スクラムマスターの自己理解から始めるチームの生命構造

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August 31, 22

スライド概要

スクラムフェス仙台2022 で開催しました。NVC(非暴力コミュニケーション)、ザ・メンタルモデルの観点から、個人の内的世界の理解を通じて、チーム全体のいきいきとした構造を生み出すためのきっかけとなるワークを行いました。自分を理解することは、他者を理解することに繋がり、外側の仕組み・仕掛けとは別に、リーダーの内側を理解・受容・共感することで、個人のありようが変わり、チームのあり方が変わり、結果的に心理的安全性が生まれるという仮説を元にしています。

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全体性探究家、忘れられたXPer、アジャイル実践者、 『「アジャイル式」健康カイゼンガイド』著者 https://amzn.to/3zNK4cJ

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関連スライド

各ページのテキスト
1.

スクラムマスターの自己理解から始める チームの生命構造 2022/08/27 スクラムフェス仙台 ゼンソウ 懸田 剛

2.

懸田 剛(かけだ たけし) • 愛媛在住、両親は岩手出身で東北の血筋 • Forgotten XPer(忘れられたXPer) • 分離→統合,「全体性の再生成」「いきいき」 • https://tkskkd.com/ • https://note.com/kkd • https://twitter.com/kkd • 福島 懸田城跡にて

3.

岩手の父の実家をなんとかしたい…

4.

5月に本を上梓しました • 10年心身に向き合ってきた試行結果と学びを 本にした • 問題背景、価値・原則、現状理解、基礎知 識、パターン、FAQ • 食事、運動、メンタル、休養・ストレス管理 • いきいきとした仕事・良い人生を送るため • 健全なチームは、健全な個人から

5.

Shinagawa Agile Talks で聞けるよ! https://anchor.fm/shinagile/episodes/SideB-019-e1m7pde

6.

今日はこの本の話では ないです。。。w

7.

鈍器本にも書きました • 11章?「NVC(非暴力コミュニケーション)」

8.

今年のXP祭り! 2022/10/01 • 基調講演で登壇! • アジャイル日本昔ばなし的なもの • 「全体性」とはなにか?

9.

これまでの興味対象の変遷 プロダクト開発 ソフトウェア開発 チーム開発 「いきいき」の探求 そして今注目しているのが “内的世界の探求” 組織開発

10.

本日のお品書き • 本講演は、NVC(非暴力コミュニケーション)、ザ・メンタルモデルの知見から、主にスクラムマスタ ーの内側の世界(感情、ニーズ、痛み)に目を向けます。 • 生命的な進化を遂げる組織の人間関係において必要とされるのは、表面的なコミュニケーションテクニ ックではなく、他者に対する理解や共感です。そして、更に重要となるのが、コミュニケーションを行う 自分自身に対する理解や共感、つまり自己理解 です。 • これまでアジャイルに20年間向き合ってきて到達したいきいきとしたチームの結論が、自己理解に基づ く個人の変容です。 • チェンジ・エージェントたるスクラムマスター自身が、自分自身に対しての共感・理解をすることが、 チームの生命構造を生み出す最短距離ではないかという仮説をご紹介した後、自己共感・自己理解につ いての概要、なぜチームの生命構造を生み出すのに自己理解が必要なのかの説明した後、実際に自己理 解を体験するためのワークを行います。

11.

スクラムはチームからはじまる • スクラムとは、複雑な問題に対応する適応型のソリューションを通じて、人々、チーム、組織が 価値を生み出すための軽量級フレームワークである。 • 簡単に言えば、スクラムとは次の環境を促進するためにスクラムマスターを必要とするものであ る。 • 1. プロダクトオーナーは、複雑な問題に対応するための作業をプロダクトバックログに並べる。 • 2. スクラムチームは、スプリントで選択した作業を価値のインクリメントに変える。 • 3. スクラムチームとステークホルダーは、結果を検査して、次のスプリントに向けて調整する。 • 4. 繰り返す。 スクラムの定義(スクラムガイド2020より)

12.

起点はスクラムマスター!? スクラム マスター スクラム チーム プロダクト

13.

XPはひとりからでもできる • “Social change starts with you” (社会変化はあなたから始まる) • “XPの鍵は誠実性(integrity)だ。 本当の価値と調和のとれた行動をすることだ。” 『分離から統合に至る2つの内省アプローチ〜XPとザ・メンタルモデル』 https://note.com/kkd/n/nf10c85aa29ac

14.

“自分をさらけ出すのだ。 そのことを怖いと思う人もいるかもしれない。 逆にそれが日常的になっている人もいるだろう。 XPに対する反応が人によって極端に違うのはそ のためだ。” 『エクストリームプログラミング』第1章 XPとは何か

15.

アジャイルが喚起する不安・怖れ 責められる 変わるのが 怖い カイゼン し続けないと 価値を出 せない 自分はダメ 衝突が 怖い 居場所が なくなる うまくできない 失敗が怖い チームで少しづつ 体験し、学び、 成功体験を積んでいこう! 相手の 不安を取り除いて いこう! 勇気を出して 乗り越えよう!

16.

心理的安全性が叫ばれる時代

17.

外側から心理的安全性を作る(例:エイミー本) • 土台づくり • 仕事のフレーミング(=特徴を明らかにする)、目的を際立たせる • 参加を求める • 状況的謙虚さ、発言を引き出す問い、システムと仕組み、 • 生産的な対応 • 感謝を表す、失敗を恥ずかしいものではないとする、明確な違反を処罰する

18.

「内側の世界」からからはじめる NVC(非暴力コミュニケーション) ザ・メンタルモデル

19.

リーダーの内面が組織に現れる https://www.youtube.com/channel/UCAfyK3imZ7CYZnpK0N9mMIA 自分の内面を知り尽くすことが不可欠・最短ではないか?仮説

20.

自己理解=自分の内側にあるものに気づくこと イケてる自分 存在を 切り離している ダメな自分 周囲に 求められる 周囲に 認めたくない あってはならない 認められる バレないように しなきゃ! 顕在意識ではすべては自覚できない

21.

ワーク「あなたの嫌いな人は?」 • ① 嫌いな人、苦手な人は? • ② その人のイヤな所は? • ③ その人たちはどうあるべき? 「だって〇〇じゃん!」 • ④ その人たちへ文句をご自由にどうぞ!

22.

ひとつの例 • ① 嫌いな人、苦手な人は?→自分の話ばかりする人 • ② その人のイヤな所は?→相手のことを考えていないのが嫌だ • ③ その人たちはどうあるべき?「だって○○じゃん!」 • 会話はキャッチボールのようにすべき • 「だって一方的に話してたら相手がつまらないじゃん」 • ④ その人たちへ文句をご自由にどうぞ! • 「話してるだけじゃなくて、人の話をもっと聞こうよ!」

23.

グループで結果を共有→互いに深堀りしてみよう • 相手のイヤな所、受け入れられないところは具体的にはどこ? • 「一方的にまくしたてて話をする人」 • → 「相手のことを考えていない感じがイヤだ」

24.

分離した自己(自己分離) 克服しなくちゃ! 自分のこういう所が 嫌いなのだなぁ。 ダメな自分 なかったことに しておきたい 「〜が嫌だ」という 感情があるんだなぁ あってはならない なんとしても 回避したいのだなぁ バレないように しなきゃ!

25.

他人の嫌な所は自分の受け入れられない・抑圧している部分の投影 (かもしれないってみたらどう感じる?) 不快は 自分の投影に 反応している 嫌いな人が現れたら感謝しよう!!

26.

自分の感情を表現できていますか? 様々な感情がありますが、表現できてますか?

27.

不快な感情に共感してみよう (感情・ニーズリストを使って) • ① 最近、どんな不快なことがありましたか?(話し手) • ② その時の感情は、どういう感情でしょうか?(話し手・聞き手) • ③ (感情を感じてみてください) 奥にどんなニーズがありますか?(話し手) どんなニーズがありそうだと感じたか確認してください?(聞き手) • ④ ニーズリストをみながら、どんなニーズがありそうか確認してみよう どんなニーズが満たせてなかったか?(話し手) 感じたニーズは何か確認してみよう(聞き手) 感情・ニーズリスト→ http://nvc-japan.net/material/feelings_needs_list/

28.

不快な感情に共感してみよう(例) • ① 最近、どんな不快なことがありましたか?(話し手) → 野菜くずを堆肥にしようと思ったら妻に捨てられてしまった • ② その時の感情は、どういう感情でしょうか?(話し手・聞き手) → 「がっかりした」 • ③ (感情を感じてみてください) どんなニーズ満たされてなかったと感じましたか?(聞き手) ニーズリストをみながら、どんなニーズがありそうか確認してみよう →「理解してもらう」が満たされていないように感じましたがどうですか?

29.

自分の感情に対して〜反応、抑圧ではなく共感する NVCの感情への対応方法 感情を 感じる 出来事 ニーズに 繋がる 自己共感 あっては ならない! 反応 行動 抑圧 ニーズを 満たす リクエストを 要求する

30.

感情=ニーズに関するメッセージ • ポジティブ感情 • ニーズが満たせている • ネガティブ感情 • ニーズが満たせていない • 反応的な行動をとると→ニーズが満たせない • 感情の抑圧→内側からのエネルギーが滞る、ニーズは満たせない

31.

自分の感情は他人の責任ではなく自分の責任 • 感情の責任を他者に求めない • 自分がニーズに気づき、分離に気づき、内側を見るきっかけとする • 不快な出来事は「内側を見るきっかけ」 • 嫌いな人は「自分の分離に気づかせてくれる人」

32.

自己受容=「あるんだね」と認める いい・わるいはない、ジャッジしない 自分の内側にあるんだね 克服しなく ちゃ! イケてる自分 ダメな自分 周囲に 求められる 周囲に 認められる 認めたくない あってはなら ない バレない ように しなきゃ!

33.

自己共感=感情の奥のニーズ・願いにつながる 人と切れる のが怖い 克服しなく ちゃ! ダメな自分 人とつながって いたいのだなぁ 自由に生きたいのだなぁ 認めたくない あってはなら ない バレない ように しなきゃ! 人とつながりたいのだなぁ ありのままで 受け入れてほしい のだなぁ

34.

「怖れを消す」ではなく「怖れを受容する」 • 「怖れ・不安」は「ある」 • 「ある」ものを「ない」にしようとしても存在はあり続ける • あるものは、ある • 「ある」ものをみつめて感じきることでニーズに気づく • 「ある」を「ない」にしようとする回避行動一辺倒のパターンから脱する!

35.

内的世界が外的世界を作っているという仮説 自分の無自覚な信念や 痛みの回避行動が 外側の現実世界を作っている。 このことに衝撃を受けた!!

36.

生存本能は不快を自動的に回避しようとする 不本意な現実 「やっぱり○○だ」(痛みの再生) 回避行動 逃避 克服 解決しようとする・努力する・ 隠す・諦める・逃げる 戦う メンタルモデル (無自覚な信念) 痛みの回避の行動は 結局痛みの再生につながる。 不快な感情 悲しみ 怒り 痛み 「あるはずのものがない」 回避行動ではこの構造は越えられない。 『ザ・メンタルモデル』10章より

37.

自分の構造例「本気を出す訳にはいかない」 不本意な現実 やっぱり結果がでない 「やっぱり○○だ」(痛みの再生) 回避行動 逃避 克服 解決しようとする・努力する・ 表向きは頑張る 戦う 全力を出さない 隠す・諦める・逃げる 言い訳の余地を残しておく メンタルモデル (無自覚な信念) 全力出して失敗したら ろくなことにならない 不快な感情 悲しみ 自分に失望 怒り 痛み 全力を出して 「あるはずのものがない」 失敗したら痛すぎる 痛みを引き受けて 全力を出し切る!

38.

自分の構造例「わかってもらえない」 不本意な現実 「やっぱり○○だ」(痛みの再生) やっぱりわかってもらえない 回避行動 一生懸命 克服 伝えようとして 解決しようとする・努力する・ 戦う 説明内容が増える 逃避 説明を省略して 煙に巻く 隠す・諦める・逃げる あっさり話してやめる メンタルモデル (無自覚な信念) 自分は他人に理解してもらえない 不快な感情 悲しみ 絶望 怒り 痛み 「あるはずのものがない」 伝わらない 伝わる・伝わらないではなく 自分として表現しきる

39.

構造例「私はダメだ」 不本意な現実 「やっぱり○○だ」(痛みの再生) 自分はやっぱりダメだ 回避行動 逃避 克服 解決しようとする・努力する・ 努力する 戦う 隠す・諦める・逃げる 何かを捨てる メンタルモデル (無自覚な信念) 今のままではダメだ 不快な感情 悲しみ 絶望 怒り 痛み 「あるはずのものがない」 自分ダメだ ありのままの凸凹の 自分でいい

40.

構造例「私は愛されない」 不本意な現実 「やっぱり○○だ」(痛みの再生) 愛が感じられない 回避行動 逃避 克服 解決しようとする・努力する・ 相手に応えようとする 戦う 気にかけてほしいと 隠す・諦める・逃げる 表現しない メンタルモデル (無自覚な信念) 私はありのままでは見てもらえない 不快な感情 悲しみ 絶望 怒り 痛み 「あるはずのものがない」 気にかけてもらえない 愛は常にある

41.

回避行動を続けるか、抜けようとするか 回避行動は否定すべきものではない。 その時々の自分を守ってきてくれた技であり 玉ねぎの皮のように何重にも重なっている これまで通り続けてていてもいい。 でも、回避行動に飽きたなら、 今の自分にはいらない…と 感謝しつつ、手放していく。

42.

自己理解〜自己共感が進むとどうなるか? • 自分の無自覚なパターンを自覚できるようになる(メタ認知) • 無自覚な回避行動以外の選択肢がとれる • 反応的な行動が少しづつ減る • 嫌いな人が周囲からいなくなる • スペースができ、相手に共感しやすくなる • 他者の内側にも同様の構造があると気づく→人間理解

43.

人間中心から、人間理解のパラダイムへ • ひとりひとりが自分の内的世界を理解している • 自分の怖れ・痛みに自覚的になっている • 反応的な行動以外の選択肢を自覚的にとれる • チームが回避行動のパターン、痛みを互いに知り合っている • 互いのニーズを満たし合いながら、全体のニーズを満たしあえる • 自分らしくありのままで生きている

44.

自己分離⇔自己受容 • ①「自己受容がいい」ということではない • 無自覚な分離の世界だけではない、ということを知るのが重要 • ②「頑張って自己受容しましょう」という話ではない • 必要な時に必要なだけ、最善でプロセスは進行する。自分のペースで。 • ③「違うレンズで世界をみると見方が変わる」を知るのが重要 • 少なくとも自分の見方が変わったという体験がある

45.

今後、自己理解を深めるためにできること • 不快な状況があったら、自己共感してみよう! • 嫌いな人が現れたら、自分の内側をみてみよう! • 強く反応する出来事があれば、自分の内側を見てみよう! 日々の内省によって自己理解は深まります

46.

このあたりを参考にしてみよう!

47.

チームの生命構造とは? • ひとりひとりが、ありのままの自分でいられ、活かしあえている関係性 • 自分や他者に正直でいられる・嘘をつく必要がない • 自分の個性を存分に活かせている • 喜びに満ちて仕事ができている • 互いのニーズを満たし合える • 全体のニーズを満たせる そのはじまりとして スクラムマスターが ありのままの自分でいること!