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January 14, 26
スライド概要
明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 中村聡史研究室
タスクに対する先延ばし抑制を目的とした フローチャート型支援手法の提案 村上楓夏,中村聡史(明治大学) 1
背景 数週間から数か月にわたって継続的な取り組みが求められるタスク 例) 論文の作成,夏休みの宿題,引越しの手続きなど 完了までに時間を要するため,計画的に進めることが求められる 締切までに十分な時間があることが,タスクの着手を先延ばしに する要因となる [Konig+ 2005] Konig, C. J. and Kleinmann, M.: Deadline rush: A time management phenomenon and its mathematical description relationships between critical thinking and attitudes toward womenʼs roles in society, The Journal of psychology, Vol. 139, No. 1, pp. 33‒45 (2005). 2
問題に対するアプローチ ・タスクの構造を可視化 [Sun+ 2014] 脳内で概算するよりも残りの作業量を適切に認識し, 進捗の過大評価や油断を抑制することができる ・タスク全体の締切とは別に,細分化した締切を設定する 「本当の締切ではない」という認識により,守られなくなる可能性 がある[Anderberg+ 2018] Jerry Chih-Yuan Sun et al.: Effects of integrating an open learner model with AI-enabled visualization on students' self-regulation strategies usage and behavioral patterns in an online research ethics course, Computers and Education: Artificial Intelligence Anderberg, D., Cerrone, C. and Chevalier, A.: Soft commitment: A study on demand and compliance, Applied Economics Letters 3
先行研究 タスクを先延ばししてしまうユーザは,現在の行動が未来にどのよう な影響を与えるかを予測する力が低いという特徴[Simons+ 2004] 締切に余裕を持って進められている場合:ポジティブな未来 先延ばしが続き遅れが蓄積している場合:ネガティブな未来 を強調する →「タスクに取り組むと未来が変わる」というイメージにつながる Simons, J., Vansteenkiste, M., Lens, W. and Lacante, M.: Placing motivation and future time perspective theory in a temporal perspective, Educational Psychology Review, Vol. 16, No. 2, pp. 121‒139 (2004). 4
提案手法 | フローチャート 発表申し込み • 終端に未来を提示 • 工程の繰り返し,締切までの日程 による条件分岐の表現が可能 原稿を書く NO 残り1日 以上? YES 提出 修正点を見つける 良い原稿 が書ける 6
NO 発表申し込み 発表申し込み 原稿を書く 原稿を書く 残り30分 以上? 残り1日 以上? NO YES 締切を 過ぎて 原稿が落 ちる YES 提出 提出 誤字脱字 が多い 原稿 良い原稿 が書ける 修正点を見つける 7
タスクデザイン タスクに該当するカテゴリと,工程に該当するタスクを用意 それらに繰り返し取り組むことで,タスクを完遂するために継続的に 取り組む必要がある環境を再現 テーマを決める タスク1 ↓ 論文を書く 実験をする カテゴリ タスク2 ↓ 結果を分析する タスク3 8
タスクデザイン タスクに該当するカテゴリと,工程に該当するタスクを用意 それらに繰り返し取り組むことで,タスクを完遂するために継続的に 取り組む必要がある環境を再現 勉強カテゴリ 基本情報技術者試験 の勉強 英単語の勉強 ニュースを読む 健康カテゴリ ラジオ体操 記録カテゴリ パズルカテゴリ 体調の記録をつける 数独 ストレッチ プランク 絵を描く 日記をつける 1024ゲーム テトリス ↑カテゴリ1つ1つが実際のタスクを模している 9
提示する未来 計画から約何日分の遅れがあるか(𝐷)によって対応する未来を強調 「論文を書く」というタスクの遅れに対する未来 締切に間に 合わない 誤字脱字が多い 良い原稿が書ける 原稿になる 小 𝐷 手本となるような 原稿が書ける 大 10
提示する未来 毎日全てのタスクに取り組むという設定の上で, 約何日分の遅れがあるか(𝐷)によって対応する未来を強調 勉強カテゴリ 健康カテゴリ 記録カテゴリ パズルカテゴリ 𝐷≤1 𝐷=2 自信がつく 健康になる 未来に活か せる 頭が柔らか くなる 知識がつく 1日が充実する 経験がたまる 𝐷=3 𝐷≥4 三日坊主に なる 実験が強制終了 になる パズルが得意 になる 11
プロトタイプシステム 12
プロトタイプシステム 13
実験 実験参加者:大学生・大学院生20名(参加者間実験) 期間:10日間 Google スプレッドシートを用いたベースライン条件との比較 14
実験手順 実験前アンケート General Procrastination Scale日本語版 によって参加者の先延ばし傾向を測定 10日間タスクに取り組んでもらう (中間アンケート) 実験後アンケート 林潤一郎: General Procrastination Scale 日本語版の作成の試み――先延ばしを測定するために,パーソナリティ研究, Vol. 15, No. 2, pp. 246‒248 (2007). 15
実験手順 実験前アンケート 10日間タスクに取り組んでもらう (中間アンケート) タスクへのモチベーションや システムの使用感を調査 実験後アンケート 16
結果 • 事前アンケートで計測した先延ばし尺度と当日遵守タスク個数 には相関がみられなかった • 計画から大きく遅れ,実験が強制終了した実験参加者数より 提案手法が計画からの逸脱を抑制することが示唆された ベースライン条件 フローチャート条件 実験が強制終了した人数 3人 1人 17
結果 | 当日遵守タスク数 当日遵守タスク数の平均値 ベースライン条件 フローチャート条件 8.80 9.79 対応なしt検定の結果 有意差は見られなかった (t(18)=-1.15, p=0.26, d=0.52) 21
結果 | カテゴリごとの当日遵守数 フローチャート条件の方が • カテゴリによる遵守数の差が小さい • 個人差が大きい 22
考察 | フローチャートの効果 多くの参加者がタスク実施直後ではなく,1日の終わりにまとめて タスクを登録していた →フローチャートの特徴である「工程の流れ」の効果が十分に機能 しなかった可能性 NOを選択する行為が遅れを 自覚させ,計画から逸脱しないよう 行動を促す効果を期待していた 23
考察 | フローチャートの効果 多くの参加者がタスク実施直後ではなく,1日の終わりにまとめて タスクを登録していた →フローチャートの特徴である「工程の流れ」の効果が十分に機能 タスク実行とタスク進捗の登録の乖離を防ぐ工夫が必要 しなかった可能性 ↓ プロトタイプシステムをスマートフォンでも 利用可能にする必要がある NOを選択する行為が遅れを 自覚させ,計画から逸脱しないよう 行動を促す効果を期待していた 24
考察 | 未来の効果 提示していた未来は抽象的な表現であった (自信がつく,健康になる,未来に活かせる,頭が柔らかくなる...) 実験後に「提示されていたらやる気が出る未来」について尋ねた • テストで〇点取れる • 〇〇ができるようになる 具体的かつ個人の目標に結びついた未来 今回提示した未来は,具体的な成果との結びつきが弱く, 動機付け効果が弱かった可能性 25
まとめ 背景 | 継続的な取り組みが求められるタスクは計画的に 取り組む必要がある 提案 | フローチャートによるタスク管理×未来提示 実験 | 従来手法を模したGoogleスプレッドシート手法との比較 結果 | 有意差は確認されなかったもののカテゴリ内容に依存せず, 計画から大きく逸脱する参加者を減らす可能性が示唆された 展望 | プロトタイプシステムの改良, より個別化した具体的な未来の検討 26
遅れ 計画からの遅れをカテゴリごとに計算 計12タスクに毎日取り組む計画を立てた,という設定 𝐷= !"#$-!&'(# 3 -𝑅 ↑一日に実行すべきタスク数 𝑇𝑟𝑒𝑞:計画上実施しているべきタスク実行数 𝑇𝑑𝑜𝑛𝑒:実際に実施済みのタスク数 𝑅:残り⽇数 27
アンケート結果 • タスクを「今度やればいいや」と思って先延ばしした割合 →ベースライン:52%,フローチャート:40% • タスクに対するモチベーションはどの程度ありますか?(1: 全くない~5:とてもある) ベースライン 中間アンケート 実験後アンケート 3.6 3.3 フローチャート 2.9 1.9 • 「遅れ」が増えていくことをどの程度嫌に感じていましたか? (1: 全く嫌ではなかった~5: とても嫌だった) →ベースライン:1.2,フローチャート:4.4 28