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March 12, 21
スライド概要
自身が映るライフログ写真を用いたファッションに対する意識変化を促す研究
佐々木美香子
明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 中村聡史研究室
自身が映るライフログ写真を用いた ファッションに対する意識変化を促す研究 s 明治大学大学院 先端数理科学研究科 先端メディアサイエンス専攻 佐々木 美香子 (中村研究室)
本研究について ファッションに興味はあるが苦手意識をもつ人に着目し, ファッションに対する意識変化を促す 背景 本研究における対象者の実態を明らかにするため,大規模調査 手法の提案と手法を用いた実験 手法のシステム化とシステムの性能評価
ファッション ファッションには沢山の魅力がある!
ファッションの問題点 ファッションに対して興味があるけれども 苦手意識をもってしまう人も… 着用したことのない衣服の色・種類に対し、 「食わず嫌い」のような状態に なることが原因ではないか?
ファッションに対する意識に関する調査 「ファッションに対して興味はあるが苦手意識をもつ人」 の実態を明らかにするため,クラウドソーシング調査を実施 有効回答者数:1925名(男性:946名, 女性:979名) 衣服に対するこだわり度合い
調査結果:衣服の系統を変えたいと思った ことはあるか 男性 女性
調査結果:衣服の系統を変えたいと思った ことはあるか 男性 女性 「変えたいと思ったけれど, 変えなかった / 変えられなかった」 と回答した人の割合が高い
調査結果:同じ色やデザインに偏る理由 衣服を購入する際,同じ色やデザインへの偏りが「よくある」 と回答した人の記述と,衣服に対するこだわり度合いで KH coderを用いてコレスポンデンス分析を実施 男女ともに,衣服に対して少しこだわりがあると 評価した人は「無難」が特徴的な語 として抽出
ファッションに興味はあるけれども 苦手意識をもつ人とは? 衣服に対して少しこだわりがある人について… 衣服の系統を変えたいと思ったことはあるが, 違う衣服を着たら似合わないと感じてしまい, 結局いつもと同じ衣服を購入する傾向 このような人たちを、 「ファッションに対して興味はあるけれども 苦手意識をもつ人」と定義
苦手意識の問題を解決するために… ファッションに興味はあるが苦手意識をもつ人の、 ネガティブな意識 を ポジティブな意識 に変えることが重要
どのように変化させるか? 単純接触効果 → 特定の対象に繰り返し接することで、 その対象への好感度・印象が高まる効果 [Zajonc, 1968] ◼ 単純接触効果は写真 [Mita, 1977] や言葉 [Monahanら, 2000], 多角形 [Crispら, 2009] などにも現れる ◼ 単純接触効果は刺激のカテゴリによって生じる選好が 異なる [Park, 2010] → 刺激が人の顔の場合「親近性選好」,自然風景の場合は 「新奇性選好」,幾何学図形の場合は「中立の選好 」
どのように変化させるか? 単純接触効果 → 特定の対象に繰り返し接することで、 その対象への好感度・印象が高まる効果 [Zajonc, 1968] ◼ 単純接触効果は写真 [Mita, 1977] や言葉 [Monahanら, 2000], 多角形 [Crispら, 2009] などにも現れる ◼ 単純接触効果は刺激のカテゴリによって生じる選好が 異なる [Park, 2010] → 刺激が人の顔の場合「親近性選好」,自然風景の場合は 単純接触効果を用いることで, 「新奇性選好」,幾何学図形の場合は「中立の選好 」 ファッションに対する意識変化を行える?
本研究の目的 ファッションに対して興味はあるけれど 苦手意識をもつ人に着目して, 単純接触効果を用いて ファッションに対する意識変化を促す
提案手法 「衣服の色」に着目し、 衣服の色に対する意識変化を促す手法を提案 ライフログ写真の 衣服の色を変化 変化させた写真を 繰り返し見せる 単純接触効果 により意識変化
提案手法を用いた実験 ⑴ 評価実験 → 衣服の色を変化させた写真を繰り返し見せる ことで意識変化は可能か? ⑵ 写真ごとの影響調査 → どのような人物写真を繰り返し見せることが 最も意識変化を促すのに効果的か? ⑶ 単純接触効果向上に関する実験 → ライフログ写真の中でも,1人で映っている 写真よりも複数人で映っている写真の方が, 単純接触効果が現れる?
提案手法を用いた実験 ⑴ 評価実験 → 衣服の色を変化させた写真を繰り返し見せる ことで意識変化は可能か? ⑵ 写真ごとの影響調査 → どのような人物写真を繰り返し見せることが 最も意識変化を促すのに効果的か? ⑶ 単純接触効果向上に関する実験 → ライフログ写真の中でも,1人で映っている 写真よりも複数人で映っている写真の方が, 単純接触効果が現れる?
⑴ 評価実験 ◼ 実験概要 衣服の色を非着衣色に変化させた写真を実験協力者に 連続で10日間提示した ◼ 実験で使用した写真
実験結果:ファッションに対する意識変化は あったか? ライフログ写真 衣服だけの写真 0% 20% 40% あり なし 60% 80% 100% 人は着衣色が変化したライフログ写真を繰り返し 見ると、単純接触効果によって ファッションに対する意識が変化する
提案手法を用いた実験 ⑴ 評価実験 → 衣服の色を変化させた写真を繰り返し見せる ことで意識変化は可能か? ⑵ 写真ごとの影響調査 → どのような人物写真を繰り返し見せることが 最も意識変化を促すのに効果的か? ⑶ 単純接触効果向上に関する実験 → ライフログ写真の中でも,1人で映っている 写真よりも複数人で映っている写真の方が, 単純接触効果が現れる?
⑵ 写真ごとの影響調査 ◼ 実験概要 衣服の色を非着衣色に変化させた人物写真を, 実験協力者に連続で10日間提示した ◼ 実験で使用した写真 ライフログ写真 新たに撮影した写真 他人が映った写真
実験結果:ファッションに対する意識変化は あったか? ライフログ写真 新たに撮影した写真 他人が映った写真 0% 20% あり 40% 60% 80% 100% なし 他人が映った写真よりも,自分自身が映った写真を 用いる方が意識変化が促される
実験結果:ファッションに対する意識変化は あったか? ライフログ写真 新たに撮影した写真 他人が映った写真 ライフログ写真と新たに撮影した写真の間に 意識変化の違いにどのような差があるのか? 0% 20% あり 40% 60% 80% 100% なし 他人が映った写真よりも,自分自身が映った写真を 用いる方が意識変化が促される
ライフログ写真と新たに撮影した写真の差 自分自身が映った写真を見ることに対する、 抵抗感や気恥ずかしさの有無 ライフログ写真 新たに撮影した写真 0% 20% あり 40% 60% 80% 100% なし 自身の写真を見ることへの抵抗感等が要因となり 新たに撮影した写真より,ライフログ写真の方が 意識変化に効果的だった可能性
提案手法を用いた実験 ⑴ 評価実験 → 衣服の色を変化させた写真を繰り返し見せる ことで意識変化は可能か? ⑵ 写真ごとの影響調査 → どのような人物写真を繰り返し見せることが 最も意識変化を促すのに効果的か? ⑶ 単純接触効果向上に関する実験 → ライフログ写真の中でも,1人で映っている 写真よりも複数人で映っている写真の方が, 単純接触効果が現れる?
⑶ 単純接触効果向上に関する実験 ◼ 実験概要 衣服の色を非着衣色に変化させたライフログ写真を 実験協力者に連続で短時間提示した ◼ 実験で使用した写真 自分自身を含めた複数人で 映る写真 自分自身のみ1人で 映る写真
実験結果:提示前後における効果の有無 と好意度評価の平均値 単純接触効果 有り 好意度評価値 提示前 提示後 複数人で映る 写真 62.5% 1.93 (SD=0.97) 3.56 (SD=1.80) 1人で映る写真 25.0% 1.67 (SD=0.98) 2.93 (SD=1.71) 1人で映る写真よりも,複数人で映る写真を 用いる方が単純接触効果が現れる
実験結果:提示前後における効果の有無 と好意度評価の平均値 単純接触効果 有り 好意度評価値 提示前 提示後 複数人で映る 写真 62.5% 1.93 (SD=0.97) 3.56 (SD=1.80) 1人で映る写真 25.0% 1.67 (SD=0.98) 2.93 (SD=1.71) 同じライフログ写真を用いているのにも関わらず, 他人が映った写真よりも,自分自身が映った写真を なぜ一人で映る写真だと効果が現れなかったのか? 用いる方が意識変化が促される 妨害因は何であったのか?
単純接触効果の妨害因 ⑴ 公的自己意識(自身の写真を見ることへの抵抗感) → 1人で映る写真を見る方が,公的自己意識によって 写真を見ることへの抵抗感が高くなった可能性 ⑵ ライフログ写真の着衣色が変化したことによる, 色に対する違和感 → 着衣色が変化した写真を見た時,1人で映る写真だと 注視点が自分のみになるため,色に対する違和感を 感じやすくなった可能性
提案手法を用いた実験のまとめ ◼ 自身が映る写真を用いることで意識変化が 促され,その中でもライフログ写真を用いる方 がより意識変化が促される[SIGHCI181] ◼ 自分自身が映るライフログ写真の中でも, 複数人で映る写真を用いる方が単純接触効果が 現れる [SIGHCI191]
提案手法のシステム化 ライフログ写真の着衣色変化システムを実装 [SIGHCI186] 非着衣色推定 着衣色変化
システムの性能評価 ⑴ ライフログ写真からの非着衣色の判定精度 → システムで推定された色と、ユーザが着る機会 が少ないと感じる色の間に差があるか? ⑵ 着衣色変化手法の精度 → ライフログ写真を任意の色に変化させた際の 精度はどれくらいか?
システムの性能評価 ⑴ ライフログ写真からの非着衣色の判定精度 → システムで推定された色と、ユーザが着る機会 が少ないと感じる色の間に差があるか? ⑵ 着衣色変化手法の精度 → ライフログ写真を任意の色に変化させた際の 精度はどれくらいか?
⑴ ライフログ写真からの非着衣色の判定精度 実験概要 非着衣色推定システムを用いて推定された色と、事前 に著者が非着衣色だと考えた色の差を比較
結果 システムで推定された色と 人が推定した色の間には差があった 白色のトップス システムはピンク色と認識
非着衣色推定に差が生じた原因 ライフログ写真のトップスの色が、 光の加減が原因でシステムが誤認識した可能性 白色のトップス システムはピンク色と認識
システムの性能評価 ⑴ ライフログ写真からの非着衣色の判定精度 → システムで推定された色と、ユーザが着る機会 が少ないと感じる色の間に差があるか? ⑵ 着衣色変化手法の精度 → ライフログ写真を任意の色に変化させた際の 精度はどれくらいか?
⑵ 着衣色変化手法の精度 実験概要 システムを用いて、人が上半身まで映っている写真を 任意の色に変化させて、精度評価を行った
結果:精度が高かった写真の例 https://zozo.jp/shop/bshop/goods/45199852/?did=74531125 https://zozo.jp/shop/shiffon/goods- sale/46948426/?did=77027804 どの写真も 自然に着衣色が変化している
結果:精度が低かった写真の例 https://zozo.jp/shop/shiffon/goods- sale/46948426/?did=77027804 トップスが無彩色の場合、精度が低かった
着衣色変化の仕組み 変化させる色を HSV(H’,S’,V’)に変換 トップスの色情報, RGBをHSV(H,S,V)に変換 トップスの色相のみ 変化(H→H’)させ、 (H’,S,V)に色変化
結果:精度が低かった写真の例 色相のみ変化させることで色変化を行っているため、 https://zozo.jp/shop/shiffon/goods- sale/46948426/?did=77027804 着衣色が有彩色の写真を使用する必要性
まとめ 目的 ファッションに興味はあるが苦手意識をもつ人に着目し,単純接触効果 を用いてファッションに対する意識変化を促す 提案手法 自身が映ったライフログ写真の着衣色を,非着衣色に変化させた写真を 繰り返しユーザに提示する 実験とシステムの性能評価 ◼ 他人の写真・ライフログ写真でない自身が映った写真より,自分自身 が映るライフログ写真を用いる方が,意識変化が促される ◼ ライフログ写真でも,複数人で映る写真の方が単純接触効果が現れる ◼ 非着衣色推定を行う際,写真自体の光加減を考慮する必要性 ◼ 着衣色変化の際,着衣色が有彩色の写真を使用する必要性 今後の展望 衣服購入の前に1度利用するだけで,意識変化が可能なシステムの実用化