>100 Views
January 22, 26
スライド概要
明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 中村聡史研究室
第127回CN研究会 | 2026.01.23 @宮古島 漫才師の発話交代可視化による 漫才動画探索支援手法の提案 金谷一輝,中村聡史(明治大学)
背景 漫才とは 漫才 - 主に二人一組の話者が会話によって笑いを生み出す芸 - 老若男女に親しまれているコンテンツのひとつ インターネットには多くの漫才動画が公開されている →視聴者がどの動画を見るか判断・選択 https://youtu.be/r2lOuUYATYA?si=8f-XlZuj7Xn9gZzd https://youtu.be/GbUzJ0kUZ40?si=C1jCJM4oUNwA17eH https://youtu.be/Y0455Ak1HGQ?si=1JO8EfBknM9j_itu 2
背景 インターネットにおける動画探索 現在の動画探索 - 再生回数[Fu+ 2011]や投稿日時[Yoon+ 2019] , サムネイルやタイトル[Cui+ 2024] →これらは動画に付与されている表面的な情報 漫才自体の特徴を視聴前に把握することが難しい Yoon, S.-H+: What Content and Context Factors Lead to Selection of a Video Clip? Electronic Commerce Research, 2019. Fu, W. W+: Aggregate Bandwagon Effect on Online Videos’ Viewership: Value Uncertainty, Popularity Cues, and Heuristics, Journal of the American Society for Information Science and Technology,2011. Cui, G.+: Clicks for Money: Predicting Video Views Through a Sentiment Analysis of Titles and Thumbnails, Journal of Business Research, 2024. 3
背景 漫才の特徴 漫才の特徴 - ネタの内容,斬新さ,発想力 - 漫才師の演技力,キャラクター性 - 漫才師の発話(掛け合い,間など) たくろう 2025 M-1優勝 ネタの内容といった直接的な特徴ではなく,漫才師の発話に着目 - 漫才師ごとや,同じ漫才師のネタでも異なる →漫才動画探索に活用できるのではないか 4
関連研究 漫才の発話に関する研究 - 発話長と観客の笑いから漫才の構造を4つに分類[宮城+ 2021] - 発話長の変化から,間の取り方が漫才を印象付ける[川嶋+ 2007] - 漫才師の発話リズムがテンポの良さにつながる[本井+ 2019] 漫才師の発話分析や漫才の分類にとどまっている 動画探索への活用は検討されていない 宮城夏帆ら,漫才対話におけるマルチモーダル情報の動的構造分析,情報処理学会,2021 川嶋宏彰ら,漫才の動的構造の分析-間の合った発話タイミング制御を目指して-,ヒューマンインタフェース学会,2007 本井佑衣ら,漫才対話の「テンポの良さ」を支える発話リズムに同期・変調パターン,社会言語科学会,2019 5
目的 漫才師の発話を可視化する手法を提案し 漫才動画の探索に与える影響を明らかにする 6
提案手法 漫才師の発話を可視化した「発話グラフ」 - 話者ごとに発話タイミング・発話割合を視覚化 - 掛け合い,間などのスタイルが把握可能 7
提案手法 さや香【よしもと漫才劇場4周年SPネタ】 より 8 https://youtu.be/69CUIFEO1r8?si=FjKfnXXzj92YRaWG
提案手法 グラフから読み取る発話特徴 2022年 M-1 準優勝 さや香 掛け合い・一方的な発話・間などの特徴 9
実験 概要 発話グラフが動画選択に与える影響を調査する 発話グラフのあり条件となし条件を参加者間計画による比較実験 10
実験 実験の流れ 4回 実験説明 動画探索 タスク アンケート 実験終了後 アンケート 11
実験 実験の流れ 実験説明 動画探索 タスク アンケート 実験終了後 アンケート 1タスク - 時間:10分 - 動画:同じ漫才師の異なる漫才動画6本 サムネイル,タイトル,動画時間,再生回数,投稿年,グラフ - 設定:漫才をあまり見ない友人にその漫才師に 興味を持ってもらうためにおすすめの漫才動画を2本選ぶ →ネタごとのスタイルの違いに着目するのではないか 12
実験 実験説明 実験の流れ 動画探索 タスク アンケート 実験終了後 アンケート アンケート内容 - 動画選択の参考にした要素を並び替える設問とその理由 「サムネイル」「タイトル」「動画時間」「再生回数」「投稿年」 (グラフあり条件は+「グラフ」) - 友人に推薦する漫才動画 - 実験前に視聴したことがある動画があったか 13
実験 実験説明 実験の流れ 動画探索 タスク アンケート アンケート内容 - 実験で対象とした漫才師を知っていたか - 漫才がどのくらい好きか - どのくらいの頻度で漫才動画を視聴するか 実験終了後 アンケート など 参加者の属性に関する設問を用意 14
実験 実験参加者と使用した漫才動画 漫才が好きな大学生・大学院生 40名 - 報酬を設定し,Slackで募集 - 各条件に20名ずつをランダムに割り振る 対象とした漫才師と漫才動画 - YouTube「よしもと漫才劇場チャンネル」 - ネタ動画が6本以上公開されており,M-1決勝進出経験がある →ミルクボーイ・カベポスター・見取り図・さや香 15
実験 仮説設定に当たって 対象とした漫才動画のサムネイルとタイトルが類似 →再生回数と発話グラフを比較,発話グラフと選択時間 動画探索タスクでの選択行動,アンケートでの主観評価 16
実験 仮説 H1:選択行動 - グラフなし条件では,グラフあり条件と比較して, 各タスクで最初に選択する動画の再生回数が高い H2:選択行動 - グラフあり条件では,グラフなし条件と比較して, 各タスクで最初に視聴する動画を選択するまでの時間が長い H3:アンケート - 動画選択の参考にした要素を並び替える設問において, グラフあり条件では「再生回数」と比較して「グラフ」の順位が高い 17
結果 H1:動画の再生回数に関して H1:グラフなし条件では,グラフあり条件と比較して, 各タスクで最初に選択する動画の再生回数が高い 各タスクでの6本の動画を再生回数が高い順に並べた際に, 最初に視聴された動画がどの順位に相当するかを指標とした - 数値が小さいほど,再生回数が高い動画を選択 グラフなし条件:2.10位 グラフあり条件:2.21位 統計分析※より,有意差は見られなかった →仮説は棄却 ※Mann-WhitneyのU検定を行った結果,U = 3373.0,p = 0.54,r = 0.05と,有意な差は見られなかった 18
結果 H2:動画の選択時間に関して H2:グラフあり条件では,グラフなし条件と比較して, 最初に視聴する動画を選択するまでの時間が長い 各条件での平均選択時間 グラフあり条件:7.83秒 グラフなし条件:6.46秒 統計分析※より,有意差は見られなかった →仮説は棄却 ※Studentの対応なしt検定を行った結果,p = 0.11,d = 0.25と,有意な差は見られなかった 19
結果 H3:アンケートでの主観的評価 H3:動画選択の参考にした要素を並び替える設問において, グラフあり条件では「再生回数」と比較して「グラフ」の順位が高い 要素 平均順位 標準偏差 1 再生回数 2.28 1.61 2 投稿年 3.21 1.68 3 動画時間 3.44 1.39 4 グラフ 3.51 1.58 5 サムネイル 3.89 1.67 6 タイトル 4.68 1.39 初期提示は ランダム 「再生回数」の項目が「グラフ」より高い結果 →仮説は棄却 20
結果 漫才師ごとの探索的分析 4組の漫才師ごとに,動画選択の参考にした要素の順位を分析 →どの漫才師も「グラフ」が「再生回数」を上回ることはなかった 3組の漫才師ではグラフが4位や5位となった一方で, 見取り図に関してグラフが2番目に高いという結果 要素 平均順位 標準偏差 1 再生回数 2.50 1.73 2 グラフ 2.60 1.47 3 投稿年 3.35 1.57 4 動画時間 3.60 1.31 5 サムネイル 3.95 1.88 6 タイトル 5.00 1.03 21
考察 H1,H3:再生回数や投稿年が上位となった理由 「再生回数が多い方が人気があって面白いと思った」 要素 平均順位 1 再生回数 2.28 2 投稿年 3.21 3 動画時間 3.44 「最近の動画ほど,より面白くブラッシュアップされていると感じた」 →友人に推薦する設定から漫才師のスタイルより大衆受けを考えた可能性 H2:選択時間に差が出なかった理由 - 情報探索における初期の選択は即時的・直感的な意思決定になりやすい [Marchionini 1995] →再生回数など一目で把握可能な指標が用いられた可能性 Marchionini G. Information Seeking in Electronic Environments. Cambridge University Press; 1995. 22
考察 見取り図ではグラフが上位になった理由 1)実験で使用した6つの動画の再生回数 2)参加者が実験で使用した漫才師を知っていたか 要素 平均順位 1 再生回数 2.50 2 グラフ 2.60 3 投稿年 3.35 1)見取り図とカベポスターは再生回数の分散が小さい 「動画の再生回数に大きな差が見られなかったため,再生回数は 気にしなかった.グラフとサムネイルをメインに視聴していた」 2)漫才師を知っていた参加者(グラフあり条件)の人数 見取り図:18/20,カベポスター:8/20 自分が知っている漫才師かつ 動画の再生回数に大きな差がない→グラフを活用 23
制約と展望 漫才のテーマを示すタイトル情報の不足 - ネタのタイトル情報と発話グラフの関係性を検証 発話グラフの手動作成による表現の一貫性の課題 - 発話グラフを自動で作成することで,恣意性を低減 - 声量などの発話情報を用いた可視化表現の拡張 対象とした漫才師・漫才動画・シナリオ設定 - より多様な条件下での検証を行い,手法の汎用性を検討 24
まとめ 背景:漫才の特徴に注目した漫才動画探索 目的:漫才師の発話を可視化し,動画選択に及ぼす影響の調査 手法:漫才師の発話交代を時系列順に可視化 実験:時間内で自由に動画の選択・視聴 結果:再生回数など既存情報を上回ることはなかった 考察:人に薦めるという実験での設定が影響している可能性 展望:他の漫才師,漫才動画の数を増やして再検証 25