),分節性脊髄ミオク ローヌス(4.3%),発作性起立性分節性下肢ミオクローヌス (3.7%)も呈する. Gövert F, et al. Brain. 2023;146:657-667.
Caspr2抗体/二重陽性の運動異常症 ミオクローヌス,振戦,「混合運動障害」, Morvan症候群,腫瘍を有する頻度が高い. Gövert F, et al. Brain. 2023;146:657-667.
小括4.NMDAR抗体とCaspr2抗体 • 抗NMDAR脳炎は頸部ジストニアを単独で示しうる. • 抗Caspr2脳炎は,ミオクローヌス,振戦 ,運動失調の 鑑別診断としても検討する.発作性運動失調や分節性 脊髄ミオクローヌスも生じることから,誤ってFMDと診断 しないが必要である.
総括 • SCD/非定型パーキンソニズムでも,非典型的な経過や画像 所見,腫瘍・体重減少,CSF異常より,自己免疫性脳炎の 可能性を疑う. • MSAやHCB signを呈する自己免疫性脳炎は多数ある. • 自己免疫性小脳失調症はまずGAD,mGluR1抗体を測定する. • CCA/IDCAでは少なからず自己免疫性が含まれる. • PSP → IgLON5 などさまざま,CBS → GAD,IgLON5
共同研究者 岐阜大学 木村暁夫先生,吉倉延亮先生,竹腰 顕先生,東田和博先生,大野陽哉先生,山原直紀先生 J-CAT 高橋祐二先生,水澤英洋先生ら JALPAC 中島健二先生,池内健先生,饗場郁子先生,花島律子先生,瀧川洋史先生ら 北海道大学 矢口裕章先生,矢部一郎先生 信州大学医学部内科学第三教室 脳神経内科,リウマチ・膠原病内科 中村勝哉先生 長野県厚生農業協同組合連合会 鹿教湯三才山リハビリテーションセンター 鹿教湯病院 松嶋聡先生,吉田邦広先生 名古屋大学大学院医学系研究科 神経内科学 岸本祥之先生,原一洋先生,勝野雅央先生 国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 雑賀玲子先生,小田真司先生,髙橋祐二先生,水澤英洋先生