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August 24, 24
スライド概要
明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 中村聡史研究室
スポーツ記者の振り返りを容易化する 時系列情報提示システムを用いた 取材内容の検証 明治大学大学院 1年 萩原亜依 明治大学 中村聡史
背景 明大スポーツ 年間発行部数 10万部以上! 1
背景:私の取材スケジュール一例 前 日 13 30 14 00 試 合 の 告 知 ス タ メ ン 速 報 試 合 開 始 15 45 写 真 撮 影 ・ メ モ 試 合 終 了 結 果 速 報 ・ 移 動 16 00 17 00 取 材 開 始 取 材 終 了 わたしも スポーツ記者 やってました! 2
背景 不適切な取材 選手任せな質問やどんな試合でも聞けることばかり聞く − 今日の調子はいかがでしたか − 勝因/敗因は何ですか 本研究で目指す取材 特定のシーンを取り上げる・プレーに対する解釈を含む質問 − ラスト30秒のところで相手選手の○○を狙っているように 見えたのですが〜〜 3
関連研究:ジャーナリストの支援 u 記事執筆のための検索ツールINJECTs [Franks+ 2021] 検索する際に派生した情報を推薦することで新たな発想を支援 u 取材の進め方についての学習 [Pamudyaningrum+ 2020] 質問の選び方,コミュニケーション方法,倫理観に関する問題に 回答するゲームを用いて取材の方法を学習 取材現場におけるスポーツ記者の支援をしたい! 1. Franks S., Wells R., Maiden N., & Zachos K., Using computational tools to support journalistsʼcreativity. Journalism, 2021, vol. 23, pp. 1881-1899. 2. Pamudyaningrum F.E., Rante H., Zainuddin M.A., & Lund M., UI/UX Design for Metora: A Gamification of Learning Journalism Inter- viewing Method. E3S Web of Conferences, 2020. 4
これまでの研究 [萩原+ 2024] 試合動画と時系列情報を振り返ることができるシステムを提案 萩原 亜依, 中村 聡史, フェンシングにおける記者の振り返りシーンを考慮した時系列情報提⽰による取材⽀援, 情報処理学会研究報告 エンタテインメントコンピューティング(EC), Vol.2024-EC-71, No.40, pp.1-8, 2024. 5
これまでの研究 [萩原+ 2024] フラグ 機能 試合中に行う操作はキー入力のみ 必要な場面のみ即時に振り返り可能 時系列 情報 試合全体の流れを汲んで参考に質問作成 6
これまでの研究 [萩原+ 2024] 7
これまでの研究 [萩原+ 2024] 実験 フェンシングの試合に関する質問作成実験 結果 特定のシーンを取り上げた質問 や プレーに対する記者の解釈 選手の位置情報に言及した質問が増加 課題 取材対象者がどう感じるかを調査していなかった 選手と記者の評価をもとに質問の妥当性を検証 8
仮説 深掘りのための理想的な質問:特定のシーンを取り上げた質問や 記者の解釈が含まれた質問 仮説1 理想的な質問は 記者の評価が高く,選手からも評価が高い 仮説2 理想的ではない質問は 記者の評価が高くても,選手からの評価が低い 9
仮説 仮説2 理想的ではない質問は 記者の評価が高くても選手からの評価が低い 例)試合に勝利しましたがどんな気持ちですか 選手:うれしいに決まってるじゃん →当たり前のことを聞いているため低評価 記者:うれしいと発言してもらわないと記事に書けない →記事のことを考えた上でのいい質問と評価 10
質問に対する評価 全109問の質問に対して選手・記者が評価 選 手 質問内容は理解できるか・・・・・・ 3段階 回答しやすいと感じるか・・・・・・ 4段階 わかってくれていると感じるか・・・ 5段階 質問されてうれしいと感じるか・・・ 5段階 記 者 質問に対する自信度・・・・・・・・ 5段階 実際に質問しそうか・・・・・・・・ 2段階 記事のために考えた質問か・・・・・ 2段階 11
質問に対する評価 u 評価者 選手3名:該当試合に実際に出場していた明治大学の体育会所属選手 全日本選手権団体の優勝経験もあり取材慣れしている 記者2名:前回の実験での質問作成者 明大スポーツ新聞部にて3年間のフェンシング取材経験あり u 評価方法 筆頭著者が質問を読み上げ,評価者が評価を口頭で回答 質問一覧を提示した場合に他の質問と見比べて評価することを防ぐため 12
結果 u 選手と記者の評価を数値に変換(−2〜2) u 各項目の平均値が1以上を高評価,1未満を低評価として群分け 選手 記者 高評価 55% 44% 低評価 45% 56% 13
結果:仮説1の検証 理想的な質問は 仮説1 記者の評価が高く選手からも評価が高い (a) 理想的な質問 (b) 理想的でない質問 2.5 2.5 2 2 1.5 選 ⼿ の 評 価 1.5 選 ⼿ の 評 価 1 0.5 1 0.5 0 0 -3 -2 -1 0 -0.5 記者の評価 1 2 3 -3 -2 -1 0 1 2 3 -0.5 記者の評価 14
結果:仮説1の検証 仮説1は支持される傾向 理想的でない質問は記者の評価が低評価の件数が多い (a) 理想的な質問 (b) 理想的でない質問 2.5 2.5 2 2 1.5 選 ⼿ の 評 価 1.5 選 ⼿ の 評 価 1 0.5 1 0.5 0 0 -3 -2 -1 0 -0.5 記者の評価 1 2 3 -3 -2 -1 0 1 2 3 -0.5 記者の評価 15
結果:仮説2の検証 仮説2 理想的ではない質問は 記者の評価が高くても選手からの評価が低い u 仮説2は支持されない傾向 u 過去の取材を踏まえた質問やどんな試合にも共通する定石に 即した質問は選手の評価も高い 記者高評価 記者低評価 理想的な質問 1.36 (47) 1.06 (19) 理想的でない質問 1.48 (10) 0.99 (33) 16
結果:評価が一致 記者が 高 評価,選手が 高 評価の質問(48件) − 1点目は大事ですがどんなことを意識しましたか − 昨年度同じ大会で優勝でしたが準決勝で敗れたことについて いかがですか − 19点目は相手の攻めをかわしてうまく攻撃を入れていたように 見えましたが,ご自身ではどう思われますか どんな試合にも共通する定石や過去の試合を踏まえた質問 理想的な質問 17
結果:評価が一致 記者が 低 評価,選手が 低 評価の質問(24件) − 振り返っていかがですか − 3位という結果について感想を教えてください − 44点目まで順調にポイントを取っていましたが いかがでしたか 抽象的な質問の中でも選手が回答しにくい質問 選手の回答を踏まえて追加質問する想定の質問 18
結果:評価が不一致 記者が 高 評価,選手が 低 評価の質問(9件) − 相手の手元を狙ったポイントが入っていました − 13点差で回ってきましたがどんな心境でしたか − 相手に3連続ポイントを取られた理由や反省点を教えてください − 7失点しましたがどう感じましたか 回答しづらい質問 選手にとって良くないプレーについての質問 19
結果:評価が不一致 記者が 低 評価,選手が 高 評価の質問(28件) − 今日の調子はいかがでしたか − 2点差のマイナスで順番が回ってきた中で どんなプランで望みましたか − 40点目は相手が攻めてきたところをついていましたが 狙っていましたか 抽象的な質問ではあるが,選手は回答しやすい 試合においてさほど重要ではない場面の具体的な質問 20
(c) わかってくれているか (d) うれしいか 3 3 3 3 2 2 2 2 1 1 1 1 0 -2 -1 0 1 -1 -2 -3 記者の評価 ほとんど高評価 2 3 0 -3 -2 -1 0 1 2 -1 -2 -3 記者の評価 具体的すぎる質問も 回答しにくい可能性 3 -3 0 -2 -1 0 1 2 -1 -2 -3 記者の評価 選手と記者が一致 している傾向 3 選⼿の評価 (b) 回答しやすさ 選⼿の評価 -3 (a) 理解度 選⼿の評価 選⼿の評価 考察:選手と記者の評価の違い 0 -3 -2 -1 0 1 2 3 -1 -2 -3 記者の評価 選手のプレー次第で 評価が左右される 21
考察:選手の評価と質問に含まれる要素 35 35 (a) 回答しやすさ 35 (b) わかってくれているか 30 30 30 25 質 問 20 数 ( ( ) 25 質 問 20 数 ( 25 件 質 問 20 数 15 件 15 件 10 ) ) 10 15 10 5 5 5 0 0 0 ⽴ち位置 時間 低評価(16件) 攻撃⽅法 点数 ⾼評価(93件) 勝敗 (c) うれしいか ⽴ち位置 時間 低評価(38件) 攻撃⽅法 点数 ⾼評価(71件) 立ち位置・攻撃方法 →低評価少ない 立ち位置・攻撃方法 →低評価少ない セットごとの勝敗 →低評価ややあり 数字からわかること →低評価多い 勝敗 ⽴ち位置 時間 低評価(62件) 攻撃⽅法 点数 勝敗 ⾼評価(47件) 選手のプレー次第で 評価が左右される 22
考察:提案手法の利点と課題 利点 理想的な質問や選手の立ち位置についての質問が増加 → 選手評価も高い(特にわかってくれているかの項目) 試合を深掘る質問作成の支援として選手と記者双方によい 課題 選手が覚えていないシーンについての質問作成 詳細すぎる場面指定や時刻指定 システムで常に経過時間を確認して詳細に把握できてしまう 選手が覚えておらず,回答を得られないことは問題 23
展望 改 良 点 − 動画の再生時刻の常時提示機能を削除 − 選手にも提示しながらの取材 実 験 再 設 計 − 質問作成者自身に取材を行ってもらう − 選手の回答を受けた質問内容の変化の調査 − システムを使うことで選手が覚えていない ことでも回答できるようになるか 24
まとめ これまで 理想的な質問や選手の立ち位置に言及した質問が増加 目的 選手と記者の評価をもとに質問の妥当性を検証 結果 理想的な質問は記者からも選手からも高評価 展望 選手への提示や取材形式での実験を検討 25