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September 16, 20
スライド概要
オンラインをこえて
明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 中村聡史研究室
日本バーチャルリアリティ学会 オンラインをこえて プログラミング演習科目の オンライン実施を経験して 明治大学 中村聡史 Mail: [email protected] Web: http://nkmr-lab.org
自己紹介 • 中村聡史 – インタラクション – 平均手書き文字 – 周辺視野と集中促進 – 選択誘導 – ネタバレ防止 などの研究 – BADUIを集めるのが趣味 人にまつわる、人を中心とした研究
中村聡史 研究室 (2020/07)
COVID-19 • とりあえずにっくき新型コロナウィルス – 家族旅行中止 – 研究室合宿中止 – 他研究室との合同研究会をオンライン化 – 色々な学会・研究会がオンラインまたは中止 • デンマーク、イタリア、東京、大阪、函館、沖縄 – 施設での実証実験中止 – 共同研究が1件取りやめに – アドバイザしていた案件が延期 – もちろん、講義関係も大変
担当した講義 • 全体向けの座学講義(1回だけ) – 先端メディアサイエンス概論(110名程度) – 総合数理概論(300名程度) • 専門科目(選択):座学+演習 – 情報分析と可視化(60名程度) • 1年次必修:演習(クォーター、週4コマ) – プログラミング演習1(120名程度) • ゼミ – 1年ゼミ、2年ゼミ – 研究室のゼミ(3年・4年・大学院)
前提: プログラミング演習1 • 1年次必修のプログラミング教育では学生の レベル差が激しいため、上を飽きさせず、 下も含め全体的に底上げすることが重要
本当に大変ですよね… • 是非、いろいろと成功事例、失敗事例を教 えてほしいです! • プログラミングに関する必修科目を担当さ れている各大学の先生方とは、今回の話を 踏まえて数年後においしいお酒が飲めそう だなと勝手に思ってます
講義のデザイン • 講義時間内に課題を提示し、その課題を講義時間 内に解決&提出することで習得を目指す • 課題は、基本課題(全員向け)と、発展課題(上 級者向け)を用意 – 発展課題は加点要素 – http://nkmr.io/lecture/ にすべて公開していますので どうぞ • 講義時間をできるだけ課題解決に充てるため、予 習を必須にして最初に小テストを実施 – http://nkmr.io/lecture/ に予習資料などをすべて公開 – 課題は、研究室との接続性を考慮し、多様に • 最終成果発表会で、プログラムを自作し発表!
興味を持たせる課題のデザイン • 世の中とつながる課題のデザイン – 斜方投射、錯視、GUI、コンプガチャ&ジャンケ ンのシミュレーション、螺旋描画、リサージュ カーブ、素数1桁、曼荼羅、双子素数、モンテカ ルロ法、エラトステネスの篩、マクローリン展 開、フーリエ級数展開、ラングトンのアリ、ラ イフゲーム、飛行機座席問題、周波数と音など • 接続性を考慮したデザイン – 数学系課題、ネットワーク・セキュリティ系課 題、音・音楽系課題、画像処理課題、フィジカ ルコンピューティング、ウェブ、HCI基礎的課題
色々な問題点 • 小テストが実施できないがどうするか? – 予習への強制力を発揮することができない • 発表会が実施できないがどうするか? – モチベーションを上げ、自身で取り組むことが できない • 学生TA比をどうするか? – FMS学科は学生120人にTA8~10人のため、1人の TAが10人以上を見なければならない 4月からずっと胃が痛かった
これまでにもあった問題点 • タイピングが遅くて課題に時間がかかる – 入力速度が遅いのはそもそもの問題 • 日本人学生にとって、英単語からなるプロ グラムに対して抵抗がある • プログラムに利用される「,;()[]」などの 記号と、その記法になかなか慣れない • 上記の問題を小テストができない問題と絡 めて一気に解決を目指す
システムデザイン • 理解を促す仕組み – コメントを上に提示して視界に入れる – プログラムが完成する前に逐次実行し、部分プ ログラムの意味を何気なく理解する • 内発的動機づけ – 入力速度を自分の過去より早く! • 外発的動機づけ – 他人とランキングを競うことでより上を目指す – タイピングを予習課題にする
プログラミング学習支援 [又吉2020] • typing.run ( https://typing.run ) – タイピングとプログラミングの写経を組み合わ せた学習システム – 写経しながら徐々にプログラムが動いていく
運用結果 2020年6月~8月上旬 • 総参加人数:176名(内履修者118名) • 総タイピング回数:92,289回(内履修者88,055回)
運用結果 : 区間ごとの平均CPM 個人ごとに時系列順のスコアを50分割したCPMの平均 後半につれて右肩上がりに上昇をしている →全体として期間後半になるほどCPM平均が上昇している
効果があったのでオススメです! • タイピング速度がかなり上がっていた • タイプミスによる基礎的なミスが少なかっ た(printlnをprint1n、printInなど) • 例年に比べ、レベルが高かった(単純比較 は難しいが) • タイピングできて、プログラミングできる 気になっていた学生もいた ゲストだとどなたでも使えます 学生を管理して利用したい のでどうですか? 場合はお金をいただければ!
最終成果発表会ができない問題 • 発表会用のプログラムを用意するのではな く、条件に応じた課題とそのプログラムを 作ってもらうことを課題に – 課題を作れるというのは、それなりにレベルが あるということ 正の相関(0.56)あり
課題の提出をどうするか? • 例年 – 大学の共有フォルダに提出 • 学生は自身のフォルダしかみえず、他者のフォルダ は見えない – 提出されたものについて、チェックし、そのチ ェック状況を学生に提示 できない!
Google Form/Spreadsheetの活用
むしろ良かった! • チェック状況が分かってよい! – 自分の順番待ちがどの程度か – 何がダメだったのか • むしろフィードバックを返せる&残せるこ とがよかった – 教員・TA間の採点基準の共有化 – 他の学生がどういった理由で不可とされている か判断可能 – 次年度も採用予定!
ちなみに • ここに至るまでの失敗談もあります…それ はご興味がありましたらこちらを – https://note.com/nkmr/n/na57e5612eed3 さて,このような感じで色々と時間をかけて準備を進めてきまし たが,実際のところ1回目の演習講義については失敗に終わりま した.例年であれば初回は全員が時間内に課題の提出が終わり, 最後に時間が余るはずなのに時間内に課題の提出が終わらない学 生さんが多発したこと.また,こちらも例年であれば余裕に終わ っていた時間内に課題のチェックが終わらなかったこと.そして ,いくつかの問題についてTwitterで学生さんたちから不満が出 ていたことなどです.
学生・TA比をどうする? • よくある質問はサポートページで対応する • 簡単な質問は学生同士で解決し、解決しな い問題をTAに質問してもらう • 順番待ちをうまく処理する
よくある質問はページを用意 • Scrapboxを教員・TAで編集して用意 – https://scrapbox.io/fms-programming/
学生・TA比をどうする? • 簡単な質問は学生同士で解決し、解決しな い問題をTAに質問してもらう – 会話可能な小グループの重要性
Remo Conference • 全体向けの講義ができ、またテーブルごと に会話可能なウェブサービス
小グループの会話を可能に • テーブルに4人ずつ配置し、その学生同士で は画面を共有したり、会話をしたりして解 決可能とする • テーブルはこちらから指定 • ほとんどのテーブルはそれでうまくいって いたが、一部のテーブルは会話がまったく ないなどの問題もあったらしい レベルなどを考慮して 定期的にメンバー変更が重要
順番待ちの処理のために • 当初はRemoの両側をTA部屋にして順番待ち – 一部TAへの質問の集中 – TA部屋から出ていかない学生がいる – プログラムに介入できなくて不便 などの問題発生
askTA:順番待ちの処理のために • 手軽に申請 – 何に対する質問で現在のプログラムはどんな感 じかを申請 • 手軽に対応 – 質問とプログラムを事前に見て対応を考え、対 処可能に – 音声により対話しながら対処 • 質問してもすぐに対応されず待つ必要あり – 入店音で呼び出しを可能に – 質問の取り下げも可能に
askTA • 質問UI
askTA
ということで • 小テストが実施できないがどうするか? – typing.runにより解決! • 発表会が実施できないがどうするか? – 課題を作成するという課題で解決! • 学生TA比をどうするか? – Scrapbox、小グループ制導入、askTAで対処 乗り切った!
オンライン演習講義に重要なこと • 学生の受講環境をどうするか? – Processingが動かないと問題外 • サービスが落ちたときどうするか? – ウェブ系サービスは落ちると被害甚大 • 学生の様子をどう拾い上げるか? – 手が止まっている、悩んでいるが見えない • 学生に自身の状況をどう提示するか? – 受理されたか? また待ち行列の数はどの程度か? • いかにして質問のハードルを下げるか? – 質問への抵抗感を徹底的に下げる必要がある! • いかにして手間を減らすか? – オペレーションが多数発生すると死ぬ
受講環境をどうするか? • 受講環境に関する調査と大学からパソコン の貸与を実施 – 教員による電話攻勢で4月中下旬には完了 • 半期通してみると、多少の問題があったが なんとか95%程度の学生は問題なくクリア – 一部学生には問題があったようにも見受けられ たが、そもそも成績を考えると本気だったのか も不明
サービスが落ちたときどうする? • 徹底した多重化により対処 – 主たる講義: Remo Conference • 実際に講義で落ちた – Remoが落ちたとき用: Zoom – テキストチャット: Slack – ポータル: Oh-o! Meiji – QAシステム: askTA – 説明・解説動画アーカイブ: YouTube 一度落ちたけど 無事乗り切った!
学生の様子をどう把握する? • 課題の提出・チェック状況を提示して把握 – とはいえ、これは不完全だった
学生に自身の状況をどう提示? • Google Spreadsheet – 採点状況などを可視化 • askTA – TA待ちを可視化
質問のハードルをどう下げる? • 対面で実施しても質問へハードルを感じる – 小グループで会話してある程度問題を解決 – TAに直接質問するのではなく、システムに質問 を投げ、TAがそれを拾い呼び出すことで、質問 へのハードルを下げる(消極性デザイン)
いかにして手間を減らすか? • Zoomだとホストがブレイクアウトルームの 制御をする必要あり • Remo Conferenceによりテーブルの移動など を簡易化
そんなこんなで • 色々反省点はあるものの、何とか乗り切り ました • 成績も例年より良かった! • 学生からもかなり高評価(一部紹介)
遠隔講義のテクニック • CommentScreenによる対話的講義 • カメラON/OFFを活用した進度チェック • Scrapbox/Google Docsなどを併用した対話 的講義 • Discordでの多段配信による助け合う受講
リアクションはわかりにくい • リアクションは時間により消えてしまう • 挙手は下げ忘れが頻発する
学生の様子を見えるように
学生の様子を見えるように • カメラON/OFFを活用した進度チェック – ZoomのカメラをOFFにすることで、できたことを 伝達してもらい、あとどれくらいできていない かを把握 • 副次的効果 – 徐々にほかの人がいなくなるので、残された人 (取り組んでいる人)は焦る – 残った人が少なくなると質問しやすい – カメラOFFな人は自由な時間ができる
ということで • プログラミング演習の遠隔講義をいかにし て実現したのかという話を少しだけ紹介 • ご興味のある人はこちらもどうぞ – https://note.com/nkmr/m/m04e7640c83cf • ご自由にお使いください – https://typing.run/ • 60~90分で話せるネタありますので、ご希 望が有りましたら私まで – [email protected] – 日本大学とはこだて未来大学でお受けしました