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June 02, 21
スライド概要
タスク周辺への視覚刺激を用いたPC上タスクに対する集中度向上手法の検討
明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 中村聡史研究室
タスク周辺への視覚刺激を用いた PC上タスクに対する集中度向上手法の検討 桑原樹蘭,南里英幸,中村聡史 明治大学大学院 先端数理科学研究科
背景 我々は日々のなかでタスクをかかえている 効率良く行うなら集中することが大事 集中しようと思っても集中が長く続けられない人もいる… 雑念 2
背景 新型コロナウイルスの影響でリモートワークを行うことが増え, PCで作業することも多くなった. 周囲の目が少ない分対面よりも集中が難しい. リモートワークを行う男女961人に対する『リモートワークの悩みに関する意識調査』[Biz Hits]で 『集中力が続かない/やる気が出ない』を選択した人が134人いる 集中を意識する必要がある場面は多くなっている
関連研究 集中をコントロールする手法 • 聴覚刺激[阪野 2008] • 嗅覚刺激[阿部 2010] ⇨環境に左右されやすい,個人への提示が難しい 専用の機材が必要 • 視覚刺激によって視線を誘導[橘 2012] ⇨視界で捉える情報が多すぎる タスクの提示範囲が狭い
関連研究 周辺視野領域のぼかし強調による集中促進手法[山浦 2019] ディスプレイ上の視線情報を取得し,周辺をぼかすことで集中の阻害となりうる情報を削減 ⇨視線情報の取得のためにアイトラッカーなどの機材が必要
以前の研究 一点注視型タスクにおける周辺視野への視覚刺激提示が集中度に及ぼす影響[2018] タスク 中央にランダムに提示される矢印と 同じ向きのキーを入力する(100問) 視覚刺激 無刺激+6種類の刺激を比較
以前の研究 一点注視型タスクにおける周辺視野への視覚刺激提示が集中度に及ぼす影響[2018] 数字刺激 図形上昇刺激 輝度変化刺激 暗転明転刺激 境界膨張刺激 瞬間的円形刺激
以前の研究 一点注視型タスクにおける周辺視野への視覚刺激提示が集中度に及ぼす影響[2018] 数字刺激が無刺激と比較して特にタスクパフォーマンスが良くなっていた
以前の研究 一点注視型タスクにおける周辺視野への視覚刺激提示が集中度に及ぼす影響[2018] 課題 中心視野に視線を固定するために タスク提示範囲が画面の中心だけになっていた ⇨広い範囲で行うタスクにも使える手法を考える ⇨周辺視野には限定しない提示 矢印タスク1試行あたりの時間が短く, 刺激間の差が大きく出なかった ⇨1試行の時間がもっと長いタスクで検証 数字刺激が無刺激と比較して特にタスクパフォーマンスが良くなっていた
目的 無刺激と刺激有でタスクのパフォーマンスを比較し,刺激間で差が出るか調査する PCタスク 仮説 PC上のタスクを視覚刺激で囲むことによってタスクの存在を強調し, ユーザの意識を逸れにくくすることでタスクに対する集中度を向上できる?
実験で用いるタスク タスク 前回の実験の問題点を踏まえ,1試行の時間がより長く,タスク範囲の広いもの 比較のために実験協力者の個人差が出にくいもの →
実験で用いるタスク タスク 前回の実験の問題点を踏まえ,1試行の時間がより長く,タスク範囲の広いもの 比較のために実験協力者の個人差が出にくいもの →点つなぎタスク • 始めの点が分かりやすいように強調 • クリック判定は点より大きく設定
実験中の画面
刺激 刺激範囲 タスク開始と同時にタスクの周りの刺激範囲に提示 する 視覚刺激 • 無刺激 刺激なし • 数字刺激 範囲全体に位置固定で0~9で無作為に入れ替わる • 図形刺激 『〇,△,□,✕』の中で無作為に入れ替わる • 文字刺激 『あ,い,う,え,お,が,に,を』の中で無作為に 入れ替わる
図形刺激 『〇,△,□,✕』の中で位置固定で無作為に入れ替わる
数字刺激 位置固定で0~9で無作為に入れ替わる
文字刺激 『あ,い,う,え,お,が,に,を』の中で無作為に入れ替わる
実験協力者について 統一された環境で実験を行うことが望ましかったが, 入構制限等のために人を対面で集めることが困難になっていた 協力者を募る際にPC,モニターサイズ,問題なく起動できるかどうかを確認し, 各自で配布したプログラムを起動してもらう形で行った
実験 実験協力者は20代大学生16人(男5人,女11人) 実験協力者が普段使っているPC,もしくはモニターを用いて行ってもらう 解像度が1920*1080,もしくはできるだけそれに近い設定 • 一人8試行(各刺激2回ずつ),点の数は100~240個 • 毎回違う点つなぎのデータを用い,行う順番は無作為に指定する • 1試行ごとにアンケートに回答してもらう アンケート • 主観集中度に関する1項目(5段階) • SSQ(Simulation Sickness Questionnaire)から引用した主観疲労度に関する7項目(4段階)
処理 点つなぎによって難易度が異なり,次の点を繋ぐまでの時間が 極端に長くなっている部分があった 10秒以上かかっているデータは分析の際に外れ値として除外した
次の点をクリックするまでの時間の平均 全実験協力者の刺激ごとのクリックまでの時間の平均 数字刺激の時間が一番短く,無刺激が長い 無刺激,文字刺激の標準偏差が大きく,実験協力者によるぶれが大きい
主観集中度の平均 実験協力者ごとの主観集中度(1~5)の平均 高いほど集中できている 平均では無刺激が高く,次に数字刺激が高かった
主観疲労度の平均 実験協力者ごとの主観疲労度(1~4)の平均 高いほど疲労が少ない 平均では無刺激が1番疲れにくく,次が図形刺激 集中していたからこそ疲労度が高い可能性もある
考察 点を繋ぐ時間では数字刺激が最も良かったが, 主観集中度,疲労度は共に無刺激が良い結果になっていた 多少刺激による差は出ていたが,この実験で用いた点つなぎの点の数が 100~240個でばらつきがあり, タスクの継続によってどのような変化があったのかを比較して評価するのは困難だった タスクの点つなぎの難易度の偏りを小さくして追実験を行う
追実験・処理 実験協力者は大学生16人(男9人,女7人) 前回との違い:偏りを減らすために点の数を200以上のものだけにする(203~267個) • 一人8試行(各刺激2回ずつ) • 毎回違う点つなぎのデータを用い,行う順番は無作為に指定する • 1試行ごとにアンケートに回答してもらう 10秒以上かかっているデータは分析の際に除外した. 16名中1人は全体的に時間が大幅にかかっており外れ値として除外 前回と一緒
次の点を繋ぐまでの時間の平均 全実験協力者の刺激ごとのクリックまでの時間の平均 文字刺激がやや悪いが,無刺激,図形刺激,数字刺激に大きな差はなかった
40個ごとの点を繋ぐ時間の推移 200個を40個ごとの5フェーズに分けて区間ごとのに点を繋ぐ時間の平均を表す 1.1 1.05 1 0.95 0.9 0.85 40 80 無刺激 120 図形刺激 160 数字刺激 200 文字刺激 どの刺激も無刺激を下回る時間は少なかった
主観集中度の平均 実験協力者ごとの主観集中度(1~5)の平均 高いほど集中できている 平均では数字刺激が最も高く,次に無刺激
主観疲労度の平均 実験協力者ごとの主観疲労度(1~4)の平均 高いほど疲労が少ない 平均では無刺激が1番疲れにくく,他3つはほぼ同じ
考察 1回目の実験の所要時間では無刺激より刺激有が短い結果になったが, 2回目の実験では差はなく,むしろ文字刺激は悪い結果になっていた ⇨タスク中に視線が動いて刺激が目に入ることでパフォーマンスを低下させてしまった? 文字刺激の結果が悪かったのは無意識に意味のある文字列として認識し, 意識を持っていかれてしまった?
考察 『画面内の点や点の番号が密集しているとクリックするのが難しかった』 『次の点が離れたところにあると探すのに時間がかかってしまった』 実験設計において点つなぎ自体が想定より難しく,集中度や疲労度に影響があった ⇨点つなぎはタスクとしては不適切だった可能性がある ⇨視線を動かしつつ統制可能な実験設計を考え,再実験を行う必要がある 『プログラムを開いた瞬間は刺激に不快感があるが,始めてからはあまり気にならなかった』 ⇨タスクを行っている最中は集中を促せている? 時間がかかりすぎて除外された人がいた ⇨監督せずオンラインで行ったことで実験協力者の気が緩みすぎていた? あ 論文投稿後,対面で追実験
投稿後の追実験(対面) 実験協力者7人(男4人,女3人) 前回との違い:全員同じモニター,環境でタスクを行う • 一人8試行(各刺激2回ずつ) • 点は203~267個 • 毎回違う点つなぎのデータを用い,行う順番は無作為に指定する • 1試行ごとにアンケートに回答してもらう 10秒以上かかっているデータは分析の際に除外した. 前回と一緒
40個ごとの点を繋ぐ時間の推移 1.15 1.1 1.05 1 0.95 0.9 0.85 0.8 40 80 無刺激 120 図形刺激 160 数字刺激 200 文字刺激 図形刺激は全体を通して無刺激を下回っていた
40個ごとの点を繋ぐ時間の推移 1.15 数字を追いかけるタスクで 同じ数字の刺激は阻害される? 1.1 1.05 1 0.95 0.9 0.85 0.8 40 80 無刺激 120 図形刺激 160 数字刺激 200 文字刺激 図形刺激は全体を通して無刺激を下回っていた
オンラインだけ・現地だけの比較 現地 オンライン 1.15 1.15 1.1 1.1 1.05 1.05 1 1 0.95 0.95 0.9 0.9 0.85 0.85 0.8 0.8 40 80 無刺激 120 図形刺激 160 数字刺激 200 文字刺激 40 80 無刺激 120 図形刺激 160 数字刺激 200 文字刺激
オンラインだけ・現地だけの比較 画面サイズなど,環境の差が 結果に影響した可能性 オンライン 1.15 1.15 1.1 1.1 1.05 1.05 1 1 0.95 0.95 0.9 0.9 0.85 0.85 0.8 0.8 40 80 無刺激 120 図形刺激 160 数字刺激 200 文字刺激 現地 40 80 無刺激 120 図形刺激 160 数字刺激 200 文字刺激
まとめ・今後の展望 • PC上で行うタスクに対して視覚刺激を提示することで集中度を向上することができるか実験 で検証を行った. • 点つなぎタスクを行う実験においてはあまり効果的ではなかった. • 今後実験を行う際には行うタスクを見直したうえで,統制した環境下で人数を増やして行 い,視線情報や客観集中度などの計測も検討する