機能性神経障害に併発する頭痛の診療

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June 22, 26

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日本頭痛学会HMSJ 2026 Gifu にて使用したスライドです.

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岐阜大学大学院医学系研究科脳神経内科学分野 教授

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1.

機能性神経障害に 併発する頭痛の診療 岐阜大学大学院医学系研究科脳神経内科学分野 下畑 享良

2.

COI 開示 筆頭発表者:下畑 享良 岐阜大学大学院医学系研究科脳神経内科学分野・教授 本講演に際して開示すべきCOIはありません.

3.

講演の目的 • 機能性神経障害にしばしば頭痛を併発することが知られている. • 本講演では,まず機能性神経障害の基本的知識について概説する. • その後,機能性神経障害に併発する頭痛へのアプローチを明らか にする目的で行ったスコーピングレビューの結果を提示する.

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FNDの総論 FNDと頭痛 Topics;抗体の内在化について 診断と 治療

5.

機能性神経障害 (functional neurological disorder;FND) • 不随意運動,けいれん発作,筋力低下,感覚障害など 多彩な症候を呈する. • さまざまな病名で呼ばれてきた.ヒステリー,心因性 疾患,解離性障害,転換性障害,身体化障害,身体 表現性障害,心気症,Munchausen症候群,詐病など. 演者作成

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なぜ機能性神経障害と呼ぶようになったのか? • ヒステリーや心因性,偽性という用語は,診断として 不正確なだけでなく,患者に不利益を与える. • FNDは,心と身体のいずれが原因かを言及せず, 患者と共有しやすく,症状の回復にプラスになるため 使用されるようになった. 演者作成

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パンデミック後,増加した機能性神経障害 2019 2019 2019 小児 2020 Hull M, et al. Neurol Clin Pract. 2021t;11(5):e686-e690. 2020 2020 成人 全体 ベイラー医科大学 女性が75.6%.

8.

COVID-19ワクチンにより増加した Pilotto A, et al. Eur J Neurol. 2024:e16191. 神経疾患は? 非接種群 ワクチン非接種群と接種後30日 以内に入院した対象者の比較 FND(12.3%対3.6%;OR 4.2) 頭痛(10.8%対5%;OR 4.1)

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機能性神経障害において まず医療者が共有すべきこと 機能性神経障害(FND)は,かなりの苦痛と障害を伴う. 症状は偽りではない. Prof. Jon Stone University of Edinburgh Stone J, Burton C, Carson A. Recognising and explaining functional neurological disorder. BMJ. 2020 Oct 21;371:m3745. この疾患に取り組 む必要性を理解し, 仲間とともに書籍 を作成した.

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ではいかに見逃さずに診断するか? 病歴から疑うヒント • 若い女性 • 急性発症,非進行性の経過,身体の多数の部位の痛み • 多数の自覚症状(や違和感など) • 疾病利得(症状があることで何らかの利益を得ること) • 精神疾患,自傷行為の存在 • 軽度の外傷が誘因 • 医療職(ストレスと神経症状の知識への暴露:Eur J Neurol. 2024;31:e16056)

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2つの診断の鉄則 1.除外診断をされるべきではない 全ての器質的疾患を除外するには膨大な検査が必要となる (e.g.頭部MRI,脊椎MRI,脳脊髄液検査,種々の神経生理検査など…) 症状の難治化を助長しかねない →①罹病期間が長くなるほどFNDは治癒しにくい ②訴訟や経済的問題が生じる (e.g. 誤診に対する訴訟,長期療養による失職) 演者作成

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2.神経症候により診断すべきである 歴史的に,Babinskiも器質性と機能性の麻痺を 神経症候から鑑別できると主張し,2つのBabinski 徴候の発見に至った. Joseph Francois Felix Babinski (1857-1932)

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2つ目の徴候は,閉眼を呈する疾患の 鑑別に役立つ 器質的疾患を示唆する Lancet Neurol. 2015;14(12):1196-205.

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さまざまな機能性神経障害 ①機能性筋力低下 ⑨機能性チック様行動 ②機能性感覚障害 ⑩機能性顔面運動障害 ③機能性歩行障害 ⑪機能性姿勢保持障害 ④機能性発作(とくに頭痛と関連) ⑫発持続性知覚性姿勢誘発めまい ⑤機能性視覚障害 ⑬機能性パーキンソニズム ⑥機能性振戦 ⑭機能性運動失調 ⑦機能性ミオクローヌス ⑮機能性認知障害 ⑧機能性ジストニア 演者作成

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機能性発作 ✕心因性非てんかん性発作 (Functional seizure; FS) (Psychogenic nonepileptic seizures: PNES) 臨床的にはてんかん発作や失神 に類似するが,脳波異常や 脳への灌流低下は伴わない Neurology Board Review @Neurology

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避けねばならない誤診と医原性の害 下畑享良.臨床神経 2026;66(1):1-6. FNDの診断に不慣れ,否定的な医師 不信感 診断の遅れ 不要な検査・処置 誤診 FNDへの治療介入の遅れ ダメージ 不要な薬剤 FNDの重症化 (不可逆的変化)

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脳神経内科医が行うべきことは多い! 1. 適切な問診をする 2. 診断を適切に伝える(認知行動療法につながる) 3. 1度の診察だけでなく,フォローする 4. 関連症状の治療をする(頭痛が含まれる) 5. 治療チームを作る(リハビリ,心理療法士,精神科等) 演者作成

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関連症状の治療をする • 6ヵ国から1048名が参加したオンライン調査. • 多くの患者は関連症状を呈していた (疲労93%,記憶障害81%,頭痛70%, 排尿障害45%). • 精神科的合併症も比較的多かった (うつ病43%,不安症51%,パニック障害 20%,PTSD 22%). • FND患者は苦痛を伴う複数の症状を併発す ることから,治療標的は少なからずある. Butler M, et al. Eur J Neurol. 2021;28:3591-3602.

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脳の誤作動を修正するリハビリテーションを行う Hallett M, et al. Lancet Neurol 2022;21:537-550. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2015;86:1113-9. • 「動かそう」と強く意識すると,脳は過剰に予測を立ててしまい,実際の身体から の感覚入力とあいだのずれが拡大し,悪化する(予測符号化のエラー;後述). • リハビリでは「動かそう」と意識すると悪化する.「どう意識しないか」を練習する. • 音やリズム,物体操作など外の目的に注意を向け,自動的な動作を誘発する. • 手の麻痺であれば「手を動かす」ではなく,「ボールを投げる」「風船を打つ」と 考える.

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注意を症状からそらし,症状の軽減を図る 21歳女性 眼瞼開閉障害 口周囲のけいれん ジャグリングの導入 ビデオ・フィードバック による自己認識と症状 の制御 3週間後,症状消失 その後1年以上,再発 なし. Tremor Other Hyperkinet Mov (N Y). 2024 Jun 28;14:29.

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FNDの総論 FNDと頭痛 診断と 治療 パンデミック以降,FND患者の受診が増加, その診療で頭痛の併存の多さに気付いた!

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スコーピング・レビューの目的 • FNDに併存する頭痛の病型,頻度,臨床的特徴,病態機序,診断 および治療を明らかにすること • なおFNDと頭痛が同一患者に共存する状態を,因果関係を前提と しない意味で「併存(comorbidity)」として扱った. 下畑享良.臨床神経2026 in press

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レビューの方法 査読者が1名である点を除いてはスコーピング レビューのための報告ガイドライン日本語版: PRISMA-ScRに則って行った. 下畑享良.臨床神経2026 in press

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結果1.機能性神経障害のなかの頭痛 → 病型としては片頭痛が多い! 反復性頭痛を認めた機能性運動異常症患者 40人の検討 Riva E, et al. Headache 2025;65:197-201. FS患者における片頭痛併存のオッズ比 Elliott JO, et al. Epilepsy Res 2014;108:1543-1553. Kerr WT, et al. Epilepsia 2017;58:1852-1860. Luthy SK, et al. Hosp Pediatr 2018;8:321-329.

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結果2.FNDにおける片頭痛の頻度は5.8〜53% Stone J, et al. Brain Commun 2025;7:fcaf288. ★ ★ 頻度のばらつきは,研究デザイン,FNDの病型,片頭痛の診断基準の厳密さ の違いによる可能性.

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結果3.片頭痛患者に機能性発作や 陽性徴候を認める インドの検討では,片頭痛患者の 23.2%(152/656人)に,頭痛発作中 に生じるFSを認めた. Neurol India 2010;58:631-633. スイスの前向き観察研究 既知のFNDを除外した頭痛・顔面 痛患者の43%(43/101人)に陽性徴 候が認められ,頭痛日数・増悪日 数・痛みの強度が高く,特に増悪日 数との関連が有意であった. J Neuropsychiatry Clin Neurosci 2026;38:84-92. 片頭痛とFNDは併存する(一部では症状の重症度や病態機序を共有し,相互に影響する?)

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結果4.FNDに伴う片頭痛は重症,かつ特徴的 • FND患者における片頭痛は発作頻度が高く,発作持続時間も長い. • 機能性運動異常症患者の頭痛による生活支障度は高く,HIT-6は62と高く, 65%(26/40人)が月に10日以上の頭痛を経験していた. • 精神的ストレスを誘因とすることが多く,抑うつが強い. • 非視覚的前兆(感覚・運動・言語症状など)を呈する頻度が高い. • 機能性発作の直前に片頭痛発作が出現する例がある. Shepard MA, et al. Seizure 2016;34:78-82. Riva E, et al. Headache 2025;65:197-201. Uniyal R, et al. J Neurosci Rural Pract 2023;14:84-90. Duque L, et al. Epilepsy Behav 2023;147:109437.

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病態をどう理解するか? まずFNDでは予測符号化のエラー(仮説)を理解する 「でも実際は動いている」 という情報が入らない 脳は「こうであるはずだ」という予測を常に生成し, 実際の感覚入力との誤差を最小化し続ける装置 ① 上位からの予測(トップダウン) 「腕に注意が向く」と さらに異常予測強化 ② 下位からの感覚入力(ボトムアップ) ③ 両者の差=予測誤差 を統合して知覚や運動を作る(予測符号化). しかしFNDでは予測が過剰に強い. 逆に実際の身体感覚入力が弱い. このため予測誤差が適切に更新されない. 「この腕は力が入らないはずだ」 身体への注意が異常予測をさらに強化. Hallett M, et al. Lancet Neurol 2022;21:537-550.

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頭痛の病態をどう理解するか?仮説1. FNDも片頭痛も脳への過負荷の結果,生じる フェイルセーフ (安全装置) アロスタルシス負荷 環境応答に伴う脳への 過剰なストレスの蓄積 Stone J, et al. Brain Commun 2025;7:fcaf288. 片頭痛発作を,過負荷となった脳が恒常性を維持 するために作動させるフェイルセーフ機構,すなわち 感覚入力を遮断して脳の状態を「リセット」する防御 反応と解釈する.

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仮説2. 感覚処理障害 外部からの感覚入力を脳が適切に調節できない. 痛みのサインを「危険なもの」と誤って解釈してしまい, それが不安を呼び,症状を長引かせる原因となる McCombs KE, Neurol Clin Pract 2024;14:e200286. 仮説3.拡延性脱分極の関与 FND患者の脳外科手術周術期の頭蓋内電極記録において, FND症状の発現と一致してSDが確認された症例がある. SDは一過性の脳内ネットワークの機能不全を介して,FND 症状の誘因となる可能性がある. Nwafor DC, et al. BMJ Case Rep 2025;18:e266260.

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FNDの総論 FNDと頭痛 診断と 治療

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診断の注意点1.救急現場における対処 • FNDと片頭痛はstroke mimicsの二大原因であり,Strokeとの鑑別が求めら れることがある.しかし両者が併存しうることを知っていくことは有用である. • 若年女性で,運動・感覚症状を突然発症する場合には,FNDの確率が 高いが,さらに片頭痛を合併する場合にはFNDの可能性が高まる. • 脳卒中の診療においても陽性徴候を確認し,FNDを適切に鑑別することは, 不要な血栓溶解療法を回避し,早期に適切な治療へと繋げるために重要 である. Reid JM, et al. Scott Med J 2012;57:209-211. Jones AT, et al. Eur J Neurol 2020;27:18-26.

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1つの陽性徴候に引きずられ 診断の注意点2.FNDと過剰診断しない • FNDの診断がつかない頭痛患者の43%に,陽性徴候が認められることが あるため(前述),単独の陽性徴候だけで,FNDと診断すべきではない. • 最初に与えられた情報(アンカー=錨)に無意識に引きずられ,その後の 判断が歪められてしまい,器質的疾患を見逃すアンカリング・バイアスへの 警戒が不可欠である.特に脳静脈洞血栓症は,頭痛に加え,FNDと紛らわ しい変動する神経症候を呈することがあり,誤診リスクがある. Morel E, et al. J Neuropsychiatry Clin Neurosci 2026;38:84-92. Castleberry D, et al. J Emerg Med 2025;79:639-645.

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つまり,FNDの過剰診断も過小診断も避ける (*) 中等度以上の頭痛を有する 機能性運動障害患者での トリプタンの使用率は15%に とどまり,片頭痛が過小評価 されている. Headache 2025;65:197-201. • 単一の陽性徴候だけで,FNDと決めつけてしまう. • アンカリング・バイアスにより,FNDと決めつけてしまい, 静脈洞血栓症のような器質性疾患を見逃す. • 心因性や緊張型頭痛と決めつけ,片頭痛を見逃し, 治療機会(トリプタンや予防薬)を失う(*) • FND症状が遷延化する.

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治療1.片頭痛治療によるFNDの改善 • FNDと片頭痛は,共通する病態基盤や増悪因子を有することから, 相互に影響し合う病態として統合的に治療する必要がある. • FSと片頭痛を併存する患者に 片頭痛予防療法を行い,73% の症例でFSと頭痛の頻度が ともに50%以上減少したとい う報告がある. Stone J, et al. Brain Commun 2025;7:fcaf288. Duque L, et al. Epilepsy Behav 2023;147:109437.

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治療2.非薬物療法(感覚特性と認知への介入) • 患者の「感覚過敏」や「低登録」に合わせて,生活環境における「感覚の 刺激(光,音,触覚)」が多すぎたり少なすぎたりしないよう,自分の特性 に合った適切な量にコントロールする工夫する(感覚ダイエット). • 陽性徴候を用いて,脳の機能不全であることを教育する. • FND患者は精神的ストレスが頭痛の誘因になりやすく,不安や症状につ いて繰り返し悩み続けてしまう「反芻」や解離傾向が強いことも明らかに なっているため,心理的要因へ介入する認知行動療法を併用する. Popkirov S, et al. Epileptic Disord 2019;21:529-547. McCombs KE, et al. Neurol Clin Pract 2024;14:e200286.

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治療戦略3.新たな治療標的の可能性 拡延性脱分極のカスケード • 拡延性脱分極(SD)がFND症状の形成に 関与する可能性がある(前述). • SDの抑制作用を持つNMDA受容体拮抗薬 (メマンチンや低用量ケタミン)が有効で あった症例が報告されている. Nwafor DC, et al. BMJ Case Rep 2025;18:e266260. Dixit R, et al. Epilepsy Behav 2013;28:137-140.

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まとめ • FNDでは片頭痛をしばしば合併し,相互に増悪しうる. • 非視覚的前兆を呈することが多く,生活支障度も高い. • 心因性と片付けずに,ICHD-3に則って診断する. • 病態としてアロスタルシス負荷や予測符号化エラーが根底にある. • 陽性徴候は重要だが,単一の徴候のみで診断しない. • 片頭痛に対する治療を適切に行う. • 感覚ダイエットや認知行動療法を併用する.

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Topics;抗体の内在化について • 自己免疫性脳炎 • CGRP受容体抗体(エレヌマブ)

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自己免疫性脳炎におけるラット脳を用いた tissue-based assay(脳脊髄液,血清) Neuropil pattern 細胞表面抗原に対する抗体 NMDAR, IgLON5,LGI1, AQP4 → 内在化 Intracellular pattern 細胞内抗原に対する抗体 Yo, Hu, GAD, GFAP 演者作成

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NMDAR抗体によるNMDA受容体の内在化 受容体に必須のGluN1サブユニットに抗体が結合 受容体を架橋(クラスター化) 受容体はシナプス外部位へ移動 エンドサイトーシス 内在化(架橋された受容体,相互作用タンパクも) NMDA受容体媒介電流の消失 長期増強の重度障害 興奮性・抑制性バランスの破綻 Cells. 2023 Dec 20;13(1):15.

42.

自己抗体はIgLON5の内在化とタウ局在異常を招く Science Advances.2026;12(20):eaec2042. 抗体による内在化は単に標的物質の機能障害のみにとどまらない!

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CGRP受容体の内在化 ERN260011RM1 2026年5月作成 CGRP受容体の内在化(概念図) ⚫ CGRP受容体はCGRPが結合すると、アレスチン依存的にエンドソーム内に取り込まれ(内在化)、 分解又は再利用(リサイクリング)などの経過を辿る(下図)。 ⚫ 内在化したエンドソームにおける持続的なシグナル伝達(③-b)に対するCGRP関連薬の作用が 注目されている。 RAMP1 AMY1受容体も片頭痛の発症や痛みの機序に関与 CGRP ① 細胞膜 CLR RAMP1 CGRP受容体 CGRP受容体 ② ③-c AMY1受容体※ リサイクリング エンドソーム ① 細胞膜上に存在するCGRP 受容体(CLR/RAMP1複合体) にCGRPが結合する ② CGRPとCGRP受容体は、アレ スチン依存的にエンドソーム 内に取り込まれる(内在化) ③-a リソソームへ輸送され、分解 される ③-b PKC及びERKを介した持続的 なシグナル伝達に関与する ③ーc リサイクリングエンドソー ムで、CGRPは分解、アレス チンは解離され、 CGRP受容 体は細胞膜に再分布される アレスチン ③-a CTR ③-b リソソーム ERK PKC 再利用 ※ AMY1受容体(CTR/RAMP1複合体) もCGRPに対して高親和性を示すが、 その調節過程は不明である CGRP:カルシトニン遺伝子関連ペプチド、CLR:カルシトニン様受容体、CTR:カルシトニン受容体、ERK:細胞外シグナル制御キナーゼ、 PKC:プロテインキナーゼC、RAMP1:受容体活性調節タンパク質1 Gingell JJ et al. Trends Pharmacol Sci 2019; 40: 71-83より改変

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CGRP受容体の内在化 ERN260011RM1 2026年5月作成 抗CGRP抗体及び抗CGRP受容体抗体における CGRP受容体とAMY1受容体の内在化(in vitro) ⚫ 生細胞イメージングにて、エレヌマブはCGRP受容体及びAMY1受容体を介した内在化が観察 された。一方、対照抗体及びフレマネズマブではこれらの内在化は観察されなかった。 CGRP受容体 ① エンドソーム CLR 抗体 EEA1 Merged ② CLR エンドソーム 抗体 Rab11 Merged ③ CLR リソソーム 抗体 LAMP1 Merged アイソタイプ 対照抗体 抗CGRP抗体 フレマネズマブ 矢印;CGRP受容体 の内在化 抗CGRP受容体抗体 エレヌマブ AMY1受容体 5mm ④ CLR 抗体 EEA1 Merged ⑤ CLR 抗体 LAMP1 Merged アイソタイプ 対照抗体 抗CGRP抗体 フレマネズマブ 抗CGRP受容体抗体 エレヌマブ • 受容体内在化により受容体が分解さ れ,効果の長期的持続につながる 可能性がある. • AMY1受容体の内在化も効果の発現 に関与している可能性がある. • CGRP抗体では内在化は生じない. 5mm 【対象・方法】①②③では、HEK293SCGRP(CLR-GFP/ RAMP1-myc)細胞を、①は早期エンドソームマーカーであるEEA1、②はリサイクルエンドソームマーカーである Rab11、③はリソソームマーカーであるLAMP1で染色したアイソタイプ対照抗体、フレマネズマブ又はエレヌマブと共に37℃で1時間インキュベートした。 ④⑤では、HEK293SAMY1(CLR-GFP/ RAMP1-myc)細胞を、④はEEA1、⑤はLAMP1で染色したアイソタイプ対照抗体、フレマネズマブ又はエレヌマブと 共に37℃で1時間インキュベートした。 Bhakta M et al. Cephalagia 2021; 41: 499-514

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エレヌマブは片頭痛に関与する複数の経路を遮断する シグナル伝達への 影響 薬剤 標的 内在化 受容体表面密度 への影響 エレヌマブ CGRP受容体 あり 減少 複数のシグナル伝達の 遮断の可能性 CGRP抗体 CGRPリガンド なし 変化なし CGRPシグナルの遮断 変化なし エンドソーム内のCGRP 受容体にもアクセス可能 ゲパント類 CGRP受容体 なし エレヌマブは,AMY1受容体(カルシトニン受容体/RAMP1複合体)にも結合・内在化し,アミリンによるシグナルも 遮断する.またアドレノメデュリン(片頭痛を誘発,侵害受容と神経炎症に関与)のシグナル伝達も阻害する. Trends Pharmacol Sci. 2019 Jan;40(1):71-83. Cephalalgia. 2021 Apr;41(5):499-514.

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まとめ • 抗体による内在化は,受容体等の架橋,エンドサイトーシス,分解を 引き起こす. • 自己免疫疾患では病態メカニズムとして関与し,免疫療法の標的と なる. • 片頭痛における免疫療法で,CGRP受容体抗体は,CGRP抗体や ゲパントと比較し,受容体内在化をもたらし,複数の経路を遮断する 点で大きな違いがある. ご清聴,ありがとうございました.