多系統萎縮症の診断

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July 11, 24

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第18回パーキンソン病・運動障害疾患コングレス(宇都宮)で使用したスライドです.

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岐阜大学大学院医学系研究科脳神経内科学分野 教授

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各ページのテキスト
1.

多系統萎縮症の診断 下畑 享良 岐阜大学大学院 医学系研究科 脳神経内科学

2.

結論:MSAの診断は必ずしも容易ではない MDS MSA 診断基準の 限界 Imaging mimics 自己免疫性 mimics

3.

MDS MSA criteria の特徴 Mov Disord. 2022;37:1131-1148. • 診断の確実性を 4 つのレベルに分けて定義している. 1. neuropathologically established MSA 2. clinically established MSA 3. clinically probable MSA 臨床診断カテゴリー 4. possible prodromal MSA • 診断に必要な所見の定義が,lexicon(語彙目録)に記載されているので, よく確認する.

4.

優勢な運動症候群により MSA-P または MSA-C に分けられる 必須の特徴 孤発性,30歳以降の発症,進行性 clinically established MSA 中核的臨床所 見 自律神経障害(少なくとも1つ) • 排尿後残量が100 ml以上の原因不明 の排尿困難 • 切迫性尿失禁 • 起立またはヘッドアップティルト後3分 以内の神経原性OH(20/10 mmHg 以上の低下). + 以下の少なくとも1つ以上 levodopa反応性不良のパーキンソニズム 小脳症候群(歩行失調,四肢失調,小脳 性構音障害,眼球運動障害のうち 少なくとも2つ以上) 支持的臨床所 見(運動または 非運動) 少なくとも2つ MRI マーカー 少なくとも1つ 除外基準 なし

5.

優勢な運動症候群により MSA-P または MSA-C に分けられる 必須の特徴 孤発性,30歳以降の発症,進行性 clinically probable MSA clinically established MSA 中核的臨床所 見 以下のうち2つ以上. 自律神経障害(少なくとも1つ) 1.自律神経障害(少なくとも1つ). • 排尿後残量が100 ml以上の原因不明 • 排尿後残尿を伴う原因不明の排尿困難 の排尿困難 • 切迫性尿失禁 • 切迫性尿失禁 • 起立またはヘッドアップティルト試験後 • 起立またはヘッドアップティルト後3分 10分以内の神経原性OH(20/10 mmHg 以内の神経原性OH(20/10 mmHg 以上の低下) 以上の低下). 2.パーキンソニズム + 3.小脳症候群(歩行失調,四肢失調,小脳性 以下の少なくとも1つ以上 構音障害,眼球運動障害のうち少なくとも1つ levodopa反応性不良のパーキンソニズム を有するもの) 小脳症候群(歩行失調,四肢失調,小脳 性構音障害,眼球運動障害のうち ★パーキンソニズムと小脳症候群だけでも, 少なくとも2つ以上) 診断ができる 支持的臨床所 見(運動または 非運動) 少なくとも2つ 少なくとも1つ MRI マーカー 少なくとも1つ 不要 除外基準 なし なし

6.

感度・特異度 発症3年以内の感度は低く要注意! Virameteekul S et al. Mov Disord. 2023 ;38(3):444-452 • 英国 Queen Square Brain Bank の検討. • 対象は病理診断された MSA 103例,非MSA 215例. • 最終段階で感度95.1%,特異度94.0%,正確度94.3%と 優れていたが,初期段階(発症から3年以内)の 感度は62.1%と低めであった.

7.

診断基準にはなお多くの限界がある • mono-system atrophy の診断ができない. • 非典型的MSAの診断ができない(MDS PSP criteriaに おける異型症候群が設けられていない). • 遺伝的要素の関与を否定する傾向が強く,家族性 MSAへの積極的な言及が含まれていない. • 他のパーキンソニズムや mimics をどれだけ除外でき るか不明.

8.

Clinically probable MSAは 種々の mimics が混入しうる 全経過 Case 1 55 M Case 2 65 M 6ヶ月 7年 小脳性 運動失調 + + パーキン ソニズム + + 自律神 経障害 + - 認知機 能障害 + + RBD 診断 - CJD PRPN遺伝子 野生型(MV2) + CJD PRPN遺伝子 4-octapeptide repeat insertion Martin NB, et al. Mov Disord Clin Pract. 2023;10:496-500.

9.

小括1 • 新診断基準は早期診断の実現を目指したが,発症から 3年以内の感度は不十分である. • 新診断基準にはなお複数の問題があり,とくに mimics をいかに除外するかは重要な課題である.

10.

MDS MSA 診断基準の 限界 Imaging mimics 自己免疫性 mimics

11.

さまざまな mimics が存在する 自律神経障害を合併する パーキンソニズム MSA-P mimics 多系統変性を伴う遺伝性パーキン ソニズムの孤発例 putaminal rim sign DLB,PD SNCA遺伝子変異,家族性痙性対麻痺, Perry症候群,高齢発症ハンチントン病, RFC1遺伝子関連疾患 SCA17, HDL2,Wilson病

12.

さまざまな mimics が存在する 自律神経障害を合併する パーキンソニズム MSA-P mimics MSA-C mimics 多系統変性を伴う遺伝性パーキン ソニズムの孤発例 DLB,PD SNCA遺伝子変異,家族性痙性対麻痺, Perry症候群,高齢発症ハンチントン病, RFC1遺伝子関連疾患 putaminal rim sign SCA17, HDL2,Wilson病 パーキンソニズムを合併する PSP-C,CBD-OPCA,プリオン病(失調 小脳性運動失調 型),傍腫瘍性小脳変性症等 多系統変性を伴う遺伝性小脳性 運動失調症の孤発例 hot cross bun sign/ MCP sign 常 染 色 体 顕 性 / 潜 性 SCD , FXTAS , ALDCTX,C9orf72遺伝子関連疾患 RFC1遺伝子関連疾患 多数の報告(次スライド)

13.

HCB sign があっても MSA とは限らない! この10年で HCB sign の 鑑別診断は劇的に増加した! Prasad S et al. Mov Disord Clin Pract 2022; 9:1018-1020.

14.

SCA2/3/7/8で出現する SCA7 SCA8 SCA2 遺伝性SCD Lee YC et al. Eur J Neurol 2009;16, 513-6

15.

SCA2では25%に出現する 臨床・画像的に MSA と鑑別は困難 SCA2:25.7%, SCA3:1.3% Lee YC et al. Eur J Neurol 2009;16, 513-6

16.

SCA27B で HCB sign は出現する Matsushima M et al. J Neurol 2024;271, 3643-7 臨床診断 Possible MSA-C 発症5年目 FGF14 210 リピート 臨床診断 Probable MSA-P 初診時 FGF14 238 リピート • 改訂Gilman分類を満たすMSA 411例中2例(0.48%)に SCA27B が混在. • 眼振はいずれの症例もなく,リピート数も250未満であった.

17.

SCA27Bにおける下眼瞼向き眼振 Shirai S, et al. J Neurol Sci. 2023;454:120849. 眼振を合併する頻度は高いが,必ずしも存在するわけではない.

18.

CANVAS/RFC1遺伝子関連SD Cerebellar ataxia, neuropathy, vestibular areflexia syndrome Wan L,et al. Ann Neurol. 88:1132-1143. 当科例 spasmodic cough

19.

RFC1遺伝子関連スペクトラム障害は MSAの表現型を示しうる 認知機能障害 動揺視 ドライアイ・マウス Shukla S, et al. Mol Neurobiol 2024 Jun 19 黒質線条体機能障害 小脳性運動失調 両側前庭機能障害 嚥下障害 spasmodic cough 体性感覚障害 神経障害性疼痛 自律神経障害 起立性低血圧 発汗異常 便秘・下痢 排尿障害 性機能障害 表在感覚障害 アロディニア 不安定歩行 姿勢保持障害 運動緩慢

20.

Bedside head impulse test は 重要な評価項目になった! Tozza S, et al. Neurol Genet 2021;7:e541 2人組で診察 頸をリラックス 壁のマークを 見ていただく 頭部を両方向に急速に回転させる.前庭動眼反射の障害を確認し, 指標を捉えるための衝動性眼球運動(catch-up saccade)を観察する.

21.

両側橋梗塞の1年後に出現 Roh SY et al. J Mov Disord 2013;6, 37-9

22.

HCB(+) 自己免疫性小脳失調症① • 65歳男性 • 亜急性発症後,30ヶ月の経過で,小脳性 運動失調とRBDを呈した. • 小脳・橋の萎縮,hot cross bun sign(+) • CSF 細胞数・タンパクは正常 • Homer-3抗体陽性(細胞内抗原) • 免疫療法を施行したが無効. Liu M, et al. Neurol Neuroimmunol Neuroinflamm. 2021;8(6):e1077.

23.

HCB(+) 自己免疫性小脳失調症② Majed M, et al. Mayo Clin Proc. 2022;97:122–3. • 36歳男性. • KLHL11 抗体陽性(細胞内抗原) → 潜在性の精巣腫瘍 • 治療については記載なし. T2WI FLAIR

24.

HCB(+) 自己免疫性小脳失調症③ Liu Y, et al. JAMA Neurol. 2023;80:207–8. • 40歳女性.潜行性に失調性歩行,複視,仮性球麻痺を呈した. • Ri 抗体陽性 → 潜在性の乳がん • ホルモン療法,手術を施行,改善不良.

25.

HCB(+) 自己免疫性小脳失調症③ Liu Y, et al. JAMA Neurol. 2023;80:207–8. この症例はその後,中小脳脚(MCP)サインも呈した T2WI FLAIR

26.

小括2 • MSAのimaging mimicsとして多くの疾患が報告されている. • 自己免疫性小脳失調症のHCB sign の報告が増加して いる (Homer-3,KLHL11,Ri,GAD,amphiphysin,・・・).

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MDS MSA 診断基準の 限界 Imaging mimics 自己免疫性 mimics

28.

最近,HCB sign を呈する自己免疫性 mimicsが もうひとつ報告された 55歳インド人女性,歩行障害にて発症から3年目の画像. 運動失調,パーキンソニズム,尿失禁,RBDを認めた. Vijayaraghavan A, et al. Parkinsonism Relat Disord. 2024 Mar 4;122:106073.

29.

この疾患はタウPETで,橋,延髄背側,小脳に タウ沈着を認める Theis H et al. Neurology. 2023 Oct 25:10.1212/WNL.0000000000207870.

30.

IgLON5抗体関連疾患 • IgLON5(immunoglobulin-like cell adhesion molecule 5)は, 神経細胞膜表面に発現する細胞接着分子. • IgLON5抗体は,神経細胞の細胞骨格の維持を阻害する. • 病態として自己免疫性タウオパチーが推測されている. Acta Neuropathol 2016;132:531-43 Physiol Rev 2017;97:839-87

31.

当科で診断した4症例中3例が 経過中 MSA を疑われている 初発症状 運動 失調 Ohno Y et al. Parkinsonism Relat Disord. 2024 Jul;124:106992. doi: 10.1016/j.parkreldis.2024.106992. パーキ ンソニ ズム 自律 神経 障害 睡眠 障害 その他 臨床診断 78F 左半身の失行, - 歩行障害 + - SAS ジストニア, 皮質性感覚障害 CBS 54F 動悸 嚥下障害 + - + OH 過眠 RBD PS 頸部筋力低下 PAF→MSA-C 71M 複視 + - + OH SAS VCAP 線維束性収縮, 有痛性筋痙攣. 舌ミオリズミア MSA-C or ALS 72F 歩行障害 - + + OH 不眠 RBD PS VCAP 線維束性収縮, PD → MSA-P 水平方向性眼球運動 障害,呼吸不全 全例;慢性進行の経過,PS:パラソムニア,VCAP:声帯開大不全

32.

免疫療法は不十分であるが 何らかの改善をもたらす Ohno Y et al. Parkinsonism Relat Disord. 2024 Jul;124:106992. doi: 10.1016/j.parkreldis.2024.106992. 臨床診断 診断 までの 期間 HLADRB1*10:01 DQB1*05:01 CSF 異常 免疫療法の種類 改善した項目 78F CBS 4Y +/+ CC 2 P 54 OCB- IVIG有効 失行,歩行障害,皮質性感 覚障害,DaTscan 岐阜大学 54F PAF→MSA-C 2Y +/+ CC 6 P 51 IVMP, IVIG有効 自覚的な嚥下障害 岡山大学 田所功先生 ら 71M MSA-C or ALS 4M +/- CC 4 P 37 OCB+ IVMP, IVIG,PLEX有効 球麻痺症状,睡眠障害, 眼振,運動失調 山形大学 佐藤大祐先 生ら(Intern Med. 2024 Jan 2.) 72F PD → MSA-P 7Y -/+ CC 0 P 17 OCB- IVMP有効 低酸素血症,Babinski徴候 MRIは全例正常,DAT scanは72Fのみ取り込み低下 聖マリアン ナ医科大学 水上平祐先 生ら

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舌のミオリズミア Sato D, et al. Intern Med. 2024 Jan 2. doi: 10.2169/internalmedicine.2865-23. (山形大学) Gaig C et al. Neurology. 2021;97(14):e1367-e1381

34.

現在は5病型が報告されている 睡眠障害型(パラソムニア,睡眠関連呼吸障害) 球麻痺症候群型 運動異常症型 進行性核上性麻痺(PSP)様症候群 大脳皮質基底核症候群(CBS) 小脳症候群 → MSA mimics になりうる 認知機能障害型 神経筋過興奮型 Gaig C et al. Neurology 2017;88:1736-1743 下畑ら.臨床神経2021;61:825-832.

35.

Clinical questions ① HCB(-)の症例のなかにも自己免疫性脳炎が 存在しているのではないか? ② どのようなときに自己免疫性 mimics を疑い, 適切に見出すべきか?

36.

疑問を解決するために scoping review を行った MSA,PSP,CBSの表現型 を呈した自己免疫性脳炎 の38論文を検討した. (MSAの結果のみ提示) 山原直紀ら.臨床神経63:497-504, 2023

37.

①さまざまな抗体が MSA mimicsで出現する 山原直紀ら.臨床神経63:497-504, 2023を改訂 抗体 amphiphysin ITPR1 KLHL11 傍腫瘍性 Hu CV2/CRMP5 Ri 報告数 1 1 1 1 2 1 表現型 MSA-C MSA-C MSA-C MSA-P MSA MSA/ALS 合併腫瘍 乳がん 乳がん 精巣腫瘍 胸腺腫瘍 肺小細胞がん 乳がん

38.

①さまざまな抗体が MSA mimicsで出現する 山原直紀ら.臨床神経63:497-504, 2023を改訂 抗体 amphiphysin ITPR1 KLHL11 傍腫瘍性 Hu CV2/CRMP5 Ri GAD Caspr2 LGI1 Homer-3 NAE 自己免疫性 Zic4 報告数 1 1 1 1 2 1 3 2 1 2 2 1 表現型 MSA-C MSA-C MSA-C MSA-P MSA MSA/ALS MSA-C+MSA-P MSA MSA MSA-C MSA-C MSA-C 合併腫瘍 乳がん 乳がん 精巣腫瘍 胸腺腫瘍 肺小細胞がん 乳がん AP3B2 1 MSA-C Adaptor-related protein complex-3 subunit -2 (Neurology 2024) CV2/CRMP5 Glycin R Ma2 1 1 1 MSA-P MSA-P MSA-P

39.

② 自己免疫性 mimics を疑うヒントは非典型的経過, CSF異常,画像所見. 山原直紀ら.臨床神経63:497-504, 2023 • 経過:亜急性の経過,自然回復の時期あり ただし慢性の経過もありうる(3/14例) • 腫瘍の存在,顕著な体重減少 • CSF:タンパク↑,IgG index↑,OCB陽性 ただし正常もありうる(6/11例) • 画像:疾患に特徴的な所見を認めない(7/17例) 非典型的な HCB sign を認める場合

40.

非典型的 HCB sign では間隔をあけて再検する J Clin Neurosci. 2020; 76:238-240. 6週間後 amphiphysin抗体陽性自己免疫性小脳失調症 非典型的 HCB sign は十字が中央にない!

41.

MSA では通常,十字は中央にある! Control MSA-C (赤)浅橋線維と深橋線維 → ともに萎縮し中央に位置 寺島健史.PROPELLER法を用いた three-dimensional anisotropy contrast (3DAC)

42.

トピックス 未知の抗小脳抗体陽性例(1) 東田和博ら.臨床神経 in press • clinically probable MSA-C の72歳男性 • 経過中,自然経過で改善した時期がある! • 軽度の小脳萎縮,大脳萎縮,大脳白質信号 変化.HCB(-) • CSF 細胞数 11/l,タンパク 56 mg/dl, IgG index↑,OCB(+) • 測定可能な既知の抗体:陰性

43.

陰性を確認した自己抗体 Serum CSF Amphiphysin CV2/ CRMP5 PNMA2 Ri Yo Hu Zic4 Recoverin SOX1 Titin GAD Tr/ DNER LGI1 IgLON5 VGCC mGluR1 GFAP immunoblot immunoblot immunoblot immunoblot immunoblot immunoblot immunoblot immunoblot immunoblot immunoblot immunoblot, ELISA immunoblot cell-based assay cell-based assay radioimmunoassay cell-based assay cell-based assay

44.

ラット小脳凍結切片を用いたtissue-based assay 対照 患者 プルキンエ細胞の細胞質が患者血清中IgGで染色される IVMPでSARA 9→3まで改善!

45.

トピックス 未知の抗小脳抗体陽性例(2) 東田和博ら.臨床神経 in press • clinically established MSA-C 68歳男性 • 発症1年以内に,胃ろう造設を必要とする 急速な進行を認める! • 中等度の小脳萎縮.HCB(-) • CSF 細胞数 1/l,タンパク 38 mg/dl, IgG index 正常,OCB( - ) • 測定可能な既知の抗体:陰性,TBA陽性 • IVMP×2 で SARA 30→23に改善.

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2症例とも自己免疫性小脳失調症と診断した (Proposed diagnostic criteria for autoimmune cerebellar ataxia) ① 小脳症候群を単独ないし優位に認め, 頭部MRIは正常あるいは軽度の小脳萎縮にとどまる ② 診断マーカーとして確立している抗神経抗体陽性 ③a 亜急性発症(3ヶ月以内の急速な発症) b 他の自己免疫疾患の既往 c 脳脊髄液細胞数増多(>5/mm3)またはOCB陽性 Dalmau J, Graus F. Cambridge Univ Press. 2022. d 小脳に限局する炎症を示唆するMRI所見 e グリアジン抗体もしくは限られた情報しかない抗神経抗体陽性 f 過去3週間以内の感染症エピソードまたは2年未満の癌の診断 ④ その他の疾患の合理的除外 Definite ①+②+④,Probable ①+③+④

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非典型的経過とCSF異常より疑う 小脳萎縮があっても免疫療法は有効! 症例1(72 M) 症例2(68 M) MDS-MSA criteria clinically probable MSA-C clinically established MSA-C 経過 改善した時期あり 亜急性 CSF 異常 あり なし 小脳萎縮 軽度 中等度 発症から治療までの期間 6ヶ月 12ヶ月 免疫療法効果(SARA) 9→3 30→23

48.

小括3 1. MSAに類似するものの,非典型的な経過や症候(舌ミオリズミア, 眼球運動制限,線維束性収縮,有痛性筋痙攣)を認める場合, IgLON5抗体関連疾患も鑑別診断に加える. 2. MSAの診断基準を満たしていても,亜急性の経過,経過中の 改善エピソード,CSF異常を認めるときは自己免疫性小脳 失調症の可能性を疑い,治療の可能性を逃さない.

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総 括 1. MSAの診断は容易ではない.これまでMSAと診断してきた 症のなかに mimics が含まれている可能性は否定できない. 2. 非典型的な経過や症候,bedside HIT,脳脊髄液所見,遺伝子 診断から mimics を見出す必要がある. 【共同研究者】 岐阜大学大学院 医学系研究科 脳神経内科学 木村暁夫,吉倉延亮,東田和博,竹腰 顕,大野陽哉,森泰子,山原直紀